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特許7457954樹脂成形体、樹脂成形体の製造方法及び水廻り機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】樹脂成形体、樹脂成形体の製造方法及び水廻り機器
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/16 20060101AFI20240322BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20240322BHJP
   E03C 1/20 20060101ALN20240322BHJP
【FI】
B29C59/16
B23K26/352
E03C1/20 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022539574
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2021028159
(87)【国際公開番号】W WO2022025205
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020129948
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】村田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁史
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-188605(JP,A)
【文献】特開2018-176743(JP,A)
【文献】特開2017-001327(JP,A)
【文献】特開2013-052546(JP,A)
【文献】特開2004-188436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/352
B29C 59/16
E03C 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凹部と複数の凸部とのそれぞれが所定の方向に沿って交互に繰り返し配置され、かつ、マトリクス状に配置されることで撥液性を発揮する凹凸構造面を有し、
前記凸部は、基部よりも先端部が拡大された形状を有し
前記凹部同士は、全体として格子状に連続している
樹脂成形体。
【請求項2】
前記凸部の外周面は、当該凸部の中心軸から端縁までの距離が、前記基部から前記先端部に向けて漸増する形状を有する
請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
前記凸部の外周面は、凸曲面形状を有する
請求項2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記凸部の外周面は、球面形状を有する
請求項3に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
前記凹凸構造面は、純水静的接触角が120°を超える
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項6】
複数の前記凹部と複数の前記凸部とのそれぞれは、前記所定の方向に沿って所定のピッチで交互に繰り返し配列されており、
前記凹凸構造面内において、前記所定のピッチが互いに異なる領域が複数設けられている
請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
前記凹凸構造面内において、前記所定のピッチが互いに異なる領域は、それぞれ純水静的接触角が、5°以上異なる
請求項6に記載の樹脂成形体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂成形体を製造するための樹脂成形体の製造方法であって、
樹脂基材の表面に対してレーザ加工を施すことで前記凹凸構造面を形成する
樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
前記レーザ加工は、パルスレーザによるアブレーション加工である
請求項8に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂成形体を備える
水廻り機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体、樹脂成形体の製造方法及び水廻り機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、樹脂成形体においては、先端部が基端部よりも幅の大きい複数のリブ凸条が表面に形成されていて、各リブ凸条の先端面にはフッ素コートが施されることで撥液性が発揮される樹脂成形体が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-188605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、樹脂成形体が長期にわたって使用されるとフッ素コートが劣化することで撥液性が低下してしまう。また、液滴が小さい場合には、液滴がリブ凸条間に嵌ってしまい撥液性を低下させてしまうおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、撥液性に関してより高品質な樹脂成形体などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る樹脂成形体によれば、複数の凹部と複数の凸部とのそれぞれが所定の方向に沿って交互に繰り返し配置され、かつ、平面状に配置されることで撥液性を発揮する凹凸構造面を有し、凸部は、基部よりも先端部が拡大された形状を有している。
【0007】
