(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】柑橘果皮中の機能性成分濃縮及び保持方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20240322BHJP
A23L 33/00 20160101ALI20240322BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
A23L33/00
(21)【出願番号】P 2019063309
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-03-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592134583
【氏名又は名称】愛媛県
(73)【特許権者】
【識別番号】507192378
【氏名又は名称】伊方サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 直大
(72)【発明者】
【氏名】金本 直晃
(72)【発明者】
【氏名】永田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】門田 歩
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-071928(JP,A)
【文献】特開2019-033681(JP,A)
【文献】特開2015-221001(JP,A)
【文献】特開2019-077655(JP,A)
【文献】特開2016-010348(JP,A)
【文献】機能性成分オーラプテンに富む食品素材「甘夏ミカン果皮ペースト」の開発.九州農業研究第65号(2003.5)研究成果発表、33-36頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性成分であるオーラプテンを全体の乾燥質量に対して0.7質量%以上含有する河内晩柑の果皮加工物であって、該果皮加工物が、生の果皮
が切断、粉砕若しくは破砕されたもの、乾燥された果皮、又は
乾燥された果皮が切断、粉砕若しくは破砕されたものである、果皮加工物。
【請求項2】
請求項1に記載の加工物を含む食品組成物。
【請求項3】
認知機能の維持又は改善用である、請求
項2に記載の食品組成物。
【請求項4】
機能性成分であるオーラプテン及び/又はポリメトキシフラボン類が濃縮又は保持された柑橘類の果皮加工物の製造方法であって、
柑橘類の果皮を冷凍する工程、並びに
冷凍後の柑橘類の果皮をブランチング処理及び水晒し処理する、又は冷凍後の柑橘類の果皮を水晒し処理する工程
を含
み、水晒しの時間が1~48時間である方法。
【請求項5】
前記柑橘類の果皮として、果皮の表面をスライスしたものを使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記柑橘類が、河内晩柑、温州みかん、ポンカン、清見、不知火、伊予柑、オレンジ、レモン、ライム、柚子、甘夏、八朔、文旦、グレープフルーツ、甘平、愛媛果試28号、なつみかん、せとか、カラ、はるみ、はれひめ、はるか、南津海、ネーブルオレンジ、天草、まりひめ、日向夏、タロッコ、ダイダイ、ひめのつき、アンコール、セミノール、カボス、モロ、じゃばら、たまみ、黄金柑、安政柑、天香、スダチ、キンカン、スィートスプリング、麗紅、マーコット、津之香、媛小春、シークワーサー、ひめあかり、西之香、三宝柑、サザンイエロー、あいおとめ、チャンドラポメロ、オレンジ日向、紀州みかん、早香、バンペイユ、ユコウ、オーラスター、福原オレンジ及び仏手柑からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
柑橘類の果皮中における、機能性成分であるオーラプテンを濃縮する方法であって、柑橘類の果皮を冷凍する工程
、並びに
冷凍後の柑橘類の果皮をブランチング処理及び/又は水晒し処理する工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類の果皮加工物、該加工物を含む食品組成物、柑橘類の果皮加工物の製造方法、及び柑橘類の果皮中における機能性成分を濃縮又は保持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本を始めとする先進諸国では、脳梗塞、頭部外傷、アルツハイマー病、パーキンソン病などの認知・記憶障害、様々なストレスに起因するうつ病及び不安症など、脳機能が低下した患者が増加しており、社会問題となっている。
【0003】
