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  • 特許-ボイラへの給水装置の運転方法 図1
  • 特許-ボイラへの給水装置の運転方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ボイラへの給水装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F22D 5/34 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
F22D5/34 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020008798
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116942
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000154668
【氏名又は名称】株式会社ヒラカワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青掛 健司
(72)【発明者】
【氏名】吉井 悦二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】木下 正成
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝太郎
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-147709(JP,A)
【文献】特開2000-337603(JP,A)
【文献】特開2002-250504(JP,A)
【文献】実開平01-169902(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 1/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水ポンプによるボイラへの給水を前記ボイラからの排ガスと熱交換することにより加熱するための熱交換装置への給水路に設けられたオン・オフ弁に並列に接続されるとともに、前記オン・オフ弁よりも通過流量を少量に抑制された少流量給水通過装置を備えたボイラへの給水装置を運転するに際し、
前記ボイラにおける最低位の水位が検出されなくなったときに、前記オン・オフ弁を全閉状態とするとともに、前記給水ポンプを起動させて、前記給水ポンプからの給水を前記少流量給水通過装置を通して前記ボイラに供給し、
前記給水ポンプの運転開始後において一定時間が経過した後に、前記オン・オフ弁を全開状態とすることを特徴とするボイラへの給水装置の運転方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラへの給水装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラへの給水路に熱交換装置としてのエコノマイザを設け、このエコノマイザによって、ボイラへの給水をボイラからの排ガスと熱交換することにより加熱すなわち予熱することで、熱効率の向上を図るようにしたものが知られている(特許文献1)。給水路には給水ポンプが設けられ、この給水ポンプの作動制御は、ボイラの水位の検出装置からの信号を受ける運転制御装置によって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-181836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなエコノマイザを備えたボイラにおいて、たとえば冷態起動時には、ボイラからの排ガスによってエコノマイザが加熱されることでその内部の水が蒸発し、エコノマイザの内部は蒸気が充満した状態となる。その状態のエコノマイザに新たな被加熱水が給水されると、内部に充満していた蒸気がそれにより冷却されて一気に凝縮する。そして、それによって急激なウォーターハンマー現象を起こす。
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の技術では、このようなウォーターハンマー現象への対応はとられていない。
【0006】
そこで本発明は、このような問題点を解決し、エコノマイザを備えたボイラにおいて、ウォーターハンマー現象が発生しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明のボイラへの給水装置の運転方法は、
給水ポンプによるボイラへの給水を前記ボイラからの排ガスと熱交換することにより加熱するための熱交換装置への給水路に設けられたオン・オフ弁に並列に接続されるとともに、前記オン・オフ弁よりも通過流量を少量に抑制された少流量給水通過装置を備えたボイラへの給水装置を運転するに際し、
前記ボイラにおける最低位の水位が検出されなくなったときに、前記オン・オフ弁を全閉状態とするとともに、前記給水ポンプを起動させて、前記給水ポンプからの給水を前記少流量給水通過装置を通して前記ボイラに供給し、
