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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】免震床の接続構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/024 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
E04F15/024 605
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020047720
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021080826
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2019207718
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390027661
【氏名又は名称】株式会社金澤製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】519411397
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ワイ
(73)【特許権者】
【識別番号】519203884
【氏名又は名称】増子 彰司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 光雄
(72)【発明者】
【氏名】吉村 英輔
(72)【発明者】
【氏名】増子 彰司
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-310425(JP,A)
【文献】実開平05-032572(JP,U)
【文献】特開2013-234485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00 - 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動部材を用いた免震装置が床下に配置されている免震床の周囲に固定床が配置され、前記免震床と前記固定床の間に、緩衝地帯となる溝であるボーダー部分が形成された免震フロアにおける免震床の接続構造であって、
前記ボーダー部分には、前記ボーダー部分を覆い、地震時に前記免震床の動きに追従してスライドするスライドプレートが配置され、
前記免震床の前記ボーダー部分側の端部には、上方に屈曲する第1屈曲部が形成され、
前記スライドプレートの前記免震床側の端部には、下方に屈曲する第2屈曲部が形成され、
前記第1屈曲部と前記第2屈曲部とが係合し
前記免震床の床下の縁部には、地震時に前記免震床と挙動を共にし、前記第1屈曲部が形成された受けプレートを有するスライド脚が配置されていることを特徴とする免震床の接続構造。
【請求項2】
前記第1屈曲部および前記第2屈曲部は、前記免震床の床面に対して直角に屈曲し、
前記第1屈曲部には、前記スライドプレートと係合する第1係合部が設けられ、
前記第2屈曲部には、前記第1係合部と係合する第2係合部が形成されていることを特徴とする請求項記載の免震床の接続構造。
【請求項3】
前記第1屈曲部および前記第2屈曲部は、前記免震床の床面に対して鋭角に屈曲していることを特徴とする請求項記載の免震床の接続構造。
【請求項4】
前記第1屈曲部および前記第2屈曲部は、断面弧状に湾曲していることを特徴とする請求項記載の免震床の接続構造。
【請求項5】
前記スライドプレートの前記免震床側の端部には、屈曲しない非屈曲部と前記第2屈曲部とが交互に設けられていることを特徴とする請求項記載の免震床の接続構造。
【請求項6】
前記免震床を構成する第1主床材の前記ボーダー部分側の縁部にはクッション材が取り付けられていることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の免震床の接続構造。
【請求項7】
前記固定床は、第2主床材の上に、中空層、およびカバープレートを積層して成り、
前記スライドプレートは、前記中空層の前記免震床側において水平方向にスライド可能に配置されていることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の免震床の接続構造。
【請求項8】
前記免震装置は、上向凹状鋼板と下向凹状鋼板の間に前記転動部材を介装させたものであり、
前記転動部材は、碁石型または球型であることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の免震床の接続構造。
