(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】アーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/58 20200101AFI20240322BHJP
【FI】
G01R31/58
(21)【出願番号】P 2022558955
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2021036856
(87)【国際公開番号】W WO2022091716
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2020181251
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】古賀 達雄
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-508715(JP,A)
【文献】特開2017-143667(JP,A)
【文献】特開2007-327786(JP,A)
【文献】特開2020-025460(JP,A)
【文献】特開2001-045652(JP,A)
【文献】特開平04-306522(JP,A)
【文献】実開平02-104539(JP,U)
【文献】特表平11-504500(JP,A)
【文献】特開2004-080930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/50-31/74、
31/08-31/11、
H04B 1/60、
3/46-3/49、
17/00-17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から電力が供給される給電路に流れる電流、又は前記給電路における電圧の測定結果を取得する第1取得部と、
前記給電路に接続される機器が有する負荷の変動に関する変動情報を取得する第2取得部と、
前記第1取得部にて取得した前記測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び前記第2取得部にて取得した前記変動情報に基づいて、前記給電路にアーク故障が発生したか否かを判定する判定部と、を備え
、
前記第2取得部は、前記機器との間で通信することにより、前記負荷で消費される電力の変化分を前記変動情報として前記機器から取得し、
前記判定部は、前記第1取得部にて取得した前記測定結果に基づいてアークが発生したと判定し、かつ、その判定時において前記第2取得部にて取得した前記変化分が閾値以上であれば、前記アーク故障が発生していない、と判定する、
アーク検出システム。
【請求項2】
電源から電力が供給される給電路に流れる電流、又は前記給電路における電圧の測定結果を取得する第1取得部と、
前記給電路に接続される機器が有する負荷の変動に関する変動情報を取得する第2取得部と、
前記第1取得部にて取得した前記測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び前記第2取得部にて取得した前記変動情報に基づいて、前記給電路にアーク故障が発生したか否かを判定する判定部と、を備え、
前記第2取得部は、前記機器に向けて送信される制御指令を前記変動情報として取得し、
前記判定部は、前記第1取得部にて取得した前記測定結果に基づいてアークが発生したと判定し、かつ、その判定時において前記制御指令が前記負荷で消費される電力の変化分が閾値以上となるような指令であれば、前記アーク故障が発生していない、と判定する、
アーク検出システム。
【請求項3】
電源から電力が供給される給電路に流れる電流、又は前記給電路における電圧の測定結果を取得する第1取得部と、
前記給電路に接続される機器が有する負荷の変動に関する変動情報を取得する第2取得部と、
前記第1取得部にて取得した前記測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び前記第2取得部にて取得した前記変動情報に基づいて、前記給電路にアーク故障が発生したか否かを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記第1取得部にて取得した前記測定結果に基づいてアークが発生したと判定している時間が閾値時間以上である場合、前記第2取得部にて取得した前記変動情報に依らず、前記アーク故障が発生したと判定する、
アーク検出システム。
【請求項4】
前記機器の動作状態に関する状態情報を取得する第3取得部を更に備え、
前記判定部は、前記第1取得部にて取得した前記測定結果に基づいてアークが発生したと判定し、かつ、前記第3取得部にて取得した前記機器の動作状態がスタンバイ状態であれば、前記第2取得部にて取得した前記変動情報に依らず、前記アーク故障が発生したと判定する、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のアーク検出システム。
【請求項5】
電源から電力が供給される給電路に流れる電流、又は前記給電路における電圧の測定結果を取得する第1取得ステップと、
前記給電路に接続される機器が有する負荷の変動に関する変動情報を取得する第2取得ステップと、
前記第1取得ステップにて取得した前記測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び前記第2取得ステップにて取得した前記変動情報に基づいて、前記給電路にアーク故障が発生したか否かを判定する判定ステップと、を含
み、
前記第2取得ステップでは、前記機器との間で通信することにより、前記負荷で消費される電力の変化分を前記変動情報として前記機器から取得し、
前記判定ステップでは、前記第1取得ステップにて取得した前記測定結果に基づいてアークが発生したと判定し、かつ、その判定時において前記第2取得ステップにて取得した前記変化分が閾値以上であれば、前記アーク故障が発生していない、と判定する、
アーク検出方法。
【請求項6】
電源から電力が供給される給電路に流れる電流、又は前記給電路における電圧の測定結果を取得する第1取得ステップと、
前記給電路に接続される機器が有する負荷の変動に関する変動情報を取得する第2取得ステップと、
前記第1取得ステップにて取得した前記測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び前記第2取得ステップにて取得した前記変動情報に基づいて、前記給電路にアーク故障が発生したか否かを判定する判定ステップと、を含み、
前記第2取得ステップでは、前記機器に向けて送信される制御指令を前記変動情報として取得し、
