(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】有害動物のくくり罠とその遠隔制御システム
(51)【国際特許分類】
A01M 23/34 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
A01M23/34
(21)【出願番号】P 2021147687
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2023-04-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】512050014
【氏名又は名称】株式会社 アイエスイー
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】230115336
【氏名又は名称】山下 あや理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 完
(72)【発明者】
【氏名】山端 直人
(72)【発明者】
【氏名】安部 晃平
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-195289(JP,A)
【文献】特開2021-065104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害動物の
踏み下げ力を受けて下降する踏み板と、その踏み板の下降をトリガーとして先端ループの口径が自ずと収縮することにより、上記有害動物の足を締め付け捕獲する所要長さの捕獲ワイヤーと、上記踏み板の下降を阻止するストッパーと、その踏み板下降ストッパーの進退作動用アクチュエーターと、そのアクチュエーターを作動制御する捕獲センサーとを備え、
上記踏み板の中心部から脚柱を一体的に垂下させる一方、断面倒立U字形をなす別個な据付け台の天板に、その脚柱受け入れ孔を対応形成して、上記踏み板の脚柱をその脚柱受け入れ孔へ上方から抜き差し自在に差し込むと共に、同じく天板の下面へ上記踏み板下降ストッパーの進退作動用アクチュエーターを取り付け固定して、
そのアクチュエーターの出力軸をなす踏み板下降ストッパー又はその出力軸に連結一体化された別個な踏み板下降ストッパーを、上記脚柱受け入れ孔の開閉シャッターとして進退させ、その脚柱受け入れ孔の開放により上記踏み板が下降し得る解錠状態又は同じく脚柱受け入れ孔の閉鎖により踏み板が下降しない施錠状態を保てるように定めたことを特徴とする
有害動物のくくり罠。
【請求項2】
踏み板の下降できる深さを有し、据付け台と別個な平面視の矩形、円形又は楕円形の枠フレームを、据付け台の天板上へ載置セットし、
その枠フレームの内部に収納する上記踏み板の下面へ、管棒材から成る脚柱の張り出しフランジをネジ締結具によって着脱自在に取り付け固定したことを特徴とする請求項1記載の
有害動物のくくり罠。
【請求項3】
踏み板下降ストッパー
の進退作動用アクチュエーターがDCモーターから成り、その出力軸をなすボールネジの先端部へ、脚柱受け入れ孔の開閉シャッターとなる踏み板下降ストッパーを、出力軸線と平行な延在状態に連結一体化したことを特徴とする請求項
1記載の
有害動物のくくり罠。
【請求項4】
踏み板下降ストッパー
の進退作動用アクチュエーターがソレノイドから成り、その出力軸であるプランジャー自身を踏み板下降ストッパーとして、踏み板を横断する方向に沿って進退させるように設定したことを特徴とする請求項1記載の
有害動物のくくり罠。
【請求項5】
請求項1に記載された複数のくくり罠と、そのくくり罠と中継基地局並びにサーバを介して、双方向の遠隔通信を行えるユーザー端末とを備え、
上記くくり罠の管理人がスケジュールやその他の都合に応じて、自己のユーザー端末からサーバへ踏み板の下降を阻止する施錠指令信号又はその踏み板の下降を許す解錠指令信号を送信すれば、その指令信号が上記サーバから中継基地局を経て、くくり罠の捕獲センサーに無線送信され、
その捕獲センサーの制御部が踏み板下降ストッパーの進退作動用アクチュエーターを切替え制御して、そのアクチュエーターの出力軸をなす踏み板下降ストッパー又はその出力軸に連結一体化された別個な踏み板下降ストッパーを、据付け台の天板に開口する脚柱受け入れ孔の開閉シャッターとして進退させ、
その脚柱受け入れ孔の開放により踏み板が下降し得る解錠状態の設定又は同じく脚柱受け入れ孔の閉鎖により上記踏み板が下降し得ない施錠状態の設定を行えるように定めたことを特徴とするくくり罠の遠隔制御システム。
【請求項6】
くくり罠の管理人が踏み板下降ストッパーの施・解錠指令を、その施・解錠日時の一定期間分だけまとめて、自己のユーザー端末からサーバへ予め設定登録しておくことにより、
上記サーバがその設定登録された施・解錠日時の到来するや否や、自ずと中継基地局を経て捕獲センサーの制御部へ、その踏み板下降ストッパーの施・解錠指令を送信するように定めたことを特徴とする請求項5記載のくくり罠の遠隔制御システム。
【請求項7】
くくり罠の捕獲センサーが踏み板下降ストッパー進退作動用アクチュエーターの制御部のみならず、磁気センサー又は磁気型の近接スイッチから成る有害動物の捕獲検知部とGPSを利用した位置検知部並びに中継基地局との無線通信部も具備しており、
