(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ガスタービンの燃焼器
(51)【国際特許分類】
F23R 3/28 20060101AFI20240321BHJP
F02C 3/22 20060101ALI20240321BHJP
F02C 7/26 20060101ALI20240321BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20240321BHJP
F02C 9/28 20060101ALI20240321BHJP
F02C 9/40 20060101ALI20240321BHJP
F01D 21/00 20060101ALI20240321BHJP
F02C 6/00 20060101ALI20240321BHJP
F23R 3/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F23R3/28 F
F02C3/22
F02C7/26 A
F02C7/22 B
F02C7/22 D
F02C9/28 Z
F02C9/40 B
F01D21/00 N
F02C6/00 E
F23R3/00 D
(21)【出願番号】P 2023038983
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2020023238の分割
【原出願日】2020-02-14
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大友 光彰
(72)【発明者】
【氏名】宮川 浩
(72)【発明者】
【氏名】春日 俊相
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180266(JP,A)
【文献】特開平05-332152(JP,A)
【文献】特開平09-177568(JP,A)
【文献】特開平07-190369(JP,A)
【文献】実開平05-017356(JP,U)
【文献】特開2010-133339(JP,A)
【文献】特許第5315491(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/00- 9/58
F23R 3/00- 7/00
F01D 17/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの燃焼器であって、
燃焼室と、
前記燃焼室にアンモニアを供給する主燃料ノズルと、
前記燃焼室に配置された点火プラグと、
前記主燃料ノズルに送られる、または送られたアンモニア
の一部を
加熱によって改質して水素を含む改質燃料とする改質器と、
前記改質燃料を前記点火プラグ近傍に供給する改質燃料ノズルと、
前記改質器における加熱のタイミング、前記改質燃料の供給のタイミングおよび前記点火プラグによる点火のタイミングを制御する制御部と、
を備えるガスタービンの燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンの燃焼器であって、前記制御部は、前記ガスタービンの回転速度に基づき前記改質燃料の供給を停止する、ガスタービンの燃焼器。
【請求項3】
請求項1に記載のガスタービンの燃焼器であって、さらに、
前記主燃料ノズルから前記燃焼室に供給されたアンモニアの周囲に、圧縮された空気を供給する空気ノズル、
を備え、
前記点火プラグは、前記改質燃料ノズルに関して、前記主燃料ノズルおよび前記空気ノズルが位置する側とは反対側に配置されている、
ガスタービンの燃焼器。
【請求項4】
請求項1に記載のガスタービンの燃焼器であって、前記改質器は、電力によって発熱し、アンモニアを加熱する加熱器を含み、前記加熱器に供給される電力の制御により、前記加熱のタイミングが制御される、ガスタービンの燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの起動時に、主燃料と異なる燃料を用いて、着火性または燃焼の安定性を改善する技術が知られている。下記特許文献1では、主燃料として揮発性の低いA重油または軽油を用いており、低温時の着火性の改善のために着火用にガス燃料を用いている。また、下記特許文献2では、主燃料として可燃範囲が広い水素含有ガス燃料を主燃料として用いる場合に、未燃の水素を排出しないようにするため、着火、起動時には液体燃料や液化天然ガスを起動用燃料として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-105335号公報