また、本発明の一態様に係る樹脂成形体の製造方法によれば、上記樹脂成形体を製造するための樹脂成形体の製造方法であって、樹脂基材の表面に対してレーザ加工を施すことで凹凸構造面を形成する。
【0008】
また、本発明の一態様に係る水廻り機器によれば、上記樹脂成形体を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撥液性に関してより高品質な樹脂成形体などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に係る樹脂成形体が用いられた浴室を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態1に係る床の表面構造を拡大して示す平面図である。
図3図3は、図2におけるIII-III線を含む切断面を見た断面図である。
図4図4は、実施の形態1に係る、隣り合う一対の凸部間に液滴が進入した状態を示す断面図である。
図5図5は、実施の形態2に係る凹凸構造面を示す平面図である。
図6図6は、実施の形態3に係る凸部の外周面を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態に係る樹脂成形体について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、工程、工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
また、本明細書において、平行又は直交などの要素間の関係性を示す用語及び正方形又は長方形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0014】
(実施の形態1)
[樹脂成形体]
まず、実施の形態1に係る樹脂成形体1の適用例について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係る樹脂成形体1が用いられた浴室100を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、浴室100は、水廻り機器の一例であり、排水口102を有する床101と、壁103と、浴槽104とを有している。床101、壁103及び浴槽104の少なくとも一つが樹脂成形体1で形成されていればよいが、本実施の形態では、床101が樹脂成形体1で形成されている場合を例示して説明する。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る床101の表面構造を拡大して示す平面図である。図3は、図2におけるIII-III線を含む切断面を見た断面図である。
【0017】
図2及び図3に示すように、樹脂成形体1の表面は、いわゆるリエントラント構造を有した凹凸構造面30となっている。凹凸構造面30は、複数の凸部31と複数の凹部32とのそれぞれが所定の方向に沿って交互に繰り返し配置され、これらが平面状に配置されることで撥液性を発揮する面である。
【0018】
具体的には、凹凸構造面30は、平面視においてマトリクス状に配置された複数の凸部31を有している。凸部31は平面視において略正方形状である。各凸部31は、略同一の形状を有している。凸部31は、基部よりも先端部が拡大された形状を有している。具体的には、凸部31の軸方向視における大きさが、凸部31の基部よりも先端部の方が大きい。例えば、凸部31は、逆正四角錐台状に形成されている。
【0019】
所定方向において複数の凸部31の間の部分が凹部32をなす。凹部32は、全体的に見ると格子状であり連続しているために一つの凹部32と言えるが、所定方向のみで見ると各凸部31に分断されるために複数の凹部32と言える。つまり、縦方向においても、横方向においても、複数の凹部32と複数の凸部31とが所定のピッチで交互に配列されている。
【0020】
図3に示すように、所定方向における凸部31の幅f1と、凹部32の幅f2との合計が所定のピッチ(τ=f1+f2)である。幅f1は凸部31の先端の幅である。幅f2は、凹部32の先端の幅、つまり隣り合う一対の凸部31の先端間の幅である。幅f1及び幅f2は、ナノメートルオーダまたはマイクロメートルオーダである。所定のピッチτと、幅f1、f2とを一定の関係を満たすように設定しておくことで、凹凸構造面30を撥水面とすることができる。例えば、式(1)でθ’が撥水性領域の値となるような関係を満たしておくことで凹凸構造面30を撥水面とすることができる。
【0021】
cosθ’=-1+1/D{(π-θ)cosθ+sinθ}・・・(1)
【0022】
式(1)においてD=τ/f1である。θは、凹凸構造面30をなす基材そのものの純水静的接触角である。また、θ’は、凹凸構造面30自体の純水静的接触角である。本実施の形態では、式(1)を用いてシミュレーションすることで、θ’が120°を超えるように凸部31の幅f1と、凹部32の幅f2とを決定している。この関係性を満たすのであれば、凹凸構造面30内において凹凸構造が不均一であってもよい。例えば、凹凸構造面30内には、所定のピッチτが互いに異なる第一領域30a及び一対の第二領域30bが設けられている。一対の第二領域30bは、第一領域30aを横方向で挟むように配置されている。第一領域30aと第二領域30bとは、それぞれ純水静的接触角が5°以上異なる領域である。本実施の形態では、第一領域30aの純水静的接触角が121°となるように、式(1)に基づき凸部31の幅f1と、凹部32の幅f2とが決定されている。一方、第二領域30bの純水静的接触角が150°となるように、式(1)に基づき凸部31の幅f1と、凹部32の幅f2とが決定されている。このように、第一領域30aと第二領域30bとで純水静的接触角が異なっているので、純水静的接触角が比較的低い第一領域30aに向けて第二領域30bから液滴を集めることができる。複数の液滴が集まって一体化すれば、自重も増加して液滴が滑落しやすくなるので、凹凸構造面30上での撥液性を高めることができる。
【0023】