前記判定ステップでは、前記第1取得ステップにて取得した前記測定結果に基づいてアークが発生したと判定し、かつ、その判定時において前記制御指令が前記負荷で消費される電力の変化分が閾値以上となるような指令であれば、前記アーク故障が発生していない、と判定する、
アーク検出方法。
【請求項7】
電源から電力が供給される給電路に流れる電流、又は前記給電路における電圧の測定結果を取得する第1取得ステップと、
前記給電路に接続される機器が有する負荷の変動に関する変動情報を取得する第2取得ステップと、
前記第1取得ステップにて取得した前記測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び前記第2取得ステップにて取得した前記変動情報に基づいて、前記給電路にアーク故障が発生したか否かを判定する判定ステップと、を含み、
前記判定ステップでは、前記第1取得ステップにて取得した前記測定結果に基づいてアークが発生したと判定している時間が閾値時間以上である場合、前記第2取得ステップにて取得した前記変動情報に依らず、前記アーク故障が発生したと判定する、
アーク検出方法。
【請求項8】
1以上のプロセッサに、
請求項
5~7のいずれか1項に記載のアーク検出方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電路においてアーク故障の発生の可能性があるか否かを判定するアーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アークを検出するためのアーク検出手段が開示されている。このアーク検出手段は、端子台への入力側配線と端子台からの出力側配線との間の電圧値を測定する電圧検出手段と、端子台からの出力側配線の電流値を測定する電流検出手段と、を備える。そして、このアーク検出手段では、電圧検出手段の電圧値の変動及び電流検出手段の電流値の変動を同時に検出することで、電気ノイズ等と、端子台におけるアークとを識別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アーク故障の発生の誤検出を防止しやすいアーク検出システム、アーク検出方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るアーク検出システムは、第1取得部と、第2取得部と、判定部と、を備える。前記第1取得部は、電源から電力が供給される給電路に流れる電流、又は前記給電路における電圧の測定結果を取得する。前記第2取得部は、前記給電路に接続される機器が有する負荷の変動に関する変動情報を取得する。前記判定部は、前記第1取得部にて取得した前記測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び前記第2取得部にて取得した前記変動情報に基づいて、前記給電路にアーク故障が発生したか否かを判定する。
【0006】
本発明の一態様に係るアーク検出方法は、第1取得ステップと、第2取得ステップと、判定ステップと、を含む。前記第1取得ステップでは、電源から電力が供給される給電路に流れる電流、又は前記給電路における電圧の測定結果を取得する。前記第2取得ステップでは、前記給電路に接続される機器が有する負荷の変動に関する変動情報を取得する。前記判定ステップでは、前記第1取得ステップにて取得した前記測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び前記第2取得ステップにて取得した前記変動情報に基づいて、前記給電路にアーク故障が発生したか否かを判定する。
【0007】
本発明の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、前記アーク検出方法を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、アーク故障の発生の誤検出を防止しやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るアーク検出システムを含む全体構成を示す概要図である。
【
図2A】
図2Aは、実施の形態に係るアーク検出システムの判定部による第1判定例を示すタイミングチャートである。
【
図2B】
図2Bは、実施の形態に係るアーク検出システムの判定部による第2判定例を示すタイミングチャートである。
【
図2C】
図2Cは、実施の形態に係るアーク検出システムの判定部による第3判定例を示すタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、実施の形態に係るアーク検出システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0011】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
[構成]
実施の形態に係るアーク検出システムについて、
図1を用いて説明する。
図1は、実施の形態に係るアーク検出システム100を含む全体構成を示す概要図である。
【0013】
アーク検出システム100は、主として電源2から電力が供給される給電路L1においてアーク故障が発生したか否かを判定するためのシステムである。すなわち、給電路L1は、例えば外的要因又は経年劣化等によって損傷又は破断を引き起こす可能性があり、このような損傷等に起因してアーク(アーク放電)が発生し、結果としてアーク故障が発生する可能性がある。そこで、アーク検出システム100は、主として給電路L1で発生し得るアーク故障を検出するために用いられる。
【0014】
具体的には、アーク検出システム100は、いわゆるDC(Direct Current)配電網200に用いられる。DC配電網200は、1以上の給電路L1を含むように構成されている。
図1では、1本の給電路L1のみを図示している。DC配電網200には、電源(ここでは、直流電源)2から直流電力が供給される。各給電路L1は、電源2の出力側の正極に接続される正側給電路と、電源2の出力側の負極に接続される負側給電路と、の一対の電路により構成されている。
【0015】
ここで、DC配電網200が1本の給電路L1のみ有している場合、この給電路L1に電源2から直流電力が供給される。また、DC配電網200が複数本の給電路L1を有している場合、複数本の給電路L1の各々の一端は、1以上の分岐点に接続される。このため、いずれかの給電路L1に電源2から直流電力が供給されると、他の給電路L1にも1以上の分岐点を介して直流電力が供給される。
【0016】
