IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国科学院動物研究所の特許一覧

<>
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図1
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図2
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図3
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図4
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図5
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図6
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図7
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図8
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図9
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図10
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図11
  • 特許-修飾された免疫細胞及びその使用 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】修飾された免疫細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240322BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240322BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240322BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240322BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240322BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240322BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240322BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20240322BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240322BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N5/078
C12N5/0783
C12N15/867 Z
C12N15/87 Z
A61K35/17
A61P35/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022567698
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2020074252
(87)【国際公開番号】W WO2021147121
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】202010062327.7
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520176566
【氏名又は名称】中国科学院動物研究所
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF ZOOLOGY,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】No.5, 1 Beichen West Road, Chaoyang District, Beijing 100101, China
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】趙同標
(72)【発明者】
【氏名】▲ちん▼利遠
(72)【発明者】
【氏名】朱穎▲じぇ▼
(72)【発明者】
【氏名】曹磊
(72)【発明者】
【氏名】曹佳▲に▼
(72)【発明者】
【氏名】李暁燕
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/094847(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/112626(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-5/28,15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾された免疫細胞であって、キメラ抗原受容体を発現するとともに、ケモカイン受容体
CCR6を過剰発現し、前記キメラ抗原受容体はEGFRを識別する配列を含み、前記修
飾は、前記キメラ抗原受容体及び前記ケモカイン受容体CCR6をコードする遺伝子配列
を前記免疫細胞に導入することを含み、前記修飾前の免疫細胞は、前記修飾された免疫細
胞と比較してケモカイン受容体CCR6を発現しないか、又は低発現する、ことを特徴と
する修飾された免疫細胞
【請求項2】
前記免疫細胞はT細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、及び他の腫瘍キラー
細胞である、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾された免疫細胞。
【請求項3】
前記T細胞はキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)、T細胞受容体T細胞(TCR-
T)、及び腫瘍浸潤T細胞(TIL)である、ことを特徴とする請求項2に記載の免疫細
胞。
【請求項4】
前記導入方式は、レンチウイルス、レトロウイルス、一般的なプラスミドベクター、エ
ピソームベクター、ナノ送達システム、エレクトロトランスダクション、トランスポゾン
、及び他の送達システムである、ことを特徴とする請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項5】
修飾されていない免疫細胞に比べて、前記免疫細胞は、少なくともa)~e)の性能の
1つを有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の免疫細胞。
a)サイトカイン分泌能力は影響を受けないこと、
b)腫瘍細胞に対する特異的殺傷能力は影響を受けないこと、
c)CCL20分泌固形腫瘍へのホーミング及び凝集の能力を強化させること、
d)CCL20固形腫瘍での浸潤を強化させること、及び
e)患者の生存時間を延ばすこと
【請求項6】
前記キメラ抗原受容体は、リーダー配列、EGFRを識別するscFv、ヒンジ領域及
び膜貫通ドメイン、細胞内共刺激ドメイン及び細胞内活性化シグナルCD3ζを含む、こ
とを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項7】
前記scFvは、モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクロー
ナル抗体、ヒト抗体、ナノ抗体及び合成抗体から選ばれる、ことを特徴とする請求項6に
記載の免疫細胞。
【請求項8】
前記キメラ抗原受容体は、リーダー配列、EGFRを識別するscFv、CD28又は
CD8ヒンジ領域及び膜貫通ドメイン、CD28又はCD137 (4-1BB)共刺激
ドメイン、及び細胞内活性化シグナルCD3ζを含む、ことを特徴とする請求項6に記載
の免疫細胞。
【請求項9】
前記キメラ抗原受容体におけるリーダー配列のアミノ酸配列はSEQ ID NO:6
で示され、EGFRを識別するscFvのアミノ酸配列はSEQ ID NO:7で示さ
れ、CD28ヒンジ領域及び膜貫通ドメインのアミノ酸配列はSEQ ID NO:8で
示され、共刺激ドメインCD28のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9で示され、細
胞内活性化シグナルCD3ζのアミノ酸配列はSEQ ID NO:10で示される、こ
とを特徴とする請求項8に記載の免疫細胞。
【請求項10】
前記キメラ抗原受容体におけるリーダー配列のヌクレオチド配列はSEQ ID NO
:1で示され、EGFRを識別するscFvのヌクレオチド配列はSEQ ID NO:
2で示され、CD28ヒンジ領域及び膜貫通ドメインのヌクレオチド配列はSEQ ID
NO:3で示され、共刺激ドメインCD28のヌクレオチド配列はSEQ ID NO
:4で示され、細胞内活性化シグナルCD3ζのヌクレオチド配列はSEQ ID NO
:5で示される、請求項9に記載の免疫細胞。
【請求項11】
腫瘍を治療する医薬品の製造における請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫細胞
の使用。
【請求項12】
前記腫瘍は固形腫瘍から選ばれ、前記固形腫瘍はCCL20を高発現させ、前記CCL
20高発現固形腫瘍は、子宮頸部扁平上皮癌、子宮頸腺癌、結腸癌、食道癌、多形性膠芽