前記給水ポンプの運転開始後において一定時間が経過した後に、前記オン・オフ弁を全開状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オン・オフ弁がオフのときに、少流量給水通過装置を少量の給水が通過し、この通過給水がエコノマイザに供給される。すると、エコノマイザには、大量の水が一度に供給されるのではなく、少量の水が時間を掛けて供給されるために、エコノマイザの内部に蒸気が充満していた場合であっても、この蒸気が大量の水によって一気に冷却されて凝縮することが無く、したがって有害なウォーターハンマー現象が発生することを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態のボイラへの給水装置の構成を示す図である。
図2】ボイラに設けられた水位センサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、11はボイラ、12はこのボイラへの給水路である。給水路12には、上流側から順に、給水中に含まれる夾雑物を除去するためのストレーナ13と、給水ポンプ14と、電磁弁などにより構成されたオン・オフ弁15と、逆止弁16と、熱交換装置としてのエコノマイザ17とが設けられている。20はボイラ11からの排気ガス経路で、排気ガスがエコノマイザ17を通過するように構成されている。これにより、エコノマイザ17においては、ボイラ11からの排気ガスとボイラ11への給水とが熱交換されて、その給水が加熱すなわち予熱されるように構成されている。その結果、ボイラ11の熱効率の向上が図られる。
【0012】
また給水路12には、ストレーナ13と給水ポンプ14との間において、圧力センサ21と温度センサ22とが設けられている。給水ポンプ14とオン・オフ弁15との間における給水路12の部分には、別の圧力センサ19が設けられている。さらに、給水路12には、エコノマイザ17よりも上流側の部分と、エコノマイザ17よりも下流側の部分と、ボイラ11よりも上流側の部分とに、それぞれ弁23、24、25が設けられている。エコノマイザ17よりも上流側に設けられた弁23は、逆止弁16よりも下流側に設けられている。弁24と弁25とでは、弁24の方が上流側に設けられている。
【0013】
給水路12における逆止弁16と弁23との間の部分と、給水路12における弁24と弁25との間の部分とを結ぶ、第1のバイパス路26が設けられている。この第1のバイパス路26には、弁27が設けられている。
【0014】
給水路12における圧力センサ19とオン・オフ弁15との間の部分と、給水路12におけるオン・オフ弁15と逆止弁16との間の部分とを結ぶ、第2のバイパス路28が設けられている。この第2のバイパス路28には、少流量給水通過装置としてのニードル弁29が設けられている。
【0015】
ボイラ11には、水位センサとしての、図2に示す複数の水位検出電極E1、E2、E3、E4が設けられている。ここで電極E1はボイラ11の内部において許容される最高位の水位L1を検出するものであり、電極E4は同最低位の水位L4を検出するものである。電極E2は、電極E1で検出される最高位の水位と電極E4で検出される最低位の水位との間における高位の水位L2を検出するものであり、また電極E3は、電極E1で検出される最高位の水位と電極E4で検出される最低位の水位との間における低位の水位L3を検出するものである。
【0016】
図1および図2に示されるシステムは、図示を省略した制御装置によって制御される。その制御の方法は、次のとおりである。
【0017】
通常の運転時には、給水ポンプ14の作用によって給水路12には連続的に給水が行われる。このため、エコノマイザ17にも水が充満しており、このエコノマイザ17において蒸気が充満することはない。
【0018】
これに対し、ボイラ11が起動されてエコノマイザ17が利用に供され始めた場合、すなわちエコノマイザ17にボイラ11からの排ガスが通され、かつ弁23、24が開かれるとともに弁27が閉じられている場合には、ボイラ11からの排ガスによってエコノマイザ17が加熱されることでその内部の水が蒸発し、エコノマイザ17の内部は蒸気が充満した状態となる。また、ボイラ11の運転中に何らかの原因によって給水ポンプが停止してしまった場合にも、ボイラ11からの排ガスによってエコノマイザ17が加熱されることで、エコノマイザ17の内部は蒸気が充満した状態となる。
【0019】
これらの場合において、ボイラ11の内部の水位が大きく低下して、電極E4が水の存在を検出しなくなったとき、すなわちボイラ11の内部の水位が水位L4を下回ったときには、ボイラ11への給水を行わなければならない。しかし、急激に多量の給水を行うと、エコノマイザ17大量の水が送り込まれて、エコノマイザ17の内部に充満していた蒸気がそれにより冷却されて一気に凝縮する。そして、それによって急激なウォーターハンマー現象を起こす。
【0020】
