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特許7457852水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置及びそれに用いられる試験片
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置及びそれに用いられる試験片
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/08 20060101AFI20240321BHJP
   G01N 3/18 20060101ALI20240321BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G01N3/08
G01N3/18
G01N17/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023041491
(22)【出願日】2023-03-16
(65)【公開番号】P2024037668
(43)【公開日】2024-03-19
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2022-0113566
(32)【優先日】2022-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.学会(ポスター発表):大韓機械学会 材料及び破壊部門 2022年春季学術大会(開催日2022年6月22日~6月24日、済州島西帰浦市西帰浦プヨンホテル&リゾート) 2.学会の抄録集:上記1の学会関連(発行日2022年6月22日) https://sites.google.com/view/ksme2022-mnf/announcement 3.学会(論文発表):ASME 2022 Pressure Vessels & Piping Conference(開催日2022年7月17~22日、ラスベガス ネヴァダ州、米国)及びそのウェブサイト(発行日2022年11月4日) https://asmedigitalcollection.asme.org/PVP/proceedings-abstract/PVP2022/86182/V04BT06A031/1149904?redirectedFrom=PDF
(73)【特許権者】
【識別番号】520058860
【氏名又は名称】アンドン ナショナル ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】ANDONG NATIONAL UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】1375,Gyeongdong-ro Andong-si Gyeongsangbuk-do 36729 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヒョン ソプ
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-286036(JP,A)
【文献】特表2020-534544(JP,A)
【文献】中国実用新案第215640778(CN,U)
【文献】実開平07-012686(JP,U)
【文献】特開平05-107163(JP,A)
【文献】特開2017-161468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/08
G01N 3/18
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部固定端から長手方向に沿って下部固定端まで中空が貫通形成された試験片と、
前記下部固定端との脱着可能な結合により前記中空の下部開口を密閉し、前記試験片を固定する下部治具と、
前記上部固定端との脱着可能な結合により前記中空の上部開口を密閉し、直線駆動するアクチュエータによって上下に作動し、試験片を引張る上部治具と、
密閉された前記下部開口と連通するように、前記下部治具に貫通形成された供給ラインに連結され、様々な可変圧で所定のガスを前記中空に充填するガス供給部と、
を含み、
前記上部治具は、
前記上部固定端がネジ締結するように、下端面に凹状に形成された上部締結穴と、
前記上部開口の外側の上端面と上部固定端の外周面とをそれぞれ密閉するように前記上部締結穴の上部に装着・脱着可能に設置された二重の上端Oリングと、
前記アクチュエータの作動端に対して側方へと脱着可能に噛み合わせ結合して回転する締結突起と、
を含むことを特徴とする水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置。
【請求項2】
前記下部治具は、
前記下部固定端がネジ締結するように、上端面に凹状に形成された下端締結穴と、
前記下部開口の外側の下端面と前記下部固定端の外周面とをそれぞれ密閉するように前記下締結穴の下部に装着・脱着可能に設置された二重の下端Oリングと、
および、前記下部治具の外周面から側方へと貫通形成された第1管路と、前記下部開口とが互いに連通するように前記下端締結穴の下部に貫通形成された第2の管路からなる前記供給ラインと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置。
