(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】機能部品の取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 7/04 20060101AFI20240322BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20240322BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20240322BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B60R7/04 T
B60N3/00 Z
F16B5/06 Q
F16B19/00 B
F16B19/00 N
(21)【出願番号】P 2020062924
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 亮
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健介
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-067221(JP,U)
【文献】実開昭59-004805(JP,U)
【文献】実開平05-054806(JP,U)
【文献】特開2006-292116(JP,A)
【文献】特開2011-194919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
B60N 3/00
F16B 5/06
F16B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の壁面を構成する内装材本体部に対して機能部品を着脱可能に取り付ける取付構造であって、
前記機能部品は、前記内装材本体部に対して乗物内側に配されるものであり、
ベース部と、前記ベース部から突出する突出部と、を備える係止部品と、
機能部品本体部と、を備え、
前記内装材本体部は、板状をなし、前記突出部を取り付けるための取付孔が貫通形成されており、
前記突出部の基端部には、乗物内側に向けて撓むことができる弾接部が設けられ、
前記機能部品本体部には、前記突出部を前記内装材本体部に向かう方向に突出させた状態で前記ベース部
及び前記弾接部を収容する収容部が備えられるとともに、
前記ベース部が前記収容部に収容されたとき、前記ベース部と前記収容部とは、前記機能部品本体部の表面に沿う方向での変位が許容される構成を備え、
前記変位が許容される前記構成は、前記ベース部の周縁部から前記機能部品本体部の表面に沿う前記方向に突出し、当該方向について弾性変形可能な緩衝部であり、
前記緩衝部は、前記ベース部の前記周縁部に設けられた緩衝孔部を取り囲む部分の一部であって、前記ベース部が前記収容部に収容されたとき、前記収容部に当接
し、
前記弾接部は、前記弾接部が前記収容部に収容されたとき、乗物内側に向けて撓みながら前記収容部に当接する、機能部品の取付構造。
【請求項2】
前記緩衝部は、平面に視て山状をなし、前記山状の頂点が前記収容部に当接する、請求項1に記載の機能部品の取付構造。
【請求項3】
前記ベース部は、平面に視て矩形状をなし、
前記緩衝部は、前記矩形状を形作る辺部に設けられている、請求項1または請求項2に記載の機能部品の取付構造。
【請求項4】
前記収容部は、前記機能部品本体部の前記表面から突出する箱状に形成されているとともに、前記表面に沿う少なくとも一の方向に向けて開口された開口を有しており、
前記収容部のうちの前記機能部品本体部の前記表面に対向する収容底部には、前記突出部が挿通される挿通孔と、前記挿通孔と前記開口とを連通する連通孔とが形成されており、
当該取付構造は、前記係止部品の前記ベース部を前記機能部品本体部の前記表面に沿わせた姿勢で、前記連通孔を通じて前記開口と前記挿通孔との間を移動させることで、前記機能部品本体部に対して前記係止部品が着脱される構成を備えている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の機能部品の取付構造。
【請求項5】
前記突出部は、先端部に前記機能部品本体部の表面に沿う一の方向に向けて延びる係止部を備えており、
前記
係止部品は、前記内装材本体部に向かう方向とは反対の反対方向に撓むことができる撓み部を備えており、
前記撓み部は、前記突出部における前記係止部とは反対側の位置に配され、前記内装材本体部に向かう方向に突起する突起部を備えている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の機能部品の取付構造。
【請求項6】
前記突出部は、円柱形状をなし、
前記弾接部は、前記円柱形状をなす前記突出部の前記基端部の全周に亘って設けられると共に、前記基端部から乗物外側に向かう方向に延出しており、
前記弾接部の延出端部は、前記弾接部が前記収容部に収容されたとき、前記収容部に当接する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の機能部品の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能部品の取付構造、機能部品、および係止部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物に備えられる乗物用内装材については、様々な機能を備えた機能部品を取り付けることが行われている。例えば、特許文献1には、乗物用内装材としてのドアトリムに、機能部品としてのドアポケットを固定する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成において、機能部品であるドアポケットは、ドアトリムに対して溶着により固定されている。換言すると、機能部品はドアトリムから取り外すことができない。しかしながら、本発明者らの検討によると、乗物を利用するユーザは、自身の嗜好に応じた様々な機能部品を状況に応じて取り替えて使いたいという要望や、機能部品を乗物用内装材から取り外して清掃を行いたいという要望等を有している。