【文献】特開2010-133339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、水素キャリアであるアンモニアを燃料として使用することが検討されている。アンモニアをガスタービンの燃料として用いる場合、アンモニアは着火性が悪く、起動時の燃焼の安定性が低下する場合がある。
【0005】
本発明は、アンモニアを燃料とするガスタービンの起動時の安定性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガスタービンの燃焼器は、燃焼室と、燃焼室に燃料としてアンモニアを供給する主燃料ノズルと、燃焼室に圧縮された空気を供給する空気ノズルと、燃焼室に配置された点火プラグと、アンモニアを改質して水素を含む改質燃料とする改質器と、改質燃料を点火プラグ近傍に供給する改質燃料ノズルと、を備える。
【0007】
アンモニアを改質して水素を得て、水素を含む改質燃料を点火プラグ近傍に送ることにより着火性が改善される。
【0008】
改質器は、アンモニアを加熱する加熱器と、アンモニアを水素と窒素に分解する触媒とを含むものとすることができる。
【0009】
改質燃料ノズルは、開閉可能な噴射弁とすることができる。
【0010】
ガスタービンの燃焼器は、主燃料ノズルまたは主燃料ノズルにアンモニアを送る主燃料配管から分岐して改質器にアンモニアを送る副燃料配管を備えるものとすることができる。
【0011】
副燃料配管は、改質器へのアンモニアの送りを止める遮断弁を設けたものとすることができる。
【0012】
燃焼室は、互いに隔てられて連通孔を介して連通している主燃焼室と副燃焼室を含むものとすることができ、主燃焼室には主燃料ノズルによってアンモニアが供給され、副燃焼室には点火プラグが配置され、改質燃料ノズルによって改質燃料が供給される。
【0013】
加熱器は、改質燃料ノズルによって改質燃料が供給されていないときに加熱を行うものとすることができ、改質燃料ノズルは、加熱器による加熱が停止された後、改質燃料を供給するものとすることができる。
【0014】
改質燃料ノズルは、ガスタービンが自立運転速度に達するまで改質燃料を供給するものとすることができる。
【0015】
本発明に係る他のガスタービンの燃焼器は、燃焼室と、燃焼室に配置された点火プラグと、アンモニアを改質して水素を含む改質燃料とする改質器と、改質燃料を点火プラグ近傍に供給する改質燃料ノズルと、改質燃料の供給のタイミングおよび点火プラグによる点火のタイミングを制御する制御部と、を備える。さらに、制御部は、ガスタービンの回転速度に基づき改質燃料の供給を停止するものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
水素を含む改質燃料を点火プラグ近傍に供給することで着火性が改善され、起動時のガスタービンの運転が安定する。また、主燃料であるアンモニアを改質して着火用の燃料を得ているため、着火用の燃料を別途準備する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ガスタービンの全体構成を示す模式図である。
【
図2】燃焼器の構成の一例を示す模式図であり、改質燃料を燃焼室に噴射する噴射弁を有する例を示す図である。
【
図3】燃焼器の構成の他の例を示す模式図であり、改質燃料を配管によって燃焼室に供給する例を示す図である。
【
図4】燃焼器の構成の更に他の例を示す模式図であり、燃焼室ライナの内側に副燃焼室を設けた例を示す図である。
【