【請求項3】
前記ガス供給部は、
前記第1路の一方側に結合して外部から前記第1路に供給されるガスの流量を調整する流量弁と、
および、前記第1管路の他方側に結合して前記第1管路を介して前記中空に流入したガスの圧力を測定する圧力計と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置。
【請求項4】
前記引張試験装置は、
前記上部治具と前記下部治具が内部に収容するように設置された断熱容器と、
前記断熱容器内の温度と試験片の温度を測定する温度センサと、
および、前記上部治具と前記下部治具の外周面に沿って巻き取って試験片を設定した温度に加熱または冷却する熱伝達器と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置。
【請求項5】
前記熱伝達器は、
内部に低温の冷媒が循環する冷却管または制御電源の印加により加熱される熱線であることを特徴とする請求項に記載の水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置。
【請求項6】
請求項1に記載の引張試験装置に用いられる試験片であって、
上端部と下端部との間に比較的細く形成され、前記引張試験装置の動作に応じ伸びて破断する変形部と、
前記変形部よりも大きい直径で前記変形部の下端部に形成され、前記引張試験装置の下部治具にネジ締結される下部固定端と、
前記変形部を基準にして前記下部固定端と対称になるように前記変形部の上端部に形成され、前記引張試験装置の上部治具にネジ締結される上部固定端と、
前記上部固定端または前記変形部の内側から前記下部固定端まで貫通形成され、多様な可変圧で所定のガスが充填される中空と、
を含むことを特徴とする水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための試験片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置及びそれに用いられる試験片に関するものであり、より詳細には、水素、天然ガス、その他の侵食性ガス等を取り扱うガス環境(温度、圧力)下で、金属または非金属の材料の脆化挙動を、容易かつ定量的に評価することのできる、小規模な引張試験装置、およびそれに使用される試験片に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスや地球温暖化などによって引き起こされている、深刻な気候問題の緊急な解決のために、世界各国は、化石エネルギー中心の発電体系を新再生可能エネルギー中心に転換する各種規制を設ける一方、様々な財政支援政策を提案し施行している。
【0003】
再生可能エネルギーのうちの水素エネルギー技術は、炭素中立を達成する、意味のある技術的解決策であり、各種の汚染物質や微粒子等を低減するための方案であると認識されることから、近年、自動車分野などで活発な研究開発が行われている。
【0004】
自動車技術を先導する韓国、米国、日本、ドイツなどは、自動車に装着される水素燃料電池の研究開発はもちろんのこと、水素燃料電池車の商用化と普及拡大のために、水素充填システム、水素の生産、貯蔵及び輸送に至る水素生態系の全般に対する研究開発にも、様々な努力を傾けている。
【0005】
ただし、大量に生産された水素は、爆発性の強い可燃性の気体であり、効率性のために、高圧処理した後に貯蔵及び輸送を行う特性のため、水素を取り扱う設備の耐久性と安定性は、必ず考慮すべき重要な事項として扱われている。
【0006】
したがって、高圧水素の貯蔵と輸送に関する技術は、貯蔵媒体である高圧容器や輸送用配管などの構造的な安定性、及び、高圧水素などの貯蔵と輸送に用いられる材料、乃至、素材の水素脆化(hydrogen embrittlement: HE)による力学的特性を評価する研究などに関心が集中している。
【0007】
ここで、水素脆化とは、大きさが非常に小さい水素原子が、高圧の環境下で材料の内部に浸透及び拡散して材料の延性を大きく減少させる現象であり、減少した材料の延性は、本来の機械的性能を大きく低下させ、早期のき裂発生などの重大な損傷を引き起こすことになる。
【0008】
したがって、水素環境下で使用される材料の適合性を判断する際に、水素脆化による力学的特性は必ず検証や評価が必要であり、水素を扱う使用環境(圧力および温度条件)によって材料に対して特異的に発生することになるので、多様な使用環境下での水素脆化特性を正確に評価できる試験方法や試験設備が必要な実情である。
【0009】
上述のような様々な使用環境に対応した従来の水素脆化の評価試験は、温度設定が可能なチャンバーに装入した材料に対して、水素等を、設定した圧力で投入して試験を行う高圧保持装置(オートクレーブ)を主に利用して行われていた。
【0010】
しかし、水素などの爆発性ガスに対する試験の場合、必須の安全装置の確保のために試験設備自体が複雑な構造に大型化され、設備の運用と安全管理が難しく、通常の研究室単位で使用するには困難であるという問題があった。
【0011】
上記のような問題を解消し、通常の研究室単位での研究開発を促進するために、本発明の出願人は、大韓民国登録特許第10-1177429号(登録日:2012年8月21日)のような簡易試験法を提案したことがある。
【0012】
