(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/387 20060101AFI20240322BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240322BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H04N1/387
H04N1/00
G03G21/14
(21)【出願番号】P 2020053462
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】松井 直樹
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-170677(JP,A)
【文献】特開2015-019316(JP,A)
【文献】特開2019-086845(JP,A)
【文献】特開2019-161440(JP,A)
【文献】特開2015-060448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/38 - 1/393
H04N 1/00
G06V 30/14 -30/168
30/224
30/40 -30/416
G03G 15/00
15/36
21/00
21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読取装置のプラテングラス上に載置された1または複数の原稿をスキャンして得られた読取画像内の1つの原稿画像を抽出する原稿画像抽出部と、
前記原稿が、隙間なく配列されている複数の名刺である場合において、前記原稿画像内の文字列オブジェクトの分布および文字サイズの分布の少なくとも一方に基づいて、前記原稿画像を、複数の名刺画像が隙間なく配列されている名刺配列画像として検出する名刺配列画像検出部と、
検出された前記名刺配列画像を前記複数の名刺画像に分離する名刺画像分離部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある画像処理装置は、プラテンガラス上に整列させずに載置された複数の原稿がまとめてスキャンされて得られた1つの読取画像から各原稿画像を抽出し、抽出した原稿画像を整列させて1つの画像としてプリントしている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の名刺が隙間なくプラテンガラス上に載置された状態でスキャンされて得られた1つの読取画像の場合、読取画像が1つの原稿(例えば、はがき)の原稿画像であると誤認識され、複数の名刺のための所定の処理(画像処理など)が適切に行われない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、複数の名刺が隙間なくプラテンガラス上に載置されてスキャンされて得られた1つの読取画像の場合でも、読取画像に複数の原稿画像(名刺画像)が含まれていることを正確に判定する画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像処理装置は、画像読取装置のプラテングラス上に載置された1または複数の原稿をスキャンして得られた読取画像内の1つの原稿画像を抽出する原稿画像抽出部と、前記原稿が、隙間なく配列されている複数の名刺である場合において、前記原稿画像内の文字列オブジェクトの分布および文字サイズの分布の少なくとも一方に基づいて、前記原稿画像を、複数の名刺画像が隙間なく配列されている名刺配列画像として検出する名刺配列画像検出部と、検出された前記名刺配列画像を前記複数の名刺画像に分離する名刺画像分離部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の名刺が隙間なくプラテンガラス上に載置されてスキャンされて得られた1つの読取画像の場合でも、読取画像に複数の原稿画像(名刺画像)が含まれていることを正確に判定する画像処理装置が得られる。
【0008】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置を含む画像形成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1における画像読取装置12のプラテンガラス12a上に載置された複数の名刺111~114の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す原稿(複数の名刺111~114)に対応する原稿画像(名刺配列画像)を含む読取画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す原稿画像に対応する文字サイズの分布の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1における画像処理装置14の動作について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置を含む画像形成装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示す画像形成装置1は、複写機であるが、スキャナー、複合機などでもよい。
【0012】
この画像形成装置1は、プリント装置11と、画像読取装置12と、記憶装置13と、画像処理装置14と、表示装置15と、入力装置16とを備える。
【0013】
プリント装置11は、画像処理装置14による各種画像処理後の画像データに基づいて原稿画像を、例えばCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)色のトナーを使用して電子写真プロセスでプリントする内部装置である。
【0014】
また、画像読取装置12は、プラテンガラスを備え、プラテンガラス上に載置された1または複数の原稿を光学的に読み取り、所定サイズの読取画像の画像データを例えばRGBデータとして生成する内部装置である。
【0015】