【0005】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであって、乗物の室内から乗物用内装材に対して機能部品を容易に着脱することが可能な機能部品の取付構造を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、このような機能部品の取付構造に好適に用いられる機能部品や係止部品を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、乗物の壁面を構成する内装材本体部に対して機能部品を着脱可能に取り付ける機能部品の取付構造を提供する。ここで、前記機能部品は、前記内装材本体部に対して乗物内側に配されるものであり、ベース部と、前記ベース部から突出する突出部と、を備える係止部品と、機能部品本体部と、を備える。また、前記内装材本体部は、板状をなし、前記突出部を取り付けるための取付孔が貫通形成されている。そして、前記機能部品本体部には、前記突出部を前記内装材本体部に向かう方向に突出させた状態で前記ベース部を収容する収容部が備えられるとともに、前記ベース部が前記収容部に収容されたとき、前記ベース部と前記収容部とは、前記機能部品本体部の表面に沿う方向での変位が許容される構成を備えている。
【0007】
上記構成によると、機能部品本体部に対する突出部の当該変位が許容されている。これにより、例えば、製造バラつきなどによって機能部品本体部と突出部との間に相対的な位置ズレが生じている場合でも、突出部が機能部品本体部に対して変位することによってその位置ズレを吸収することができる。また例えば、乗物用内装材に対して機能部品を取り付けるとき、機能部品本体部に遮られて取付孔の位置が視認できないときに、突出部と取付孔の間に相対的な位置ズレが生じている場合でも、突出部が機能部品本体部に対して変位することによってその位置ズレを吸収することができる。これにより、内装材本体部に対して機能部品をより一層容易に装着することができる取付構造が提供される。このような構成は、一つの機能部品に複数の取付構造が含まれるときに、特にその効果が顕著に発揮されるために好ましい。
【0008】
上記機能部品の取付構造の好適な一態様において、前記収容部は、前記機能部品本体部の前記表面から突出する箱状に形成されているとともに、前記表面に沿う少なくとも一の方向に向けて開口された開口を有しており、前記収容部のうちの前記機能部品本体部の前記表面に対向する収容底部には、前記突出部が挿通される挿通孔と、前記挿通孔と前記開口とを連通する連通孔とが形成されている。そして、当該取付構造は、前記係止部品の前記ベース部を前記機能部品本体部の前記表面に沿わせた姿勢で、前記連通孔を通じて前記開口と前記挿通孔との間を移動させることで、前記機能部品本体部に対して前記係止部品が着脱される構成を備えている。
【0009】
上記構成によると、ベース部、突出部、および撓み部を、機能部品本体部とは別の係止部品として構成することができる。これにより、機能部品を、複雑な形状を呈する係止部品と機能部品本体部とに分けて効率よく製造することができる。また、負荷の加わりやすい係止部品が機能部品の繰り返しの着脱により破損した場合などには、係止部品のみを交換することで対応できる点においても好適となる。さらに、様々な種類の機能部品に対して共通の係止部品を使用することができ、複数の機能部品の製造管理が容易になる点も好ましい。
【0010】
上記機能部品の取付構造の好適な一態様において、前記ベース部の周囲には、前記機能部品本体部の前記表面に沿う前記方向において弾性変形可能な弾性部が備えられている。上記構成によると、ベース部の機能部品本体部の表面に沿う方向での必要な変位は許容されるものの、不必要な変位を抑制することができる。これにより、内装材本体部への機能部品の装着がより一層容易になるとともに、乗物の走行時の振動等に機能部品がガタつくことが抑制された取付構造が提供される。
【0011】
上記機能部品の取付構造の好適な一態様において、前記弾性部は、前記ベース部の周囲に延設された延設部分においてその周縁部を除いてくり抜き孔が設けられた形態を有するものとして構成されている。このような構成によると、弾性部をベース部と同じ材料によって、一体的に構成することができ、製造が容易で部品点数を増加させることがない点において好適である。
【0012】
上記機能部品の取付構造の好適な一態様において、前記突出部は、先端部に前記機能部品本体部の表面に沿う一の方向に向けて延びる係止部を備えており、前記機能部品は、前記内装材本体部に向かう方向とは反対の反対方向に撓むことができる撓み部を備えており、前記撓み部は、前記突出部における前記係止部とは反対側の位置に配され、前記内装材本体部に向かう方向に突起する突起部を備えている。このような構成によると、撓み部を、機能性良く構成することができる。
【0013】
