(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/65 20140101AFI20240322BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240322BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20240322BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20240322BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240322BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20240322BHJP
【FI】
H01M10/65
H01M10/615
H01M10/653
H01M10/643
H01M10/658
H01M10/6571
(21)【出願番号】P 2020562477
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051366
(87)【国際公開番号】W WO2020138396
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018246841
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018246842
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】荻野 洋岳
(72)【発明者】
【氏名】解 朶朶
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-243535(JP,A)
【文献】特開2016-207569(JP,A)
【文献】特開2011-049013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の筒状の蓄電装置と、
前記複数の蓄電装置を加熱するシート状の発熱体とを備えた蓄電モジュールであって、
複数の前記蓄電装置はそれぞれ筒状のケースを有し、
これらのケースの中心軸が互いに平行になるように、前記複数の蓄電装置は並べられ、
前記発熱体は、前記複数の蓄電装置の側周面と連続して当接した複数の接触部を有し、
前記蓄電装置に対する前記複数の接触部の抱き角は180度よりも大きく、
前記発熱体の接触部において、前記蓄電装置と当接した面の裏面は別の前記蓄電装置と離間している、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記複数の蓄電装置は、第1中心軸を有した第1蓄電装置、第2中心軸を有した第2蓄電装置、第3中心軸を有した第3蓄電装置を含み、
前記第1蓄電装置、前記第2蓄電装置及び前記第3蓄電装置は互いに隣合っており、
前記第1~第3中心軸と垂直な仮想平面において、前記第1中心軸と前記第2中心軸を結ぶ第1直線と、前記第2中心軸と前記第3中心軸を結ぶ第2直線は異なる方向に延びるように、前記第1~第3蓄電装置が並んでおり、
前記第1直線と平行であり、前記第2蓄電装置の第2側周面と接する接線と前記第1直線との間に、前記第3蓄電装置の第3側周面の一部が介在しており、
前記発熱体の複数の接触部は、前記第2側周面と当接した第2接触部および前記第3側周面と当接した第3接触部を含む、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記接線と前記第2側周面との接点と前記第1直線との距離を距離αとしたとき、
前記発熱体の前記第2接触部における前記接点から前記第3接触部に近い側の端部までの領域と、前記第1直線との距離βは、前記距離αより小さい、請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記発熱体は前記第2蓄電装置の側周面と当接した前記第2接触部と前記第3接触部の側周面と当接した前記第3接触部の間に前記第2、第3蓄電装置と当接していない非接触部を有し、
前記非接触部と前記第1直線との距離γは、前記距離αより小さい、請求項3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
