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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】モジュール検査方法、及び、慣性センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 21/00 20060101AFI20240322BHJP
   G01C 19/00 20130101ALI20240322BHJP
【FI】
G01P21/00
G01C19/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021038785
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138734
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中吉 鷹一
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-122359(JP,A)
【文献】特開2000-009475(JP,A)
【文献】特開2005-308531(JP,A)
【文献】特開平06-331647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0248629(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/00 ~ 21/02
G01C 19/00 ~ 19/72
G01C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性センサを組み込んだモジュールのモジュール検査方法であって、
前記慣性センサの所定の慣性力に対応するセンサ感度情報を取得し、
前記モジュールに組み込まれた前記慣性センサに対してモジュール疑似電気信号を印加して、前記所定の慣性力に対応するモジュール感度情報を得て、
前記モジュール感度情報と前記センサ感度情報とを比較し、
前記モジュール感度情報と前記センサ感度情報との比較結果を用いて前記モジュールを検査し、
前記センサ感度情報は、互いに異なる複数の温度環境にそれぞれ対応する複数の感度情報を含み、
前記モジュール感度情報を得る処理及び前記モジュール感度情報と前記センサ感度情報とを比較する処理を、前記複数の温度環境のそれぞれについて行う、
モジュール検査方法。
【請求項2】
前記センサ感度情報は、前記慣性センサに前記所定の慣性力を作用させて得られた感度情報、または、前記所定の慣性力に基づいて設定されたセンサ疑似電気信号を前記慣性センサに印加して得られた感度情報である、
請求項1記載のモジュール検査方法。
【請求項3】
前記センサ感度情報は、前記センサ疑似電気信号を前記慣性センサに印加して得られた感度情報であり、
前記モジュール疑似電気信号は、前記センサ疑似電気信号と同一の信号である、
請求項2に記載のモジュール検査方法。
【請求項4】
前記センサ疑似電気信号は、
第1の疑似信号と、
第2の疑似信号と、を含み、
前記センサ感度情報は、前記第1の疑似信号に対するセンサ応答と前記第2の疑似信号に対するセンサ応答との差に関する情報であり、
前記モジュール疑似電気信号は、
前記第1の疑似信号と同一である第1のモジュール疑似信号と、
前記第2の疑似信号と同一である第2のモジュール疑似信号と、を含み、
前記モジュール感度情報は、前記第1のモジュール疑似信号に対するセンサ応答と前記第2のモジュール疑似信号に対するセンサ応答との差に関する情報である、
請求項3に記載のモジュール検査方法。
【請求項5】
前記センサ感度情報は、前記慣性センサに前記所定の慣性力を作用させて得られた感度情報であり、
前記モジュール疑似電気信号は、前記所定の慣性力を前記慣性センサに作用させて得られる感度情報と同一の感度情報を、前記慣性センサに印加することで得られる電気信号である、
請求項2に記載のモジュール検査方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のモジュール検査方法のための慣性センサであって、
前記センサ感度情報を記憶する記憶部を備える、
慣性センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にモジュール検査方法、及び、慣性センサに関し、より詳細には、慣性センサを組み込んだモジュールの検査方法、及び、モジュール検査方法のための慣性センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、慣性センサを組み込んだモジュールの感度を検査するための方法として、慣性力を用いる検査方法と、疑似電気信号を用いる検査方法が知られている。慣性力を用いる検査方法では、検査装置を用いて慣性力をモジュールに作用させ、モジュールから得た感度情報を検査する。一方、疑似電気信号を用いた検査方法では、例えば、特許文献1に開示されているような慣性センサの自己診断機能を利用して感度情報を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-175393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、慣性センサに対してモジュールは大きくなる。例えば、慣性センサは一般に数ミリ角程度であるのに対してモジュールは一般に10cm角以上と大きさが異なる。したがって、慣性力を用いた検査をモジュールに対して行うことは、検査装置の大型化を招きコスト増大につながる。一方で、疑似電気信号を用いた検査では、疑似電気信号の精度が検査の精度に影響するため、検査の精度向上が難しい。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、慣性力を用いることなく検査を高精度に行える、モジュール検査方法、及び、慣性センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るモジュール検査方法は、慣性センサを組み込んだモジュールのモジュール検査方法である。前記モジュール検査方法では、前記慣性センサの所定の慣性力に対応するセンサ感度情報を取得する。前記モジュール検査方法では、前記モジュールに組み込まれた前記慣性センサに対してモジュール疑似電気信号を印加して、前記所定の慣性力に対応するモジュール感度情報を得る。前記モジュール検査方法では、前記モジュール感度情報と前記センサ感度情報とを比較する。前記モジュール検査方法では、前記モジュール感度情報と前記センサ感度情報との比較結果を用いて前記モジュールを検査する。前記センサ感度情報は、互いに異なる複数の温度環境にそれぞれ対応する複数の感度情報を含む。前記モジュール検査方法では、前記モジュール感度情報を得る処理及び前記モジュール感度情報と前記センサ感度情報とを比較する処理を、前記複数の温度環境のそれぞれについて行う。