【請求項9】
前記第1係合部には、貫通孔が形成され、
前記第2係合部には、突起または貫通孔が形成され、
両貫通孔に接続部材を貫通させ、または前記第2係合部の突起を前記第1係合部の貫通孔に挿入して前記第1係合部と前記第2係合部が係合していることを特徴とする請求項記載の免震床の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転動部材を介装させた免震装置を用いた免震フロアにおいて、地震の揺れを軽減する免震床と免震床の周囲に形成されたボーダー部分を覆うスライドプレートとの接続部分についての、免震床の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図9(a)に示すように、上向凹状鋼板102と下向凹状鋼板104の間に転動部材106を介装させた免震装置108が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる免震装置は、地震が発生した際、まず図9(b)に示すように、転動部材106が傾斜することで地震動の衝撃を緩和する。
【0003】
さらに揺れが続き、地盤が大きく水平方向に移動すると、図9(c)に示すように、転動部材106が上向凹状鋼板102と下向凹状鋼板104の間を滑走することにより地震動の衝撃を大幅に緩和する。ここで、転動部材106は、上向凹状鋼板102および下向凹状鋼板104と球面接触しているため、転動部材106が凹状部分の端部まで滑走した場合、図9(d)に示すように、転動部材106が起き上がって楔の役割を果たし、復元力が形成される。また、転動部材106と上向凹状鋼板102および下向凹状鋼板104との間の摩擦により、転動部材106の振動が減衰する。
【0004】
かかる免震装置108によれば、このように、復元力と減衰力を兼ね備えることから、加震終了後直ちに振動を治め転動部材106を元の位置に戻すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-234485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述の免震装置108は、たとえば、図10に示すように、建物内の免震フロア110に用いることができる。この免震フロア110において、中央部分が免震床112であり、端部分が固定床114である。そして、免震床112を取り囲み、免震床112と固定床114の間には、緩衝地帯となる溝であるボーダー部分116が存在する。
【0007】
この場合において、地震が発生した際、図9(d)に示すように、転動部材106が凹状部分の端部まで滑走すると、転動部材106が起き上がることにより、免震床112が浮き上がり、免震床112の高さが固定床114よりも高くなる場合がある。
【0008】
この際、急激に免震床112が跳ね上がったことによって、図11に示すように、ボーダー部分116全体を覆っていたスライドプレート118が外れ、ボーダー部分116が露出すると、免震フロア110内の人がボーダー部分116に脚を取られるなどの危険が想定される。さらにボーダー部分116に脚を取られた状態で揺れが続けば、免震床112とスライドプレートと118によって足を挟まれ怪我をするなどの事故につながる恐れも否定できない。
【0009】
本発明の目的は、ボーダー部分における安全性を確保した免震床の接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の免震床の接続構造は、
転動部材を用いた免震装置が床下に配置されている免震床の周囲に固定床が配置され、前記免震床と前記固定床の間に、緩衝地帯となる溝であるボーダー部分が形成された免震フロアにおける免震床の接続構造であって、
前記ボーダー部分には、前記ボーダー部分を覆い、地震時に前記免震床の動きに追従してスライドするスライドプレートが配置され、
前記免震床の前記ボーダー部分側の端部には、上方に屈曲する第1屈曲部が形成され、
前記スライドプレートの前記免震床側の端部には、下方に屈曲する第2屈曲部が形成され、
前記第1屈曲部と前記第2屈曲部とが係合し
前記免震床の床下の縁部には、地震時に前記免震床と挙動を共にし、前記第1屈曲部が形成された受けプレートを有するスライド脚が配置されていることを特徴とする。
【0011】
このように、免震床の縁部をスライドプレートと係合させることにより、急激に免震床が跳ね上がった場合において、スライドプレートが外れてボーダー部分が露出することを抑制でき、ボーダー部分における安全性を確保することができる。また、スライド脚の受けプレートを利用することにより、スライドプレートの第2屈曲部と係合する第1屈曲部を容易に形成することができる。