上記機能部品の取付構造の好適な一態様において、前記撓み部は、板状をなす撓み本体部と、前記撓み本体部に貫通形成され、前記突出部を挿入することが可能な挿入孔と、前記撓み本体部よりも厚みの薄い薄肉部と、を備えるとともに、前記薄肉部に前記突起部を備えており、当該撓み部は、前記突起部が前記内装材本体部に向かう前記方向に配置される向きで、前記挿入孔に前記突出部が挿入されることで、前記突出部に備えられている。上記構成では、撓み部は突出部を挿入することが可能な寸法の板状に構成されており、例えば、撓み部が片持ち梁状に形成される場合と比較して、高い耐久性を備えることができる。これにより、機能部品を繰り返し着脱した場合における撓み部の破損等が抑制された取付構造が提供される。また、撓み部を突出部とは別部材とすることで、製造が容易となることに加え、万一撓み部が破損した場合でも、撓み部のみを交換することができる。これにより、長期間に亘る使用に対応することが可能な機能部品の取付構造が提供される。
【0014】
また他の側面において、ここに開示される技術は、乗物の壁面を構成する内装材本体部に対して着脱可能に取り付けられる機能部品を提供する。この機能部品は、前記内装材本体部に対して乗物内側に配されるものであり、ベース部と、前記ベース部から突出する突出部と、を備える係止部品と、機能部品本体部と、前記機能部品本体部に備えられ、前記突出部を前記内装材本体部に向かう方向に突出させた状態で前記ベース部を収容する収容部と、を備えている。また、前記内装材本体部は、板状をなし、前記突出部を取り付けるための取付孔が貫通形成されている。そして、当該機能部品は、前記ベース部が前記収容部に収容されたときに、前記ベース部と前記収容部との、前記機能部品本体部の前記表面に沿う前記方向での変位が許容されることで、前記機能部品本体部に対する前記突出部の前記変位が許容される構成を備えている。このような構成によると、内装材本体部に形成された取付孔に対して、着脱が容易で、かつ、乗物の振動等に対して意図しない脱離やガタつきが抑制された機能部品が提供される。
【0015】
さらに他の側面において、ここに開示される技術は、乗物の壁面を構成する内装材本体部に対して機能部品を着脱可能に取り付けるために用いられる係止部品を提供する。ここで、前記機能部品は、前記内装材本体部に対して乗物内側に配されるものであり、ベース部と、前記ベース部から突出する突出部と、を備える係止部品と、機能部品本体部と、前記機能部品本体部に備えられ、前記突出部を前記内装材本体部に向かう方向に突出させた状態で前記ベース部を収容する収容部と、を備えている。また、前記内装材本体部は、板状をなし、前記突出部を取り付けるための取付孔が貫通形成されている。そして、当該係止部品は、前記ベース部が前記収容部に収容されたときに、前記ベース部と前記収容部との、前記機能部品本体部の前記表面に沿う前記方向での変位が許容されることで、前記機能部品本体部に対する前記突出部の前記変位が許容される構成を備えている。
このような構成によると、内装材本体部に形成された取付孔に対して機能部品本体部の着脱が容易に行えるとともに、かつ、乗物の振動等に対して機能部品本体部の意図しない脱離やガタつきを抑制することが可能な係止部品が提供される。また、この係止部品は、内装材本体部に機能部品本体部を取り付けたときに負荷がかかりやすく、例えば、繰り返しの着脱により破損することがあり得る。そのような場合において、容易に交換することができる係止部品が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、機能部品の着脱を容易に行うことが可能な機能部品の取付構造を提供することができる。また、この機能部品の取付構造に好適に用いることができる機能部品および係止部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1のドアトリムの取付孔を設けた部分を室外側から視た図
【
図3】本実施形態に係るドアポケット(機能部品)を係止部品が備えられた側から見た斜視図
【
図4】
図3のドアポケットの収容部に係止部品を装着する前の状態の正面図
【
図5】
図3のドアポケットの収容部に係止部品を装着する前の状態の斜視図
【
図6】本実施形態に係る係止部品の突出部を第1孔部に挿入する前ないし挿入したときの状態をドアトリムの室外側から見た図
【
図7】本実施形態に係る係止部品の突出部を第1孔部から第2孔部にスライドさせたときの状態をドアトリムの室外側から見た図
【
図8】本実施形態に係る係止部品の突出部を第1孔部に挿入したときの上面図
【
図9】本実施形態に係る係止部品の突出部を第1孔部に挿入する前の状態の断面図(
図10の突出部の挿入前の状態に対応する)
【
図11】
図10の突出部を第2孔部にスライドさせた状態に対応する断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
本実施形態に係る機能部品の取付構造について、
図1から
図11を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るドアトリム10の正面図であり、
図2は、ドアトリム10の取付孔30を設けた部分を拡大した正面図である。
本実施形態に係るドアトリム10は、乗物用ドアのドアパネルの乗物室内側に取り付けられ、乗物室の壁面を構成するとともに、乗物室内の見栄えや居住性を向上させるための内装材である。
図1のドアトリム10は、乗物としての車両の右側のドアに配されるものであるが、左側のドアにおいても同様の構成が備わっているものとする。なお、各図に示した符号F,Rr,IN,OUT,U,Dはそれぞれ、車両進行方向の前方,後方,車両進行方向に直交する車幅方向の室内側,室外側,鉛直方向(上下方向)の上方,下方を示す。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0019】