腫、頭頸部扁平上皮癌、腎明細胞癌、肝細胞癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌、膵臓癌
、直腸癌、胃癌及び子宮内膜癌から選ばれる、ことを特徴とする請求項11に記載の使用
【請求項13】
キメラ抗原受容体を発現させる第1ベクターとCCR6を発現させる第2ベクターとか
ら構成されるか、又はキメラ抗原受容体とCCR6を共発現させるベクターを含み、前記
キメラ抗原受容体はEGFRを識別する配列を含む、ことを特徴とする遺伝子発現系。
【請求項14】
前記キメラ抗原受容体は、リーダー配列、EGFRを識別するscFv、ヒンジ領域及
び膜貫通ドメイン、細胞内共刺激ドメイン及び細胞内活性化シグナルCD3ζを含む、こ
とを特徴とする請求項13に記載の遺伝子発現系。
【請求項15】
前記scFvは、モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクロー
ナル抗体、ヒト抗体、ナノ抗体及び合成抗体から選ばれる、ことを特徴とする請求項14
に記載の遺伝子発現系。
【請求項16】
前記キメラ抗原受容体は、リーダー配列、EGFRを識別するscFv、CD28又は
CD8ヒンジ領域及び膜貫通ドメイン、CD28又はCD137 (4-1BB)共刺激
ドメイン、及び細胞内活性化シグナルCD3ζを含む、ことを特徴とする請求項14に記
載の遺伝子発現系。
【請求項17】
前記キメラ抗原受容体におけるリーダー配列のアミノ酸配列はSEQ ID NO:6
で示され、EGFRを識別するscFvのアミノ酸配列はSEQ ID NO:7で示さ
れ、CD28ヒンジ領域及び膜貫通ドメインのアミノ酸配列はSEQ ID NO:8で
示され、共刺激ドメインCD28のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9で示され、細
胞内活性化シグナルCD3ζのアミノ酸配列はSEQ ID NO:10で示される、こ
とを特徴とする請求項16に記載の遺伝子発現系。
【請求項18】
前記キメラ抗原受容体におけるリーダー配列のヌクレオチド配列はSEQ ID NO
:1で示され、EGFRを識別するscFvのヌクレオチド配列はSEQ ID NO:
2で示され、CD28ヒンジ領域及び膜貫通ドメインのヌクレオチド配列はSEQ ID
NO:3で示され、共刺激ドメインCD28のヌクレオチド配列はSEQ ID NO
:4で示され、細胞内活性化シグナルCD3ζのヌクレオチド配列はSEQ ID NO
:5で示される、請求項17に記載の遺伝子発現系。
【請求項19】
請求項13~18のいずれか1項に記載の遺伝子発現系を免疫細胞にトランスフェクシ
ョンすることを含み、
任意選択的に、細胞をインビトロで培養して増幅する、免疫細胞のインビトロ修飾方法
【請求項20】
前記免疫細胞はT細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、及び他の腫瘍キラー
細胞である、ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫細胞治療の分野に属する。具体的には、本発明は、遺伝子修飾された免疫
細胞により、免疫細胞の固形腫瘍内でのホーミング及び凝集を強化させ、さらに免疫細胞
例えばCAR-T細胞の固形腫瘍に対する治療効果を強化させる。
【背景技術】
【0002】
近年、腫瘍免疫療法は急速に発展し、特に養子性細胞療法(ACT)、即ち患者の体内
からT細胞、NK細胞などの免疫細胞を分離し、インビトロ修飾により増幅培養し、その
後患者の体内に戻して腫瘍治療を行う方法を指す。2013年、腫瘍の免疫療法はSci
ence雑誌により「10大ブレークスルー」のトップに選ばれた。
【0003】
CAR-TとTCR-Tは養子性細胞療法の重要な構成部分であり、特にCAR-T療
法は血液腫瘍の治療には顕著な成果を遂げており、高い寛解率を得て、典型的なCAR構
造は、細胞外に腫瘍抗原を識別するscFv、ヒンジ領域と膜貫通ドメイン、細胞内共刺
激シグナルと活性化ドメインの3つの部分から構成される。第1世代のCARは細胞内共
刺激シグナルを含まず、CAR-T細胞は殺傷活性が低く生存期間が短い。そのため、第
2世代のCARは共刺激シグナル、例えばCD28や4-1BBを追加し、異なる共刺激
シグナルを採用したCAR-T細胞の特性も同じではなく、CD28はCAR-T細胞の
殺傷活性を高め、4-1BBはCAR-T細胞の殺傷活性を高めると同時にCAR-T細
胞の生存時間を延長する。それ以降、2つの共刺激シグナル伝達ドメインを共に発現させ
る第3世代のCARが出現したが、その抗腫瘍効果は第2世代のCAR-Tよりも低かっ
た。したがって、現在、臨床的に応用されているのは主に第2世代のCAR-T細胞であ
る。
【0004】
CAR-T療法は血液腫瘍の治療には成果が出ているだけでなく、商業化も順調に進ん
でおり、米国FDAは2017年に2種類のCAR-T医薬品の発売を正式に承認した。
CAR-T細胞療法は血液腫瘍の治療には非常に有効であるが、固形腫瘍に対しては治療
効果が不十分であり、寛解率が低く、オフターゲットなどの毒性や副作用が発生しやすい
。CAR-T細胞が固形腫瘍で有効に凝集できないことはCAR-T細胞の治療効果に影
響を与える重要な要素の1つであり、すでにCAR-T細胞を局所的に注入する方法を採
用して腫瘍細胞でのCAR-T細胞の数を増加させて、その抗腫瘍活性を高める研究があ
るが、この注入方法の使用範囲は小さい。そのため、CAR-T細胞の固形腫瘍内でのホ
ーミングを誘導する新しい方法が依然として必要である。科学研究者はCAR-T細胞に
よる固形腫瘍治療について大量の研究を行い、様々な方法でCAR-T細胞を改良し、例
えば、特許CN110157682Aにおける人工標的修飾されたCAR-T細胞、その
製造方法及び使用は、代謝的に修飾されたCAR-T細胞、その製造方法及び使用に関し
、CAR-T細胞の表面にアジドなどを結合した糖類、アミノ酸などの生物活性分子を標
識することにより、生物活性分子が生体内でCAR-T細胞を腫瘍部位に効果的に標的誘
導することができるようにするが、体内のこの標的化と引き寄せはCAR-T細胞上の特
異的CAR分子が腫瘍部位で腫瘍抗原と結合し、それによってCAR-T細胞の特異的活
性化を刺激し、より効率的な腫瘍殺傷能力を達成する。特許CN110144325Aに
おける標的Tリンパ球、その製造方法及びその使用は、標的Tリンパ球を提供し、DR5
を標的とするキメラ抗原受容体CARDR5及び/又はc Metを標的とするキメラ抗
原受容体CAR c Metを含み、CAR DR5はDR5に特異的に標的とすること
ができ、CAR c Metはc Metに特異的に標的とすることができ、それによっ
て、患者の体内でのT細胞の増幅を促進し、腫瘍細胞を効率的かつ特異的に殺傷し、腫瘍
細胞の逃避の発生を効果的に抑制し、細胞の活性及び殺傷力をより良好に維持することが
できる。
【0005】
ケモカイン系は免疫細胞の遊走に重要な役割を果たしている。例えば、T細胞のリンパ
節へのホーミング、骨髄における造血幹細胞の滞留などの過程にはケモカイン系の関与が
必要である。ケモカインは免疫細胞の遊走に関与するだけでなく、腫瘍細胞の増殖、転移
などの過程にも関与する。腫瘍細胞はしばしばその増殖と転移を促進するために大量のケ
モカインを分泌する。ケモカインがT細胞の標的性を高めるという研究は比較的少なく、
現在公開されている文献は「Enhanced tumor trafficking of GD2 chimeric antigen rec
eptor T cells by expression of the chemokine receptor CCR2b、J Immunother、2010
”,“T lymphocytes coexpressing CCR4 and a chimeric antigen receptor targeting C
D30 have improved homing and antitumor activity in a Hodgkin tumor model,Blood、
2009”,“CXCR1- or CXCR2-modified CAR-T cells co-opt IL-8 for maximal antitumor
efficacy in solid tumors,Nat Commun,2019」があり、CAR-T細胞のCCR4、CC
R2b又はCXCR2の共発現はCCL17/CCL22、CCL2又はCXCL8を発
現させる腫瘍細胞への浸透に有利であり、しかし、上記の研究に適用する固形腫瘍の種類
は限定され、ケモカインファミリーと固形腫瘍の関係に対する系統的な研究が不足し、ま
た、腫瘍中でケモカインが過剰発現させるかどうかは臨床データのサポートが不足してい
る。また、サイトカインの多様性及び細胞シグナル伝達経路の複雑さに鑑みて、異なる腫
瘍における異なるケモカインの作用も同じではなく、理論分析と実際の研究結果の差がし
ばしば大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、固形腫瘍に対する殺傷活性が低いという修飾された免疫細胞例えばCAR-
T細胞の欠陥を解決するために、固形腫瘍での修飾された免疫細胞の凝集を強化させる、
遺伝子修飾された免疫細胞を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の技術的解決手段によって達成される。
【0008】
第1態様では、本発明は、キメラ抗原受容体CARとケモカイン受容体CCR6とを含
み、
さらに、免疫細胞はキメラ抗原受容体CARを発現させるとともに、ケモカイン受容体
CCR6を過剰発現させ、
免疫細胞はT細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、好ましくはT細胞であり