【0013】
また、本発明の免震床の接続構造は、
前記第1屈曲部および前記第2屈曲部が、前記免震床の床面に対して直角に屈曲し、
前記第1屈曲部には、前記スライドプレートと係合する第1係合部が設けられ、
前記第2屈曲部には、前記第1係合部と係合する第2係合部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
このように、第1屈曲部と第2屈曲部が断面L字状に屈曲する場合、それぞれの屈曲部に、係合部を形成し、それらを契合させることにより、急激に免震床が跳ね上がった場合において、スライドプレートが外れてボーダー部分が露出することを的確に防止でき、ボーダー部分における安全性を確保することができる。
【0015】
また、本発明の免震床の接続構造は、
前記第1屈曲部および前記第2屈曲部が、前記免震床の床面に対して鋭角に屈曲していることを特徴とする。
【0016】
これにより、第1屈曲部に第1係合部、第2屈曲部に第2係合部が形成されていなくても地震時にスライドプレート22が外れることを防止することができる。
【0017】
また、本発明の免震床の接続構造は、
前記第1屈曲部および前記第2屈曲部が、断面弧状に湾曲していることを特徴とする。
【0018】
この場合においても、第1屈曲部に第1係合部、第2屈曲部に第2係合部が形成されていなくても地震時にスライドプレート22が外れることを防止することができる。
【0019】
また、本発明の免震床の接続構造は、
前記スライドプレートの前記免震床側の端部には、屈曲しない非屈曲部と前記第2屈曲部とが交互に設けられていることを特徴とする。
【0020】
これにより、スライドプレートの剛性が高く、スライドプレートの免震床側の端部を大きな曲率で曲げることができない場合にも断面弧状に湾曲した第2屈曲部を形成することができる。また、第2屈曲部と非屈曲部とを交互に形成し、非屈曲部の先端を第1主床材上に載置することにより、第1主床材の端部と第1屈曲部の間に安定的に第2屈曲部を位置させることができる。
【0021】
また、本発明の免震床の接続構造は、
前記免震床を構成する第1主床材の前記ボーダー部分側の縁部にはクッション材が取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
これにより、地震時に免震床とスライドプレートが衝突した場合においても衝撃を緩和することができる。
【0023】
また、本発明の免震床の接続構造は、
前記固定床は、第2主床材の上に、中空層、およびカバープレートを積層して成り、
前記スライドプレートは、前記中空層の前記免震床側において水平方向にスライド可能に配置されていることを特徴とする。
これにより、地震時にスライドプレートがスライドしたとしてもスライドプレートを覆うカバープレートはスライドしないようにすることができる。
【0024】
また、本発明の免震床の接続構造は、
前記免震装置は、上向凹状鋼板と下向凹状鋼板の間に前記転動部材を介装させたものであり、
前記転動部材は、碁石型または球型であることを特徴とする。
【0025】
すなわち、本発明は、このような碁石型または球型の転動部材を用いた免震装置において、地震時に転動部材が起き上がることにより、免震床の高さが固定床よりも高くなることを前提とするものである。
【0026】
また、本発明の免震床の接続構造は、
前記第1係合部に、貫通孔が形成され、
前記第2係合部に、突起または貫通孔が形成され、
両貫通孔に接続部材を貫通させ、または前記第2係合部の突起を前記第1係合部の貫通孔に挿入して前記第1係合部と前記第2係合部が係合していることを特徴とする。
【0027】
これにより、地震時においても第2係合部が第1係合部から外れにくくすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の免震床の接続構造によれば、ボーダー部分における安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施の形態に係る免震フロアを上方から視た場合の概念図である。
図2】実施の形態に係る免震装置、第1スライド脚、第2スライド脚を示す図である。
図3】実施の形態に係る免震フロアのボーダー部分近傍を側方から視た概要図である。
図4】実施の形態に係る免震床とスライドプレートの係合部分を示す図である。
図5】他の実施の形態に係る免震床とスライドプレートの係合部分を示す図である。
図6】他の実施の形態に係る免震床とスライドプレートの係合部分を示す図である。
図7】他の実施の形態に係る免震床とスライドプレートの係合部分を示す図である。