上述した従来の簡易試験法によれば、短時間で材料別の脆化挙動に関する多様なデータを同時に確保することができ、ガス環境下で材料の脆化挙動を迅速、簡易に評価できる利点がある。
【0013】
また、比較的小型の試験片に対して微量の取扱ガスを高圧で提供するため、取扱ガスが一部漏れても比較的安全で、小規模の設備と低コストでもって研究室単位で、様々なガス環境下にて使用される材料の脆化挙動に関する評価データを、小型パンチ試験に基づいて容易に取得できる利点がある。
【0014】
しかし、35MPa~70MPaの高圧水素環境下にて使用される材料の脆化挙動を評価する際に、水素脆化等が材料自体の引張強度に及ぼす影響を当該小型パンチ試験では直接的に確認することが難しく、定量的なデータとして取得することもできない問題がある。
【0015】
また、常温ではない低温及び高温環境下で発生する材料の特異的な脆化挙動を材料の引張変形等に基づいて評価することができないという点で従来の簡易試験法の設備自体には一定の限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】大韓民国登録特許第10-1177429号(登録日:2012年8月21日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、水素を含む様々なガス環境下で使用される、金属、合金、ポリマー樹脂、セラミックなどの各種材料に対する脆化挙動が、材料自体の引張強度に与える影響を直接的かつ定量的なデータとして取得できるとともに、ガスが充填される試験片の内側の中空を手軽に密閉することができるのであって、小規模の設備と低コストでもって取扱ガスを少量だけ使用して、研究室単位で脆化挙動の特性を迅速、容易に評価できる引張試験装置、及びそれに使用される試験片を提供することである。
【0018】
本発明の目的は、以上で言及した目的に限定されず、言及されていない他の目的は、以下の記載から明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は、(1)上部固定端から長手方向に沿って下部固定端まで中空が貫通形成された試験片と、(2)前記下部固定端との脱着結合により前記中空の下部開口部を密閉し、前記試験片を固定する下部治具と、(3)前記上部固定端との脱着結合によって中空の上部開口部を密閉し、直線駆動するアクチュエータによって上下に作動し、試験片を引張る上部治具と、(4)密閉された前記下部開口部と連通するように前記下部治具に貫通形成された供給ラインと連結され、多様な可変圧で所定のガスを中空に充填するガス供給部と、を含むことを特徴とする水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置により達成される。
【0020】
前記下部治具は、(i)前記下部固定端がネジ締結するように上端面に凹状に形成された下端締結穴と、(ii)前記下部開口部の外側の下端面と前記下部固定端の外周面とをそれぞれ密閉するように、前記下部締結穴の下部に着脱可能に設置された二重下部Oリングと、(iii)前記下部治具の外周面から側方に貫通形成された第1管路と前記下部開口部が互いに連通するように、前記下端締結穴の下部に貫通形成された第2の管路からなる供給ラインと、を含むことができる。
【0021】
前記ガス供給部は、(iv)前記第1管路の一方側に結合され、外部から前記第1管路に供給されるガスの流量を調節する流量弁と、(v)前記第1管路の他方側に結合され、第1管路を介して前記中空に流入したガスの圧力を測定する圧力計と、を含むことができる。
【0022】
前記上部治具は、(vi)前記上部固定端がネジ締結するように下端面に凹状に形成された上端締結穴と、(vii)前記上部開口部の外側の上端面と前記上部固定端の外周面とを密閉するように、前記上端締結穴の上部に着脱可能に設けられた二重上部Oリングと、(viii)前記アクチュエータの作動端に対して側方に着脱自在に係合して回転する締結突起と、を含むことができる。
【0023】
前記引張試験装置は、(5)前記上部治具と前記下部治具が内部に収容するように設置される断熱容器と、(6)前記断熱容器内の温度と前記試験片の温度を測定する温度センサと、(7)上部治具および前記下部治具の外周面に沿って巻き取られ、前記試験片を設定温度に加熱または冷却する熱伝達器と、を含むことができる。
【0024】
前記熱伝達器は、内部に低温の冷媒が循環する冷却管、または、制御電源の印加に応じて加熱される電熱線でありうる。
【0025】
上記他の目的は、請求項1に記載の引張試験装置に用いられる試験片であって、(ix)上端部と下端部との間にて相対的に薄く形成され、前記引張試験装置の動作に応じて伸ばされて破断する変形部と、(x)前記変形部よりも大きい直径で前記変形部の下端部に形成され、前記引張試験装置の下部治具にネジ締結する下部固定端と、(xi)前記変形部を基準として前記下部固定端と対称になるように前記変形部の上端部に形成され、前記引張試験装置の上部治具にネジ締結する上部固定端と、(xii)前記上部固定端または前記変形部の内側から前記下部固定端まで貫通形成され、多様な可変圧で所定のガスが充填される中空と、を含むことを特徴とする水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための試験片により達成される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、試験片の内側に貫通形成された中空の下部開口を密閉して、試験片を固定する下部治具に対して、中空の上部開口を密閉するように試験片の上部固定端と脱着結合される上部治具が試験片を引張り、密閉された下部開口と連通する下部治具の供給ラインと連結されたガス供給部により、所定のガスが様々な可変圧で中空に充填されることにより、試験片の脆化挙動に対する評価データは小型パンチによる試験片の圧入曲げ変形ではなく、試験片の引張変形に基づいて直接取得することができる。