実施の形態では、電源2は、AC/DCコンバータ21を備えた電力変換器である。電源2は、電力系統300から出力される交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を電源2が接続された給電路L1へ出力する。DC配電網200が複数本の給電路L1を有している場合、当該給電路L1へ出力された直流電力は、他の給電路L1にも出力される。なお、実施の形態において、電源2は、直流電力を出力する態様であればよく、太陽光電池等の分散型電源若しくは蓄電池等の電源、又はこれらの電源と電力変換器(例えば、DC/DCコンバータ回路を備えた電力変換器)との組み合わせであってもよい。
【0017】
各給電路L1は、例えばダクトレールにより構成されており、1以上の機器3が取付可能である。つまり、各給電路L1においては、1以上の機器3を自由な位置に配置することが可能である。もちろん、各給電路L1は、1以上の機器3が取付可能な場所があらかじめ定められている態様であってもよい。実施の形態では、各給電路L1は、施設の天井に配置されているが、施設の床、壁、又は什器等に配置されていてもよい。
【0018】
機器3は、負荷31と、一対の接続端子と、を有している。また、機器3は、アーク検出システム100の第2取得部12(後述する)との間で通信する機能を有している。通信機能は、機器3が動作している状態で発揮される。つまり、実施の形態では、機器3が給電路L1に接続されている場合、機器3は第2取得部12と通信可能であるが、機器3が給電路L1に接続されていない場合、機器3は第2取得部12と通信することができない。
【0019】
機器3は、一対の接続端子を介して給電路L1に取り付けたり、給電路L1から取り外したりすることが可能である。具体的には、機器3を給電路L1に取り付ける場合、機器3の一対の接続端子をダクトレール(給電路L1)に差し込んだ状態で、機器3の差し込み方向から見て機器3を時計回り又は反時計回りに所定角度(例えば、90度)回転させる。これにより、一対の接続端子が給電路L1に設けられた一対の接続導体に接触した状態で固定され、機器3が給電路L1に電気的かつ機械的に接続される。
【0020】
機器3を給電路L1から取り外す場合、機器3の差し込み方向から見て機器3を上記とは逆回りに所定角度回転させる。これにより、一対の接続端子と一対の接続導体との接触状態が解除されるので、その後、機器3を給電路L1から取り外すことが可能になる。負荷31は、機器3が給電路L1に取り付けられた状態において、電源2から当該給電路L1を介して供給される直流電力を受けて駆動する。
【0021】
実施の形態では、機器3は照明器具であるが、例えばスピーカ、カメラ、センサ、又はUSB PD(Power Delivery)等であってもよい。つまり、機器3は、負荷31が電力を受けて駆動する態様であれば、照明器具以外の機器であってもよい。また、実施の形態では、各給電路L1に接続されている機器3は全て照明器具であって1種類であるが、各給電路L1に接続される機器3の種類は複数であってもよい。例えば、各給電路L1には、照明器具と、スピーカと、カメラと、センサと、USB PDと、が接続されていてもよい。これらの機器3は、1つの給電路L1に全て接続されていてもよいし、複数の給電路L1に分かれて接続されていてもよい。
【0022】
アーク検出システム100は、アーク故障が発生したか否かを判定するための機能構成要素として、第1取得部11と、第2取得部12と、第3取得部13と、判定部14と、報知部15と、停止部16と、を備えている。実施の形態では、第1取得部11、判定部14、報知部15、及び停止部16は電源2に設けられている。また、第2取得部12及び第3取得部13は、電源2とは別に給電路L1に接続された通信モジュール20に設けられている。通信モジュール20は、例えば無線通信又は電力線通信(Power Line Communication:PLC)により、電源2との間で通信可能に構成されている。
【0023】
電源2及び通信モジュール20の各々において、アーク検出システム100は、例えばマイコン、又は、マイコンを備える装置である。マイコンは、プログラムが格納されたROM及びRAM、プログラムを実行するプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)、タイマ、A/D変換器、並びに、D/A変換器等を有する半導体集積回路等である。第1取得部11、第2取得部12、第3取得部13、判定部14、報知部15、及び停止部16は、いずれもプロセッサが上記プログラムを実行することにより実現される。
【0024】
第1取得部11は、電源2から電力が供給される給電路L1に流れる電流I1、又は給電路L1における電圧V1の測定結果を取得する。実施の形態では、第1取得部11は、電流計22により所定周期(サンプリング周期)でサンプリングすることで測定された電流I1の測定結果を取得する。つまり、第1取得部11は、電流計22から所定周期で電流I1の測定結果を取得する。電流計22は、電源2と給電路L1との間に設けられており、給電路L1の負側給電路に流れる電流(つまり、給電路L1に流れる電流I1)を測定する。なお、電流計22は、電源2に内蔵されていてもよい。
【0025】
第2取得部12は、給電路L1に接続される機器3が有する負荷31の変動に関する変動情報を取得する。ここで、負荷31の変動とは、負荷31で消費される電力が変化すること、特には負荷31を流れる電流が変化することをいう。そして、変動情報は、負荷31で消費される電力(又は負荷31を流れる電流)の変化を直接的又は間接的に表す情報を含み得る。負荷31の変動は、例えば機器3の電源を入/切した場合、又は機器3の動作モードを変更した場合等に生じ得る。
【0026】
実施の形態では、第2取得部12は、機器3との間で通信することにより、負荷31で消費される電力の変化分を変動情報として機器3から取得する。つまり、機器3では、例えば備え付けの電流計を用いて、負荷31で消費される電力(又は負荷31を流れる電流)を定期的に計測している。そして、第2取得部12は、機器3との間で通信することにより、機器3での計測結果を取得し、取得した計測結果の時系列データから負荷31で消費される電力の変化分を算出して変動情報として取得する。なお、負荷31で消費される電力の変化分は、機器3で算出されてもよい。この場合、第2取得部12は、機器3との間で通信することにより、負荷31で消費される電力の変化分を変動情報として取得する。第2取得部12と機器3との間の通信の通信規格は特に限定されない。また、第2取得部12と機器3との間の通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよいし、電力線通信であってもよい。
【0027】