任意選択的に、前記ケモカイン受容体CCR6は過剰発現されており、
任意選択的に、標的遺伝子を免疫細胞に導入して発現させることにより、キメラ抗原受
容体CAR及びケモカイン受容体CCR6を得て、
任意選択的に、標的遺伝子を免疫細胞に導入する方式は、レンチウイルス、レトロウイ
ルス、アデノウイルス、一般的なプラスミドベクター、エピソームベクター、ナノ送達シ
ステム、エレクトロトランスダクション、トランスポゾン、及び標的遺伝子を免疫細胞に
送ることを実現できるほかの送達システムを含み、好ましくは、前記ウィルスはレンチウ
イルス、例えばFUW、CSII-EF-MCS又はpCDHなどの本分野における一般
的なレンチウイルスである、修飾された免疫細胞を提供する。
【0009】
好ましくは、前記ケモカイン系はCCL20-CCR6である。
【0010】
本発明では、ケモカイン受容体CCR6を過剰発現させたCAR-T細胞によるサイト
カイン分泌が影響を受けない。
【0011】
本発明では、ケモカイン受容体CCR6を過剰発現させたCAR-T細胞の腫瘍細胞に
対する特異的殺傷能力が影響を受けない。
【0012】
本発明では、ケモカイン受容体CCR6を過剰発現させたCAR-T細胞はCCL20
を分泌する腫瘍内へ明らかに遊走する。
【0013】
本発明では、前記CARはリーダー配列、抗原を識別するscFv、ヒンジ領域及び膜
貫通ドメイン、細胞内共刺激シグナル、細胞内活性化シグナルを含む。
【0014】
任意選択的に、リーダー配列はGM-CSF、CD3、CD4、CD8に由来する。
【0015】
任意選択的に、ヒンジ領域及び膜貫通領域はCD28、CD3、CD4、CD8、Ig
Gに由来する。
【0016】
好ましくは、細胞内共刺激シグナルはCD28、CD134、CD137(4-1BB
)、ICOS、NKG2Dに由来する。
【0017】
第2態様では、本発明は関連疾患を治療する医薬品における前記免疫細胞の使用を提供
し、
さらに、前記医薬品は細胞治療に関連する医薬品であり、
前記関連疾患は腫瘍、好ましくは固形腫瘍であり、
任意選択的に、前記固形腫瘍はCCL20を過剰発現させており、
好ましくは、子宮頸部扁平上皮癌と腺癌、結腸癌、食道癌、多形性膠芽腫、頭頸部扁平
上皮癌、腎明細胞癌、肝細胞癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌、膵臓癌、直腸癌、胃癌
、 及び子宮内膜癌であり、
より好ましくは、肺腺癌及び肺扁平上皮癌である。
【0018】
第3態様では、本発明は、CARを発現させるベクターとCCR6を発現させるベクタ
ーとからなり、好ましくは、前記ベクターはレンチウイルスベクターである、発現系を提
供する。
【0019】
第4態様では、本発明はまた、
CARのコード遺伝子とCCR6のコード遺伝子をEF-1αプロモータを用いたレン
チウイルス発現プラスミドにそれぞれ挿入し、CAR組換えプラスミド及びCCR6組換
えプラスミドを得ることと、
前記組換えプラスミドをそれぞれパッケージングし、第1レンチウイルスベクター及び
第2レンチウイルスベクターを得ることと、
2種類のレンチウイルスベクターを免疫細胞に順次又は同時にトランスフェクションし
て、分離することとを含む、前記免疫細胞の取得方法を提供する。
【0020】
CARのコード遺伝子とCCR6のコード遺伝子とを、2A配列又はIRES配列を介
してタンデム連結し、次に、タンデム連結した配列をレンチウイルス発現プラスミドに挿
入し、CAR-2A-CCR6とCCR6-2A-CAR又はCAR-IRES-CCR
6とCCR6-IRES-CARを得る。
【0021】
前記タンデム連結プラスミドをそれぞれパッケージングし、レンチウイルスベクターを
得て、
レンチウイルスベクターを免疫細胞にトランスフェクションして、分離する。
【0022】
第5態様では、本発明はまた、キメラ抗原受容体の構築及び発現を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、CARのコード遺伝子、CCR6のコード遺伝子、CAR-
2A-CCR6コード遺伝子、CCR6-2A-CAR、CAR-IRES-CCR及び
CCR6-IRES-CARコード遺伝子のコード遺伝子を人工的に合成し、配列の先端
にXbaI酵素消化部位、配列の末端にFseI酵素消化部位を付加する。
【0024】
いくつかの実施形態では、XbaI及びFseIを用いてレンチウイルス発現プラスミ
ド及び標的合成遺伝子を酵素消化する。
【0025】
いくつかの実施形態では、T4リガーゼで酵素消化されたレンチウイルス発現プラスミ
ド及び標的合成遺伝子を用いる。
【0026】
いくつかの実施形態では、T細胞の培養系には、100 UI/mLのIL-2又は1
0 ng/mLのIL7/IL15組み合わせが添加されているか、又はT細胞培養に有
利な他の因子が含まれている。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記CARはリーダー配列、抗原を識別するscFv、ヒン
ジ領域及び膜貫通ドメイン、細胞内共刺激シグナル、細胞内活性化シグナルを含む。
【0028】
任意選択的に、
前記CARのリーダー配列のヌクレオチド配列は配列SEQ ID NO:1に由来す
る。
【0029】
前記CARの腫瘍関連抗原EGFRを標的とするscFvヌクレオチド配列は配列SE
Q ID NO:2に由来する。
【0030】
前記CARのヒンジ領域及び膜貫通ドメインのヌクレオチド配列は配列SEQ ID
NO:3に由来する。
【0031】
前記CARの細胞内共刺激シグナルCD28のヌクレオチド配列は配列SEQ ID
NO:4に由来する。
【0032】
前記CARの細胞内活性化シグナルCD3ζのヌクレオチド配列は配列SEQ ID
NO:5に由来する。
【0033】
前記CARのリーダー配列のアミノ酸配列は配列SEQ ID NO:6に由来する。
【0034】
