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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】荷役助力装置
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/18 20060101AFI20240322BHJP
   B66C 23/02 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B66D3/18 E
B66C23/02 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020035612
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021138474
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】進藤 清隆
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520493(JP,A)
【文献】特開2019-018953(JP,A)
【文献】特開2003-128380(JP,A)
【文献】特開平06-144783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00-5/34
B66C 23/00-23/94
B66F 7/00-7/28;
13/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿って配設されたアームと、
昇降させる荷役物を係止する係止部材と、
前記係止部材に接続されたスリングと、
前記係止部材から伸びる前記スリングの軌道を前記水平方向に変える案内ローラと、
前記水平方向の前記スリングを巻回して、昇降モータによる駆動によって前記係止部材の昇降を行う昇降作動部と、
前記昇降作動部に加わる重量を検出して重量信号を送信する重量検出部と、
前記係止部材の位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
前記重量検出部から送信される前記重量信号を受信して記憶し、前記係止部材に係止された前記荷役物をバランスさせる助力を前記昇降作動部へ発生させる制御部と
前記係止部材へ加えられる外力の前記水平方向の成分を検出する力検出部と、
前記案内ローラと繋がって、前記力検出部で検出された前記水平方向へ移動モータによって前記案内ローラを移動させる水平移動駆動部と、
を有し、
前記制御部は、
力検出部によって検出した前記水平方向の外力の成分を元に、前記水平移動駆動部へ前記案内ローラの移動速度を指令し、
前記重量信号から受信して記憶した重量値に応じて前記案内ローラの移動速度を設定することを特徴とする荷役助力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造分野の製造組立てや搬送などに用いる荷役助力装置であって、例えば荷役物を昇降させる際にモータによるアシストで重量バランスさせ僅かな操作力で上下移動させる荷役助力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から工業製品の組立てを行う工場では、大きな重量を有する工具、作業用機器、製品、半完成品などの荷役物を吊下げて昇降移動させる荷役装置を使用している。その荷役装置の中でも、大きな重量の荷役物に対してバランス状態を作り出し、作業者が軽い操作力で任意の高さに上下移動できるように助力を発生させる荷役助力装置が一部で使用されている。このように助力を発生させる荷役助力装置は、モータによって助力(アシスト)を行ってバランス状態を作り出す。そしてこのバランス状態において作業者が荷役物に小さな外力を加えることでスムーズに移動させるため、単に上下動作を電動モータで行うものとは異なる。すなわち荷役物の荷重及びこれに加わる操作力を例えば荷重検出器で検出して演算し、回転角検出器と繋がったACサーボモータ等にて細かいバランス制御を行うように構成されている。
【0003】
このような荷役助力装置を用いて、天井が低いオフィスでも荷役作業を行いたいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-222462号公報
【文献】特開平6-144783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にて開示された荷役助力装置は、水平フレームに吊り下げられていることから、天井が低い場合には所望の揚程を確保できない場合があって、改善の余地があった。一方特許文献2にて開示された装置では、台車に支柱とアームを設け、動力のモータはアームの部分ではなく下部の台車に配置しているため、床上にある台車が作業の妨げになる場合があって改善の余地があった。
【0006】
このような問題に鑑みて、本発明は天井が低く設置が困難な場所においても荷役作業を可能とする荷役助力装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の荷役助力装置は、上記の目的を達成するために、
