(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】流体物吐出装置及びその流体物吐出装置を備えた三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B28B 13/02 20060101AFI20240322BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20240322BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240322BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240322BHJP
【FI】
B28B13/02
B28B1/30
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2022557726
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2022020931
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】506329292
【氏名又は名称】スターテクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134326
【氏名又は名称】吉本 聡
(72)【発明者】
【氏名】菱川 辰巳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕規
(72)【発明者】
【氏名】水谷 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋太
(72)【発明者】
【氏名】田口 (土井原) 美桜
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/249913(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0009468(KR,A)
【文献】特開平06-330628(JP,A)
【文献】特開2022-040690(JP,A)
【文献】特開2019-147338(JP,A)
【文献】特表2015-502870(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105216333(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112829040(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108638290(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 13/02
B28B 1/30
B33Y 10/00-99/00
B29C 64/00-64/40
B05C 5/00-5/04
E04G 21/00
F04B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体物を供給する供給機構と、
一端を前記供給機構に接続された長尺の管状体と、
その長尺の管状体の他端に接続され、前記供給機構から供給された前記流体物を開口部から外部へ吐出する吐出機構と、
を備えた流体物吐出装置において、
前記供給機構側の前記一端近傍に配置され、前記流体物の圧力を検出する第1の検出部と、
前記吐出機構側の前記他端近傍に配置され、前記流体物の圧力を検出する第2の検出部と、
を備え、
前記供給機構の前記流体物の供給量は、
前記吐出機構によって前記開口部から前記外部へ吐出される前記流体物の吐出量と、前記第1の検出部による検出値
と、前記第2の検出部による検出値
と、に基づいて決定されることを特徴とする流体物吐出装置。
【請求項2】
前記供給機構からの前記流体物の供給量は、前記吐出機構によって前記開口部から前記外部へ吐出される前記流体物の吐出量と、前記第1の検出部が第1の時間間隔で検出した検出値と、前記第2の検出部が前記第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔で検出した検出値と、に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の流体物吐出装置。
【請求項3】
前記供給機構からの前記流体物の供給量は、前記吐出機構によって前記開口部から前記外部へ吐出される前記流体物の吐出量と、第1の時間に前記第1の検出部で検出された検出値と、前記第1の時間から所定時間経過後の第2の時間に前記第2の検出部で検出された検出値と、に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の流体物吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の流体物吐出装置と、前記吐出機構を先端に接続した多関節ロボットと、を備え、前記吐出機構から前記流体物を吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、
前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって、吐出する前記流体物の高さを調整可能であり、
前記吐出機構からの前記流体物の吐出量は、前記流体物の高さに応じて調整可能であることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
請求項2に記載の流体物吐出装置と、前記吐出機構を先端に接続した多関節ロボットと、を備え、前記吐出機構から前記流体物を吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、
前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって、吐出する前記流体物の高さを調整可能であり、
前記吐出機構からの前記流体物の吐出量は、前記流体物の高さに応じて調整可能であることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項6】
請求項3に記載の流体物吐出装置と、前記吐出機構を先端に接続した多関節ロボットと、を備え、前記吐出機構から前記流体物を吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、
前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって、吐出する前記流体物の高さを調整可能であり、
前記吐出機構からの前記流体物の吐出量は、前記流体物の高さに応じて調整可能であることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項7】
前記吐出機構は、その先端を吐出する前記流体物の高さよりも短い高さに設定して、前記流体物を吐出可能であることを特徴とする請求項4に記載の三次元造形装置。
【請求項8】
前記吐出機構は、その先端を吐出する前記流体物の高さよりも短い高さに設定して、前記流体物を吐出可能であることを特徴とする請求項5に記載の三次元造形装置。
【請求項9】
前記吐出機構は、その先端を吐出する前記流体物の高さよりも短い高さに設定して、前記流体物を吐出可能であることを特徴とする請求項6に記載の三次元造形装置。
【請求項10】
前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする請求項4に記載の三次元造形装置。
【請求項11】
前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする請求項5に記載の三次元造形装置。
【請求項12】
前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする請求項6に記載の三次元造形装置。
【請求項13】
前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする請求項7に記載の三次元造形装置。
【請求項14】
前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする請求項8に記載の三次元造形装置。
【請求項15】
前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする請求項9に記載の三次元造形装置。
【請求項16】
前記吐出機構は、前記流体物が通過する第1の中空部を有する中空筐体と、その中空筐体の先端に接続され、開口部と、その第1の中空部に連通する第2の中空部と、を有するノズルと、を備え、前記ノズルの前記開口部から外部に前記流体物を吐出するものであり、
前記第1の中空部及び/または前記第2の中空部を横切る流体物規制部を備えたことを特徴とする請求項7に記載の三次元造形装置。
【請求項17】
前記吐出機構は、前記流体物が通過する第1の中空部を有する中空筐体と、その中空筐体の先端に接続され、開口部と、その第1の中空部に連通する第2の中空部と、を有するノズルと、を備え、前記ノズルの前記開口部から外部に前記流体物を吐出するものであり、
前記第1の中空部及び/または前記第2の中空部を横切る流体物規制部を備えたことを特徴とする請求項8に記載の三次元造形装置。
【請求項18】
前記吐出機構は、前記流体物が通過する第1の中空部を有する中空筐体と、その中空筐体の先端に接続され、開口部と、その第1の中空部に連通する第2の中空部と、を有するノズルと、を備え、前記ノズルの前記開口部から外部に前記流体物を吐出するものであり、
前記第1の中空部及び/または前記第2の中空部を横切る流体物規制部を備えたことを特徴とする請求項9に記載の三次元造形装置。
【請求項19】
前記第2の中空部は、途中に第1の膨隆部を有していることを特徴とする請求項16に記載の三次元造形装置。
【請求項20】
前記第2の中空部は、途中に第1の膨隆部を有していることを特徴とする請求項17に記載の三次元造形装置。
【請求項21】
前記第2の中空部は、途中に第1の膨隆部を有していることを特徴とする請求項18に記載の三次元造形装置。
【請求項22】
前記第2の中空部は、途中に前記第1の膨隆部とは異なる第2の膨隆部を有し、
前記第2の中空部の縦断面形状は、前記第2の膨隆部を含んで流線形状を呈していることを特徴とする請求項19乃至請求項21の何れかに記載の三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから流体物を突出する流体物吐出装置、及びその流体物吐出装置から吐出された流体物を積層して、三次元造形物を製造する三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体物を突出しながら積層して、三次元造形物を製造する三次元造形装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、造形ユニット200と、ステージ300と、移動機構400と、を備え、移動機構400を駆動することによって、造形ユニット200に設けられたノズル孔69とステージ300の造形面310との相対的な位置を変化させながら、造形ユニット200のノズル孔69からステージ300の造形面310に向かって造形材料を吐出させ、かつ積層させて造形面310上に三次元造形物を製造する三次元造形装置100が記載されていると認められる(
図1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の三次元造形装置100は、ペレットや粉末等の状態の材料が収容され、ホッパーによって構成された材料供給部20と、その材料供給部20から供給された材料の少なくとも一部を溶融させて流動性を有するペースト状の造形材料にしてノズル孔69から吐出する可塑化部30と、材料供給部20と可塑化部30とを接続する供給管22と、を備える(「0012」段落及び「0013」段落、
図1等参照)。
【0006】
また、特許文献1に記載の三次元造形装置100は、材料供給部20が上部に配置され、材料供給部20の内部に収容された材料は、上部の材料供給部20から供給管22を通って、下方の可塑化部30に自動的に流れるように構成されている(
