(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 7/04 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
B66B7/04 C
(21)【出願番号】P 2023109606
(22)【出願日】2023-07-03
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 優馬
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538642(JP,A)
【文献】特開平04-066488(JP,A)
【文献】特開平04-066487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0032340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内に設置されるガイドレールと、ローラガイド式のガイド体がガイドレールに案内されつつ昇降路内を昇降するかごとを備えるエレベータであって、
ローラガイド式のガイド体は、
固定部としてのベースと、
ローラガイドのローラと、
ベースに揺動可能に取り付けられるとともに、ローラを一方の側面から回転可能に片持ち支持するアームと、
ベースの一部であり、ローラと間隔を有して対向し、アームの揺動中心を中心とする円弧状のガイド部を備える延伸部とを備え、
かごの縦振動抑制装置として、
延伸部のガイド部とスライド可能に係合する固定体と、ローラの他方の側面にローラと同軸に取り付けられる回転体とを備えて構成され、ローラに制動力を付与する磁気ブレーキ又は磁気カップリングからなる制動力発生部を備える
エレベータ。
【請求項2】
昇降路内に設置されるガイドレールと、ローラガイド式のガイド体がガイドレールに案内されつつ昇降路内を昇降するかごとを備えるエレベータであって、
ローラガイド式のガイド体は、
固定部としてのベースと、
ローラガイドのローラと、
ベースに揺動可能に取り付けられるとともに、ローラを一方の側面から回転可能に片持ち支持するアームと、
ベースの一部であり、ローラと間隔を有して対向し、アームの揺動中心を中心とする円弧状のガイド部を備える延伸部とを備え、
かごの縦振動抑制装置として、
延伸部のガイド部とスライド可能に係合する固定体と、ローラの他方の側面にローラと同軸に取り付けられる回転体とを備えて構成され、ローラに制動力を付与するメカニカルカップリングからなる制動力発生部を備える
エレベータ。
【請求項3】
ローラガイド式のガイド体は、ガイドレールのうち厚み方向に位置する2つのガイド面のそれぞれに当接する1対のガイド面当接部と、ガイドレールのうち2つのガイド面の幅方向先端縁間に位置する先端面に当接する先端面当接部とを備え、
制動力発生部は、先端面当接部のローラに対して設けられる
請求項1又は請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
延伸部のガイド部は、アームの揺動中心を中心とする円弧状の溝であり、
制動力発生部の固定体は、溝の接線方向の寸法が溝の幅よりも大きい断面形状を有する部分を備え、当該部分にて溝に挿入されることにより、溝に拘束されて回転不能な状態でアームの揺動に伴って溝内を移動可能である
請求項1又は請求項2に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降路内をロープに吊り下げられたかごが昇降するエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のエレベータにおいては、かごが階床に停止した後、乗客が乗り込むとき、乗客の重量によってかごを吊り下げているロープが伸縮し、かごが上下に揺れてかご全体にふわふわする振動(以下、これを「縦振動」という)が発生することがある。乗客が不快と感じるかごの縦振動をいかに抑制するかが従来の課題であった。
【0003】
特許文献1のエレベータは、かごの所定の箇所に設けられてガイドレールに案内されるガイド体がローラガイド式であり、かごに縦振動が発生したことをセンサで検知すると、電磁ブレーキに電力を供給して、ガイド体のローラに制動力を付与し、ローラとガイドレールとの間に摩擦力を発生させて、かごの縦振動を抑制しようというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のかごの縦振動抑制装置は、センサ等の電子部品、制御部に関するハード及びソフト、そして、電気配線が必要であり、それなりのコストが掛かるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、かごの縦振動抑制装置を低コストで構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエレベータは、
昇降路内に設置されるガイドレールと、ローラガイド式のガイド体がガイドレールに案内されつつ昇降路内を昇降するかごとを備えるエレベータであって、
ローラガイド式のガイド体は、
固定部としてのベースと、