第3取得部13は、機器3の動作状態に関する状態情報を取得する。ここで、機器3の動作状態は、大別して通常状態と、スタンバイ状態と、を含み得る。通常状態は、機器3の有する負荷31が電力を受けて動作しており、負荷31が有する通常の機能を発揮している状態をいう。スタンバイ状態は、機器3の有する負荷31が電力を受けているが、負荷31が有する通常の機能を発揮しておらず、通常状態への切り替えの指令を待ち受けている状態をいう。スタンバイ状態では、通常状態と比較して、負荷31で消費される電力(又は負荷31を流れる電流)が小さい。
【0028】
実施の形態では、第3取得部13は、機器3との間で通信することにより、状態情報を含む信号を機器3から受信することで、状態情報を機器3から取得する。なお、第3取得部13は、機器3との間の通信量に基づいて、通信量が所定量よりも大きければ通常状態、通信量が所定量より小さければスタンバイ状態として状態情報を取得してもよい。第3取得部13と機器3との間の通信の通信規格は特に限定されない。また、第3取得部13と機器3との間の通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよいし、電力線通信であってもよい。実施の形態では、第2取得部12及び第3取得部13は、1つの取得部で実現されてもよい。
【0029】
実施の形態では、第2取得部12及び第3取得部13は、いずれも給電路L1に接続されて動作している機器3との間で一定周期(例えば数百ms)で通信を行う。例えば、第2取得部12及び第3取得部13は、いずれも給電路L1に接続されて動作している機器3から一方的に送信される信号を受信することで、機器3との間で通信してもよい。また、例えば、第2取得部12及び第3取得部13は、いずれも返信を要求する指令を含む要求信号をブロードキャストし、要求信号を受信した機器3からの応答信号を受信することで、機器3との間で通信してもよい。
【0030】
なお、機器3から第2取得部12及び第3取得部13に向けて送信される信号には、送信元の機器3の識別情報が含まれている。このため、アーク検出システム100は、機器3ごとに変動情報及び状態情報を把握することが可能である。
【0031】
判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び第2取得部12にて取得した変動情報に基づいて、給電路L1にアーク故障が発生したか否かを判定する。具体的には、判定部14は、第1取得部11にて取得した電流I1の測定結果を周波数分析する。周波数分析とは、例えば、電流I1の測定結果の時間波形をフーリエ変換(ここでは、FFT(Fast Fourier Transform))することで、電流I1の測定結果の周波数スペクトルを算出することである。そして、判定部14は、算出した周波数スペクトルを参照し、電流I1の測定結果に特定の周波数帯域の成分が第1所定値以上含まれる場合、アークが発生していると判定する。特定の周波数帯域は、例えば、アークが発生した場合に発生するノイズの周波数を含む帯域である。特定の周波数帯域は、一例として、数十kHz帯であって、比較的高周波の周波数帯域である。なお、上記のような場合に発生するノイズの周波数は、実験的に求めることが可能である。
【0032】
そして、判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果に基づくアークの発生の有無の判定のみならず、第2取得部12にて取得した変動情報も参照することにより、給電路L1にアーク故障が発生したか否かを判定する。つまり、判定部14は、単に第1取得部11にて取得した測定結果に基づいてアークが発生したと判定しただけでは、給電路L1にアーク故障が発生したとは判定しない。以下、このようにアーク故障の発生を判定するに至った経緯について説明する。
【0033】
DC配電網200においては、給電路L1の断線又は半断線に起因してアークが発生し得る。このアークが発生した場合、電流I1(又は電圧V1)に特定の周波数帯域の成分が重畳する。したがって、判定部14は、電流I1(又は電圧V1)の特定の周波数帯域の成分を監視することで、アークが発生したことを判定し得る。しかしながら、機器3の有する負荷31に急峻な変動が生じた場合においても、電流I1(又は電圧V1)に特定の周波数帯域の成分が重畳することが起こり得る。このような現象は、DC配電網200のみならず、AC(Alternating Current)配電網でも起こり得る。
【0034】
ここで、給電路L1の断線又は半断線に起因するアークはアーク故障の原因となりがちであるが、上記の現象は、そもそも給電路L1でのアークの発生に起因しておらず、アーク故障の原因とはならない。したがって、アーク検出システム100においては、上記の現象は検出せずに、主として給電路L1の断線又は半断線に起因するアークの発生をアーク故障の発生と判定することが望まれる。
【0035】
そこで、実施の形態では、上記の要望を満たすために、判定部14は、以下のようにして給電路L1にアーク故障が発生したか否かを判定する。すなわち、判定部14は、まず第1取得部11にて取得した測定結果に基づいて、アークが発生したか否かを判定する。そして、判定部14は、アークが発生したと判定した場合、アークが発生したとの判定の継続時間を監視する。継続時間が第1閾値未満である場合、判定部14は、第2取得部12にて取得した変動情報に依らず、給電路L1にアーク故障が発生していない、と判定する。また、継続時間が第1閾値以上第2閾値未満であれば、判定部14は、以下に示す第1判定例又は第2判定例のようにして、給電路L1にアーク故障が発生したか否かを判定する。また、継続時間が第2閾値以上であれば、判定部14は、以下に示す第3判定例のようにして、給電路L1にアーク故障が発生したか否かを判定する。第1閾値及び第2閾値は、例えばアーク検出システム100のユーザにより、あらかじめ設定される。
【0036】
図2Aは、実施の形態に係るアーク検出システム100の判定部14による第1判定例を示すタイミングチャートである。
図2Bは、実施の形態に係るアーク検出システム100の判定部14による第2判定例を示すタイミングチャートである。
図2Cは、実施の形態に係るアーク検出システム100の判定部14による第3判定例を示すタイミングチャートである。
図2A~
図2Cの各々において、上段のタイミングチャートのパルスは、判定部14によるアークが発生したとの判定の継続時間を表している。また、
図2A~
図2Cの各々において、下段のタイミングチャートのパルスは、負荷31にて急峻な変動があったことを表している。なお、
図2Bでは、後述するように負荷31にて急峻な変動が生じていないため、パルスを図示していない。
【0037】