図8】他の実施の形態に係る免震床とスライドプレートの係合部分を示す図である。
図9】既存の免震フロアに用いられる免震装置を示す図である。
図10】既存の免震フロアを上方から視た場合の概念図である。
図11】既存の免震フロアにおいて、スライドプレートが外れてボーダー部分が露出した状況を説明する図である。
図12】既存の免震フロアにおいて、スライドプレートが免震床側に固定されている場合のボーダー部分近傍を側方から視た概要図である。
図13】既存の免震フロアにおいて、地震時に生じる床のまくれを抑制する技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る免震床の接続構造について説明する。図1は、実施の形態に係る免震フロアを上方から視た場合の概念図である。図1に示すように、免震フロア2の中央には、地震の揺れを軽減する免震床4が配置され、免震床4の周囲には、地震の揺れを軽減せず、地震と共に揺れる固定床6が外周を壁8に当接して配置されている。そして、免震床4と固定床6の間には、緩衝地帯となる溝であるボーダー部分10が形成されている。
【0031】
ここで、免震床4の床下には、免震装置12、第1スライド脚14、第2スライド脚16が配置され、固定床6の床下には、固定脚18がそれぞれ配置されている。なお、免震装置12は、図2(a)に示すように、上向凹状鋼板12aと下向凹状鋼板12bの間に転動部材12cを介装させたものである。この免震装置12は、背景技術において説明した免震装置108と同様の構成を備えたものであり、その挙動についてもまた、背景技術において説明したのと同様である。
【0032】
第1スライド脚14は、免震床4の床下の縁部以外の部分に配置され、図2(b)に示すように、基板14aから立設された支柱14bと、支柱14b上に配置された球体保持部14dと、球体保持部14dに保持された球体14e、および球体14eに位置し免震床4の床下に配置される受板14cを備えている。この第1スライド脚14は、地震時に床スラブ20と共に振動し、球体14eが免震床4の床下に配置された受板14c下面をスライドする。
【0033】
第2スライド脚16は、第1スライド脚14を上下反転させたもので、免震床4の床下の縁部に配置される。この第2スライド脚16は、図2(c)に示すように、免震床4の床下に固定された受けプレート16aから下方に延びる支柱16bと、支柱16bから下方に突出した球体保持部16dと、球体保持部16dに保持された球体16e、および球体16eの下方に配置された受板16cを備えている。この第2スライド脚16においては、地震時に免震床4と挙動を共にし、球体14eが床スラブ20上に配置された受板16c上面をスライドする。
【0034】
上述のように、免震床4は、免震装置12、第1スライド脚14、第2スライド脚16を床下と床スラブ20との間に配置することにより、免震機能を発揮し、地震の揺れを軽減することができる。一方、固定床6は、何ら免震機能を備えていないため、地震時に床スラブ20と共に振動し、地震の揺れを軽減することはない。このように、免震床4と固定床6は地震時における挙動が異なるため、免震床4と固定床6の間に位置するボーダー部分10は、地震時に幅を変化させることになる。
【0035】
なお、上述の図1に示すように、床スラブ20上において、免震装置12は、第1スライド脚14と第2スライド脚16に対して斜格子状に配置されている。このように免震装置12を配置することにより、地震時に免震装置12と第1スライド脚14が衝突することを防止することができる。また、免震フロア2をフリーアクセスフロアとする場合において、床下に電源ケーブルやLANケーブル等の配線を配置しやすくなる。
【0036】
なお、フリーアクセスフロアにおいて床下の配線量が多い場合には、免震装置12を嵩上げしたり、第1スライド脚14および第2スライド脚16の高さを変更することにより配線の配置空間が確保される。また、フリーアクセスフロアは、後述する第1主床材4a(図3参照)が一枚一枚脱着可能な構造を有している。
【0037】
図3は、免震フロア2のボーダー部分10近傍を側方から視た概要図である。図3に示すように、免震床4の床下の端部には、第2スライド脚16が配置され、免震床4は、たとえば、パーティクルボードなどの第1主床材4aの上にカーペット4bを敷いて形成されている。なお、第2スライド脚16は、受けプレート16aを介しボルトにて第1主床材4aに固定されている。
【0038】
また、固定床6は、床スラブ20上に固定脚18を介して載置されており、たとえば、パーティクルボードなどの第2主床材6a上の中空層25、カバープレート24を介してカーペット26を敷いて形成されている。なお、中空層25の免震床4側には、スライドプレート22が水平方向にスライド可能に配置され、中空層25の壁8側には、固定プレート23が壁8に当接して配置されている。