ここで、第一領域30aと第二領域30bとで純水静的接触角が5°以上異なっていれば、純水静的接触角が高い第二領域30bから低い第一領域30aにスムーズに液滴を集めることが可能である。特に、本実施の形態では、第一領域30aと第二領域30bとで純水静的接触角の差が30°あるので、第一領域30aに向けてよりスムーズに液滴を集めることが可能である。
【0024】
また、上述したように各凸部31は、基部よりも先端部が拡大された逆正四角錐台状である。このため、各凸部31の外周面は、先端部に向けて広がる形状となっている。つまり、凸部31の外周面は、当該凸部31の中心軸から端縁までの距離が、基部から先端部に向けて漸増する形状を有している。
【0025】
図4は、実施の形態1に係る、隣り合う一対の凸部31間に液滴Lが進入した状態を示す断面図である。図4に示すように、隣り合う一対の凸部31間に液滴Lが進入すると、凹部32内においては液滴Lが表面張力によって凹部32の底面にむけて突出した形状となる。この状態での液滴Lには、凸部31の外周面上において液滴Lの表面の接線に沿う力Fが発生する。この力Fは、凸部31の先端部に向かう力であるので、この力Fによって凹部32内の液滴Lが凸部31の先端部に向けて移動しようとする。つまり、液滴Lは凹部32からそれ以上落ち込まないようにするために、外圧や振動などの外的要因に耐え、高い撥液性が維持・発揮されることになる。
【0026】
[樹脂成形体の製造方法]
次に、樹脂成形体1の製造方法について説明する。
【0027】
まず、平板状の基材を準備する。この基材は、レーザ加工が可能であれば、如何なる樹脂から形成されていてもよい。レーザ加工可能な樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エラストマー系(スチレン系、オレフィン系、ポリ塩化ビニル(PVC)系、ウレタン系、エステル系、アミド系)樹脂、ポリエステル系樹脂、エンジニアリングプラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、エチレンアクリレート樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルエラストマー樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アセチルセルロース、ポリ酢酸ビニル等も挙げられる。これらのうちの一種単独であってもよく、これらの樹脂が主成分とされる複数の樹脂の混合体であってもよい。
【0028】
また、基材には、熱硬化性樹脂が含有されていてもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、アルキド樹脂、付加硬化型ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、これらのうちの一種単独が含有されていてもよく、これらの樹脂が主成分とされる複数の樹脂の混合体が含有されていてもよい。これにより、樹脂成形体1の耐熱性を高めることができる。
【0029】
このように、成形体が樹脂成形体1であるので、レーザ加工に対して好適である。特に、樹脂成形体1が熱硬化性樹脂を含むので、樹脂成形体1の耐熱性を高めることができる。
【0030】
次いで、基材の表面に対して、レーザ加工を施すことで凹凸構造面30を形成する。具体的には、基材の表面に対して、所定方向に沿って複数の凹部32と複数の凸部31とがそれぞれ交互に所定のピッチで平面状に配置されるようにレーザ加工を施すことで凹凸構造面30を形成する。レーザを照射するレーザ照射装置からは、短パルスレーザが基材の表面に照射される。短パルスレーザのパルス幅はナノ秒以下が好ましい。このとき、レーザの出力、スポット径、光軸の方向、走査速度、走査方向、パルス幅などのパラメータを調整することで、各凸部31が逆正四角錐台状となるようにレーザ加工が施されている。また、レーザ加工はアブレーション加工であることがよりよい。アブレーション加工であれば、加工対象に対する熱ダメージを抑制することができる。また、凸部31及び凹部32の断面形状をシャープにすることが可能である。
【0031】
[効果など]
以上のように、凹凸構造面30において、凸部31の先端部が基部よりも拡大されているので、凹部32内に液体を進入させにくくすることができる。したがって、微細構造由来の撥液性を高めることができる。つまり、凹凸構造面30に対してフッ素コート等を施さなくとも撥液性を高めることができるので、フッ素コートを起因とした撥液製の低下もない。したがって、撥液性を長期的に安定して発揮することができる。このことにより、撥液性に関して高品質な樹脂成形体1を提供することが可能である。
【0032】
さらに、このような樹脂成形体1が水廻り機器(浴室100)に適用されているので、水廻り機器の撥液性を高品質化することも可能である。
【0033】
また、凸部31の外周面は、当該凸部31の中心軸から端縁までの距離が、基部から先端部に向けて漸増する形状を有している。このため、凹部32内に進入した液滴Lに対して、凸部31の先端部に向かう力Fを作用させることができる。この力Fによって凹部32内の液滴Lが凸部31の先端部に向けて移動しようとする。つまり、液滴Lは凹部32から抜け出ようとするために、高い撥液性が維持されることになる。
【0034】
ここで、純水静的接触角が120°を超えるには、化学的性質由来では実現できないのが実状である。例えば、純水接触角が最も高いトリフルオロメチル基を有するフッ素樹脂表面においても純水静的接触角120°を超えることはできない。しかしながら、微細構造由来では実現可能である。つまり、凹凸構造面30の微細構造により、第一領域30a及び第二領域30bでの純水静的接触角を120°を超えることができる。純水静的接触角が120°を超えるのであれば水をはじきやすい。したがって、化学的性質由来のみでは発揮できない高い撥水性(撥液性)を実現することが可能である。
【0035】