河内晩柑は、ザボン(Citrus maxima、Citrus grandis)の一種であり、文旦の血を引く自然雑種である。熊本県で発生し、現在は愛媛県愛南町、熊本県天草市などで生産されており、和製グレープフルーツと称されている。河内晩柑は、実を初夏まで木にならせておくため、一本の木に今期と来期の実が同時になっているという、他の品種には見られない特徴を有している。
【0004】
河内晩柑は、愛媛県が生産量全国1位の産地であり、年間約6000 t(平成27年)を生産している。そして、河内晩柑の果皮に含まれる機能性成分のオーラプテン、ヘプタメトキシフラボン等が、脳保護作用を示すことについて報告がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、河内晩柑の果皮にはヘプタメトキシフラボン及びオーラプテンが多く含まれていること、ヘプタメトキシフラボン及びオーラプテンを脳神経疾患治療、脳神経疾患予防または脳機能改善のための組成物の有効成分とすることが報告されている。
【0006】
また、特許文献2には、ペースト状に破砕処理した河内晩柑果皮を含む河内晩柑果皮入り飲食品及びその製造方法に関する発明が記載されているが、オーラプテン濃度を高めるための処理に関する記載は特に存在していない。
【0007】
そして、非特許文献1では、甘夏ミカン果皮を沸騰水中で60分間加熱した場合、オーラプテン含量が1.09 mg/gDWから1.55 mg/gDWに高まり濃縮されることが報告されている。
【0008】
また、特許文献3では、柑橘、柑橘果皮、柑橘搾汁粕等の果皮を含む柑橘を液体窒素を用いて-50℃から-150℃に凍結し、得られた凍結物に衝撃を与えて微細化し、微細化物を液状とし、これを油成分、液成分、バガスに分離させることで、油成分、液成分を高効率で取得できることが報告されている。このように、特許文献3で報告されているのは、油成分等を分離する技術であって、果皮中の機能性成分を濃縮させるという技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-71928号公報
【文献】特開2019-33681号公報
【文献】特開2006-75115号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】「甘夏ミカン果皮のオーラプテンとその利用」、食品と容器、2014、Vol.55、No.3、p.154-161
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、機能性成分が濃縮された柑橘類の果皮加工物、及び該加工物を含む食品組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、機能性成分が濃縮又は保持された柑橘類の果皮加工物の製造方法、及び柑橘類の果皮中における機能性成分を濃縮又は保持する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、河内晩柑の果皮を冷凍した後、ブランチング及び水晒し処理を行うことにより、果皮の形体を保持したまま、オーラプテンを2倍以上にまで濃縮できるという知見を得た。また、ポリメトキシフラボン類については、冷凍することで果皮中に保持されることを見出した。
【0013】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の柑橘類の果皮加工物、食品組成物、柑橘類の果皮加工物の製造方法、及び柑橘類の果皮中における機能性成分を濃縮又は保持する方法を提供するものである。
【0014】
項1.機能性成分であるオーラプテンを全体の乾燥質量に対して0.7質量%以上含有する河内晩柑の果皮加工物。
項2.項1に記載の加工物を含む食品組成物。
項3.認知機能の維持又は改善用である、項1又は2に記載の食品組成物。
項4.機能性成分であるオーラプテン及び/又はポリメトキシフラボン類が濃縮又は保持された柑橘類の果皮加工物の製造方法であって、
柑橘類の果皮を冷凍する工程
を含む方法。
項5.冷凍後の柑橘類の果皮をブランチング処理及び/又は水晒し処理する工程を更に含む、項4に記載の方法。
項6.前記柑橘類の果皮として、果皮の表面をスライスしたものを使用する、項4又は5に記載の方法。
項7.前記柑橘類が、河内晩柑、温州みかん、ポンカン、清見、不知火、伊予柑、オレンジ、レモン、ライム、柚子、甘夏、八朔、文旦、グレープフルーツ、甘平、愛媛果試28号、なつみかん、せとか、カラ、はるみ、はれひめ、はるか、南津海、ネーブルオレンジ、天草、まりひめ、日向夏、タロッコ、ダイダイ、ひめのつき、アンコール、セミノール、カボス、モロ、じゃばら、たまみ、黄金柑、安政柑、天香、スダチ、キンカン、スィートスプリング、麗紅、マーコット、津之香、媛小春、シークワーサー、ひめあかり、西之香、三宝柑、サザンイエロー、あいおとめ、チャンドラポメロ、オレンジ日向、紀州みかん、早香、バンペイユ、ユコウ、オーラスター、福原オレンジ及び仏手柑からなる群から選択される少なくとも1種である、項4~6のいずれか一項に記載の方法。