踏み板下降ストッパーが脚柱受け入れ孔の開放により踏み板の下降し得る解錠中において、上記捕獲センサーの捕獲検知部により検知出力した有害動物の捕獲情報と、同じく位置検知部により検知出力したくくり罠の位置情報を、その捕獲センサーの無線通信部から中継基地局並びにサーバを経て、罠管理人のユーザー端末へ配信するように定めたことを特徴とする請求項5記載のくくり罠の遠隔制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有害動物のくくり罠とその遠隔制御システムに係り、殊更くくり罠による有害動物の捕獲を、その罠管理人のスケジュールやその他の都合(希望)に応じて、自由に遠隔制御できるよう工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
動物の錯誤捕獲を抑止するための罠システムが、特許文献1に記載されている。この罠システムの図示実施形態に係る足括り罠は、動物の捕獲できないロック状態と捕獲できるロック解除状態とのロック切り替え部を有する点で、本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の罠システムはあくまでも狩猟動物以外の動物(保護動物)を誤って捕獲しないようにするためのものであり、しかもカメラの撮影画像を解析する処理部の判断によって、そのロック切り替え部を自動的に切り替え制御するようになっており、罠管理人のスケジュール(日程)やその他の都合(希望)に応じて、予めの人為的又は計画的に切り替え制御するものではない。
【0005】
従って、その発明の構成としても制御部のほかに、移動物体を検出するセンサーとその1つ以上の撮像用カメラ並びにそのカメラの撮影した画像を解析処理するコンピューターなどが必要であって、地方自治体やその他の捕獲支援団体であればともかく、農家(農林業従事者)やその他の個人的な自営業者では余りにも高価な出費となるため、多数の機器を設置する現場作業が甚だ煩わしいこととも相俟って、到底設置することができず、利便性にも劣る。容易に設置できる安価な小型機器であるくくり罠本来の利点が、役立たない結果となっているのである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では有害動物のくくり罠として、その有害動物の踏み下げ力を受けて下降する踏み板と、その踏み板の下降をトリガーとして先端ループの口径が自ずと収縮することにより、上記有害動物の足を締め付け捕獲する所要長さの捕獲ワイヤーと、上記踏み板の下降を阻止するストッパーと、その踏み板下降ストッパーの進退作動用アクチュエーターと、そのアクチュエーターを作動制御する捕獲センサーとを備え、
【0007】
上記踏み板の中心部から脚柱を一体的に垂下させる一方、断面倒立U字形をなす別個な据付け台の天板に、その脚柱受け入れ孔を対応形成して、上記踏み板の脚柱をその脚柱受け入れ孔へ上方から抜き差し自在に差し込むと共に、同じく天板の下面へ上記踏み板下降ストッパーの進退作動用アクチュエーターを取り付け固定して、
【0008】
そのアクチュエーターの出力軸をなす踏み板下降ストッパー又はその出力軸に連結一体化された別個な踏み板下降ストッパーを、上記脚柱受け入れ孔の開閉シャッターとして進退させ、その脚柱受け入れ孔の開放により上記踏み板が下降し得る解錠状態又は同じく脚柱受け入れ孔の閉鎖により踏み板が下降しない施錠状態を保てるように定めたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2では踏み板の下降できる深さを有し、据付け台と別個な平面視の矩形、円形又は楕円形の枠フレームを、据付け台の天板上へ載置セットし、
【0010】
その枠フレームの内部に収納する上記踏み板の下面へ、管棒材から成る脚柱の張り出しフランジをネジ締結具によって着脱自在に取り付け固定したことを特徴とする。
【0011】
請求項3では踏み板下降ストッパーの進退作動用アクチュエーターがDCモーターから成り、その出力軸をなすボールネジの先端部へ、脚柱受け入れ孔の開閉シャッターとなる踏み板下降ストッパーを、出力軸線と平行な延在状態に連結一体化したことを特徴とする。
【0012】
請求項4では踏み板下降ストッパーの進退作動用アクチュエーターがソレノイドから成り、その出力軸であるプランジャー自身を踏み板下降ストッパーとして、踏み板を横断する方向に沿って進退させるように設定したことを特徴とする。
【0013】
他方、請求項5では請求項1に記載された複数のくくり罠と、そのくくり罠と中継基地局並びにサーバを介して、双方向の遠隔通信を行えるユーザー端末とを備えたくくり罠の遠隔制御システムであって、
【0014】
上記くくり罠の管理人がスケジュールやその他の都合に応じて、自己のユーザー端末からサーバへ踏み板の下降を阻止する施錠指令信号又はその踏み板の下降を許す解錠指令信号を送信すれば、その指令信号が上記サーバから中継基地局を経て、くくり罠の捕獲センサーに無線送信され、
【0015】
その捕獲センサーの制御部が踏み板下降ストッパーの進退作動用アクチュエーターを切替え制御して、そのアクチュエーターの出力軸をなす踏み板下降ストッパー又はその出力軸に連結一体化された別個な踏み板下降ストッパーを、据付け台の天板に開口する脚柱受け入れ孔の開閉シャッターとして進退させ、
【0016】
その脚柱受け入れ孔の開放により踏み板が下降し得る解錠状態の設定又は同じく脚柱受け入れ孔の閉鎖により上記踏み板が下降し得ない施錠状態の設定を行えるように定めたことを特徴とする。
【0017】
請求項6ではくくり罠の管理人が踏み板下降ストッパーの施・解錠指令を、その施・解錠日時の一定期間分だけまとめて、自己のユーザー端末からサーバへ予め設定登録しておくことにより、
【0018】
上記サーバがその設定登録された施・解錠日時の到来するや否や、自ずと中継基地局を経て捕獲センサーの制御部へ、その踏み板下降ストッパーの施・解錠指令を送信するように定めたことを特徴とする。
【0019】