【0007】
本開示の一態様に係る慣性センサは、本開示の一態様に係るモジュール検査方法のための慣性センサであって、前記センサ感度情報を記憶する記憶部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係るモジュール検査方法、及び、慣性センサによれば、慣性力を用いることなく検査を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係るモジュールの模式外観図である。
図2図2は、実施の形態に係る慣性センサがセンサ検査装置に取り付けられた状態を示す模式図である。
図3図3Aは、実施の形態に係る慣性センサの論理ブロック図である。図3Bは、実施の形態に係るMEMS部の模式図である。
図4図4は、実施の形態に係るセンサ疑似電気信号とセンサ応答との関係を示すタイムチャートである。
図5図5Aは、センサ疑似信号が慣性センサに出力されていない場合のMEMS部の模式図である。図5Bは、x軸の正方向の慣性力に対応するセンサ疑似信号が慣性センサに出力された際のMEMS部の状態を示す模式図である。図5Cは、x軸の負方向の慣性力に対応するセンサ疑似信号が慣性センサに出力された際のMEMS部の状態を示す模式図である。
図6図6は、実施の形態に係る慣性センサの検査方法を示すフローチャートである。
図7図7は、実施の形態に係るモジュールの検査方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪実施の形態≫
以下、図面を用いて本開示に係るモジュール10の検査方法について説明する。
【0011】
<構成>
1.モジュールの概要
図1は、実施の形態に係るモジュール10の模式外観図である。実施の形態に係る検査方法の対象となるモジュール10は、例えば、慣性センサ5を備える回路基板である。具体的には、自動車用の車載センサ基板、携帯情報端末のジャイロセンサ基板、カメラ用の手振れ検知センサ基板、産業用ロボットやトラクタなどのセンサ基板が挙げられる。モジュール10は、例えば、10cm角から20cm角程度の外形寸法を有する、所定の形状の回路基板である。なお、モジュール10はこれらに限定されず、装置や製品の構成要素であって、慣性センサ5を備えていれば任意の構成であってよい。
【0012】
2.モジュール検査装置及びセンサ検査装置の概要
図1は、モジュール10がモジュール検査装置40と接続された状態を示している。モジュール検査装置40は、モジュール10と通信するためのインターフェース41を有している。モジュール検査装置40は、後述するモジュール疑似電気信号をモジュール10に出力し、後述するセンサ応答を取得してモジュール感度情報を生成する。詳しくは後述する。モジュール検査装置40は、例えば、コンピュータとソフトウェアとの組み合わせで実現される。
【0013】
図2は、慣性センサ5がセンサ検査装置30に取り付けられた状態を示す模式図である。センサ検査装置30としては、慣性センサ5を検査するための公知の検査装置を用いることができる。センサ検査装置30は、慣性センサ5を保持するセンサ台31を有している。センサ台31は、慣性センサ5とセンサ検査装置30とが通信するためのインターフェースを有している。また、センサ台31は、慣性センサ5の姿勢とセンサ台31の姿勢とが連動するように慣性センサ5を固定する。したがって、可動部32によってセンサ台31が姿勢を変化させることで、連動して慣性センサ5の姿勢も変化する。すなわち、センサ台31は慣性センサ5に作用する慣性力を制御する。センサ検査装置30は、センサ台31の姿勢を制御して慣性センサ5に慣性力を作用させ、後述するセンサ応答を取得して慣性センサ5の検査を行う。また、センサ検査装置30は、後述するセンサ疑似電気信号を慣性センサ5に出力し、後述するセンサ応答を取得してセンサ感度情報を生成する。詳しくは後述する。
【0014】
3.慣性センサの構造及びセンサ検査装置の概要
図3Aは、実施の形態に係る慣性センサ5の論理構成を示すブロック図である。慣性センサ5は、疑似信号生成回路1と、MEMS部2と、信号処理回路3と、記憶部4とを備える。
【0015】
疑似信号生成回路1は、MEMS部2に電圧を印加する回路である。疑似信号生成回路1は、慣性センサ5を取り付けたセンサ検査装置30から、センサ疑似電気信号の入力を受け付ける。疑似信号生成回路1は、センサ疑似電気信号に従って、MEMS部2に電圧を印加する。また、疑似信号生成回路1は、モジュール10に接続されたモジュール検査装置40から、モジュール疑似電気信号の入力を受け付ける。疑似信号生成回路1は、モジュール疑似電気信号に従って、MEMS部2に電圧を印加する。
【0016】
MEMS部2は、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)としての慣性検知部である。MEMS部2は、例えば、3軸の角速度センサと3軸の加速度センサとを含む6軸ジャイロセンサである。図3Bは、MEMS部2に含まれる1つの加速度センサの概略を示す模式図である。加速度センサは加速度のx軸成分を検知する慣性検知部であり、錘21と、検知電極部22と、疑似信号電極部23を備える。
【0017】
錘21は主部21aと電極部21bを含む。主部21aは疑似信号電極部23の2つの疑似信号電極23a,23b(後述)の間に配され、電極部21bは検知電極部22の2つの検知電極22a,22bの間に配される。錘21の材料は、例えば、シリコンである。図示されていないが、錘21は、例えば弾性体に保持されている。錘21は、x軸成分を有する慣性力の作用がない場合は、所定の基準位置に静止している。錘21は、x軸の正方向の慣性力が作用すると、x軸の正方向に移動する。また、錘21は、x軸の負方向の慣性力が作用すると、x軸の負方向に移動する。移動後の錘21のx軸に沿った位置は、慣性力の大きさに対応し、慣性力が大きいほど所定の基準位置から離れた位置まで移動する。
【0018】
検知電極部22は、静電容量の変化によって錘21の位置を検出する電極である。検知電極部22は検知電極22aと検知電極22bとを有する。検知電極22a,22bは錘21の電極部21bを挟むように基板に固定されている。検知電極22aと検知電極22bは信号処理回路3に接続されており、例えば、錘21と検知電極22aとの電位差、錘21と検知電極22bとの電位差のそれぞれが所定の値となるように電圧が印加されている。錘21がx方向に移動すると、電極部21bと検知電極22aとの距離が変化する。したがって、電極部21bと検知電極22aとの間の静電容量が変化する。同様に、錘21がx方向に移動すると、電極部21bと検知電極22bとの距離が変化する。したがって、電極部21bと検知電極22bとの間の静電容量が変化する。
【0019】
