(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法及び1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン
(51)【国際特許分類】
C07D 211/46 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
C07D211/46
(21)【出願番号】P 2019566520
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2019001427
(87)【国際公開番号】W WO2019142901
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2018007428
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000246398
【氏名又は名称】有機合成薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴洋乃
(72)【発明者】
【氏名】伊東 義博
(72)【発明者】
【氏名】北原 寛久
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-104130(JP,A)
【文献】特開2004-131486(JP,A)
【文献】特開2005-179351(JP,A)
【文献】国際公開第2007/111323(WO,A1)
【文献】特開2004-182730(JP,A)
【文献】特開2003-155287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記式〔1〕:
【化1】
で表される1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルを還元反応させて、下記式〔2〕:
【化2】
で表される1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを得る工程、
(2)前記1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを含む液に、塩化アンモニウム水溶液及び有機溶媒を添加し、混合し、そして有機層及び水層に分離させる工程、
(3)前記有機層から1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを回収する工程、及び
(4)得られた1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルと下記式〔3〕:
【化3】
で表される4-ヒドロキシピペリジンとを塩基の存在下に反応させることにより、下記式
〔4〕:
【化4】
で表される1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンを得る工程、
を含む、1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンの製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒が、炭化水素系有機溶媒、エステル系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、及びハロゲン系有機溶媒からなる群から選択される有機溶媒である、請求項1に記載の1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の工程(1)~(4)、並びに
(5)工程(4)で得られた1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンを、塩基の存在下にメシルクロリドと反応させて、下記式〔5〕:
【化5】
で表される1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを得る工程、及び
(6)前記1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、ジ-tert-ブチルジカーボネートと反応させ、下記式〔6〕:
【化6】
で表される1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを得る工程、
を含む、1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法。
【請求項4】
前記有機溶媒が、炭化水素系有機溶媒、エステル系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、及びハロゲン系有機溶媒からなる群から選択される有機溶媒である、請求項3に記載の1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法。
【請求項5】
(1)下記式〔1〕:
【化7】
で表される1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルを還元反応させて、下記式〔2〕:
【化8】
で表される1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを得る工程、
(2)1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルの反応混合物に、塩化アンモニウム水溶液及び有機溶媒を添加し、混合し、そして有機層及び水層に分離させる工程、並びに
(3)前記有機層から1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを回収する工程、
を含む1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルの回収方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、炭化水素系有機溶媒、エステル系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、及びハロゲン系有機溶媒からなる群から選択される有機溶媒である、請求項5に記載の4-ピペリジル酢酸エチルエステルの回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法に関する。本発明によれば、副生成物である1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-(2-(4-メシルオキシピペリジン-1-イル)-2-オキシエチル)ピペリジンの混入量の少ない1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを製造することができる。
【背景技術】
【0002】
1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンは、例えばファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の合成中間体として有用であることが開示されている(特許文献1)。