図2Aに示すように、第1判定例では、判定部14が第1取得部11にて取得した測定結果に基づいてアークが発生したと判定した時点(以下、「判定時点」ともいう)t1において、第2取得部12は、負荷31にて急峻な変動が生じたことを表す変動情報を取得している。このため、第1判定例では、判定部14は、判定時点t1において負荷31にて急峻な変動が生じていることから、給電路L1にアークは発生しておらず、給電路L1にアーク故障が発生していない、と判定する。
【0038】
図2Bに示すように、第2判定例では、判定時点t1において、第2取得部12は、負荷31の変動が生じていないことを表す変動情報を取得している。このため、第2判定例では、判定部14は、判定時点t1において負荷31にて急峻な変動が生じていないことから、給電路L1での断線又は半断線に起因するアークが発生、つまりアーク故障が発生した、と判定する。
【0039】
このように、第1判定例及び第2判定例においては、判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果に基づいてアークが発生したと判定し、かつ、その判定時において負荷31にて急峻な変動が生じていれば、アーク故障が発生していない、と判定する。ここで、負荷31にて急峻な変動が生じたか否かは、負荷31で消費される電力の単位時間当たりの変化量(勾配)、つまり負荷31で消費される電力の変化分が閾値以上であるか否かにより判定される。具体的には、判定部14は、上記変化分が閾値以上であれば、負荷31にて急峻な変動が生じたと判定し、上記変化分が閾値未満であれば、負荷31にて急峻な変動が生じていないと判定する。閾値は、例えばアーク検出システム100のユーザにより、あらかじめ設定される。
【0040】
なお、「判定時」とは、判定時点t1の瞬間のみを含むのではなく、判定時点t1よりも所定時間だけ前の時点から、判定時点t1よりも所定時間だけ後の時点までの範囲を含んでいてもよい。
【0041】
図2Cに示すように、第3判定例では、第2取得部12は、負荷31にて急峻な変動が生じたことを表す変動情報を取得しているが、判定部14によるアークが発生したとの判定の継続時間が第2閾値(閾値時間Th1)よりも長くなっている。このため、第3判定例では、判定部14は、第2取得部12にて取得した変動情報を参照せずに、給電路L1での断線又は半断線に起因するアークが発生、つまりアーク故障が発生した、と判定する。このように、判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果に基づいてアークが発生したと判定している時間が第2閾値(閾値時間Th1)以上である場合、第2取得部12にて取得した変動情報に依らず、アーク故障が発生したと判定する。
【0042】
さらに、実施の形態では、判定部14は、第3取得部13にて取得した状態情報を参照して、給電路L1にアーク故障が発生したか否かを判定する。具体的には、判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果に基づいてアークが発生したと判定し、かつ、第3取得部13にて取得した機器3の動作状態がスタンバイ状態であれば、第2取得部12にて取得した変動情報に依らず、アーク故障が発生したと判定する。すなわち、機器3の動作状態がスタンバイ状態であれば、そもそも負荷31で消費される電力が比較的小さいことから、負荷31にて急峻な変動が生じ得ない。そこで、判定部14は、機器3の動作状態がスタンバイ状態であれば、変動情報を参照せずに、第1取得部11にて取得した測定結果に基づいてアーク故障が発生したと判定する。
【0043】
報知部15は、例えばランプを点灯したり、ブザーを鳴らしたりすることでアーク故障が発生したことを周囲に報知する。また、報知部15は、アーク故障が発生したことを示す情報をアーク検出システム100の所有者又は管理者等が有する情報端末に送信することで、アーク故障が発生したことを報知してもよい。情報端末は、一例として、スマートフォン又はタブレット等の携帯端末の他、パーソナルコンピュータ等を含み得る。
【0044】
停止部16は、判定部14にてアーク故障が発生したと判定された場合に、給電路L1に流れる電流を停止する。これにより、アーク故障によりアーク放電が発生していた場合には、アーク放電が消滅する。
【0045】
例えば、停止部16は、給電路L1に接続されたスイッチを制御することで、給電路L1に流れる電流を停止する。スイッチは、例えば、メカスイッチ又は半導体スイッチである。メカスイッチは、例えば、リレー又はブレーカ等のスイッチであり、半導体スイッチは、トランジスタ又はダイオード等のスイッチである。
【0046】
なお、給電路L1に接続されたスイッチとは、給電路L1に直接的に接続されたスイッチであってもよいし、給電路L1に間接的に接続されたスイッチであってもよい。例えば、当該スイッチは、AC/DCコンバータ21におけるAC/DC変換機能を実現するためのスイッチである。当該スイッチは、給電路L1に直接的に接続されていなくても、間接的には給電路L1に接続されることになるため、給電路L1に接続されたスイッチとなる。例えば、停止部16は、当該スイッチを制御して当該スイッチのスイッチング動作を停止することで、給電路L1に流れる電流を停止する。
【0047】
なお、スイッチは、電源2のオン及びオフを切り替えるように構成されていてもよい。この場合、停止部16は、当該スイッチを制御して電源2をオフすることで、給電路L1に流れる電流を停止する。
【0048】
また、スイッチは給電路L1上に設けられていてもよく、当該スイッチは給電路L1の開閉を切り替えるように構成されていてもよい。例えば、停止部16は、当該スイッチを制御して給電路L1を開放することで、給電路L1に流れる電流を停止してもよい。
【0049】
[動作]
以下、実施の形態に係るアーク検出システム100の動作の一例について
図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態に係るアーク検出システム100の動作例を示すフローチャートである。
【0050】
まず、第1取得部11は、電流計22から所定周期で電流I1の測定結果を取得する(S1)。処理S1は、アーク検出方法の第1取得ステップST1に相当する。次に、第2取得部12は、各機器3との間で通信することにより、各機器3から変動情報を取得する(S2)。処理S2は、アーク検出方法の第2取得ステップST2に相当する。また、第3取得部13は、各機器3との間で通信することにより、各機器3から状態情報を取得する(S3)。
【0051】
