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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】保冷材の検査装置及び検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/024 20210101AFI20240322BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20240322BHJP
   G01K 7/00 20060101ALI20240322BHJP
   G01K 15/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G01K1/024
G01K1/14 L
G01K7/00 321J
G01K15/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022568759
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2022022756
(87)【国際公開番号】W WO2023042495
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2021149552
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍵本 優大
(72)【発明者】
【氏名】小島 真弥
(72)【発明者】
【氏名】吉村 晃久
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正人
(72)【発明者】
【氏名】宮野 暁史
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 秀司
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-214446(JP,A)
【文献】特開2002-87542(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061067(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0059448(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00 - 19/00
F25D 3/00 - 3/14
B65D 81/18
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷ボックス内の保冷材の表面に取り付けられた温度センサによる前記保冷材の検出温度をRFタグから受信するRFリーダと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記保冷ボックス内に保冷される物品の最低管理温度に所定の第1値を加えた下限温度、及び、前記保冷材の凝固温度から所定の第2値を引いた上限温度の少なくともいずれか一方の温度と、前記RFリーダにより受信された前記保冷材の検出温度と、の比較結果を示す情報を出力し、
前記保冷ボックス内にて前記物品が前記最低管理温度を下限とする保冷温度範囲で保冷される場合、
前記制御装置は、
前記保冷材が、前記保冷温度範囲及び前記保冷材の凝固温度よりも低い第1温度の環境にて冷却されてから、前記保冷温度範囲内の第2温度の環境にて温度調整された第1保冷材である場合には、前記第1保冷材の検出温度が前記下限温度以上であるか否かを示す情報を出力し、
前記保冷材が、前記保冷温度範囲内における前記保冷材の凝固温度以下の第3温度の環境にて冷却された第2保冷材である場合には、前記第2保冷材の検出温度が前記上限温度以下であるか否かを示す情報を出力する、保冷材の検査装置。
【請求項2】
保冷ボックス内の保冷材の表面に取り付けられた温度センサによる前記保冷材の検出温度をRFタグから受信するRFリーダと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記保冷ボックス内に保冷される物品の最低管理温度に所定の第1値を加えた下限温度、及び、前記保冷材の凝固温度から所定の第2値を引いた上限温度の少なくともいずれか一方の温度と、前記RFリーダにより受信された前記保冷材の検出温度と、の比較結果を示す情報を出力し、
前記下限温度と前記上限温度との差が所定値以上である場合、
前記保冷材の検出温度が前記下限温度以上且つ前記上限温度以下であるか否かを示す情報を出力する、保冷材の検査装置。
【請求項3】
前記第1値及び前記第2値は、前記保冷材における中心と表面との温度差、前記温度センサの検出誤差、及び、前記温度差と前記検出誤差とを加算した値の少なくともいずれか1つである、請求項1又は2に記載の保冷材の検査装置。
【請求項4】
前記制御装置は、予め取得した、目標温度と前記温度センサによる検出温度との差又は比、により補正された温度を前記保冷材の検出温度として用いる、請求項1乃至のいずれか一項に記載の保冷材の検査装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記RFリーダから発信された電波を前記RFタグが受信したときの強度に基づいて補正された温度を前記保冷材の検出温度として用いる、請求項1乃至のいずれか一項に記載の保冷材の検査装置。
【請求項6】
前記RFタグはパッシブ型であり、
前記制御装置は、前記RFタグと前記RFリーダとの間の少なくとも距離に応じた強度の電波を前記RFリーダから前記RFタグに送信する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の保冷材の検査装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記保冷ボックス内の前記RFタグに記憶されている前記保冷材の情報を前記RFリーダにより取得し、前記保冷材の情報に基づいて所定の前記保冷材が前記保冷ボックスに収容されているか否かを判定する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の保冷材の検査装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記保冷ボックス内の前記RFタグから発信されて前記RFリーダにより受信された電波の強度に基づいて、前記保冷ボックスに前記保冷材が収容されているか否かを判定する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の保冷材の検査装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記保冷ボックス内の前記RFタグにより受信された電波の強度に基づいて、前記保冷材の状態を判定する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の保冷材の検査装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記比較結果に基づき前記保冷材が利用可能と判定すると、前記保冷材の利用回数を更新して前記RFタグに記憶する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の保冷材の検査装置。
【請求項11】
前記保冷ボックスに収容された前記保冷材の温度を検出する前記温度センサと、
前記温度センサによる前記保冷材の検出温度を送信する前記RFタグと、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の保冷材の検査装置と、を備えている、保冷材の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保冷材の検査装置及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の保冷材を用いた断熱容器として、特許文献1の断熱容器が知られている。この断熱容器には真空断熱パネル及び蓄冷剤が収容されており、真空断熱パネルにより断熱された保冷空間が蓄冷剤により冷却されている。また、保冷空間の温度を検知する温度センサ、及び、この検知データを通信する通信部が断熱容器内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/017903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、医薬品等の輸送には、外気温に係わらず所定時間、所定の温度範囲内の低温で維持する厳しい温度管理が求められる。これに対し、上記のような断熱容器は、温度センサによる検知データを通信することにより、保冷空間の温度管理を行っている。
【0005】
しかしながら、保冷空間の温度は蓄冷剤の温度に依存しているが、蓄冷剤の温度管理については上記特許文献1に記載されていない。このため、断熱容器に投入される蓄冷剤の凍結不足及び温度調整不足などにより、蓄冷剤の温度が所定の温度範囲を逸脱して低過ぎる場合も高過ぎる場合も、保冷空間を所定温度に所定時間、維持することができない。