前記1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法として、N-アラルキルピペリジン誘導体(例えば、1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン)を塩基の存在下にメシルハライド(メシルクロリド)と反応させ、得られたメシル体(1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン)を水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、ジ-tert-ブチルジカーボネートと反応させることによって1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンが得られることが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2006-511481号公報
【文献】特開2004-131486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、引用文献2に記載の方法によって1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン(以下、PAA-MPNと称することがある)を製造したところ、わずかに1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-(2-(4-メシルオキシピペリジン-1-イル)-2-オキシエチル)ピペリジン(以下、WPA-MPNと称することがある)が不純物として含まれることが分かった。
前記の通り、1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンは医薬品の合成中間体として用いられる。従って、1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンに含まれる不純物は、可能な限り少ない方が好ましい。
従って、本発明の目的は、不純物の含有量の少ない1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、不純物の含有量の少ない1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン(PAA-MPN)について、鋭意研究した。
前記特許文献2に記載のPAA-MPNの製造方法は、具体的には、1-ベンジル-4-ピペリドン(以下、1-BPDと称することがある)とジエチルホスホノ酢酸エチル(以下、EDEPAと称することがある)とを塩基の存在下に反応させる工程(I)、得られた1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステル(以下、1-BPDEと称することがある)を還元反応させる工程(II)、得られた1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステル(以下、1-BPAEと称することがある)と4-ヒドロキシピペリジン(以下、4-HPPNと称することがある)とを塩基の存在下に反応させる工程(III)、得られた1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン(以下、BnPA-Hと称することがある)をメシルクロリドと反応させる工程(IV)、得られた1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン(以下、BnPA-Mと称することがある)とジ-tert-ブチルジカーボネートと反応させる工程(V)により、PAA-MPNが合成される。
本発明者らは、驚くべきことに、前記工程(II)において得られる1-BPAEを、塩化アンモニウム水溶液及び有機溶媒により分液抽出し、抽出された1-BPAEを工程(III)に用いることにより、PAA-MPNに含まれる副生成物のWPA-MPNが劇的に減少することを見いだした。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
【0006】
従って、本発明は、
[1](1)下記式〔1〕:
【化1】
で表される1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルを還元反応させて、下記式〔2〕:
【化2】
で表される1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを得る工程、(2)前記1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを含む液に、塩化アンモニウム水溶液及び有機溶媒を添加し、混合し、そして有機層及び水層に分離させる工程、(3)前記有機層から1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを回収する工程、及び(4)得られた1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルと下記式〔3〕:
【化3】
で表される4-ヒドロキシピペリジンとを塩基の存在下に反応させることにより、下記式〔4〕:
【化4】
で表される1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンを得る工程、を含む、1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンの製造方法、
[2]前記有機溶媒が、炭化水素系有機溶媒、エステル系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、及びハロゲン系有機溶媒からなる群から選択される有機溶媒である、[1]に記載の1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンの製造方法、
[3][1]に記載の工程(1)~(4)、並びに(5)工程(4)で得られた1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンを、塩基の存在下にメシルクロリドと反応させて、下記式〔5〕:
【化5】
で表される1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを得る工程、及び(6)前記1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、ジ-tert-ブチルジカーボネートと反応させ、下記式〔6〕:
【化6】
で表される1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを得る工程、を含む、1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法、
[4]前記有機溶媒が、炭化水素系有機溶媒、エステル系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、及びハロゲン系有機溶媒からなる群から選択される有機溶媒である、[3]に記載の1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法、
[5](1)下記式〔1〕:
【化7】
で表される1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルを還元反応させて、下記式〔2〕:
【化8】