項8.柑橘類の果皮中における、機能性成分であるオーラプテン及び/又はポリメトキシフラボン類を濃縮又は保持する方法であって、
柑橘類の果皮を冷凍する工程
を含む方法。
項9.冷凍後の柑橘類の果皮をブランチング処理及び/又は水晒し処理する工程を更に含む、項8に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の柑橘類の果皮加工物の製造方法によれば、機能性成分であるオーラプテン、ポリメトキシフラボン類を濃縮及び保持させることができる。特に、有機溶媒等の薬剤を用いることや複雑な製造工程を経ることなく、容易に、柑橘類の果皮において機能性成分を濃縮及び保持させることが可能である。
【0016】
本発明の河内晩柑の果皮加工物は、オーラプテンが濃縮されているため、この機能性成分に基づく優れた作用を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
なお、本明細書において「含有する、含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0019】
本発明の機能性成分であるオーラプテン及び/又はポリメトキシフラボン類が濃縮又は保持された柑橘類の果皮加工物の製造方法は、
柑橘類の果皮を冷凍する工程
を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の柑橘類の果皮中における、機能性成分であるオーラプテン及び/又はポリメトキシフラボン類を濃縮又は保持する方法は、
柑橘類の果皮を冷凍する工程
を含むことを特徴とする。
【0021】
ここで、「濃縮」とは、原料の果皮と比べて(全体の乾燥質量に対する)機能性成分の含有濃度が増加していることを意味する。本発明における「濃縮」としては、機能性成分の含有濃度が、例えば、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2.0倍以上となることが挙げられる。
【0022】
また、「保持」とは、(全体の乾燥質量に対する)機能性成分の含有濃度が(原料果皮より低い場合であっても)、他の加工処理方法に比べてより高く維持されていることを意味する。本発明における「保持」としては、機能性成分の含有濃度が、例えば、0.95~1.9倍となることが挙げられる。
【0023】
本発明では、上記冷凍工程の後に、更にブランチング処理及び/又は水晒し処理を行うことが望ましい。
【0024】
本発明における柑橘類としては、好ましくは河内晩柑、温州みかん、ポンカン、清見、不知火(デコポン(登録商標))、伊予柑、オレンジ、レモン、ライム、柚子、甘夏、八朔、文旦、グレープフルーツ、甘平、愛媛果試28号(紅まどんな(登録商標))、なつみかん、せとか、カラ、はるみ、はれひめ、はるか、南津海、ネーブルオレンジ、天草、まりひめ、日向夏、タロッコ、ダイダイ、ひめのつき、アンコール、セミノール、カボス、モロ、じゃばら、たまみ、黄金柑、安政柑、天香、スダチ、キンカン、スィートスプリング、麗紅、マーコット、津之香、媛小春、シークワーサー、ひめあかり、西之香、三宝柑、サザンイエロー、あいおとめ、チャンドラポメロ、オレンジ日向、紀州みかん、早香、バンペイユ、ユコウ、オーラスター、福原オレンジ及び仏手柑であり、より好ましくは河内晩柑、伊予柑、八朔及び温州みかんであり、特に好ましくは河内晩柑である。柑橘類は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
河内晩柑は、ザボン(Citrus maxima、Citrus grandis)の一種であり、文旦の血を引く自然雑種である。
【0026】
本発明における柑橘類の果皮とは、外果皮(フラベド)及び中果皮(アルベド)のことである。
【0027】
柑橘類の果皮としては、例えば、柑橘類を搾汁した後に得られるものを使用することができる。柑橘類の果皮としては、いずれの搾汁方法で得られたものでも制限無く使用でき、搾汁方法としては、例えば、インライン搾汁、ベルト搾汁、チョッパーパルパー搾汁などが挙げられる。インライン搾汁では、柑橘類は全果のまま1個ずつロアーカップに入り、果実の底に孔をあけ上部からアッパーカップで押さえ、果肉はストレーナーチューブに入り、オリフィスで圧搾されて搾汁される。チョッパーパルパー搾汁は、果皮を剥皮した後に搾汁することを特徴としているので、搾汁前に剥皮された果皮を使用することができる。
【0028】
柑橘類の果皮としては、生の状態のもの、切断された状態のものなどを使用することができる。柑橘類の果皮を切断する方法としては、食品分野において使用されている各種公知の切断方法を使用することができる。
【0029】
柑橘類の果皮としては、例えば、果皮の表面をスライスしたものも使用することができる。