更に、請求項7ではくくり罠の捕獲センサーが踏み板下降ストッパー進退作動用アクチュエーターの制御部のみならず、磁気センサー又は磁気型の近接スイッチから成る有害動物の捕獲検知部とGPSを利用した位置検知部並びに中継基地局との無線通信部も具備しており、
【0020】
踏み板下降ストッパーが脚柱受け入れ孔の開放により踏み板の下降し得る解錠中において、上記捕獲センサーの捕獲検知部により検知出力した有害動物の捕獲情報と、同じく位置検知部により検知出力したくくり罠の位置情報を、その捕獲センサーの無線通信部から中継基地局並びにサーバを経て、罠管理人のユーザー端末へ配信するように定めたことを特徴とする
【発明の効果】
【0021】
請求項1の構成によれば、踏み板の中心部へ脚柱を下向く状態に取り付けると共に、天板の下面に踏み板下降ストッパーの進退作動用アクチュエーターが裏当て状態として取り付け固定された別個な据付け台を作成準備することにより、既製品として普及しているくくり罠に対しても、容易に後付け使用することができ、汎用性に優れる。
【0022】
また、くくり罠の踏み板から脚柱が垂下されている一方、その脚柱受け入れ孔が据付け台の天板に対応形成されており、アクチュエーターの出力軸に連結一体化された踏み板下降ストッパーが、上記天板の脚柱受け入れ孔を下方(裏側)から開閉するシャッターとして、その脚柱受け入れ孔の口径又は脚柱の太さとほぼ同じ寸法の僅かな(短い)ストローク分だけ進退すれば足りるため、その進退作動用アクチュエーターやこれが取り付けられる上記据付け台などを合理的に小型コンパクト化することができ、延いてはくくり罠を安価に提供し得る効果がある。
【0023】
その場合、請求項2の構成を採用するならば、既製品であるくくり罠の踏み板へ、上記脚柱を容易に後付け使用できる利点がある。
【0024】
また、請求項3の構成を採用するならば、DCモーターから成る普及品の電動アクチュエーターを活用して、その出力軸であるボールネジの先端部へ上記脚柱受け入れ孔の開閉シャッターとなる踏み板下降ストッパーを連結一体化すれば良いので、請求項1の上記効果がますます向上する。
【0025】
請求項4の構成を採用するならば、そのソレノイドから成る電磁アクチュエーターの出力軸をなすプランジャーは、踏み板を横断する方向に沿って直線的に進退作用するに過ぎず、上記電動アクチュエーターにおけるDCモーターのような正逆回転を必要としないため、それだけくくり罠の構成を合理的に簡素化することができる。
【0026】
他方、請求項5の構成によれば、くくり罠の管理人にとって自己のスケジュール(日程)やその他の都合(希望)上、有害動物の捕獲作業に出向くことができない場合には、くくり罠の踏み板下降ストッパーをその踏み板の下降しない施錠状態に設定しておくことができるため、捕獲から駆除(止め刺し)までの時間経過による肉質の損傷や有害動物の無駄な死などを招来するおそれがなく、却って解体処理施設・時間との関係上、捕獲頭数を意図的・計画的に制限することが可能となるほか、例えば仕事を持っているサラリーマンなどの罠管理人にとって、その仕事の休日だけに都合良く捕獲作業できる利便性があるため、その捕獲作業の従事者を広く増加させることにも役立つ。
【0027】
しかも、冒頭に挙げた特許文献1のような有害動物を検知するセンサーと、1つ以上の撮像用カメラ並びにそのカメラが撮影した画像を解析処理するコンピューターなどを必要とせず、罠管理人の意向によって自己のユーザー端末からくくり罠における捕獲センサーの制御部を遠隔操作すれば良いので、必要構成としても簡素であり、便利良く使用することができる。
【0028】
その場合、請求項6の構成を採用するならば、サーバ上に設定登録された日時が到来すると、上記踏み板の施・解錠が自動的に実行されるため、罠管理人にとって希望通りの都合良くスケジュール管理することができ、上記踏み板下降ストッパーの施・解錠指令をサーバへ、ユーザー端末によって随時に一々入力操作する煩わしさが無くなるほか、その操作を失念するおそれもない。
【0029】
更に、請求項7の構成を採用するならば、上記くくり罠の踏み板下降ストッパーが踏み板の下降を許した解錠状態にある場合、その踏み板が有害動物の踏み下げ力を受けて下降すると、これをトリガーとして捕獲ワイヤーにおける先端ループの口径が自ずと収縮することにより、有害動物が足くくり状態に捕獲されることになるところ、その有害動物の捕獲情報と当該くくり罠の位置情報がくくり罠の捕獲センサーから中継基地局並びにサーバを経由して、罠管理人のユーザー端末へ配信されるようになっているため、罠管理人としてはその配信を受けた時に、くくり罠に出向いて有害動物の捕獲作業を行えば良く、無駄にパトロールする必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
本発明の実施形態に係るくくり罠の遠隔制御システムを示す概略構成図である。
【
図2】
くくり罠の設置状態を示す全体概略説明図である。
【
図3】
図2のくくり罠を拡大して示す平面図である。
【
図4】
図3のバネ機構を抽出して示す拡大断面図である。
【
図5】
図3のくくり罠を下方から見た拡大底面図である。
【
図7】
くくり罠における捕獲センサーの概略構成を示すブロック図である。
【
図8】
図2から抽出した捕獲センサーの拡大断面模式図である。
【
図9】
踏み板の下降し得る解錠状態を示す図5と対応する底面図である。
【
図11】
上記遠隔制御システムの動作シーケンス図である。
【
図12】