疑似信号電極部23は、静電気力によって錘21の位置を制御する電極である。疑似信号電極部23は疑似信号電極23aと疑似信号電極23bとを有する。疑似信号電極23a,23bは錘21の主部21aを挟むように基板に固定されている。疑似信号電極23a、疑似信号電極23b、錘21は疑似信号生成回路1に接続されている。疑似信号生成回路1からの電圧印加によって疑似信号電極23aと錘21との間に電位差が生じると、錘21にx軸方向の静電気力が作用する。同様に、疑似信号生成回路1からの電圧印加によって疑似信号電極23bと錘21との間に電位差が生じると、錘21にx軸方向の静電気力が作用する。疑似信号電極部23は、静電気力を錘21に作用させ、錘21に慣性力が作用した状態と同様の状態を生じさせる。
【0020】
図3Aに戻って説明を続ける。信号処理回路3は、MEMS部2の検知電極部22を用いて錘21の変位を検出し、センサ応答を出力する回路である。上述したように、信号処理回路3は、錘21と検知電極22aの電位差及び錘21と検知電極22bの電位差を一定に保つように検知電極22a及び検知電極22bに電圧を印加する。そして、検知電極22aと検知電極22bのそれぞれの電荷量の変化を、検知電極22aと検知電極22bのそれぞれに流入または流出する電流量により検知する。さらに、検知電極22aと検知電極22bのそれぞれの電荷量変化から、慣性力のx成分の向き及び大きさを錘21のx方向の位置に基づいて算出し、センサ応答として出力する。
【0021】
記憶部4は、慣性センサ5の感度情報を記憶するためのメモリである。記憶部4は、例えば、PROM(Programmable Read Only Memory)のような不揮発性メモリである。
【0022】
疑似信号生成回路1と、信号処理回路3と、記憶部4は、例えば、単一のASIC(Application Specific Integrated Circuit)として実現される。
【0023】
<センサ疑似電気信号を用いた慣性センサの検査方法>
センサ疑似電気信号を用いた慣性センサ5の検査方法について、以下、詳細に説明する。
【0024】
センサ疑似電気信号は、慣性センサ5を検査する際にセンサ検査装置30から出力される信号である。センサ疑似電気信号は、少なくとも1つのセンサ疑似信号を含む。センサ疑似信号は、後述するように、特定の向きと大きさとを有する慣性力に対応する。以下、説明を簡略化するために、センサ疑似信号を単一の電圧値Vで表す。電圧値Vが正の値であるセンサ疑似信号に対し、疑似信号生成回路1は、疑似信号電極23aと錘21との電位差がVとなるように、電圧をMEMS部2に印加する。なお、疑似信号生成回路1は、錘21と疑似信号電極23bとの電位差を0とする。疑似信号生成回路1がMEMS部2に電圧を印加すると、錘21はx軸の正方向の静電気力を受ける。したがって、電圧値Vが正の値であるセンサ疑似信号は、錘21を同じ位置に変位させるx軸の正方向の慣性力に対応する。また、電圧値Vが負の値であるセンサ疑似信号に対し、疑似信号生成回路1は、疑似信号電極23bと錘21との電位差がVとなるように、電圧をMEMS部2に印加する。なお、疑似信号生成回路1は、疑似信号電極23aと錘21との電位差を0とする。疑似信号生成回路1がMEMS部2に電圧を印加すると、錘21はx軸の負方向の静電気力を受ける。したがって、電圧値Vが負の値であるセンサ疑似信号は、錘21を同じ位置に変位させるx軸の負方向の慣性力に対応する。電圧値Vが0であるセンサ疑似信号に対し、疑似信号生成回路1は、錘21と疑似信号電極23aとの間の電圧、及び、錘21と疑似信号電極23bとの間の電圧を0とする。したがって、電圧値Vが0であるセンサ疑似信号は、慣性力がない状態に対応する。すなわち、センサ疑似信号の電圧値Vの符号は、対応する慣性力の向きに対応する。なお、センサ疑似信号の電圧値Vが大きいほど静電気力が大きくなるため、錘21の変位が大きくなる。すなわち、センサ疑似信号の電圧値Vの絶対値は、対応する慣性力の大きさに対応する。
【0025】
図4は、センサ疑似電気信号に対するセンサ応答の概要を示すタイムチャートの一例である。図4に示すセンサ疑似電気信号は、x軸の正方向の慣性力に対応するセンサ疑似信号と、x軸の負方向の慣性力に対応するセンサ疑似信号と、慣性力なしに対応するセンサ疑似信号と、の3つのセンサ疑似信号を含む。なお、以下の説明において、慣性センサ5に慣性力は作用していないとして説明を行う。
【0026】
時刻T1から時刻T2では、慣性センサ5にセンサ疑似信号は入力されない。図5Aは、センサ疑似信号が慣性センサ5に出力されていないときのMEMS部2の状態を示す模式図である。錘21にはx方向の力は作用していないので、図5Aに示す通り、錘21は基準となる位置x=0に存在する。したがって、検知電極22aと検知電極22bのそれぞれの電荷量は、錘21が基準となる位置x=0の状態と等しい。すなわち、慣性センサ5は、センサ応答として、慣性力なしを示す0を出力する。
【0027】
次に、時刻T2から時刻T3では、センサ疑似電気信号のうち、x軸の正方向の所定の慣性力に対応するセンサ疑似信号が慣性センサ5に入力される。センサ疑似信号の電圧値は正なので、疑似信号生成回路1は、錘21と疑似信号電極23aとの間に電位差が生じるように、電圧をMEMS部2に出力する。図5Bは、x軸の正方向の所定の慣性力に対応するセンサ疑似信号が慣性センサ5に出力された際のMEMS部2の状態を示す模式図である。上述したように、錘21には疑似信号電極23aに引き寄せられる静電気力が作用するから、図5Bに示すように、錘21はx軸の正方向に移動する。したがって、検知電極22aと検知電極22bのそれぞれの電荷量は、錘21が基準となる位置よりx軸の正方向に移動した位置に存在していることを示す。すなわち、慣性センサ5は、センサ応答として、x軸の正方向の慣性力を示すSpを出力する。
【0028】
次に、時刻T3から時刻T4では、センサ疑似電気信号のうち、慣性力なしに対応するセンサ疑似信号が慣性センサ5に入力される。このとき、錘21と疑似信号電極23aとの間の電位差が0となる。また、錘21と疑似信号電極23bとの間の電位差が0となる。したがって、疑似信号電極部23から錘21に対して静電気力が作用しない。したがって、センサ疑似電気信号が慣性センサ5に出力されていない場合と同様、図5Aに示す通り、錘21は基準となる位置x=0に戻る。すなわち、慣性センサ5は、センサ応答として、慣性力なしを示す0を出力する。
【0029】
