(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】焚き火台
(51)【国際特許分類】
F24C 1/16 20210101AFI20240322BHJP
F24B 1/18 20060101ALI20240322BHJP
F24B 1/197 20060101ALI20240322BHJP
A47J 37/07 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F24C1/16 A
F24C1/16 B
F24B1/18 E
F24B1/197
A47J37/07
(21)【出願番号】P 2020005303
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】592016485
【氏名又は名称】株式会社デイトナ
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】森山 環姫
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187816(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00262857(GB,A)
【文献】特開2011-075270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0209083(US,A1)
【文献】実開昭62-195002(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/16
F24B 1/18
F24B 1/197
A47J 37/07
A47J 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の側板と、
この側板の間に設けられる複数枚の火炉板とを具え、
これら側板と火炉板とにより、上方が開放された火炉を形成する焚き火台であって、
前記一対の側板及び火炉板は、全て平板状であり、
また前記側板と火炉板とは、相欠き組み状に分解・組立自在として面交差状に接合されるものであり、
且つ前記火炉板は、少なくとも前後一対の前火炉板と後火炉板との二部材を具え、
更に、当該火炉板は、前火炉板と後火炉板との下部接合部より上方に水平配置される床火炉板を具え
、
なお且つ前記火炉板は、前後一対の前火炉板と後火炉板とが、側面視で下窄まり状に組み合わされるものであり、
また前火炉板には、下端縁の中央部において、当該下端縁に沿う係合突部が形成されるとともに、この係合突部の両側には、当該下端縁に沿って、ほぼ水平方向に延びる相欠きスリットが形成されるものであり、
一方、後火炉板には、幅方向における中央下方に、前火炉板保持スリットが、横長の細孔状に形成されるとともに、この前火炉板保持スリットの下方に、短寸状の細孔たる落とし組み相欠きが連続して形成されるものであり、
前記前火炉板と後火炉板との組み付けにあたっては、前火炉板の係合突部を、後火炉板の前火炉板保持スリットに差し込んだ後、係合突部の差込先端部を下方に落とし込み、前火炉板の相欠きスリットを、後火炉板の落とし組み相欠きに係止させて、
前火炉板と後火炉板とを、下方において相欠き状に落とし組み接合する構成であることを特徴とする焚き火台。
【請求項2】
前記床火炉板は、側板に対して相欠き状に落とし組み接合される構成であることを特徴とする請求項
1記載の焚き火台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外での焚き火や、調理用火器として用いることが適切な焚き火台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるアウトドア活動の一つとしてキャンプの人気が高まっている。このようなキャンプでは、夜間、焚き火を囲むシーンが見られるが、多くのキャンプ施設では、環境保全などの面から、いわゆる直火での焚き火が禁止されている。
このため多くのキャンパーは、キャンプ場に設置されている所定の施設を利用する場合以外、特に個人または少人数で焚き火を囲む場合には、火台となる焚き火台を持ち込んで焚き火を楽しんでいる。
ところで、自転車、モーターサイクルでのキャンプ場への来場者が用意する焚き火台は、その使用形態から携行の便を考慮してコンパクトに折り畳める形態を採っている(例えば特許文献1・2参照)。