【0027】
また、単純な作動構造の上下部の治具と、これに容易に脱着・付着する過程で簡便に中空が密閉される試験片と、少量のガスのみでもって試験片の中空を高圧に充填させるガス供給部などは、低コストと小規模設備で実現可能であるため通常の研究室の単位で容易に運用することができる。
【0028】
また、相対的に小さいサイズの中空型試験片に対して、少量のガスのみでもって高圧のガス充填が可能であるため、高圧ガスに対する規制等の制限なしに、低コストの試験で多様な研究開発を自由に実施することができるのであり、試験完了時にガスが一部漏れても、安全かつ迅速な対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例による水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置、及びそれに用いられる試験片の斜視図である。
図2図1の分解図である。
図3図1の断面図である。
図4図3の状態を基準(出発点)として、中空に対するガス充填と試験片に対する引張動作が行われる試験の過程を示す作動状態図である。
図5】低温試験環境を構成するために、断熱容器、温度センサ及び冷却管が追加で設置された引張試験装置の部分切開斜視図である。
図6】高温試験環境を構成するために、断熱容器、温度センサ及び電熱線がさらに設置された引張試験装置の部分切開斜視図である。
図7a図1の引張試験装置を通じて、同一圧力の窒素Nと水素Hが高圧充填された試験片に対して、それぞれ行われた引張試験に従って算出された引張応力-引張ひずみを比較したグラフである。
図7b図7aによる引張試験によって破断された試験片の損傷および破断の態様をそれぞれ示す破断面の写真である。
図8】本発明の変形例による、水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための、引張試験装置及びこれに用いられる、一端が詰まっている試験片についての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を詳細に説明すると以下の通りである。ただし、本発明を説明するにあたって、既知の機能または構成の説明は、本発明の要旨を明確にするために省略するものとする。
【0031】
図1は、本発明の実施例による水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置、及びそれに用いられる試験片の斜視図であり、図2は、図1の引張試験装置の分解図であり、図3は、図1の引張試験装置の断面図であり、図4は、図3の状態を基準(出発時の状態)として、中空に対するガスの充填と、試験片に対する引張動作とが行われる試験の過程を示す作動状態図であり、図5は、低温試験環境を構成するための断熱容器、温度センサ及び冷却管が追加で設置された引張試験装置の部分切開斜視図であり、図6は、高温試験環境を構成するために、断熱容器、温度センサ及び熱線がさらに設置された引張試験装置についての部分切開斜視図である。図7aは、図1の引張試験装置を通じて、同一圧力の窒素N及び水素Hがそれぞれ高圧充填された試験片について、それぞれ行われた引張試験によって算出した引張応力-引張ひずみ曲線を比較したグラフであり、図7bは、図7aによる引張試験により破断した試験片の損傷及び破断態様をそれぞれ示す破断面の写真であり、図8は、本発明の変形例による水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置及びそれに用いられる、一端が詰まっている試験片の断面図である。
【0032】
発明の説明及び請求範囲等で方向を指す、上(うえ)、下(した)、左右(横又は側方)、前(正面、まえ)、後(背後、うしろ)等は、権利の限定の用途ではなく説明の便宜のために、図面及び構成間の相対的位置を基準に定めたものであって、3つの軸は互いに対応するように回転して置き換わりうるのであり、特に異なるように限定する場合以外は、これに従う。
【0033】
本発明による水素ガス環境における脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置100は、試験片110の脆化挙動に関する評価データが、引張変形に基づいて取得される一方、低い試験費用と設備費用でもって、通常の研究室単位にて多様な研究開発が自由に行われるようにするために考案されたものである。
【0034】
そして、本発明による試験片110は、上述した脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置100に直接脱着可能に締結され、材料自体の脆化挙動に対する評価データ取得に使用するように案出されたものである。
【0035】