【0006】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、保冷空間における所定の温度環境を維持することができる保冷材の検査装置及び検査システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る保冷材の検査装置は、保冷ボックス内の保冷材の表面に取り付けられた温度センサによる前記保冷材の検出温度をRFタグから受信するRFリーダと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記保冷ボックス内に保冷される物品の最低管理温度に所定の第1値を加えた下限温度、及び、前記保冷材の凝固温度から所定の第2値を引いた上限温度の少なくともいずれか一方の温度と、前記RFリーダにより受信された前記保冷材の検出温度と、の比較結果を示す情報を出力する。この構成によれば、物品の最低管理温度及び保冷材の凝固温度の少なくともいずれか一方の温度に基づいて保冷材の温度を検査することにより、保冷材により保冷される保冷空間における所定の温度環境を維持することができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る保冷材の検査装置では、第1の態様において、前記第1値及び前記第2値は、前記保冷材における中心と表面との温度差、前記温度センサの検出誤差、及び、前記温度差と前記検出誤差とを加算した値の少なくともいずれか1つである。
【0009】
この構成によれば、物品の最低管理温度又は保冷材の凝固温度、保冷材の表面と中心との温度差、温度センサの検出誤差、及び、これらの加算値に基づいた温度により、保冷材を検査している。これにより、例えば、保冷材の中心の温度が低過ぎて、保冷ボックス内の物品が保冷材により冷却されて凍結又は低温劣化することを抑制することができる。また、保冷材の中心の温度が高過ぎて、保冷材により冷却された保冷空間を所定の温度に維持する時間が所定時間よりも短くなることを抑制することができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る保冷材の検査装置では、第1又は2の態様において、前記保冷ボックス内にて前記物品が前記最低管理温度を下限とする保冷温度範囲で保冷される場合、前記制御装置は、前記保冷材が、前記保冷温度範囲及び前記保冷材の凝固温度よりも低い第1温度の環境にて冷却されてから、前記保冷温度範囲内の第2温度の環境にて温度調整された第1保冷材である場合には、前記第1保冷材の検出温度が前記下限温度以上であるか否かを示す情報を出力し、前記保冷材が、前記保冷温度範囲内における前記保冷材の凝固温度以下の第3温度の環境にて冷却された第2保冷材である場合には、前記第2保冷材の検出温度が前記上限温度以下であるか否かを示す情報を出力する。この構成によれば、保冷材の冷却方法に応じて保冷材をより精度良く検査することができる。
【0011】
本発明の第4の態様に係る保冷材の検査装置では、第1又は2の態様において、前記制御装置は、前記下限温度と前記上限温度との差が所定値以上である場合、前記保冷材の検出温度が前記下限温度以上且つ前記上限温度以下であるか否かを示す情報を出力する。この構成によれば、保冷材の冷却方法によらず保冷材をより簡単に検査することができる。
【0012】
本発明の第5の態様に係る保冷材の検査装置では、第1乃至4のいずれかの態様において、前記制御装置は、予め取得した、目標温度と前記温度センサによる検出温度との差又は比、により補正された温度を前記保冷材の検出温度として用いる。この構成によれば、検出誤差を小さくして保冷材をより精度良く検査することができる。また、温度センサ毎に検出温度を補正することにより、下限温度と上限温度との差を大きく採れ、保冷材の冷却方法によらず保冷材をより簡単に検査することができる。
【0013】
本発明の第6の態様に係る保冷材の検査装置では、第1乃至5のいずれかの態様において、前記制御装置は、前記RFリーダから発信された電波を前記RFタグが受信したときの強度に基づいて補正された温度を前記保冷材の検出温度として用いる。この構成によれば、検出誤差を小さくして保冷材をより精度良く迅速に検査することができる。
【0014】
本発明の第7の態様に係る保冷材の検査装置では、第1乃至6のいずれかの態様において、前記RFタグはパッシブ型であり、前記制御装置は、前記RFタグと前記RFリーダとの間の少なくとも距離に応じた強度の電波を前記RFリーダから前記RFタグに送信する。この構成によれば、温度センサによる保冷材の検出温度の精度を高め、保冷材をより精度良く検査することができる。
【0015】
本発明の第8の態様に係る保冷材の検査装置では、第1乃至7のいずれかの態様において、前記制御装置は、前記保冷ボックス内の前記RFタグに記憶されている前記保冷材の情報を前記RFリーダにより取得し、前記保冷材の情報に基づいて所定の前記保冷材が前記保冷ボックスに収容されているか否かを判定する。この構成によれば、保冷材の入れ間違い及び入れ忘れを低減することができる。
【0016】
本発明の第9の態様に係る保冷材の検査装置では、第1乃至8のいずれかの態様において、前記制御装置は、前記保冷ボックス内の前記RFタグから発信されて前記RFリーダにより受信された電波の強度に基づいて、前記保冷ボックスに前記保冷材が収容されているか否かを判定する。この構成によれば、保冷材の入れ間違い及び入れ忘れを低減することができる。
【0017】
本発明の第10の態様に係る保冷材の検査装置では、第1乃至9のいずれかの態様において、前記制御装置は、前記保冷ボックス内の前記RFタグにより受信された電波の強度に基づいて、前記保冷材の状態を判定する。この構成によれば、RFリーダから発信された電波をRFタグが受信したときのRFタグのRSSIは、保冷材の状態に依存する。このため、このRFタグのRSSIを用いることにより、保冷材の検査をより精度良く実施することができる。
【0018】
本発明の第11の態様に係る保冷材の検査装置では、第1乃至10のいずれかの態様において、前記制御装置は、前記比較結果に基づき前記保冷材が利用可能と判定すると、前記保冷材の利用回数を更新して前記RFタグに記憶する。この構成によれば、保冷材の利用計画をより簡単に実施することができる。
【0019】
本発明の第12の態様に係る保冷材の検査システムは、前記保冷ボックスに収容された前記保冷材の温度を検出する前記温度センサと、前記温度センサによる前記保冷材の検出温度を送信する前記RFタグと、第1乃至11のいずれかの態様の保冷材の検査装置と、を備えている。この構成によれば、保冷材を検査して、保冷材により所定の保冷空間を維持することができる。
【0020】
本開示の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1に係る保冷材の検査装置及び検査システムを示す斜視図である。
図2】保冷材の検査装置及び検査システムを示す断面図である。
図3】保冷材の検査装置及び検査システムの構成を示す機能ブロック図である。
図4】第1保冷材の検査方法の一例を示すフローチャートである。
図5】第2保冷材の検査方法の一例を示すフローチャートである。
図6】下限温度と上限温度との差が所定値以上の場合の保冷材の検査方法の一例を示すフローチャートである。
図7】温度センサの検出温度を補正するための装置を概略的に示す断面図である。
図8】変形例9に係る保冷材の検査方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0023】
(実施の形態)
実施の形態に係る保冷材10の検査システム11は、図1に示すように、保冷材10に取り付けられた温度センサ20、RFタグ30、及び、保冷材10の検査装置12を備えている。保冷材10の検査装置12は、保冷ボックス40内の温度センサ20により検出されてRFタグ30により出力された保冷材10の温度に基づいて、保冷材10を検査する。
【0024】
<保冷ボックス>
図1及び図2の例では、保冷ボックス40は、その内部空間である保冷空間を有し、医薬品、検体及び食品等の物品Aを所定の温度環境の保冷空間にて保管したり輸送したりするために用いられる。保冷ボックス40は、保冷容器41及び保冷蓋42を備えている。保冷容器41よりも保冷蓋42側を上側と称し、その反対側を下側と称する。また、上下方向に対して直交し、互いに直交する方向を左右方向及び前後方向と称するが、保冷ボックス40の配置方向はこれに限定されない。
【0025】
保冷容器41は、第1保護層43及び第1真空断熱体44を有している。第1保護層43及び第1真空断熱体44のそれぞれは、例えば、内部空間及び上側開口を有した箱形状を有している。第1保護層43の内部空間が第1真空断熱体44よりも大きい。第1保護層43の内部空間に第1真空断熱体44が収容されて、第1保護層43が第1真空断熱体44の外面を覆う。これにより、第1保護層43及び第1真空断熱体44により形成された保冷容器41は、内部空間である保冷空間、及び、上側開口を有した箱形状を有する。
【0026】
第1保護層43は、発泡スチロール等の非金属の緩衝材であり、外部からの衝撃及び振動等から第1真空断熱体44及び物品Aの破損を防いでいる。第1真空断熱体44は、芯材及び外被材を有し、保冷空間と外部との熱伝導を遮断している。芯材は、例えば、連続気泡ウレタンフォーム等の連続気泡体、発泡スチロール等の発泡樹脂材、繊維の集合体、及び、無機微粒子の集合体など、非金属の多孔質体である。外被材は、樹脂等の非金属材料であり、ガスバリア性を有し、芯材を覆った内部の圧力を大気圧よりも低く維持する。
【0027】
保冷蓋42は、第2保護層45及び第2真空断熱体46を有し、例えば、平板形状である。第2真空断熱体46は平板形状であって、第2保護層45は第2真空断熱体46の外面を覆い、第2真空断熱体46を保護する。第2保護層45は、第1保護層43と同様に非金属の緩衝材である。第2真空断熱体46は、第1真空断熱体44と同様の芯材及び被覆材を有している。なお、第2真空断熱体46の被覆材には、金属フィルムを用いてもよい。
【0028】
保冷蓋42は、保冷容器41の上側開口よりも大きく、保冷容器41の上側開口を開閉可能に設けられている。保冷蓋42が保冷容器41の上側開口を開放すると、保冷容器41の上側開口を介して保冷空間に物品Aなどを出し入れ可能となる。保冷蓋42が保冷容器41の上側開口を塞ぐと、保冷容器41の保冷空間が密閉される。
【0029】
<収容ボックス及び保冷材>
このような保冷ボックス40には、収容ボックス47及び保冷材10が収容されている。収容ボックス47は、薬などの物品Aを保冷空間にて収容する容器である。なお、保冷ボックス40には収容ボックス47が収容されておらず、物品Aは収容ボックス47を介さずに保冷ボックス40内にそのまま収容されていてもよい。