前記CARのEGFRを標的とするscFvアミノ酸配列は配列SEQ ID NO:
7に由来する。
【0035】
前記CARのヒンジ領域及び膜貫通ドメインのアミノ酸配列は配列SEQ ID NO
:8に由来する。
【0036】
前記CARの細胞内共刺激シグナルCD28のアミノ酸配列は配列SEQ ID NO
:9に由来する。
【0037】
前記CARの細胞内活性化シグナルCD3ζのアミノ酸配列は配列SEQ ID NO
:10に由来する。
【0038】
任意選択的に、細胞内の共刺激シグナルはCD28、CD134、CD137、ICO
Sに由来する。
【0039】
好ましくは、前記ケモカイン受容体CCR6のヌクレオチド配列は配列SEQ ID
NO:11に由来し、アミノ酸配列は配列SEQ ID NO:12に由来する。
【0040】
他の実施形態では、前記腫瘍関連抗原はまた、AFP、BMCA、CEA、CA-12
5、CA19-9、CA72-4、CD116、CD117、CD171、CD123、
CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD61、CD64、CD70
、CD71、CD78、CD96、CLL1、CD133、CD138、Her2、GD
2、gp36、GPC3、GnTV、EGFRvIII、EpCAM、PSA、PSMA
、PAP、NY-ESO-1、LAGA-1a、cMET、P53、Prostein、
PCTA-1、MAGE、ROR1、FAP、NKG2D、EMA、ETA、GFAP、
MSA、MART-1、NSE、TAG-72、IL13Rα2、NKR-2、ROR1
、VEGFR2、VEGFR、CLD18、EphA2、alpha-folateR、
CAIX、MG7、LMP1、PD-L1、MUC1、メソテリン、腺管上皮ムチン、ス
フィンゴ糖脂質、腫瘍間質抗原、内皮増殖因子、カルレティキュリン、チロシナーゼ、胎
盤アルカリホスファターゼ、チログロブリン、甲状腺転写因子1、異常なrasタンパク
質、TPSA、FPSA、EBウィルス抗原、EBNA、ヒトHPV抗原E6及びE7、
テロメラーゼ、HBV、gp100、MAGEA3、MAGEA4、フィブロネクチンの
エクストラドメインA(EDA)及びエクストラドメインB(EDB)、ELF2M、好
中球タンパク質エラスターゼ、インスリン成長因子(IGF1)-1、IGF-II、及
びIGFI受容体から選ばれる。
【発明の効果】
【0041】
従来技術に比べて、本発明で得られる有益な効果は、主として以下の点を含むが、これ
らに限定されるものではない。
【0042】
本発明では、ケモカインCCL20と固形腫瘍との関係を系統的に比較し、肺癌の臨床
例及びヒト肺癌細胞系を用いて検証を行う。
【0043】
本発明の修飾されたCAR-T細胞は、CAR-T細胞の固形腫瘍での凝集を明らかに
促進し、固形腫瘍に効果的に接触できないというCAR-T細胞の欠点を解決し、さらに
、固形腫瘍へのCAR-T細胞の浸潤を促進し、CAR-T細胞の抗腫瘍活性をさらに向
上させ、CAR-T細胞治療技術を固形腫瘍の治療に適用することを可能とし、固形腫瘍
に対するCAR-Tの治療効果が悪いという従来技術の技術的欠陥を解決する。
【0044】
本発明の修飾されたCCR6+CAR-T細胞は各種の固形腫瘍に適用でき、より広い
適用性があり、二重プラスミド系によりCCR6と異なる抗原を標的とするCARとの組
み合わせが容易になり、CCR6+CAR-Tの適用範囲が効果的に広がる。
【0045】
本発明の修飾されたCCR6+CAR-T細胞が適用され得る固形腫瘍は、悪性度や危
害性の高いさまざまな腫瘍を含み、肺癌、肝癌、結腸癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌、膵臓癌
、乳癌、前立腺癌などの主要な臓器の腫瘍を含む。
【0046】
本発明の修飾されたCCR6+CAR-T細胞は腫瘍の腫瘍病変を消滅できるだけでな
く、ケモカイン系によって殺傷されたCCL20高発現腫瘍転移病変を追跡することもで
きる。
【0047】
本発明の修飾されたCCR6+CAR-T細胞のサイトカイン分泌能及び腫瘍細胞に対
する特異的殺傷能は影響を受けないが、CCL20分泌固形腫瘍へのホーミング及び凝集
の能力を強化させ、患者の生存時間を延ばす。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】バイオインフォマティクス分析TCGAデータベースにおける腫瘍組織及び癌周辺の正常組織でのCCL20のmRNA発現レベルであり、CCL20は複数の固形腫瘍の腫瘍組織で高発現されている。
図2】肺癌患者の腫瘍組織及び癌周辺の正常組織のCCL20の分泌レベルのELISA検出であり、CCL20はほとんどの肺癌患者の腫瘍組織で高発現されている。
図3】ヒト肺癌細胞系のCCL20分泌レベルのELISA検出であり、正常なヒト肺上皮細胞BEAS-2BはCCL20をほぼ分泌しておらず、H23、A549及びCCL20過剰発現細胞系A549/CCL20は高レベルでCCL20を分泌している。
図4】CCL20に対応するケモカイン受容体CCR6の肺癌患者のT細胞(休止状態及び活性化状態)、特にキラー細胞CD8 T細胞での発現レベルが低い。
図5】CCR6及びEGFRCARレンチウイルス粒子でT細胞を感染し、フローサイトメトリーによってその感染効率を分析し、CCR6+EGFRCARに同時感染したT細胞の割合が23%である。
図6】CCR6の過剰発現はCAR-T細胞IL-2及びIFN-γなどのサイトカイン分泌に影響を与えない。
図7】CCR6の過剰発現はCAR-T細胞のインビトロで共培養された標的腫瘍細胞への特異的殺傷効果に影響を与えない。
図8】CCR6を過剰発現させたJurkat T細胞はCCL20を含有する腫瘍細胞培地へ明らかに遊走している。
図9】CCR6+CARを過剰発現させたJurkat T細胞は明らかに腫瘍細胞(黄色丸)に凝集する。