そして、判定部14は、まず第1取得部11にて取得した電流I1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アークが発生したか否かを判定する(S4)。ここでは、判定部14は、第1取得部11にて取得した電流I1の測定結果を周波数分析することで判定する。判定部14は、アークが発生したと判定した場合(S4:Yes)、アークが発生したとの判定の継続時間を監視する(S5)。一方、判定部14は、アークが発生していないと判定した場合(S4:No)、アーク故障が発生していないと判定する(S9)。
【0052】
アークが発生したと判定した場合において、継続時間が第1閾値未満であれば(S5:Yes)、判定部14は、アーク故障が発生していないと判定する(S9)。また、継続時間が第2閾値以上であれば(S5:No、S6:No)、判定部14は、アーク故障が発生したと判定する(S10)。一方、継続時間が第1閾値以上であって(S5:No)、かつ、第2閾値未満であれば(S6:Yes)、判定部14は、第3取得部13にて取得した状態情報を参照し、各機器3の動作状態を監視する(S7)。
【0053】
いずれの機器3もスタンバイ状態であれば(S7:Yes)、判定部14は、アーク故障が発生したと判定する(S10)。一方、少なくとも1以上の機器3が通常状態であれば(S7:No)、判定部14は、第2取得部12にて取得した変動情報を参照し、判定時点t1において負荷31にて急峻な変動が生じたか否かを監視する(S8)。
【0054】
動作状態が通常状態であるいずれかの機器3において、負荷31にて急峻な変動が生じた場合(S8:Yes)、判定部14は、アーク故障が発生していないと判定する(S9)。一方、動作状態が通常状態であるいずれの機器3においても、負荷31にて急峻な変動が生じていない場合(S8:No)、判定部14は、アーク故障が発生したと判定する(S10)。処理S4~S10は、アーク検出方法の判定ステップST3に相当する。
【0055】
判定部14にてアーク故障が発生したと判定された場合(S10)、停止部16は、給電路L1に流れる電流を停止することで、電源2から給電路L1への給電を停止する(S11)。そして、報知部15は、アーク故障の発生を報知する(S12)。一方、判定部14にてアーク故障が発生していないと判定された場合(S9)、アーク検出システム100の処理が終了する。以下、上記の一連の処理S1~S12が繰り返される。
【0056】
[利点]
以下、実施の形態に係るアーク検出システム100の利点について、比較例のアーク検出システムとの比較を交えて説明する。比較例のアーク検出システムは、第2取得部12及び第3取得部13を備えていない点で、実施の形態に係るアーク検出システム100と相違する。つまり、比較例のアーク検出システムでは、第1取得部11にて取得した電流I1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分が第1所定値以上になると、即座にアーク故障が発生したと判定する点で、実施の形態に係るアーク検出システム100と相違する。
【0057】
まず、アーク検出システムとして要求される条件について説明する。給電路L1の断線又は半断線に起因してアークが発生した場合に、この状態を放置すると、断線又は半断線した箇所が過剰に発熱し、場合によっては発火することで火災につながる可能性がある。そこで、アーク検出システムは、アークの発生(つまり、アーク故障の発生)をいち早く検出し、火災が発生するような状況となる前に給電路L1への給電を停止することが重要となる。例えば、UL(Underwriters Laboratories)規格では、アークの発生後2秒以内にアーク故障の発生を検出することが要求されている。
【0058】
比較例のアーク検出システムでも、アーク故障の発生を検出することは可能である。しかしながら、比較例のアーク検出システムでは、給電路L1の断線又は半断線に起因するアークが発生した場合のみならず、機器3の有する負荷31に急峻な変動が生じた場合にも、アーク故障が発生したと判定する。つまり、比較例のアーク検出システムでは、実際にアークが発生していない場合においてもアーク故障が発生したと誤って判定してしまう。このように、比較例のアーク検出システムでは、負荷31に急峻な変動が生じるたびにアーク故障が発生したと判定するため、ユーザの使い勝手が悪くなり得る。例えば、機器3の電源の入/切が行われるたびにアーク故障が発生したとユーザに報知するといった事象が生じ得るため、ユーザにとって煩わしい。また、例えば、アーク故障が発生したと判定した場合に電源2から給電路L1に対する電力供給を自動的に停止するように構成されている、と仮定する。この構成では、機器3の電源の入/切が行われるたびに給電路L1に対する電力供給が停止されるといった事象が生じ得るため、これもまたユーザにとって煩わしい。
【0059】
一方、実施の形態に係るアーク検出システム100では、第2取得部12を備えているため、判定部14は、負荷31にて急峻な変動が生じたか否かを把握することが可能である。このため、実施の形態に係るアーク検出システム100では、給電路L1の断線又は半断線に起因するアークが発生した場合にアーク故障が発生したと判定し、負荷31にて急峻な変動が生じた場合には基本的にアーク故障が発生したと判定することがない。
【0060】
つまり、実施の形態に係るアーク検出システム100では、負荷31にて急峻な変動が生じた場合にアーク故障が発生したと判定する可能性が低い。言い換えれば、実施の形態に係るアーク検出システム100では、負荷31の急峻な変動をアーク故障が発生したと誤って検出するのを防止しやすくなり、アーク故障の発生の誤検出を防止しやすい、という利点がある。このため、実施の形態に係るアーク検出システム100では、比較例のアーク検出システムで起こり得た上記事象が生じにくい。つまり、実施の形態に係るアーク検出システム100では、ユーザにとって特に影響の大きい事象と考えられるアーク故障の発生時にのみユーザに報知したり、給電路L1に対する電力供給を停止したりすることができるので、ユーザの使い勝手が良い、という利点がある。
【0061】
(変形例)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。以下、実施の形態の変形例について列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせてもよい。
【0062】
実施の形態では、電流計22はアーク検出システム100とは別の機器であるが、アーク検出システム100に内蔵されていてもよい。
【0063】
実施の形態では、第2取得部12は、給電路L1に接続されて動作している機器3との間で一定周期で通信を行っているが、これに限られない。例えば、第2取得部12は、機器3との間で不定期に通信を行ってもよい。