【0030】
柑橘類の果皮に含まれる機能性成分としては、オーラプテン及びポリメトキシフラボン類(例えば、シネンセチン、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、タンゲレチン)が挙げられる。機能性成分は、1種単独又は2種以上のいずれであってもよい。
【0031】
冷凍処理の前には、柑橘類の果皮に対して、洗浄、水切り等の処理を行ってもよい。
【0032】
柑橘類の果皮の冷凍では、柑橘類の果皮を通常-5~-80℃程度、好ましくは-15~-25℃程度で冷凍する。冷凍の時間は、柑橘類の果皮を凍結することができる時間であればよく、例えば、1時間以上、好ましくは24~48時間程度である。冷凍には、食品分野において一般的に使用されている冷凍庫を使用することができる。
【0033】
柑橘類の果皮を冷凍後にはブランチングを行うこともできる。ブランチングでは、柑橘類の果皮を通常50~100℃程度、好ましくは90~100℃程度の湯に浸漬する。ブランチングの時間は、通常1~30分程度、好ましくは5~15分程度である。
【0034】
柑橘類の果皮を冷凍した後には更に水晒し処理を行ってもよい。水晒しでは、柑橘類の果皮を通常0~50℃程度、好ましくは0~30℃程度の水に浸漬する。水晒しの時間は、通常1~48時間、好ましくは16~24時間程度である。水晒し処理では、柑橘類の果皮を流水に晒すことが好ましい。
【0035】
本発明の柑橘類の果皮加工物の製造方法では、その他、殺菌処理、乾燥処理、粉砕処理、ペースト状にする破砕処理などを行ってもよい。乾燥方法としては、特に制限されず、例えば、天日乾燥、通風乾燥、強制乾燥、凍結乾燥などが挙げられる。
【0036】
本発明の河内晩柑の果皮加工物は、機能性成分であるオーラプテンを全体の乾燥質量に対して0.7質量%以上含有することを特徴とする。本発明の河内晩柑の果皮加工物に関しては、河内晩柑を前述する河内晩柑以外の柑橘類に置き換えることもできる。
【0037】
本発明の河内晩柑の果皮加工物におけるオーラプテンの含有量は、全体の乾燥質量に対して、例えば、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上、1.1質量%以上、1.2質量%以上、1.3質量%以上、1.4質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上である。
【0038】
河内晩柑の果皮加工物としては、生の状態のもの、乾燥された状態のもの、これらが切断、粉砕又は破砕された状態のものなどが挙げられる。河内晩柑の果皮の乾燥方法としては、特に制限されず、例えば、前述するものが挙げられる。河内晩柑の果皮を切断、粉砕、破砕する方法としては、食品分野において使用されている各種公知の切断、粉砕、破砕方法を使用することができる。
【0039】
本発明の河内晩柑の果皮加工物における果皮の加工方法としては、特に制限されず、どのような加工方法であってもよい。加工方法としては中でも冷凍が、機能性成分を濃縮又は保持させることができるため特に好ましい。加工方法は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて行うことができる。本発明の河内晩柑の果皮加工物は、例えば、上記の方法により製造することができる。
【0040】
本発明の食品組成物は、上記河内晩柑の果皮加工物を含むことを特徴とする。
【0041】
本発明の食品組成物としては、動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる飲食品が含まれる。飲食品の種類は、特に限定されず、例えば、飲料類(お茶、ドリンクヨーグルト、ジュース、果汁入り飲料、清涼飲料水、牛乳、豆乳、コーヒー、スポーツ飲料、炭酸飲料、酒類等);菓子類(プリン、クラッカー、ビスケット、クッキー、ケーキ、ゼリー、キャンデー、チョコレート、チューインガム、アイスクリーム、焼き菓子、和菓子等);食品類(パン、乾パン、うどん、そば、ラーメン、パスタ、ハム、豆腐、こんにゃく、佃煮、餃子、コロッケ、サラダ、カレー、ジャム等);調味類(みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、ソース、ふりかけ、スープの素等);乳製品(ヨーグルト、チーズ、バター等);水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、じゃこてん等);米由来製品(米菓、餅等)などが挙げられる。
【0042】
本発明の食品組成物には、保健、健康維持、増進等を目的とする飲食品、例えば、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品なども包含される。
【0043】
サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に制限されず適宜選択することができる。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤などが挙げられる。
【0044】
本発明の食品組成物には、上記柑橘類の果皮加工物以外にも、必要に応じて、ビタミン類、ミネラル類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、甘味料、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、乳化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、光沢剤、徐放調整剤、界面活性剤、賦形剤、溶解剤、湿潤剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0045】
本発明の食品組成物に含まれる河内晩柑の果皮加工物の割合は、通常0.001~99質量%、好ましくは0.01~80質量%、より好ましくは0.1~70質量%である。
【0046】
本発明の食品組成物の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができる。
【0047】
本発明の食品組成物は、機能性成分であるオーラプテン及びポリメトキシフラボン類を含有しているため、認知機能の維持又は改善のために(特に人に対して)使用することができる。ここで、「認知機能」とは、認知症において障害が見られる機能のことを意味する。「認知機能」としては、記憶力、注意力、言語機能、身につけた一連の動作を行う機能、五感を通じてまわりの状況を把握する機能、遂行機能、見当識などが挙げられる。「認知症」とは、後天的な脳の器質的障害により、一旦正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態である。
【0048】
本発明の柑橘類の果皮加工物の製造方法によれば、機能性成分であるオーラプテン、ポリメトキシフラボン類を濃縮及び保持させることができる。特に、有機溶媒等の薬剤を用いることや複雑な製造工程を経ることなく、容易に、柑橘類の果皮において機能性成分を濃縮させることができる。
【0049】
本発明の河内晩柑の果皮加工物は、オーラプテンが濃縮されているため、この機能性成分に基づく優れた作用を有する。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0051】
なお、全ての表における濃度単位はμg/g (乾燥粉末当たり)とした。以下の全ての試験例において、冷凍は-20℃で、冷蔵は4℃で行った。また、ブランチングの条件は100℃10分であった。全ての試料について、各処理を行った後、凍結乾燥し、フードプロセッサーで乾燥粉末にした後に機能性成分の分析を行った。
【0052】
<機能性成分(オーラプテン、フラバノン、ポリメトキシフラボン)の分析方法>
・果皮中のオーラプテン前処理方法
(1)果皮約0.5 gをプラスチック遠沈管(50 ml)に量りとり、抽出溶媒(MeOH:アセトン=1:1) 30 mlを加えて10分間振とう抽出した。
(2)10000rpmで10分遠心分離後、上澄みを100 mlメスフラスコに回収した。
(3)沈殿に抽出溶媒30 mlを加え、10分間振とう抽出した。
(4)10000rpmで10分遠心分離後、上澄みを(2)のメスフラスコに回収した。
(5)さらに沈殿に抽出溶媒20 mlを加え、10分間振とう抽出した。
(6)10000rpmで10分遠心分離後、上澄みを(2)のメスフラスコに回収し100 mlにメスアップした。
(7)メスアップした溶液を0.2μmのフィルターを通して分析用試料とした。
【0053】
・果皮中のフラバノン、ポリメトキシフラボン前処理方法
(1)果皮約0.2又は0.5 gを計量し、抽出溶媒(MeOH:DMSO=1:1) 5 mlを添加し、ボルティックミキサーで混合後、10分間超音波抽出し1時間以上放置した。
(2)10000rpmで10分遠心分離後、上澄みを共栓付メスシリンダーに回収した。
(3)沈殿に抽出溶媒1又は2 mlを加え、ボルティックミキサーで混合後、10分間超音波抽出した。
(4)10000rpmで10分遠心分離後、上澄みを(2)の共栓付メスシリンダーに回収し、沈澱に抽出溶媒1又は2 mlを加え、再びボルティックミキサーで混合後、10分間超音波抽出した。
(5)10000rpmで10分遠心分離後、上澄みを(2)の共栓付メスシリンダーに回収し、上澄みを併せた抽出液に、溶媒濃度が10%(V/V)になるように蒸留水を加えた。
(6)メタノール3 ml,10%(V/V)メタノール6 mlで順次コンディショニングした固相抽出ディスク(ボンドエルート(C18, 500 mg))にサンプルを通液した。