図10】同じ注入量では、従来のCAR-T細胞に比べて、CCR6+CAR T細胞はより優れた抗腫瘍効果を有し、担癌マウスの腫瘍の大きさが明らかに小さくなる。
図11】CCR6+CAR T注入治療を受けたマウスの腫瘍では、より多くの腫瘍浸潤T細胞が検出され、CCR6はより多くのCAR-T細胞が腫瘍細胞に凝集して腫瘍の内部に入ることを促進することを示す。
図12】従来のCAR-T注入治療に比べて、CCR6+CAR T注入治療は担癌マウスの生存時間を明らかに延ばす。
【発明を実施するための形態】
【0049】
当業者であれば、本明細書の内容に基づいてプロセスパラメータを適切に改良すること
ができる。なお、全ての類似の置換や変化は当業者にとって明らかなことであり、本発明
に含まれるとみなす。本発明の製品及び方法は好適な実施例によって説明されており、当
業者は明らかに、本発明の内容、主旨及び範囲を逸脱することなく本明細素に記載の製品
及び方法について変化や適切な変更、組み合わせを行って、本発明の技術を実現、適用す
ることができる。本発明をさらに理解するために、以下、実施例を参照して本発明につい
て詳細に説明する。
【0050】
実施例1
固形腫瘍中の高発現ケモカインのバイオインフォマティクススクーリング
癌ゲノムアトラス(TCGA:The Cancer Genome Altas)は
米国NCIにより開始され、高スループットシーケンシング技術によって癌の分子機構へ
の理解を深めることを目的とする。TCGAは世界で最も有名な癌データベースであり、
33種類の癌のタイプ、11000個を超える臨床サンプルを含む。GEPIAウェブサ
イト分析ツールを通じてTCGA中のケモカインCCL20の各種の腫瘍中の発現レベル
をスクーリングし、図1に示すように、CCL20は、子宮頸部扁平上皮癌や腺癌、結腸
癌、食道癌、多形性膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、腎明細胞癌、肝細胞癌、肺腺癌、肺扁平
上皮癌、卵巣癌、膵臓癌、直腸癌、胃癌、子宮内膜癌、子宮肉腫において過剰発現レベル
である。
【0051】
肺癌患者の腫瘍組織及び癌周辺の組織を採取し、予冷したPBSを用いて腫瘍組織をリ
ンスして重量を秤り、腫瘍組織を細断化し、肺癌組織:PBS=0.1 g:10 mL
の割合で氷にて十分に粉砕し、5000gを4℃で10min遠心分離した後、上清を個
包装して使用に備え、ELISAキットの取扱書に従って後続のCCL20分泌レベルの
検出を行い、図2に示すように、CCL20はほとんどの患者の腫瘍組織において過剰発
現している。次に、ヒト肺癌細胞系のCCL20分泌レベルをさらに検出した。4×10
の密度で腫瘍細胞を培養皿に接種し、24h後培地上清を採取し、取扱書に従ってCC
L20の分泌レベルを検出し、図3に示すように、CCL20は肺癌細胞系A549、H
23及びCCL20過剰発現細胞系A549/CCL20での分泌レベルが高い。
【0052】
また、フローサイトメトリーによって、CCL20に対応する受容体CCR6のT細胞
での発現状況を検出し、リンパ球分離液から肺癌患者末梢血PBMCを分離、富化し、休
止T細胞及びCD3/CD28 beads活性化させたT細胞を採取し、次に、CD4
、CD8及びCCR6フロー抗体を加えて4℃、遮光下で20min染色し、PBSで1
回洗浄した後、フローサイトメトリーチューブに移し、BD社のAriaフローサイトメ
ーターによって検出した。図4に示すように、CCR6は、CD4 T細胞及びCD8
T細胞のいずれにおいても、特にCD8 T細胞において低発現である。したがって、T
細胞でCCR6を過剰発現させることによって、T細胞の固形腫瘍でのホーミング及び凝
集を強化させ、殺傷効果を向上させるか否かについて試験を行った。
【0053】
実施例2
発現系の構築
発現系はCARを発現させるベクターとCCR6を発現させるベクターとから構成され
、CARはリーダー配列、抗原を識別するscFv、ヒンジ領域及び膜貫通ドメイン、細
胞内共刺激シグナル、細胞内活性化シグナルCD3ζをこの順で含み、ベクターはレンチ
ウイルスベクターFUW(Chimeric antigen receptor T (CAR-T) cells expanded with
IL-7/IL-15 mediate superior antitumor effects,Protein&Cell,June 2019を参照)であ
る。
【0054】
CARのコード遺伝子、CCR6のコード遺伝子を人工的に合成し、配列の先端にXb
aI酵素消化部位、配列の末端にFseI酵素消化部位を追加し、クローンプラスミドに
連結し、XbaI及びFseIを用いてレンチウイルス発現プラスミド及び標的遺伝子を
含むクローンプラスミドを酵素消化し、次に、アガロースゲル電気泳動を行い、ゲルを切
断して線形化レンチウイルス発現プラスミド及び標的遺伝子断片を回収し、T4リガーゼ
を用いて、ゲルを切断して回収したレンチウイルス発現プラスミドと標的遺伝子を連結し
て、DH5α菌株に形質転換し、アンピシリン耐性LB固体平板に塗布して一晩培養し、
菌板上の単一クローンコロニーを選択して、アンピシリン耐性LB液体培地に接種して夜
12~14時間培養し、次に、プラスミドを少量で抽出して酵素消化の検証を行った結果
、正しく連結されたCAR組換えプラスミド及びCCR6組換えプラスミドをそれぞれ得
た。
【0055】
CAR組換えプラスミド及びCCR6組換えプラスミドについてエンドトキシンフリー
のバルク抽出を行い、psPAX2及びpMD2.Gウィルスパッケージングプラスミド
とともに10:9:6の割合でリン酸カルシウムによりウィルスパッケージング細胞29
3Tにそれぞれトランスフェクションし、48h後、ウィルス粒子を含有する培地上清を
収集し、0.45μmのフィルタで培地上清をろ過して超遠心管に移し、低温超遠心分離
(20000rpm、2h、4℃)によってウィルス粒子を濃縮させ、第1レンチウイル
スベクター及び第2レンチウイルスベクターを得て、次に、2種類のレンチウイルスベク