次に、時刻T4から時刻T5では、センサ疑似電気信号のうち、x軸の負方向の所定の慣性力に対応するセンサ疑似信号が慣性センサ5に入力される。センサ疑似信号の電圧値は負なので、疑似信号生成回路1は、錘21と疑似信号電極23bとの間に電位差が生じるように、電圧をMEMS部2に出力する。図5Cは、x軸の負方向の所定の慣性力に対応するセンサ疑似信号が慣性センサ5に出力された際のMEMS部2の状態を示す模式図である。上述したように、錘21には疑似信号電極23bに引き寄せられる静電気力が作用するから、錘21はx軸の負方向に移動する。したがって、検知電極22aと検知電極22bのそれぞれの電荷量は、錘21が基準となる位置よりx軸の負方向に移動した位置に存在することを示す。すなわち、慣性センサ5は、センサ応答として、x軸の負方向の慣性力を示すSnを出力する。
【0030】
最後に、時刻T5以降では、慣性センサ5にセンサ疑似信号は入力されない。このとき、疑似信号電極部23から錘21へ静電気力が作用しない。したがって、図5Aに示す通り、錘21は基準となる位置x=0に戻る。すなわち、慣性センサ5は、センサ応答として、慣性力なしを示す0を出力する。
【0031】
以上説明したように、慣性力に対応するセンサ疑似信号を含むセンサ疑似電気信号を慣性センサ5に入力すると、慣性センサ5からセンサ応答を得ることができる。なお、本開示において、慣性力Xを慣性センサ5に作用させたときのセンサ応答Pと、センサ疑似信号Yを慣性センサ5に入力したときのセンサ応答Qが同一であることを、センサ疑似信号Yが慣性力Xに対応すると呼ぶ。センサ疑似電気信号と慣性力との関係についても同様である。
【0032】
<モジュール疑似電気信号を用いたモジュールの検査方法>
以下、モジュール疑似電気信号を用いたモジュール10の検査方法について説明する。
【0033】
モジュール疑似電気信号は、モジュール10を検査する際にモジュール検査装置40から出力される信号である。モジュール疑似電気信号は、少なくとも1つのモジュール疑似信号を含む。モジュール疑似信号は、特定の向きと大きさとを有する慣性力に対応する。以下、センサ疑似信号と同様に、モジュール疑似信号を単一の電圧値Vで示す。電圧値Vのモジュール疑似信号がモジュール10の慣性センサ5に及ぼす影響は、電圧値Vのセンサ疑似信号が慣性センサ5に及ぼす影響と同一である。すなわち、モジュール疑似信号の電圧値Vの符号は、対応する慣性力の向きに対応する。モジュール疑似信号の電圧値Vの絶対値は、対応する慣性力の大きさに対応する。
【0034】
なお、センサ疑似信号と同一のモジュール疑似信号は、慣性センサ5への影響は同一である。すなわち、電圧値Vのセンサ疑似信号に対する慣性センサ5のセンサ応答と、電圧値Vのモジュール疑似信号に対するモジュール10のセンサ応答は等しい。同様に、センサ疑似電気信号と同一のモジュール疑似電気信号は、慣性センサ5への影響は同一である。以下、特に区別する必要がない場合、センサ疑似信号とモジュール疑似信号とを総称して「疑似信号」と呼ぶ。また、同様に、特に区別する必要がない場合、センサ疑似電気信号とモジュール疑似電気信号とを総称して「疑似電気信号」と呼ぶ。
【0035】
<モジュールの検査方法>
以下、実施の形態に係るモジュール10の検査方法について説明する。
【0036】
1.慣性センサの検査方法
まず、モジュール10の検査方法に先立ち、前処理としての慣性センサ5の検査方法について説明する。なお、慣性センサ5の検査方法は、慣性センサ5がモジュール10に組み込まれる前に実施される。図6は、慣性センサ5の検査方法を示すフローチャートである。
【0037】
まず、慣性センサ5に対し、慣性力による感度の物理検査を実施する(ステップS11)。具体的には、まず、慣性センサ5をセンサ検査装置30のセンサ台31に取り付け、慣性センサ5とセンサ検査装置30を物理的に、かつ、電気的に接続する。そして、センサ検査装置30がセンサ台31を用いて慣性センサ5に慣性力を作用させる。慣性力を作用させる方法は、慣性センサ5の慣性力検知方向が鉛直方向に対して所定の角をなすように慣性センサ5の姿勢を制御する、慣性センサ5を設置した台を所定の軸を回転軸として定速回転させる、など、公知の方法を用いることができる。センサ検査装置30は、慣性力に対応するセンサ応答を感度情報として慣性センサ5の信号処理回路3から取得する。
【0038】
次に、物理検査に基づくスクリーニングを実施する(ステップS12)。具体的には、センサ検査装置30は、ステップS11で慣性センサ5に作用させた慣性力を基準として、取得した感度情報が示す慣性力の誤差を算出する。そして、センサ検査装置30は、誤差が所定の許容誤差以下である慣性センサ5を良と判定し、誤差が所定の許容誤差を超える慣性センサ5を不良と判定する。所定の許容誤差としては、例えば、慣性力の大きさに対して±2%以内を用いることができる。不良と判定された慣性センサ5は、以降の検査の対象から除外する。
【0039】
次に、センサ疑似電気信号による感度情報を生成する(ステップS13)。具体的には、センサ検査装置30は、センサ疑似電気信号を慣性センサ5に出力し、センサ疑似電気信号に対するセンサ応答を感度情報として慣性センサ5の信号処理回路3から取得する。センサ疑似電気信号は、例えば、上述したセンサ疑似電気信号を用いることができる。なお、センサ疑似電気信号は上述の例に限られず、慣性力に対応するセンサ疑似信号を少なくとも1つ含んでいればよい。
【0040】
次に、慣性センサ5の記憶部4に感度情報を格納する(ステップS14)。具体的には、センサ検査装置30は、ステップS13で取得した感度情報を、センサ感度情報として慣性センサ5の記憶部4に格納して記憶させる。
【0041】
以上の処理により、前処理である慣性センサ5の検査が完了する。
【0042】
2.モジュールの検査方法
次に、モジュール10の検査方法について説明する。なお、モジュール10の検査方法は、慣性センサ5がモジュール10に組み込まれた後に実施される。図7は、モジュール10の検査方法を示すフローチャートである。
【0043】
まず、モジュール疑似電気信号による感度情報を生成する(ステップS21)。具体的には、モジュール検査装置40とモジュール10とを電気的に接続する。次に、モジュール検査装置40は、モジュール疑似電気信号をモジュール10に出力し、モジュール疑似電気信号に対する慣性センサ5のセンサ応答をモジュール感度情報として慣性センサ5の信号処理回路3から取得する。モジュール検査装置40が出力するモジュール疑似電気信号は、ステップS13でセンサ検査装置30が出力するセンサ疑似電気信号と同一の信号である。
【0044】
次に、モジュール検査装置40は、モジュール10に組み込まれた慣性センサ5の記憶部4からセンサ感度情報を取得する(ステップS22)。
【0045】
次に、モジュール検査装置40は、ステップS21で得たモジュール感度情報と、ステップS22で読みだしたセンサ感度情報とを比較する(ステップS23)。
【0046】