同じく遠隔制御システムの別な動作シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態に係る有害動物のくくり罠とその遠隔制御システムを説明すると、これはその構成の概略全体を示す図1のブロック図から明白なように、野生の鹿や猪、その他の有害動物が生息(出没)する地域(Z)に設置される複数のくくり罠(T)と、その各くくり罠(T)の制御部をなす捕獲センサー(子機)(S)と無線通信される中継基地局(親機)(R)と、その中継基地局(R)とモバイル通信されるサーバ(W)と、更にそのサーバ(W)とインターネット(N)を介して接続されたユーザー端末(U)とを備え、上記くくり罠(T)とその罠管理人のユーザー端末(U)とが双方向の遠隔通信を行えるように構成されている。
【0032】
そして、各くくり罠(T)が具備している踏み板下降ストッパー(10)の進退作動用アクチュエーター(A)を、その罠管理人が所持するユーザー端末(U)から遠隔制御して、有害動物捕獲用のトリガーとなる踏み板(11)を下降しないように阻止(施錠)するか、又はその踏み板(11)の下降を許すように解錠すると共に、その解錠中に踏み板(11)が有害動物によって踏み下げられ(下降され)、これをトリガーとして踏み板(11)側から弾き出し解放(離脱)された捕獲ワイヤー(12)における先端ループ(12a)の口径収縮力により、その有害動物の足くくり状態に捕獲されたことを、そのくくり罠(T)の捕獲センサー(子機)(S)から中継基地局(親機)(R)へ無線送信し、その中継基地局(R)から更にサーバ(W)を経てユーザー端末(U)へ配信(捕獲通報)するようになっている。
【0033】
上記主要な構成部材のうち、先ずくくり罠(T)について具体的に詳述すると、これは図2、3から明白なように、枠フレーム(13)とその枠内へ下降し得るように収納された踏み板(11)、先端部がループ(12a)として巻き曲げられた所要長さの捕獲ワイヤー(12)、その捕獲ワイヤー(12)のループ(12a)を巻き曲げ状態に仮止め保持するループ保持アーム(14)、そのループ(12a)の口径を常時収縮する方向へ弾圧付勢すべく、捕獲ワイヤー(12)の配線途中に介挿設置されたバネ機構(B)並びに上記枠フレーム(13)の据付け台(15)とを備えており、有害動物による踏み板(11)の踏み下げ(下降)をトリガーとして、自ずと口径が収縮する捕獲ワイヤー(12)のループ(12a)により、その有害動物の足(M)を強力に締め付け捕獲することになる。
【0034】
くくり罠(T)の上記枠フレーム(13)は木質材や金属材から図3のような平面視の矩形や楕円形、円形などに作成されており、一定の深さ(d)を有することによって、その内部を踏み板(11)が下降し得る。(16)はその枠フレーム(13)における捕獲ワイヤー(12)のループ保持アーム(14)を受け止める受け桟である。
【0035】
但し、枠フレーム(13)は捕獲ワイヤー(12)の先端ループ(12a)又はそのループ保持アーム(14)を受け止め支持することができ、しかも踏み板(11)の下降できる深さ(d)を有する限り、筒状のボックスであっても良い。
【0036】
同じくくくり罠(T)の上記踏み板(11)は枠フレーム(13)と相似な矩形や楕円形、円形などの金属板から成り、その中間部には向かい合う前後一対のループ保持アーム用取付ブラケット(17)が、溶接やネジ締結具(図示省略)などによって起立状態に固定一体化されている。
【0037】
また、踏み板(11)の中心部からは脚柱(18)が一体的に垂下されている。図示の実施形態ではその管棒材から成る脚柱(18)の張出しフランジ(19)を踏み板(11)の下面へ、ネジ締結具(20)などによって着脱自在に取り付け固定しており、そのため既製品であるくくり罠(T)の踏み板(11)へ容易に後付け使用できる利点があるが、その踏み板(11)の下面へ上記脚柱(18)を直に溶接一体化しても良い。
【0038】
上記捕獲ワイヤー(12)の先端部(前端部)がループ(12a)をなすに比し、残る基端部(後端部)は図2のように樹木の幹や支柱、杭、その他の固定物(21)へ取り付け固定されるようになっている。
【0039】
更に、捕獲ワイヤー(12)の配線途中に介在するバネ機構(B)は、図4に抽出して示すような一定長さのバネ収容管(22)とその先端キャップ(23)、バネ収容管(22)の内部に封入されたコイルバネ(24)、そのコイルバネ(24)を押し縮めるべく、上記バネ収容管(22)へ基端側(後側)から摺動自在に差し込み嵌合されたバネ圧縮管(25)とから成り、これらが捕獲ワイヤー(12)へ順次通し込まれた設置状態にある。(26)はその捕獲ワイヤー(12)における上記ループ(12a)への分岐境界部に通し込まれた締付け(絞り)環、(27)はその締付け環(26)と上記先端キャップ(23)との相互間に介在するスペーサー管であり、これも捕獲ワイヤー(12)に通し込まれている。
【0040】
上記バネ機構(B)のコイルバネ(24)は、その捕獲ワイヤー(12)の配線に沿うバネ圧縮管(25)の移動操作により押し縮められ、延いては捕獲ワイヤー(12)における上記ループ(12a)の口径が収縮されることになる。(28)はそのバネ圧縮管(25)の移動を阻止する位置決め用ストッパーであって、捕獲ワイヤー(12)に対する蝶ボルトやその他の押し付け具から成り、その阻止位置の如何によって上記ループ(12a)の口径収縮力を強く又は弱く調整することができる。
【0041】
また、上記捕獲ワイヤー(12)のループ(12a)を仮止め保持するループ保持アーム(14)は図3のような左右一対として、平面視の向かい合う円弧形やコ字形をなし、その何れも切り離し両端基部が上記踏み板(11)に付属している取付ブラケット(17)へ、水平の支点軸(29)によって起伏的な回動自在に枢着されており、残る先端部が上記枠フレーム(13)のループ保持アーム用受け桟(16)により下方から受け止められて、水平の伏倒状態を保つようになっている。
【0042】