しかしながら、折り畳み可能な焚き火台は、一方で、使用時の安定感や強度面での信頼感に欠ける傾向は否めない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-75270号公報
【文献】特開2010-243042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、携行の便を考慮してコンパクトに折り畳める形態を採りながらも、一方で組み立てて使用する際には、充分な剛性を有し、大きな信頼感が得られる新規な焚き火台の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載の焚き火台は、
左右一対の側板と、
この側板の間に設けられる複数枚の火炉板とを具え、
これら側板と火炉板とにより、上方が開放された火炉を形成する焚き火台であって、
前記一対の側板及び火炉板は、全て平板状であり、
また前記側板と火炉板とは、相欠き組み状に分解・組立自在として面交差状に接合されるものであり、
且つ前記火炉板は、少なくとも前後一対の前火炉板と後火炉板との二部材を具え、
更に、当該火炉板は、前火炉板と後火炉板との下部接合部より上方に水平配置される床火炉板を具え、
なお且つ前記火炉板は、前後一対の前火炉板と後火炉板とが、側面視で下窄まり状に組み合わされるものであり、
また前火炉板には、下端縁の中央部において、当該下端縁に沿う係合突部が形成されるとともに、この係合突部の両側には、当該下端縁に沿って、ほぼ水平方向に延びる相欠きスリットが形成されるものであり、
一方、後火炉板には、幅方向における中央下方に、前火炉板保持スリットが、横長の細孔状に形成されるとともに、この前火炉板保持スリットの下方に、短寸状の細孔たる落とし組み相欠きが連続して形成されるものであり、
前記前火炉板と後火炉板との組み付けにあたっては、前火炉板の係合突部を、後火炉板の前火炉板保持スリットに差し込んだ後、係合突部の差込先端部を下方に落とし込み、前火炉板の相欠きスリットを、後火炉板の落とし組み相欠きに係止させて、
前火炉板と後火炉板とを、下方において相欠き状に落とし組み接合する構成であることを特徴として成るものである。
【0006】
また請求項2記載の焚き火台は、前記請求項1記載の要件に加え、
前記床火炉板は、側板に対して相欠き状に落とし組み接合される構成であることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0007】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1記載の発明によれば、側板と火炉板とが相欠き組み状に接合されるため、各部材の分解・組立が容易に行え、また組立状態では、焚き火台として充分な強度を有し、強固な剛性を発揮する。このため大きな信頼感や安定感を有する堅牢な焚き火台が得られる。
また本発明によれば、前火炉板、後火炉板、側板に対し、更に床火炉板が設けられるため、火炉を構成する各部材、つまり前火炉板、後火炉板、両側板の接合強度を更に強化することができる。換言すれば、燃焼室の底部となる床火炉板を、接合強度のアップにも利用することができる。
また、床火炉板は、前火炉板と後火炉板との下部接合部より上方に設けられるため、下部接合部から床火炉板までの間に、導風孔(いわゆる空気孔)を形成し易く、火炉に燃焼用の空気を導入し易い構造が採用できる。
また本発明によれば、前後一対を成す前火炉板と後火炉板とが、側面視で下窄まり状を成し、火炉が少なくとも一対の側板・前火炉板・後火炉板で構成され、更にその接合は、相欠き組み状の接合であるから、これら各部材を強固に接合することができる。すなわち組立状態で、前火炉板と後火炉板とは、左右両側が一対の側板に対しても相欠き組み状に接合されており、前火炉板と後火炉板と側板とが、一種のトラス構造を形成する接合となっており、このようなトラス構造による接合が、火炉としての強度を向上させ、極めて頑丈な焚き火台を実現している。
また本発明によれば、前火炉板と後火炉板とが、下部で相欠き状に落とし組み接合されるため、前火炉板と後火炉板とを、より強固に接合することができ、一種のトラス構造を成す前火炉板、後火炉板、側板の接合強度を、より向上させることができる。
また本発明によれば、一対の側板及び火炉板は、全て平板状であるため、分解した際に、各部材を重ね合わせることで、嵩張らない偏平な納まりとなり、携行に便利で且つシンプルな収納状態が得られる。なお、分解状態で重ね合わせた各部材をトレー等に載せ、この状態で収納バッグに収納すれば、より一層、携行の利便性が向上し、いわゆるバイクツーリング等にも気軽に持って行くことができる。