隣り合う前記蓄電装置の間において、それぞれの前記蓄電装置に接触している前記発熱体どうしは離間している、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
複数の筒状の蓄電装置と、
前記複数の蓄電装置を加熱するシート状の発熱体とを備えた蓄電モジュールであって、
複数の前記蓄電装置はそれぞれ筒状のケースを有し、
これらのケースの中心軸が互いに平行になるように、前記複数の蓄電装置は並べられ、
前記発熱体は、前記複数の蓄電装置の側周面と連続して当接した複数の接触部を有し、
前記蓄電装置に対する前記複数の接触部の抱き角は180度よりも大きく
、
前記発熱体の
、前記複数の蓄電装置と当接していない非接触部は80℃以上で破断する、蓄電モジュール。
【請求項7】
前記発熱体は、80℃以上で破断する樹脂シートと、
前記樹脂シートの表面に支持された導電性の発熱部材とを有する、請求項6に記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
前記複数の蓄電装置は、第4中心軸を有した第4蓄電装置、第5中心軸を有した第5蓄電装置、第6中心軸を有した第6蓄電装置を含み、
前記第4~第6中心軸と垂直な仮想平面において、前記第4中心軸と前記第5中心軸を結ぶ第3直線と、前記第5中心軸と前記第6中心軸を結ぶ第4直線は異なる方向に延びるように、前記第4~第6蓄電装置が並んでおり、
前記第3直線と前記第4蓄電装置の第4側周面との交点を第1交点とし、第3直線と前記第5蓄電装置の第5側周面との交点を第2交点としたとき、前記第1交点と前記第2交点とを結ぶ線分の最小寸法は、前記第3直線が延びる方向における前記第6蓄電装置の寸法より小さく、
前記発熱体が、前記第4側周面と接触した第4接触部と、前記第5側周面と接触した第5接触部と、前記第6蓄電装置の第6側周面と接触した第6接触部とを有し、
前記発熱体の延在する方向において、前記第4接触部と前記第5接触部との間に前記第6接触部が設けられ、
前記第4蓄電装置と前記第5蓄電装置の間に前記第4接触部の一部と前記第5接触部の一部が設けられた、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓄電モジュールの一例である、多数の二次電池を直列及び/又は並列に接続した電池パックが、電動スクーターやアシスト自転車の動力源、あるいは電気自動車の電源装置などに利用されている。このような電源装置は屋外で使用されるため、環境温度の影響を受けやすい。特に、各二次電池は、発電要素として化学変化を利用しているため、温度が低いと充放電ができなかったり、電池セルへの負荷が大きくなって、寿命を縮める等の問題がある。これを防止するためには、電池セルを温める必要がある。例えば、気温の低い冬期や寒冷地で使用される電池パックは、使用前にヒーターなどを用いて複数の電池セルを予熱することが考えられる。このような電池セルの加熱には、通電によって発熱する発熱体が利用されている。
【0003】
特許文献1には、蓄電装置の一例である円筒形の複数の二次電池を7段14列にマトリクス状(隣り合う電池セルが正方形を構成)に並べられて、各列の電池セルに対してシート状の発熱体がジグザグに配置されて、電池セルの側面に接触して加熱する電池パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、発熱体に折り目を形成することなく発熱体を各電池の側面に当接させようとした場合、各電池セルの側面には周方向において1/2未満の領域しか発熱体が接触しておらず、側面の1/2以上の領域において加熱が行われていない。従って電池セルを予熱するために時間がかかり、消費電力も多く必要となるという問題があった。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄電装置を短時間で効率よく少ない電力で予熱できる蓄電モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の蓄電モジュールは、複数の筒状の蓄電装置と、複数の蓄電装置を加熱するシート状の発熱体とを備えた蓄電モジュールであって、複数の蓄電装置はそれぞれ筒状のケースを有し、これらのケースの中心軸が互いに平行になるように、複数の蓄電装置は並べられ、発熱体は、複数の蓄電装置の側周面と連続して当接した複数の接触部を有し、蓄電装置に対する複数の接触部の抱き角は180度よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