【0064】
実施の形態では、第2取得部12は、機器3との間で通信することにより変動情報を取得しているが、これに限られない。例えば、第2取得部12は、機器3に向けて送信される制御指令を変動情報として取得してもよい。この態様は、機器3を遠隔制御するコントローラが機器3に向けて送信する制御指令を、第2取得部12が取得することが可能な場合に実施し得る。すなわち、制御指令を受信した機器3では、制御指令の内容にしたがって動作して負荷31が変動することから、第2取得部12は、取得した制御指令の内容から間接的に負荷31の変動を把握することが可能である。
【0065】
そして、この態様では、判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果に基づいてアークが発生したと判定し、かつ、その判定時において制御指令が負荷31で消費される電力の変化分が閾値以上となるような指令であれば、アーク故障が発生していない、と判定する。例えば、第2取得部12で取得した制御指令の内容が、機器3の電源を入/切すること、又は機器3の動作モードを変更することである場合に、判定部14は、負荷31にて急峻な変動が生じたと推定する。この態様では、機器3からの信号を待ち受けることなく、アーク故障が発生したか否かを判定することが可能である。
【0066】
また、第2取得部12は、機器3との間で通信することなく変動情報を取得してもよい。ここで、機器3の有する負荷31にて急峻な変動が生じた場合、この急峻な変動に伴って、給電路L1に流れる電流I1も変化する。したがって、第2取得部12は、例えば電流計22により測定された電流I1の測定結果に基づいて、変動情報を取得することが可能である。
【0067】
実施の形態では、アーク検出システム100は電源2に設けられているが、これに限定されない。例えば、アーク検出システム100は、電源2とは別の機器として給電路L1に接続されていてもよい。この場合、アーク検出システム100は、電源2との間で有線通信、無線通信、又は電力線通信により通信可能に構成されていれば、電源2に対して判定部14の判定結果に応じた指示を与えることが可能である。
【0068】
実施の形態では、判定部14は、第1取得部11にて取得した電流I1の測定結果に対して周波数分析を実行することにより、特定の周波数帯域の成分を抽出しているが、これに限らない。例えば、判定部14は、周波数分析を実行する代わりに、第1取得部11にて取得した電流I1の測定結果をフィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)に通すことで、特定の周波数帯域の周波数成分を抽出してもよい。
【0069】
実施の形態では、第1取得部11は、電流I1の測定結果を取得しているが、電圧V1の測定結果を取得してもよい。この場合、第1取得部11は、電流計22の代わりに、電圧計により所定周期(サンプリング周期)でサンプリングすることで測定された電圧V1の測定結果を取得する。つまり、第1取得部11は、電圧計から所定周期で電圧V1の測定結果を取得する。電圧計は、電源2に設けられており、給電路L1の正側給電路と負側給電路との間の線間電圧(つまり、給電路L1における電圧V1)を測定する。なお、電圧計は、電源2に設けられていなくてもよく、電源2とは別の機器であってもよい。
【0070】
また、この場合、判定部14は、第1取得部11にて取得した電圧V1の測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分に基づいて、アークが発生しているか否かを判定する。具体的には、判定部14は、第1取得部11にて取得した電圧V1の測定結果を周波数分析する。そして、判定部14は、算出した周波数スペクトルを参照することにより、電圧V1の測定結果に特定の周波数帯域の成分が第1所定値以上含まれる場合に、アークが発生していると判定する。特定の周波数帯域は、例えば、アーク故障が発生した場合に発生するノイズの周波数を含む帯域である。特定の周波数帯域は、一例として、数十kHz帯であって、比較的高周波の周波数帯域である。なお、上記のような場合に発生するノイズの周波数は、実験的に求めることが可能である。
【0071】
実施の形態では、第2取得部12は、電源2とは別に給電路L1に接続された通信モジュール20に設けられているが、これに限られない。例えば、第2取得部12は、電源2に設けられていてもよい。この場合、アーク検出システム100において通信モジュール20は不要である。
【0072】
実施の形態では、アーク検出システム100は第3取得部13を備えているが、第3取得部13を備えていなくてもよい。この場合、判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果と、第2取得部12にて取得した変動情報と、のみに基づいて、アーク故障が発生したか否かを判定すればよい。
【0073】
実施の形態では、判定部14は、アークが発生したとの判定の継続時間が第2閾値(閾値時間Th1)以上であれば、第2取得部12にて取得した変動情報に依らず、アーク故障が発生したと判定しているが、これに限られない。例えば、判定部14は、測定結果に含まれる特定の周波数帯域の成分が第2所定値(>第1所定値)以上含まれる場合に、第2取得部12にて取得した変動情報に依らず、アーク故障が発生したと判定してもよい。
【0074】
実施の形態では、停止部16は、判定部14にてアーク故障が発生したと判定された場合に、給電路L1に流れる電流を停止しているが、これに限られない。例えば、停止部16は、判定部14にてアーク故障が発生したと判定された場合に、機器3の電源を個別に切るように構成されていてもよい。この態様は、例えば機器3にDC/DCコンバータ回路が搭載されており、停止部16が機器3に向けて当該DC/DCコンバータ回路のスイッチング素子をオフする指令を送信することで実現可能である。この態様では、アーク故障と関係のある機器3の電源のみを切り、他の機器3については動作を維持するといった措置をとることが可能である。
【0075】
実施の形態では、アーク検出システム100はDC配電網200に用いられているが、これに限られない。例えば、アーク検出システム100は、AC配電網に用いられてもよい。この場合、電源2は、交流電源である。
【0076】
例えば、本発明は、アーク検出システム100として実現できるだけでなく、アーク検出システム100を構成する各構成要素が行うステップ(処理)を含むアーク検出方法として実現できる。
【0077】