【0030】
収容ボックス47は、収容容器48及び収容蓋49を含んでいる。収容容器48は上端が開口した箱形状を有している。収容蓋49は、平板形状であって、収容容器48の上端開口を開閉可能に収容容器48の上端に取り付けられている。収容ボックス47は保冷ボックス40の保冷空間よりも小さく、保冷ボックス40の内面と収容ボックス47の外面との間に隙間がある。
【0031】
保冷材10は、例えば、パラフィン及び水に、ゲル化する為の添加剤、及び、融点又は凝固点を調整する為の添加剤を加えた材料を樹脂製容器に封入して形成される。このパラフィン及び樹脂製容器によって、電波は保冷材10を透過することができる。また、保冷材10は、例えば、平板形状を有しており、保冷ボックス40の内面と収容ボックス47の内面との間に配置される。例えば、6枚の保冷材10は、保冷ボックス40における配置位置に応じて、下側保冷材10d、上側保冷材10u、右側保冷材10r、左側保冷材10l、前側保冷材10f及び後側保冷材10bを有している。保冷ボックス40の保冷空間を取り囲む内面は、下側内面、上側内面、右側内面、左側内面、前側内面及び後側内面を有している。収容ボックス47の外面は、下側外面、上側外面、右側外面、左側外面、前側外面及び後側外面を有している。
【0032】
下側保冷材10dは、保冷ボックス40の下側内面とこれに対向する収容ボックス47の下側外面との間に配置される。上側保冷材10uは、保冷ボックス40の上側内面とこれに対向する収容ボックス47の上側外面との間に配置される。右側保冷材10rは、保冷ボックス40の右側内面とこれに対向する収容ボックス47の右側外面との間に配置される。左側保冷材10lは、保冷ボックス40の左側内面とこれに対向する収容ボックス47の左側外面との間に配置される。前側保冷材10fは、保冷ボックス40の前側内面とこれに対向する収容ボックス47の前側外面との間に配置される。後側保冷材10bは、保冷ボックス40の後側内面とこれに対向する収容ボックス47の後側外面との間に配置される。
【0033】
また、保冷材10は、その凍結方法によって複数の種類(例えば、第1保冷材10及び第2保冷材10)を有している場合がある。第1保冷材10は、保冷ボックス40の保冷温度範囲及び第1保冷材10の凝固温度よりも低い第1温度の環境にて冷却されてから、保冷温度範囲内の第2温度の環境にて温度調整された保冷材10である。第2保冷材10は、保冷温度範囲内における第2保冷材10の凝固温度以下の第3温度の環境にて冷却された保冷材10である。
【0034】
<温度センサ、RFタグ>
保冷材10には、温度センサ20及びRFタグ30が取り付けられている。温度センサ20は、保冷材10の表面の所定位置に固定されている。例えば、保冷材10を平面視したときに、保冷材10の中心に重なるように温度センサ20が保冷材10上に配置されている。図2の例では、保冷材10が保冷ボックス40の内面と収容ボックス47の外面との間に配置されている場合に、保冷ボックス40の内面に対向する保冷材10の外側表面に温度センサ20が取り付けられている。この保冷材10の外面をその外から見たときに、温度センサ20は保冷材10における中心と重なる位置に配置される。これにより、保冷材10上において温度センサ20は保冷材10の中心に最も近い位置に配置される。なお、収容ボックス47の外面に対向する保冷材10の内側表面に温度センサ20が取り付けられていてもよい。
【0035】
図3に示すように、温度センサ20として、熱電対、抵抗温度デバイス及びサーミスタなどが例示され、保冷材10の表面の温度を検出する。温度センサ20は、RFタグ30と電気的に接続されており、温度センサ20による保冷材10の検出温度をRFタグ30に出力する。温度センサ20は、RFタグ30と一体的にユニットを形成していてもよいし、RFタグ30とリード線などにより接続されていてもよい。
【0036】
RFタグ30は、例えば、パッシブ型であって、制御回路であるタグ制御回路31、メモリであるタグメモリ32、及び、アンテナであるタグアンテナ33を有している。タグメモリ32には、RFタグ30が取り付けられた保冷材10の識別情報及びRFタグ30の識別情報が予め記憶されている。タグ制御回路31は、温度センサ20による検出温度及び各識別情報を電波によりタグアンテナ33から送信する。なお、RFタグ30はパッシブ型に限られず、アクティブ型又はセミアクティブ型であってもよい。
【0037】
<保冷材の検査装置>
保冷材10の検査装置12は、RFリーダ50及び制御装置61を備えている。RFリーダ50は、例えば、台13の上面から窪む窪みに嵌められており、その上面が台13の上面と同一平面を形成するように台13の上面から現れている。台13の上面には、検査対象の保冷材10が収容された保冷ボックス40が載置される。これにより、保冷ボックス40の下面がRFリーダ50に対向し、保冷ボックス40内の保冷材10は保冷蓋42よりもRFリーダ50側に配置される。
【0038】
RFリーダ50は、制御回路であるリーダ制御回路51、及び、アンテナであるリーダアンテナ52を有し、RFタグ30からの情報の読み取り機能を有している。なお、RFリーダ50は、読み取り機能に加えて、RFタグ30への情報の書き込み機能を有していてもよい。RFリーダ50は、保冷ボックス40外においてコンピュータ60に接続されている。RFリーダ50は、RFタグ30からの情報を電波によりリーダアンテナ52で受信し、コンピュータ60に出力する。
【0039】
コンピュータ60は、制御装置61、表示装置62及び入力装置65を有している。制御装置61は、演算処理回路63、及び、メモリである制御メモリ64を含んでいる。制御メモリ64は、RAM及びROMなど、演算処理回路63からアクセス可能な記録媒体であって、RFタグ30から取得した情報、及び、所定のプログラムを記憶している。
【0040】
演算処理回路63は、CPUなどのプロセッサなどを含み、制御メモリ64に記憶されているプログラムを実行することにより各種処理を実行する。例えば、制御装置61は、RFタグ30からの保冷材10の情報をRFリーダ50から受信し、この情報に基づいて保冷材10を検査したり、保冷材10の情報を表示装置62に表示したりする。
【0041】
表示装置62は、例えば、ディスプレイであって、制御装置61からの情報を表示する。入力装置65は、例えば、キーボード及びマウスであって、ユーザにより操作されることにより制御装置61に情報を入力する。
【0042】
<RFIDの動作>
RFリーダ50は、保冷材10の温度を取得するための取得信号を電波によりリーダアンテナ52から送信する。RFタグ30は、RFリーダ50からの電波をタグアンテナ33により受信する。これにより、RFタグ30において、整流又は共振などによってタグアンテナ33に電力が発生する。
【0043】
この電力により、タグ制御回路31及び温度センサ20に電流が流れる。そして、温度センサ20は、取り付けられた保冷材10の表面の温度を検出する。RFタグ30のタグ制御回路31は、温度センサ20による検出温度、及び、タグメモリ32に記憶されている各識別情報を、電波によりタグアンテナ33から送信する。RFリーダ50のリーダ制御回路51は、RFタグ30からの保冷材10の検出温度及び識別情報、並びに、RFタグ30の識別情報をリーダアンテナ52により受信し、コンピュータ60に出力する。
【0044】
<保冷材の検査方法>
保冷ボックス40の保冷空間における保冷環境としては、例えば、保冷空間の温度である保冷温度範囲、及び、保冷温度範囲を維持する時間である保冷時間が挙げられる。保冷温度範囲は、保冷空間に収容される薬などの物品Aに応じて予め定められている。保冷時間は、物品Aを輸送する時間などに応じて予め定められている。
【0045】
例えば、物品Aを保冷ボックス40に収容して日本からヨーロッパに輸送する場合の保冷環境としては、2℃以上且つ8℃以下の保冷温度範囲、及び、5日間以上の保冷時間が予め定められている。この保冷温度範囲は、物品Aの最低管理温度Tf以上且つ最高管理温度以下である。最低管理温度Tfは、物品Aが凍結する凝固温度よりも高く、例えば、2℃である。最高管理温度は、物品Aが熱劣化する温度よりも低い。
【0046】
このような所定の保冷環境を具備するために、保冷空間を冷却する保冷材10の温度が管理される。つまり、保冷材10の温度が低過ぎると、保冷空間の温度が所定の保冷温度範囲よりも低くなる。これにより、保冷空間において物品Aが過度に冷却されて、物品Aの温度が物品Aの所定の最低管理温度Tfよりも低くなって凍結したり、低温劣化したりするおそれがある。
【0047】
そこで、保冷ボックス40に保冷材10を収容してから物品Aを収容する前に、保冷ボックス40内における保冷材10を検査装置12により検査する。保冷材10として第1保冷材10が用いられる場合、検査では、制御装置61は、保冷ボックス40内に保冷される物品Aの最低管理温度Tfに、所定の第1値を加えた下限温度Tlと、RFリーダ50により受信された保冷材10の検出温度との比較結果を示す情報を出力する。例えば、第1値は、保冷材10における中心と表面との温度差Te、及び、温度センサ20の検出誤差Tsを加算した値である。
【0048】
具体的には、第1保冷材10は、第1温度である-25℃の冷凍庫内の環境に、第1時間である24hr、放置される。これにより、第1保冷材10は、保冷温度範囲及び凝固温度Tmよりも低い温度まで冷却されて、急速凍結する。例えば、第1保冷材10の凝固温度Tmは、保冷温度範囲内の5.4℃である。
【0049】
それから、第1保冷材10は、冷凍庫から調温庫に移されて、3℃以上且つ5℃以下の第2温度の調温庫内の環境に、第2時間である24hr、放置される。これにより、第1保冷材10は凍結した状態のまま、第1保冷材10の温度は上昇する。そして、温度が調整された第1保冷材10は、保冷ボックス40内に収容される。
【0050】