図1に示すように、ドアトリム10は、板状のトリム本体部11と、トリム本体部11に対して室内側に配されるとともに、トリム本体部11に対して着脱可能に取り付けられたドアポケット50と、を備える。トリム本体部11は、本発明における内装材本体部の一例であり、ドアポケット50は、本発明における機能部品の一例である。
【0020】
トリム本体部11は、アームレスト12の下方となる箇所に凹部13を有している。この凹部13は、トリム本体部11が車幅方向の室外側に向けて後退することで形成されている。凹部13において後退されてなる面を含む部分、すなわち底部14は、概ね鉛直方向に沿って平坦な面状に形成されている。底部14には、ドアポケット50を取り付けるための取付孔30が備えられている。取付孔30は、複数のものがトリム本体部11に貫通形成されている。
【0021】
なお、具体的には図示しないものの、トリム本体部11の室外側の表面には、これら複数の取付孔30を覆うシート部材が配されている。取付孔30をシート部材によって覆うことで、この取付孔30を介してトリム本体部11とドアパネルとの間の空間に不要な物が入り込むことを抑制したり、この取付孔30を介して室内側からドアパネルが視界に入ることを防止することができる。このシート部材の構成材料は特に制限されず、例えば不織布等であってよい。
【0022】
本実施形態のドアポケット50は、
図3に示すように、ポケット本体部51(機能部品本体部)と係止部品60とにより構成されている。
ポケット本体部51は、トリム本体部11に向けられる側(以下、単に「室外側」という場合がある。)の壁面をなす板状に構成されている。ポケット本体部51における室内側の面には、ドアポケット50の収容部分を構成するエプロン部52が備えられている。エプロン部52は、室内側に向けて膨出するとともに、上方に開口部52Aを有する箱状に形成されている。これらのポケット本体部51とエプロン部52とが側端部で接合されることでドアポケット50が構成される。そして、ポケット本体部51とエプロン部52とにより形成される空間に、開口部52Aから様々な物品を出し入れすることができる。
【0023】
ドアポケット50には、
図3から
図5に示すように、ポケット本体部51に係止部品60を装着するための収容部53が備えられている。収容部53は、ポケット本体部51のトリム本体部11に向けられる側の面51Aに備えられている。1つの機能部品に備えられる収容部53は1つであってもよいが、収容部53の数は、機能部品の自重や用途に応じて2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、または5つ以上)であってよい。本実施形態のドアポケット50には、ポケット本体部51の前方と後方の上方および下方にそれぞれ、計4つの収容部53が備えられている。4つの収容部53の構成は概ね同じであるため、以下の説明において4つの収容部53を区別する必要がない場合は、前方かつ上方に備えられた収容部53に基づいて、収容部53の構成について説明する。
【0024】
収容部53は、係止部品60をポケット本体部51に着脱可能に固定するための要素であり、後述する係止部品60のベース部61等を収容するためのものである。収容部53は、ポケット本体部51の面51Aから室外側に向けて突出する箱状に形成されている。本実施形態の収容部53は、ベース部61の形状に対応して、上下方向の寸法よりも前後方向の寸法が大きくなるように構成されている。収容部53は、具体的には、ポケット本体部51の面51Aに対向する底面を有するとともにトリム本体部11に対向する外面を有する対向底部54と、当該収容部53の側面を構成し対向底部54に上端で接続する側壁55Aと、対向底部54に後端で接続する側壁55Bと、対向底部54に下端で接続する側壁55Cと、を備えている。対向底部54は、ドアポケット50をトリム本体部11に取り付けたときに、トリム本体部11に当接される外面を備える。また、これらの側壁55A,55B,55Cは、ポケット本体部51の表面51Aに立設されている。そしてこの収容部53は、前方に向けて解放された開口54Aを有している。また、本実施形態の4つの収容部53は、ポケット本体部51の四隅において、前後方向のそれぞれの端部側に開口54Aが向けられている。このように、ポケット本体部51の前方または後方に備えられた収容部53がそれぞれ、前方または後方に開口54Aを有していることで、係止部品60の着脱を容易に行うことができる。また、開口54Aが前後方向のそれぞれの端部側に向けて設けられていることから、収容部53から係止部品60が脱落しにくい構成とされている。
【0025】
対向底部54には、その中央において円形状の挿通孔54Bが貫通形成されている。また、対向底部54には、この挿通孔54Bと開口54Aとを連通する連通孔54Cが形成されている。この挿通孔54Bに後述する係止部品60の突出部62が挿通されることで、収容部53は、突出部62をトリム本体部11に向かう方向に突出させた状態で、後述するベース部61を収容することができるようになっている。ここで、連通孔54Cの上下方向の幅W2(
図5)は、突出部62の直径D1(
図11)よりもやや小さいものとして形成されている。また、挿通孔54Bの直径D2(
図4)は、突出部62の直径D1よりも大きくなるように形成されている。したがって、挿通孔54Bの直径D2は、連通孔54Cの幅W2よりも大きいものとなっている。