ローラガイドのローラと、
ベースに揺動可能に取り付けられるとともに、ローラを一方の側面から回転可能に片持ち支持するアームと、
ベースの一部であり、ローラと間隔を有して対向し、アームの揺動中心を中心とする円弧状のガイド部を備える延伸部とを備え、
かごの縦振動抑制装置として、延伸部のガイド部とスライド可能に係合する固定体と、ローラの他方の側面にローラと同軸に取り付けられる回転体とを備えて構成され、ローラに制動力を付与する磁気ブレーキ又は磁気カップリングからなる制動力発生部を備える
エレベータである。
【0008】
また、もう1つの本発明に係るエレベータは、
昇降路内に設置されるガイドレールと、ローラガイド式のガイド体がガイドレールに案内されつつ昇降路内を昇降するかごとを備えるエレベータであって、
ローラガイド式のガイド体は、
固定部としてのベースと、
ローラガイドのローラと、
ベースに揺動可能に取り付けられるとともに、ローラを一方の側面から回転可能に片持ち支持するアームと、
ベースの一部であり、ローラと間隔を有して対向し、アームの揺動中心を中心とする円弧状のガイド部を備える延伸部とを備え、
かごの縦振動抑制装置として、延伸部のガイド部とスライド可能に係合する固定体と、ローラの他方の側面にローラと同軸に取り付けられる回転体とを備えて構成され、ローラに制動力を付与するメカニカルカップリングからなる制動力発生部を備える
エレベータである。
【0009】
ここで、本発明に係るエレベータの一態様として、
ローラガイド式のガイド体は、ガイドレールのうち厚み方向に位置する2つのガイド面のそれぞれに当接する1対のガイド面当接部と、ガイドレールのうち2つのガイド面の幅方向先端縁間に位置する先端面に当接する先端面当接部とを備え、
制動力発生部は、先端面当接部のローラに対して設けられる
との構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係るエレベータの一態様として、
延伸部のガイド部は、アームの揺動中心を中心とする円弧状の溝であり、
制動力発生部の固定体は、溝の接線方向の寸法が溝の幅よりも大きい断面形状を有する部分を備え、当該部分にて溝に挿入されることにより、溝に拘束されて回転不能な状態でアームの揺動に伴って溝内を移動可能である
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、かごの縦振動抑制装置として、電気を使用しない磁気式又は機械式の制動力発生部が用いられる。このため、本発明によれば、センサ等の電子部品、制御部に関するハード及びソフト、そして、電気配線が不要であり、かごの縦振動抑制装置を低コストで構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るエレベータの概略斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、エレベータのかごが備えるガイド体の平面図である。
図2(b)は、ガイド体の正面図である。
【
図3】
図3(a)は、制動部が付加されたガイド体の平面図である。
図3(b)は、制動部が付加されたガイド体の正面図である。
【
図4】
図4(a)は、制動部の主構成である制動力発生部の一例である磁気ブレーキの縦断面図である。
図4(b)は、制動力発生部の別例である磁気カップリングの縦断面図である。
【
図5】
図5(a)は、制動力発生部のさらに別例であるメカニカルカップリングの縦断面図である。
図5(b)は、制動力発生部の作動に関する説明図である(
図5(b)の上側の図は、左右いずれか一方のガイド体に係るものの図であり、
図5(b)の下側の図は、左右いずれか他方のガイド体に係るものの図である)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係るエレベータについて説明する。
【0014】
<エレベータの全体構成>
図1に示すように、エレベータ1は、昇降路2と、かご3と、かご3の駆動機構4とを備える。昇降路2は、階層を有する建物内において上下方向に延びる。かご3は、駆動機構4の駆動により、昇降路2内を昇降し、駆動機構4の駆動停止により、指定された階床に停止する。
【0015】
かご3のかご枠31の上部の左右の各端部及び下部の左右の各端部には、ガイド体32が取り付けられる。昇降路2内には、かご3の両側方において上下方向に延びる一対のガイドレール20,20が配置される。かご3は、上下左右の4つのガイド体32,…が一対のガイドレール20,20に案内されつつ昇降路2内を昇降可能となる。
【0016】
かご3は、かごドア34を備える。かごドア34は、横方向に移動してかご3の前面の開口(出入口)を開閉して人の乗り降りを可能とする。かごドア34には、両開き式と片開き式とがある。
【0017】
これに対し、各階床の乗場25は、乗場ドア27を備える。乗場ドア27は、横方向に移動して三方枠26内の開口を開閉して人の乗り降りを可能とする。乗場ドア27にも、かごドア34に対応して、両開き式と片開き式とがある。乗場ドア27は、通常は閉となっており、階床に停止したかご3のかごドア34の開閉動作に従動して開閉される。