シート状の発熱体が蓄電装置の側周面に接触し、その抱き角が180度よりも大きいので、従来の蓄電モジュールと比べて蓄電装置と発熱体との接触面積を増やすことができる。そのため蓄電装置を発熱体が短時間で且つ効率よく、加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態に係る蓄電モジュールの模式的な分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係る蓄電モジュールの内部の一部を上側から見た模式的な図である。
【
図4】
図3の中の隣り合う3本の蓄電装置のみを拡大して示した模式的な図である。
【
図6】別の実施形態に係る蓄電モジュールの内部の一部を上側から見た模式的な図である。
【
図8】発熱体の構造を示す模式的な分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本開示の実施形態1における蓄電モジュール100に使用する蓄電装置10の構成を模式的に示した断面図である。
【0012】
蓄電装置10は、例えば、
図1に示すような、円筒形のリチウムイオン二次電池を採用することができる。なお、本開示の蓄電装置は、ニッケル水素電池などの二次電池あるいはキャパシタであってもよい。以下、
図1を参照しながら、蓄電装置10の具体的な構成を説明する。
【0013】
図1に示すように、正極2と負極1とがセパレータ3を介して捲回された電極群4が、非水電解液とともに、金属製であり円筒形のケース7に収容されている。電極群4の上下には、絶縁板9、110が配され、正極2は、正極リード5を介して金属製のフィルタ112に接合され、負極1は、負極リード6を介して負極端子を兼ねるケース7の底部に接合されている。
【0014】
フィルタ112は、金属製のインナーキャップ113に接続され、インナーキャップ113の突起部は、金属製の弁板114に接合されている。さらに、弁板114は、正極端子8を兼ねる金属製の端子板に接続されている。そして、端子板、弁板114、インナーキャップ113、及びフィルタ112が一体となって、ガスケット111を介して、ケース7の開口部を封口している。なお、ケース7は、ガスケット111の上端にまで載せられてガスケット111を押さえ込むことで、ケース7の開口部を強固に封口している。このガスケット111の上端に載せられた電池ケース7の上端部分(負極端子7a)が端子板(正極端子8)と隣り合う位置にあり、円筒の軸方向における一方側の端部(図では上側)に正極端子8と負極端子7aとが存していることになる。なお、負極端子7aはケース7の一部であるので、筒状のケース7の側面部分(側周面)も負極端子7aと電気的に接続されている。
【0015】
蓄電装置10に内部短絡等が発生して、蓄電装置10内の圧力が上昇すると、弁体114が端子板に向かって膨れ、インナーキャップ113と弁体114との接合がはずれると、電流経路が遮断される。さらに蓄電装置10内の圧力が上昇すると、弁体114が破断する。これによって、蓄電装置10内に発生したガスは、フィルタ112の貫通孔112a、インナーキャップ113の貫通孔113a、弁体114の裂け目、そして、端子板の開放部8aを介して、外部へ排出される。
【0016】
なお、蓄電装置10内に発生したガスを外部に排出する安全機構は、
図1に示した構造に限定されず、他の構造のものであってもよい。
【0017】
<蓄電モジュール>
図2は、実施形態1に係る蓄電モジュール100の模式的な分解斜視図である。複数の蓄電装置10が、各ケース7の中心軸(円筒の側面に平行な軸)を平行にして且つ側面同士を隣り合わせて並べられている。蓄電モジュール100では各ケース7の中心軸に垂直な平面において観察してみると、複数の蓄電装置10は互いに非接触ではあるが、最密に充填されるように配置(1本の蓄電装置10の周りを6本の蓄電装置10が正六角形に囲む配置)されている。なお、本開示の蓄電モジュールにおける各蓄電装置の配置は上記の配置に限定されない。所定の1つの蓄電装置から等距離にある別の蓄電装置の数が4個や3個であってもよい。また、複数の蓄電装置10は、各ケース7の中心軸に垂直な平面において、一直線上に隣り合って蓄電装置10が並んだ列が8つ存在している。隣り合う列同士は蓄電装置10の並びが平行になっており、1つの列の隣り合う2本の蓄電装置10の中心軸同士の間に隣りの列の蓄電装置10の中心軸が位置するように並んでいる。なお、蓄電モジュール100では、1つの列に属する蓄電装置10の数は、例えば7つと8つの二通りである。