ターを免疫細胞に同時トランスフェクションした。
【0056】
前記CARのリーダー配列のヌクレオチド配列は配列SEQ ID NO:1に由来す
る。
【0057】
前記CARの腫瘍関連抗原EGFRを標的とするscFvヌクレオチド配列は配列SE
Q ID NO:2に由来する。
【0058】
前記CARのヒンジ領域及び膜貫通ドメインのヌクレオチド配列は配列SEQ ID
NO:3に由来する。
【0059】
前記CARの細胞内共刺激シグナルCD28のヌクレオチド配列は配列SEQ ID
NO:4に由来する。
【0060】
前記CARの細胞内活性化シグナルCD3ζのヌクレオチド配列は配列SEQ ID
NO:5に由来する。
【0061】
前記CARのリーダー配列のアミノ酸配列は配列SEQ ID NO:6に由来する。
【0062】
前記CARのEGFRを標的とするscFvアミノ酸配列は配列SEQ ID NO:
7に由来する。
【0063】
前記CARのヒンジ領域及び膜貫通ドメインのアミノ酸配列は配列SEQ ID NO
:8に由来する。
【0064】
前記CARの細胞内共刺激シグナルCD28のアミノ酸配列は配列SEQ ID NO
:9に由来する。
【0065】
前記CARの細胞内活性化シグナルCD3ζのアミノ酸配列は配列SEQ ID NO
:10に由来する。
【0066】
前記CCR6のヌクレオチド配列は配列SEQ ID NO:11に由来し、アミノ酸
配列は配列SEQ ID NO:12から選ばれる。
【0067】
実施例3
健全者の末梢血T細胞の分離培養及び感染
健全者の末梢血を採取し、密度勾配遠心分離の方法で分離して単一の核細胞を得た後、
ミルテニーバイオテク社製のT細胞富化キットを用いてT細胞の富化を行い、Lonza
のX-VIVO 15培地に接種して100 UI/mL IL-2を添加し、次に、取
扱書に従ってサーモフィッシャー社製のCD3/CD28 Dynabeadsを加えて
T細胞の活性化増幅を行った。
【0068】
T細胞を36h活性化させた後、肺腺癌のターゲットEGFR及びCCL20-CCR
6システムを例として、感染多重度が10となる割合でEGFRのCAR及びケモカイン
受容体CCR6を標的とするレンチウイルス粒子を加えて感染した。1週間後、フローサ
イトメーターによってT細胞の感染効率を検出し、図5に示すように、T細胞はCAR及
びCCR6の感染に成功し、そして、CAR及びCCR6の両方が陽性であるT細胞の割
合は23%に達する。
【0069】
実施例4
CCR6の過剰発現はCAR-T細胞の因子分泌や細胞殺傷能力に影響を与えなかった
【0070】
各群の2×10個のT細胞及び2×10個の腫瘍細胞を24h共同インキュベーシ
ョンし、次に、上清を遠心収集した後、サーモフィッシャー社製のIL-2及びIFN-
gama ELISAキットの取扱者に従って後の操作を行った。図6に示すように、C
CR6の過剰発現はCAR-T細胞のサイトカイン分泌能力に影響を与えなかった。次に
、ルシフェラーゼに基づいた細胞殺傷アッセイを採用している。まず、それぞれGFP-
lucウィルス粒子を用いて標的腫瘍細胞を感染し、H1975/luc、H23/lu
c、A549/luc、及びA549-CCL20/lucを得た。その後、各群のT細
胞と腫瘍細胞とをターゲット細胞に対するエフェクター細胞の比率10:1で24h共同
インキュベーションし、次に、フルオレセイン基質を加えてフルオレセイン値を測定し、
細胞の殺傷を算出した。T細胞を加えていない腫瘍細胞ウェルを参照として、参照ウェル
と比較し、低下した蛍光値の割合は殺傷効率であり、その公式は、殺傷百分率=(参照ウ
ェルの蛍光値-標的ウェルの蛍光値)÷参照ウェル×100%であった。図7に示すよう
に、CCR6の過剰発現はCAR-T細胞の殺傷機能に影響を与えなかった。
【0071】
実施例5
CCR6の過剰発現によるJurkat T細胞のCCL20分泌腫瘍細胞への遊走の
促進
ケモカイン系がCAR-T細胞の腫瘍への凝集をガイドする実現可能性を確認するため
に、まず、Jurkat T細胞系においてCCR6及びEGFRCARを過剰発現させ
、次に、各群の細胞をtranswellチャンバーに接種し、図8に示すように、CC
R6を過剰発現させたJurkat細胞はCCL20を含有する腫瘍培地上清へ明らかに
遊走した。次に、1×10個のA549/CCL20細胞をマウスの背中の皮下に接種
し、10日間後、CCR6及びCARウィルスに感染したJurkat/luc細胞を尾
静脈注入し、次に、24h、48h及び120hに皮下腫瘍での蛍光強度を検出した。図
9に示すように、EGFR CAR Jurkat細胞に比べて、EGFR CAR+C
CR6 Jurkat細胞は明らかに皮下腫瘍で凝集している。
【0072】
実施例6
CCR6を過剰発現させたCAR T細胞はより効果的に腫瘍細胞を殺傷し、担癌マウ
スの生存時間を延ばした。
【0073】
ケモカイン受容体を添加したCAR-T細胞の体内抗腫瘍活性をさらに確認するために
、2×10個のH23/luc細胞をマウスの背中の皮下に接種し、7日間後、勾配用
量(1×10、3×10、1×10)のCAR T及びCCR6+CAR T細胞
を尾静脈注入し、次に、小動物イメージャーによってフルオレセイン強度を検出すること
で、腫瘍細胞のサイズを検出した。その結果、同じ注入量の条件下で、CCR6+CAR
T治療群は、従来のCAR-T群よりも優れた治療効果を有し(図10)、そして、C
CR6はCAR-T細胞の腫瘍内部への浸潤を促進し(図11)、より効果的な抗腫瘍効
果を発揮し、また、担癌マウスの生存時間を延ばした(図12)。
【0074】
以上は本発明の最適な特定の実施例を例示的に説明した。明らかに、本発明は以上の実
施例に限定されるものではなく、さまざまな変形が可能である。当業者が本発明の開示内
容から直接導出又は想到することができる全ての変形は、本発明の特許範囲内であるとみ
なすべきである。
[配列表]