【0026】
対向底部54は、連通孔54Cと開口54Aとがつながる部分において、テーパが設けられている。これにより、対向底部54の前方から係止部品60の突出部62をスムーズに連通孔54Cに送ることができる。また、対向底部54には、
図5に示すように、連通孔54Cの上方から挿通孔54Bの上方にかけて、室外側の外面から室内側に向けて後退した段差部54Dが設けられている。換言すれは、対向底部54の連通孔54Cの上方から挿通孔54Bの上方にかけて、対向底部54の外面が室内側に凹むことで、対向底部54の厚み(車幅方向の寸法)の薄い段差部54Dが形成されている。段差部54Dは、前方において開口54Aにつながっている。そして、対向底部54には、挿通孔54Bの中央部分の上方において、段差部54Dよりもさらに室内側に向けて後退した撓み部収容部54Eが設けられている。換言すれは、挿通孔54Bの中央部分の上方には、段差部54Dよりもさらに厚みの薄い撓み部収容部54Eが形成されている。
【0027】
次に、係止部品60の構成について説明する。本実施形態に係る係止部品60は、
図3から
図11に示されるように、板状のベース部61と、ベース部61からトリム本体部11に向けられる側に突出する突出部62と、突出部62に設けられた撓み部68と、を備えて構成されている。突出部62の突出方向は、トリム本体部11に向けられる側である車幅方向に一致する。
【0028】
本実施形態の突出部62は、ベース部61に対して一体的に備えられている。突出部62は、ポケット本体部51の室外側の面51Aからトリム本体部11側に突出するものとされる。一つの突出部62は、
図2に示すように、トリム本体部11に形成された複数の取付孔30のうちの、いずれか一つの取付孔30に対して選択的に挿入される。このように、複数の取付孔30のいずれかに突出部62を挿抜することで、ドアポケット50をトリム本体部11に対して着脱することができるとともに、ドアポケット50の取付位置を変更することができる。なお、ドアポケット50を取り付ける凹部13の下方には、底部14に連続して上方を向く面13Aが形成されている。また、ポケット本体部51は、凹部13に収容された状態で、トリム本体部11に対して取り付けられている。したがって、例えば、取付後のドアポケット50の下端が面13Aに当接するように、ドアポケット50における突出部62の下端からの位置を設定することで、ドアポケット50および収容物による負荷を面13Aによって補助的に支持することができる。
【0029】
突出部62は、
図5に示すように、円柱形状をなす、基端部63と、中間部64と、先端部65と、を備えている。中間部64は、突出部62の突出方向(車幅方向)における中間の部分である。突出部62において、基端部63と先端部65の直径D1は概ね同一とされている。一方で、中間部64は、前後方向の両端部が取り除かれており、中間部64の上下方向の寸法は直径D1と概ね同一となるものの、前後方向の寸法、すなわち中間部64の幅W1(
図5)は、直径D1よりも小さいものとされている。したがって、基端部63と先端部65とは、中間部64よりも前後方向に向けて張り出した張り出し部分をそれぞれ有している。突出部62の前後方向に沿う断面は、概ね、中間部64においてくびれたH型を呈している。中間部64の突出方向の寸法は、トリム本体部11の厚みよりもわずかに小さくなるように形成されている。
【0030】
先端部65には、板状をなし、下方に向かって延びるように第1係止部66が設けられている。第1係止部66は、円柱形状の突出部62に対して、その軸(円柱軸)を中心として半径方向に突出する形で設けられており、前後方向の寸法(幅)が中間部64の幅W1と等しくなるように形成されている。また、第1係止部66は、突出部62の突出方向(軸方向)において、中間部64の側(室内側)で上下方向の寸法が相対的に大きく、先端(室外側)に向かうにつれて上下方向の寸法が徐々に小さくなるくさび状を呈している。また、第1係止部66は、例えば
図9に示すように、中間部64の端部から立ち上がり基端部63の側(室内側)を向く側面と、下方(室外側でもある)を向き先端に向かうにつれて徐々に軸に近づく側面と、の為す角部が面取り(C面取り)されてなるテーパー面を備えている。このテーパー面と基端部63の側を向く側面との為す角度は、
図9に示すように90度以上(例えば約135度)である。加えて、先端部65には、前後方向の斜め上方に向かってそれぞれ延びるように2つの第2係止部67,67が設けられている。3つの係止部(第1係止部66および2つの第2係止部67,67)は、円柱形状の突出部62の軸を中心にし、半径方向外側に向けて、120度の等間隔で放射状に配されている。また、これら3つの係止部66,67,67は、同一の形状を有するものとして構成されている。先端部65は、軸を中心とした回転対称性をもつように形成されている。これら3つの係止部66,67,67は、本発明の係止部の一例である。
【0031】
基端部63には、中間部64との境界において撓み部68が設けられている。撓み部68は、上方に向かって延びる板状の梁部68Aと、梁部68Aの室外側の表面に備えられた突起部68Bとにより構成されている。梁部68Aは、基端部63の外周面から上方に延びる片持ち状をなしており、梁部68Aの先端(上端)を自由端として室内外方向に撓み変位可能な構成となっている。また、突起部68Bは、半球状をなし、梁部68Aの表面から中間部64の側に膨出している。また、撓み部68は、第1係止部66とは反対の向きに延びるように設けられている。撓み部68の上下方向の寸法(基端部63の外周面から、突起部68Bの上端までの寸法)L1は、第2孔部32の上下方向の寸法に概ね等しい。