【0018】
上述のように配置された複数の蓄電装置10を保持する第1ホルダ21と第2ホルダ22とが、複数の蓄電装置10の上端側(端子板側)と下端側(ケース7の底部側)とに配置されている。第1ホルダ21には、蓄電装置10の上端側の形状に対応した円形の穴が複数設けられており、その穴に蓄電装置10の上端側が嵌め込まれる。第2ホルダ22には、蓄電装置10の下端側の形状に対応した円形の穴が複数設けられており、その穴に蓄電装置10の下端側が嵌め込まれる。第1ホルダ21及び第2ホルダ22は、電気絶縁性の部材からなっていてもよい。また、各蓄電装置との電気的絶縁が図れるのであれば、第1ホルダ21,第2ホルダ22は金属材料から構成されていてもよい。
【0019】
蓄電装置10全体の長さに対する第1ホルダ21に嵌め込まれる蓄電装置10の中心軸に沿った長さの比は、蓄電装置10全体の長さの10%以上30%以下であってもよい。第2ホルダ22に嵌め込まれる蓄電装置10の中心軸に沿った長さは、蓄電装置10全体の長さの10%以上30%以下であってもよい。
【0020】
第1ホルダ21と第2ホルダ22との間から露出する各蓄電装置10の側面にはシート状の発熱体30が当接している。後述するように、シート状の発熱体30は、各蓄電装置10の側面の周方向の半分以上(抱き角180度以上)に当接しており、1つの発熱体30が複数の蓄電装置10に順(又は逆の順番であってもよい)に当接するように配置されている。第1ホルダ21と第2ホルダ22との間から露出した各蓄電装置10の中心軸に沿った長さの比は、蓄電装置10全体の長さの40%以上80%以下が好ましく、発熱体30の幅も蓄電装置10全体の長さの40%以上80%以下となる。
【0021】
<発熱体>
発熱体30は可撓性を有するシート状であって、発熱体30が80℃以上の高温になると破断する。具体的な構成としては、
図8に示すように、80℃以上で破断する電気絶縁性の2枚の樹脂シート35,37によって、導電性の発熱層(発熱部材)36を挟み込んだ構造のものを例示することができる。なお、これらの樹脂は、溶融温度が80℃を超えている樹脂であっても、80℃になったらガラス転移点を超えることなどによりシートが柔らかくなる、あるいは収縮することで破断してもよい。
【0022】
発熱体30の表面となる電気絶縁性の2枚の樹脂シート35,37は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル、塩化ビニルなどの合成樹脂から構成されていてもよい。
【0023】
導電性の発熱層36は、ITO膜、金属膜、カーボン層(カーボン粉末やカーボンナノチューブとバインダとからなる層)、導電性樹脂層などを例示できる。このような発熱層36であると、2枚の樹脂シート35,37が破断する際に、一緒に破断させることが可能となる。金属膜は例えば蒸着やスパッタなどにより一方の樹脂シート35,37の表面に形成され、基材である樹脂シート35,37に支持された無数の金属微粒子の集合体である。導電性樹脂層は、例えばポリチオフェン系等の導電性ポリマーの溶液を塗布して乾燥させることにより形成することができる。また導電性の発熱層36は、導電性微粒子とバインダからなる層であってもよい。なお、発熱体に含まれる発熱層の全てが、上記材料で構成されていなくもよい。例えば、発熱層のうち円筒セルと当接する領域は金属箔など自立支持可能なシート体であってもよい。発熱体と当接したとある蓄電装置10の次に(又は前に)同じ発熱体と接触した蓄電装置10との間で少なくとも1箇所、発熱体の幅方向に延びた上記材料でされた破断部を有していればよい。このように発熱層において破断部を部分的に設けることにより、発熱層において破断予定箇所を設定し易くなる。また、発熱層は、所定の温度で破断可能であれば、自立支持可能なシート体であってもよい。また、発熱体の非接触部において、発熱層は、幅方向において、部分的に欠損した状態で形成されていてもよい。この構成により、非接触部において欠損した部分が熱抵抗となり、蓄電装置が異常に昇温した場合に非接触部を介して他の蓄電装置に熱が伝わりにくくなる。
【0024】