<110> 中国科学院動物研究所

<120> 修飾された免疫細胞及びその使用

<170> PatentIn version

<210> 1
<211> 66
<212> DNA
<213> 人工配列
<400> 1
1 atgcttctcc tggtgacaag ccttctgctc tgtgagttac cacacccagc attcctcctg
61 atccca

<210> 2
<211> 1362
<212> DNA
<213> 人工配列
<400> 2
1 gatattctgc tgacccagag cccggtgatt ctgagcgtga gcccgggcga acgcgtgagc
61 tttagctgcc gcgcgagcca gagcattggc accaacattc attggtatca gcagcgcacc
121 aacggcagcc cgcgcctgct gattaaatat gcgagcgaaa gcattagcgg cattccgagc
181 cgctttagcg gcagcggcag cggcaccgat tttaccctga gcattaacag cgtggaaagc
241 gaagatattg cggattatta ttgccagcag aacaacaact ggccgaccac ctttggcgcg
301 ggcaccaaac tggaactgaa acgcaccgtg gcggcgccga gcgtgtttat ttttccgccg
361 agcgatgaac agctgaaaag cggcaccgcg agcgtggtgt gcctgctgaa caacttttat
421 ccgcgcgaag cgaaagtgca gtggaaagtg gataacgcgc tgcagagcgg caacagccag
481 gaaagcgtga ccgaacagga tagcaaagat agcacctata gcctgagcag caccctgacc
541 ctgagcaaag cggattatga aaaacataaa gtgtatgcgt gcgaagtgac ccatcagggc
601 ctgagcagcc cggtgaccaa aagctttaac cgcggcgcgg gctccacctc tggatccggc
661 aagcccggat ctggcgaggg atccaccaag ggccaggtgc agctgaaaca gagcggcccg
721 ggcctggtgc agccgagcca gagcctgagc attacctgca ccgtgagcgg ctttagcctg
781 accaactatg gcgtgcattg ggtgcgccag agcccgggca aaggcctgga atggctgggc
841 gtgatttgga gcggcggcaa caccgattat aacaccccgt ttaccagccg cctgagcatt
901 aacaaagata acagcaaaag ccaggtgttt tttaaaatga acagcctgca gagcaacgat
961 accgcgattt attattgcgc gcgcgcgctg acctattatg attatgaatt tgcgtattgg
1021 ggccagggca ccctggtgac cgtgagcgcg gcgagcacca aaggcccgag cgtgtttccg
1081 ctggcgccga gcagcaaaag caccagcggc ggcaccgcgg cgctgggctg cctggtgaaa
1141 gattattttc cggaaccggt gaccgtgagc tggaacagcg gcgcgctgac cagcggcgtg
1201 catacctttc cggcggtgct gcagagcagc ggcctgtata gcctgagcag cgtggtgacc
1261 gtgccgagca gcagcctggg cacccagacc tatatttgca acgtgaacca taaaccgagc
1321 aacaccaaag tggataaacg cgtggaaccg aaaagcgcgg cc

<210> 3
<211> 204
<212> DNA
<213> 人工配列
<400> 3
1 gcaattgaag ttatgtatcc tcctccttac ctagacaatg agaagagcaa tggaaccatt
61 atccatgtga aagggaaaca cctttgtcca agtcccctat ttcccggacc ttctaagccc
121 ttttgggtgc tggtggtggt tgggggagtc ctggcttgct atagcttgct agtaacagtg
181 gcctttatta ttttctgggt gagg