【0032】
また、基端部63のうち、撓み部68よりもベース部61の側に、弾接部69が設けられている。撓み部68と弾接部69とは、突出方向において離間して設けられている。弾接部69は、すり鉢状をなしており、基端部63の全周に亘って、基端部63から半径方向外側で、かつ、室外側に向かう方向に延設されている。このような弾接部69は、車幅方向で室内側に向かう外力に抗しながらも、室内側に向けて撓むことができる。
【0033】
ベース部61は、突出部62を支持するとともに、突出部62をトリム本体部11に向けて突出させた状態で係止部品60をポケット本体部51に固定するために、収容部53に収容される台座としての役割を有する。ベース部61は、略矩形の板状をなしており、上下方向の寸法よりも前後方向の寸法が大きい。また、ベース部61の周縁部のうちの上下方向の両端における中央部分と、前後方向の両端における中央部分には、当該周縁部がアーチ状に突出した緩衝部61Aがそれぞれ備えられている。この緩衝部61Aを含めたベース部61の上下方向の寸法と前後方向の寸法とは、収容部53の内部の上下方向の寸法と前後方向の寸法とにほぼ等しい。また、収容部53の開口54Aは前方に向けられており、その開口幅はベース部61の前後方向の寸法よりも小さい。このことにより、ベース部61を収容部53に挿入する際に、係止部品60の上下方向と前後方向とを間違えて挿入することが防止される。
【0034】
緩衝部61Aにはそれぞれ、ベース部61の上下方向または前後方向の中心側に、緩衝孔部61Bが設けられている。緩衝孔部61Bは、ベース部61の輪郭から一定の寸法だけ中心側に位置するように形成されており、緩衝部61Aにおけるベース部61の中心側の形状を画定している。また、緩衝孔部61Bは、緩衝部61Aを幅の細いアーチ状に形造ることで、緩衝部61Aがベース部61の中心側に向けて撓むことを可能にしている。
【0035】
このような係止部品60は、ベース部61と弾接部69とを開口54Aから収容部53に挿入するとともに、突出部62の中間部64を、連通孔54Cを経て挿通孔54Bに挿通させることで、
図3および
図9に示されるように、ポケット本体部51に固定することができる。なおこのとき、連通孔54Cの幅W2が中間部64の上下方向の寸法D1よりもやや小さいことで、中間部64が挿通孔54Bに到達したときに適度な節度感が得られるとともに、中間部64が挿通孔54Bを通じて容易に収容部53の外に移動する事態が抑制されている。ここで、係止部品60が収容部53に収容された状態において、ベース部61の室内側の表面は、ポケット本体部51の表面に当接している。また、弾接部69は、室内側に向けて撓みながら、収容部53の対向底部54の底面に弾接している。そして、ベース部61の上端と後端と下端とは、緩衝部61Aにおいて側壁55A,55B,55Cに当接している。このことにより、収容部53に対するベース部61の位置が安定されている。
【0036】
また、係止部品60が収容部53に収容された状態において、撓み部68の梁部68Aは対向底部54の撓み部収容部54Eに収容されるとともに、撓み部68の梁部68Aの室外側の表面は、対向底部54の外面と面一をなしている。また、梁部68Aの室内側の表面は、対向底部54の段差部54Dの表面と、突出方向において同じ位置に位置し、撓み部収容部54Eの表面からは離間している。このような構成によって、撓み部68が収容部53に干渉することなく、係止部品60が収容部53に収容されることとなる。そして撓み部68は、突起部68Bが対向底部54の外面から室外側に突出されているとともに、この突起部68Bが設けられた側の自由端が、梁部68Aが伸びた状態(撓んでいない状態)と、室内側に向けて撓んだ状態との間で変位することが可能となっている。
【0037】
次に、トリム本体部11の取付孔30について説明する。取付孔30は、ドアポケット50に設けられる突出部62の数よりも多い多数個のものが設けられている。取付孔30は、車室内外方向(車幅方向)に貫通形成されている。取付孔30は、
図2に示すように、第1孔部31と、第2孔部32と、2つの第3孔部34,34と、を有する。第1孔部31は、突出部62を挿入することが可能なようにトリム本体部11に形成されている。第2孔部32は、トリム本体部11における第1孔部31の孔縁部に形成され、第1孔部31と連通するとともに、突出部62の中間部64が挿通される。第3孔部34,34は、トリム本体部11における第1孔部31の孔縁部に形成され、第1孔部31と連通する。なお、
図2は、トリム本体部11の底部14を室外側(裏側)から視た図である。
【0038】
第1孔部31は円形状をなしており、第2孔部32は、第1孔部31から下方に延びるものとされる。第2孔部32および第3孔部34は、第1孔部31の径方向に沿う方向に長い長孔であり、同じ形状をなしている。3つの長孔(第2孔部32および2つの第3孔部34,34)は、第1孔部31の中心を中心にして120度間隔(
図2の角度θ=120度)で放射状に配されている。取付孔30をこのような幾何学的な形状とすることで、意匠性をより高くすることができる。トリム本体部11の厚み(車幅方向の寸法)は、中間部64の突出方向の寸法よりもわずかに大きくなるように形成されている。
【0039】
第1孔部31の直径は、先端部65の直径D1よりもわずかに大きい値で設定されている。このため、第1孔部31に先端部65を挿通することが可能となっている。