また、凹凸構造面30内には、所定のピッチが互いに異なる第一領域30a及び第二領域30bが設けられているので、第一領域30aと第二領域30bとの純水静的接触角を異ならせることができる。これにより、純水静的接触角が比較的低い第一領域30aに向けて第二領域30bから液滴を集めることができる。複数の液滴が集まって一体化すれば、自重も増加して液滴が滑落しやすくなるので、凹凸構造面30上での撥液性を高めることができる。
【0036】
また、第一領域30aと第二領域30bとの純水静的接触角が5°以上異なるので、その差分により、純水静的接触角が比較的低い第一領域30aに向けて第二領域30bから液滴をよりスムーズに集めることができる。
【0037】
また、樹脂成形体1の凹凸構造面30がレーザ加工によって形成されているので、環境に影響を及ぼしやすい有機材料等を用いなくとも凹凸構造面30を形成できる。
【0038】
また、レーザ加工がアブレーション加工であるので、凸部31及び凹部32の断面形状をシャープにすることが可能である。つまり、凸部31の外周面を滑らかな形状とすることができ、隣り合う一対の凸部31間に進入した液滴Lに対して、凸部31の先端部に向かう力Fをより確実に作用させることができる。この力Fによって液滴Lを凹部32からより確実に抜け出させることができ、高い撥液性が発揮されることになる。
【0039】
(実施の形態2)
実施の形態1では、複数の凸部31がマトリクス状に配列された凹凸構造面30を例示した。この実施の形態2では、複数の凸部31が縞状に配列された凹凸構造面30Aを例示する。なお、以降の説明において、上記実施の形態1と同等の部分については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0040】
図5は、実施の形態2に係る凹凸構造面30Aを示す平面図である。具体的には、図5は、図2に対応する図である。図5に示すように、各凸部31aと、各凹部32aとは、それぞれ直線状に形成されている。各凸部31aは、長手方向視において、基部よりも先端部が拡大された台形状に形成されている。複数の凸部31aと、複数の凹部32aとは、所定のピッチで繰り返し交互に配列されている。この場合においても、上記の条件を満たせば、凹凸構造面30Aを撥液面とすることが可能である。なお、凹部と凸部とは、所定のピッチで交互に繰り返し配列されているのであれば、その平面視形状は如何様でもよい。
【0041】
(実施の形態3)
実施の形態1では凸部31が逆正四角錐台状である場合を例示した。しかしながら、凸部の外周面は、当該凸部の中心軸から端縁までの距離が、基部から先端部に向けて漸増する形状を有していればよい。実施の形態3では、その一例として、凸部の外周面が凸曲面形状を有する場合を例示する。
【0042】
図6は、実施の形態3に係る凸部31bの外周面を拡大して示す断面図である。具体的には、図6図4に対応する図である。図6に示すように、凸部31bの外周面は、外方に向けて突出した凸曲面形状を有している。この場合、図6に示すように、隣り合う一対の凸部31b間に液滴Lが進入すると、凹部32b内においては液滴Lが表面張力によって凹部32bの底面にむけて突出した形状となる。液滴Lには、凸部31bの外周面上において液滴Lの表面の接線に沿う力Fが発生する。
【0043】
ここで、図6では、凹部32b内への進行度合い毎の液滴Lの表面位置を複数図示している。凹部32b内に最も進行していない表面位置が液滴Lであり、進行度合いが進むにつれて液滴L1、液滴L2としている。図6に示すように凸部31bの外周面が凸曲面形状であるため液滴L、L1、L2が凹部32b内に進めば進むほど、力Fは凸部31bの先端部に向けて傾くように変動する。つまり、液滴L、L1、L2が凹部32bに進入しようとすればするほど、凸部31bの先端部に向けて傾いた力Fが液滴L、L1、L2に作用するので、より凸部31bの先端部に向けて移動しようとする。これにより、液滴L、L1、L2は凹部32bから抜け出やすくなるために、高い撥液性が発揮されることになる。
【0044】
なお、凸部31bの外周面が球面形状であれば、上述した力Fの変動をより顕著なものとすることができ、好適である。
【0045】
(その他)
以上、本発明に係る樹脂成形体について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0046】
例えば、上記実施の形態1では、各凸部31が逆正四角錐台である場合を例示したが、凸部の形状は、先端面が平坦状であって、基部よりも先端部が拡大された形状であれば如何様でもよい。凸部のその他の形状としては、逆正四角錐台以外の逆多角錐台状、逆円錐台状、逆楕円錐台などが挙げられる。
【0047】
また、上記実施の形態1では、水廻り機器として浴室100を例示した。しかしながら、水廻り機器は、液体に濡れうる機器であれば如何様でもよい。その他の水廻り機器としては、例えば、台所、洗面所、トイレ、風呂にて配設される機器が挙げられる。台所に配設される機器としては、例えばキッチンカウンター、シンク、レンジフード等が挙げられる。洗面所に配設される機器としては、例えば洗面台、水栓等が挙げられる。トイレに配設される機器としては、例えば便座、便器等が挙げられる。風呂に配設される機器としては、浴槽、浴室ドア等が挙げられる。また、水廻り部材は、屋外に設置された状態で液体に濡れうる機器であってもよい。
【0048】
また、上記各実施の形態では、樹脂成形体1を例示したが、レーザ加工が可能な素材であれば如何なる樹脂材料で樹脂成形体を形成してもよい。
【0049】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 樹脂成形体
30、30A 凹凸構造面
30a 第一領域
30b 第二領域
31、31a、31b 凸部
32、32a、32b 凹部
100 浴室(水廻り機器)
τ ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6