この調温庫にて第1保冷材10は、温度が上昇する。この際、調温庫内の第2温度は、第1温度の環境で冷却された第1保冷材10の温度よりも高いため、第1保冷材10の温度は調温庫内の温度環境に接する表面から上昇する。このため、第1保冷材10の温度は中心よりも表面が高くなる。よって、第1保冷材10の表面に取り付けられた温度センサ20による検出温度は、第1保冷材10の中心の温度よりも高くなる。また、温度センサ20の検出温度には誤差が含まれている場合がある。
【0051】
この第1保冷材10における中心と表面との温度差Teは、実験及びシミュレーションなどに基づいて予め定められており、例えば、1.0℃である。また、温度センサ20の検出誤差Tsも、実験及びシミュレーションなどに基づいて予め定められており、例えば、0.5℃である。ここで、物品Aの最低管理温度Tfが2.0である。この場合、判定の下限温度Tl=Tf+Te+Ts=3.5である。
【0052】
保冷ボックス40内における第1保冷材10の温度センサ20による検出温度と、下限温度Tlを比較する。これにより、例えば、検出温度が下限温度Tlよりも低い場合には、第1保冷材10の中心温度が最低管理温度Tfよりも低い可能性がある。この場合、第1保冷材10により冷却される保冷空間は保冷温度範囲よりも低くなり、物品Aが凍結するおそれがある。このため、第1保冷材10は利用できないと判定される。一方、温度センサ20による第1保冷材10の検出温度が下限温度Tl以上である場合には、第1保冷材10の中心温度が最低管理温度Tf以上である。このため、第1保冷材10は利用可能と判定される。
【0053】
なお、保冷材10の温度差Teは、検査時に温度センサ20により検出された保冷材10の表面温度、及び、検査前の冷却時の保冷材10の周囲の環境温度などにより取得されてもよい。この場合、制御装置61は、検査時の温度センサ20による検出温度、及び、環境温度に基づいて熱回路網方程式などの計算又はシミュレーションを用いて温度差Teを取得してもよい。
【0054】
環境温度は、例えば、保冷材10の冷却時に調温庫に備えられた温度センサ20以外の他の温度センサ、又は、温度センサ20によって、調温庫内で保冷材10が調温されているときに検出される。他の温度センサは、制御装置61に電気的に接続されており、調温庫内の温度を環境温度として検出して制御装置61に出力する。また、温度センサ20は、検出した温度を環境温度として、RFタグ30から、調温庫の内部又は近傍に配置されたRFリーダ50を介して、制御装置61に出力する。なお、環境温度は、1つの値であっても、複数の値であってもよい。環境の温度が複数の値である場合、他の温度センサ又は温度センサ20により保冷材10が調温されているときに継続的に検出された温度の遷移データであってもよい。
【0055】
また、保冷材10の温度差Teは、保冷材10の表面温度の経時変化率などにより取得されてもよい。例えば、制御装置61は、温度センサ20により保冷材10の温度を所定時間毎に検出し、この温度の変化率が所定値(例えば、1℃/1分)以下になると、保冷材10の表面からの放熱量及び保冷材10の中心から表面への移動熱量が平衡状態であるとみなす。これにより、制御装置61は、保冷材10の物性値に基づく熱コンダクタンスに基づいて温度差Teを取得してもよい。ここで、温度差Teを無視することができるほど小さい場合には、第1値及び後述の第2値は、温度センサ20の検出誤差Tsであるとしてもよい。
【0056】
さらに、保冷材10の温度差Teは、保冷材10が収容された保冷ボックス40内の保冷温度に基づいて取得されてもよい。この保冷温度は、例えば、保冷材10が収容された保冷ボックス40に備えられた温度センサ20以外の他の温度センサにより検出される。制御装置61は、他の温度センサによる検出温度に基づいて保冷材10の表面における放熱量を計算し、この放熱量に基づいて温度差Teを取得してもよい。
【0057】
<保冷材の検査装置の制御方法>
保冷材10に複数の種類がある場合には、制御装置61は、保冷材10の種類が第1保冷材10であるか否かを判定する。例えば、保冷材10の種類は、ユーザが入力装置65により制御装置61に入力したり、又は、RFタグ30に予め記憶されておりRFタグ30からRFリーダ50を介して制御装置61に入力されたりする。制御装置61は、保冷材10の種類が第1保冷材10であれば、例えば、図4に示すフローチャートに沿って保冷材10を検査する。なお、保冷材10に複数の種類がなければ、保冷材10の種類を判定せずに、ステップS1の処理を実行する。
【0058】
例えば、第1保冷材10は、第1温度に設定された冷凍庫内にて第1時間、冷却されてから第2温度に設定された調温庫内にて第2時間、温度調整された後、保冷ボックス40に収容される。この第1保冷材10の収容後であって物品Aの収容前に、制御装置61は、RFリーダ50から取得信号を送信させる。これにより、温度センサ20及びRFタグ30に電流が流れ、温度センサ20は第1保冷材10の表面温度を検出し、RFタグ30はこの温度センサ20による第1保冷材10の検出温度に第1保冷材10の識別情報及びRFタグ30の識別情報を付けて送信する。RFリーダ50は、RFタグ30からの情報を受信し、制御装置61はこの情報を取得し記憶する(ステップS1)。
【0059】
制御装置61は、第1保冷材10の検出温度と下限温度Tlとを比較し、この比較結果を示す情報を出力する。例えば、制御装置61は、第1保冷材10の検出温度が下限温度Tl以上であるか否かを判定し(ステップS2)、この判定結果を出力する。
【0060】
ここで、制御装置61は、第1保冷材10の検出温度が下限温度Tl以上であるか否かを示す情報を出力する。この場合、検出温度が下限温度Tl以上であれば(ステップS2:YES)、第1保冷材10の温度差Te及び温度センサ20の検出誤差Tsを考慮しても、第1保冷材10の中心温度は物品Aの最低管理温度Tf以上である。このため、制御装置61は、第1保冷材10による物品Aの凍結が抑制されているとして、第1保冷材10を利用可能と判定する(ステップS3)。
【0061】
一方、第1保冷材10の検出温度が下限温度Tl未満であれば(ステップS2:NO)、第1保冷材10の中心温度が物品Aの最低管理温度Tf未満である可能性がある。このため、制御装置61は、第1保冷材10により物品Aが凍結するおそれがあるとして、第1保冷材10を利用不可と判定する(ステップS4)。
【0062】
そして、制御装置61は、この第1保冷材10の検出温度、識別情報及び判定結果を表示装置62に表示する。これにより、ユーザは、第1保冷材10が利用可能か否かを容易に把握することができる。
【0063】
そして、制御装置61は、保冷ボックス40に収容されている全ての第1保冷材10について検査する。これにより、全ての第1保冷材10が利用可能と判定されると、保冷ボックス40を利用可能として、保冷ボックス40に薬などの物品Aを収容して利用することができる。一方、利用不可と判定された第1保冷材10がある場合には、その第1保冷材10を別の第1保冷材10に入れ替えて、保冷ボックス40に新たに収容された第1保冷材10について検査する。
【0064】
なお、温度センサ20は、複数回、第1保冷材10の温度を検出して、制御装置61は、複数の検出温度により各第1保冷材10を検査してもよい。この場合、RFリーダ50は、所定時間間隔で取得信号を送信する。この取得信号に応じて温度センサ20は第1保冷材10の温度を検出してRFタグ30により送信する。これを複数回、繰り返して、制御装置61は複数の検出温度を取得し、この検出温度の平均値と下限温度Tlを比較してもよい。又は、制御装置61は検出温度を取得する度に検出温度と下限温度Tlとを比較して、所定回数以上、検出温度が下限温度以上である場合に第1保冷材10を利用可能と判定してもよい。
【0065】
ここで、上記の所定回数は、例えば、温度センサ20により予め検出された保冷材10の温度のばらつきの統計情報に基づいて定められてもよい。この場合、保冷材10の検出温度の分散が、所定の確率密度関数による分散に合致するように、所定回数が定められてもよい。又は、予めRFタグ30のRSSIの検査回数とRFタグ30の発熱による上昇温度との関係を示す近似式を取得しておき、本近似式が適用できる最小回数に検査の回数を設定してもよい。
【0066】
また、上記では、第1保冷材10の収容後であって物品Aの収容前に、検査装置12は保冷ボックス40に収容された保冷材10を検査した。ただし、保冷材10の検査方法は、これに限定されない。検査装置12は、RFタグ30から出力されてRFリーダ50により取得された温度センサ20による保冷材10の検出温度に基づいて、保冷材10が冷却されていることを検出すると、保冷材10を自動的に検査してもよい。
【0067】
<変形例1>
変形例1に係る保冷材10の検査装置12では、上記実施の形態において、制御装置61は、所定の保冷温度範囲の保冷ボックス40内にて物品Aが保冷される場合、保冷材10が、保冷温度範囲内における保冷材10の凝固温度以下の第3温度の環境にて冷却された第2保冷材10である場合には、第2保冷材10の検出温度が上限温度以下であるか否かを示す情報を出力する。
【0068】
<保冷材の検査方法>
所定の保冷環境を具備するために、保冷ボックス40の保冷空間を冷却する第2保冷材10の温度が管理される。つまり、第2保冷材10の凍結が不十分であって第2保冷材10の温度が高過ぎると、第2保冷材10による冷却効果の時間が短くなり、所定の保冷温度範囲に維持される保冷空間の保冷時間が所定の保冷時間よりも短くなり、物品Aの温度が物品Aの所定の最高管理温度よりも高くなってしまうおそれがある。
【0069】
そこで、第2保冷材10を保冷ボックス40に収容してから物品Aを収容する前に、保冷ボックス40内において第2保冷材10を検査装置12により検査する。この検査では、制御装置61は、第2保冷材10の凝固温度Tmから第2値を引いた上限温度Thと、RFリーダ50により受信された温度センサ20による保冷材10の検出温度とを比較し、この比較結果を示す情報を出力する。例えば、第2値は、第2保冷材10における中心と表面との温度差Te及び温度センサ20の検出誤差Tsを加算した値である。