しかも、左右一対の上記ループ保持アーム(14)は図6のような断面ほぼく字形やコ字形の金属材として、外向き(横向き)に拡開するワイヤー受け入れ凹周溝(30)を有しており、その両ループ保持アーム(14)のワイヤー受け入れ凹周溝(30)へ掛け渡す状態として、上記捕獲ワイヤー(12)のループ(12a)が係脱自在に係止されるようになっている。
【0043】
つまり、捕獲ワイヤー(12)のループ(12a)が上記バネ機構(B)の就中バネ圧縮管(25)による口径収縮力に抗して、両ループ保持アーム(14)のワイヤー受け入れ凹周溝(30)へ強制的な掛け渡し状態に仮止めされることにより、有害動物の足(M)を包囲し得る予めの拡張した一定口径に保持されているのである。
【0044】
更に、上記くくり罠(T)における枠フレーム(13)の据付け台(15)は図5、6に示すような断面倒立U字形の金属板から成り、その枠フレーム(13)を載置セットできる一定な大きさ並びに高さの天板(31)と、地面(G)への埋込みアンカーになる左右一対の張出しフランジ(32)を有している。(33)はその据付け台(15)における天板(31)の中心部に開口形成された円形の脚柱受け入れ孔であり、ここへ上記踏み板(11)の脚柱(18)が上方から抜き差し自在に差し込み嵌合されることとなる。
【0045】
先に一言した踏み板(11)の下降ストッパー(10)を進退作動させるアクチュエーター(A)は、正逆回転可能なDCモーターから具体化されており、その回転によって出力軸をなすボールネジ(34)が、直線的に進退されるようになっている。
【0046】
(35)(36)はそのアクチュエーター(モーター)(A)を上記据付け台(15)における天板(31)の下面へ、裏当て状態に取り付け固定する複数のネジ締結具とその軸受ボス、(37)は上記ボールネジ(34)を安全に包囲するゴムや合成樹脂などの伸縮カバー、(38)は上記アクチュエーター(モーター)(A)への電源供給用バッテリーである。
【0047】
また、上記踏み板(11)の下降ストッパー(10)は図5、6のような底面視のL字形をなす打抜き金属板から成り、そのアクチュエーター(モーター)(A)の出力軸線と平行に延在する一板片(10a)の先端部が、上記据付け台(15)の天板(31)に開口する脚柱受け入れ孔(33)の言わば開閉シャッターとして機能し得るようになっていると共に、残る他板片(10b)の基端部は連結片(10c)として下向き直角に折り曲げられており、その連結片(10c)と上記ボールネジ(出力軸)(34)の先端部とが、ネジ締結具(39)を介して固定されている。(40)は上記踏み板下降ストッパー(10)の一板片(開閉シャッター)(10a)を進退できるように受け持つ支持板であり、上記据付け台(15)における天板(31)の下面へ一対のネジ締結具(41)によって取り付け固定されている。
【0048】
つまり、今仮に上記アクチュエーター(モーター)(A)を時計方向へ回転(正転)させた時、その出力軸であるボールネジ(34)とこれに連結されている踏み板下降ストッパー(10)の一板片(10a)をなす開閉シャッターとが、図5、6から図9、10のように直線的に進出作用して、上記据付け台(15)の天板(31)に開口する脚柱受け入れ孔(33)を開放し、踏み板下降ストッパー(10)による踏み板(11)の下降を許す解錠状態として、その踏み板(11)が有害動物による踏み下げ(下降)可能となり、延いてはそのくくり罠(T)が有害動物を捕獲できる準備状態に設定されるとすれば、同じくアクチュエーター(モーター)(A)を反時計方向へ回転(逆転)させた時には、そのボールネジ(出力軸)(33)と踏み板下降ストッパー(10)の上記一板片(開閉シャッター)(10a)とが、図9、10から図5、6のように直線的に退動作用して、据付け台(15)における天板(31)の脚柱受け入れ孔(33)を閉鎖し、上記踏み板下降ストッパー(10)による踏み板(11)の下降を阻止(遮断)した施錠状態として、その踏み板(11)がたとえ有害動物の踏み下げ力(荷重)を受けるも下降せず、延いてはくくり罠(T)が有害動物を捕獲できない準備状態に設定されることとなる。
【0049】
そして、このようなくくり罠(T)の作動部につき、有害動物を捕獲しない(捕獲できない)状態に設定すべく、そのトリガーとなる踏み板(11)を下降しないように阻止(施錠)するか、又は有害動物を捕獲できる状態に設定すべく、同じく踏み板(11)の下降を許すように解錠するかは、罠管理人のスケジュール(日程)やその他の都合(希望)に応じて、その罠管理人のユーザー端末(U)から上記踏み板下降ストッパー(10)の進退作動用アクチュエーター(モーター)(A)における回転方向の正逆切り替えを遠隔制御し、そのボールネジ(出力軸)(34)を進出又は退動させることによって実行することができる。
【0050】
図7は上記くくり罠(T)の制御部をなす捕獲センサー(子機)(S)のブロック図であるが、その捕獲センサー(S)の設置ボックス(42)は図2、8から明白なように、上記捕獲ワイヤー(12)における基端部(後端部)の固定物(21)である樹木の枝などに取り付けられている。
【0051】
(43)はその設置ボックス(42)に内蔵された制御部(マイコン)であって、CPU(44)やメモリー(45)などを有しており、そのCPU(44)ではGPSを利用した位置検出部(46)が検出する各くくり罠(T)の位置情報を取得する。(47)は電源供給用のバッテリーである。
【0052】
また、捕獲センサー(子機)(S)は中継基地局(親機)(R)との無線通信部(48)を有しており、その無線通信部(48)から上記くくり罠(T)における上記踏み板下降ストッパー進退作動用アクチュエーター(モーター)(A)の作動指令信号を受けた制御部(マイコン)(43)が、そのアクチュエーター(モーター)(A)における回転方向の正逆切り替え制御を実行し、そのボールネジ(出力軸)(34)を進退作動させることになる。