次に、モジュール検査装置40は、ステップS23の比較結果に基づいて、モジュール10の良不良を判定する(ステップS24)。モジュール検査装置40は、例えば、記憶部4に格納されたセンサ感度情報を基準として、ステップS21で得たモジュール感度情報の誤差が所定範囲以内であれば、モジュール10が良品であると判定する。一方、モジュール感度情報の誤差が所定範囲を超える場合、モジュール検査装置40は、モジュール10が不良品であると判定する。所定範囲としては、例えば、センサ感度情報の大きさに対して±0.3%以内を用いることができる。なお、この所定範囲は、ステップS12における所定の許容誤差より狭い範囲であってもよい。
【0047】
以上の処理により、モジュール10の検査が完了する。
【0048】
<小括>
以上説明したように、実施の形態に係るモジュール10の検査方法によれば、センサ疑似電気信号に対する慣性センサ5の感度情報と、センサ疑似電気信号と同一のモジュール疑似電気信号に対するモジュール10の感度情報とを比較する。したがって、慣性センサ5のセンサ疑似電気信号に対するセンサ感度情報とモジュール10のモジュール疑似電気信号に対するモジュール感度情報とが同等であれば、慣性力に対しても同等の感度情報が得られることを間接的に確認することができる。すなわち、モジュール10に対して慣性力による感度の物理検査を行わなくても、慣性力に対するモジュール10の感度情報を間接的に検査することができる。
【0049】
また、実施の形態に係るモジュール10の検査方法では、モジュール10に対して慣性力による感度の物理検査を省略することが可能である。モジュール10は慣性センサ5より大きいため、モジュール10に慣性力を作用させるためには、モジュール10の姿勢等を制御するための可動部が大きいモジュール検査装置40が必要となる。また、モジュール検査装置40とセンサ検査装置30は可動部の姿勢制御精度が同等であることが必要であり、さらに、モジュール検査装置40では、モジュール10の姿勢と、モジュール10内の慣性センサ5の姿勢との相対関係を考慮する必要がある。しかしながら、実施の形態に係るモジュール10の検査方法では、モジュール10の姿勢等を制御するための可動部が必要ないため、これらを考慮する必要がない。
【0050】
また、実施の形態に係るモジュール10の検査方法では、センサ疑似電気信号に対するセンサ感度情報と、センサ疑似信号と同一のモジュール疑似電気信号に対するモジュール感度情報と比較する。したがって、センサ感度情報を得るためのセンサ疑似電気信号と、モジュール感度信号を得るためのモジュール疑似電気信号とが同一であれば高精度にモジュール10を検査することができる。すなわち、モジュール疑似電気信号と慣性力との対応付けが高精度に行われている必要がない。
【0051】
また、実施の形態に係るモジュール10の検査方法では、センサ疑似電気信号に対する慣性センサ5の感度情報を記憶部4に格納する。すなわち、モジュール10がセンサ感度情報を格納している記憶媒体を含む。したがって、モジュール10の検査と慣性センサ5の検査とを時間的及び/または空間的に隔絶して行ってもよい。すなわち、慣性センサ5の製造や検査とモジュール10の製造や検査とを異なる製造拠点で行う場合や異なる事業者が行う場合においても、実施の形態に係るモジュール10の検査を容易に行うことができる。
【0052】
≪変形例1≫
実施の形態では、センサ疑似電気信号に対するセンサ応答をそのまま、センサ感度情報及びモジュール感度情報として用いる場合について説明した。しかしながら感度情報は上述の場合に限らず、他の情報を用いてもよい。
【0053】
変形例1では、疑似電気信号は、少なくとも2つの異なる疑似信号を含む。すなわち、センサ疑似電気信号は、第1のセンサ疑似信号と第2のセンサ疑似信号を含む。モジュール疑似電気信号は、第1のモジュール疑似信号と第2のモジュール疑似信号を含む。また、センサ検査装置30及びモジュール検査装置40は、それぞれの疑似信号に対するセンサ応答を取得する。そして、センサ検査装置30及びモジュール検査装置40は、基準とする1つの疑似信号に対するセンサ応答と、他の疑似信号に対するセンサ応答との差を、感度情報として用いる。なお、その他の処理については実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0054】
変形例1で用いるセンサ疑似電気信号は、例えば、電圧値V1である第1のセンサ疑似信号と、電圧値V2の第2のセンサ疑似信号を含む。また、電圧値V1の第1のセンサ疑似信号に対する慣性センサ5またはモジュール10のセンサ応答を第1のセンサ応答S1とする。第1のセンサ応答S1のうち、第1のセンサ疑似信号に対応する成分をS1vとし、センサ疑似電気信号に起因しない成分をSpとする。このとき、以下の式が成立する。
S1=S1v+Sp
【0055】
また、電圧値V2である第2のセンサ疑似信号に対する慣性センサ5またはモジュール10のセンサ応答を第2のセンサ応答S2とする。また、第2のセンサ応答S2のうち、第2のセンサ疑似信号に対応する成分をS2vとする。このとき、以下の式が成立すると考えられる。
S2=S2v+Sp
【0056】
このとき、第1のセンサ応答S1と第2のセンサ応答S2の差ΔSを感度情報とすると、以下の式が成立する。
ΔS=S2-S1=S2v-S1v
【0057】
モジュール疑似電気信号は、同様に、電圧値V1である第1のモジュール疑似信号と、電圧値V2のモジュール疑似信号を含む。また、第1のモジュール疑似信号に対するモジュール10のセンサ応答を第1のセンサ応答S3とする。第1のセンサ応答S3のうち、第1のモジュール疑似信号に対応する成分をS3vとする。また、第2のモジュール疑似信号に対するモジュール10のセンサ応答を第2のセンサ応答S4とする。第2のセンサ応答S2のうち、第2のモジュール疑似信号に対応する成分をS4vとする。このとき、第1のセンサ応答S3と第2のセンサ応答S4の差ΔSを感度情報とすると、同様に、以下の式が成立する。
ΔS=S4-S3=S4v-S3v
【0058】
変形例1では、慣性センサの検査方法は、実施の形態と以下の点で異なる。ステップS13でセンサ感度情報を生成する際に、センサ検査装置30は、第1のセンサ疑似信号と第2のセンサ疑似信号を含むセンサ疑似信号をセンサ疑似電気信号として慣性センサ5に出力する。そして、センサ検査装置30は、第1のセンサ疑似信号に対する第1のセンサ応答を慣性センサ5から取得する。また、センサ検査装置30は、第2のセンサ疑似信号に対する第2のセンサ応答を慣性センサ5から取得する。そして、センサ検査装置30は、第1のセンサ応答と第2のセンサ応答との差を、センサ感度情報として算出する。そして、ステップS14において、センサ感度情報を記憶部4に格納する。
【0059】