発熱体30を発熱させるために発熱体30に電力を供給するのであるが、電力供給を受ける電極38は発熱体30の長手方向の端部に設置されている。この配置により、発熱体30の幅方向の端部に電極が設けられた構成と比べて、電極38が、発熱体30が高温になることにより破断することを阻害しにくくなり、発熱体30が安定して破断することができる。電極38は金属層、金属箔、箔よりも厚い金属板又は金属線、または導電性のカーボンなどから構成されていてもよい。
【0025】
また、発熱体は、蓄電装置10全体の長さの40%以上80%以下の幅を有する帯状の長尺体である。蓄電装置10と接触する表面は絶縁性の部材から構成されており、厚み方向の中央部分に発熱層が設けられている。なお、発熱層として導電性の樹脂を用いる場合、その導電性樹脂がシート状であったとしても、ある蓄電装置10の内部で異常が発生して温度が上がった際に、導電性樹脂が破断するので発熱体30が溶断できる。それにより、その蓄電装置10から発熱体30が連続して当接している隣の蓄電装置10へ、発熱体30による熱が伝達することが抑制され、隣の蓄電装置10が高温になることを抑制できる。発熱体30のうち、蓄電装置10に接触していない部分が80℃以上になったら溶断するような構成の発熱体30であってもよい。なお、発熱体30は、従来の金属箔や導線から構成された発熱層を有する発熱体において、発熱層が溶断する温度までに破断すればよい。そのため、例えば、発熱体30の温度が600℃以下で破断してもよく、400℃以下で破断してもよい。さらに発熱層に含まれる粒子を支持する基材樹脂が溶ける温度以下で破断してもよい。
【0026】
発熱体30の厚みは小さい方が隣り合う蓄電装置10間の距離を小さくできて、蓄電装置10の充填割合を大きくできる。例えば隣り合う蓄電装置10隙間距離の最小値(隣り合う蓄電装置の中心どうしを結ぶ線上の距離)の1/10~1/4であってもよい。また、厚みが小さい方が可撓性も大きくなり易く、好ましい。発熱体の30の可撓性は、蓄電モジュールとして組み立てたときに、蓄電装置10の側周面に沿って屈曲しその形状を保持する程度以上でもよく、さらに側周面に密着する程度であってもよい。
【0027】
また、本実施形態では発熱体30は複数存在している。また、発熱体30への電力の供給は、同じ蓄電モジュールから行ってもよいし、別の蓄電装置や蓄電モジュールから行ってもよい。
【0028】
<蓄電装置と発熱体との配置>
図3は本実施形態に係る蓄電モジュール100の内部の一部(複数の蓄電装置10の中の一部と発熱体30の一部)を取り出して、蓄電装置10の中心軸に沿って上側から見た図である。
図5は
図3の一部を取り出した図である。
図4は
図3の中の隣り合う3本の蓄電装置10を取り出して模式的に示した図である。
【0029】
複数の蓄電装置10は、各蓄電装置10の周囲を6本の蓄電装置10が側面同士を隣り合わせて取り囲んでおり、その周囲の6本が正六角形の配置になっている。このような配置により、蓄電装置10は蓄電モジュール内において蓄電装置同士が接触が抑制された状態で最密に充填されている。そして、隣り合う複数の蓄電装置10の中心軸はそれぞれ、この中心軸に垂直な仮想平面において略正三角形に配置されている。より具体的には、各中心軸と上記仮想平面との交点を線で結んだ場合に略正三角形が形成されるように配置されている。発熱体30は各蓄電装置10の側周面に300度弱巻き付けられて当接している。即ち、発熱体の抱き角は300度弱である。
【0030】
図4,5に示すように、発熱体30は第1蓄電装置10a、第2蓄電装置10b及び第3蓄電装置10cの順(又はその逆順であってもよい)に接触しており、第1蓄電装置10aの中心軸(第1中心軸)11aと第2蓄電装置10bの中心軸(第2中心軸)11bを結ぶ線(第1直線)12aと、第2蓄電装置10bの中心軸11bと第3蓄電装置10cの中心軸(第3中心軸)11cとを結ぶ線(第2直線)12bとは異なる方向に伸びており、これら2つの線がなす角の角度は、例えば略60度である。しかし、これら2つの線がなす角の角度は略60度に限定されない。なお、上記説明における2つの中心軸を結ぶ線とは、具体的にはこれら2つの中心軸と垂直な仮想平面に対して、各中心軸と仮想平面との間で形成される交点どうしを結んだ線を意味する。そのため、上記角を構成する第1直線12aと第2直線12bとは、同一の仮想平面に形成された直線である。
【0031】
ここで、第1直線12aと平行であって第2蓄電装置10bと接する接線13を