【0070】
具体的には、第2保冷材10は、例えば、第3温度である2℃以上且つ3℃以下の冷蔵庫内の環境に、第3時間である120hr、放置される。例えば、この第3温度は、2℃以上且つ8℃以下の保冷温度範囲内であって、第2保冷材10の凝固温度Tmの5.4℃以下であり、また、第2保冷材10を急速凍結する第1温度よりも高い。第3時間は、第2保冷材10を急速凍結する第1時間よりも長く、第3温度にて第2保冷材10が凍結する時間を実験及びシミュレーションなどに基づいて予め定められている。
【0071】
これにより、第2保冷材10は、温度が低下する。この際、冷蔵庫内の第3温度は第2保冷材10の温度よりも低いため、第2保冷材10の温度は冷蔵庫内の温度環境に接する表面から低下する。このため、第2保冷材10の温度は中心よりも表面が低くなる。よって、第2保冷材10の表面に取り付けられた温度センサ20による検出温度は、第2保冷材10の中心の温度よりも低くなる。また、温度センサ20の検出温度には誤差が含まれている場合がある。
【0072】
この第2保冷材10における中心と表面との温度差Teは、実験及びシミュレーションなどに基づいて予め定められており、例えば、1.0℃である。また、温度センサ20の検出誤差Tsも、実験及びシミュレーションなどに基づいて予め定められており、例えば、0.5℃である。ここで、第2保冷材10の凝固温度Tmが5.4℃である。この場合、判定の上限温度Th=Tm-Te-Ts=3.9である。
【0073】
保冷ボックス40内における第2保冷材10の温度センサ20による検出温度と、上限温度Thとは、比較され、比較結果が出力される。例えば、検出温度が上限温度Thよりも高い場合には、第2保冷材10の中心温度が第2保冷材10の凝固温度Tmよりも高い可能性がある。この場合、第2保冷材10は凍結が不十分な可能性があり、第2保冷材10により冷却される保冷空間の保冷温度範囲に維持する保冷時間よりも短くなり、物品Aが最高管理温度よりも高くなるおそれがある。このため、第2保冷材10は利用できないと判定される。一方、温度センサ20による第2保冷材10の検出温度が上限温度Th以下である場合には、第2保冷材10の中心温度が凝固温度Tm以下であって、第2保冷材10が凍結完了しているため、第2保冷材10は利用可能と判定される。
【0074】
<保冷材の検査装置の制御方法>
保冷材10に複数の種類がある場合には、制御装置61は、保冷材10の種類が第2保冷材10であるか否かを判定する。例えば、保冷材10の種類は、ユーザが入力装置65により制御装置61に入力したり、又は、RFタグ30に予め記憶されておりRFタグ30からRFリーダ50を介して制御装置61に入力されたりする。制御装置61は、保冷材10の種類が第2保冷材10であれば、例えば、図5に示すフローチャートに沿って保冷材10を検査する。なお、保冷材10に複数の種類がなければ、保冷材10の種類を判定せずに、ステップS1の処理を実行する。また、図5では、図4のステップS2の処理に代えて、ステップS12の処理を実行する。
【0075】
具体的には、第2保冷材10は、2℃以上且つ3℃以下の第3温度に設定された冷蔵庫内にて、第3時間の120hr、冷却されてから、保冷ボックス40に収容される。この第2保冷材10の収容後であって物品Aの収容前に、制御装置61は、RFタグ30からの第2保冷材10の検出温度及び識別情報並びにRFタグ30の識別情報をRFリーダ50から取得し記憶する(ステップS1)。
【0076】
制御装置61は、第2保冷材10の検出温度と上限温度Thとを比較し、この比較結果を示す情報を出力する。例えば、制御装置61は、第2保冷材10の検出温度が上限温度Th以下であるか否かを判定し(ステップS12)、この判定を示す情報を出力する。
【0077】
ここで、検出温度が上限温度Th以下であれば(ステップS12:YES)、第2保冷材10の温度差Te及び温度センサ20の検出誤差Tsを考慮しても、第2保冷材10の中心温度は第2保冷材10の凝固温度Tm以下である。このため、制御装置61は、第2保冷材10が凍結完了しており保冷時間を維持することができるとして、第2保冷材10を利用可能と判定する(ステップS3)。
【0078】
一方、第2保冷材10の検出温度が上限温度Thよりも高ければ(ステップS12:NO)、第2保冷材10の中心温度が凝固温度Tmよりも高い可能性がある。このため、制御装置61は、第2保冷材10が全体的に凍結していないおそれがあるとして、第2保冷材10を利用不可と判定する(ステップS4)。
【0079】
そして、制御装置61は、この第2保冷材10の検出温度、識別情報及び判定結果を表示装置62に表示する。これにより、ユーザは、第2保冷材10が利用可能か否かを容易に把握することができる。そして、制御装置61は、保冷ボックス40に収容されている全ての第2保冷材10について検査し、全ての第2保冷材10が利用可能であれば、その保冷ボックス40を利用可能と判定する。
【0080】
なお、温度センサ20は、複数回、第2保冷材10の温度を検出して、制御装置61は、複数の検出温度により各第2保冷材10を検査してもよい。この場合、制御装置61は複数の検出温度を取得し、この検出温度の平均値と上限温度Thを比較し、平均値が上限温度Th以下である場合に第2保冷材10を利用可能と判定してもよい。又は、制御装置61は検出温度を取得する度に検出温度と上限温度Thとを比較して、所定回数以上、検出温度が上限温度Th以下である場合に第2保冷材10を利用可能と判定してもよい。
【0081】
<変形例2>
変形例2に係る保冷材10の検査装置12では、上記実施の形態において、制御装置61は、下限温度Tlと上限温度Thとの差が所定値以上である場合、保冷材10の検出温度が下限温度Tl以上且つ上限温度Th以下であるか否かを示す情報を出力する。
【0082】
<保冷材の検査装置の制御方法>
所定値は、下限温度Tlと上限温度Thとを区別可能な温度であって、例えば、1℃である。この場合、下限温度Tlと上限温度Thとの差が1℃以上である場合には、保冷材10の検査装置12は、例えば、図6に示すフローチャートに沿って制御装置61により制御される。なお、図6では、図4のステップS2の処理に代えて、ステップS22の処理を実行する。
【0083】
まず、保冷ボックス40内に凍結された保冷材10の収容後であって物品Aの収容前に、制御装置61は、RFタグ30からの保冷材10の検出温度及び識別情報並びにRFタグ30の識別情報をRFリーダ50から取得し記憶する(ステップS1)。そして、制御装置61は、保冷材10の検出温度が下限温度Tl以上且つ上限温度Th以下であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0084】
ここで、検出温度が下限温度Tl以上且つ上限温度Th以下であれば(ステップS22:YES)、保冷材10の中心温度は、物品Aの最低管理温度Tf以上であり、また、保冷材10の凝固温度Tm以下である。このため、制御装置61は、保冷材10による物品Aの凍結が抑制されながら、保冷時間を維持することができるとして、保冷材10を利用可能と判定する(ステップS3)。
【0085】
一方、保冷材10の検出温度が下限温度Tl未満又は上限温度Thよりも高ければ(ステップS22:NO)、制御装置61は、保冷材10を利用不可と判定する(ステップS4)。そして、制御装置61は、この保冷材10の検出温度、識別情報及び判定結果を表示装置62に表示する。これにより、ユーザは、保冷材10の種類に関わらずに保冷材10が利用可能か否かを容易に検査することができる。そして、制御装置61は、保冷ボックス40に収容されている全ての保冷材10について検査し、全ての保冷材10が利用可能であれば、その保冷ボックス40を利用可能と判定する。
【0086】
なお、温度センサ20は、複数回、保冷材10の温度を検出して、制御装置61は、複数の検出温度により各保冷材10を検査してもよい。この場合、制御装置61は複数の検出温度を取得し、この検出温度の平均値と下限温度Tl及び上限温度Thとを比較し、平均値が下限温度Tl以上且つ上限温度以下である場合に保冷材10を利用可能と判定してもよい。又は、制御装置61は検出温度を取得する度に検出温度と下限温度Tl及び上限温度Thとを比較して、所定回数以上、検出温度が下限温度Tl以上且つ上限温度Th以下である場合に保冷材10を利用可能と判定してもよい。
【0087】
<変形例3>
変形例3に係る保冷材10の検査装置12では、上記実施の形態及び変形例1-2において、制御装置61は、予め取得した、目標温度と温度センサ20による検出温度との差又は比により補正された温度を保冷材10の検出温度として用いる。
【0088】
例えば、図7に示すように、5℃に温度が設定された恒温槽70に第1断熱材71及び第2断熱材72が配置されている。第1断熱材71及び第2断熱材72は、平板形状である。第1断熱材71は第2断熱材72よりも下方に配置されており、第1断熱材71の上面と第2断熱材72の下面とは互いに対向する。
【0089】
第1断熱材71の上面には、下方に窪む凹部が設けられており、校正された熱電対などの基準温度センサ73が凹部内に配置されている。凹部内の基準温度センサ73に温度センサ20が接するように、第1断熱材71の上面上に温度センサ20及びRFタグ30が配置されている。この温度センサ20及びRFタグ30上に第2断熱材72が配置されている。これにより、基準温度センサ73、温度センサ20及びRFタグ30は、第1断熱材71と第2断熱材72との間に配置されており、第1断熱材71及び第2断熱材72により恒温槽70における風の影響が防がれる。
【0090】