また、変形例1では、モジュール10の検査方法は、実施の形態と以下の点で異なる。ステップS21でモジュール感度情報を生成する際に、モジュール検査装置40は、第1のモジュール疑似信号と第2のモジュール疑似信号を含むモジュール疑似信号をモジュール疑似電気信号としてモジュール10に出力する。第1のモジュール疑似信号の電圧値は、第1のセンサ疑似信号の電圧値と等しい。また、第2のモジュール疑似信号の電圧値は、第2のセンサ疑似信号の電圧値と等しい。そして、モジュール検査装置40は、第1のモジュール疑似信号に対する第1のセンサ応答をモジュール10から取得する。また、モジュール検査装置40は、第2のモジュール疑似信号に対する第2のセンサ応答をモジュール10から取得する。そして、モジュール検査装置40は、第1のセンサ応答と第2のセンサ応答との差を、モジュール感度情報として算出する。そして、ステップS23で、モジュール検査装置40は、ステップS21で算出したモジュール感度情報と、ステップS22でモジュール10から読み出したセンサ感度情報とを比較する。
【0060】
上述したように、慣性センサ5がセンサ疑似信号に対して出力するセンサ応答には、センサ疑似電気信号に起因しない成分Spが含まれている。また、モジュール10がモジュール疑似信号に対して出力するセンサ応答には、モジュール疑似電気信号に起因しない成分Spが含まれている。疑似電気信号に起因しない成分Spは、例えば、慣性センサ5に物理的に作用する慣性力に起因する成分、モジュール10の回路構成に起因する成分、センサ検査装置30またはモジュール検査装置40の回路に起因する成分などである。一方、異なる2つの疑似信号に対する慣性センサ5またはモジュール10のセンサ応答の差をセンサ感度情報またはモジュール感度情報として用いると、センサ感度情報及びモジュール感度情報には、疑似電気信号に起因しない成分Spが含まれない。したがって、センサ疑似電気信号に起因する慣性センサ5の感度情報であるセンサ感度情報と、モジュール疑似電気信号に起因するモジュール10の感度情報であるモジュール感度情報との比較を行うことができ、高精度な検査を行うことができる。すなわち、疑似電気信号に起因しない成分Spの発生要因である、姿勢の差異に起因する慣性力の違いや、慣性センサ5以外のモジュール10の回路の影響による、検査の精度低下を低減させることができる。
【0061】
なお、第1の疑似信号と第2の疑似信号の組み合わせは、その電圧値が異なれば任意の組み合わせであってよい。疑似信号を示す単一の電圧値Vの設定可能範囲を-5V~+5Vとした場合、例えば、以下のいずれの組み合わせであってもよい。(+5V,-5V)としてもよいし、一方を無信号として(+5V,0V)または(0V,-5V)としてもよい。また、電圧値の符号が単一であってもよく、(+5V,+3V)または(-5V,-3V)としてもよい。なお、上記の組み合わせは例示に過ぎず、任意の組み合わせを用いることができる。なお、疑似電気信号に起因しない成分Spの除去の程度は、2つの電圧値の符号の同異や、2つの電圧値の差の絶対値の大小に依存しない。しかしながら、疑似信号の電圧値の差の絶対値が大きいほど、センサ応答の差の絶対値が大きくなり、センサ感度情報及びモジュール感度情報のS/N比が向上する。なお、疑似電気信号は、さらに第3の疑似信号を含んでもよく、第3の疑似信号に対するセンサ応答と第1の疑似信号に対するセンサ応答との差を、さらに感度情報として用いることができる。
【0062】
≪変形例2≫
実施の形態では、慣性センサ5のセンサ感度情報及びモジュール10のモジュール感度情報を単一の環境で取得する場合について説明した。しかしながら、慣性センサ5のセンサ感度情報及びモジュール10のモジュール感度情報は環境温度によって変化することがあるため、環境温度ごとに感度情報の検査を行ってもよい。
【0063】
変形例2では、センサ検査装置30は、複数の異なる温度環境のそれぞれに対してセンサ感度情報を取得し、温度環境ごとのセンサ感度情報を記憶部4に格納する。また、モジュール検査装置40は、複数の異なる温度環境のそれぞれに対してモジュール感度情報を取得する。そして、モジュール検査装置40は、環境温度ごとに、センサ感度情報とモジュール感度情報とを比較し、モジュール10の良不良を判定する。なお、その他の処理については実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0064】
変形例2では、慣性センサ5の検査方法は、実施の形態と以下の点で異なる。変形例2に係るセンサ検査装置30は、慣性センサ5とセンサ台31とを第1の温度に変化させ維持する機能を有する。また、変形例2に係るセンサ検査装置30は、慣性センサ5とセンサ台31とを第2の温度に変化させ維持する機能を有する。温度管理の手段としては公知の方法を用いることができる。そして、ステップS13でセンサ感度情報を取得する際、センサ検査装置30は、慣性センサ5の温度が第1の温度となるように温度管理を行う。そして、慣性センサ5の温度が第1の温度である状態で、センサ検査装置30は慣性センサ5にセンサ疑似電気信号を出力し、慣性センサ5のセンサ応答を、第1の温度に対応する感度情報として取得する。また、センサ検査装置30は、慣性センサ5の温度が第2の温度となるように温度管理を行う。そして、慣性センサ5の温度が第2の温度である状態で、センサ検査装置30は慣性センサ5にセンサ疑似電気信号を出力し、慣性センサ5のセンサ応答を、第2の温度に対応する感度情報として取得する。そして、ステップS14で、センサ検査装置30は、第1の温度に対応する感度情報と、第2の温度に対応する感度情報とをセンサ感度情報として記憶部4に格納する。第1の温度、第2の温度は、例えば、25℃、85℃である。なお、温度環境は上述の温度に限られず、任意の温度であってもよい。また、さらに、第3の温度、第4の温度等を用いてもよい。
【0065】
また、変形例2では、モジュール10の検査方法は、実施の形態と以下の点で異なる。変形例2に係るモジュール検査装置40は、モジュール10を第1の温度に変化させ維持する機能を有する。また、変形例2に係るモジュール検査装置40は、モジュールを第2の温度に変化させ維持する機能を有する。温度管理の手段としては公知の方法を用いることができる。ステップS21でモジュール感度情報を取得する際、モジュール検査装置40は、モジュール10の温度が第1の温度となるように温度管理を行う。そして、モジュール10の温度が第1の温度である状態で、モジュール検査装置40はモジュール10にモジュール疑似電気信号を出力し、モジュール10のセンサ応答を、第1の温度に対応する感度情報として取得する。また、モジュール検査装置40は、モジュール10の温度が第2の温度となるように温度管理を行う。そして、モジュール10の温度が第2の温度である状態で、モジュール検査装置40はモジュール10にモジュール疑似電気信号を出力し、モジュール10のセンサ応答を、第2の温度に対応する感度情報として取得する。そして、ステップS23で、モジュール検査装置40は、ステップS21で算出したモジュール感度情報と、ステップS22でモジュール10から読み出したセンサ感度情報について、温度環境ごとに比較する。すなわち、モジュール検査装置40は、第1の温度環境に対応するモジュール感度情報と、第1の温度環境に対応するセンサ感度情報とを比較する。さらに、モジュール検査装置40は、第2の温度環境に対応するモジュール感度情報と、第2の温度環境に対応するセンサ感度情報とを比較する。そして、ステップS24で、モジュール検査装置40は、温度環境ごとの比較結果のすべてを用いてモジュール10の良不良を判定する。すなわち、第1の温度環境についての感度情報の比較結果、第2の温度環境についての感度情報の比較結果の両方を用いて良不良を判定する。