図4に示す平面(仮想平面)上に引いたとき、第3蓄電装置10cの側面が仮想平面に切り取られた側周面(第3側周面)の一部14は、第1直線12aと接線13との間に存在している。ただし、後述するように隣り合う蓄電装置10どうし、および蓄電装置10に当接した発熱体30どうしが接触しないように配置されている。
【0032】
発熱体30は、第1蓄電装置10aの側周面(第1側周面)に当接している第1接触部32aと、第2蓄電装置10bの側周面(第2側周面)に当接している第2接触部32bと、第3蓄電装置10cの側周面(第3側周面)に当接している第3接触部32cとを備えている。また、蓄電装置10と接触していない部分である第1非接触部33a、第2非接触部33bも発熱体30は備えている。
図4においては、第1非接触部33aは、第1接触部32aと第2接触部32bとの間に存在している。第2非接触部33bは第2接触部32bと第3接触部32cとの間に存在している。なお、発熱体30の非接触部とは、帯状の発熱体30においてその表裏面のどちらにも蓄電装置10が当接していない部分を意味する。
【0033】
前記接線13と第2蓄電装置10bとの接点15に関して、接点15と第1直線12aとの距離を距離αとすると、この距離αは第2の蓄電装置10bの半径に等しい。また、第2接触部32bにおいて第3接触部33cに近い側の端部16、即ち第2接触部32bと第2非接触部33bとの境界は、第3蓄電装置10cの側周面の一部14が前記接線13よりも第1直線12a側に存しているという位置関係のため、前記接点15よりも第1直線12aに近い位置にある。従って前記端部16と第1直線12aとの距離βは前記距離αよりも小さくなる。さらに、第2非接触部33bも同様の理由で前記接点15よりも第1直線12aに近い位置にある。そのため第2非接触部33bと第1直線12aとの距離γは前記距離αよりも小さくなる。
【0034】
また、第1蓄電装置10aと第3蓄電装置10cとが隣合っている領域50では第1接触部32aと第3接触部32cとが当接面の裏面同士を対向させているが、その裏面同士は接触しておらず離間している。この領域50において第1接触部32aと第3接触部32cとが接触するとともに第1蓄電装置10aおよび第3蓄電装置10cのうち一方の蓄電装置が異常に高い温度に達した場合、互いに接触している第1接触部32aおよび第3接触部32cを介して、上記一方の蓄電装置から他方の蓄電装置へ積極的に熱が伝達するおそれがある。これに対して、第1接触部32aと第3接触部32cとが離間することにより、このような熱伝達が抑制される。
【0035】
図5に示すように、本実施形態においては、発熱体30は第1蓄電装置10aから隣の第2蓄電装置10b、さらに隣の第3蓄電装置10cへと連続的に巻き付けられていくところ、第1蓄電装置10aと第3蓄電装置10cは隣合っている配置になっている。つまり、第1蓄電装置10a、第2蓄電装置10b及び第3蓄電装置10cによってそれらの中心軸11a,11b,11cが正三角形の配置となっている。従って、発熱体30は1つの蓄電装置10の側周面に巻き付けられて(接触せしめられて)、次にその蓄電装置10からその隣の蓄電装置10に伸びて隣の蓄電装置10の側周面に巻き付けられていくのであるが、発熱体30が順に巻き付けられていく複数の蓄電装置10は、隣接する蓄電装置10の中心軸どうしを結ぶ線から構成される角の角度が略60度となるようにジグザグに配置されている。蓄電モジュール100では、1つの発熱体30が順に接触していく複数の蓄電装置10は、一直線上に隣り合って並んだ蓄電装置10の列のうち、隣り合った2つの列を構成している。本実施形態の蓄電モジュールの中には8つの列があるので、発熱体30は4つ配置されている。この発熱体30の数は上記の数量に限定されない。1つの長尺の発熱体が配置されていてもよい。
【0036】
蓄電モジュール100においては、各蓄電装置10にシート状の発熱体30が180度以上の抱き角で接触しているので、各蓄電装置10を素早く且つ効率よく予熱することができる。また全ての蓄電装置10においてほぼ同じ抱き角で発熱体30が接触しているので、各蓄電装置10に発熱体30から与えられる熱量が偏ることが抑制される。また、シート状の発熱体30が80℃以上になると破断するので、複数の蓄電装置10のうち1本が蓄電装置内部の異常で高温になり高熱を発した場合、その蓄電装置10に接触している発熱体30は破断するので、発熱体30が連続して接触していた隣の蓄電装置10に異常による熱が伝わることが抑制される。そのため、隣の蓄電装置10に高温発生の連鎖が生じることが抑制され、安全が確保できる。なお、本開示の蓄電モジュールでは、発熱体は所定の温度を超えたときに必ずしも破断しなくてもよい。