(7)10%(V/V)メタノール15 mlで洗浄し、抽出溶媒4.5 mlで溶出後、5 mlメスフラスコで定容し、0.2μmのフィルターを通して、分析用試料とした。
【0054】
・分析条件
○LC/MSシステム:ACQUITY UPLC、Waters Q-TOF micro
○カラム:BEH C18 (1.7μm、2.1 mm×100 mm)
○カラム温度:40℃
○検出器:PDA
○移動相条件等
[オーラプテン] 流速:0.3 ml/min、10 mMギ酸アンモニウム含有水:メタノール=25:75
[ポリメトキシフラボン] 流速:0.25 ml/min、10 mMギ酸アンモニウム含有水:アセトニトリル=60:40
[フラバノン] 流速:0.25 ml/min
溶離液A アセトニトリル
溶離液B 10 mMギ酸アンモニウム含有水
グラジエント条件(溶離液A):80%(0→4分)、80→60%(4→5分)、60%(5→6分)、60→30%(6→7分)、30%(7→10分)、30→80%(10→10.5分)、80%(10.5→12分)
【0055】
<試験例1>
河内晩柑果皮1個を1/16カットし、均等に2つに分けた。一方は冷凍庫、他方は冷蔵庫で24時間保存した後、10分間ブランチングを実施した。得られた河内晩柑果皮の柑橘機能性成分を分析した。結果を表1に示す。
【0056】
表1より、オーラプテンとポリメトキシフラボンが冷蔵よりも冷凍保存の方が高まることが確認できた。
【0057】
【0058】
<試験例2>
河内晩柑10個の果皮を用い、1個の果皮を1/16カットし、3枚ずつ均等に抜きとり、実験例1~5に使用し、それぞれ30枚とした。実験例1、2、3では冷蔵庫、実験例4、5では冷凍庫で46時間保存した。冷蔵庫又は冷凍庫で保存後に、実験例1では未処理、実験例2、4では10分間ブランチング処理、実験例3、5ではブランチング処理後に16時間水晒しを実施した。各処理後に実験例1~5における柑橘機能性成分を分析した。その結果を表2に示す。
【0059】
さらに、ブランチング処理した場合における冷凍による効果を確認するため、実験例4の機能性成分濃度と実験例2の機能性成分濃度の比、水晒し処理した場合における冷凍による効果を確認するため、実験例5の機能性成分濃度と実験例3の機能性成分濃度の比、最後に、最大の濃縮効果を確認するため実験例5の機能性成分濃度と実験例1の機能性成分濃度の比の各値を表3に示す。
【0060】
その結果、オーラプテン、ポリメトキシフラボンともに冷凍することにより、機能性成分保持効果があることが確認できた。ただし、元の果皮に換算するとオーラプテンのみ2倍以上濃縮されていることが確認できた。また、果皮全体の乾燥質量に対するオーラプテンの含量は、0.87質量%であった。
【0061】
【0062】
【0063】
<試験例3>
河内晩柑中のオーラプテン濃度を高めた果皮を加工するため、表面をスライスした河内晩柑果皮を実験例毎に500 g程度準備し、6ヶ月程度冷凍後、そのまま凍結乾燥した果皮粉末(実験例I)、ブランチング後、凍結乾燥した果皮粉末(実験例II)、ブランチング後、16時間水晒しを行った後、凍結乾燥した果皮粉末(実験例III)による機能性成分濃縮効果を確認した。結果を表4に示す。
【0064】
その結果、表面をスライスした河内晩柑果皮を用いることで、ブランチングのみでも約1質量%、水晒しを併用することで1.3質量%以上のオーラプテン含有果皮粉末を得ることができた。
【0065】
【0066】
<試験例4>
実際のプラントベースで河内晩柑中のオーラプテン濃度を高めた果皮を加工するため、表面をスライスした河内晩柑果皮を実験例毎に15 kg程度準備し、1ヶ月程度冷凍後、そのまま凍結乾燥した果皮粉末(実験例VI)、ブランチング工程を省略し、5時間水晒し後、凍結乾燥した果皮粉末(実験例V)又は16時間水晒し後、凍結乾燥した果皮粉末(実験例VI)による機能性成分濃縮効果を確認した。結果を表5に示す。
【0067】
その結果、ブランチング工程を実施しなくても乾燥質量で1.0質量%以上のオーラプテン含有果皮粉末を得ることができた。なお、今回の水晒しは、これまでの実験のように流水で晒しておらず、密閉容器で水を張ったところに各時間晒した。
【0068】
【0069】
<試験例5>
八朔の果皮を用い、1個の果皮を1/16カットし、5枚ずつ均等に抜きとり、実験例6~8に使用した。実験例7では冷蔵庫、実験例8では冷凍庫で8時間保存した。冷蔵庫又は冷凍庫で保存後に、実験例7、8では10分間ブランチング処理を実施した。各処理後に実験例6~8における柑橘機能性成分を分析した。その結果を表6に示す。
【0070】
その結果、オーラプテン、ポリメトキシフラボンともに冷凍することにより、機能性成分保持効果があることが確認できた。
【0071】