で表される1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを得る工程、(2)1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルの反応混合物に、塩化アンモニウム水溶液及び有機溶媒を添加し、混合し、そして有機層及び水層に分離させる工程、並びに(3)前記有機層から1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを回収する工程、を含む1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルの回収方法、
[6]前記有機溶媒が、炭化水素系有機溶媒、エステル系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、及びハロゲン系有機溶媒からなる群から選択される有機溶媒である、[5]に記載の4-ピペリジル酢酸エチルエステルの回収方法、及び
[7]下記式〔7〕:
【化9】
で表される(1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-(2-(4-メシルオキシピペリジン-1-イル)-2-オキシエチル)ピペリジンの含有量が1.0%以下である、下記式〔6〕:
【化10】
で表される1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法によれば、副生成物である1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-(2-(4-メシルオキシピペリジン-1-イル)-2-オキシエチル)ピペリジンの混入量の非常に少ない1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1]1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法
本発明の1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法は、
(1)1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルを還元反応させて、1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを得る工程、
(2)前記1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを含む液に、塩化アンモニウム水溶液及び有機溶媒を添加し、混合し、そして有機層及び水層に分離させる工程、
(3)前記有機層から1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを回収する工程、
(4)得られた1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルと4-ヒドロキシピペリジンとを塩基の存在下に反応させることにより、1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンを得る工程、
(5)得られた1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンを、塩基の存在下にメシルクロリドと反応させて、1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを得る工程、及び
(6)前記1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、ジ-tert-ブチルジカーボネートと反応させ、1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンを得る工程、を含む。
なお、前記工程(1)で用いる1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルは、1-ベンジル-4-ピペリドンと、ジエチルホスホノ酢酸エチルとを塩基の存在下に反応させて、1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルを得る工程、によって得ることができる。
【0009】
PAA-MPNは、本発明のPAA-MPNの製造方法における工程(1)、及び工程(4)~(6)によって製造される(特許文献2)。この製造方法によって得られたPAA-MPNには、副生成物である1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-(2-(4-メシルオキシピペリジン-1-イル)-2-オキシエチル)ピペリジン(WPA-MPN)が、1.2%程度含まれている(比較例1)。本発明のPAA-MPNの製造方法における工程(2)及び(3)により、PAA-MPNに含まれるWPA-MPNの含有量を1.0%以下に低下させることができる。
【0010】
工程(2)における塩化アンモニウム水溶液の濃度は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば塩化アンモニウム水溶液の濃度の下限は0.5重量%以上であり、より好ましくは1重量%以上であり、更に好ましくは2重量%以上である。塩化アンモニウム水溶液の濃度の上限も限定されるものではなく、塩化アンモニウムの溶解度27重量%(20℃)以下であり、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは15重量%以下である。前記塩化アンモニウム水溶液の濃度の上限値と下限値とは、独立して組み合わせることができる。すなわち、上限値と下限値のそれぞれの組み合わせを塩化アンモニウム水溶液の濃度の範囲とすることができる。
0.5重量%以上の塩化アンモニウム水溶液を用いることにより、PAA-MPNに含まれるWPA-MPNの濃度を十分に低下させることができる。例えば、1重量%の塩化アンモニウム水溶液を用いることにより、PAA-MPNに含まれるWPA-MPNの濃度を0.1%未満に低下させることができると考えられる。
【0011】
塩化アンモニウム水溶液のpHは、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、pHの下限は、pH1以上であり、より好ましくはpH1.5以上である。pHの上限は、pH12以下であり、より好ましくはpH11以下である、更に好ましくはpH10以下であり、最も好ましくはpH9以下である。
【0012】
本発明の製造方法に用いる有機溶媒は、塩化アンモニウム水溶液と、分離できる有機溶媒であれば特に限定されるものではないが、例えば炭化水素系有機溶媒、エステル系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ハロゲン系有機溶媒、又はケトン系有機溶媒が挙げられる。
前記炭化水素系有機溶媒としては、1-BPAEが溶解できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素が挙げられる。脂肪族炭化水素としては、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等が挙げられ、脂環式炭化水素としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、tert-ブチルシクロヘキサン、o-メンタン、m-メンタン、p-メンタン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン等が挙げられ、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、ジエチルベンゼン、メシチレン、テトラリン等が挙げられる。