図1等参照)。
【0007】
また、特許文献1の記載の三次元造形装置100は、三次元造形装置100を構成する材料供給部20と、可塑化部30とは、相互に近い距離に配置され、供給管22もそれらの配置に伴って短いものと認められる(
図1等参照)。
【0008】
一方、最近では、大型の三次元造形物を製造する場合も多く、その場合には、材料供給部の容量も大きくする必要がある。また、大型の三次元造形物を製造する場合には、特許文献1に記載の三次元造形装置100のように、材料供給部を三次元造形装置の上部ではなく、地面等の低位置に配置する方が安全である。
【0009】
そして、材料供給部を三次元造形装置の上部ではなく、地面等の低位置に配置する場合には、材料供給部から可塑化部までの距離も長くなり、供給管の長さも長くなるとともに、材料を材料供給部から可塑化部まで送出する動力も必要となる。
【0010】
また、材料供給部(以下、「供給機構」と記す)から可塑化部(以下、「吐出機構」と記す)までの距離が長くなったことに伴い、新たに発生する問題、例えば、吐出機構において、連続して安定した材料(以下、「流体物」と記す)の吐出を達成するための問題についても対応することが望まれる。
【0011】
本発明は、従来技術が有する上述した問題に対応してなされたものであり、大型の三次元造形物を製造し、供給機構が吐出機構から遠方にある場合においても、吐出機構に流体物を適切に供給することができ、延いては、流体物を吐出機構から適切に吐出することができる流体物吐出装置及びその流体物吐出装置を備えた三次元造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の態様は、流体物を供給する供給機構と、一端を前記供給機構に接続された長尺の管状体と、その長尺の管状体の他端に接続され、前記供給機構から供給された前記流体物を開口部から外部へ吐出する吐出機構と、を備えた流体物吐出装置において、前記供給機構側の前記一端近傍に配置され、前記流体物の圧力を検出する第1の検出部と、前記吐出機構側の前記他端近傍に配置され、前記流体物の圧力を検出する第2の検出部と、を備え、前記供給機構の前記流体物の供給量は、前記吐出機構によって前記開口部から前記外部へ吐出される前記流体物の吐出量と、前記第1の検出部による検出値と、前記第2の検出部による検出値と、に基づいて決定されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の流体物吐出装置において、前記供給機構からの前記流体物の供給量は、前記吐出機構によって前記開口部から前記外部へ吐出される前記流体物の吐出量と、前記第1の検出部が第1の時間間隔で検出した検出値と、前記第2の検出部が前記第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔で検出した検出値と、に基づいて決定されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第3の態様は、第1の態様の流体物吐出装置において、前記供給機構からの前記流体物の供給量は、前記吐出機構によって前記開口部から前記外部へ吐出される前記流体物の吐出量と、第1の時間に前記第1の検出部で検出された検出値と、前記第1の時間から所定時間経過後の第2の時間に前記第2の検出部で検出された検出値と、に基づいて決定されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第4の態様は、第1の態様の流体物吐出装置と、前記吐出機構を先端に接続した多関節ロボットと、を備え、前記吐出機構から前記流体物を吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって、吐出する前記流体物の高さを調整可能であり、前記吐出機構からの前記流体物の吐出量は、前記流体物の高さに応じて調整可能であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第5の態様は、第2の態様の流体物吐出装置と、前記吐出機構を先端に接続した多関節ロボットと、を備え、前記吐出機構から前記流体物を吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって、吐出する前記流体物の高さを調整可能であり、前記吐出機構からの前記流体物の吐出量は、前記流体物の高さに応じて調整可能であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第6の態様は、第3の態様の流体物吐出装置と、前記吐出機構を先端に接続した多関節ロボットと、を備え、前記吐出機構から前記流体物を吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって、吐出する前記流体物の高さを調整可能であり、前記吐出機構からの前記流体物の吐出量は、前記流体物の高さに応じて調整可能であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第7の態様は、第4の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、その先端を吐出する前記流体物の高さよりも短い高さに設定して、前記流体物を吐出可能であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第8の態様は、第5の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、その先端を吐出する前記流体物の高さよりも短い高さに設定して、前記流体物を吐出可能であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第9の態様は、第6の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、その先端を吐出する前記流体物の高さよりも短い高さに設定して、前記流体物を吐出可能であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第10の態様は、第4の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第11の態様は、第5の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第12の態様は、第6の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の第13の態様は、第7の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の第14の態様は、第8の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の第15の態様は、第9の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって前記流体物を吐出可能であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の第16の態様は、第7の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記流体物が通過する第1の中空部を有する中空筐体と、その中空筐体の先端に接続され、開口部と、その第1の中空部に連通する第2の中空部と、を有するノズルと、を備え、前記ノズルの前記開口部から外部に前記流体物を吐出するものであり、前記第1の中空部及び/または前記第2の中空部を横切る流体物規制部を備えたことを特徴とする。
【0028】
また、本発明の第17の態様は、第8の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記流体物が通過する第1の中空部を有する中空筐体と、その中空筐体の先端に接続され、開口部と、その第1の中空部に連通する第2の中空部と、を有するノズルと、を備え、前記ノズルの前記開口部から外部に前記流体物を吐出するものであり、前記第1の中空部及び/または前記第2の中空部を横切る流体物規制部を備えたことを特徴とする。
【0029】
また、本発明の第18の態様は、第9の態様の三次元造形装置において、前記吐出機構は、前記流体物が通過する第1の中空部を有する中空筐体と、その中空筐体の先端に接続され、開口部と、その第1の中空部に連通する第2の中空部と、を有するノズルと、を備え、前記ノズルの前記開口部から外部に前記流体物を吐出するものであり、前記第1の中空部及び/または前記第2の中空部を横切る流体物規制部を備えたことを特徴とする。
【0030】
また、本発明の第19の態様は、第16の態様の三次元造形装置において、前記第2の中空部は、途中に第1の膨隆部を有していることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の第20の態様は、第17の態様の三次元造形装置において、前記第2の中空部は、途中に第1の膨隆部を有していることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の第21の態様は、第18の態様の三次元造形装置において、前記第2の中空部は、途中に第1の膨隆部を有していることを特徴とする。
【0033】
さらに、本発明の第22の態様は、第19の態様乃至第21の態様の何れかの三次元造形装置において、前記第2の中空部は、途中に前記第1の膨隆部とは異なる第2の膨隆部を有し、前記第2の中空部の縦断面形状は、前記第2の膨隆部を含んで流線形状を呈していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明の第1の態様によれば、流体物を供給する供給機構と、一端を供給機構に接続された長尺の管状体と、その長尺の管状体の他端に接続され、供給機構から供給された流体物を開口部から外部へ吐出する吐出機構と、を備えた流体物吐出装置において、供給機構側の一端近傍に配置され、流体物の圧力を検出する第1の検出部と、吐出機構側の他端近傍に配置され、流体物の圧力を検出する第2の検出部と、を備え、供給機構の流体物の供給量は、吐出機構によって開口部から外部へ吐出される流体物の吐出量と、第1の検出部による検出値と、第2の検出部による検出値と、に基づいて決定されるので、供給機構が吐出機構から遠方にある場合においても、吐出機構に流体物を適切に供給することができ、延いては、流体物を吐出機構から適切に吐出することができる。
【0035】
また、本発明の第2の態様によれば、第1の態様の流体物吐出装置において、供給機構からの流体物の供給量は、吐出機構によって開口部から外部へ吐出される流体物の吐出量と、第1の検出部が第1の時間間隔で検出した検出値と、第2の検出部が第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔で検出した検出値と、に基づいて決定されるので、供給機構が吐出機構から遠方にある場合においても、吐出機構に流体物をさらに適切に供給することができ、延いては、流体物を吐出機構からさらに適切に吐出することができる。
【0036】
また、本発明の第3の態様によれば、第1の態様の流体物吐出装置において、供給機構からの流体物の供給量は、吐出機構によって開口部から外部へ吐出される流体物の吐出量と、第1の時間に第1の検出部で検出された検出値と、第1の時間から所定時間経過後の第2の時間に第2の検出部で検出された検出値と、に基づいて決定されるので、供給機構が吐出機構から遠方にある場合においても、吐出機構に流体物をさらに適切に供給することができ、延いては、流体物を吐出機構からさらに適切に吐出することができる。
【0037】
また、本発明の第4の態様によれば、第1の態様の流体物吐出装置と、吐出機構を先端に接続した多関節ロボットと、を備え、吐出機構から流体物を吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、吐出機構は、多関節ロボットによって、吐出する流体物の高さを調整可能であり、吐出機構からの流体物の吐出量は、流体物の高さに応じて調整可能であるので、第1の態様の流体物吐出装置の効果に加え、流体物のムラを防止した三次元造形物を製造することができる。