【0039】
カバープレート24には、表面の摩擦係数が0.8以上1.8以下となるように加工された鋼板が用いられる。この摩擦係数は、0.8以上1.2以下であればより好ましい。このようなカバープレート24を用いることにより、スライドプレート22が水平方向にスライドしやすくなる。なお、カバープレート24には、表面にエンボス加工を施して摩擦係数を低減した鋼板を用いてもよい。
【0040】
また、ボーダー部分10においては、床スラブ20が露出しないように、スライドプレート22で覆われている。なお、このスライドプレート22は、地震時において免震床4の動きに追従できるようにスライド可能に配置されている。
【0041】
ここで、受けプレート16aは、免震床4の端部において上方に断面L字状に屈曲する第1屈曲部16xを有している。一方、スライドプレート22の免震床4側の端部には、下方に断面L字状に屈曲する第2屈曲部22xが形成されている。すなわち、第1屈曲部16xおよび第2屈曲部22xは、免震床4の床面に対して直角に屈曲している。なお、この場合の直角とは、必ずしも完全な90度を意味するものではない。
【0042】
ここで、第2屈曲部22xは第1屈曲部16xよりも免震床4側に位置し、第1屈曲部16xと第2屈曲部22xは係合している。また、第1主床材4aの縁部には、クッション材32が取り付けられ、第2屈曲部22xと接触している。また、第1屈曲部16xは、第2屈曲部22xと係合する第1係合部を備え、第2屈曲部22xは、第1屈曲部16xと係合する第2係合部を備えている。
【0043】
図4(a)は、免震床4とスライドプレート22の係合部分を側面側から視た図である。図4(a)に示すように、第2屈曲部22xのボーダー部分10側には、第2係合部として突起22yが形成され、第1屈曲部16xの免震床4側には、第1係合部として、貫通孔16yが形成されている。そして、突起22yは貫通孔16y内に挿入されている。
【0044】
なお、図4(b)は、係合部分をボーダー部分10側(図4(a)に示す矢印Aの方向)から視た図であり、図4(c)は、これを上方(図4(a)に示す矢印Bの方向)から視た図である。図4(b)、(c)に示すように、貫通孔16yは、第1屈曲部16xの上方において閉じた長丸形状を有している。このため、スライドプレート22を受けプレート16aに係合させて配置しやすくなる。
【0045】
また、免震床4のボーダー部分10側の縁部においては、第1主床材4aとスライドプレート22の間に隙間ができないように、カーペット4bがクッション材32に被さっている。これにより、たとえば、ハイヒールの踵などが第1主床材4aとスライドプレート22の間の隙間に挟まる事態を防止することができる。
【0046】
次に、地震時における免震フロア2の挙動を簡単にまとめる。まず、地震時において地盤が振動すると、建物が地盤の振動を受けて応答する。この際、免震フロア2において、固定床6は建物と共に振動するが、免震床4においては、免震装置12によって地震動の衝撃が緩和される。また、第1スライド脚14は床下に配置された受板14c下面を、第2スライド脚16は床スラブ20上に配置された受板16c上面を、それぞれ免震床4を所定の高さに支持しながらスライドする。
【0047】
ここで、免震床4と固定床6の挙動が異なるため、ボーダー部分10の幅が変化することになるが、ボーダー部分10に被せられたスライドプレート22は、中空層25内を水平方向に移動しながら免震床4に追従する。この際、スライドプレート22が免震床4に衝突したとしても、免震床4に生じる水平方向の衝撃は、第1主床材4aの縁部に取り付けられたクッション材32によって緩和される。
【0048】
また、急激に免震床4が跳ね上がったとしても、免震床4とスライドプレート22が係合し、貫通孔16yが上方において閉じた長丸形状を有していているため、スライドプレート22が外れてボーダー部分10が露出する事態が防止される。
【0049】
この実施の形態に係る発明によれば、免震床4の縁部をスライドプレート22と係合させることにより、急激に免震床が跳ね上がったとしてもスライドプレート22が外れてボーダー部分10が露出する(図11参照)ことを抑制できるため、ボーダー部分10における安全性を確保することができる。この安全性は、第2屈曲部22xに形成された突起22y(第2係合部)を第1屈曲部16xに形成された貫通孔16y(第1係合部)内に挿入することにより、より確実に確保される。
【0050】