【0037】
(実施形態2)
実施形態2に係る蓄電モジュール200は、蓄電装置10に対する発熱体30の配置だけが実施形態1の蓄電モジュール100と異なっているので、実施形態1と異なっている点を以下に説明し、実施形態1と同じ点の説明は省略する。
【0038】
図6は本実施形態に係る蓄電モジュール200の内部の一部(複数の蓄電装置10の中の一部と発熱体30の一部)を取り出して、蓄電装置10の中心軸に沿って上側から見た図である。
図7は
図6の一部を取り出した図である。
【0039】
蓄電モジュール200では、発熱体30は第1蓄電装置10aではなく、第2蓄電装置10bに隣り合う別の蓄電装置10dに接触し(別の接触部32d)、その次に第2蓄電装置10bに接触し、それから第3蓄電装置10cに接触している。第1蓄電装置10aには別の発熱体39が接触している。
【0040】
蓄電モジュール200においては、各蓄電装置10に対して発熱体30,39は側周面に240度弱巻き付けられており、抱き角が240度弱である。また、発熱体30が順に接触していく第4蓄電装置10d、第2蓄電装置10b、第3蓄電装置10cは、3つの第4中心軸11d、第2中心軸11b、第3中心軸11cを結ぶ複数の線から構成される角の角度が
図7に表される平面上で略120度である。従って、発熱体30が順に巻き付けられていく複数の蓄電装置10は略120度の角度でジグザグに配置されている。しかし、本実施形態の蓄電モジュール200において、この角度は120度に限定されない。
【0041】
第1の蓄電装置10aと第3の蓄電装置10cとが隣り合っている領域210では第1接触部32aの裏面と第3の蓄電装置10cの側周面とが対向しているが、両者は接触しておらず離間している。そのため、第1の蓄電装置10aと第3の蓄電装置10cのいずれか一方が異常状態となり高温になってしまっても、この一方の蓄電装置で生じた熱が他方の蓄電装置へ伝わることが抑制される。そのため、他方の蓄電装置が加熱されて劣化したり、異常状態になることを抑制できる。
【0042】
また、蓄電モジュール200では、第3中心軸11cと第4中心軸11dとを結ぶ線を第3直線12cとし、第4中心軸11dと第2中心軸11bとを結ぶ線を第4直線12dとする。第3直線12cと第4直線12dは異なる方向に延びている。この第3直線と第4蓄電装置の第4側周面との第1交点17aと、第3直線12cと第3側周面との第2交点17bと結ぶ線分の最小寸法Δが、第3直線が延びる方向における第2蓄電装置の寸法Eより小さく、発熱体30は、前記第3蓄電装置と接触した第3接触部の一部と、第4蓄電装置が接触した第4接触部の一部とが、第3蓄電装置と第4蓄電装置の間に介在するよう設けられていてもよい。この構成によっても本開示の蓄電モジュールでは、発熱体が複数の蓄電装置の側周面の半分以上の領域を覆うことが可能となる。そのため、従来の蓄電モジュールより短時間で加熱を行うことが可能となる。
【0043】
実施形態2の蓄電モジュール200は、各蓄電装置10への発熱体30の接触部がなす角(抱き角)が180度を超えているので、実施形態1の蓄電モジュール100と同様に従来の蓄電モジュールより加熱速度を高める効果を奏する。また、実施形態1と同じ発熱体30を用いれば、実施形態1と同様に1本の蓄電装置10が高温になっても隣り合う複数の蓄電装置10に高温発生の連鎖が抑制され、安全が確保できる。
【0044】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0045】
蓄電装置は筒状であればよく、円筒でなくてもよい。また、蓄電モジュールに含まれる複数の蓄電装置は、隣接する蓄電装置どうしが端子板の配置位置が互いに反対側に配置されるように配列し一方の蓄電装置の端子板を他方の電池のケースに電気的に接続し直列接続を形成してもよい。
【0046】
また、配列された複数の蓄電装置どうしを並列接続する場合は、各蓄電装置のケースの底部どうしを接続してもよい。
【0047】