【0038】
また、本発明の第5の態様によれば、第2の態様の流体物吐出装置と、吐出機構を先端に接続した多関節ロボットと、を備え、吐出機構から流体物を吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、吐出機構は、多関節ロボットによって、吐出する流体物の高さを調整可能であり、吐出機構からの流体物の吐出量は、流体物の高さに応じて調整可能であるので、第2の態様の流体物吐出装置の効果に加え、流体物のムラを防止した三次元造形物を製造することができる。
【0039】
また、本発明の第6の態様によれば、第3の態様の流体物吐出装置と、吐出機構を先端に接続した多関節ロボットと、を備え、吐出機構から流体物を吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置において、吐出機構は、多関節ロボットによって、吐出する流体物の高さを調整可能であり、吐出機構からの流体物の吐出量は、流体物の高さに応じて調整可能であるので、第3の態様の流体物吐出装置の効果に加え、流体物のムラを防止した三次元造形物を製造することができる。
【0040】
また、本発明の第7の態様によれば、第4の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、その先端を吐出する流体物の高さよりも短い高さに設定して、流体物を吐出可能であるので、第4の態様の流体物吐出装置の効果に加え、流体物を塗布する面に押し付けるようにてして吐出することにより、三次元造形物を多層に製造する場合に、各層間の密着度合いを増大させることができ、延いては、製造する三次元造形物の剛性を増大させることができる。
【0041】
また、本発明の第8の態様によれば、第5の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、その先端を吐出する流体物の高さよりも短い高さに設定して、流体物を吐出可能であるので、第5の態様の流体物吐出装置の効果に加え、流体物を塗布する面に押し付けるようにてして吐出することにより、三次元造形物を多層に製造する場合に、各層間の密着度合いを増大させることができ、延いては、製造する三次元造形物の剛性を増大させることができる。
【0042】
また、本発明の第9の態様によれば、第6の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、その先端を吐出する流体物の高さよりも短い高さに設定して、流体物を吐出可能であるので、第6の態様の流体物吐出装置の効果に加え、流体物を塗布する面に押し付けるようにてして吐出することにより、三次元造形物を多層に製造する場合に、各層間の密着度合いを増大させることができ、延いては、製造する三次元造形物の剛性を増大させることができる。
【0043】
また、本発明の第10の態様によれば、第4の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって流体物を吐出可能であるので、第4の態様の三次元造形装置の効果に加え、特に、流体物の高さを減少させる場合に流体物を塗布位置にスムーズに塗布することができる。
【0044】
また、本発明の第11の態様によれば、第5の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって流体物を吐出可能であるので、第5の態様の三次元造形装置の効果に加え、特に、流体物の高さを減少させる場合に流体物を塗布位置にスムーズに塗布することができる。
【0045】
また、本発明の第12の態様によれば、第6の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって流体物を吐出可能であるので、第6の態様の三次元造形装置の効果に加え、特に、流体物の高さを減少させる場合に流体物を塗布位置にスムーズに塗布することができる。
【0046】
また、本発明の第13の態様によれば、第7の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって流体物を吐出可能であるので、第7の態様の三次元造形装置の効果に加え、特に、流体物の高さを減少させる場合に流体物を塗布位置にスムーズに塗布することができる。
【0047】
また、本発明の第14の態様によれば、第8の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって流体物を吐出可能であるので、第8の態様の三次元造形装置の効果に加え、特に、流体物の高さを減少させる場合に流体物を塗布位置にスムーズに塗布することができる。
【0048】
また、本発明の第15の態様によれば、第9の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、多関節ロボットによって傾斜された状態で下方に向かって流体物を吐出可能であるので、第9の態様の三次元造形装置の効果に加え、特に、流体物の高さを減少させる場合に流体物を塗布位置にスムーズに塗布することができる。
【0049】
また、本発明の第16の態様によれば、第7の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、流体物が通過する第1の中空部を有する中空筐体と、その中空筐体の先端に接続され、開口部と、その第1の中空部に連通する第2の中空部と、を有するノズルと、を備え、ノズルの開口部から外部に流体物を吐出するものであり、第1の中空部及び/または第2の中空部を横切る流体物規制部を備えているので、第7の態様の三次元造形装置の効果に加え、装置の停止時に流体物がノズルから漏れ出すことを防止し、延いては、三次元造形物を正確に製造することができる。
【0050】
また、本発明の第17の態様によれば、第8の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、流体物が通過する第1の中空部を有する中空筐体と、その中空筐体の先端に接続され、開口部と、その第1の中空部に連通する第2の中空部と、を有するノズルと、を備え、ノズルの開口部から外部に流体物を吐出するものであり、第1の中空部及び/または第2の中空部を横切る流体物規制部を備えているので、第8の態様の三次元造形装置の効果に加え、装置の停止時に流体物がノズルから漏れ出すことを防止し、延いては、三次元造形物を正確に製造することができる。
【0051】
また、本発明の第18の態様によれば、第9の態様の三次元造形装置において、吐出機構は、流体物が通過する第1の中空部を有する中空筐体と、その中空筐体の先端に接続され、開口部と、その第1の中空部に連通する第2の中空部と、を有するノズルと、を備え、ノズルの開口部から外部に流体物を吐出するものであり、第1の中空部及び/または第2の中空部を横切る流体物規制部を備えているので、第9の態様の三次元造形装置の効果に加え、装置の停止時に流体物がノズルから漏れ出すことを防止し、延いては、三次元造形物を正確に製造することができる。
【0052】
また、本発明の第19の態様によれば、第16の態様の三次元造形装置において、第2の中空部は、途中に第1の膨隆部を有しているので、第16の態様の三次元造形装置の効果に加え、ノズルからの流動体の吐出をスムーズに行うことができる。
【0053】
また、本発明の第20の態様によれば、第17の態様の三次元造形装置において、第2の中空部は、途中に第1の膨隆部を有しているので、第17の態様の三次元造形装置の効果に加え、ノズルからの流動体の吐出をスムーズに行うことができる。
【0054】
また、本発明の第21の態様によれば、第18の態様の三次元造形装置において、第2の中空部は、途中に第1の膨隆部を有しているので、第18の態様の三次元造形装置の効果に加え、ノズルからの流動体の吐出をスムーズに行うことができる。
【0055】
さらに、本発明の第22の態様によれば、第19の態様乃至第21の態様の何れかの三次元造形装置において、第2の中空部は、途中に第1の膨隆部とは異なる第2の膨隆部を有し、第2の中空部の縦断面形状は、第2の膨隆部を含んで流線形状を呈しているので、第19の態様乃至第21の態様の何れかの三次元造形装置の効果に加え、ノズルからの流体物の吐出をさらにスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】本発明の第1実施形態の三次元造形装置の全体斜視図である。
【
図2】第1実施形態の三次元造形装置の全体平面図である。
【
図3】第1実施形態の三次元造形装置の全体正面図である。
【
図4】第1実施形態の三次元造形装置を構成するロボットスライド機構7によって、多関節ロボット3が
図2の状態から+Y方向に移動した状態を示した図である。
【
図5】第1実施形態の三次元造形装置を構成するポンプの正面図である。
【
図6】第1実施形態の三次元造形装置を構成するポンプの一部を切り欠いた正面図である。
【
図7】第1実施形態の三次元造形装置を構成する流体吐出ヘッドの右側面図である。
【
図8】第1実施形態の三次元造形装置を構成する流体吐出ヘッドの一部を切り欠いた右側面図である。
【
図9】第1実施形態の三次元造形装置を構成するノズルの斜視図である。
【
図10】第1実施形態の三次元造形装置を構成するノズルの平面図である。
【
図11】
図10において、X-X部を切り欠いた斜視図である。
【
図12】第1実施形態の三次元造形装置を構成するノズルの縦断面図である。
【
図13】第2実施形態のノズルの
図11と同様の斜視図である。
【
図15】第3実施形態のノズルの
図11と同様の斜視図である。
【
図16】第4実施形態のノズルの
図11と同様の斜視図である。
【
図17】第1実施形態の三次元造形装置のブロック図である。
【
図18】第1実施形態の三次元造形装置のメインコントローラのブロック図である。
【
図19】第1実施形態の三次元造形装置における三次元造形プログラムのフローチャートである。
【
図20】第1実施形態の三次元造形装置におけるN層塗布プログラムのフローチャートである。
【
図21】第1実施形態の三次元造形装置の塗布開示時における塗布状態を示した説明図である。
【
図22】第1実施形態の三次元造形装置の通常時における塗布状態を示した説明図である。
【
図23】第1実施形態の三次元造形装置におけるノズル角度と塗布幅との関係を説明する第1説明図である。
【
図24】第1実施形態の三次元造形装置におけるノズル角度と塗布幅との関係を説明する第2説明図である。
【
図25】第1実施形態の三次元造形装置におけるノズル角度と塗布幅との関係を説明する第3説明図である。
【
図26】第1実施形態の三次元造形装置におけるノズル角度と塗布幅との関係を説明する第4説明図である。
【
図27】第1実施形態の三次元造形装置の塗布形態を説明する第1説明図である。
【
図28】第1実施形態の三次元造形装置の塗布形態を説明する第2説明図である。
【
図29】第1実施形態の三次元造形装置の薄膜塗布時における塗布状態を示した第1説明図である。
【
図30】第1実施形態の三次元造形装置の薄膜塗布時における塗布状態を示した第2説明図である。
【
図31】第1実施形態の三次元造形装置における第1圧力センサーの検出タイミングと、第2圧力センサーの検出タイミングとを説明した説明図である。
【
図32】第1実施形態の三次元造形装置における第1吐出制御プログラムのフローチャートである。
【
図33】第1実施形態の三次元造形装置における第2吐出制御プログラムのフローチャートである。
【
図34】第1実施形態の三次元造形装置における指示値算出プログラムのフローチャートである。
【
図35】第1実施形態の三次元造形装置におけるメンテナンス処理プログラムのフローチャートである。
【
図36】第1実施形態の三次元造形装置のメンテナンス時の分解前の状態を示した正面図である。
【
図37】第1実施形態の三次元造形装置のメンテナンス時の分解前の状態を示した底面図である。
【
図38】第1実施形態の三次元造形装置のメンテナンス時の分解後の状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0058】
なお、本実施形態の三次元造形装置は、三次元造形物の例として、屋外に設置するオブジェPを製造するものとして説明するが、本発明の三次元造形装置は、オブジェに限定されるものではなく、立体化された三次元造形物であれば何れの物であっても製造可能である。