【0066】
本変形例によれば、同一の温度環境に対応する感度情報を比較するため、センサ感度に温度依存性がある場合であっても高精度でモジュール10を検査することができる。また、複数の温度環境に対して感度情報を比較するため、一部の温度においてのみモジュール10の感度が異常となる不良を検知することができる。
【0067】
また、慣性力を用いた検査の場合、高温や低温の温度環境でモジュール10の検査を行う際に、モジュール10に慣性力を与えるための駆動機構も温度環境下に置く必要が生じる。したがって、モジュール検査装置にも耐高温性能や耐低温性能が必要となり、検査コストの増大につながる。一方、変形例2に係る検査方法によれば、モジュール疑似電気信号を用いたモジュール10の検査を行う際に、モジュール10の温度管理を行えばよい。したがって、高温や低温の温度環境に対するモジュール10の検査を低コストで実施することができる。
【0068】
なお、変形例1と変形例2とを組み合わせ、第1の温度環境に対応するセンサ感度情報またはモジュール感度情報として、第1の温度における第1の疑似信号に応答するセンサ応答と第1の温度における第2の疑似信号に応答するセンサ応答との差を用いてもよい。第2の温度環境についても同様である。特に、環境温度の変化に依存して疑似電気信号に起因しない成分Spが変化する場合に、高精度に検査を行うことができる。
【0069】
≪変形例3≫
実施の形態では、センサ疑似電気信号に対する慣性センサ5のセンサ感度情報と、センサ疑似電気信号と同一のモジュール疑似電気信号に対するモジュール10のモジュール感度情報とを比較するとした。しかしながら、モジュール疑似電気信号の精度が十分に確保できれば、慣性力に対する慣性センサ5のセンサ感度情報と、モジュール疑似電気信号に対するモジュール10のモジュール感度情報とを比較するとしてもよい。
【0070】
変形例3では、センサ検査装置30は、慣性力に対する慣性センサ5のセンサ応答をセンサ感度情報として記憶部4に格納する。モジュール検査装置40は、モジュール疑似電気信号に対するモジュール10のセンサ応答をモジュール感度情報として取得する。そして、モジュール検査装置40は、モジュール疑似電気信号に対するモジュール感度情報と、慣性力に対するセンサ感度情報とを比較してモジュール10を検査する。なお、その他の処理については実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0071】
変形例3に係る慣性センサの検査方法は、実施の形態と以下の点で異なる。ステップS14で、センサ検査装置30は、ステップS11で取得した慣性力に対応するセンサ応答を、センサ感度情報として記憶部4に格納する。
【0072】
変形例3に係るモジュール10の検査方法は、行う動作は実施の形態と同様である。しかしながら、ステップS22でモジュール検査装置40が記憶部4から読み出すセンサ感度情報は、モジュール疑似電気信号に対応せず慣性力に対応している。そして、ステップS23では、モジュール検査装置40は、モジュール疑似電気信号に対するモジュール感度情報と、慣性力に対するセンサ感度情報とを比較する。
【0073】
変形例3に係るモジュール10の検査方法を実施するためには、以下の条件が必要である。すなわち、ステップS21のモジュール疑似電気信号と同一のセンサ疑似電気信号をセンサ検査装置30から慣性センサ5に出力した場合に、記憶部4に格納されているセンサ感度情報と同一のセンサ感度情報を得られる必要がある。条件を満たしているかを確認するために、ステップS13でセンサ検査装置30はセンサ疑似電気信号を慣性センサ5に出力してセンサ感度情報を取得してもよい。さらに、ステップS13で得たセンサ疑似電気信号に対するセンサ感度情報とステップS11で得た慣性力に対するセンサ感度情報とが同一であるか検証してもよい。2つのセンサ感度情報の同一性が十分に高い場合、センサ疑似電気信号と同一のモジュール疑似電気信号が慣性力に対応していることを検証できる。また、ステップS13で得たセンサ疑似電気信号に対するセンサ感度情報とステップS11で得た慣性力に対するセンサ感度情報との同一性が低い場合は、以下のようにセンサ疑似信号を調整してもよい。すなわち、センサ疑似電気信号に含まれるセンサ疑似信号の電圧値を上昇または下降させ、センサ疑似電気信号に対するセンサ感度情報の取得と慣性力に対応するセンサ感度情報との比較を行ってもよい。センサ疑似電気信号と同一のモジュール疑似電気信号の精度を十分に高めることができる。なお、モジュール疑似電気信号の精度が十分に高いことがすでに検証されている場合、慣性センサ5の検査方法において、ステップS13を省略してもよい。
【0074】
≪実施の形態に係るその他の変形例≫
(1)実施の形態及び各変形例では、記憶部4に慣性センサ5のセンサ感度情報を格納する場合について説明した。しかしながら、記憶部4に格納する情報はこれに限られない。例えば、センサ疑似電気信号を示す情報を記憶部4にさらに格納し、モジュール10の検査を行うときに、センサ疑似電気信号を示す情報を記憶部4から読み出して使用するとしてもよい。本方法によれば、センサ検査装置30が用いたセンサ疑似電気信号と、モジュール検査装置40が用いるモジュール疑似電気信号との同一性を確実とすることができる。また、慣性センサ5ごとにセンサ疑似電気信号を異ならせることが容易となる。同様に、変形例2において、記憶部4に、記憶部4に格納されているセンサ感度情報のそれぞれに対応する慣性センサ5の温度を示す情報をさらに格納してもよい。
【0075】
(2)実施の形態及び各変形例では、記憶部4に慣性センサ5のセンサ感度情報を格納する場合について説明した。しかしながら、モジュール10の検査を行うときに慣性センサ5のセンサ感度情報を取得できればよく、記憶部4以外のものを使用してもよい。例えば、慣性センサ5の個体を識別する情報と慣性センサ5のセンサ感度情報との組み合わせをUSBメモリ等の記憶媒体に格納し、モジュール10の検査を行うときにモジュール検査装置40が記憶媒体からセンサ感度情報を取得するとしてもよい。または、例えば、ネットワークを介して、慣性センサ5の個体を識別する情報をキーとしてモジュール検査装置40が慣性センサ5のセンサ感度情報を取得可能なデータベースを使用してもよい。慣性センサ5の個体を識別する情報は、例えば、シリアル番号を用いることができる。または、慣性センサ5の個体を識別する情報をバーコードなどに格納して慣性センサ5の表面に貼付してもよい。または、慣性センサ5のセンサ感度情報の所在を示す情報またはセンサ感度情報そのものを二次元バーコードなどに格納し、慣性センサ5の表面に貼付してもよい。