以上のように、本開示の蓄電モジュールは、複数の筒状の蓄電装置と、前記複数の蓄電装置を加熱するシート状の発熱体とを備えた蓄電モジュールであって、複数の前記蓄電装置はそれぞれ筒状のケースを有し、これらのケースの中心軸が互いに平行になるように、前記複数の蓄電装置は並べられ、前記発熱体は、前記複数の蓄電装置の側周面と連続して当接した複数の接触部を有し、前記蓄電装置に対する前記複数の接触部の抱き角は180度よりも大きい構成を有している。
【0048】
この構成により、発熱体と各蓄電装置との接触面積を増やすことができる。そのため、より多くの熱量を供給できることができるようになるため、温度上昇ここでのケースの中心軸は、ケースの側面に平行な中心軸のことである。また、シート状の発熱体が複数存して、各発熱体が複数の蓄電装置のうちの一部である所定の数の蓄電装置の側周面と連続して当接していてもよい。
【0049】
前記複数の蓄電装置は、第1中心軸を有した第1蓄電装置、第2中心軸を有した第2蓄電装置、第3中心軸を有した第3蓄電装置を含み、前記第1蓄電装置、前記第2蓄電装置及び前記第3蓄電装置は互いに隣合っており、前記第1~第3中心軸と垂直な仮想平面において、前記第1中心軸と前記第2中心軸を結ぶ第1直線と、前記第2中心軸と前記第3中心軸を結ぶ第2直線は異なる方向に延びるように、前記第1~第3蓄電装置が並んでおり、前記第1直線と平行であり、第2蓄電装置の側周面である第2側周面と接する接線と前記第1直線との間に、前記第3蓄電装置の側周面である第3側周面の一部が介在しており、前記発熱体の複数の接触部は、前記第2側周面と当接した第2接触部および前記第3側周面と当接した第3接触部を含む構成であってもよい。前記発熱体は第1蓄電装置、第2蓄電装置および第3蓄電装置の順に連続して当接している。
【0050】
前記接線と前記第2側周面との接点と前記第1直線との距離を距離αとしたとき、前記発熱体の前記第2接触部における前記接点から前記第3接触部に近い側の端部までの領域と、前記第1直線との距離βは、前記距離αより小さくてもよい。
【0051】
前記発熱体は前記第2蓄電装置の側周面と当接した前記第2接触部と前記第3接触部の側周面と当接した前記第3接触部の間に前記第2、第3蓄電装置と当接していない非接触部を有し、前記非接触部と前記第1直線との距離γは、距離αより小さくてもよい。
【0052】
前記発熱体の接触部において、前記蓄電装置と当接した面の裏面は別の前記蓄電装置と離間している。
【0053】
隣り合う前記蓄電装置の間において、それぞれの前記蓄電装置に接触している前記発熱体どうしは離間していてもよい。1つの蓄電モジュールに複数の発熱体が存している場合は、同一の発熱体どうしが離間していると共に異なる発熱体どうしも離間している。
【0054】
前記発熱体の非接触部は60℃以上で破断する。
【0055】
前記複数の蓄電装置は、第4中心軸を有した第4蓄電装置、第5中心軸を有した第5蓄電装置、第6中心軸を有した第6蓄電装置を含み、前記第4~第6中心軸と垂直な仮想平面において、前記第4中心軸と前記第5中心軸を結ぶ第3直線と、前記第5中心軸と前記第6中心軸を結ぶ第4直線は異なる方向に延びるように、前記第4~第6蓄電装置が並んでおり、 前記第3直線と前記第4蓄電装置の第4側周面との交点を第1交点とし、第3直線と前記第5蓄電装置の第5側周面との交点を第2交点としたとき、前記第1交点と前記第2交点とを結ぶ線分の最小寸法は、前記第3直線が延びる方向における前記第6蓄電装置の寸法より小さく、前記発熱体が、前記第4側周面と接触した第4接触部と、前記第5側周面と接触した第5接触部と、前記第6蓄電装置の第6側周面と接触した第6接触部とを有し、前記発熱体の延在する方向において、前記第4接触部と前記第5接触部との間に前記第6接触部が設けられ、前記第4蓄電装置と前記第5蓄電装置の間に前記第4接触部の一部と前記第5接触部の一部が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
7 ケース
10 蓄電装置
10a 第1蓄電装置
10b 第2蓄電装置
10c 第3蓄電装置
11a 第1中心軸
11b 第2中心軸
11c 第3中心軸
12a 第1直線
12b 第2直線
12c 第3直線
12d 第4直線
13 接線
15 接点
16 第2接触部における第3接触部に近い側の端部
17a 第1交点
17b 第2交点
30 発熱体
32b 第2接触部
32c 第3接触部
33a 第1非接触部
33b 第2非接触部
35,37 樹脂シート
36 導電性の発熱層(発熱部材)
100 蓄電モジュール
200 蓄電モジュール