【0053】
その踏み板下降ストッパー(10)の進退作動用アクチュエーター(モーター)(A)における回転方向の正逆切り替えと、そのボールネジ(出力軸)(34)の進退作動を制御するための指令信号は、先に一言したとおり、罠管理人のユーザー端末(U)からサーバ(W)と中継基地局(親機)(R)並びに捕獲センサー(子機)(S)を経由して、そのくくり罠(T)の制御部(43)まで送信されるようになっている。
【0054】
更に、捕獲センサー(S)は上記くくり罠(T)のトリガーである踏み板(11)の踏み下げ(下降)による有害動物の捕獲検知部(49)を有しており、これは消費電力の少ない磁気センサーや磁気型の近接スイッチ(無接点スイッチ)などから成り、図8のような磁性体(50)の皿頭付きボルトなどが上記設置ボックス(42)へ、その皿頭の下向き露出状態に取り付けられている。
【0055】
他方、その磁性体(皿頭付きボルト)(50)と対応する永久磁石(51)が図2のように、上記捕獲ワイヤー(12)の途中から上向く分岐ワイヤー(52)の上端部に取り付けられており、上記磁性体(皿頭付きボルト)(50)が磁化したか否かを検知して、磁化していなければ(磁着力の解除状態)、上記捕獲ワイヤー(12)がその分岐ワイヤー(52)も含む全体として激しく振動した状態、つまり上記ループ(12a)による足くくり状態に捕獲された有害動物が、暴れ動いたことの検知出力信号を発するようになっている。(53)は上記捕獲センサー(S)の設置ボックス(42)に対する磁性体(皿頭付きボルト)(50)の固定ナットである。
【0056】
そして、その捕獲センサー(S)の捕獲検知部(49)から検知出力した有害動物の捕獲情報は、上記制御部(マイコン)(43)から無線通信部(48)により中継基地局(親機)(R)へ無線送信され、その中継基地局(親機)(R)から更にモバイル回線を介して、データセンターや捕獲支援センターなどのサーバ(ウェブサーバ/管理サーバ)(W)へ送信されるようになっている。
【0057】
そのサーバ(W)は図1のブロック図に示すようなCPU(54)やメモリー(55)などを有する制御部(56)のほか、上記中継基地局(R)並びにユーザー端末(U)との双方向通信部(57)(58)や表示部(59)も具備しており、上記くくり罠(T)の有害動物捕獲情報とその位置情報を中継基地局(R)から受信し、これらの情報を制御部(56)のCPU(54)において判定の上、表示部(59)に表示すると共に、電子メールなどによりインターネット(N)を介して、罠管理人の所持するユーザー端末(U)へ配信(通報)するようになっている。
【0058】
その場合、上記サーバ(W)のCPU(54)はくくり罠(T)の捕獲センサー(S)から、その位置検出部(GPS)(46)によって検出した各くくり罠(T)の位置情報を取得し、これから特定した地図やその地図上の位置を、罠管理人のユーザー端末(U)へ知らせるようになっているが、そのサーバ(W)はインターネット(N)に接続されているため、上記くくり罠(T)の有害動物捕獲情報や位置情報をユーザー端末(U)からダウンロードすることも可能である。
【0059】
上記罠管理人のユーザー端末(U)としてはパソコン(PC)やタブレット端末、スマートフォンなどのモバイル、その他のインターネット(N)を介して上記ウェブ(W)と通信できる機器であれば足りるが、そのユーザー端末(U)を使用するユーザーとしては、上記くくり罠(T)を設置する地域(Z)の兼業農家(別な仕事を持つ農林業従事者)や仕事の休日だけ捕獲作業できる所謂サラリーマンなどが想定されているが、そのくくり罠(T)の管理人であれば誰でも良い。
【0060】
上記構成のくくり罠(T)を仕掛け(セット)作業するに当たっては、野生の鹿や猪、その他の有害動物が生息(出没)する地域(Z)における有害動物の通路となる地面(G)へ、図2のように適当な深さの凹所(60)を設けて、その内部へくくり罠(T)の据付け台(15)とその天板(31)上に枠フレーム(13)とを、ほぼ水平の設置状態に収納する。
【0061】
他方、踏み板(11)の上記取付ブラケット(17)に枢着されている両ループ保持アーム(14)のループ受け入れ凹周溝(30)へ、捕獲ワイヤー(12)の先端ループ(12a)を掛け渡し状態に係止させた後、そのワイヤー(12)の弛みを無くすため、図3、4から示唆されるように、予め捕獲ワイヤー(12)に通し込まれているバネ機構(B)のバネ圧縮管(25)を、そのワイヤー(12)のループ(12a)が存在する先端(前)方向へ押し動かして、そのバネ収容管(22)内のコイルバネ(24)を圧縮すると共に、そのバネ圧縮管(25)を捕獲ワイヤー(12)の基端方向へ後退しないように阻止すべく、その位置決め用ストッパー(28)を捕獲ワイヤー(12)へ強く押し付け固定しておく。
【0062】
また、このような捕獲ワイヤー(12)におけるループ(12a)の口径収縮状態にある左右一対のループ保持アーム(14)と、その両ループ保持アーム(14)が付属している踏み板(11)を図5、6のように、据付け台(15)上に載置している枠フレーム(13)の内部へ挿入セットし、その両ループ保持アーム(14)の先端部を上記枠フレーム(13)の受け桟(16)上に載置させて、その全体的なほぼ水平の伏倒状態に保つ。
【0063】
更に、上記捕獲ワイヤー(12)の基端部(後端部)を図2のように、樹木の幹や支柱、その他の固定物(21)へ取り付け固定し、その地面(G)に沿って延長配線した捕獲ワイヤー(12)や据付け台(15)、枠フレーム(13)、踏み板(11)、上記ループ保持アーム(14)などの全体を、上方から木の葉や草、その他の自然物によって被覆し、そのくくり罠(T)の見えない状態に設置するのである。