上述したような機能ないし作用を具体的に具現するために、本発明の実施例による脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置100は、図1図3に示すように試験片110、下部治具120、上部治具130及びガス供給部140を含む常温の試験片110を用いる第1の形態と、図5及び図6に示すように、断熱容器150、温度センサ160、熱伝達器などをさらに含んで、加熱または冷却された試験片110を使用する第2の形態とで構成されうる。
【0036】
以下では、上述した各構成について具体的に説明する。
【0037】
まず、試験片110は、本発明の引張試験装置100に脱着可能に装着した状態で、密閉された内部に少量のガスGが高圧で充填されて、引張変形がなされる構成要素であって、金属、合金、ポリマー樹脂、セラミックなどの水素などを含むガス環境に使用することのできる、様々な材料で作ることができる。
【0038】
このような試験片110は、引張試験のための装着と、ガスGの充填のための密閉空間の形成のために、図1及び図8の拡大図に示すように、変形部116、下部固定端112、上部固定端114、中空Sなどを含んで構成されうる。
【0039】
ここで、変形部116は、本発明の引張試験装置100の作動に応じて試験片110が伸びて破断するように誘導するために、試験片110の上端部と下端部との間に、より小さい直径で形成されている構成要素であって、上述したように、様々な材料を用いて後述する下部固定端112および上部固定端114と一体に作製されうる。
【0040】
下部固定端112は、上述した変形部116よりも大きい直径で、変形部116の下端部に形成され、本発明による引張試験装置100の下部治具120(下端締結穴124)と脱着可能に結合する構成要素である。
【0041】
このような下部固定端112の外周面には、図2及び図3に示すように下端締結穴124の内周面に形成した雌ネジ山とネジ結合される雄ネジ山が形成され、下部固定端112の上端部には、トルクレンチやスパナなどの工具が挿入される締め付け調整穴112aが形成されうる。
【0042】
上記のような構造の下部固定端112により、下部治具120とのネジ結合力は、試験条件等に応じて外部から精密に調節することができ、本発明による引張試験装置100の作動中にも、試験片110をしっかりと固定することができる。
【0043】
上部固定端114は、上述した変形部116よりも大きい直径で、変形部116の上端部に、すなわち、変形部116を基準として上述した下部固定端112と対称である位置に形成され、本発明による引張試験装置100の上部治具130(上端締結穴134)と脱着可能に結合される構成要素である。
【0044】
このような上部固定端114の外周面にも、図3に示すように上端締結穴134の内周面に形成した雌ネジ山とネジ結合される雄ネジ山が形成され、上部固定端114の下端部には、トルクレンチやスパナなどの工具が挿入される締め付け調整穴114aが形成されうる。
【0045】
上記のような構造の上部固定端114により、上部治具130のネジ結合力は、試験条件等に応じて外部から精密に調節することができ、本発明による引張試験装置100の作動時に、試験片110をしっかりと上方に牽引することができる。
【0046】
中空Sは、試験片110の材料が使用されるガス環境と同じ条件で、ガスGと試験片110との間の高圧接触及び脆化挙動が行われるようにするために、試験片110の 内側に設置された空の空間であって、後述するように連結されたガス供給部140を介して多様なガスGを可変圧で充填することができる。
【0047】
本発明の実施例に係る中空Sは、図3に示すように、上述した上部固定端114から下部固定端112まで長手方向に沿って貫通形成し、上側に上部開口S2が形成され、下側に下部開口S1が形成されてもよい。
【0048】
ただし、このような中空Sは、図8に示すように、上方が塞がれた形態、すなわち、変形部116の内側から、長手方向に沿って下部固定端112まで貫通形成するようにして、下部開口S1のみが形成された、詰まった構造であってもよい。
【0049】
このような変形された試験片110の構造は、上部固定端114に対する試験片110の脱着結合の際、中空Sの密閉作業を簡略化して試験の簡便性と効率性を高める一方、ガスG漏出の危険性をより低減するためである。
【0050】
以上から見た本発明の実施例による試験片110は、侵食性の水素に対する直接輸送及び貯蔵の用途に適した、原油又はガスの輸送用のAPI(アメリカン石油協会)X70鋼管と同じ素材で製作することになる。
【0051】
ここで、試験片110は、具体的に通常の研究室での取り扱いが容易になるように、長さ33mm、変形部116の外径6.35mm、中空Sの内径2mmの小型規格で作製し、上部固定端114及び下部固定端112の外周面には、M12(外径12mm;ピッチ1.75mm)規格のネジ山(雄ネジ山)を備えるように形成することができる。
【0052】
下部治具120は、上述した試験片110の下部固定端112と着脱可能な結合をなし、上述した中空Sの下部開口S1を密閉し、試験片110を固定する構成要素として、図1及び図3に示すように、下端Oリング126および供給ライン122などを含むように構成することができる。
【0053】
ここで、下端締結穴124は、上述した下部固定端112を収容するように、下部治具120の上端面から凹状に形成され、試験片110を堅固に固定する構成要素であって、内周面に沿って形成された雌ネジ山は、上述した下部固定端112の雄ネジ山とネジ結合を形成することになる。