図5に示すように、第2孔部32の幅は、中間部64の幅(前後方向の寸法)W1とほぼ同じであるか、幅W1よりもわずかに大きいものとされる。つまり、中間部64は、第2孔部32内において、第2孔部32の長手方向、換言すれば、上下方向に沿って変位可能とされている。ここで、第2孔部32の幅は、先端部65の直径D1よりも小さいものとされる。
【0040】
次に本実施形態の効果について説明する。上記構成において、トリム本体部11にドアポケット50を取り付ける場合は、以下のとおりとする。まず、作業者(乗物のユーザであってよい。)は、ポケット本体部51を把持しつつ、
図9および
図10に示すように、室内側から第1孔部31に対して、突出部62を挿入して、収容部53の室外側の表面をトリム本体部11の室内側の表面に当接させる。このとき、撓み部68は、突起部68Bがトリム本体部11の表面に突き当たり、トリム本体部11に押されることで室外側に撓む。
【0041】
その後、突出部62を第2孔部32に向けて下方にスライド変位させることで、
図7および
図11に示すように、中間部64が第2孔部32に嵌合される。より詳細には、先端部65の張り出し部分および2つの第2係止部67,67と、基端部63の張り出し部分および対向底部54との間に、トリム本体部11の第2孔部32の孔縁部が挿入する形で、トリム本体部11が嵌まり合う。このことにより、トリム本体部11とドアポケット50との室内外方向(車幅方向)での変位が抑制される。なおこのとき、第1係止部66の基端部63の側(室内側)を向く側面は、トリム本体部11の室外側の表面よりも、室内側に位置している。換言すれば、第1係止部66は、その室内側の表面部が第2孔部32に入り込んでいる。そのため、中間部64が第2孔部32の下端(すなわち、最奥部)に到達すると、第1係止部66は第2孔部32の孔壁面に突き当たる。しかしながら、基端部63に設けられている弾接部69は、更に室内側に向けて撓むことができる状態にあり、第1係止部66の基端部63の側(室内側)を向く側面はテーパー面を備えている。これらのことにより、突出部62を下方に移動させることで、弾接部69が室内側に撓むとともに突出部62が収容部53から室内側に更に突出されて、第1係止部66は第2孔部32の孔壁面を乗り越えることができる構成となっている。また、弾接部69の室内側への撓み変形によって、突出部62(すなわち第1係止部66)は室外側に向けて付勢されている。その結果、
図11に示すように、第1係止部66が第2孔部32の下方の孔縁部に対して室外側(裏側)から係止する構成となっている。このように、中間部64の突出方向の寸法設計と弾接部69の撓み特性との協働により、トリム本体部11に対して突出部62がより緊密に係止され、作業者はドアポケット50の取付時にこの緊密な係止についての節度感を得ることができるとともに、トリム本体部11とドアポケット50との室内外方向(車幅方向)での変位およびガタつきがより一層抑制される。
【0042】
また、撓み部68は、突起部68Bが第1孔部31に嵌合して、梁部68Aの撓みが解消される構成となっている。ここで、
図11に示すように、基端部63の直径D1と撓み部68の上下方向の寸法L1との合計の長さは、第1孔部31の直径と第2孔部32の上下方向の寸法とを足し合わせた長さと概ね等しいか、わずかに小さくなる。したがって、ドアポケット50がトリム本体部11に対して下方に移動しようとすると、中間部64の下方の外周面は、第2孔部32の下端の内壁に当接して、さらに下方に移動することが規制される。また、ドアポケット50がトリム本体部11に対して上方に移動しようとすると、撓み部68の突起部68Bが第1孔部31の上端の内壁に当接して、さらに上方に移動することが規制される。このことにより、ドアポケット50をトリム本体部11に取り付けた状態では、ドアポケット50のトリム本体部11に対する上下方向の移動が規制されることとなる。これにより、簡単な操作により、ドアポケット50の取り付けることができる。また、上記構成によると、例えば、車両走行時の振動等によって、中間部64が第2孔部32から第1孔部31に移動して、取付孔30から突出部62が抜ける事態が抑制される。
【0043】
なお、ドアポケット50をトリム本体部11から取り外す場合は、作業者は、ポケット本体部51を把持しつつ、ポケット本体部51に対して上向きの力を加える。すると、撓み部68の突起部68Bの表面は曲面をなしていることから、突起部68Bと第1孔部31との間に作用する力は、ポケット本体部51を上方に変位させる力と、撓み部68の自由端を室内側に撓ませる力とに分けられる。このことにより、撓み部68は室内側に向けて撓むとともに、撓み部68による上方への変位に対する規制が解消され、中間部64が第2孔部32から第1孔部31に変位することが許容される。その結果、取付孔30から突出部62を抜いて、トリム本体部11からドアポケット50を取り外すことができる。これにより、着脱が容易なドアポケット50(機能部品)の取付構造が実現される。
【0044】
また、上記の取付構造では、第2孔部32は、第1孔部31から下方に延びる形で設けられている。そのため、突出部62には、ドアポケット50の自重による下向の力が加わっている。このことによっても、車両走行時の振動等によって、突出部62が第2孔部32から第1孔部31に移動して、トリム本体部11からドアポケット50が抜ける事態が抑制される。
【0045】