水平方向に沿って配設されたアームと、
昇降させる荷役物を係止する係止部材と、
係止部材に接続されたスリングと、
係止部材から伸びるスリングの軌道を水平方向に変える案内ローラと、
水平方向のスリングを巻回して、昇降モータによる駆動によって係止部材
の昇降を行う昇降作動部と、
昇降作動部に加わる重量を検出して重量信号を送信する重量検出部と、
係止部材の位置を検出して位置信号を出力する位置検出部と、
重量検出部から送信される重量信号を受信して記憶し、係止部材に係止された荷役物をバランスさせる助力を昇降作動部へ発生させる制御部と
係止部材へ加えられる外力の水平方向の成分を検出する力検出部と、
案内ローラと繋がって、力検出部で検出された水平方向へ移動モータによって案内ローラを移動させる水平移動駆動部と、
を有し、
制御部は、
力検出部によって検出した水平方向の外力の成分を元に、水平移動駆動部へ案内ローラの移動速度を指令し、
重量信号から受信して記憶した重量値に応じて案内ローラの移動速度を設定するように構成されている。
【0009】
また
制御部は、案内ローラを水平移動駆動部によって移動させる時、スリングの繰り出し長さを調整して、係止部材の鉛直方向の位置を保つように昇降作動部に対して制御を行うように構成してもよい
【発明の効果】
【0010】
本発明の荷役助力装置によれば、天井が低く従来の吊り下げ式では設置が困難な場所においても揚程を確保して荷役作業を可能とする荷役助力装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る荷役助力装置と荷役物の正面模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の一部の底面模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の制御ブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る荷役助力装置と荷役物の正面模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る荷役助力装置と荷役物の正面模式図である。
図6】本発明の実施形態に係る荷役助力装置と荷役物の正面模式図である。
図7】本発明の実施形態に係る荷役助力装置と荷役物の正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る荷役助力装置について、図面を基に詳細に説明する。図1は本発明の実施形態の一例である荷役助力装置81と荷役物7の正面模式図である。図2は本発明の実施形態に係る荷役助力装置81のアーム4の周辺の一部の底面模式図である。
【0013】
荷役助力装置81は、構造部材である支柱3と、アーム4と、操作部材のリモコン41を含んで構成されている。支柱3は円柱形状で建物等の床1にボルトなどで固定されている。アーム4は略円柱形のアーム支柱8の円柱面から一方向へ延伸して設けられている。アーム支柱8は、支柱3によって規制された範囲の角度で回転自在に支持されている。リモコン41は、荷役助力装置81を無線にて操作するためのものである。
【0014】
アーム4は略平板状で、その長手方向が床1に対して略平行に設けられている。アーム4の長手方向に沿って、水平移動駆動部26がアーム4の側面に配置されている。またアーム4の根元の部分には後述の昇降作動部38が配置されている。
【0015】
水平移動駆動部26はモータによって直線運動をする駆動機構である。水平移動駆動部26は、例えばボールねじ21、支持部25、移動モータ23、減速機22、水平位置検出部24を含んで構成されている。支持部25はアーム4に固定されている。ボールねじ21は、支持部25によって両側を回転自在に支持されている。そしてボールねじ21の一端は、図示しない軸継手を介して減速機22の出力軸と繋がっている。
【0016】
対をなす支持部25に挟まれたボールねじ21には、ボールねじナット13が配置されている。ボールねじナット13はボールねじ21が回転することによって方向A、方向Bに移動する。減速機22は移動モータ23の回転速度を減速させるものであって、例えば波動歯車によるものであるが、これに限るものではない。移動モータ23は、例えば交流サーボモータである。
【0017】
水平位置検出部24は、移動モータ23の反負荷側に接続されて、移動モータ23の回転位置を検出して位置信号を後述の制御部51へ送信する。水平位置検出部24は、例えば光学式のアブソリュートエンコーダであるがこれに限るものではなく、磁気式や静電容量式等であっても良い。さらに水平位置検出部24は、移動モータ23に直接的に接続されているものではなく、ボールねじ21と平行に配置されてボールねじナット13の位置を検出する磁気リニアスケールなどであっても良い。また水平移動駆動部26は、これに限らずリニアモータなどで構成されても良い。
【0018】
次いで荷役物7を昇降させる部材関連について説明する。係止部材6は、荷役物7を係止して吊り下げる部材である。係止部材6は例えば天面に鍔を有する直方体形状の荷役物7を移動させるために、荷役物7の鍔に係止させる部材と、吊下げ用のフックと、で構成されている。リンクチェーン5はスリングの一例であって、本実施形態では半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交差して交互に連接されたものである。リンクチェーン5aの端は係止部材6に繋がっている。リンクチェーン5aは、リンクチェーン5のうち係止部材6から鉛直方向に伸びている部分である。