【0059】
(実施形態)
先ず、本実施形態の三次元造形装置の構成について説明する。
【0060】
図1は、本発明の第1実施形態の三次元造形装置の全体斜視図であり、
図2は、その三次元造形装置の全体平面図であり、
図3は、その三次元造形装置の全体正面図である。
【0061】
図1乃至
図3に示すように、本実施形態の三次元造形装置1は、屋外に設置する、第1層P1、第2層P2、第3層P3、第4層P4・・・第N層PN(図示せず)のN層(Nは自然数)からなる立体のオブジェPを製造するものであり、多関節ロボット3と、その多関節ロボット3を+Y方向及び-Y方向に移動させるためのロボットスライド機構7と、モルタルM(本発明の「流体物」に相当)を後述する流体吐出ヘッド10に供給するためのポンプ5(本発明の「供給機構」に相当)と、多関節ロボット3の先端に接続され、モルタルMを外部へ吐出するための流体吐出ヘッド10(本発明の「吐出機構」に相当)と、その流体吐出ヘッド10を多関節ロボット3の先端に接続するための支持部21と、から構成されている。
【0062】
なお、ポンプ5、流体吐出ヘッド10及び後述する長尺の輸送管61(本発明の「管状体」に相当)が本発明の「流体物吐出装置」を構成する。
【0063】
また、
図1乃至
図3には、本実施形態の三次元造形装置1には含まれないものの、セメント、砂及び水を混錬してモルタルMを製造するためのミキサー9が記載されている。
【0064】
また、本実施形態に使用するモルタルMは、流体吐出ヘッド10から吐出前は流動性を有し、流体吐出ヘッド10から吐出後は硬化する材料からなり、例えば、セメント、砂及び水から構成されている。
【0065】
多関節ロボット3は、制御盤20内に配置されたロボットコントローラ4(
図17参照)からの指令によって動作する一般の7軸の多関節ロボットであり、位置及び角度を自在に変更して、先端に接続された流体吐出ヘッド10を+X方向及び-X方向、+Y方向及び-Y方向、+Z方向及び-Z方向、並びにそれらの方向を組み合わせた三次元のあらゆる方向に移動させるものである。
【0066】
多関節ロボット3は、第1の基台31と、その第1の基台31に対して旋回する第2の基台33と、その第2の基台33に対して前後に回動する下腕部(下アーム部)35と、その下腕部35に対して上下に回動する中下腕部(中下アーム部)37と、その中下腕部37に対して上下に回動する中上腕部(中上アーム部)39と、その中上腕部39に対して上下に回動する上腕部(上アーム部)41と、その上腕部41に対して同軸に回転する回転部43と、を備える。
【0067】
多関節ロボット3は、ケーブル77によって制御盤20内のロボットコントローラ4(
図17参照)に電気的に接続されており、ロボットコントローラ4は、同じく制御盤20内に配置されたメインコントーラ2(
図17参照)に電気的に接続されている。
【0068】
また、ロボットスライド機構7は、多関節ロボット3を載置する移動台73と、移動台73が移動可能に配置された長尺の移動レール75と、移動台73に配置され、多関節ロボット3を移動レール75に沿って+Y方向及び-Y方向に移動させるロボットスライドモータ79と、移動レール75の前表面を覆う7枚の移動レールカバー71(71a,71b,71c,71d,71e,71f,71g)と、を備える。
【0069】
また、ロボットスライド機構7は、ロボットスライドモータ79のモータ軸に嵌合されたモータギア(ピニオン・図示せず)が移動レール75の内部に形成されたラック(図示せず)に噛み合っており、多関節ロボット3は、ロボットスライドモータ79のモータギアが回転することにより、移動レール75のラック上を+Y方向及び-Y方向に移動するように構成されている。
【0070】
図4は、第1実施形態の三次元造形装置を構成するロボットスライド機構7によって、多関節ロボット3が
図2の状態から+Y方向に移動した状態を示した図である。
【0071】
なお、本実施形態の三次元造形装置1は、多関節ロボット3がカバー71aからカバー71gまでの移動レール75上を直線方向の+Y方向及び-Y方向に移動するように構成されているが、ロボットスライド機構7は、三次元造形装置の仕様によって種々変更することが可能であり、移動レール45の長さを変更することは当然として、移動レール75を本実施形態のように多関節ロボット3が直線方向に移動するように配置することに限らず、多関節ロボット3が曲線方向に移動するように配置することも可能であり、また、多関節ロボット3が直線方向及び曲線方向に移動するように配置することも可能である。
【0072】
図5は、第1実施形態の三次元造形装置を構成するポンプの正面図であり、
図6は、ポンプの一部を切り欠いた正面図である。
【0073】
図1乃至
図6に示すように、ポンプ5は、ポンプ本体51と、そのポンプ本体51の上面を格子状の網で覆い、ミキサー9で混錬されたモルタルMを投入するためのモルタル投入口59と、そのモルタル投入口59から投入されたモルタルMを下流側の長尺の輸送管61に送出するためのスクリュー管55と、そのスクリュー管55を駆動するためのポンプ側ローター駆動モータ53と、スクリュー管55と輸送管61との接続位置に配置され、モルタルMの輸送管61内での圧力を検出するための第1圧力センサー57(本発明の「第1の検出部」に相当)と、第1ポンプ本体51に取り付けられた制御盤20と、その制御盤20に備えられた操作パネル8と、を備える。
【0074】
また、スクリュー管55は、スクリュー管55の外管を構成する第1ステータ55aと、その第1ステータ55aの内部に回転可能に配置され、ポンプ側ローター駆動モータ53の回転によってモルタルMを輸送管61側へ送出するために螺旋状の突起が形成された第1ローター55bと、を備える。
【0075】
図7は、第1実施形態の三次元造形装置を構成する流体吐出ヘッドの右側面図であり、
図8は、流体吐出ヘッドの一部を切り欠いた右側面図である。
【0076】
図1乃至
図3、
図7及び
図8に示すように、流体吐出ヘッド10は、輸送管61から輸送されたモルタルMを流体吐出ヘッド10へ送出するための供給口29と、その供給口29へ送出されたモルタルMを下流側に送出するための流体吐出ヘッド本体11(本発明の「中空筐体」に相当)と、その流体吐出ヘッド本体11を駆動するためのヘッド側ローター駆動モータ27と、流体吐出ヘッド本体11の先端に回転可能に接続されたノズル部13(本発明の「ノズル」に相当)と、そのノズル部13を回転させるためのノズル回転モータ17と、流体吐出ヘッド11と輸送管61との接続位置に配置され、モルタルMの輸送管61内での圧力を検出するための第2圧力センサー63(本発明の「第2の検出部」に相当)と、流体吐出ヘッド本体11及びヘッド側ローター駆動モータ27を覆う流体吐出ヘッドカバー80(点線で図示)と、を備える。
【0077】
また、流体吐出ヘッド本体11は、第1の中空部11dを有し、流体吐出ヘッド本体11の外管を構成する第2ステータ11aと、その第2ステータ11aの内部に回転可能に配置され、ヘッド側ローター駆動モータ27の回転によってモルタルMをノズル部13へ送出し、かつ後述するノズル部13の開口部13bから吐出させるための第2ローター11bと、を備える。
【0078】
また、ノズル部13は、その外周に後述するノズルギア部15を備え、ノズル回転モータ17が回転することによって、ノズル回転モータ17のモータ軸に挿入されたモータギア部19が回転し、そのモータギア部19に噛み合うノズルギア部15が回転し、結果的にノズル部13が回転するように構成されている。
【0079】
なお、ノズル回転モータ17、モータギア部19及びノズルギア部15が本発明の「ノズル回転機構」を構成する。
【0080】
また、本実施形態の流体吐出ヘッド本体11は、全体として回転容積式1軸偏心ねじポンプを構成しており、雌ねじに相当する第2ステータ11aと、雄ねじに相当する第2ローター11bとによって形成された密閉空間であるキャビティー11cの前方への移動によって、モルタルMを前方へ輸送し、かつノズル部13の開口部13bから吐出するように構成されている。
【0081】
さらに詳細に説明すると、
図8に示すように、雌ねじに相当する第2ステータ11aは、外形が円筒形状であって、内面断面が畝状、かつ内面が全体として螺旋状に延びた形状を呈しており、雄ねじに相当する第2ローター11bは、第2ステータ11aの内面に接触するように螺旋状に延びた形状を呈しており、第2ローター11bが第2ステータ11aに対して回転すると、モルタルMを含むキャビティー11cを前方へ移動させ、モルタルMをノズル部13の開口部13bから吐出させるようになっている。
【0082】
図9は、第1実施形態の三次元造形装置を構成するノズル部の斜視図であり、
図10は、そのノズル部の平面図であり、
図11は、
図10において、X-X部を切り欠いた斜視図であり、
図12は、そのノズル部の縦断面図である。
【0083】
図9乃至
図12に示すように、ノズル部13は、ノズル本体部13aと、そのノズル本体部13aの外周に形成されたノズルギア部15と、ノズル本体部13aの先端に接続されたノズル先端部13eと、ノズル先端部13eの先端に形成された開口部13bと、から構成されている。
【0084】
なお、本実施形態の開口部13bは、平面視において、長辺がV1、短辺がH1(V1>H1)の略長方形を呈しており、したがって、開口部13bから吐出されるモルタルMの断面は、その略長方形を呈することとなる。
【0085】
ノズル本体部13aは、中空円筒形状であって、その内腔13d(本発明の「第2の中空部」に相当)は先端に向かって先細り円筒形状を呈しており、ノズル先端部13eは、中空略円錐形状であって、その内腔13f(本発明の「第2の中空部」に相当)は先端に向かって先細り形状を呈しているが、ノズル本体部13aとノズル先端部13eとの境界部において、ノズル先端部13eの基端の内径D2は、ノズル本体部13aの先端の内径D1よりも大きくなるように設定されている(内径D2の部分は、本発明の「第1の膨隆部」に相当する)。
【0086】
ノズル先端部13eの基端の内径D2を、ノズル本体部13aの先端の内径D1よりも大きくすることによって、モルタルMがノズル本体部13aからノズル先端部13eに流れ、開口部13bから吐出する際に、開口部13bでのモルタルMの圧力を分散させることができ、延いては、モルタルMをノズル先端部13eの開口部13bから連続してスムーズに吐出させることができる。
【0087】
また、ノズル部13は、ノズル先端部13eの内腔13fを、開口部13bの長方形の長辺に沿って平行に横切る断面円形の規制バー13c(本発明の「流体物規制部」に相当)を備えており、この規制バー13cによれば、モルタルMが三次元造形装置1の停止時にノズル先端部13eの開口部13bから漏れ出すことを防止することができる。
【0088】
次に、本実施形態の三次元造形装置1に使用されるノズル部の変形例について説明する。
【0089】
図13は、第2実施形態のノズル部の
図11と同様の斜視図であり、
図14は、第2実施形態のノズル部の縦断面図である。
【0090】
図13及び
図14に示すように、ノズル部23(本発明の「ノズル」に相当)は、ノズル本体部23aと、そのノズル本体部23aの外周に形成されたノズルギア部25と、ノズル本体部23aの先端に接続されたノズル先端部23eと、ノズル先端部23eの先端に形成された開口部23bと、から構成されている。
【0091】
なお、本実施形態の開口部23bも、開口部13bと同様に、平面視において、長辺がV1、短辺がH1(V1>H1)の略長方形を呈しており、したがって、開口部23bから吐出されるモルタルMの断面は、その略長方形を呈することとなる。
【0092】
ノズル本体部23aは、中空円筒形状であって、その内腔23d(本発明の「第2の中空部」に相当)は先端に向かって先細り円筒形状(D5>D3)であることに加え、その途中に内径D6(D6>D5>D3)の膨隆部23g(本発明の「第2の膨隆部」に相当する)を備えており、ノズル先端部23eは、中空略円錐形状であって、その内腔23f(本発明の「第2の中空部」に相当)は先端に向かって先細り形状を呈しているが、ノズル本体部23aとノズル先端部23eとの境界部において、ノズル先端部23eの基端の内径D4は、ノズル本体部23aの先端の内径D3よりも大きくなるように設定されている(内径D4の部分は、本発明の「第1の膨隆部」に相当する)。