前記エステル系有機溶媒としては、1-BPAEが溶解できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、又はプロピオン酸エチルが挙げられる。
前記エーテル系有機溶媒としては、1-BPAEが溶解できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えばtert-ブチルメチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、又はメチルテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロピランが挙げられる。
前記ハロゲン系有機溶媒としては、1-BPAEが溶解できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼンが挙げられる。
【0013】
塩化アンモニウム水溶液と有機溶媒との比率は、有機溶媒に1-BPAEが溶解し、そして塩化アンモニウム水溶液に不純物が溶解できる限りにおいて、特に限定されるものではない。しかしながら、例えば有機溶媒1容量部に対して、塩化アンモニウム水溶液は0.05~10容量部であり、好ましくは0.1~5容量部であり、更に好ましくは0.2~2容量部である。
また、1-BPAEを含む液に対する塩化アンモニウム水溶液及び有機溶媒の合計量の比率も、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば1-BPAE含有液1容量部に対して、合計量が0.5~50容量部であり、好ましくは1~20容量部であり、最も好ましくは2~10容量部である。
【0014】
(1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンの製造方法)
本発明の1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法における工程(1)~(4)によって、1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンを製造できる。
すなわち、本発明の1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンの製造方法は、(1)1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルを還元反応させて、1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを得る工程、(2)前記1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを含む液に、塩化アンモニウム水溶液と有機溶媒を添加し、混合し、そして有機層及び水層に分離させる工程、(3)前記有機層から1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを回収する工程、及び(4)得られた1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルと4-ヒドロキシピペリジンとを塩基の存在下に反応させることにより、1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンを得る工程、を含む。
本発明の製造方法により得られた1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンは、PAA-MPNの原料として有用に用いることができる。
【0015】
(1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルの回収方法)
本発明の1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの製造方法における工程(1)~(3)によって、4-ピペリジル酢酸エチルエステル(以下、EPNAと称することがある)が混入した反応混合物から1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを回収することができる。すなわち、本発明の1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルの回収方法は、(1)1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルを還元反応させて、1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを得る工程、(2)1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルの反応混合物に、塩化アンモニウム水溶液及び有機溶媒を添加し、混合し、そして有機層及び水層に分離させる工程、並びに(3)前記有機層から1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを回収する工程、を含む。
【0016】
[2]1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン
本発明の1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン(PAA-MPN)は、1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-(2-(4-メシルオキシピペリジン-1-イル)-2-オキシエチル)ピペリジン(WPA-MPN)の含有量が1.0%以下である。
WPA-MPNの含有量は、好ましくは0.8%であり、より好ましくは0.5%であり、最も好ましくは0.1%である。ここで、WPA-MPNの含有量は、液体クロマトグラフィーによる分析の面積比から計算される。具体的には、前記WPA-MPNの含有量は、液体クロマトグラフィーにより、取得したPAA-MPNを測定し、その面積百分率により示すことができる。
【0017】
《作用》
本発明の製造方法により得られる1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン(PAA-MPN)において、副生成物である1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-(2-(4-メシルオキシピペリジン-1-イル)-2-オキシエチル)ピペリジン(WPA-MPN)の含有量が少ないことのメカニズムは、以下のように推定される。しかしながら、本発明は以下の推定によって限定されるものではない。