具体的には、アーク検出方法は、第1取得ステップST1と、第2取得ステップST2と、判定ステップST3と、を含む。第1取得ステップST1では、電源2から電力が供給される給電路L1に流れる電流I1、又は給電路L1における電圧V1の測定結果を取得する。第2取得ステップST2では、給電路L1に接続される機器3が有する負荷31の変動に関する変動情報を取得する。判定ステップST3では、第1取得ステップST1にて取得した測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び第2取得ステップST2にて取得した変動情報に基づいて、給電路L1にアーク故障が発生したか否かを判定する。
【0078】
例えば、それらのステップは、1以上のプロセッサを有するコンピュータ(コンピュータシステム)によって実行されてもよい。そして、本発明は、それらの方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本発明は、そのプログラムを記録したCD-ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。具体的には、プログラムは、1以上のプロセッサに、上記のアーク検出方法を実行させる。
【0079】
上記各実施の形態に係るアーク検出システム100の少なくとも一部は、マイコンによってソフトウェア的に実現されたが、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータにおいてソフトウェア的に実現されてもよい。さらに、アーク検出システム100の少なくとも一部は、A/D変換器、論理回路、ゲートアレイ、D/A変換器等で構成される専用の電子回路によってハードウェア的に実現されてもよい。
【0080】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【0081】
(まとめ)
以上述べたように、アーク検出システム100は、第1取得部11と、第2取得部12と、判定部14と、を備える。第1取得部11は、電源2から電力が供給される給電路L1に流れる電流I1、又は給電路L1における電圧V1の測定結果を取得する。第2取得部12は、給電路L1に接続される機器3が有する負荷31の変動に関する変動情報を取得する。判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び第2取得部12にて取得した変動情報に基づいて、給電路L1にアーク故障が発生したか否かを判定する。
【0082】
このようなアーク検出システム100によれば、負荷31の急峻な変動をアーク故障が発生したと誤って検出するのを防止しやすくなり、アーク故障の発生の誤検出を防止しやすい、という利点がある。
【0083】
また、例えば、アーク検出システム100では、第2取得部12は、機器3との間で通信することにより、負荷31で消費される電力の変化分を変動情報として機器3から取得する。判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果に基づいてアークが発生したと判定し、かつ、その判定時において第2取得部12にて取得した変化分が閾値以上であれば、アーク故障が発生していない、と判定する。
【0084】
このようなアーク検出システム100によれば、負荷31で消費される電力の変化分を参照することで、負荷31の急峻な変動を検出しやすくなることから、アーク故障の発生の誤検出を防止しやすくなる、という利点がある。
【0085】
また、例えば、アーク検出システム100では、第2取得部12は、機器3に向けて送信される制御指令を変動情報として取得する。判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果に基づいてアークが発生したと判定し、かつ、その判定時において制御指令が負荷31で消費される電力の変化分が閾値以上となるような指令であれば、アーク故障が発生していない、と判定する。
【0086】
このようなアーク検出システム100によれば、負荷31で消費される電力の変化分を機器3から取得せずとも、負荷31の急峻な変動を検出することができるので、通信量の削減を図りやすい、という利点がある。
【0087】
また、例えば、アーク検出システム100では、判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果に基づいてアークが発生したと判定している時間が閾値時間Th1以上である場合、第2取得部12にて取得した変動情報に依らず、アーク故障が発生したと判定する。
【0088】
このようなアーク検出システム100によれば、変動情報を参照する場合と比較して、早期にアーク故障が発生したと判定しやすくなる、という利点がある。
【0089】
また、例えば、アーク検出システム100は、機器3の動作状態に関する状態情報を取得する第3取得部13を更に備える。判定部14は、第1取得部11にて取得した測定結果に基づいてアークが発生したと判定し、かつ、第3取得部13にて取得した機器3の動作状態がスタンバイ状態であれば、第2取得部12にて取得した変動情報に依らず、アーク故障が発生したと判定する。
【0090】
このようなアーク検出システム100によれば、変動情報を参照する場合と比較して、早期にアーク故障が発生したと判定しやすくなる、という利点がある。
【0091】
また、例えば、アーク検出方法は、第1取得ステップST1と、第2取得ステップST2と、判定ステップST3と、を含む。第1取得ステップST1では、電源2から電力が供給される給電路L1に流れる電流I1、又は給電路L1における電圧V1の測定結果を取得する。第2取得ステップST2では、給電路L1に接続される機器3が有する負荷31の変動に関する変動情報を取得する。判定ステップST3では、第1取得ステップST1にて取得した測定結果のうちの特定の周波数帯域の成分、及び第2取得ステップST2にて取得した変動情報に基づいて、給電路L1にアーク故障が発生したか否かを判定する。
【0092】
このようなアーク検出方法によれば、負荷31の急峻な変動をアーク故障が発生したと誤って検出するのを防止しやすくなり、アーク故障の発生の誤検出を防止しやすい、という利点がある。
【0093】
また、例えば、プログラムは、1以上のプロセッサに、上記のアーク検出方法を実行させる。
【0094】
このようなプログラムによれば、負荷31の急峻な変動をアーク故障が発生したと誤って検出するのを防止しやすくなり、アーク故障の発生の誤検出を防止しやすい、という利点がある。
【符号の説明】
【0095】
11 第1取得部
12 第2取得部
13 第3取得部
14 判定部
2 電源
3 機器
31 負荷
100 アーク検出システム
I1 電流
L1 給電路
ST1 第1取得ステップ
ST2 第2取得ステップ
ST3 判定ステップ
V1 電圧