基準温度センサ73は、制御装置61に電気的に接続されており、恒温槽70内の温度を検出して、この検出温度を目標温度として制御装置61に出力する。また、温度センサ20も恒温槽70内の温度を検出し、この検出温度及びRFタグ30の識別情報をRFタグ30からRFリーダ50を介して制御装置61に出力する。このように、基準温度センサ73及び温度センサ20は互いに同じ物の温度を検出しているため、制御装置61は、基準温度センサ73による検出温度である目標温度と温度センサ20による検出温度とを比較する。そして、制御装置61は、目標温度と検出温度との温度差、又は、目標温度に対する検出温度の温度比を算出し、この温度差又は温度比を温度センサ20の補正値とする。
【0091】
例えば、目標温度が5.0℃に対して、検出温度が5.5℃である場合、制御装置61は、この温度比である5.0/5.5=0.909を補正値として取得する。また、目標温度が5.0℃に対して、検出温度が4.2℃である場合、制御装置61は、この温度比である5.0/4.2=1.190を補正値として取得する。
【0092】
そして、制御装置61は、補正値及びRFタグ30の識別情報をRFリーダ50から出力する。RFタグ30は、この情報のうち、自己の識別情報を有する補正値を取得し、タグメモリ32に記憶する。
【0093】
保冷材10の検査時には、温度センサ20及びRFタグ30は保冷材10に取り付けられて、保冷材10が検査装置12により検査される。この保冷材10が保冷ボックス40に収容されてから物品Aが収容される前に、制御装置61は、取得信号をRFリーダ50から送信する。RFタグ30は、これを受けて、温度センサ20による検出温度を取得し、検出温度、識別情報及び補正値を送信する。制御装置61は、これらをRFリーダ50により取得し、温度センサ20による検出温度に補正値を積算して、検出温度を補正する。そして、制御装置61は、この補正した検出温度を保冷材10の検出温度として上限温度Th及び下限温度Tlの少なくともいずれか1つの温度を比較して、比較結果を示す情報を識別情報と共に出力する。例えば、制御装置61は、比較結果に基づいて保冷材10が利用可能か否かを判定し、この判定結果を表示する。
【0094】
このように、温度センサ20毎に補正値を取得して、保冷材10の検出温度を補正する。これにより、温度センサ20の検出誤差Tsを0.5よりも小さく、例えば、0.1とすることができる。この場合、例えば、下限温度Tl=Tf+Te+Ts=3.1、上限温度Th=Tm-Te-Ts=4.3となる。これにより、下限温度Tlと上限温度Thとの差を大きく採ることができ、保冷材10の凍結方法に係わらずに、図6に示すフローチャートに沿って保冷材10を検査することができる。
【0095】
なお、制御装置61は、目標温度と検査温度との温度比に代えて、これらの温度差を補正値として取得してもよい。この場合、目標温度が5.0℃に対して、検出温度が5.5℃である場合、制御装置61は、この温度差である5.0-5.5=-0.5を補正値として取得する。また、目標温度が5.0℃に対して、検出温度が4.2℃である場合、制御装置61は、この温度差である5.0-4.2=0.8を補正値として取得する。そして、制御装置61は、補正値及びRFタグ30の識別情報をRFタグ30に記憶する。保冷材10の検査時には、制御装置61は、温度センサ20による検出温度、識別情報及び補正値をRFタグ30からRFリーダ50を介して取得し、温度センサ20による検出温度に補正値を加算して、温度センサ20による検出温度を補正し、この補正した検出温度を保冷材10の検出温度として用いる。
【0096】
また、制御装置61は、予め取得した補正式により補正された温度を保冷材10の検出温度として用いる。この場合、制御装置61は、5℃の恒温槽70に配置された温度センサ20の検出温度をRFタグ30から取得し、また、5℃以外の温度(例えば、2℃)の恒温槽70に配置された温度センサ20の検出温度をRFタグ30から取得する。そして、制御装置61は、この2組の検出温度及び基準温度センサ73による検出温度である目標温度から線形近似式を補正式として取得し、この補正式及びRFタグ30の識別情報をRFタグ30に記憶する。保冷材10の検査時には、制御装置61は、検出温度、識別情報、補正式をRFタグ30からRFリーダ50を介して取得する。制御装置61は、補正式により検出温度を補正する。これにより、検出誤差Tsをさらに小さくすることができる。
【0097】
なお、検出誤差Tsをさらに小さく無視することができる場合、第1値及び第2値は、保冷材10における中心と表面の温度差Teである。この場合、判定の下限温度Tl=Tf+Teとなり、上限温度Th=Tm-Teとなる。そこで、図4のステップS2、図5のステップS12、図6のステップS22において、制御装置61は、この下限温度Tl及び上限温度Thを用いて保冷材10を検査する。
【0098】
<変形例4>
変形例4に係る保冷材10の検査装置12では、上記実施の形態及び変形例1-3において、RFタグ30はパッシブ型であり、制御装置61は、RFタグ30とRFリーダ50との間の少なくとも距離に応じた強度の電波をRFリーダ50からRFタグ30に送信する。なお、制御装置61は、強度に加えて、RFタグ30の向き及び周囲の環境条件などのアンテナの指向性に寄与する因子に応じたRFタグ30に適切な強度の電波をRFリーダ50からRFタグ30に送信してもよい。
【0099】
具体的には、図1に示すように、保冷ボックス40内において6枚の保冷材10は収容ボックス47を取り囲むように配置されている。このため、保冷材10の配置に応じて、保冷材10に取り付けられたRFタグ30と、RFタグ30を通信するRFリーダ50との間の距離は異なる。このため、仮にある強度の電波をRFリーダ50から送信した際、RFタグ30が受信する電波の強度であるRSSIは、距離が短いほど大きくなる。これにより、RFリーダ50から発信された電波をRFタグ30が受信したときのRFタグ30のRSSIが大きくなるほど、RFタグ30の発生熱量が大きくなり、RFタグ30により検出温度が送信される温度センサ20の誤差が大きくなる。
【0100】
このため、制御装置61は、RFタグ30のRSSIが所定範囲内になるように、RFタグ30とRFリーダ50との間の距離に応じて、RFリーダ50からRFタグ30に送信する電波の強度を取得する。ここで、RFタグ30のRSSIが所定範囲内になり、且つ、RFタグ30とRFリーダ50との間の距離が大きくなるほどRFリーダ50からRFタグ30に送信される電波の強度が大きくなるように、RFタグ30の識別情報とRFリーダ50の発信電波強度との対応関係が予め定められ制御メモリ64に記憶されている。例えば、RFリーダ50の発信電波強度は、下側保冷材10dのRFタグ30までの距離に応じた第1強度、上側保冷材10uのRFタグ30までの距離に応じた第2強度、右側保冷材10rまでの距離に応じた第3強度、左側保冷材10lまでの距離に応じた第4強度、前側保冷材10fに応じた第5強度、及び、後側保冷材10bに応じた第6強度が規定されている。
【0101】
制御装置61は、第1強度~第6強度のうち強度が小さい電波から順に電波をRFリーダ50から送信する。そして、各RFタグ30は、第1強度~第6強度のそれぞれの電波を受信する度に、受信した電波のRSSI、温度センサ20による保冷材10の検出温度及び保冷材10の識別情報、並びに、RFタグ30の識別情報を送信する。RFリーダ50はこれらの情報を受信し制御装置61に出力する。
【0102】
この際、RFタグ30は、そのRFリーダ50との間の距離に対応した強度の電波、その強度よりも小さい強度の電波及びその強度よりも大きい強度の電波を受信し、その度に検出温度などの情報を送信している。このため、制御装置61は、この情報の中から、所定範囲内のRSSIを含む情報を抽出し、この抽出情報の検出温度を保冷材10の検出温度として用いる。例えば、下側保冷材10dのRFタグ30は、第1強度~第6強度の各強度の電波を受ける度に、RSSIを取得し、RSSI、検出温度及び識別情報を送信する。このうち、RFタグ30は、第1強度の電波を受けたときのRSSIが所定範囲に入っており、これ以外の強度の電波を受けたときのRSSIは所定範囲外になる。よって、制御装置61は、このRFタグ30が第1強度~第6強度の各強度の電波を受けたときの情報から、第1強度の電波を受けたときのRSSIを含む情報を抽出し、この抽出情報の検出温度を保冷材10の検出温度として用いる。
【0103】
この抽出情報は、所定範囲より強いRSSIによるRFタグ30の熱の発生が抑えられたときの情報であるため、抽出情報を用いることにより温度センサ20の検出温度の誤差を低減することができる。また、抽出情報は、所定範囲よりも弱いRSSIによって温度センサ20が正常に動作しない事態を抑制したときの情報であるため、抽出情報を用いることにより温度センサ20の検出温度の誤差を低減することができる。
【0104】
また、予め定められたRFタグ30の識別情報とRFタグ30のRSSIとの対応関係を用いて、RFタグ30のRSSIから、RFタグ30の配置位置を推定することも可能である。このRFタグ30の配置位置に基づいて、所望されるRFタグ30以外の、近くにある別の保冷材のRFタグを読み取り対象外のRFタグとして除外することもできる。
【0105】
なお、上記RFタグ30の識別情報とRFリーダ50の電波の強度との対応関係は、例えば、以下のように定められてもよい。まず、制御装置61は、所定の強度の電波をRFリーダ50から各RFタグ30に送信する。RFタグ30は電波を受けて、その電波の受信時のRSSI及びRFタグ30の識別情報を電波により送信する。制御装置61は、RFリーダ50の電波の強度を変化させていき、その強度に対応するRFタグ30のRSSIが所定の範囲に入るときの、RFリーダ50から送信する電波の強度を取得し、RFタグ30の識別情報と対応付けて記憶する。
【0106】
また、RFタグ30とRFリーダ50との間の距離は、ユーザにより入力装置65から制御装置61に入力されてもよい。この場合、制御装置61は、この距離に応じた強度の電波とRFタグ30の識別情報とを対応付けて記憶する。このRFタグ30とRFリーダ50との間の距離と電波の強度は予め記憶されている。
【0107】