<210> 4
<211> 120
<212> DNA
<213> 人工配列
<400> 4
1 agtaagagga gcaggctcct gcacagtgac tacatgaaca tgactccccg ccgccccggg
61 cccacccgca agcattacca gccctatgcc ccaccacgcg acttcgcagc ctatcgctcc

<210> 5
<211> 339
<212> DNA
<213> 人工配列
<400> 5
1 agagtgaagt tcagcaggag cgcagacgcc cccgcgtacc agcagggcca gaaccagctc
61 tataacgagc tcaatctagg acgaagagag gagtacgatg ttttggacaa gagacgtggc
121 cgggaccctg agatgggggg aaagccgaga aggaagaacc ctcaggaagg cctgtacaat
181 gaactgcaga aagataagat ggcggaggcc tacagtgaga ttgggatgaa aggcgagcgc
241 cggaggggca aggggcacga tggcctttac cagggtctca gtacagccac caaggacacc
301 tacgacgccc ttcacatgca ggccctgccc cctcgctaa

<210> 6
<211> 22
<212> PRT
<213> 人工配列
<400> 6
1 mlllvtslll celphpafll ip

<210> 7
<211> 460
<212> PRT
<213> 人工配列
<400> 7
1 illtqspvil svspgervsf scrasqsigt nihwyqqrtn gsprllikya sesisgipsr
61 fsgsgsgtd ftlsinsves ediadyycqq nnnwpttfga gtklelkrtv aapsvfifpp
121 sdeqlksgt asvvcllnnf ypreakvqwk vdnalqsgns qesvteqdsk dstyslsstl
181 tlskadyek hkvyacevth qglsspvtks fnrgagstsg sgkpgsgegs tkgqvqlkqs
241 gpglvqpsq slsitctvsg fsltnygvhw vrqspgkgle wlgviwsggn tdyntpftsr
301 lsinkdnsk sqvffkmnsl qsndtaiyyc araltyydye faywgqgtlv tvsaastkgp
361 svfplapss kstsggtaal gclvkdyfpe pvtvswnsga ltsgvhtfpa vlqssglysl
421 ssvvtvpss slgtqtyicn vnhkpsntkv dkrvepksaa

<210> 8
<211> 68
<212> PRT
<213> 人工配列
<400> 8
1 aievmypppy ldneksngti ihvkgkhlcp splfpgpskp fwvlvvvggv lacysllvtv
61 afiifwvr

<210> 9
<211> 40
<212> PRT
<213> 人工配列
<400> 9
1 skrsrllhsd ymnmtprrpg ptrkhyqpya pprdfaayrs

<210> 10
<211> 113
<212> PRT
<213> 人工配列
<400> 10
1 rvkfsrsada payqqgqnql ynelnlgrre eydvldkrrg rdpemggkpr rknpqeglyn
61 elqkdkmae ayseigmkge rrrgkghdgl yqglstatkd tydalhmqal ppr

<210> 11
<211> 1125
<212> DNA
<213> 人工配列
<400> 11
1 atgagcgggg aatcaatgaa tttcagcgat gttttcgact ccagtgaaga ttattttgtg
61 tcagtcaata cttcatatta ctcagttgat tctgagatgt tactgtgctc cttgcaggag
121 gtcaggcagt tctccaggct atttgtaccg attgcctact ccttgatctg tgtctttggc
181 ctcctgggga atattctggt ggtgatcacc tttgcttttt ataagaaggc caggtctatg
241 acagacgtct atctcttgaa catggccatt gcagacatcc tctttgttct tactctccca
301 ttctgggcag tgagtcatgc caccggtgcg tgggttttca gcaatgccac gtgcaagttg
361 ctaaaaggca tctatgccat caactttaac tgcgggatgc tgctcctgac ttgcattagc
421 atggaccggt acatcgccat tgtacaggcg actaagtcat tccggctccg atccagaaca
481 ctaccgcgca gcaaaatcat ctgccttgtt gtgtgggggc tgtcagtcat catctccagc
541 tcaacttttg tcttcaacca aaaatacaac acccaaggca gcgatgtctg tgaacccaag
601 taccagactg tctcggagcc catcaggtgg aagctgctga tgttggggct tgagctactc
661 tttggtttct ttatcccttt gatgttcatg atattttgtt acacgttcat tgtcaaaacc
721 ttggtgcaag ctcagaattc taaaaggcac aaagccatcc gtgtaatcat agctgtggtg
781 cttgtgtttc tggcttgtca gattcctcat aacatggtcc tgcttgtgac ggctgcaaat
841 ttgggtaaaa tgaaccgatc ctgccagagc gaaaagctaa ttggctatac gaaaactgtc
901 acagaagtcc tggctttcct gcactgctgc ctgaaccctg tgctctacgc ttttattggg
961 cagaagttca gaaactactt tctgaagatc ttgaaggacc tgtggtgtgt gagaaggaag
1021 tacaagtcct caggcttctc ctgtgccggg aggtactcag aaaacatttc tcggcagacc
1081 agtgagaccg cagataacga caatgcgtcg tccttcacta tgtga

<210> 12
<211> 374
<212> PRT
<213> 人工配列
<400> 12
1 msgesmnfsd vfdssedyfv svntsyysvd semllcslqe vrqfsrlfvp iayslicvfg
61 llgnilvvit fafykkarsm tdvyllnmai adilfvltlp fwavshatga wvfsnatckl
121 lkgiyainfn cgmllltcis mdryiaivqa tksfrlrsrt lprskiiclv vwglsviiss
181 stfvfnqkyn tqgsdvcepk yqtvsepirw kllmlglell fgffiplmfm ifcytfivkt
241 lvqaqnskrh kairviiavv lvflacqiph nmvllvtaan lgkmnrscqs ekligytktv
301 tevlaflhcc lnpvlyafig qkfrnyflki lkdlwcvrrk ykssgfscag rysenisrqt
361 setadndnas sftm
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
0007457899000001.xml