【0054】
下端Oリング126は、上述した中空Sの下部開口S1を二重に密閉させるために上述した下端締結穴124の下部に着脱可能に設置される構成要素であり、図1および図2に示すように、下部固定端112の下端面に接する第1の下部Oリング、および、下部固定端112の下端部外周面を囲む第2の下部Oリングを含む二重構造からなるのでありうる。
【0055】
ここで、第1下部Oリングは、ゴム又はシリコン等の弾性素材で作製されるリング型の構成要素であって、下端締結穴124の下面に形成した取付穴(リング状凹部)に挿入されて設置され、下部開口S1の外側の下端面と接触することになる。
【0056】
このような第1下部Oリングは、上述した下部固定端112のネジ締結の進行に応じて、下部開口S1の外側の下端面を加圧することにより、下部開口S1を外部と密閉させる作用を行うことになる。
【0057】
そして、第2下部Oリングは、ゴム又はシリコン等の弾性素材で作製されるリング型の構成要素であって、下端締結穴124の下部の内周面に沿って溝状に形成した取付穴(リング状凹部)に挿入されて設置され、下部固定端112の外周面と接することになる。
【0058】
このような第2下部Oリングは、上述した下部固定端112のネジ締結の進行に応じて、下部固定端112の外周面を加圧することにより、下部開口S1を、上述した第1下部Oリングと共に、重ねて密閉する作用を行うことになる。
【0059】
上述したような第1及び第2下部Oリングは、ガスG(温度及び圧力等)に対する試験条件により、Oリング自体の温度抵抗性、耐久性及び硬度等を考慮して、適宜に交換使用することにより、中空Sに充填されたガスGに対する強固な密閉力を形成することができる。
【0060】
供給ライン122は、下部固定端112のネジ締結の進行に応じて、下端Oリング126により密閉される下部開口S1と、外部からガスGを提供する貯蔵タンクとが互いに連通するように、下部治具120に貫通形成してなる管路の形状の構成要素である。
【0061】
このような供給ライン122は、図3等に示すように、下部治具120の本体に対するドリリング作業等により形成される第1管路122b及び第2管路122aを含んで形成される。
【0062】
ここで、第1管路122bは、外部の貯蔵タンク及び後述するガス供給部140等と連結される管路形状の構成要素であって、下部治具120の外周面から側方に貫通形成されうる。
【0063】
そして、第2管路122aは、上述したように、周辺が二重に密閉された下部開口S1と、上述した第1管路122bとが連通するようにするために形成する管路形状の構成要素であって、下端締結穴124の下部に貫通形成されうる。
【0064】
上部治具130は、上述した上部固定端114と脱着可能な結合をなし、中空Sの上部開口S2を密閉するとともに、直線駆動するアクチュエータ(図示せず)によって上下に作動して試験片110を引張る構成要素であって、図3等に示すように、上端締結穴134、上端Oリング136、締結突起132等を含んで構成されうる。
【0065】
ここで上端締結穴134は、上述した上部固定端114を収容するように、上部治具130の下端面から凹状に形成され、試験片110を上部治具130にしっかり固定する構成要素であって、内周面に沿って形成した雌ネジ山は、上述した上部固定端114の雄ネジ山とネジ結合を形成する。
【0066】
上端Oリング136は、下端Oリング126と全く同様であり、上述した中空Sの上部開口S2を二重に密閉するために、上述した上端締結穴134の上部に着脱可能に設置される構成要素であり、図1及び図2に示すように、第1上部Oリングと第2上部Oリングとを含む二重構造からなるのでありうる。
【0067】
ここで、第1上部Oリングは、ゴム又はシリコン等の弾性素材で作製するリング型の構成要素であって、上端締結穴134の上面に形成された取付穴(リング状凹部)に挿入されて設置され、上部開口S2の外周面と接するようになる。
【0068】
このような第1上部Oリングは、上述した上部固定端114のネジ締結の進行に応じて、上部開口S2の外側の上端面を加圧することにより、上部開口S2を外部から密閉する作用を行う。
【0069】
そして、第2上部Oリングは、ゴム又はシリコン等の弾性素材で作製するリング型の構成要素であって、上端締結穴134の上部内周面に形成した取付穴(リング状凹部)に挿入されて設置され、上部固定端114の外周面と接することになる。
【0070】
このような第2上部Oリングは、上述した上部固定端114のネジ締結の進行に応じて、上部固定端114の外周面を加圧することにより、上部開口S2を上述した第1上部Oリングと共に、重ねて密閉する作用を行うことになる。
【0071】
上述したような上端Oリング136も下部Oリングと同様に、ガスG(温度及び圧力等)に対する試験条件に応じて、Oリング自体の温度抵抗性、耐久性及び硬度等を考慮して適宜交換使用することにより、中空Sに充填されたガスGに対する堅固な密閉力を形成できるようになる。
【0072】
但し、図8に示すように上方が塞がれた形態、すなわち、変形部116の内側から、長手方向に沿って下部固定端112まで貫通形成され、下部開口S1のみが形成された、詰まった構造の中空Sの場合には、上部開口S2によるガスGの漏れの危険がないので、上述した上端Oリングは省略することができる。
【0073】