【0076】
(3)実施の形態及び各変形例では、センサ疑似電気信号は1以上の疑似信号を含むとした。また、センサ疑似信号は、x方向の正の慣性力に対応し、錘21と疑似信号電極23aとの間に電位差を生じさせる信号、x方向の負の慣性力に対応し、錘21と疑似信号電極23bとの間に電位差を生じさせる信号、慣性力に対応しない信号の3種類とした。しかしながら、センサ疑似電気信号は、慣性力を慣性センサ5に作用させた場合のセンサ応答と同様のセンサ応答を、慣性センサ5に出力されることで得られるものであれば任意のものであってよい。または、センサ疑似電気信号は、センサ疑似電気信号に対するセンサ応答を取得する検査を行うことを示す信号であり、疑似信号生成回路1は、センサ疑似電気信号を用いた検査を行う信号を受信したときに、予め記憶している所定の電圧をMEMS部2に印加してもよい。モジュール疑似電気信号についても同様である。
【0077】
(4)実施の形態及び各変形例では、MEMS部2の慣性検知部は静電容量型であるとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、慣性検知部はピエゾ素子型であるとしてもよいし、いわゆるMEMSセンサでなくてもよい。慣性力を作用させることで得られるセンサ応答と同一のセンサ応答をセンサ疑似電気信号の印加によって得られる慣性センサ5を備えるモジュール10であれば、本発明に係る検査方法を実施することができる。
【0078】
≪まとめ≫
第1の態様に係るモジュール検査方法は、慣性センサ(5)を組み込んだモジュール(10)のモジュール検査方法である。モジュール検査方法では、慣性センサ(5)の所定の慣性力に対応するセンサ感度情報を取得し、モジュール(10)に組み込まれた慣性センサ(5)に対してモジュール疑似電気信号を印加して、所定の慣性力に対応するモジュール感度情報を得て、モジュール感度情報とセンサ感度情報とを比較し、モジュール感度情報とセンサ感度情報との比較結果を用いてモジュール(10)を検査する。
【0079】
第1の態様に係るモジュール検査方法によれば、モジュール(10)に所定の慣性力を作用させることなく、モジュール(10)の検査を行うことができる。したがって、慣性センサ(5)より大型であるモジュール(10)に対して慣性力を与える設備が不要であり、検査コストの上昇を低減させることができる。また、センサ感度情報とモジュール感度情報の比較に基づいて検査するため、モジュール疑似電気信号の精度が検査の精度に与える影響を低減させることができる。
【0080】
第2の態様に係るモジュール検査方法では、第1の態様において、センサ感度情報は、慣性センサ(5)に所定の慣性力を作用させて得られた感度情報、または、所定の慣性力に基づいて設定されたセンサ疑似電気信号を慣性センサ(5)に印加して得られた感度情報である。
【0081】
第2の態様に係るモジュール検査方法によれば、慣性センサ(5)の感度特性を高精度に取得することができる。したがって、モジュール(10)の感度特性を高精度に検査できる。
【0082】
第3の態様に係るモジュール検査方法は、第2の態様において、センサ感度情報は、センサ疑似電気信号を前記慣性センサに印加して得られた感度情報である。モジュール疑似電気信号は、センサ疑似電気信号と同一の信号である。
【0083】
第3の態様に係るモジュール検査方法によれば、同一の条件下で、慣性センサ(5)と、モジュール(10)とのそれぞれの感度特性を得ることができる。したがって、慣性センサ(5)の感度特性と、モジュール(10)の感度特性とを高精度に比較できる。
【0084】
第4の態様に係るモジュール検査方法は、第3の態様において、センサ疑似電気信号は、第1の疑似信号と、第2の疑似信号と、を含む。センサ感度情報は、第1の疑似信号に対するセンサ応答と第2の疑似信号に対するセンサ応答との差に関する情報である。モジュール疑似電気信号は、第1の疑似信号と同一である第1のモジュール疑似信号と、第2の疑似信号と同一である第2のモジュール疑似信号と、を含む。モジュール感度情報は、第1のモジュール疑似信号に対するセンサ応答と第2のモジュール疑似信号に対するセンサ応答との差に関する情報である。
【0085】
第4の態様に係るモジュール検査方法によれば、慣性センサ(5)の姿勢等、疑似電気信号以外の条件がセンサ応答にもたらす影響を感度情報から除去することができる。したがって、センサ感度情報の生成とモジュール感度情報の生成とで、慣性センサ(5)の姿勢等を一致させなくても、高精度の検査が可能となる。
【0086】
第5の態様に係るモジュール検査方法は、第2の態様において、センサ感度情報は、慣性センサ(5)に所定の慣性力を作用させて得られた感度情報である。モジュール疑似電気信号は、所定の慣性力を慣性センサ(5)に作用させて得られる感度情報と同一の感度情報を、慣性センサ(5)に印加することで得られる電気信号である。
【0087】
第5の態様に係るモジュール検査方法によれば、慣性センサ(5)に印加することでセンサ感度情報を得られるセンサ疑似信号と同一のモジュール疑似信号に対する応答として、モジュール感度情報を得ることができる。したがって、慣性センサ感度情報と、モジュール感度情報とを高精度に比較できる。
【0088】
第6の態様に係るモジュール検査方法は、第1の態様において、センサ感度情報は、互いに異なる複数の温度環境にそれぞれ対応する複数の感度情報を含む。モジュール感度情報を得る処理及びモジュール感度情報とセンサ感度情報とを比較する処理を、複数の温度環境のそれぞれについて行う。
【0089】
第6の態様に係るモジュール検査方法によれば、慣性センサ(5)の疑似信号に対する感度情報の温度依存性を考慮して検査を行うことができる。したがって、高精度の検査が可能となる。また、モジュール(10)の感度情報の温度依存性についてモジュール(10)の環境温度を変化させれば検査可能である。すなわち、環境温度が広範囲な場合でも環境温度に対応した慣性を与える検査装置が不必要であるため、検査コストを上昇させることなく検査を行うことができる。
【0090】
第7の態様に係る慣性センサ(5)は、第1~6の態様のいずれか1つに係るモジュール検査方法のための慣性センサ(5)であって、センサ感度情報を記憶する記憶部(4)を備える。
【0091】
第7の態様に係る慣性センサによれば、慣性センサの検査で得たセンサ感度情報がモジュール(10)から読み出し可能である。したがって、モジュール(10)の検査を行う際に、容易かつ確実にセンサ感度情報を取得できる。
【符号の説明】
【0092】
10 モジュール
5 慣性センサ
4 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7