【0093】
また、内腔23dの縦断面は、流線形状を呈している。
【0094】
膨隆部23gを設けることによって、モルタルMがノズル本体部23aからノズル先端部23eに流れ、開口部23bから吐出する際に、開口部23bでのモルタルMの圧力を膨隆部23gによって分散させることができ、延いては、モルタルMをノズル先端部23eの開口部23bから連続してスムーズに吐出させることができる。
【0095】
また、内腔23dの縦断面を流線形状に形成することによって、開口部23bでのモルタルMの圧力を流線形状によって徐々に分散させることができ、延いては、モルタルMをノズル先端部23eの開口部23bから連続してさらにスムーズに吐出させることができる。
【0096】
また、ノズル先端部23eの基端の内径D4を、ノズル本体部23aの先端の内径D3よりも大きくすることによって、モルタルMが開口部23bから吐出する際に、開口部23bでのモルタルMの圧力をさらに分散させることができ、延いては、モルタルMをノズル先端部23eの開口部23bから連続してさらにスムーズに吐出させることができる。
【0097】
また、ノズル部23は、ノズル先端部23eの内腔23fを、開口部23bの長方形の長辺に沿って平行に横切る断面円形の規制バー23c(本発明の「流体物規制部」に相当)を備えており、この規制バー23cによれば、モルタルMが三次元造形装置1の停止時にノズル先端部23eの開口部23bから漏れ出すことを防止することができる。
【0098】
図15は、第3実施形態のノズル部の
図11と同様の斜視図である。
【0099】
図15に示すように、ノズル部83(本発明の「ノズル」に相当)は、ノズル本体部83aと、そのノズル本体部83aの外周に形成されたノズルギア部85と、ノズル本体部83aの先端に接続されたノズル先端部83eと、ノズル先端部83eの先端に形成された開口部83bと、から構成されている。
【0100】
なお、本実施形態の開口部83bも、開口部13bと同様に、平面視において、長辺がV1、短辺がH1(V1>H1)の略長方形を呈しており、したがって、開口部83bから吐出されるモルタルMの断面は、その略長方形を呈することとなる。
【0101】
ノズル本体部83aは、中空円筒形状であって、その内腔83d(本発明の「第2の中空部」に相当)は先端に向かって先細り円筒形状であり、ノズル先端部83eは、中空略円錐形状であって、その内腔83f(本発明の「第2の中空部」に相当)は先端に向かって先細り形状を呈しているが、ノズル本体部83aとノズル先端部83eとの境界部において、ノズル先端部83eの基端の内径は、ノズル本体部83aの先端の内径よりも大きくなるように設定されている(ノズル先端部83eの基端の内径の部分は、本発明の「第1の膨隆部」に相当する)。
【0102】
ノズル先端部83eの基端の内径を、ノズル本体部83aの先端の内径よりも大きくすることによって、モルタルMが開口部83bから吐出する際に、開口部83bでのモルタルMの圧力を分散させることができ、延いては、モルタルMをノズル先端部83eの開口部83bから連続してスムーズに吐出させることができる。
【0103】
また、ノズル部83は、ノズル先端部83eの内腔83fを、開口部83bの長方形の長辺に沿って平行に横切る断面円形の規制バー83c(本発明の「流体物規制部」に相当)と、ノズル本体部83aの内腔83dを横切る断面円形の規制バー83g(本発明の「流体物規制部」に相当)と、の2つの規制バーを備えており、これらの規制バー83c及び83gによれば、モルタルMが三次元造形装置1の停止時にノズル先端部83eの開口部83bから漏れ出すことをさらに防止することができる。
【0104】
なお、上述のノズル部13、ノズル部23、及び後述するノズル部93においても、ノズル先端部の内腔を、開口部の長方形の長辺に沿って平行に横切る断面円形の規制バー(本発明の「流体物規制部」に相当)と、ノズル本体部の内腔を横切る断面円形の規制バー(本発明の「流体物規制部」に相当)と、の2つの規制バーを備えるように構成しても良く、場合によっては、3つ以上の規制バーを備えるように構成しても良い。
【0105】
ノズル部に複数の規制バーを備えることにより、これらの規制バーによってモルタルMが三次元造形装置1の停止時にノズル先端部の開口部から漏れ出すことをさらに防止することができる。
【0106】
図16は、第4実施形態のノズル部の
図11と同様の斜視図である。
【0107】
図16に示すように、ノズル部93(本発明の「ノズル」に相当)は、ノズル本体部93aと、そのノズル本体部93aの外周に形成されたノズルギア部95と、ノズル本体部93aの先端に接続されたノズル先端部93eと、ノズル先端部93eの先端に形成された開口部93bと、から構成されている。
【0108】
なお、本実施形態の開口部93bも、開口部13bと同様に、平面視において、長辺がV1、短辺がH1(V1>H1)の略長方形を呈しており、したがって、開口部93bから吐出されるモルタルMの断面は、その略長方形を呈することとなる。
【0109】
ノズル本体部93aは、中空円筒形状であって、その内腔93d(本発明の「第2の中空部」に相当)は先端に向かって先細り円筒形状であり、ノズル先端部93eは、中空略円錐形状であって、その内腔93f(本発明の「第2の中空部」に相当)は先端に向かって先細り形状を呈しているが、ノズル本体部93aとノズル先端部93eとの境界部において、ノズル先端部93eの基端の内径は、ノズル本体部93aの先端の内径よりも大きくなるように設定されている(ノズル先端部93eの基端の内径の部分は、本発明の「第1の膨隆部」に相当する)。
【0110】
ノズル先端部93eの基端の内径を、ノズル本体部93aの先端の内径よりも大きくすることによって、モルタルMが開口部93bから吐出する際に、開口部93bでのモルタルMの圧力を分散させることができ、延いては、モルタルMをノズル先端部93eの開口部93bから連続してスムーズに吐出させることができる。
【0111】
また、ノズル部93は、ノズル本体部93aの内腔93dを、開口部93bの長方形の短辺に沿って平行に横切る断面円形の規制バー93c(本発明の「流体物規制部」に相当)を備えており、この規制バー93cによれば、モルタルMが三次元造形装置1の停止時にノズル先端部93eの開口部93bから漏れ出すことを防止することができる。
【0112】
なお、開口部の形状が平面視長方形の場合には、開口部の長方形の長辺に沿って平行に規制バーを設ける方が、開口部の長方形の短辺に沿って平行に規制バーを設けるよりも、モルタルMの開口部から漏れをより効果的に防止することができる。
【0113】
また、上述の実施形態においては、規制バーをノズル部の内腔を横切るように設けるものとして説明してきたが、ノズル部の内腔を横切るのではなく、第2ローター11bの動作に支障がない位置、例えば、第2ローター11bの下流部において、流出吐出ヘッド本体11の第2ステータ11aに第1の中空部11dを横切るように規制バーを設けても良い。
【0114】
第2ステータ11aに第1の中空部11dを横切るように規制バーを設けた場合においても、三次元造形装置1の停止時にノズルの開口部からモルタルMが漏れ出すことを防止することができる。
【0115】
但し、ノズルが回転することを考慮すれば、開口部の形状の関係から、ノズル部の内腔を横切るように規制バーを設けた方が、三次元造形装置1の停止時にモルタルMがノズルの開口部から漏れ出すことをより効果的に防止することができる。
【0116】
さらに、ノズル部の内腔及び第2ステータ11bの第1の中空部11dを横切るように規制バーを複数設けた場合においても、三次元造形装置1の停止時にモルタルMがノズルの開口部から漏れ出すことを防止することができる。
【0117】
また、上述の実施形態における規制バーは、その断面形状を円形としてきたが、特に、断面形状が円形に限定されるものではなく、モルタルMが流れる方向に沿って、湾曲形状を呈するものであれば、モルタルMの吐出時に支障なく、モルタルMの漏れを防止することができる。
【0118】
図1、
図7及び
図8に示すように、支持部21は、上述のように、流体吐出ヘッド10を多関節ロボット3の先端に接続するためのものであり、流体吐出ヘッド10の長手方向に沿って長尺状に形成されている。
【0119】
また、支持部21は、多関節ロボット3の先端の回転部43に接続され、流体吐出ヘッド10の基端側を支持し、側面視直角三角形の上支持部21aと、流体吐出ヘッド10の先端側を支持し、上支持部21aの下部に隣接して配置された、側面視直角三角形の下支持部21bと、を備える。
【0120】
また、支持部21は、流体吐出ヘッド10の長手方向に交差する方向(本実施形態では流体吐出ヘッド10の長手方向に対して直角の方向)に突出した突出部21cを備え、多関節ロボット3は、その突出部21cに接続されている。
【0121】
多関節ロボット3を突出部21cに接続することにより、流体吐出ヘッド10の態勢を狭い領域で簡単に変更することができることに加え、三次元造形装置1の動作に支障なく、三次元造形装置1の後述するメンテナンス処理をスムーズ行うことができる。
【0122】
次に、制御盤20について説明する。
図17は、第1実施形態の三次元造形装置のブロック図であり、
図18は、第1実施形態の三次元造形装置のメインコントローラのブロック図である。
【0123】
図17において、制御盤20は、外部からの電源6によって動作するものであり、第1圧力センサー57及び第2圧力センサー63に電気的に接続されたメインコントローラ2と、そのメインコントローラ2に電気的に接続され、多関節ロボット3を駆動するためのロボットコントローラ4と、メインコントローラ2に電気的に接続され、ポンプ側ローター駆動モータ53、ヘッド側ローター駆動モータ27、ノズル回転モータ17及びロボットスライドモータ79を駆動するためのドライバー回路12と、装置の使用者らの入力を受け付ける操作パネル8と、を備える。
【0124】
なお、ロボットコントローラ4は、多関節ロボット3の動作の制御に加えて、流体吐出ヘッド10がノズル部からモルタルMを吐出してオブジェPを製造する際の流体吐出ヘッド10の移動速度も検出しており、後述する指示値2を算出する際に使用されるヘッド速度をCPU14に出力する。
【0125】
また、
図18において、メインコントローラ2は、CPU(中央演算処理装置)14と、そのCPU14に入出力可能に接続されたRAM(Random Access Memory)16と、CPU14に入出力可能に接続されたROM(Read Only Memory)18とを備える。
【0126】
RAM16は、製造する三次元造形物の造形データを記憶した三次元造形データテーブル16aと、ポンプ側ローター駆動モータ53に指示する指示値を記憶したポンプ側ローター指示値テーブル16bと、ヘッド側ローター駆動モータ27に指示する指示値を記憶したヘッド側ローター指示値テーブル16cと、を備え、ROM18は、本実施形態の三次元造形装置1全体の動作を司る三次元造形プログラム18aと、本実施形態の三次元造形装置1の一層ごとの塗布動作を司るN層塗布プログラム18bと、本実施形態のポンプの動作の一部を司る第1吐出制御プログラム18c及び第2吐出制御プログラム18dと、本実施形態のポンプの動作を司る指示値算出プログラム18eと、本実施形態の三次元造形装置1をメンテナンスするためのメンテナンス処理プログラム18fと、を備える。
【0127】
次に、上述した構成の三次元造形装置1の動作について説明する。
図19は、第1実施形態の三次元造形装置における三次元造形プログラムのフローチャートであり、
図20は、第1実施形態の三次元造形装置におけるN層塗布プログラムのフローチャートである。
【0128】
図19において、先ず、三次元造形装置の使用者が装置の電源スイッチを入れた後、操作パネル8上の操作ボタンによってオブジェPを選択して、スタートボタンを押下すると、三次元造形装置1は、初期状態にセットされ(S1)、RAM16の三次元造形データテーブル16aに記憶されたオブジェPに対応する三次元造形データを取得する(S3)。
【0129】
なお、初期状態において、多関節ロボット3は、移動レール75の-Y方向側図面上右端にセットされ、流体吐出ヘッド本体11は、三次元造形物を造形する位置から上方に退避した状態、すなわち、+Z方向側図面上上端にセットされる(