【0008】
また請求項2記載の発明によれば、床火炉板が、側板に対して相欠き状に落とし組み接合されるため、床火炉板と側板とを、より強固に接合することができ、トータル的には一種のトラス構造を成す前火炉板、後火炉板、側板の接合強度を、より一層、向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の焚き火台の使用状況を示す斜視図(a)、並びに焚き火台を拡大して示す斜視図(b)である。
【
図2】焚き火台の構成部材を分解状態で示す斜視図である。
【
図3】本発明の焚き火台を組立完成状態で示す六面図であり、正面図(a)、左側面図(b)、右側面図(c)、背面図(d)、平面図(e)、下面図(底面図)(f)である。
【
図4-1】本発明の焚き火台の組立状況(組立手順)を段階的に示す説明図(a)~(d)である。
【
図4-2】本発明の焚き火台の組立状況(組立手順)を段階的に示す説明図(e)~(h)である。
【
図5】火炉の底部から上部まで、ほぼ同じ大きさの矩形を呈する角箱状の焚き火台の
構成例
(本発明に関連する参考例)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法をも含むものである。
【0011】
本発明の焚き火台1は、一例として
図1に示すように、上方が開放された空間である火炉2を、火炉板3と左右一対の側板4との分解・組立自在な組み合わせにより構成する。そして、これら側板4と火炉板3とは、ともに充分な耐熱強度を有するステンレス素材などの金属板材で形成される。このうち火炉板3は、前火炉板5と後火炉板6と、更に好ましい実施例として含まれる床火炉板7との三種の部材で構成される。
【0012】
そして、これら各部材は、分解・組立自在であることから、例えば適宜の金属板材から打ち抜き形成されるものであり、以下、それぞれの部材のブランク形状について順次説明する。もちろん、各部材を得るには、レーザー等を利用したカッティングによっても得ることができる。
また、焚き火台1を使用するにあたり、単なる焚き火として楽しむだけでなく、バーベキューなどの調理も併せて行う場合には、火炉2の上部に焼き網8を載置状にセットするものであり、この焼き網8の上に、肉や野菜などの食品・食材を載せて、バーベキュー等の調理を行うものである。
【0013】
以下、各部材について説明する。
まず側板4は、一例として
図1~
図3に示すように、左右一対の同形状の金属平板であり、上下方向の中間位置から上方に、ほぼ逆台形状の火炉側壁部41を具えるとともに、その下方に連続して前後方向に開脚するような脚部42を具える。なお、脚部42には、軽量化等の目的で肉抜孔42aを開口形成している。
この側板4は、更に火炉板3、より詳細には前火炉板5と後火炉板6との相欠き組み(相欠き接ぎ)のための相欠きスリット43・44・45を具える。すなわち、相欠きスリット43は、前火炉板5と相欠き組み状に係合する部位であり、前記火炉側壁部41の前方から斜め下方中央に向かうようなスリットとして形成されている。
一方、相欠きスリット44・45は、後火炉板6を相欠き組み状に係合する上下一対の切り込みであり、上方の相欠きスリット44は、火炉側壁部41の後方において斜め下方中央に向かうようなスリットとして形成されている。また、下方の相欠きスリット45は、前記相欠きスリット44と同一線上において下方に形成されるものであり、幅狭の細孔状に形成されている。
なお、これら相欠きスリット43・44・45は、組立状態で、その両側部位における側板4で、前火炉板5と後火炉板6とをくわえるような作用をすることから、便宜上これらスリットの周辺両側部位を、火炉板くわえ部43a・44a・45aとし、
図2中に破線で囲って示した。
【0014】
更に側板4は、床火炉板7を支持するために、火炉側壁部41の中央下方に、水平に延びる床火炉板保持スリット46を具え、この床火炉板保持スリット46も細孔状に形成される。
床火炉板保持スリット46は、前後両端部近くに、下方への段差を形成して、下方開口部の前後方向寸法を上方開口部寸法よりも小さくなるような二段階孔状に形成されており、この下方の短寸状の開口部を落とし組み相欠き47としている。すなわち、組立状態で、当該落とし組み相欠き47に、床火炉板保持スリット46の左右両端縁が落とし込み状態に嵌め込まれ、後述する床火炉板7の係止突起72を係合させ、床火炉板7の保持・接合が図られるように構成されている。なお、請求項2に記載された「床火炉板は、側板に対して相欠き状に落とし組み接合される構成」とは、主に上記落とし組み相欠き47や係止突起72を指している。