【0018】
駆動機構4は、かごシーブ40と、巻上機41と、カウンターウェイト42と、カウンターウェイトシーブ43と、主ロープ44とを備える。シーブとは、綱車のことをいう。巻上機41の駆動シーブが回転駆動することにより、主ロープ44が走行し、これに伴い、かごシーブ40が取り付けられているかご3が昇降路2内を昇降する。同様に、主ロープ44の走行に伴い、カウンターウェイトシーブ43が取り付けられているカウンターウェイト42が昇降路2内を昇降する。
【0019】
<ガイドレール20の構成>
図2に示すように、ガイドレール20は、平面視でT字状を有し、基部200と、突出部201とを備える。基部200は、上下方向に延びる帯板状であり、昇降路2の壁面と平行に配置され、レールクリップ206を用いて昇降路2の壁面に取り付けられる。突出部201は、上下方向に延びる帯板状であり、一側部にて基部200の中央部に接続され、基部200から直交方向に突出する。
【0020】
突出部201は、接続部202と、ガイド部203とを備える。接続部202は、基部200とガイド部203とを接続する。接続部202は、ガイド部203よりも幅狭であり、突出部201において括れ部となる。ガイド部203は、ガイド体32が摺接し、ガイド体32を上下方向に直線移動するように案内する。ガイド部203は、2つのガイド面204,204と、先端面205とを備える。2つのガイド面204,204は、ガイド部203の厚み方向に位置する面であり、平行又は先端側が幅狭となるテーパ状に対向する。先端面205は、2つのガイド面204,204の幅方向先端縁間に位置する面であり、平面又は円弧面等の曲面である。
【0021】
<ガイド体32の構成>
ガイド体32は、ローラガイド式である。ガイド体32は、ベース320と、1対のガイド面当接部321,321と、先端面当接部325とを備える。
【0022】
ベース320は、かご3のかご枠31の上部の左右の各端部及び下部の左右の各端部に直接又はブラケット等の取付部材を介して間接的に取り付けられる。ベース320は、ガイド体32の固定部である。ベース320は、ガイドレール20の先端面205と間隔を有して対向する箇所に、上方(ガイド体32が上下反対に取り付けられるならば、下方)に延伸する延伸部320aを備える。
【0023】
ガイド面当接部321は、ローラ322と、アーム323とを備える。ローラ322は、回転面がガイドレール20の長手方向に沿うように配置され、ガイドレール20のガイド面204に当接する。アーム323は、ローラ322を回転自在に支持する。アーム323は、ローラ322の一方の側面からローラ322を支持する片持ち構造である。アーム323の基端部は、ベース320に回転自在に取り付けられる。これにより、ローラ322及びアーム323は、アーム323の基端部を中心として揺動可能となる。アーム323とベース320の延伸部320aとの間には、引張コイルばね324が介装される。あるいは、アーム323の基端部にねじりコイルばねが介装される。これらにより、アーム323は、ガイドレール20のガイド面204側に付勢され、ローラ322は、弾性力にてガイド面204に押し付けられる。ガイド面当接部321は、ガイド体32の可動部である。
【0024】
先端面当接部325は、ローラ326と、アーム327とを備える。ローラ326は、回転面がガイドレール20の長手方向に沿うように配置され、ガイドレール20の先端面205に当接する。アーム327は、ローラ326を回転自在に支持する。アーム327は、ローラ326の一方の側面からローラ326を支持する片持ち構造である。アーム327の基端部は、ベース320に回転自在に取り付けられる。これにより、ローラ326及びアーム327は、アーム327の基端部を中心として揺動可能となる。アーム327とベース320の延伸部320aとの間には、引張コイルばね328が介装される。あるいは、アーム327の基端部にねじりコイルばねが介装される。これらにより、アーム327は、ガイドレール20の先端面205側に付勢され、ローラ326は、弾性力にて先端面205に押し付けられる。先端面当接部325は、ガイド体32の可動部である。
【0025】
このように、ガイド体32は、ガイドレール20の2つのガイド面204,204及び先端面205の3つの面に当接する複数のローラ322,322,326を備え、これらのローラを回転させながらガイドレール20を移動する。
【0026】
<制動部330の構成>
ガイド体32は、制動部を備える。
図3は、
図2のガイド体32に制動部330が付加された図である。制動部330は、上下左右の4つのガイド体32,…の少なくとも1つに設けられる。好ましくは、制動部330は、上下のいずれの左側のガイド体32と上下のいずれかの右側のガイド体32の少なくとも2つのガイド体32,32に設けられる。より好ましくは、制動部330は、全てのガイド体32,…に設けられる。
【0027】