PAA-MPNは、特許文献2に記載の方法によれば、1-BPDとEDEPAとを塩基の存在下に反応させる工程、得られた1-BPDEを還元反応させる工程、得られた1-BPAEと4-HPPNとを塩基の存在下に反応させる工程、得られたBnPA-Hをメシルクロリドと反応させる工程、得られたBnPA-Mを水素及びパラジウムを含有する触媒の存在下に、ジ-tert-ブチルジカーボネートを反応させる工程により合成される。本発明者らは、副生成物のWPA-MPNは、以下の反応式〔8〕に示すように、1-BPDEを還元反応させる工程において、1-BPDEのベンジル基が過剰に還元されることで副生成された4-ピペリジル酢酸エチルエステル(EPNA)が、4-HPPNと反応し1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-(2-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-2-オキシエチル)ピペリジンとなり、それがWPA-MPNとなるものと推定した。
【化11】
【0018】
実施例に示すように、本発明者らは1-BPDEの還元反応工程後に得られる1-BPAEに、少量のEPNAが含まれることを確認した。従って、1-BPDEの還元反応工程後に、EPNAを除去することにより副生成物のWPA-MPNの生成が抑制され、そしてPAA-MPNへのWPA-MPNの混入量が抑えられると推定される。
従来の製造方法においては、EPNAの除去を行っていなかったために、前記の反応工程により、最終的に得られるPAA-MPNにWPA-MPNが副生成物として混入していたと考えられる。更に、特許文献2以外の合成方法によって、PAA-MPNが製造された場合においても、その製造工程において同様の前駆体が混入していると、WPA-MPNが副生成物として混入するものと考えられる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0020】
《実施例1》
1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン(PAA-MPN)の合成
[1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステルの合成工程]
ジエチルホスホノ酢酸エチル235.4g(1.05mol)、トルエン618g、20%ナトリウムエトキシドのエタノール溶液374.3g(ナトリウムエトキシド換算1.10mol)の混合物に、1-ベンジル-4-ピペリドン189.3g(1.00mol)とトルエン190gとの混合溶液を5~15℃で滴下した。同温度で1時間反応させた後、室温で反応混合物を水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。残渣として橙色オイル状の標記化合物247.2gを得た(収率95.3%)。
【0021】
[工程1]
1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステル(1-BPAE)の合成
5Lの4つ口反応フラスコに1-ベンジル-4-ピペリジリデン酢酸エチルエステル310g(1.195mol)、2-プロパノール1623g、50%含水の3%白金-炭素31gを加え撹拌した。バブリングしながら水素を常圧にて加え、55℃で、5時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、触媒をろ別し、減圧下濃縮した。残渣として微黄色オイル状の標記化合物286g(収率91%)を得た。
【0022】
[工程2及び3]
実施例1の工程1で得られた1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステル(1-BPAE)24.6g(0.094mol)、トルエン98gを5%塩化アンモニウム水溶液48gを添加し、混合した。トルエン層と水層を分離し、トルエン層を回収した。
【0023】
[工程4]
1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジンの合成
300mLの4口反応フラスコに上記の1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルのトルエン溶液122g(1-ベンジル-4-ピペリジル酢酸エチルエステルを24.6g(0.094mol)含有)、4-ヒドロキシピペリジン10.0g(0.099mol)及び28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液9.1g(ナトリウムメトキシド換算0.047mol)を仕込んだ。常圧にて溶媒を78g留去し、還流に切り替え内温107℃で3時間反応させた。反応終了後、反応混合物を50℃まで冷却し、食塩水及び10%HCl水にて水洗し、標記化合物のトルエン溶液を得た。
【0024】
[工程5]
1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンの合成
300mLの4口反応フラスコにトルエン214g、工程4で得られた、1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジントルエン溶液84g(BnPA-H29.8g(0.094mol)含有)、トリエチルアミン12.4g(0.122mol)を仕込んだ。10℃以下まで冷却後、メシルクロリド10.8g(0.094mol)を0~10℃で滴下し、同温度で1時間反応させた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で水洗し、有機層を得た。得られた有機層を減圧下濃縮し、2-プロパノールから析出させて固液分離し、白色粉末状の標記化合物30.2gを得た(収率81.8%)。
【0025】
[工程6]
1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン(PAA-MPN)の合成
200mLオートクレーブに2-プロパノール9g、ジ-tert-ブチルジカーボネート0.56g(0.003mol)、50%含水の5%パラジウム-炭素0.2g、及び工程5で得られた1-(1-ベンジル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン1.0g(0.003mol)を仕込み、水素0.5MPa加圧下、45℃で4時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、触媒を濾別した。2-プロパノールを減圧濃縮して除去し、トルエン及び食塩水を加えて分液抽出した。得られた有機層を減圧下濃縮し、濃縮残渣にトルエン4gを加えて氷冷し、析出した結晶を濾取した。湿結晶を減圧下乾燥し、白色結晶性粉末の標記化合物0.77g(収率74.6%)得た。液体クロマトグラフィーにて分析した結果、目的化合物98.4%、WPA-MPN0.03%であった。
【0026】
《比較例1》
1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジン(PAA-MPN)の合成
工程[2]及び[3]を実施しないことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。得られたPAA-MPN中のWPA-MPNは、1.2%であった。
【0027】
実施例1及び比較例1の工程[1]で得られた1-BPAEをガスクロマトグラフィにて分析したところ、1-BPAEが98.1%であり、副生成物としてEPNAが0.8%含まれていた。また、実施例1の工程[2]及び[3]により得られた、トルエン層をガスクロマトグラフィにて分析したところ、EPNAは検出されなかった。
1-BPAEと、それに含まれる少量のEPNAが反応し、前記反応式〔8〕に示される反応工程により、WPA-MPNが生成されると考えられた。