ところで、ドアポケット50をトリム本体部11に取り付ける際に、作業者は、ポケット本体部51に遮られて、室内側から突出部62の位置を視認できなかったり、突出部62の位置を把握し難くなったりする事態が生じ得る。その結果、作業者は、突出部62を取付孔30の第1孔部31に挿入することができず、ドアポケット50をトリム本体部11に容易に取り付けられないという事態が起こり得た。このことは、一つのポケット本体部51に複数の突出部62が設けられている場合や、ドアポケット50の製造時においてポケット本体部51に対する突出部62の位置ズレや製品ばらつきが生じた場合等に顕著となり得る。
【0046】
しかしながら、上記取付構造において、ドアポケット50は、突出部62が立設されてなるベース部61を備えるとともに、ポケット本体部51に備えられ、突出部62をトリム本体部11に向かう方向に突出させた状態でベース部61を収容する収容部53を備えている。そして、ベース部61と収容部53とは、ベース部61が収容部53に収容されたときにポケット本体部51の表面51Aに沿う方向での変位が許容されることで、ポケット本体部51に対する突出部62の変位が許容される構成を備えている。このような構成によると、作業者は、トリム本体部11にポケット本体部51の突出部62を押し当てながら、トリム本体部11の表面に沿ってポケット本体部51を様々な方向に変位させることで、突出部62の先端を取付孔30の第1孔部31の孔縁部に触れさせることができる。そして突出部62の先端が第1孔部31の孔縁部に触れたとき、ポケット本体部51をトリム本体部11に向けてさらに押し当てることで、ベース部61が収容部53の中で変位して突出部62が第1孔部31に対応する適切な位置に変位し、そのまま突出部62が第1孔部31に挿入されることになる。一つのポケット本体部51に複数の突出部62が設けられている場合は、複数の突出部62の全ての先端が第1孔部31の孔縁部に触れるまで、トリム本体部11の表面に沿ってポケット本体部51を様々な方向に変位させればよい。これによって、ポケット本体部51に対する突出部62の変位が許容されていない場合と比較して、ドアポケット50をトリム本体部11に容易に取り付けることができる。
【0047】
また、上記取付構造において、撓み部68は突出部62に備えられるとともに、ベース部61、突出部62、および撓み部68によって係止部品60が構成されている。また、収容部53は、ポケット本体部51の表面51Aから突出する箱状に形成されているとともに、この表面51Aに沿う少なくとも一の方向に向けて開口された開口54Aを有している。このような構成によると、係止部品60のベース部61をポケット本体部51の表面51Aに沿わせた姿勢で、連通孔54Cを通じて開口54Aと挿通孔54Bとの間を移動させることで、ポケット本体部51に対して係止部品60を着脱することができる。その結果、複雑な形状を呈するベース部61、突出部62、および撓み部68を、ポケット本体部51とは別の係止部品60として構成することができる。これにより、ドアポケット50の製造が容易になるとともに、ドアポケット50の繰り返しの着脱により負荷の加わりやすい係止部品60が破損した場合などには、係止部品60のみを交換することで対応できる。また、様々な種類の機能部品に対して共通の係止部品60を用いることができ、複数の機能部品の製造管理が容易になる点においても好ましい。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、機能部品としてドアポケットを例示したが、これに限定されない。機能部品としては、ドリンクホルダやティッシュボックスホルダ等を例示することができる。
(2)上記実施形態では、乗物用内装材としてドアトリムを例示したが、これに限定されない。乗物用内装材は、ドアトリム以外の車両用内装材(インストルメントパネル、ラゲージトリム、シートバックボード等)であってもよい。また、乗物用内装材は、車両以外の電車、航空機、船舶などの乗物に搭載される内装材であってもよい。
(3)上記実施形態において、突出部の中間部及び基端部が同じ径であり、中間部及び基端部の双方が第2孔部に挿入される構成であってもよい。
(4)上記実施形態において、先端部には、第1係止部が突出部に対して第2孔部の下端側(取付方向の先方)に設けられていたが、第1係止部は、トリム本体部の第2孔部の孔縁部を室外側から係止できる位置であれば、突出部に対していずれの向きに設けられていてもよい。上記実施形態における第1係止部の代わりに、例えば、第2係止部が設けられていてもよい。
(5)取付孔及び突出部の形状は上記実施形態で例示したものに限定されない。例えば、第1孔部が方形状や三角形状をなしていてもよく、突出部の先端部が方形状や三角形状をなしていてもよい。また、取付孔における第2孔部や第3孔部の個数、配置態様、形状等は適宜変更可能である。例えば、第2孔部の延設方向は上下方向に限定されず水平方向であってもよく、ドアポケットを水平方向にスライド変位させることで、トリム本体部に対して脱着可能な構成であってもよい。
(6)上記実施形態では、撓み部を片持ち梁状に形成して突出部に備える構成を例示したが、これに限定されない。例えば、実施形態の片持ち梁状の撓み部に代えて、板状の撓み部を備える構成としてもよい。この場合、ポケット本体部に設ける収容部の対向底部には、突出部に備えられた板状の撓み部を収容することができる撓み部収容部を設けるとよい。
【符号の説明】
【0049】
11…トリム本体部(内装材本体部)、30…取付孔、31…第1孔部、32…第2孔部、50…ドアポケット(機能部品)、51…ポケット本体部(機能部品本体部)、53…収容部、60…係止部品、61…ベース部、62…突出部、63…基端部、64…中間部、65…先端部、66…第1係止部、67…第2係止部、68…撓み部、68B…突起部