【0064】
その場合、踏み板下降ストッパー(10)の進退作動用アクチュエーター(DCモーター)(A)は、電源のオフ状態として、その出力軸であるボールネジ(34)を手動操作することにより、これと連結一体化されている踏み板下降ストッパー(10)の上記開閉シャッター(10a)が、据付け台(15)の天板(31)に開口している脚柱受け入れ孔(33)を閉鎖する方向へ移動させて、その踏み板(11)の下降しない状態に阻止(施錠)しておく。
【0065】
このような有害動物捕獲用のトリガーとなる踏み板(11)が下降しない状態のもとでは、上記ループ保持アーム(14)がその支点軸(29)の廻りに跳ね上がって、そのワイヤー受け入れ凹周溝(30)から捕獲ワイヤー(12)の先端ループ(12a)が弾き出され解放(離脱)する危険はないため、上記くくり罠(T)の仕掛け(セット)作業を安全に行えるのであり、その仕掛け当初における踏み板(11)の下降しない状態に準備完了後、上記アクチュエーター(モーター)(A)に通電する(電源のオン状態に保つ)。
【0066】
そして、有害動物を捕獲するために使用する時は、そのくくり罠(T)の作動部をなす上記踏み板下降ストッパー(10)が、図5、6のような踏み板(11)の下降しないように阻止している施錠状態を解除すべく、その解錠指令を罠管理人のユーザー端末(U)からサーバ(W)へ入力(送信)する。
【0067】
そうすれば、その解錠指令は図11の動作シーケンス図に示す如く、サーバ(W)から中継基地局(親機)(R)へモバイル送信され、その中継基地局(R)から更にくくり罠(T)の制御機能を有する捕獲センサー(子機)(S)へ無線送信されて、その捕獲センサー(S)の制御部(マイコン)(43)から出力する制御信号により、上記くくり罠(T)における踏み板下降ストッパー(10)の進退作動用アクチュエーター(DCモーター)(A)が時計方向へ回転(正転)されて、そのボールネジ(出力軸)(34)と一緒に踏み板下降ストッパー(10)が図5、6の矢印(f)方向へ進出作用し、上記据付け台(15)の脚柱受け入れ孔(33)が図9、10のように開放されて、そのくくり罠(T)の踏み板(11)は下降し得る解錠状態となり、何時でも有害動物を捕獲できる準備状態に設定されるのである。
【0068】
そこで、このような踏み板(11)の下降が許された解錠中に、その踏み板(11)が有害動物によって踏み下げられた場合には、これと一緒に下降する左右一対のループ保持アーム(14)が図10から明白なように、支点軸(29)の廻りにすばやく跳ね上がって、そのワイヤー受け入れ凹周溝(30)から捕獲ワイヤー(12)の先端ループ(12a)が勢い良く弾き出され解放(離脱)すると同時に、そのループ(12a)の口径は自ずと収縮し、有害動物の足(M)を強力に締め付け(くくり)捕獲することになる。
【0069】
しかも、有害動物の捕獲状態が上記捕獲センサー(S)の捕獲検知部(磁気センサー)(49)によって検知されると、その検知出力信号は図11のように中継基地局(R)へ無線送信され、その中継基地局(R)から更にサーバ(W)へモバイル送信されて、そのサーバ(W)により捕獲状態として判定・表示されると共に、サーバ(W)からユーザー端末(U)へメール送信(捕獲通報)されるのである。
【0070】
その結果、罠管理人としては有害動物の捕獲通報を受けた場合にのみ、その位置情報に示されたくくり罠(T)の設置現場へ出向して、その有害動物の駆除(止め刺し)やくくり罠(T)の仕掛け直し(リセット)などを行えば良く、自己の管理しているくくり罠(T)をいたずらにパトロールする必要がなくなる。
【0071】
尚、大きな岩石の落下などによって、上記踏み板(11)の下降することも起こり得るが、そのような場合には捕獲された有害動物の激しく暴れる振動がなく、上記捕獲センサー(S)の捕獲検知部(磁気センサー)(49)が反応しない(検知信号を出力しない)ので、そのくくり罠(T)をパトロールしない結果となるが、支障はない。
【0072】
ところが、各種罠猟のうち、特にくくり罠猟では何時有害動物が捕獲されるか不明であるため、例えば別に持っている仕事の休日しか捕獲作業に従事できない罠管理人や、休日でも旅行や出張で留守にする罠管理人などにとっては、たとえ有害動物が捕獲されても、その駆除(止め刺し)やくくり罠(T)の仕掛け直しなどを行うことができず、その設置現場での捕獲状態のままに放置せざるを得ない。解体処理を終えるまでに長時間を要すると、食肉としての品質が悪化する問題などを生ずることになる。
【0073】
そこで、罠管理人のスケジュールや都合(希望)などとの関係上、有害動物の捕獲作業に出向くことができないような場合には、有害動物を捕獲しないように、そのくくり罠(T)の上記踏み板下降ストッパー(10)が図9、10のような踏み板(11)の下降し得る解錠状態から、図5、6のような下降しない状態に阻止すべく、その施錠指令を罠管理人のユーザー端末(U)によって上記サーバ(W)へ入力(送信)するのである。
【0074】
そうすれば、その施錠指令は図11の動作シーケンス図から明白なように、やはりサーバ(W)から中継基地局(親機)(R)を経て、くくり罠(T)の捕獲センサー(子機)(S)へ送信され、その捕獲センサー(S)の制御部(マイコン)(43)から出力する制御信号により、上記くくり罠(T)における踏み板下降ストッパー(10)の進退作動用アクチュエーター(DCモーター)(A)が反時計方向へ回転(逆転)されて、そのボールネジ(出力軸)(34)と一緒に踏み板下降ストッパー(10)が図9、10の矢印(r)方向へ退動作用し、上記据付け台(15)の脚柱受け入れ孔(33)が図5、6のように閉鎖されて、そのくくり罠(T)の踏み板(11)は下降を阻止された施錠状態となり、有害動物の踏み下げ力を受けても下降せず、上記くくり罠(T)が有害動物を捕獲しない(捕獲できない)準備状態に設定されるのである。