締結突起132は、上下に往復作動するように固定設置されたアクチュエータの作動端10に対して、上部治具130が容易に分離され、また結合させるために、上部治具130の上端小径部から径方向外側へと突出形成された構成要素である。
【0074】
このような締結突起132は、図2等に示すように、側方に開口が形成された係止穴が設けられたアクチュエータの作動端10に対して、回転しながらの着脱が可能なように噛み合わされて結合する突起構造、特には円盤状ないし短円柱状の大径部からなる。
【0075】
上述した側方向(横方向)の係止構造の締結突起132により、上部治具130に予めネジ締結した試験片110は、上部治具130が作動端10に、側方へと噛み合わされて結合する。その後、上部治具130と共に相対回転しながら下部治具120とのネジ結合を形成することができるので、研究者は、試験片110をより容易に装着及び脱着することができる。
【0076】
本発明においてアクチュエータは、後述するガス供給部140を作動制御する制御部(図示せず)により、上下方向に直線運動を行う商用化(商業化または市販)された装置であれば、どのような方式の動力装置でも構わない。
【0077】
一例としてアクチュエータは、強い加圧力でもって正確な直線制御が可能な油圧シリンダや、モータと連結されたスクリュー軸の回転に応じて直線駆動するようにネジ結合されたボールネジなどでありうる。
【0078】
このようなアクチュエータの作動端10には、上部治具130の上方向の移動に応じて、試験片110に印加される引張力をリアルタイムで測定するロードセル(図示せず)が備えられ、測定されたデータを制御部に送信することになる。
【0079】
本発明における制御部は、アクチュエータ、後述する流量弁142、圧力ゲージ144、温度センサ160及び熱伝達器等と電気的に接続され、これらの動作を制御し、生成されたデータを処理する構成要素であって、MCU(micro controller unit)、マイコン(microcomputer)、アルドゥイーノ(Arduino)、PLC(Programmable Logic Controller)等のような、情報演算とシーケンス制御がプログラム可能な情報処理ユニットとして実現されうる。
【0080】
ガス供給部140は、密閉された下部開口S1と連通する下部治具120の供給ライン122と連結され、種々の可変圧で所定のガスGを中空Sに充填する構成要素として、図2及び図3等に示すように、流量弁142及び圧力計144等を含んで構成することができる。
【0081】
流量弁142は、上述した第1管路122bの一方側に結合した状態で、外部の貯蔵タンクと連結されて第1管路122bに供給するガスGの量を調節する構成要素として、上述した制御部により開閉の程度を作動制御することができる。
【0082】
このような流量弁142と制御部により、中空Sの内部に充填されるガスGの量を多様に調節することができるようになる。
【0083】
圧力ゲージ144は、上述した流量弁142の反対側にある、第1管路122bの他方側に結合され、第1管路122bを介して中空Sに流入したガスGの圧力を測定する構成要素として、圧力計144によってリアルタイムで測定されたガスGの圧力に関するデータを制御部に送信することができる。
【0084】
一方、上述した構成を含む本発明の実施例による第1の形態は、常温の試験片110(ガス環境)ではなく、特定温度に加熱又は冷却した試験片110の脆化挙動に対する評価データを取得するために、図5および図6に示すように、断熱容器150、温度センサ160、熱伝達器などをさらに含む第2の形態に変形することができる。
【0085】
ここで、断熱容器150は、上部治具130及び下部治具120が内部に収容されるように設置され、内部の熱が外部に放出されるのを抑制するカプセル状の構成要素であって、高温及び低温の環境にて耐久性があり、外部への熱損失を防ぐことができる、セラミック、合成樹脂または複合素材などで作製することができる。
【0086】
このような断熱容器150は、上方に直線駆動する上部治具130に干渉することなく、試験片110、上部治具130及び下部治具120の全体を包み込む形態で、結合又は分離できる構造であれば十分であるので、その具体的な形状などは特に制限されない。
【0087】
温度センサ160は、断熱容器150内部の温度と試験片110の温度を測定するために、断熱容器150の内部にそれぞれ、一対をなすように備えられる構成要素であり、温度を、電圧や抵抗変化などの電気信号に変換する市販のセンサであり得る。
【0088】
このような温度センサ160と電気的に接続された制御部は、温度センサ160でもってリアルタイムで測定した温度データを受信し、受信した温度データに基づいて、後述する熱伝達器の動作を制御することになる。
【0089】
熱伝達器は、上部治具130及び下部治具120の外周面に沿って備えられ、試験片110を設定した温度に加熱又は冷却させる構成要素であって、内部に、低温冷媒Rが循環する冷却管170aや、制御電源からの印加に応じて加熱される熱線170bなどで構成することができる。
【0090】
ここで、試験片110と断熱容器150の内部を冷却するための冷却管170aは、圧縮機、凝縮器及び蒸発器等で構成された、商用化された冷却システムにおける蒸発器に対応する構成であってもよい。
【0091】