更にまた、側板4は、この床火炉板保持スリット46の下方に、導風孔48が設けられている(いわゆる空気孔)。
また側板4の上端部には、網保持突起49が前後に一対形成されており、両側板4に載せた焼き網8が、前後・左右にずれないように係合・保持される構成となっている。
【0015】
次に、前火炉板5について説明する。
前火炉板5は、一例として
図1~
図3に示すように、ほぼ横長矩形状の金属平板で構成され、その上方両端が側端縁51より、一部張り出して、落とし嵌めフラップ52を形成している。この落とし嵌めフラップ52の脇には、側端縁51に沿って縦方向に延びるように相欠きスリット53が形成されており、この相欠きスリット53を挟んだ部位を側板くわえ部53aとする。ここは組立状態で側板4の前方上部(相欠きスリット43部位)をくわえ込む部位であり、
図2中に破線で囲って示している。
【0016】
また、前火炉板5には、下端縁54の中央部に、後火炉板6と相欠き係合するための係合突部55が形成されている。この係合突部55には、下端縁54に沿って、ほぼ水平方向に延びる相欠きスリット56が形成されるものであり、この相欠きスリット56を挟んだ部位を、後火炉板くわえ部57とする。ここは組立状態で後火炉板6の下部開口(後述の落とし組み相欠き68)をくわえ込む部位であり、
図2中に破線で囲って示している。
更にまた、前火炉板5は、上下方向中間位置において横並び状に複数の導風孔58が開口形成されており、この導風孔58は、組立状態で床火炉板7よりも下方に位置するように開口されている。
なお、前火炉板5は、組立状態で、前火炉板5の上方、すなわち前火炉板5と焼き網8との間が、火炉2内へ通じるように幾らか開放されており、この開放空間から炭や木片などの燃焼体を逐次、追加投入できるように構成されている。
【0017】
次に、後火炉板6について説明する。
後火炉板6は、一例として
図1~
図3に示すように、前記前火炉板5に比べて、高さ寸法が大きな横長矩形状の金属平板で構成されており、これは上記のように正面側から燃焼体を逐次、追加投入できるようにしたためである。そして、後火炉板6は、その両側の側端縁61から張り出すように、上下二カ所(計四カ所)に落とし嵌めフラップ62・63が形成されている。この落とし嵌めフラップ62・63の脇には、側端縁61に沿うように縦方向に延びる相欠きスリット65・66が形成されており、ここは組立状態で側板4の後方上部の相欠きスリット44と、これと一直線上に形成された相欠きスリット45とを各々くわえ込むためであり、当該相欠きスリット65・66を挟んだ部位を側板くわえ部65a・66aとし、
図2中に破線で囲って示している。このような構成上、側板くわえ部65a・66aは、あたかも後火炉板6の上部両側と下部両側から下向きに延びるような差し込み片として形成されている。
【0018】
更に、後火炉板6の幅方向における中央下方には、前火炉板保持スリット67が、横長の細孔状に形成されている。
なお、この前火炉板保持スリット67は、下方に短寸状の細孔が連続して形成され、ここを落とし組み相欠き68とする。すなわち、前火炉板保持スリット67から連続して至る落とし組み相欠き68には、組立状態で前火炉板5の後火炉板くわえ部57(相欠きスリット56)が落とし込み状態に嵌め込まれ、前火炉板5と後火炉板6との下部接合が図られる構成となっている。因みに、請求項1に記載された「前火炉板と後火炉板とは、下方において相欠き状に落とし組み接合される構成」とは、主として前火炉板保持スリット67の下方に連続して形成された落とし組み相欠き68や、前火炉板5の後火炉板くわえ部57を指している。
更にまた、後火炉板6には、上下方向(高さ方向)中間位置に、横並び状に複数の導風孔69が開口形成されており、この導風孔69も、組立状態で床火炉板7よりも下方に位置するように形成される。
【0019】
次に、床火炉板7について説明する。
床火炉板7は、一例として
図1~
図3に示すように、燃焼室たる火炉2の床部を実質的に構成する部材であり、全体として横長矩形状の金属平板で構成される。このものは、ほぼ全面にわたって導風孔71が開口されており、本実施例では、長円形状の導風孔71と、細長い孔状の導風孔71とが組み合わされて形成されるが、導風の目的が達成でき、且つ炭や木片などの燃焼体を適宜の時間保持できれば、種々の形状・開口サイズが採り得る。