図1乃至
図3の状態)。
【0130】
そして、多関節ロボット3が造形する層を示すパラメータNに「1」(「1」は、第1層P1を意味する)をセットし(S5)、流体吐出ヘッド10を傾斜させた状態でモルタルMの塗布を開始し(S7)、N層塗布プログラム18bを実行する(S9)。
【0131】
図21は、第1実施形態の三次元造形装置の塗布開示時における塗布状態を示した説明図であり、三次元造形装置1が進行方向Fへの塗布開示時に流体吐出ヘッド10を傾斜させて厚さZ1=H1(ノズル部13の開口部13b短辺の長さ)のモルタルMを塗布する様子を示している。
【0132】
このように、流体吐出ヘッド10を傾斜させて、下方に向かってモルタルMを吐出させれば、モルタルMを塗布位置にスムーズに塗布することができる。
【0133】
なお、本実施形態の三次元造形装置1においては、流体吐出ヘッド10を傾斜させた状態でモルタルMの塗布を開始するように構成したが、モルタルM等の流体物の材質の関係上問題無いのであれば、流体吐出ヘッド10を傾斜させずに、垂直状態でモルタルMの塗布を開始するように構成しても良い。
【0134】
図20に示すように、N層プログラムでは、先ず、傾斜させた状態の流体吐出ヘッド10を垂直に戻し(S31)、ロボットスライド機構7によって移動された多関節ロボット3の所定位置において、オブジェPが多関節ロボット3の可動範囲内で造形可能か否かが判断され(S33)、オブジェPが多関節ロボット3の可動範囲内で造形できないと判断された場合には(S33:Yes)、多関節ロボット3をロボットスライド機構7によって移動させた後(S35)、S37を実行し、オブジェPが多関節ロボット3の可動範囲内で造形できると判断された場合には(S33:No)、そのままS37を実行する。
【0135】
S37では、ノズル部13の開口部13bを回転させる必要があるか否かが判断され(S37)、ノズル部13の開口部13bを回転させる必要があると判断された場合には(S37:Yes)、ノズル部13の開口部13bを回転させてモルタルMの塗布幅を調整した後、流体吐出ヘッド10によってモルタルMの塗布が実行され(S41)、ノズル部13の開口部13bを回転させる必要がないと判断された場合には(S37:No)、開口部13bを回転させることなく流体吐出ヘッド10によってモルタルMの塗布が実行される(S41)。
【0136】
図22は、第1実施形態の三次元造形装置の通常時における塗布状態を示した説明図であり、流体吐出ヘッド10を垂直にした状態で進行方向Fに移動させながら、厚さZ1=H1(ノズル部13の開口部13b短辺の長さ)のモルタルMを塗布する様子を示している。
【0137】
なお、
図22は、第1層P1ではなく、第6層P6を塗布する様子を示しているが、流体吐出ヘッド10を垂直にした状態で塗布する点は、第1層P1においても同様である。
【0138】
また、本実施形態の三次元造形装置1においては、第1層P1、第2層P2、第3層P3、第4層P4・・・第N層PN(図示せず)のN層(Nは自然数)からなる立体のオブジェPを製造する際の、流体吐出ヘッド10のノズル部13から吐出されるモルタルMの厚みは、
図21及び
図22に示すように、厚さZ1=H1(ノズル部13の開口部13b短辺の長さ)であるとして説明したが、それは、説明の都合上、理解し易いようにしたためであって、具体的には、以下のように塗布するのが良い。
【0139】
すなわち、流体吐出ヘッド10のノズル部を、塗布しようとする厚さよりも若干短くなるように(Z1≒H1)、ノズル部から吐出されるモルタルMを、最下層の設置面(例えば、オブジェPが製造される地面等の基準面)、または、既に塗布された1段下層のモルタルMの表面に押し付けるように塗布する。
【0140】
流体吐出ヘッド10のノズル部を、塗布しようとする厚さよりも若干短くなるように(Z1≒H1)、ノズル部から吐出されるモルタルMを、最下層の設置面(例えば、オブジェPが製造される地面等の基準面)、または、既に塗布された1段下層のモルタルMの表面に押し付けるようにてして塗布することにより、三次元造形物を多層に製造する場合に、各層間の密着度合いを増大させることができ、延いては、製造する三次元造形物の剛性を増大させることができる。
【0141】
なお、流体吐出ヘッド10のノズル部を、塗布しようとする厚さよりも若干短くなるように、ノズル部から吐出されるモルタルMを、最下層の設置面(例えば、オブジェPが製造される地面等の基準面)、または、既に塗布された1段下層のモルタルMの表面に押し付けるようにてして塗布する点は、後述する
図29及び
図30に示すような、薄膜塗布時においても同様に行うのが良い。
【0142】
図29及び
図30に示すような、薄膜塗布時においても、ノズル部から吐出されるモルタルMを、最下層の設置面(例えば、オブジェPが製造される地面等の基準面)、または、既に塗布された1段下層のモルタルMの表面に押し付けるようにてして塗布することにより、三次元造形物を多層に製造する場合に、各層間の密着度合いを増大させることができ、延いては、製造する三次元造形物の剛性を増大させることができる。
【0143】
ここで、ノズル部13の回転角とモルタルMの塗布幅について説明する。
【0144】
図23は、第1実施形態の三次元造形装置におけるノズル角度と塗布幅との関係を説明する第1説明図であり、
図24は、ノズル角度と塗布幅との関係を説明する第2説明図であり、
図25は、ノズル角度と塗布幅との関係を説明する第3説明図であり、
図26は、ノズル角度と塗布幅との関係を説明する第4説明図である。
【0145】
上述の通り、ノズル部13は、
図9及び
図10に示すように、平面視において、長辺がV1、短辺がH1(V1>H1)の略長方形の開口部13bを備えており、
図23に示すように、開口部13bの対角線Dが流体吐出ヘッド10の進行方向Fに直交する方向に対して角度θ1(θ1は、開口部13bの長辺が流体吐出ヘッド10の進行方向Fに対して直交する角度とする)をなす場合には、流体吐出ヘッド10によるモルタルMの塗布幅Wは、(H1
2+V1
2)の平方根×cosθ1=V1となる。
【0146】
また、
図24に示すように、開口部13bの対角線Dが流体吐出ヘッド10の進行方向Fに直交する方向に対して角度θ2(cosθ2=1とする)をなす場合には、流体吐出ヘッド10によるモルタルMの塗布幅Wは、(H1
2+V1
2)の平方根となり、開口部13bの長辺V1よりも長くすることができる。
【0147】
また、
図25に示すように、開口部13bの対角線Dが流体吐出ヘッド10の進行方向Fに直交する方向に対して角度θ3(cosθ2<1とする)をなす場合には、流体吐出ヘッド10によるモルタルMの塗布幅Wは、(H1
2+V1
2)の平方根×cosθ3となり、開口部13bの長辺V1よりも短くすることができる。
【0148】
さらに、
図26に示すように、開口部13bの対角線Dが流体吐出ヘッド10の進行方向Fに直交する方向に対して角度θ4(θ4は、開口部13bの短辺が流体吐出ヘッド10の進行方向Fに対して直交する角度とする)をなす場合には、流体吐出ヘッド10によるモルタルMの塗布幅Wは、(H1
2+V1
2)の平方根×cosθ4=H1となる。
【0149】
モルタルMの塗布幅が決定されると、流体吐出ヘッド10によってモルタルMの塗布処理が実行される(S41)。具体的には、先ず、オブジェPの第1層P1の所定箇所(流体吐出ヘッド10が一筆書きする範囲)が、決定されたモルタルMの塗布幅で走査されることによって塗布されることとなる。
【0150】
次に、本実施形態の三次元造形装置1の塗布形態について説明する。
【0151】
本実施形態の三次元造形装置1が流体吐出ヘッド10を直線方向に移動させて三次元造形物を製造する場合には、
図23乃至
図26を参照して上述したような方法でモルタルMを塗布する。
【0152】
図27は、第1実施形態の三次元造形装置の塗布形態を説明する第1説明図であり、
図28は、三次元造形装置の塗布形態を説明する第2説明図である。
【0153】
本実施形態の三次元造形装置1が流体吐出ヘッド10を曲線方向(例えば、半径Rの円周方向)に移動させて三次元造形物を製造する場合には、
図27に示すように、ノズル部13の進行方向前方が流体吐出ヘッド10の進行方向Fに常に沿うようにノズル部13をノズル回転モータ17によって回転させながら、多関節ロボット3を動作させてモルタルMを塗布する。
【0154】
なお、
図27では、ノズル部13の進行方向前方が流体吐出ヘッド10の進行方向Fに常に沿うように制御して、塗布幅W=V1のモルタルMを塗布する場合を図示しているが、この形態に限らず、上述の
図23乃至
図26に示されるような塗布幅WのモルタルMを塗布する場合においても、同様に、ノズル部13の進行方向前方を流体吐出ヘッド10の進行方向Fに常に沿うように制御すれば、それぞれの塗布幅で曲線方向の塗布が可能となる。
【0155】
また、複雑な輪郭形状の輪郭部分を塗布する場合には、
図28に示すように、ノズル部13の頂点部A1部、A2部、A3部、またはA4部(以下、「頂点部A」と記す)を使用して、頂点部Aを輪郭部分の形状に合わせ、ノズル部13をノズル回転モータ17によって回転させながら、多関節ロボット3を動作させてモルタルMを塗布することも可能である。
【0156】
N層塗布プログラム18bの説明に戻り、流体吐出ヘッド10によって第1層P1の所定箇所のモルタルMの塗布が終了すると、オブジェPの残り高さが開口部13bの塗布幅H1よりも小さいか否かが判断され(S43)、オブジェPの残り高さが開口部13bの塗布幅H1よりも小さいと判断された場合には(S43:Yes)、次層を塗布する場合の流体吐出ヘッド10の移動高さ(後述する高さ「Z2」または「Z3」)をセットし(S45)、三次元造形プログラム18aに戻り(S47)、オブジェPの残り高さが開口部13bの塗布幅H1よりも小さくないと判断された場合には(S43:No)、そのまま三次元造形プログラム18aに戻る(S47)。
【0157】
図29は、第1実施形態の三次元造形装置の薄膜塗布時における塗布状態を示した第1説明図であり、流体吐出ヘッド10を垂直にした状態で進行方向Fに移動させながら、厚さZ2<H1(ノズル部13の開口部13b短辺の長さ)のモルタルMを塗布する様子を示している。
【0158】
また、
図30は、第1実施形態の三次元造形装置の薄膜塗布時における塗布状態を示した第2説明図であり、流体吐出ヘッド10を傾斜させた状態で進行方向Fに移動させながら、厚さZ3<H1(ノズル部13の開口部13b短辺の長さ)のモルタルMを塗布する様子を示している。
【0159】
なお、
図30に示すように、流体吐出ヘッド10を傾斜させて塗布する場合には、ノズル13自体も傾斜するため、Z3の高さは、ノズル13の進行方向Fの反対側の開口部13bの辺の高さ(
図30では、開口部13bの進行方向Fの反対側の長辺の高さ)に合わせることを基本とする。
【0160】
また、
図30に示すように、流体吐出ヘッド10を傾斜させて塗布する場合には、モルタルMをノズル13の開口部13bからスムーズに吐出させることができ、結果的に、オブジェPの端面の仕上がり具合を向上させることができる。
【0161】
流体吐出ヘッド10は、RAM16のヘッド側ローター指示値テーブル16cに格納されたヘッド側ローター指示値に基づいて、ヘッド側ローター駆動モータ27の回転を制御し、輸送管61から送入されたモルタルMをノズル13に送出し、ノズル13の開口部13bから外部へ吐出するものである。
【0162】
本実施形態の三次元造形装置1は、
図29及び
図30に示すように、ノズル部13等による塗布幅未満の厚みのモルタルMを塗布する場合には、流体吐出ヘッド10の高さを調整して塗布するものであるが、それに合わせ、流体吐出ヘッド10から吐出されるモルタルMの量も、予めRAM16のヘッド側ローター指示値テーブル16cに格納されたヘッド側ローター指示値に基づいて調整されるものである。
【0163】
また、ポンプ5からのモルタルMの供給量に対してモルタルMの塗布量が多い場合には、第2圧力センサー63の検出値が下降し、ポンプ5からのモルタルMの供給量に対してモルタルMの塗布量が少ない場合には、第2圧力センサー63の検出値が上昇するため、ポンプ5は、第2圧力センサー63の検出値も加味して、流体吐出ヘッド10にモルタルMを適切に供給することとなる。