冷却管170aは、図5に示すように、断熱容器150の内部にて、下部治具120と上部治具130を包み込むコイルの形態で配置された後、制御部による作動制御により、外部から低温冷媒Rの提供を受け、断熱容器150の内部を、設定した温度に冷却することになる。
【0092】
電熱線170bは、図6に示すように、断熱容器150の内部にて、下部治具120と上部治具130を取り囲むパッドの形態で設置された後、制御部による作動制御により、制御電源を受けて断熱容器150の内部を、設定した温度に加熱することになる。
【0093】
以上で見たような本発明の実施例による、脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置100を用いて、一連の過程を遂行(低ひずみ速度引張試験(SSRT、Slow Strain?Rate Tensile Test))すると、常温、低温または高温のガス環境に対する試験片110の脆化挙動は、それぞれ図7aのグラフのような形態(評価データ)で確認することができる。
【0094】
本発明の実施例による定量評価用の引張試験装置100を用いた、一連の引張試験の過程は次の通りである。
【0095】
まず、分離された下部治具120及び上部治具130に、それぞれ試験片110をネジ締結して、下部開口S1及び上部開口S2を密閉する過程を行うことができる。
【0096】
このとき、下部治具120に対する試験片110のネジ締結により、下部開口S1に対する密閉が行われるようにした後、上部治具130を回転させて締結する過程が行われる。
【0097】
次に、ガス供給部140を介して中空Sの内部に、設定された圧力のガスGを充填する過程を行うことができる。この際、水素ガスの充填は、開放されるか防爆設備が整った空間で行う。
【0098】
次に、試験片110がネジ締結された下部治具120及び上部治具130の組立体を、通常の実験室に搬入して、アクチュエータの作動端10と、下端のベースフレーム20とに、それぞれ掛け止め固定されるように締結する過程を行うことができる。
【0099】
この際、設定した低温または高温のガス環境を具現するために、温度センサ160にて測定された温度に基づいて、熱伝達器の動作を制御する過程を選択的に行うことができる。
【0100】
次に、中空Sに、ガスGが設定された圧力で充填された状態で、試験片110が破断するまで上部治具130を上方に移動させる過程を行うことができる。
【0101】
最後に、上部治具130の上方移動に伴って試験片110に加えられた引張応力について、ロードセルを介して測定し、試験片110の引張ひずみを測定して、図7aに示す形態にグラフ化する過程を実行することができる。
【0102】
このように、本発明の実施例による定量評価用の引張試験装置100を通じて得られた、図7aのグラフ及び図7bの試験の完了後、試験片110の破断の様相及び破断面に対する観察(電子顕微鏡)を行うならば、以下の評価データの導出と効果が期待できる。
【0103】
まず、試験片110に対する引張応力-引張ひずみグラフ(図7a参照)と、試験完了後の試験片110の破断様相及び破断面についての観察(図7b参照)とを相互に結び付けるならば、定性的に耐水素脆化の度合いを確認することができ、試験温度に応じた試験片110材料の脆化による延性-脆性遷移挙動に対する区分が可能となる。
【0104】
第2に、本発明を用いた引張試験(SSRT)の前後の試験片110における破端部の断面積を測定して算出される試験片110の断面収縮率(reduction of area:RA)を、窒素ガス、アルゴン又はヘリウム等の不活性ガスと、水素等のような試験対象ガスとについてそれぞれ計算(RAH2、RAN2)した後、これらの比率である相対断面収縮率(reative reduction of area:RRA)を以下のように導き出すと、耐水素脆性材料を選別できる一つの指標として活用できるようになる。
【0105】
*RRA=RAH2/RAN2
(RAH2:水素ガスHの環境下で求めた断面収縮率、RAN2:不活性ガスNの環境下で求めた断面収縮率)
【0106】
以上、本発明の特定の実施例を説明し図示したが、本発明は記載した実施例に限定されるものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多様に修正及び変形できるということは、当業者には自明なことである。したがって、そのような修正例または変形例は、本発明の技術的思想または観点からみて個別のものとして理解されるべきではなく、本発明の特許請求範囲に属するとすべきである。
【符号の説明】
【0107】
10:アクチュエータの作動端、 20:ベースフレーム、
100:水素ガス環境下での脆化挙動を定量的に評価するための引張試験装置、
110:試験片、 112:下部固定端、
112a、114a:締め付け調節穴、 114:上部固定端、
116:変形部、 S:中空、 S1:下部開口、S2:上部開口、
120:下部治具、 122:供給ライン、
122a:第2管路、 122b:第1管路、 124:下端締結穴、
126:下端Oリング、 130:上部治具、 132:締結突起、
134:上部締結穴、 136:上部Oリング、
140:ガス供給部、 142:流量弁、 144:圧力計、
G:ガス、 150:断熱容器、 160:温度センサ、
170a:冷却管(熱伝達器)、 R:冷媒、
170b:電熱線(熱伝達器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8