制動部330は、ブラケット331と、制動力発生部332とを備える。ブラケット331は、ベース320に取り付けられる。ブラケット331は、ベース320の一部であり、ガイド体32の固定部である。ブラケット331は、先端面当接部325のローラ326と間隔を有して対向する箇所に、上方(ガイド体32が上下反対に取り付けられるならば、下方)に延伸する延伸部331aを備える。制動力発生部332は、ローラ326の他方の側面(アーム327に片持ち支持される一方の側面の反対面)にローラ326と同軸に取り付けられ、ローラ326とブラケット331の延伸部331aとの間に配置される。
【0028】
制動力発生部332は、先端面当接部325のローラ326の直径よりも小さい形状である。より詳しくは、制動力発生部332は、ローラ326の直径よりも小さい直径を有する円形体である。制動力発生部332は、ローラ326と同軸に設けられる。制動力発生部332は、固定体333と、回転体334とを備える。
【0029】
固定体333は、中心軸と同軸のシャフト333aを備える。シャフト333aは、ブラケット331の延伸部331aに形成される溝331bに挿入されるが、溝331bは、先端面当接部325のアーム327の揺動中心(アーム327の基端部)を中心とする円弧状であり、シャフト333aのうち少なくとも溝331bに挿入される部分は、溝331bの接線方向の寸法が溝331bの幅よりも大きい断面形状を有する。すなわち、シャフト333aのうち少なくとも溝331bに挿入される部分は、非円形の断面形状を有する。これにより、シャフト333aは、アーム327の揺動に伴って溝331b内を移動可能であるとともに、溝331bに拘束されて回転不能となる。あるいは、固定体333は、ブラケット331の延伸部331aに形成されるガイド部とスライド自在に係合するものであってもよい。あるいは、ブラケット331の代わりに、先端面当接部325のアーム327と同軸に揺動するアームが設けられ、固定体333は、回転不能にアームに支持されるものであってもよい。これらの結果、固定体333は、アーム327の揺動を阻害することなくアーム327の揺動に伴って可動かつ回転不能にブラケット331又はアームに支持される。
【0030】
回転体334は、固定体333と同軸で固定体333に回転自在に支持される。回転体334は、中心軸と同軸、すなわち、固定体333のシャフト333aと同軸のシャフト334aを備える。シャフト334aは、先端面当接部325のローラ326の他方の側面(アーム327に片持ち支持される一方の側面の反対面)にローラ326と同軸に取り付けられ(固着され)、ローラ326と一体化される。
【0031】
<制動力発生部332の具体例1>
図4(a)に示すように、制動力発生部332は、一例として、電気を使用しない磁気式のユニット、磁気ブレーキである。磁気ブレーキにおいて、固定体333及び回転体334のいずれか一方は、ヒステリシス材336を備え、いずれか他方は、ヒステリシス材336を非接触で挟むように磁石335,335を備える。磁気ブレーキは、ヒステリシス効果により、回転体334、すなわち、これと一体である先端面当接部325のローラ326に常時、制動力(ローラ326の回転に対する負荷)を付与するものである。なお、
図4(a)に示す構成は、磁気ブレーキの構成の一例である。磁気ブレーキは、公知となっている各種の構成のものを採用することができる。
【0032】
<制動力発生部332の具体例2>
図4(b)に示すように、制動力発生部332は、別例として、電気を使用しない磁気式のユニット、磁気カップリングである。磁気カップリングにおいて、固定体333及び回転体334は、対向面に非接触で磁石337,338を備える。磁気カップリングは、磁石337,338間の吸引力により、回転体334、すなわち、これと一体である先端面当接部325のローラ326に常時、制動力(ローラ326の回転に対する負荷)を付与するものである。なお、
図4(b)に示す構成は、磁気カップリングの構成の一例である。磁気カップリングは、公知となっている各種の構成のものを採用することができる。
【0033】
<制動力発生部332の具体例3>
図5(a)に示すように、制動力発生部332は、さらに別例として、電気を使用しない機械式のユニット、メカニカルカップリング(トルクリミッタ)である。メカニカルカップリングにおいて、固定体333及び回転体334のいずれか一方は、いずれか他方に向かって弾性付勢されるボールないしピン339を備え、いずれか他方は、ボールないしピン339を部分的に受け入れる凹部333bを備える。メカニカルカップリングは、ボールないしピン339が凹部333bに係入することにより、回転体334、すなわち、これと一体である先端面当接部325のローラ326に制動力(ローラ326の回転に対する負荷)を付与するものである。ただし、回転体334の回転トルクが所定の限界値を超えて、ボールないしピン339が弾性付勢に抗して凹部333bから外れると、制動力は解除される。なお、
図5(a)に示す構成は、メカニカルカップリングの構成の一例である。メカニカルカップリングは、公知となっている各種の構成のものを採用することができる。
【0034】