また、記憶装置13は、フラッシュメモリーなどの、書き換え可能な不揮発性の記憶装置であり、各種データやプログラムを記憶している。
【0016】
また、画像処理装置14は、画像読取装置12などで生成された画像データに対して、各種画像処理を行う。
【0017】
画像処理装置14は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、プログラムに従って動作するコンピューターを備え、ASICやコンピューターを、制御部31、原稿画像抽出部32、名刺配列画像検出部33、および名刺画像分離部34として動作させる。したがって、画像処理装置14は、制御部31、原稿画像抽出部32、名刺配列画像検出部33、および名刺画像分離部34を備える。
【0018】
制御部31は、画像読取装置12などの内部装置を制御し、画像読取装置12に読取画像の読取を実行させ、画像読取装置12から読取画像(所定サイズのページ画像)の画像データを取得し、その読取画像に対する画像処理を、原稿画像抽出部32、名刺配列画像検出部33、および名刺画像分離部34とともに実行する。
【0019】
原稿画像抽出部32は、取得された読取画像内の1つの原稿画像を抽出する。
【0020】
ここでは、読取画像は、原稿に対応するオブジェクトを含み、読取画像の背景は白色となっている。例えば、原稿画像抽出部32は、その読取画像において、1ラインずつ、あるいは所定ラインおきに順番に、注目ラインを選択していき、注目ラインごとに矩形オブジェクトのエッジを検索し、注目ラインにおける画素ごとの濃度変化(例えば輝度値の変化)に基づいて、注目ライン上の矩形オブジェクトのエッジを検出する。そして、原稿画像抽出部32は、検出されたエッジに基づいて矩形オブジェクトを原稿画像として検出する。
【0021】
図2は、
図1における画像読取装置12のプラテンガラス12a上に載置された複数の名刺111~114の一例を示す図である。
図3は、
図2に示す原稿(複数の名刺111~114)に対応する原稿画像(名刺配列画像)を含む読取画像の一例を示す図である。例えば
図2に示すように複数の名刺111~114が隙間なく配置され、全体として矩形形状を有する場合、例えば
図3に示すように、読取画像201には、矩形形状の1つの原稿画像211が含まれる。
【0022】
名刺配列画像検出部33は、原稿が、隙間なく配列されている複数の名刺である場合において、原稿画像内の文字列オブジェクト221~228の分布および文字サイズの分布の少なくとも一方に基づいて、原稿画像を、複数の名刺画像が隙間なく配列されている名刺配列画像として検出する。
【0023】
名刺配列画像検出部33は、原稿画像内での文字列オブジェクト221~228の分布(つまり、文字列オブジェクトの位置の分布)、および/または原稿画像内での文字列オブジェクト221~228の文字サイズの分布を特定する。
【0024】
そして、文字列オブジェクト221~228の分布に関し、名刺配列画像検出部33は、原稿画像の主走査方向および副走査方向のうちの一方(ここでは主走査方向)において、原稿画像を所定範囲の整数分の1(例えば2分の1~4分の1)に分割して得られる複数領域の境界の両側にある文字列オブジェクトをそれぞれ2つの注目文字列オブジェクトとして特定し、(b)その境界上に文字列オブジェクトがなく、かつ注目文字列オブジェクトの間隔が所定値より大きい場合、原稿画像を名刺配列画像として検出する。
【0025】
なお、その場合、名刺配列画像検出部33は、注目文字列オブジェクトの間隔が、注目文字列オブジェクトの一方とその注目文字列オブジェクトの一方に隣接する別の文字列オブジェクト(つまり、その注目文字列オブジェクトではない文字列オブジェクト)との間の間隔(つまり上述の所定値)より大きい場合、原稿画像を名刺配列画像として検出するようにしてもよい。
【0026】
例えば
図3に示す場合、原稿画像を2分の1に分割して得られる複数領域の境界の両側にある文字列オブジェクト224,225が注目文字列オブジェクトとして特定される。そして、文字列オブジェクト224,225(注目文字列オブジェクト)の間隔が所定値(ここでは、文字列オブジェクト223,224の間隔および/または文字列オブジェクト225,226の間隔)より大きいため、当該原稿画像が名刺配列画像として検出される。
【0027】
また、名刺配列画像検出部33は、原稿画像の主走査方向および副走査方向のうちの一方の文字サイズの分布において、原稿画像を整数分の1に分割して得られる複数領域がそれぞれ1つの文字サイズのピークを有する場合、原稿画像を名刺配列画像として検出するようにしてもよい。つまり、上述のように、注目文字列オブジェクトの間隔が所定値より大きくない場合であっても、当該複数領域がそれぞれ1つの文字サイズのピークを有するときには、名刺配列画像検出部33は、原稿画像を名刺配列画像として検出するようにしてもよい。あるいは、注目文字列オブジェクトの間隔が所定値より大きい場合であっても、当該複数領域がそれぞれ1つの文字サイズのピークを有さないときには、名刺配列画像検出部33は、原稿画像を名刺配列画像として検出しないようにしてもよい。
【0028】
図4は、
図3に示す原稿画像に対応する文字サイズの分布の一例を示す図である。通常、名刺に使用される文字のサイズは、一律ではなく、最も重要な部分(氏名など)については最も大きい文字が使用され、そのような部分は名刺中央に配置されるため、文字サイズの分布は、各名刺(名刺画像)の領域について、1つのピークの文字サイズを有する。
図4の場合、主走査方向において、両端のエッジ位置E1,E2の間における2つの領域#1,#2が、位置P1,P2においてピークをそれぞれ有する。
【0029】
名刺画像分離部34は、検出された名刺配列画像を、上述の原稿としての複数の名刺に対応する複数の名刺画像に分離する。例えば、名刺画像分離部34は、(a)原稿画像の縦サイズおよび横サイズを特定し、(b)原稿画像の縦方向について、係数(整数)Kを増加させていき、その係数を名刺の定形サイズ(約91mm×約55mm)の辺のサイズ(約91mmおよび約55mm)に乗じて得られる積(91mm×Kおよび55mm×K)と原稿画像の縦サイズとを比較し、両者の差が所定誤差以内である場合には、そのKを原稿画像の縦方向における名刺画像の数であると判定し、(c)縦方向と同様にして、原稿画像の横方向における名刺画像の数を特定する。