【0020】
更に、この床火炉板7は、左右両側において前後方向に張り出す係止突起72を、平面視対角位置に設けるものであり、この係止突起72の先端縁と、床火炉板7の前後の端縁73との段差部を床火炉板7の相欠き段差74とする。そして、組み付けの際には、床火炉板7の左右両端部である相欠き段差74部分を、側板4の床火炉板保持スリット46から貫通させた後、幅狭状の落とし組み相欠き47に落とし込むように嵌め込むことで、床火炉板7の両端部に形成された係止突起72が落とし組み相欠き47の周囲に係止し、床火炉板7の係合保持が図られる。なお、上述したように請求項2に記載された「床火炉板は、側板に対して相欠き状に落とし組み接合される構成」とは、このような接合を指している。
【0021】
次に、焼き網8について説明する。
焼き網8は、上述したように焚き火台1を調理用火器として使用する場合に用いられる部材であり、一例として
図1・
図2に示すように、適宜の強度を有する矩形状輪郭の枠部81と、その長辺間をつなぐ網線材82とにより構成されている。
ここで本実施例では、焼き網8を火炉2にセットした状態で、焼き網8の短辺が、側板4の網保持突起49に係止し、保持されるように構成されており、これにより載置状態での焼き網8の前後・左右への移動が阻止されるようになっている。
【0022】
本発明は、以上述べた各構成素材を有するものであり、以下、その組立手順について説明する。
(1)側板と後火炉板との接合
まず一般的には、一例として
図4-1(a)に示すように、側板4と、後火炉板6とを組み立てる。すなわち、一方の側板4に対し、後火炉板6を相欠き組み状に係合させるものであり、側板4の後方側の相欠きスリット44・45に、後火炉板6の上下の落とし嵌めフラップ62・63を上ずらし状にあてがって差し入れるようにし、その後、後火炉板6の落とし嵌めフラップ62・63を側板4の相欠きスリット44・45の下方に落とし込むようにする。この操作により、相欠きスリット44と落とし嵌めフラップ62、及び相欠きスリット45と落とし嵌めフラップ63が、各々相欠き組み状に組み合わされ、一方の側板4と、後火炉板6とが面交差状態、特にここでは、ほぼ直交状態に接合される。
その後、一例として
図4-1(b)に示すように、同様の操作の下に、もう一方の側板4を、後火炉板6に組み合わせる。これによって、左右両方の側板4と後火炉板6とが、三面囲いの自立安定状態に組み合わされる。
なお、後火炉板6には、両側端縁61に上下一対の相欠きスリット65・66を設けて上下二カ所で側板4と相欠き組みが成されているが、両者の係合は、いずれか一方の相欠き組みでも可能である。しかし、組立強度や組立後の安定性・信頼性の点からは、本実施例のような上下二段にわたる相欠き組みとすることが好ましい。
【0023】
(2)前火炉板の接合
次いで、一例として
図4-1(c)に示すように、上記三面囲いの自立安定状態を呈した側板4に対し、前方から前火炉板5を同様の手法で相欠き組み状に組み付ける。すなわち、前火炉板5における左右両側の相欠きスリット53を、それぞれ左右の側板4における前方上部の相欠きスリット43に、相欠き組み状に挿入して行く。
この際、前火炉板5の下端縁54の中央部には、係合突部55が設けられているから、この部位を、既に仮組み状態に形成した後火炉板6(上記三面囲いの自立安定状態)の前火炉板保持スリット67に差し込み、係合突部55の差込先端部を下方に落とし込むと、前火炉板5の相欠きスリット56が、前火炉板保持スリット67の下方に連続形成された落とし組み相欠き68に係止するようになり、前火炉板5が下端部で後火炉板6と相欠き落とし組み状に組み付けられ、
図4-1(d)に示すような状態となる。この落とし組み(相欠き落とし組み)による接合によって、前火炉板5と後火炉板6とは、極めて強固に組み付けられる。すなわち、このような接合手法により前火炉板5と後火炉板6とが、側面視V字状を成す下窄まり状に堅牢に組み付けられる。
【0024】
また、上記
図4-1(d)に示すような組み付け状態で、前火炉板5と後火炉板6とは、左右両側が一対の側板4に対しても相欠き組み状に接合されている。このため前火炉板5・後火炉板6・側板4とは、一種のトラス構造を成す接合となっており、このようなトラス構造による接合が、火炉2としての強度を向上させ、極めて頑丈な焚き火台1を実現可能としている。具体的には、焚き火台1は、使用の都度、燃焼に伴う過酷な高温環境に晒されるが、このような繰り返し晒される高温環境に対しても、充分な耐久性や強度を発揮するものである。