本実施形態に係るエレベータ1の構成は、以上のとおりである。ガイド体32に制動部330が付加されて、かご3の縦振動抑制装置が構成される。かご3が階床に停止した状態において、ガイド体32のローラ326には、制動力発生部332で発生した制動力が付与される。ローラ326に制動力が付与されることで、ローラ326は、回転不能な状態(ロック状態)、又は、回転するが回転抵抗が大きい状態となり、ローラ326とガイドレール20との間に摩擦力が発生する。この摩擦力は、かご3の動きに対する負荷(抵抗力)となる。この結果、かご3に縦振動が発生しても、あるいは、発生しようとしても、かご3の縦振動は、制動力に基づく摩擦力により、抑制される。
【0035】
なお、制動力が大きいためにローラ326が回転不能な状態(ロック状態)となる場合であっても、
図5(b)に示すように、それまでは引張コイルばね328の弾性力に基づく垂直抗力であったのが、かご3が走行を開始するタイミング又はそれ以降のタイミングで発生するかご3の横変位に伴い、ガイド体32のローラ326に瞬時的に限界値Nbを超える大きさの垂直抗力が発生し、ローラ326とガイドレール20との間の摩擦力が制動力発生部332の保持力を超えて、ローラ326が回転し始める機会が与えられる。ローラ326が回転し始めると、磁気ブレーキ又は磁気カップリングからなる制動力発生部332においては、制動力が低減され、メカニカルカップリングからなる制動力発生部332においては、制動力が解除される(無くなる)。この結果、かご3の走行中、ローラ326は、回転可能な状態となり、ガイドレール20を転動することとなる。
【0036】
以上のとおり、本実施形態に係るエレベータ1によれば、かご3の縦振動抑制装置として、電気を使用しない磁気式又は機械式の制動力発生部332が用いられる。このため、本実施形態に係るエレベータ1によれば、センサ等の電子部品、制御部に関するハード及びソフト、そして、電気配線が不要であり、かご3の縦振動抑制装置を低コストで構成することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るエレベータ1によれば、制動力発生部332は、先端面当接部325のローラ326に対して設けられる。より詳しくは、制動力発生部332は、ローラ326とブラケット331の延伸部331aとの間に配置される。この箇所は、ガイド体32において比較的スペースがある箇所である。このため、本実施形態に係るエレベータ1によれば、制動力発生部332の配置スペースを確保することができ、かご3の縦振動抑制装置をコンパクトに構成することができる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
上記実施形態においては、ガイド面当接部321及び先端面当接部325は、弾性付勢により揺動し、ガイド体32の可動部となる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ガイド面当接部及び先端面当接部の一方又は両方において、ローラは、回転軸が固定されて変位しない形態であってもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、制動力発生部332は、先端面当接部325に対して設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。制動力発生部は、先端面当接部ではなく、ガイド面当接部に対して設けられる、又は、先端面当接部に加えてガイド面当接部に対しても設けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…エレベータ、2…昇降路、20…ガイドレール、200…基部、201…突出部、202…接続部、203…ガイド部、204…ガイド面、205…先端面、206…レールクリップ、25…乗場、26…三方枠、27…乗場ドア、3…かご、31…かご枠、32…ガイド体、320…ベース、320a…延伸部、321…ガイド面当接部、322…ローラ、323…アーム、324…引張コイルばね(引張ばね)、325…先端面当接部、326…ローラ、327…アーム、328…引張コイルばね(引張ばね)、330…制動部、331…ブラケット、331a…延伸部、331b…溝、332…制動力発生部、333…固定体、333a…シャフト、333b…凹部、334…回転体、334a…シャフト、335…磁石、336…ヒステリシス材、337,338…磁石、339…ボール、34…かごドア、4…駆動機構、40…かごシーブ、41…巻上機、42…カウンターウェイト、43…カウンターウェイトシーブ、44…主ロープ
【要約】
【課題】かごの縦振動抑制装置を低コストで構成する。
【解決手段】本発明に係るエレベータは、昇降路内に設置されるガイドレール20と、ローラガイド式のガイド体32がガイドレール20に案内されつつ昇降路内を昇降するかごとを備えるエレベータであって、かごの縦振動抑制装置として、ガイド体32においてローラ326と同軸に設けられ、ローラ326に制動力を付与する磁気ブレーキ、磁気カップリング又はメカニカルカップリングからなる制動力発生部を備える。これらは、電気を使用しない磁気式又は機械式のユニットである。このため、センサ等の電子部品、制御部に関するハード及びソフト、そして、電気配線が不要であり、かごの縦振動抑制装置を低コストで構成することができる。
【選択図】
図3