また、固定床6の中空層25には、スライドプレート22が水平方向にスライド可能に配置されているが、地震時にスライドプレート22がスライドしたとしてもスライドプレート22を覆うカバープレート24はスライドしない。
【0051】
なお、上述の実施の形態においては、転動部材12cが扁平な碁石型である場合を例示しているが、転動部材12cは、球状を有していてもよい。すなわち、転動部材12cが碁石型や球状である場合には、地震時に転動部材12cが起き上がることにより、免震床4の高さが固定床6よりも高くなり、本発明の課題となるスライドプレート22が外れるおそれが生じる。
【0052】
また、上述の実施の形態において、免震床4とスライドプレート22の係合部分については、必ずしも図4に示すような、貫通孔16yと突起22yによって構成されるものに限定されない。たとえば、図5に示すようなものであってもよい。
【0053】
ここで、図5(a)~(c)に示すように、第2屈曲部22xには、第2係合部として内部に雌ネジが形成された貫通孔22y1が形成され、第1屈曲部16xの免震床4側には、第1係合部として、同様に内部に雌ネジが形成された貫通孔16y1が形成されている。そして、貫通孔22y1と貫通孔16y1には、表面に雄ネジが形成されたボルト22zが螺合されている。このように、貫通孔22y1、16y1をボルト22zで螺合することにより、第2屈曲部22xと第1屈曲部16xとを緊結することができる。
【0054】
この場合、図5(a)、(c)に示すように、ボルト22zには平頭のものを用い、貫通孔22y1にボルト22zの頭部が喰い込むようにするのが好ましい。これにより、第1主床材4aとスライドプレート22の間に隙間ができないようにすることができる。
【0055】
なお、図5では接続部品としてボルト22zを挙げているが、接続部品は必ずしも外周にネジ山を有していなくてもよく、単に貫通孔に貫通させるだけでもよい。この場合、図6(a)、(b)に示すように、貫通孔22y2、16y2は、円形状でもよく、図6(c)に示すように、角型状の貫通孔22y2を形成し、断面角型の接続部品を貫通させるようにしてもよい。
【0056】
また、上述の実施の形態において、第1屈曲部16xおよび第2屈曲部22xは、必ずしも断面L字状に直角に屈曲している必要はない。たとえば、図7(a)に示すように、免震床4の床面に対して鋭角に断面V字状に屈曲していてもよい。これにより、急激に免震床4が跳ね上がったとしても、第1屈曲部16xおよび第2屈曲部22xが係合することにより、スライドプレート22が外れてボーダー部分10が露出する事態を的確に防止することができる。なお、この場合、第1屈曲部16xに第1係合部、第2屈曲部22xに第2係合部が形成されていなくても地震時にスライドプレート22が外れることを防止することができる。
【0057】
さらに、図7(b)に示すように、第1屈曲部16xおよび第2屈曲部22xが断面弧状に湾曲していてもよい。ここで、第1屈曲部16xおよび第2屈曲部22xの間には、断面円形状の緩衝材33が配置されている。また、第1屈曲部16xおよび第2屈曲部22xは緩衝材33の外周に沿って回り込み、第1屈曲部16xの先端部16x1は、第2屈曲部22xの先端部22x1と同等の高さに位置している。この場合、第1屈曲部16xの先端部16x1が第2屈曲部22xの先端部22x1よりも低い位置に位置し、または、第2屈曲部22xの先端部22x1が第1屈曲部16xの先端部16x1よりも高い位置に位置していてもよい。
【0058】
この場合においても、第1屈曲部16xおよび第2屈曲部22xが緩衝材33を介して係合することにより、スライドプレート22が外れてボーダー部分10が露出する事態を的確に防止することができる。また、第1屈曲部16xに第1係合部、第2屈曲部22xに第2係合部が形成されていなくても地震時にスライドプレート22が外れることを防止することができる。また、第1屈曲部16xおよび第2屈曲部22xが緩衝材33を介して係合しているため、地震時に1屈曲部16xと第2屈曲部22xが衝突して衝撃が生じることを抑制することができる。
【0059】
なお、第1屈曲部16xおよび第2屈曲部22xを断面弧状に湾曲させる態様においては、図7(b)に示すように、クッション材32が配置されていなくてもよいが、図7(c)に示すように、クッション材32が第1主床材4aの縁部に取り付けられていれば、地震時に免震床4とスライドプレート22が衝突した場合における衝撃を確実に緩和することができる。
【0060】