【0028】
《実施例2~6》
本実施例では、EPNAを含有する1-BPAEからの、EPNAの除去方法を検討した。
容量20mLの2口フラスコに抽出溶媒4gと、ガスクロマトグラフの面積百分率0.9%のEPNAを含有する1-BPAE1.0gを仕込んだ。そこに10%塩化アンモニウム水溶液2gを加えて分液・抽出操作を実施し、得られた有機層中のEPNA含有量を確認した。実施例2では、抽出溶媒としてトルエンを、実施例3ではヘキサンを、実施例4ではAcOEt(酢酸エチル)を、実施例5ではMTBE(メチル-tertブチルエーテル)を、実施例6ではCHCl3(クロロホルム)を用いた。結果を表1に示した。いずれの抽出溶媒を用いた場合でも、効率よくEPNAを除去することができた。
【0029】
【0030】
《実施例7~13》
容量20mLの2口フラスコに抽出溶媒としてトルエン4g、ガスクロマトグラフの面積百分率0.9%のEPNAを含有する1-BPAE1.0gを仕込んだ。そこに、10%塩化アンモニウム水溶液2gを加えて分液・抽出操作を実施し、得られた有機層中のEPNA含有量を確認した。実施例7では用いる10%塩化アンモニウム水溶液にHCl水溶液を加えて、pHを2に調整してから分液・抽出操作を行った。同様に、実施例8~13ではHCl水溶液またはNH3水溶液を用いてpHを2~8に調整した。結果を表2に示した。塩化アンモニウム水溶液を用いた場合には、いずれのpHでも効率良くEPNAを除去することができた。
【0031】
【0032】
《比較例2~7》
容量20mLの2口フラスコに抽出溶媒としてトルエン4g、ガスクロマトグラフの面積百分率0.9%のEPNAを含有する1-BPAE1.0gを仕込んだ。比較例2では、そこに、予めHCl水溶液を用いてpHを3.00に調整した水を添加し、分液・抽出操作を行った。同様に、比較例3~7ではHCl水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを4~8に調整した水を添加して分液・抽出操作を実施し、得られた有機層中のEPNA含有量を確認した。結果を表3に示した。塩化アンモニウム水溶液を用いない場合、効率良くEPNAを除去することは難しかった。
【0033】
【0034】
《参考例2》
本参考例では、WPA-MPNを合成した。
[工程1]
(1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-(2-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-2-オキシエチル)ピペリジンの合成
容量300mLの反応フラスコに、1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジル酢酸22.5g(0.093mol)及びジクロロメタン113gを加え、10℃以下で1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩18.1g(0.095mol)を加えた。20℃で、特許4207201を参照して合成した1-(4-ピペリジルアセチル)-4-ヒドロキシピペリジン21.0g(0.093mol)を加え、同温で5時間反応させた。得られた反応混合物を室温とし、1%塩酸で水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮した結果、無色オイル状の標記化合物38.2gを得た(収率91.0%)。
1HNMR(CDCl3)δ(ppm):1.12(m,4H),1.45(s,9H),,1.48(m,1H),1.72(d,J=12.5Hz,2H),1.78(d,J=12.9Hz,1H),1.86(d,J=11.3Hz,3H),1.97(m,1H),2.10(m,1H),2.24(d,J=6.7Hz,4H),2.27(m,1H),2.58(t,J=12.5Hz,1H),2.72(t,J=11.0Hz,2H),2.90(s,1H),3.04(t,J=11.9Hz,1H),3.22(m,2H),3.73(m,1H),3.85(d,J=13.7Hz,1H),3.93(s,1H),4.06(m,3H),4.61(d,J=13.3Hz,1H)
13CNMR(CDCl3)δ(ppm):28.33,31.99,32.07,32.83,33.13,33.15,33.78,34.45,34.48,38.88,38.91,39.16,39.43,41.83,42.84,42.87,45.89,66.58,66.63,79.24,154.75,169.57,169.82
【0035】
[工程5]
(1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-(2-(4-メシルオキシピペリジン-1-イル)-2-オキシエチル)ピペリジンの合成
容量500mLの反応フラスコに、参考例2の工程1で得られた、(1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-(2-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-2-オキシエチル)ピペリジン30.0g(0.066mol)、トリエチルアミン8.74g(0.086mol)及びトルエン254gを加え、10℃以下でメシルクロリド7.61g(0.066mol)を加えた。同温で5時間反応させた。得られた反応混合物を室温とし、食塩水で水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮した結果、無色オイル状の標記化合物を得た。カラムクロマトグラフィーで精製後、トルエンにて析出させた結晶を濾取した。湿結晶を減圧下乾燥し、白色結晶性粉末の標記化合物20.5gを得た(収率58.3%)。得られた化合物の液体クロマトグラフィーによる分液結果は、実施例1及び比較例1において、PAA-MPNに混入していた副生成物のWPA-MPNと同一であった。
1HNMR(CDCl3)δ(ppm):1.12(m,4H),1.45(s,9H),1.72(d,J=12.5Hz,2H),1.78(d,J=14.9Hz,1H),1.86(m,3H),1.98(m,3H),2.10(m,1H),2.24(d,J=7.0Hz,2H),2.27(m,2H),2.58(t,J=12.9Hz,1H),2.72(t,J=12.3Hz,2H),3.03(m,1H),3.06(s,3H),3.41(m,1H),3.57(m,1H),3.68(m,1H),3.85(d,J=12.5Hz,2H),4.08(br,2H),4.64(d,J=13.3Hz,1H),4.95(m,1H)
13CNMR(CDCl3)δ(ppm):28.34,31.26,32.00,32.11,32.25,32.84,33.03,33.16,38.07,38.70,39.10,39.42,41.75,41.99,43.77,45.82,76.58,79.15,154.72,169.60,169.73
質量分析(EI):530(M+H)
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の製造方法によって得られる1-(1-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジルアセチル)-4-メシルオキシピペリジンは、医薬品合成のための中間体として有用である。