さらに、以下の通り、制御装置61は、抽出情報を抽出してもよい。すなわち、制御装置61は、RFタグ30のRSSIが所定範囲内になるように、RFリーダ50からRFタグ30に送信する電波の強度をRFタグ30とRFリーダ50との間の距離に基づいて予め取得する。制御装置61は、この電波の強度と、RFタグ30の識別情報とを対応付けて記憶し、RFタグ30の識別情報をこの識別情報に対応する強度の電波によりRFリーダ50から送信する。RFタグ30は、これを受けて、検出温度、RSSI及び識別情報を送信する。この際、RFタグ30は、自己の識別情報を有する電波だけでなく、別のRFタグ30に対する電波も取得し、電波を取得する度に、受信した識別情報(受信識別情報)、検出温度、RSSI及び自己の識別情報(送信識別情報)を送信する。制御装置61は、この情報をRFリーダ50により受けて、この情報の中から、受信識別情報と送信識別情報とが一致する情報を抽出し、この抽出情報の検出温度を保冷材10の検出温度として用いる。これにより、制御装置61は、RFタグ30のRSSIが所定範囲内に入るときの検出温度を用いることができる。
【0108】
<変形例5>
変形例5に係る保冷材10の検査装置12では、上記実施の形態及び変形例1-4において、制御装置61は、RFリーダ50から発信された電波をRFタグが受信したときの強度であるRSSIに基づいて補正された温度を保冷材10の検出温度として用いてもよい。
【0109】
具体的には、RFタグ30のRSSIが大きいほど、RFタグ30の発熱量が大きくなり、RFタグ30の温度が上昇し、RFタグ30に接続された温度センサ20による検出温度が高くなる。このため、制御装置61は、RFタグ30のRSSIとRFタグ30の発熱による上昇温度との対応関係式を予め取得し記憶している。なお、この対応関係式がRFタグ30毎に異なる場合には、RFタグ30のRSSIとRFタグ30の発熱による上昇温度とRFタグ30の識別情報との対応関係式が記憶される。
【0110】
制御装置61は、RFリーダ50から所定強度の電波を送信させる。RFタグ30は、これに応じて、RSSI及び温度センサ20による検出温度を取得し、検出温度、RSSI及び識別情報を送信する。制御装置61は、これらをRFリーダ50により取得し、所定の対応関係式に基づいてRFタグ30のRSSIから上昇温度を取得し、温度センサ20による検出温度から上昇温度を引いた温度を保冷材10の検出温度として用いる。これにより、図4のステップS2、図5のステップS12、及び、図6のステップS22において、RSSIに基づいて補正された温度である保冷材10の検出温度を用いることにより、短時間に且つより正確に保冷材10を検査することができる。
【0111】
以下の通り、RFタグ30のRSSIとRFタグ30の発熱による上昇温度との対応関係式は、例えば、以下のように取得される。まず、制御装置61は、電波の強度を掃引しながら、電波をRFリーダ50から送信する。これに応じて、RFタグ30は、電波の受信時のRSSI、温度センサ20による保冷材10の検出温度及び検出時間、並びに、識別情報を送信する。制御装置61は、RFタグ30のRSSIの下限値から上限値までの範囲において、RFタグ30のRSSIと温度センサ20の検出温度との対応関係から近似式である対応関係式を取得する。
【0112】
なお、制御装置61は、温度センサ20の検出温度及び検出時間との対応関係を採り、温度センサ20の検出時間に対して検出温度が時間的に振動し始めた点のRFタグ30のRSSIをその下限値と設定する。また、制御装置61は、RFタグ30のRSSIと温度センサ20の検出温度との対応関係から近似式を取得し、近似式からずれ始める点のRFタグ30のRSSIをその上限値として設定する。また、RFタグ30のRSSIの下限値及び上限値は予め定められていてもよい。さらに、具体的には、RSSIの好適な値は、例えば、15であり、予め取得されている。下限値は、RSSIの好適な値からマイナス30%の値であり、上限値は、RSSIの好適な値から+30%の値としてもよい。
【0113】
また、RFタグ30から送信される温度センサ20の検出温度に、電子回路のガウス雑音が重畳することがある。この場合は、制御装置61は、近似式を算出するにあたって、予め取得した計測点の確率密度分布に合致する検出温度を用いてもよい。
【0114】
また、制御装置61は、誤差を推定する誤差評価関数に基づいて、温度センサ20の検出温度±誤差評価関数を上限温度Th及び下限温度Tlのうちの少なくともいずれかの温度と比較して保冷材10の利用可否判定を行なってもよい。この時、「検出温度」は、制御装置61が各RFタグ30から取得した温度センサ20の検出温度の平均値、中間値及び最頻値のいずれかであってもよい。
【0115】
誤差評価関数は、例えば、温度の取得数の関数、RFタグ30のRSSIの関数、あるいはその両方の関数とすることができるが、これに限定するものではない。誤差評価関数は、例えば、誤差評価関数=f(温度の取得数)+g(RSSI)+定数、と表せる。ただし、誤差評価関数は、これに限定されない。
【0116】
ここで、f(温度の取得数)は、f(温度の取得数)=3σ/√温度の取得数、と表せる。このσは、温度誤差の標準偏差であって、予め取得しておいた温度の統計情報から取得されてもよいし、その時に取得していた温度データから取得されてもよい。このようにして、制御装置61は、温度を取得する度に温度±誤差評価関数を上限温度Th及び下限温度Tlと比較して、保冷材10の利用可否判定を行う。これにより、所定回数の温度を取得する前に必要十分な温度のデータ数を取得した段階で保冷材10の利用可否判定を行え、保冷材10の検査時間の短縮が可能となる。
【0117】
g(RSSI)は下記数1の式により得られる。ここで、N及びAnは予め求めておいた定数である。
【0118】
【数1】
【0119】
RFタグ30のRSSIとRFタグ30の発熱による上昇温度との関係式の誤差は、一般的に、RSSIの好適な値からのズレ量が大きいほど大きい。このように、RSSIにより誤差を推定することにより、保冷材10の利用可否判定を正確に行うことができる。また、RSSIが好適な値に近い場合はg(RSSI)が小さくなるため、この場合は、f(温度の取得数)が多くても誤差評価関数は全体として小さな値となる。このため、f(温度の取得数)が少ない場合に、保冷材10の利用可否判定の時間の短縮化できる。
【0120】
<変形例6>
変形例6に係る保冷材10の検査装置12では、上記実施の形態及び変形例1-5において、第1値及び第2値は、温度センサ20の検出誤差Tsである。
【0121】
具体的には、例えば、保冷材10を保冷ボックス40に収容してから物品Aを収容する前に、保冷ボックス40内において保冷材10を検査装置12により検査している。このとき、保冷材10を保冷ボックス40に収容してから、ある放置時間が経過した後に保冷材10を検査装置12によって検査してもよい。この放置時間において保冷材10における中心と表面の温度差Teは、緩和していき、小さくなる。
【0122】
このため、温度差Teが無視できるほど小さい場合には、第1値及び第2値は、温度センサ20の検出誤差Tsである。この場合、判定の下限温度Tl=Tf+Tsとなり、上限温度Th=Tm-Tsとなる。そこで、図4のステップS2、図5のステップS12、図6のステップS22において、制御装置61は、この下限温度Tl及び上限温度Thを用いて保冷材10を検査する。
【0123】
なお、上記放置時間は、例えば5分~10分など、予め定められていてもよい。又は、上記放置時間は、保冷材10の検出温度に基づいて定められてもよい。この場合、制御装置61は、RFタグ30からRFリーダ50を介して保冷材10の検出温度を取得し、この検出温度の経時変化が所定温度以下になった時間を放置時間として設定してもよい。こうすることで、例えば、保冷ボックス40が保冷材10と同等温度に予め予冷されていた場合には、保冷材10における中心と表面の温度差Teが緩和するまでの時間が短いため、短い放置時間で保冷材10を検出することができる。
【0124】
<変形例7>
変形例7に係る保冷材10の検査装置12では、上記実施の形態及び変形例1-6において、制御装置61は、保冷ボックス40内のRFタグ30に記憶されている保冷材10の情報をRFリーダ50により取得し、保冷材10の情報に基づいて所定の保冷材10が保冷ボックス40に収容されているか否かを判定する。
【0125】
具体的には、制御装置61には、保冷ボックス40に収容される保冷材10のサイズと枚数と保冷材10の材質などの種類とが対応付けられて予め記憶されている。例えば、収容ボックス47の下側外面及び上側外面は互いに同じ第1サイズを有し、左側外面及び右側外面は互いに同じ第2サイズを有し、前側外面及び後側外面は互いに同じ第3サイズを有する。収容ボックス47は直方体形状である場合には、第1サイズ、第2サイズ及び第3サイズは互いに異なる。
【0126】
保冷材10のサイズは、収容ボックス47の対向面のサイズと等しい。下側保冷材10d及び上側保冷材10uは第1サイズであり、右側保冷材10r及び左側保冷材10lは第2サイズであり、前側保冷材10f及び後側保冷材10bは第3サイズである。この場合、第1サイズの保冷材10が2枚、第2サイズの保冷材10が2枚、及び、第3サイズの保冷材10が2枚と制御装置61に記憶されている。
【0127】
RFタグ30のタグメモリ32には、RFタグ30が取り付けられた保冷材10の識別情報、サイズ及び種類が予め記憶されている。保冷ボックス40に保冷材10が収容されると、RFタグ30は、保冷材10の識別情報、サイズ及び種類を保冷材10の情報として送信する。RFリーダ50は、保冷材10の情報をRFタグ30から受信し、制御装置61に出力する。制御装置61は、1つの保冷ボックス40に収容されている保冷材10の枚数を保冷材10のサイズごとにカウントし、カウントした保冷材10の枚数を、記憶されている所定の枚数と比較する。
【0128】