図5】燃焼器の構成の更に他の例を示す模式図であり、燃焼室ライナの外側に副燃焼室を設けた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、ガスタービン10の概略構成を示す模式図である。ガスタービン10は、空気を圧縮するコンプレッサ12と、コンプレッサ12で圧縮された空気と燃料を混合し、燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器14と、燃焼ガスにより駆動されるタービン16を含む。コンプレッサ12とタービン16のそれぞれのロータは、出力軸18で結合されており、一体となって回転する。出力軸18には、スタータモータ20が接続され、ガスタービン10の始動時にコンプレッサ12とタービン16のロータを回転駆動する。燃焼器14には、燃料タンク22から主燃料配管23を介して燃料であるアンモニアが供給される。主燃料配管23には、燃料ポンプが備えられ、アンモニアはポンプやガスコンプレッサにより加圧して送給される。ガスタービン10は制御装置24を備え、制御装置24は、要求出力や、回転速度センサ25により検出された出力軸18の回転速度等に基づき、燃料の供給の制御、起動時のスタータモータ20の制御などを行う。
【0019】
図2は、燃焼器14の構成の一例を模式的に示す図である。燃焼器14は、燃焼室26を規定する燃焼室ライナ28と、燃焼室ライナ28を囲むように設けられたフロースリーブ30を有する。コンプレッサ12で圧縮された空気(以下、圧縮空気と記す。)は、燃焼室ライナ28とフロースリーブ30の間を流れ、空気ノズル32から燃焼室26内に送給される。空気ノズル32の出口には、送給された圧縮空気に旋回を与え、燃焼室26内に旋回流を形成するスワラー34が配置されてよい。
【0020】
燃焼器14は、燃焼室26内にアンモニアを供給する主燃料ノズル36を有する。前述の空気ノズル32は、主燃料ノズル36の周囲を囲むように配置される。主燃料ノズル36から供給されるアンモニアと、空気ノズル32から供給される圧縮された空気が燃焼室26内で混合し、混合気が形成される。燃焼器14は、燃料であるアンモニアを分解して水素を含む燃料(以下、改質燃料と記す。)を生成する改質器38を有している。改質器38には、主燃料ノズル36に送られる、または送られたアンモニアの一部が副燃料配管40を介して供給される。副燃料配管40は、主燃料配管23から分岐してもよく、主燃料ノズル36から分岐してもよい。
【0021】
改質器38は、アンモニアを水素と窒素に分解する触媒を担持した担体と、担体を収容する触媒ハウジングを有する。触媒は、ルテニウムやニッケルを用いることができる。改質器38は、供給されたアンモニアを加熱する加熱器42を有し、加熱によってアンモニアの分解反応が促進される。加熱器42は、電力によって発熱する加熱器であってよく、触媒ハウジングに貼付するように設けられてよい。また、触媒の担体に電力を供給して担体自体が発熱するようにしてもよい。加熱器42は、制御装置24により制御される電力供給により必要な時に発熱する。改質器38で生成された改質燃料は、燃焼室ライナ28に固定された噴射弁44に送られ、噴射弁44から燃焼室26内に噴射される。燃焼室ライナ28には、点火プラグ46も固定され、噴射弁44は、点火プラグ46の近傍に改質燃料を噴射する。噴射弁44は、制御装置24の指令に基づき開閉して、必要な時期に必要量の改質燃料を噴射する。改質燃料は水素を含むため着火性が良く、容易に点火することができる。これが火種となって、燃焼室26内の混合気に着火する。噴射弁44による改質燃料の噴射のタイミングおよび点火プラグ46による点火のタイミングは、制御装置24により制御される。
【0022】
副燃料配管40に、この副燃料配管40を遮断可能な弁、例えば逆止弁を設けてもよい。このような弁を設けることにより、改質器38で生成された水素が逆流することを抑えることができる。
【0023】
加熱器42による加熱は、噴射弁44によって改質燃料が噴射される以前に実行され、加熱を停止した後、噴射弁44によって改質燃料が噴射されるようにしてよい。加熱を停止した後もある程度の期間、余熱によりアンモニアを改質することができる。供給されるアンモニアによって冷やされて加熱器42の温度が低下した後は、水素が生成されなくなり、改質燃料が供給された後の水素の生成が抑えられる。このときの、加熱器42による加熱の制御、噴射弁44の制御は、制御装置24により制御される。
【0024】
改質燃料の供給は、ガスタービン10が、自立運転が可能な速度に達するまで、つまりスタータモータ20による駆動が不要になるまで継続されてよい。自立運転可能な速度以下では、燃焼が不安定であり、このとき、着火性の良い改質燃料を供給することで、燃焼を安定させることができる。回転速度センサ25の検出値に基づき、ガスタービン10が自立運転可能な速度となったかを判断することができる。
【0025】