また、図7(a)~(c)に示すように、免震床4のボーダー部分10側の縁部においては、カーペット4bがスライドプレート22の免震床4側の端部に被さるようにするのが好ましい。さらに、図7(b)、(c)に示すように、第1屈曲部16xおよび第2屈曲部22xが断面弧状に湾曲する態様においては、第2屈曲部22xは完全に断面弧状に湾曲させるのではなく、上端部が直角に折れ曲がるように形成するのが好ましい。これにより、第1主床材4aとスライドプレート22の間に隙間ができることを防止することができ、ハイヒールの踵などが第1主床材4aとスライドプレート22の間の隙間に挟まるような事態を防止することができる。
【0061】
また、上述の実施の形態において、図8(a)に示すように、スライドプレート22の免震床4側の端部に所定の間隔で切込み42を入れ、断面弧状に湾曲する第2屈曲部22xと湾曲(屈曲)しない非屈曲部22hとを交互に形成してもよい。この場合、図8(b)に示すように、第2屈曲部22xの先端が第1主床材4aの端部と当接し、非屈曲部22hの先端が第1主床材4a上に載置される。
【0062】
これにより、たとえば、スライドプレート22の剛性が高く、図7(b)、(c)に示すように、スライドプレート22の免震床4側の端部を大きな曲率で曲げることができない場合にも断面弧状に湾曲した第2屈曲部22xを形成することができる。また、第2屈曲部22xと非屈曲部22hとを交互に形成し、非屈曲部22hの先端を第1主床材4a上に載置することにより、第1主床材4aの端部と第1屈曲部16xの間に安定的に第2屈曲部22xを位置させることができる。また、第2屈曲部22xが非屈曲部22hと交互に形成されているため、ハイヒールの踵などが第1主床材4aとスライドプレート22の間の隙間に挟まらないように、非屈曲部22hを歩くように誘導するのにも有効である。
【0063】
また、上述の実施の形態において、クッション材32および緩衝材33は、たとえば、ゴム等の弾性部材や鉛等の柔らかい金属などで形成されていることが好ましい。
また、上述の実施の形態においては、第1主床材4aと第2主床材6aにパーティクルボードを用いる場合を例示しているが、第1主床材4aと第2主床材6aは必ずしもパーティクルボードに限定される必要はない。たとえば、鉄板などの金属製板を用いてもよい。
【0064】
また、従来の実施の形態において、図12に示すように、スライドプレート118が免震床112側に固定されている場合も存在する。この場合において、地震が発生して免震床112側が浮き上がると、図13(a)に示すように、スライドプレート118が固定床114から引き剥がされてまくれ130が生じる。
【0065】
この点、実施の形態に係る免震フロア2のように、免震床4とスライドプレート22を切り離し、受けプレート16aに形成された第1屈曲部16xと、スライドプレート22の端部に形成された第2屈曲部22xとを係合させることにより、かかる問題を解決することができる。すなわち、図13(b)に示すように、固定床6の端部においてスライドプレート22が折れ曲がることで、まくれ130の発生を防止できる。
【0066】
また、第1屈曲部16xおよび第2屈曲部22xが、免震床4の床面に対して直角に屈曲している場合(図3参照)、図13(c)のように、受けプレート16aに形成された第1屈曲部16x、およびスライドプレート22の端部に形成された第2屈曲部22xを短くすることによっても掛かる問題を解決できる。すなわち、この場合、地震が発生して免震床112側が浮き上がった際に、スライドプレート22の傾斜が抑制され、まくれ130の発生を防止できる。
【符号の説明】
【0067】
2 免震フロア
4 免震床
4a 第1主床材
4b カーペット
6 固定床
6a 第2主床材
8 壁
10 ボーダー部分
12 免震装置
12a 上向凹状鋼板
12b 下向凹状鋼板
12c 転動部材
14 第1スライド脚
14a 基板
14b 支柱
14c 受板
14d 球体保持部
14e 球体
16 第2スライド脚
16a 受けプレート
16b 支柱
16c 受板
16d 球体保持部
16e 球体
16x 第1屈曲部
16x1先端部
16y 貫通孔
16y1貫通孔
16y2貫通孔
18 固定脚
20 床スラブ
22 スライドプレート
22h 非屈曲部
22x 第2屈曲部
22x1先端部
22y 突起
22y1貫通孔
22y2貫通孔
22z ボルト
23 固定プレート
24 カバープレート
25 中空層
26 カーペット
32 クッション材
33 緩衝材
42 切込み
102 上向凹状鋼板
104 下向凹状鋼板
106 転動部材
108 免震装置
110 免震フロア
112 免震床
114 固定床
116 ボーダー部分
118 スライドプレート
130 まくれ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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図12
図13