各サイズのカウント枚数が所定枚数と等しければ、制御装置61は、RFリーダ50からの保冷材10の種類が記憶されている種類に一致するか否かを判定する。これらが同じであれば、制御装置61は、所定の保冷材10が保冷ボックス40に収容されていると判定する。カウント枚数が所定枚数と異なれば、制御装置61は、所定の保冷材10が保冷ボックス40に収容されていないと判定する。これにより、保冷材10の入れ間違い及び入れ忘れを防止することができる。
【0129】
<変形例8>
変形例8に係る保冷材10の検査装置12では、上記実施の形態及び変形例1-7において、制御装置61は、保冷ボックス40内のRFタグ30から発信されてRFリーダ50により受信された電波の強度に基づいて保冷ボックス40に保冷材10が収容されているか否かを判定する。
【0130】
例えば、図1に示すように、保冷ボックス40内において6枚の保冷材10は収容ボックス47を取り囲むように配置されている。このため、保冷ボックス40における保冷材10の配置に応じて、保冷材10に取り付けられたRFタグ30と、RFタグ30を通信するRFリーダ50との距離は異なる。このRFタグ30とRFリーダ50との間の距離が長いほど、RFリーダ50がRFタグ30から受信する電波の強度RSSIが小さくなる。
【0131】
この場合、RFリーダ50は、電波をRFタグ30から受信すると、そのRSSIを取得して制御装置61に出力する。制御装置61は、RFリーダ50のRSSIが所定強度未満であれば、そのRFタグ30が取り付けられた保冷材10は保冷ボックス40内に収容されていないと判定する。また、制御装置61は、RSSIが所定強度以上であれば、そのRFタグ30が取り付けられた保冷材10は保冷ボックス40内に収容されていると判定する。制御装置61は、保冷ボックス40内に収容されていると判定された保冷材10の枚数をカウントし、カウントした保冷材10の枚数と記憶されている所定の枚数とを比較する。
【0132】
カウント枚数が所定枚数と等しければ、制御装置61は、所定の保冷材10が保冷ボックス40に収容されていると判定する。カウント枚数が所定枚数と異なれば、制御装置61は、所定の保冷材10が保冷ボックス40に収容されていないと判定する。これにより、保冷材10の入れ間違い及び入れ忘れを防止することができる。
【0133】
なお、RFリーダ50は、互いの間隔を空けて配置された2つのリーダアンテナ52を有していてもよい。この場合、制御装置61は、2つのリーダアンテナ52のそれぞれの位置及び識別情報を対応付けて予め記憶している。制御装置61は、RFリーダ50に2つのリーダアンテナ52から順にそのリーダアンテナ52の識別情報を電波で送信させる。これに応じて、RFタグ30は、2つのリーダアンテナ52のそれぞれのリーダアンテナ52から電波を受けたときのRSSIを取得し、RSSI、自己の識別情報及び電波を送信したリーダアンテナ52の識別情報を送信する。制御装置61は、これらの情報をRFリーダ50により受信して、リーダアンテナ52の識別情報に応じた位置、及び、このリーダアンテナ52から電波を送信した際の各RFタグ30のRSSIを、2つのリーダアンテナ52に対して取得し、これらに基づいて各RFタグ30の距離を取得する。制御装置61は、RFタグ30の距離が所定距離よりも大きければ、RFタグ30に取り付けられた保冷材10が保冷ボックス40に収容されていないと判定してもよい。制御装置61は、RFタグ30の距離が所定距離以下であれば、RFタグ30に取り付けられた保冷材10が保冷ボックス40に収容されていると判定する。
【0134】
<変形例9>
変形例9に係る保冷材10の検査装置12では、上記実施の形態及び変形例1-8において、制御装置61は、保冷ボックス40内のRFタグ30により受信された電波の強度RSSIに基づいて保冷材10の状態を判定する。
【0135】
具体的には、制御装置61は、図8に示すフローチャートに沿って保冷材10を検査する。図8では、図4のステップS2とS3との間において、ステップS5の処理を実行する。なお、保冷材10の検出温度を上限温度Thと比較する場合、図5のステップS12とS3との間において、ステップS5の処理を実行する。また、保冷材10の検出温度を下限温度Tl及び上限温度Thと比較する場合、図6のステップS22とS3との間において、ステップS5の処理を実行する。
【0136】
図8のステップS2において、制御装置61は、検出温度が下限温度Tl以上である場合には(ステップS2:YES)、保冷材10が凍結状態か否かをRFリーダ50のRSSIに基づいて判定する(ステップS5)。このRFリーダ50がRFタグ30から受信する電波の強度であるRSSIは、RFタグ30が取り付けられている保冷材10の誘電率に依存する。この誘電率は、保冷材10の状態が凍結状態か融解状態かに応じて変わる。
【0137】
例えば、凍結した保冷材10に取り付けられたRFタグ30からのRFリーダ50のRSSIは、融解した保冷材10に取り付けられたRFタグ30からのRFリーダ50のRSSIよりも小さい。融解した液体の水の比誘電率は約80であるのに対し、凍結した氷の比誘電率は4.2である。このため、この保冷材10の状態とRFリーダ50のRSSIとの対応関係が制御装置61に予め記憶されている。
【0138】
制御装置61は、取得信号の電波をRFリーダ50から送信すると、RFタグ30は、この電波受信時のRSSI及びRFタグ30の識別情報を電波により出力する。制御装置61は、保冷材10の状態とRSSIとの対応関係に基づいてRFリーダ50のRSSIから保冷材10の凍結状態であるか否かを判定する。ここで、保冷材10の凍結状態であれば(ステップS2:YES)、制御装置61は、保冷状態を利用可能と判定する(ステップS3)。一方、保冷材10の融解状態であれば(ステップS2:NO)、制御装置61は、保冷状態を利用不可と判定する(ステップS4)。
【0139】
このように、温度センサ20による保冷材10の検出温度に加えてRFタグ30のRSSIに基づいて、保冷材10の状態をより正確に判定することができる。このため、温度センサの故障などにより温度センサ20による検出温度に大きな誤差が生じ、誤って融解した状態の保冷材10を使用してしまうことを防ぐことができる。なお、制御装置61は、保冷材10の状態と保冷材10の識別情報を対応付けて表示装置62に表示してもよい。
【0140】
なお、制御装置61は、保冷材10の相変異点に基づいて温度センサ20による検出温度を校正してもよい。具体的には、例えば、壁などによって温度センサ20に風が当たらないようにして、温度センサ20及びRFタグ30を取り付けた保冷材10を冷蔵庫又は調温庫に配置する。また、RFリーダ50又はそのリーダアンテナ52を、冷蔵庫又は調温庫の内部、或いは、その近傍に配置する。そして、制御装置61は、温度センサ20により検出された保冷材10の温度をRFタグ30からRFリーダ50を介して取得する。制御装置61は、この温度センサ20による検出温度の時間変位から保冷材10の相変異点を取得する。保冷材10の相変異点は、保冷材10の材質に応じて予め定められており、経年変化しない。このため、制御装置61は、保冷材10の所定の相変異点と、温度センサ20による検出温度に基づいた保冷材10の相変異点との差に応じて、温度センサ20による検出温度を校正する。このように、温度センサ20による検出温度は、メーカーなどに返却することなく定期的に校正することができる。なお、凍結した保冷材10が保冷ボックス40に収納されている場合、制御装置61は、温度センサ20による検出温度の経時変化から保冷材10が融解するときの相変異点(融解点)を取得し、この相変異点と保冷材10の所定の相変異点との差に基づいてRFタグ30の温度を校正してもよい。
【0141】
<変形例10>
変形例10に係る保冷材10の検査装置12では、上記実施の形態及び変形例1-9において、制御装置61は、比較結果に基づき保冷材10が利用可能と判定すると、保冷材10の利用回数を更新してRFタグ30に記憶する。
【0142】
例えば、RFタグ30は、保冷材10の利用回数をタグメモリ32に記憶している。そして、図4図5及び図6のステップS3の処理において、制御装置61は、保冷材10の利用可能と判定すると、その保冷材10の利用情報及びRFタグ30の識別情報をRFリーダ50からRFタグ30に送信する。
【0143】
RFタグ30は、自己の識別情報を含む保冷材10の利用情報を受信すると、利用回数を1つ増やしてタグメモリ32の利用回数を更新する。そして、RFタグ30は、次回の利用に際して検査されるときに、RFリーダ50から取得情報を受信すると、温度センサ20による保冷材10の検出温度、タグメモリ32に記憶されている保冷材10の識別情報及び利用回数、及び、RFタグ30の識別情報をRFリーダ50に送信する。RFリーダ50は、これらの情報を制御装置61に出力する。
【0144】
制御装置61は、保冷材10の識別情報及び利用回数を表示装置62に表示する。これにより、ユーザは、保冷材10の利用回数に基づいて保冷材10のメンテナンスの有無、及び、新しい保冷材10との交換などを計画することができる。
【0145】
<その他の変形例>
上記実施の形態及び全ての変形例では、温度センサ20は、RFタグ30がRFリーダ50から電波を受信した際に生じる電力によって動作して、保冷材10の温度を検出した。但し、温度センサ20は、バッテリを有しており、このバッテリからの電力により動作して、保冷材10の温度を検出してもよい。
【0146】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本開示の保冷材の検査装置及び検査システムは、所定の断熱性能を満たした真空断熱体を使用し続けることができる保冷材の検査装置及び検査システム等として有用である。
【符号の説明】
【0148】
10 :保冷材
11 :検査システム
12 :検査装置
20 :温度センサ
30 :RFタグ
40 :保冷ボックス
50 :RFリーダ
61 :制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8