【0164】
三次元造形プログラム18aに戻り、次に、第1層の塗布が完了したか否かが判断され(S11)、第1層P1の塗布が完了していないと判断された場合には(S11:No)、N層塗布プログラム18bを第1層P1の塗布が完了するまで繰り返し、第1層P1の塗布が完了したと判断された場合には(S11:Yes)、Nを1増加させるとともに(S13:第1層P1から第2層P2にセットされることを意味する)、流体吐出ヘッド10を1層分上方へ移動させる(S15)。
【0165】
なお、N層塗布プログラム18bが第1層P1の塗布が完了するまで繰り返されることによって、第1層P1の上記所定箇所が変更されながら、第1層P1全体の面積がモルタルMによって塗布されることとなる。
【0166】
そして、RAM16の三次元造形データテーブル16aから取得した全三次元造形データについて塗布が完了したか否かが判断され(S17)、全三次元造形データについて塗布が完了していないと判断された場合には(S17:No)、第2層P2~第N層PNについてS9のN層塗布プログラム18bを実行し、全三次元造形データについて塗布が完了していると判断された場合には(S17:Yes)、Nに「1」(「1」は、第1層P1を意味する)をセットした後(S19)、多関節ロボット3及び流体吐出ヘッド10を初期位置へ移動させ(S21)、オブジェPの造形処理を完了する(S23)。
【0167】
次に、第1実施形態の三次元造形装置1を構成するポンプ5の制御について説明する。
【0168】
本実施形態の三次元造形装置1は、上述のように、多関節ロボット3がロボットスライド機構7の移動レール75上を+Y方向及び-Y方向に移動することから、
図1乃至
図4に示すように、ポンプ5と、流体吐出ヘッド10とが長尺の輸送管61によって接続され、モルタルMを外部へ吐出する流体吐出ヘッド10が、モルタルMを供給するポンプ5から遠方に配置されている。
【0169】
本実施形態の三次元造形装置1は、このように、流体吐出ヘッド10が、ポンプ5から遠方に配置されている場合においても、モルタルMの供給過多及び供給不足が生じないように、また、流体吐出ヘッド10の吐出動作に支障がないように、ポンプ5を制御している。
【0170】
図31は、第1実施形態の三次元造形装置における第1圧力センサーの検出タイミングと、第2圧力センサーの検出タイミングとを説明した説明図であり、
図32は、第1実施形態の三次元造形装置における第1吐出制御プログラムのフローチャートであり、
図33は、第1実施形態の三次元造形装置における第2吐出制御プログラムのフローチャートであり、
図34は、第1実施形態の三次元造形装置における指示値算出プログラムのフローチャートである。
【0171】
なお、第1吐出制御プログラム18c及び第2吐出制御プログラム18dは、何れか1つのプログラムが選択的に実行されるものであり、所定時間t0(msec)毎に実行される割り込み処理によって実行されるものとして説明する。
【0172】
また、指示値算出プログラム18eも、所定時間t0(msec)毎に実行される割り込み処理によって実行されるものとして説明する。
【0173】
上述のように、本実施形態の三次元造形装置1は、スクリュー管55と輸送管61との接続位置に配置され、モルタルMの輸送管61内での圧力を検出するための第1圧力センサー57と、流体吐出ヘッド11と輸送管61との接続位置に配置され、モルタルMの輸送管61内での圧力を検出するための第2圧力センサー63と、を備える。
【0174】
そして、ポンプ5は、RAM16のポンプ側ローター指示値テーブル16bに格納されたポンプ側ローター指示値に基づいて、ポンプ側ローター駆動モータ53の回転を制御し、スクリュー管55に送入されたモルタルMを下流側の輸送管61に送出する。
【0175】
なお、ポンプ側ローター指示値テーブル16bに格納されたポンプ側ローター指示値は、後述するように、第1圧力センサー57のよって検出された検出値及び第2圧力センサー63によって検出された検出値に基づいて算出された指示値1と、流体吐出ヘッド10によってノズル部13の開口部13bから外部へ吐出されるモルタルMの量に対応する指示値2と、に基づいて決定されるものである。
【0176】
すなわち、ポンプ5は、流体吐出ヘッド10によってノズル部13の開口部13bから外部へ吐出されるモルタルMの量と同一の量のモルタルMを輸送管61に送出するようにポンプ側ローター駆動モータ53の回転を制御するのではなく、第1圧力センサー57及び第2圧力センサー63による検出値を補填してポンプ側ローター駆動モータ53の回転を制御して、モルタルMを流体吐出ヘッド10に適切に送出することができ、延いては、モルタルMを流体吐出ヘッド10から適切に吐出させることができるものである。
【0177】
先ず、第1吐出制御プログラム18cについて説明すると、第1圧力センサー57によって、スクリュー管55と輸送管61との接続位置におけるモルタルMの輸送管61内での圧力を検出し(S51、
図31上「S1」は検出タイミングを示す)、その検出値に基づいて指示値1を算出する(S53)。
【0178】
一方、ポンプ側ローター駆動モータ53は、S53または後述するS59で算出された指示値1と、第1吐出制御プログラム18cとは別途に実行される後述する指示値算出プログラム18eによって算出された指示値2と、によって算出され、RAM16のポンプ側ローター指示値テーブル16bに格納されたポンプ側ローター指示値に一致するように、その回転を制御する(S54)。
【0179】
そして、前回の第2圧力センサー検出時から時間t1(時間t1は、時間t0よりも長い時間であり、例えば、時間t0のN倍(Nは2以上の自然数))が経過したか否かが判断され(S55)、時間t1が経過していないと判断された場合には(S55:No)、割り込み処理を完了し(S61)、時間t1が経過していると判断された場合には(S55:Yes)、S57を実行する。
【0180】
S57では、第2圧力センサー63によって、流体吐出ヘッド11と輸送管61との接続位置におけるモルタルMの輸送管61内での圧力を検出し(S57、
図31上「S2」は検出タイミングを示す)、その検出値に基づいて指示値1を算出した後(S59)、割り込み処理を完了する(S61)。
【0181】
なお、
図31は、第1吐出制御プログラム18cの検出タイミングを示すものであり、
図31に示すように、本実施形態の三次元造形装置1において、時間t1は、時間t0の約10倍に設定されている。
【0182】
次に、第2吐出制御プログラム18dについて説明すると、第1圧力センサー57によって、スクリュー管55と輸送管61との接続位置におけるモルタルMの輸送管61内での圧力を検出し(S71)、前回の第2圧力センサー63の検出時から時間t1(時間t1は、時間t0のN倍(Nは2以上の自然数))が経過したか否かが判断され(S73)、時間t1が経過していないと判断された場合には(S73:No)、時間t1が経過するまで待ち、時間t1が経過していると判断された場合には(S73:Yes)、S75を実行する。
【0183】
S75では、第2圧力センサー63によって、流体吐出ヘッド11と輸送管61との接続位置におけるモルタルMの輸送管61内での圧力を検出し(S75)、第1圧力センサー57による検出値と、時間t1後の第2圧力センサー63による検出値とに基づいて指示値1を算出する(S77)。
【0184】
一方、ポンプ側ローター駆動モータ53は、S77で算出された指示値1と、第1吐出制御プログラム18cとは別途に実行される後述する指示値算出プログラム18eによって算出された指示値2と、によって算出され、RAM16のポンプ側ローター指示値テーブル16bに格納されたポンプ側ローター指示値に一致するように、その回転を制御して(S79)、割り込み処理を完了する(S81)。
【0185】
次に、指示値算出プログラム18eについて説明すると、先ず、ロボットコントローラ4から流体吐出ヘッド11の塗布速度を取得し(S83)、取得した塗布速度及び流体吐出ヘッド11から吐出されるモルタルの高さ(厚み)に基づいて指示値2を算出する(S85)。
【0186】
なお、指示値2は、流体吐出ヘッド10から吐出されるモルタルMの量に対応した値であり、流体吐出ヘッド10の塗布速度が速い場合、または流体吐出ヘッド11から吐出されるモルタルの高さ(厚み)が厚い場合には、指示値2の値は増加し、流体吐出ヘッド10の塗布速度が遅い場合、または流体吐出ヘッド11から吐出されるモルタルの高さ(厚み)が薄い場合には、指示値2の値は減少する。
【0187】
そして、第1吐出制御プログラム18cまたは第2吐出制御プログラム18dで算出された指示値1に、S85で算出された指示値2を加算して、指示値を算出し、RAM16のポンプ側ローター指示値テーブル16bに格納した後(S87)、割り込み処理を完了する(S89)。
【0188】
第1吐出制御プログラム18c及び指示値算出プログラム18eによれば、ポンプ5からのモルタルMの供給量は、流体吐出ヘッド10によって開口部13bから外部へ吐出されるモルタルMの吐出量と、第1圧力センサー57が時間t0の間隔で検出した検出値と、第2圧力センサー63が時間t0よりも長い時間t1(例えば、時間t1=時間t0のN倍の時間)で検出した検出値と、に基づいて決定されるので、流体吐出ヘッド10へ供給されるモルタルMの量の変動を少なくすることができ、ポンプ5が、長尺の輸送管61によって流体吐出ヘッド10に接続され、流体吐出ヘッド10から遠方に配置された場合においても、モルタルMを流体吐出ヘッド10に適切に供給することができ、延いては、モルタルMを流体吐出ヘッド10から適切に吐出させることができる。
【0189】
第2吐出制御プログラム18d及び指示値算出プログラム18eによれば、ポンプ5からのモルタルMの供給量は、流体吐出ヘッド10によって開口部13bから外部へ吐出されるモルタルMの吐出量と、所定の時間に第1圧力センサー57で検出された検出値と、その所定時間からt1時間経過後の第2圧力センサー63で検出された検出値と、に基づいて決定されるので、輸送管61の長さによる検出値の遅れを補填して、流体吐出ヘッド10へ供給されるモルタルMの量の変動を少なくすることができ、ポンプ5が、長尺の輸送管61によって流体吐出ヘッド10に接続され、流体吐出ヘッド10から遠方に配置された場合においても、モルタルMを流体吐出ヘッド10に適切に供給することができ、延いては、モルタルMを流体吐出ヘッド10から適切に吐出させることができる。
【0190】
一方、流体吐出ヘッド10は、RAM16のヘッド側ローター指示値テーブル16cに格納されたヘッド側ローター指示値に基づいて、ヘッド側ローター駆動モータ27の回転を制御し、輸送管61から送入されたモルタルMをノズル13に送出し、ノズル13の開口部13bから外部へ吐出するものである。
【0191】
具体的には、本実施形態の三次元造形装置1は、塗布するモルタルMの幅、厚み、及び塗布速度に応じてヘッド側ローター駆動モータ27の回転を制御するものであるが、一般に、ポンプ5からのモルタルMの供給量に対してモルタルMの塗布量が多い場合には、第2圧力センサー63の検出値が下降し、ポンプ5からのモルタルMの供給量に対してモルタルMの塗布量が少ない場合には、第2圧力センサー63の検出値が上昇する。
【0192】
しかしながら、ポンプ5を上述のように制御することにより、モルタルMを流体吐出ヘッド10に適切に供給することができ、延いては、モルタルMを流体吐出ヘッド10から適切に吐出させることができる。
【0193】
次に、第1実施形態の三次元造形装置1のメンテナンス処理について説明する。
【0194】
本実施形態の三次元造形装置1は、上述のように、流体吐出ヘッド10の先端からモルタルMを吐出して、三次元造形物であるオブジェPを製造するものであるが、流体吐出ヘッド10を使用後にそのまま放置すると、モルタルMが流体吐出ヘッド10の内部で固化してしまい、次回に使用できなくなってしまう可能性がある。
【0195】
したがって、三次元造形装置1を継続的に使用するためには、流体吐出ヘッド10を定期的に分解して内部のモルタルMを除去するとともに、流体吐出ヘッド10を構成する部品を清掃しておく必要がある。
【0196】
一方で、本実施形態の三次元造形装置は大型であって、かつ重量も重く、流体吐出ヘッド10自体も大型であって、かつ重量も重いものであるため、メンテナンス作業には、使用者の安全を考慮する必要がある。