【0030】
あるいは、上述の境界の数や上述のピークの数に基づいて主走査方向および副走査方向において名刺配列画像が有する名刺画像211-1~211-4の数を特定するようにしてもよい。例えば、ある方向における上述のピーク(極大値)の数が2つであれば、その方向における名刺画像は2つであると判定される。また、ある方向における上述の境界の数が1であれば、その方向における名刺画像は2つであると判定される。
【0031】
次に、上記画像処理装置14の動作について説明する。
図5は、
図1における画像処理装置14の動作について説明するフローチャートである。
【0032】
原稿画像抽出部32は、制御部31によって読取画像が取得されると、その読取画像内の原稿画像を抽出する(ステップS1)。
【0033】
次に、原稿画像抽出部32は、その原稿画像内の文字列オブジェクトを検出する(ステップS2)。
【0034】
このとき、まず、原稿画像抽出部32は、原稿画像内のオブジェクトを特定し、オブジェクトに対して文字認識処理などを実行して、1または複数の文字で構成されているオブジェクトを文字列オブジェクトとして特定する。なお、このとき、原稿画像抽出部32は、辞書や事前に登録された語句などを使用しないため、原稿画像内で文字列オブジェクトを検出するが、原稿画像内で検出した文字列オブジェクトの意味は特定しない。
【0035】
さらに、名刺配列画像検出部33は、原稿画像における各文字列オブジェクトの位置および文字サイズを特定し原稿画像内の文字列オブジェクトの分布および/または文字サイズの分布を特定する(ステップS3)。このとき、文字列オブジェクトの向き(つまり、文字列オブジェクト内の文字の配列方向であって、主走査方向または副走査方向)に対して垂直な方向(主走査方向または副走査方向)における上述の分布が特定される。また、その方向において文字オブジェクトが最も多く検出される位置(つまり、文字列オブジェクトの向きである主走査方向または副走査方向における位置)で、上述の分布が特定される。
【0036】
そして、名刺配列画像検出部33は、上述のようにして、その文字列オブジェクトの分布および/または文字サイズの分布に基づいて、当該原稿画像が名刺配列画像であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0037】
当該原稿画像が名刺配列画像であると判定された場合、名刺画像分離部34は、検出された名刺配列画像を、上述の原稿としての複数の名刺に対応する複数の名刺画像に分離する(ステップS5)。その後、制御部31は、その複数の名刺画像に対して、名刺画像に対する固有な所定の処理(例えば、各名刺画像からの名刺情報(社名、氏名、住所、電話番号など)の検出、名刺画像のプリントなど)を実行する。
【0038】
一方、当該原稿画像が名刺配列画像ではないと判定された場合、制御部31は、当該原稿画像を、名刺以外の定形原稿の原稿画像(つまり、当該原稿画像にサイズが最も近い定形原稿の原稿画像)とみなし、所定の処理を実行する(ステップS6)。
【0039】
以上のように、上記実施の形態によれば、原稿画像抽出部32は、読取画像内の1つの原稿画像を抽出し、名刺配列画像検出部33は、原稿が、隙間なく配列されている複数の名刺である場合において、原稿画像内の文字列オブジェクトの分布および文字サイズの分布の少なくとも一方に基づいて、原稿画像を、複数の名刺画像が隙間なく配列されている名刺配列画像として検出する。名刺画像分離部34は、検出された名刺配列画像を複数の名刺画像に分離する。
【0040】
これにより、複数の名刺が隙間なくプラテンガラス上に載置された状態でスキャンされて得られた1つの読取画像の場合でも、辞書や事前登録された語句を参照せずに、読取画像に複数の原稿画像(名刺画像)が含まれていることが正確に判定される。
【0041】
当該画像処理装置14が原稿サイズの自動認識(つまり、所定の複数の定形サイズから当該原稿のサイズを選択する処理)を行う場合、矩形形状の原稿画像211の縦サイズおよび横サイズが特定され、その縦サイズおよび横サイズに対応する定形原稿(例えば、はがき)の原稿画像であると判定される。そのため、複数の名刺111~114が隙間なく配列され、全体としての原稿画像の縦サイズおよび横サイズが定形原稿のサイズに近い場合、自動認識において、単に原稿画像のサイズのみで原稿種別を特定すれば、当該原稿の原稿種別が、名刺ではなく別の原稿種別(例えば、はがき)と誤認識される可能性がある。一方、当該実施の形態に係る画像処理装置によれば、文字列オブジェクトの分布や文字サイズの分布に基づいて名刺配列画像が検出されるため、そのような誤認識が抑制される。
【0042】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0043】
例えば、上記実施の形態において、原稿画像の主走査方向および副走査方向のうちの一方において、文字サイズが所定範囲内である文字列オブジェクトの数が所定範囲内ではない場合、名刺配列画像検出部33は、原稿画像を名刺配列画像として検出しないようにしてもよい。つまり、文字列オブジェクトが多数ある場合や、通常名刺には使用されない文字サイズの文字オブジェクトが多く検出された場合には、原稿画像を名刺配列画像として検出しないようにすることで、名刺サイズの別種別の原稿を名刺として誤認識することが抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば、スキャナー、コピー機、複合機などといった画像読取装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
14 画像処理装置
32 原稿画像抽出部
33 名刺配列画像検出部
34 名刺画像分離部