【0025】
(3)床火炉板の組み付け
その後、一例として
図4-2(e)に示すように、床火炉板7を組み付けるものであり、これには床火炉板7を、焚き火台1の外側、より具体的には一方の側板4外方の床火炉板保持スリット46から差し込み、焚き火台1の内部を貫通させ、次いでもう一方の側板4の床火炉板保持スリット46から外部に露出するようにして、床火炉板7を組み付ける。なお、この組み付けにあたっては、側板4の外部に露出した床火炉板7の両端部(係止突起72から外側部位)が、側板4の床火炉板保持スリット46の下方に連続して形成された短寸状の落とし組み相欠き47に、相欠き組み状に落とし組みされることで、床火炉板7の係止突起72が、側板4の落とし組み相欠き47周辺の側板4に係止するようになり、床火炉板7の安定した組付状態が得られる(
図2の拡大図参照)。
【0026】
このようにして組み立てられた焚き火台1は、左右の両側板4と火炉板3、すなわち前火炉板5、後火炉板6、床火炉板7とにより上方が開放された火炉2を形成する。この火炉2は、木片やたきぎ等の燃焼体をくべて焚き火台1として利用できるが、一例として
図4-2(f)に示すように、側板4の上端縁に前記焼き網8を更にセットすれば、調理用火器として用いることができる。なお、焚き火台1を調理用火器として用いる場合には、燃焼体として火持ちのよい炭火や固形燃料を火炉2に置くことが好ましい(
図1(a)参照)。また、焼き網8を側板4上にセットする際には、側板4に網保持突起49が形成されているから、この網保持突起49を利用して焼き網8の枠部81を位置決めすれば、焼き網8を安定的に保持することができる。
【0027】
また、焚き火台1の使用後は、側板4、前火炉板5、後火炉板6、床火炉板7、焼き網8を組立作業と逆の手順・操作で分解する(
図4-2(g)参照)。因みに、本実施例では、一例として
図4-2(h)に示すように、これら分解した各部材を、適宜の収納バッグ9に収納し、携行し易いようにしている。また、前記各部材は、全て平板状に形成されていることから、一例として
図4-2(g)・(h)に示すように、これら各部材を重ね合わせた状態でトレー91に収めた後、これを前記収納バッグ9にまとめて収納することにより、各部材の収容がコンパクトになり、収納状態の更なる安定化や携行の便の更なる向上が達成できる。また、トレー91は、テーブル上で焚き火台1を使用する場合の下敷き部材としても活用することができる(
図1(a)参照)。
【0028】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、要は、分解状態におけるコンパクトな折り畳み形態と、焚き火台1として立体形成した際の強固且つ安定的な組立形態が得られればよいものである。従って、構成部材が平板状であり、且つそれらが
上述した相欠き組みによって分解・組立されるものであれば、他の形態も採り得る。具体的には、例えば
図5に示すような、シンプルな角箱状、すなわち火炉2の底部から上部までがほぼ同じ矩形を成す寸胴状の焚き火台1
が考えられるが、これは前火炉板5と後火炉板6とが側面視で下窄まり状に組み合わされるものではないため、本発明に関連する参考例となる。ただし、本図において、同じ作用を担う部材には、既に述べた各部材と共通の符号を付し、焚き火台1、火炉2、火炉板3、側板4、前火炉板5、後火炉板6、床火炉板7を構成している。
【符号の説明】
【0029】
1 焚き火台
2 火炉
3 火炉板
4 側板
5 前火炉板
6 後火炉板
7 床火炉板
8 焼き網
9 収納バッグ
41 火炉側壁部
42 脚部
42a 肉抜孔
43 相欠きスリット
43a 火炉板くわえ部
44 相欠きスリット
44a 火炉板くわえ部
45 相欠きスリット
45a 火炉板くわえ部
46 床火炉板保持スリット
47 落とし組み相欠き
48 導風孔
49 網保持突起
51 側端縁
52 落とし嵌めフラップ
53 相欠きスリット
53a 側板くわえ部
54 下端縁
55 係合突部
56 相欠きスリット
57 後火炉板くわえ部
58 導風孔
61 側端縁
62 落とし嵌めフラップ
63 落とし嵌めフラップ
65 相欠きスリット
65a 側板くわえ部
66 相欠きスリット
66a 側板くわえ部
67 前火炉板保持スリット
68 落とし組み相欠き
69 導風孔
71 導風孔
72 係止突起
73 端縁
74 相欠き段差
81 枠部
82 網線材
91 トレー