【0197】
図35は、第1実施形態の三次元造形装置におけるメンテナンス処理プログラムのフローチャートであり、
図36は、三次元造形装置のメンテナンス時の分解前の状態を示した正面図であり、
図37は、三次元造形装置のメンテナンス時の分解前の状態を示した底面図であり、
図38は、三次元造形装置のメンテナンス時の分解後の状態を示した説明図である。
【0198】
本実施形態の三次元造形装置1は、上述のように、多関節ロボット3と、その多関節ロボット3の先端に接続され、モルタルMを外部へ吐出するための流体吐出ヘッド10と、その流体吐出ヘッド10を多関節ロボット3の先端に接続するための支持部21と、を備える。
【0199】
そして、本実施形態の三次元造形装置1は、上述したように、流体吐出ヘッド10を、多関節ロボット3によって縦向きにした状態(流体吐出ヘッド10を垂直方向または傾斜方向に向けた状態)で、下方に向かってモルタルMを吐出して、三次元造形物であるオブジェPを製造するものである。
【0200】
図35のメンテナンス処理プログラム18fにおいて、先ず、三次元造形装置1の使用者が装置の電源スイッチを入れた後、操作パネル8上の操作ボタンによってメンテナンス処理を選択して、スタートボタンを押下すると、三次元造形装置1は、流体吐出ヘッド10をメンテナンス位置に退避させ(S91)、流体吐出ヘッド10を動作時の縦向きの状態(流体吐出ヘッド10を垂直方向または傾斜方向に向けた状態)から水平向きの状態に回転させて(S93)、水平向きの状態を保持する(S95)。
【0201】
なお、
図36は、流体吐出ヘッド10を多関節ロボット3によって水平向きの状態にした正面図であり、
図37は、その状態の底面図である。
【0202】
図36及び
図37に示すように、多関節ロボット3は、支持部21の突出部21cに接続されることによって、流体吐出ヘッド10を水平向きの状態に保持しており、流体吐出ヘッド10は、支持部21の第1支持部21d、第2支持部21e、第3支持部21f、第4支持部21gの4つの支持部によって吊るされた状態である。
【0203】
流体吐出ヘッド10が多関節ロボット3によって水平向きの状態に保持されると(S95)、三次元造形装置1の使用者は、所定のボルト、ネジ等の固定具を解除して、流体吐出ヘッド10を分解する。
【0204】
なお、本実施形態の三次元造形装置1においては、流体吐出ヘッド本体11の外管を構成する第2ステータ11aと、ノズル部13とが取り外され、ヘッド側ローター駆動モータ27、第2ローター11b、ノズル回転モータ17及びモータギア部19は支持部21に残ったままの状態になっている。
【0205】
本実施形態の三次元造形装置においては、流体吐出ヘッド10の全部品を取り外すことも可能であるが、少なくとも、第2ステータ11aと、ノズル部13とを取り外せば、第2ステータ11a及びノズル部13を個別に洗浄可能であり、支持部12に残った第2ローター11bも露出しているため、洗浄することができる。
【0206】
また、多関節ロボット3は、支持部21の突出部21cに接続されているので、流体吐出ヘッド10の態勢を狭い領域で簡単に変更することができ、三次元造形装置1の動作に支障なく、三次元造形装置1のメンテナンスをスムーズに行うことができる。
【0207】
また、流体吐出ヘッド10を、少なくとも吐出開始時において、多関節ロボット3によって傾斜させた状態で下方に向かってモルタルMを吐出すれば、メンテナンス後にモルタルMをスムーズに移動させ、モルタルMを塗布位置にスムーズに塗布させることができる。
【0208】
本実施形態の流体物吐出装置によれば、モルタルMを供給するポンプ5と、一端をポンプ5に接続された長尺の輸送管61と、その長尺の輸送管61の他端に接続され、ポンプ5から供給されたモルタルMを開口部13bから外部へ吐出する流体吐出ヘッド10と、を備えた流体物吐出装置において、輸送管61の一端近傍に配置され、モルタルMの圧力を検出する第1圧力センサー57と、輸送管61の他端近傍に配置され、モルタルMの圧力を検出する第2圧力センサー63と、を備えているので、ポンプ5が流体吐出ヘッド10から遠方にある場合においても、流体吐出ヘッド10にモルタルMを適切に供給することができ、延いては、モルタルMを流体吐出ヘッド10から適切に吐出することができる。
【0209】
また、本実施形態の流体物吐出装置によれば、ポンプ5からのモルタルMの供給量は、流体吐出ヘッド10によって開口部13bから外部へ吐出されるモルタルMの吐出量と、第1圧力センサー57が時間t0の間隔で検出した検出値と、第2圧力センサー63が時間t0よりも長い時間t1の間隔で検出した検出値と、に基づいて決定されるので、ポンプ5が流体吐出ヘッド10から遠方にある場合においても、流体吐出ヘッド10にモルタルMをさらに適切に供給することができ、延いては、モルタルMを流体吐出ヘッド10からさらに適切に吐出することができる。
【0210】
また、本実施形態の流体物吐出装置によれば、ポンプ5からのモルタルMの供給量は、流体吐出ヘッド10によって開口部13bから外部へ吐出されるモルタルMの吐出量と、第1の時間に第1圧力センサー57で検出された検出値と、第1の時間から所定時間経過後の第2圧力センサー63で検出された検出値と、に基づいて決定されるので、ポンプ5が流体吐出ヘッド10から遠方にある場合においても、流体吐出ヘッド10にモルタルMをさらに適切に供給することができ、延いては、モルタルMを流体吐出ヘッド10からさらに適切に吐出することができる。
【0211】
また、本実施形態の三次元造形装置1によれば、流体吐出ヘッド10と、ポンプ5と、輸送管61と、流体吐出ヘッド10を先端に接続した多関節ロボット3と、を備え、流体吐出ヘッド10からモルタルMを吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置1において、流体吐出ヘッド10は、多関節ロボット3によって、吐出するモルタルMの高さを調整可能であり、流体吐出ヘッド10からのモルタルMの吐出量は、モルタルMの高さに応じて調整可能であるので、モルタルMのムラを防止した三次元造形物を製造することができる。
【0212】
また、本実施形態の三次元造形装置1によれば、流体吐出ヘッド10は、その先端を吐出するモルタMの高さよりも短い高さに設定して、モルタルMを吐出可能であるので、モルタルMを塗布する面に押し付けるようにてして吐出することにより、三次元造形物を多層に製造する場合に、各層間の密着度合いを増大させることができ、延いては、製造する三次元造形物の剛性を増大させることができる。
【0213】
また、本実施形態の三次元造形装置1によれば、流体吐出ヘッド10は、多関節ロボット3によって傾斜された状態で下方に向かってモルタルMを吐出可能であるので、特に、モルタルMの高さを減少させる場合にモルタルMを塗布位置にスムーズに塗布することができる。
【0214】
また、本実施形態の三次元造形装置1によれば、流体吐出ヘッド10は、モルタルMが通過する第1の中空部11dを有する流体吐出ヘッド本体11と、その流体吐出ヘッド本体11の先端に接続され、開口部13b、23b、83b、93bと、その第1の中空部11dに連通する内腔13d、13f、23d、23f、83d、83f、93d、93fと、を有するノズル部13、23、83、93と、を備え、ノズル部13、23、83、93の開口部13b、23b、83b、93bから外部にモルタルMを吐出するものであり、第1の中空部11d及び/または内腔13d、13f、23d、23f、83d、83f、93d、93fを横切る物規バー13c、23c、83c、83g、93cを備えているので、装置の停止時にモルタルMがノズル部13、23、83、93から漏れ出すことを防止し、延いては、三次元造形物を正確に製造することができる。
【0215】
また、本実施形態の三次元造形装置1によれば、内腔13d、13f、23d、23f、83d、83f、93d、93fは、途中に第1の膨隆部を有しているので、ノズル部13、23、83、93からのモルタルMの吐出をスムーズに行うことができる。
【0216】
さらに、本実施形態の三次元造形装置1によれば、内腔23dは、途中に第1の膨隆部とは異なる膨隆部23gを有し、内腔23dの縦断面形状は、膨隆部23gを含んで流線形状を呈しているので、ノズル部23からのモルタルMの吐出をさらにスムーズに行うことができる。
【0217】
以上、本発明の実施形態における三次元造形について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することが可能である。
【0218】
例えば、上述の実施形態の三次元造形装置においては、ノズル部の開口部の平面視における形状を略長方形として説明してきたが、ノズルの開口部の平面視における形状は、略長方形に限られるものではなく、略円形、略楕円形、略正方形、略平行四辺形、略菱形であっても良い。
【0219】
但し、塗布幅をノズル部の回転によって変更させたいのであれば、ノズル部の開口部の平面視における形状を、略楕円形または略矩形状とするのが良い。
【0220】
また、三次元造形物を、流体物を積層して構成したいのであれば、ノズル部の開口部の平面視における形状を略矩形状とするのが良い。
【0221】
しかしながら、ノズルの開口部の平面視における形状を略長方形とした方が、塗布幅、積層する場合の安定性の点で有利である。
【符号の説明】
【0222】
1・・・三次元造形装置
2・・・メインコントローラ
3・・・多関節ロボット
4・・・ロボットコントローラ
5・・・ポンプ
6・・・電源
7・・・ロボットスライド機構
8・・・操作パネル
9・・・ミキサー
10・・・流体吐出ヘッド
11・・・流体吐出ヘッド本体
11a・・・第2ステータ
11b・・・第2ローター
11c・・・キャビティー
11d・・・第1の中空部
12・・・ドライバー回路
13、23、83、93・・・ノズル部
13a、23a、83a、93a・・・ノズル本体部
13b、23b、83b、93b・・・開口部
13c、23c、83c、83g、93c・・・規制バー
13d、23d、83d、93d・・・ノズル本体部内腔
13e、23e、83e、93e・・・ノズル先端部
13f、23f、83f、93f・・・ノズル先端部内腔
15、25、85、95・・・ノズルギア部(ノズル回転機構)
16・・・RAM
17・・・ノズル回転モータ(ノズル回転機構)
18・・・ROM
19・・・モータギア部(ノズル回転機構)
20・・・制御盤
21・・・支持部
21a・・・上支持部
21b・・・下支持部
21c・・・突出部
21d・・・第1支持部
21e・・・第2支持部
21f・・・第3支持部
21g・・・第4支持部
27・・・ヘッド側ローター駆動モータ
29・・・供給口
31・・・第1の基台(多関節ロボット)
33・・・第2の基台(多関節ロボット)
35・・・下腕部(多関節ロボット)
37・・・中下腕部(多関節ロボット)
39・・・中上腕部(多関節ロボット)
41・・・上腕部(多関節ロボット)
43・・・回転部(多関節ロボット)
51・・・ポンプ本体
53・・・ポンプ側ローター駆動モータ
55・・・スクリュー管
55a・・・第1ステータ
55b・・・第1ローター
57・・・第1圧力センサー
59・・・モルタル投入口
61・・・輸送管
63・・・第2圧力センサー
71・・・移動レールカバー
73・・・移動台
75・・・移動レール
77・・・ケーブル
79・・・ロボットスライドモータ
80・・・流体吐出ヘッドカバー
M・・・モルタル
P・・・オブジェ
【要約】
[課題] 大型の三次元造形物を製造し、供給機構が吐出機構から遠方にある場合においても、吐出機構に流体物を適切に供給することができ、延いては、流体物を吐出機構から適切に吐出することができる流体物吐出装置及びその流体物吐出装置を備えた三次元造形装置を提供する。[解決手段] モルタルMを供給するポンプ5と、一端をポンプ5に接続された長尺の輸送管61と、その長尺の輸送管61の他端に接続され、ポンプ5から供給されたモルタルMを開口部13bから外部へ吐出する流体吐出ヘッド10と、を備えた流体物吐出装置において、輸送管61の一端近傍に配置され、モルタルMの圧力を検出する第1圧力センサー57と、輸送管61の他端近傍に配置され、モルタルMの圧力を検出する第2圧力センサー63と、を備えている。