【0075】
図11の動作シーケンス図では、上記踏み板下降ストッパー(10)の施・解錠指令における就中有害動物を捕獲しない場合の施錠指令を、罠管理人のユーザー端末(U)から随時に1回ずつサーバ(W)へ入力(送信)するようになっているが、例えば罠管理人であるサラリーマンが土曜日と日曜日並びに祝日に有害動物の捕獲作業を行えるように、これら休日と祝日の前日18時から当日7時までの間だけ、上記踏み板下降ストッパー(10)をその踏み板(11)の下降し得る(有害動物が踏み下げ得る)解錠状態に保つ一方、そのほかの仕事がある平日と休日と祝日の昼間は、人間や猟犬などが捕獲状態とならぬように、同じく踏み板下降ストッパー(10)をその踏み板(11)の下降できない施錠状態に保つべく、図12に示すように、その解錠日時と施錠日時とをカレンダー上の1週間分や1ヶ月分、その他の一定期間分だけまとめて、自己のユーザー端末(U)からサーバ(W)へ予め設定登録(記憶)しておき、サーバ(W)がその設定登録された日時に、自ずと中継基地局(親機)(R)を経て、上記捕獲センサー(子機)(S)の制御部(マイコン)(43)へ、その踏み板下降ストッパー(10)の解錠指令や施錠指令を送信し、その制御部(マイコン)(43)から出力する制御信号によって、くくり罠(T)の上記踏み板下降ストッパー(10)を進退作動させるように構成しても良い。
【0076】
そうすれば、サーバ(W)上に設定登録された日時が到来すると、上記踏み板(11)の施・解錠が自動的に実行されるため、罠管理人にとって希望通りの都合良くスケジュール管理することができ、上記踏み板下降ストッパー(10)の施・解錠指令をサーバ(W)へ、ユーザー端末(U)によって随時に一々入力操作する煩わしさが無くなるほか、その操作を失念するおそれもない。
【0077】
何れにしても、図示実施形態の上記構成によれば、くくり罠(T)の踏み板(11)から脚柱(18)が垂下されている一方、その脚柱受け入れ孔(33)が据付け台(15)の天板(31)に開口形成されており、アクチュエーター(DCモーター)(A)の出力軸をなすボールネジ(34)の先端部に連結一体化された踏み板下降ストッパー(10)が、そのアクチュエーター(A)の出力軸(ボールネジ)(34)と一緒に進退されることにより、上記天板(31)の脚柱受け入れ孔(33)を下方から開閉するシャッターとして機能し、上記踏み板(11)の下降を阻止(施錠)又は解除(解錠)するようになっているため、その踏み板下降ストッパー(10)の直線的な進退ストロークを上記脚柱(18)の太さ又は脚柱受け入れ孔(33)の口径とほぼ同等寸法に短くすることができ、延いてはアクチュエーター(A)や上記据付け台(15)などの合理的な小型コンパクト化に役立つ。
【0078】
しかも、上記捕獲ワイヤー(12)のループ保持アーム(14)を受け止め支持する枠フレーム(13)は、踏み板下降ストッパー(10)の進退作動用アクチュエーター(A)が取り付けられた据付け台(15)と別個独立していて、その据付け台(15)の天板(31)上に載置セットされており、枠フレーム(13)の内部を下降し得る踏み板(11)の脚柱(18)が、上記天板(31)に開口する脚柱受け入れ孔(33)へ、その上方から抜き差し自在に差し込まれるようになっているため、上記脚柱(18)を踏み板(11)へ下向く状態に取り付けると共に、別個な上記据付け台(15)を作成準備すれば、既製品として普及しているくくり罠(T)についても、その遠隔制御システムを容易に後付け使用することができ、汎用性も得られる利点がある。
【0079】
その場合、図示実施形態のアクチュエーター(A)はDCモーターから成り、その正逆回転が出力軸をなすボールネジ(34)の直線的な進退運動に変換されていると共に、そのボールネジ(出力軸)(34)の先端部へ別個な踏み板下降ストッパー(10)を、一緒に踏み板(11)の同じ横断方向へ進退作用し得るよう連結しているが、上記踏み板下降ストッパー(10)を直線的に進退させることができる限り、そのためのアクチュエーター(A)としては上記モーターに代わるソレノイド(図示省略)を採用しても良く、そのソレノイドの出力軸となるプランジャー自身を踏み板下降ストッパー(10)として、又はそのプランジャーに別個な踏み板下降ストッパー(10)を連結一体化して、図示実施形態と同様に進退させても良い。
【符号の説明】
【0080】
(10)・・・・踏み板下降ストッパー
(10a)・・・一板片(開閉シャッター)
(10b)・・・他板片
(10c)・・・連結片
(11)・・・・踏み板
(12)・・・・捕獲ワイヤー
(12a)・・・ループ
(13)・・・・枠フレーム
(14)・・・・ループ保持アーム
(15)・・・・据付け台
(18)・・・・脚柱
(25)・・・・バネ圧縮管
(29)・・・・支点軸
(30)・・・・ワイヤー受け入れ凹周溝
(31)・・・・天板
(33)・・・・脚柱受け入れ孔
(34)・・・・ボールネジ(出力軸)
(37)・・・・伸縮カバー
(40)・・・・支持板
(43)・・・・制御部
(46)・・・・位置検出部
(48)・・・・無線通信部
(49)・・・・捕獲検知部(磁気センサー)
(52)・・・・分岐ワイヤー
(56)・・・・制御部
(59)・・・・表示部
(A)・・・・・アクチュエーター
(B)・・・・・バネ機構
(R)・・・・・中継基地局
(S)・・・・・捕獲センサー
(T)・・・・・くくり罠
(U)・・・・・ユーザー端末
(W)・・・・・サーバ