図3は、燃焼器の他の構成例を示す模式図である。前述の燃焼器14と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。燃焼器48は、改質燃料に係る構成要素が前述の燃焼器14と異なる。改質器38、および改質器38に備えられた加熱器42は、前述のものと同一である。燃焼器48では、噴射弁44は設けられておらず、改質器38から延びる改質燃料配管50が燃焼室26に対して開口して設けられている。副燃料配管40には、遮蔽弁52が設けられている。遮蔽弁52は、制御装置24の指令に基づき開閉する。遮蔽弁52が開いているとき、アンモニアが、主燃料配管23から副燃料配管40を介して改質器38に送られ、改質器38で改質燃料とされ、改質燃料配管50から燃焼室26内の点火プラグ46の近傍に送られる。
【0026】
図4は、燃焼器の更に他の構成例を示す模式図である。前述の燃焼器14と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図4に示される燃焼器54は、燃焼室56の構造が、前述の燃焼器14の燃焼室26と異なる。燃焼室56は、燃焼室ライナ28の内側の空間の大部分を占める主燃焼室58と、主燃焼室58から隔てられ燃焼室ライナ28の内側の空間の一部である副燃焼室60とを含む。主燃焼室58と副燃焼室60は、1つのまたは複数の連通孔62によって連通している。主燃焼室58に、空気ノズル32から圧縮空気が送られ、主燃料ノズル36からアンモニアが送られ、混合気が形成される。副燃焼室60に、噴射弁44から改質燃料が送られる。副燃焼室60に送られた改質燃料は、点火プラグ46により点火され、改質燃料が燃焼する。この燃焼ガスが、連通孔62を通って主燃焼室58に噴き出し、高温の燃焼ガスによって、主燃焼室58内の混合気が高温となってアンモニアに着火する。副燃焼室60内に改質燃料を噴射することにより、改質燃料の拡散が抑えられ、少量での点火が可能になる。
【0027】
図5は、燃焼器の更に他の構成例を示す模式図である。前述の燃焼器14と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図5に示される燃焼器64は、燃焼室66の構造が、前述の燃焼器14の燃焼室26と異なる。燃焼室66は、燃焼室ライナ28の内側の空間である主燃焼室68と、燃焼室ライナ28の外側に隣接して設けられた副燃焼室70とを含む。主燃焼室68と副燃焼室70は、燃焼室ライナ28により隔てられており、燃焼室ライナ28に設けられた1つのまたは複数の連通孔72によって連通している。主燃焼室68に、空気ノズル32から圧縮空気が送られ、主燃料ノズル36からアンモニアが送られ、混合気が形成される。副燃焼室70に、噴射弁44から改質燃料が送られる。副燃焼室70に送られた改質燃料は、点火プラグ46により点火され、改質燃料が燃焼する。この燃焼ガスが、連通孔72を通って主燃焼室68に噴き出し、高温の燃焼ガスによって、主燃焼室68内の混合気が高温となってアンモニアに着火する。副燃焼室70内に改質燃料を噴射することにより、改質燃料の拡散が抑えられ、少量での点火が可能になる。
【0028】
上述の噴射弁44および点火プラグ46は複数設けられてよい。また、改質器38は、噴射弁44ごとに設けられても、複数の噴射弁44に対して1つが設けられてもよい。上述の改質燃料配管50および点火プラグ46は複数設けられてよい。また、改質器38は、改質燃料配管50ごとに設けられても、複数の改質燃料配管50に対して1つが設けられてもよい。また、副燃焼室60,70が複数設けられてもよい。さらに、ガスタービン10に、燃焼器14,48,54,64が複数備えられてもよい。アンモニアは、ポンプによる供給の他、高圧のアンモニアを蓄え、ここから主燃料ノズル36および改質器38に供給されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 ガスタービン、12 コンプレッサ、14,48,54,64, 燃焼器、16 タービン、22 燃料タンク、23 主燃料配管、26,56,66 燃焼室、28 燃焼室ライナ、30 フロースリーブ、32 空気ノズル、36 主燃料ノズル、38 改質器、40 副燃料配管、42 加熱器、44 噴射弁、46 点火プラグ、50 改質燃料配管、52 遮蔽弁、58,68 主燃焼室、60,70 副燃焼室、62,72 連通孔。