このような現象の発生を防止するために、図1に示されたボイラへの給水装置においては、上記のような状況において電極E4が水の存在を検出しなくなったときに、オン・オフ弁15がオフ状態すなわち全閉状態とされるとともに、給水ポンプ14が起動される。
【0021】
このとき、ニードル弁29は、一定の開度で開状態に維持される。つまり、オン・オフ弁15が閉じられた状態にあるが、第2のバイパス路28だけを介して、エコノマイザ17への給水が行われる。これにより、エコノマイザ17には、ニードル弁29を通過した少量の水のみが持続的に供給される。その結果、エコノマイザ17の内部の蒸気はゆっくりと凝縮する。このため、オン・オフ弁15を介してエコノマイザ17に大量の水が供給されることにもとづき、エコノマイザ15の内部の蒸気が急激に凝縮してウォーターハンマー現象が発生することを効果的に防止することができる。
【0022】
上記のような起動時などにおける給水ポンプ14の運転開始後、10~90秒程度の一定時間が経過した後に、まだ電極E3が水を検知していない段階、すなわちボイラ11の内部がまだ水位L3に到達していない段階で、オン・オフ弁15をオン状態すなわち全開状態とする。これにより、エコノマイザ17の内部への増量給水が行われる。なお、このときには、エコノマイザ17の内部は、もはやウォーターハンマー現象が発生する状況が解消されている。
【0023】
これによりボイラ11の内部の水は、水位L3を越え、やがて水位L2に到達する。そのことが電極E2によって検出されたなら、給水ポンプ14の運転は続けたまま、オン・オフ弁15をオフ状態とさせる。その後は、一定の開度に維持されているニードル弁29を通過する少量の給水を続ける。
【0024】
上述したニードル弁29の開度はボイラの低燃焼蒸発量以下とすることができるために、起動後の通常運転時においては、ボイラ11の内部に水が過剰に供給されることはない。通常運転中は、給水ポンプ14を運転し続けた状態で、ボイラ11の内部の水が水位L3を下回った場合には、そのことを電極E3で検出してオン・オフ弁15をオン状態とするとともに、水位L2を上回った場合には、そのことを電極E2で検出してオン・オフ弁15をオフ状態とし、これにもとづく制御を行う。給水ポンプ14が運転を続けているため、オン・オフ弁15をオフ状態にしたときには、ニードル弁29を経由した少量の連続給水だけが行われる。
【0025】
何らかの原因によって水位L2を越えて水が過剰に供給され、水位L1に達したことが電極E1によって検出されたなら、それにもとづき給水ポンプ14が停止される。その後、水の量が減少して水位L1を下回ったら、そのことが電極E1により検出されて給水ポンプ14の運転が再開される。
【0026】
エコノマイザ17を利用しないときには、弁23、24を閉じるとともに弁27を開く。これにより、水は、エコノマイザ17を通過せず、第1のバイパス路26だけを通ってボイラ11に供給される。ボイラの点検、整備を行うときなどにおいては、必要に応じて弁25を閉じる。
【0027】
上記においては、少流量給水通過装置の一例としてのニードル弁29を用いるものについて説明したが、少流量給水通過装置は、これに限られるものではなく、オリフィスやその他の部材を利用することもできる。ニードル弁よりもオリフィスの方が安価に構成することができる。
【0028】
逆止弁16は、図示のように、給水路12における第2のバイパス路28の下流側接続部とエコノマイザ17との間の位置に設置される。その理由は、上述のように起動時にはエコノマイザ17の内部で蒸気が発生するが、この蒸気が発生することで給水路12の内部の水が上流側へ押し戻されることを防止するためである。
【0029】
ボイラ11が大型である場合には、オン・オフ弁15を複数並列にした構成とした対応をとることもできる。
【0030】
本発明によれば、上記したように、オン・オフ弁15と、第2のバイパス路28に設置したニードル弁29(少流量給水通過装置)とを併用したことで、エコノマイザ17におけるウォーターハンマーの発生を、安価な構成によって確実に防止することができる。
【0031】
すなわち、本発明の構成に代えて、連続給水構造の給水路12に開度調節可能な調節弁を設け、かつ設定水位に対して実水位が低ければ給水量を増加し、実水位が高ければ給水量を減少する比例給水制御を行うことで、同様にウォーターハンマー現象を防止することが可能であると考えられる。しかし、一般に比例給水制御を行うためには、かなり高価な機器を数多く用いることが必要となってしまう。しかし、本発明にもとづき、オン・オフ弁15と、第2のバイパス路28に設置したニードル弁29(少流量給水通過装置)とを併用した構成であると、比例給水制御を行う場合に比べて、1/10~1/20程度の低コストで、ウォーターハンマー現象を防止することができる。
【符号の説明】
【0032】
11 ボイラ
12 給水路
14 給水ポンプ
15 オン・オフ弁
17 エコノマイザ
20 排気ガス経路
28 第2のバイパス路
29 ニードル弁(少流量給水通過装置)
E1~E4 水位検出電極
L1~L4 水位
図1
図2