【0019】
案内ローラ11は、鉛直方向に伸びているリンクチェーン5aの向きを水平方向に変えるものである。案内ローラ11は所謂滑車である。案内ローラ11は、案内ブラケット14によって両側から挟み込まれて回転自在に支持されている。案内ブラケット14は重量検出部12を介してボールねじナット13に吊り下げられている。
【0020】
ここで案内ローラ11をボールねじ21や移動モータ23に対して鉛直方向にて近い位置、すなわちアーム4の横付近に配置すると、天井2が比較的低い場合であっても荷役助力装置81の揚程を大きく確保したい場合に有効である。
【0021】
重量検出部12はこの重量検出部12に加わる荷重を電気信号に変換して制御部51へ送信する所謂ロードセルである。 重量検出部12はリンクチェーン5から伝達される力を検出できるように弾性変形する起歪体と起歪体に貼られた歪みゲージを備えている。歪みゲージは重量に応じて起歪体に生ずる歪みを電気信号に変換するホイートストーンブリッジ回路に組み込まれ、重量検出部12は昇降作動部38に加わる重量を検出して、重量値を重量信号にて制御部51へ送信する。
【0022】
案内ブラケット14は、対をなす略L字型の金属部材であって、案内ローラ11を軸によって支持し、案内ブロック15を両側から挟み込んで固定している(図2参照)。
【0023】
案内ブロック15は、リンクチェーン5aの通過経路を制限して、リンクチェーン5aが案内ローラ11から脱落しないように略十字の貫通穴を有して設けられている。
【0024】
案内ブロック15の略十字の貫通穴の側面部には、力検出部16a、16bが配置されている。力検出部16aはリンクチェーン5aが方向Aに外力によって付勢された時に、力検出部16bはリンクチェーン5aが方向Bに外力によって付勢された時に、それぞれ外力を検出してこれを電気信号に変換して制御部51へ送信する。したがって通常のリンクチェーン5aの昇降通過の場合は外力ゼロの電気信号を制御部51へ送信する。したがって案内ブロック15の略十字の貫通穴は、方向A及び方向Bにリンクチェーンの環の外形寸法よりも大きく設けられている。
【0025】
係止部材6の昇降を行うための昇降作動部38が、アーム4に固定配置されている。図2に示すように、この昇降作動部38はホイール31、減速機33、昇降モータ34、ブレーキ35、位置検出部36を含んで構成されている。
【0026】
ホイール31は、リンクチェーン5をおおよそ90度巻回し、リンクチェーン5の形状に合わせてリンクチェーン5が嵌入されるポケット溝を有している。ホイール31はこのポケット溝を挟んでリンクチェーン5が脱落しないように直径が大きい鍔を両側に有している。ホイール31は、減速機33の出力軸32に固定されて正逆回転可能である。
【0027】
減速機33は昇降モータ34の回転速度を所定の速度に減速し、トルクを増大させる。減速機33は例えば波動歯車減速機である。波動歯車減速機は外周が楕円状のウエーブジェネレータと、外周に多数の外歯が形成されウエーブジェネレータに外嵌されてウエーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なフレクスプラインと、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えたサーキュラスプラインとからなる。そして動力は、フレクスプラインを回転出力として繋げた出力軸32に取り出されて伝達するようになっている。この装置の減速機に例えば波動歯車減速機のようなバックラッシが微小なものを使用することで、昇降モータ34の正逆回転切り換えを頻繁に行ってバランスしつつ昇降移動を行う時に、切り換え時の制御不能な領域をなくし、スムーズな操作感を実現できる。
【0028】
なお本実施形態では、重量検出部12はボールねじナット13と案内ブラケット14との間に設けられているがこれに限るものではなく、例えばこの減速機33にトルクセンサを内蔵したものであっても良いし、この昇降モータ34のハウジングとアーム4の間に設けて昇降モータ34に加わる反力を検出する鼓型のトルクセンサなどを用いるものであっても良い。
【0029】
昇降モータ34は例えば交流サーボモータである。そして昇降モータ34の反負荷側には昇降モータ34の回転軸を必要時にロックするブレーキ35が設けられている。さらに昇降モータ34の反負荷側には昇降モータ34の回転軸と繋がった位置検出部36が接続されている。位置検出部36は例えば、昇降モータ34の回転角位置を検出するいわゆるアブソリュートエンコーダであって、光学式にて回転角位置を検出して位置値を位置信号として制御部51へ送信する。したがってこの位置検出部36は、係止部材6の繰り出し位置すなわち昇降位置を検出することができる。位置検出部36は、光学式に限らず磁気式や静電容量式等であっても良い。
【0030】
リンクチェーン5cは、ホイール31に約90度巻回されて鉛直下向きに伸びている。リンクチェーン5cの部分が、チェーン収納箱37に格納される。そしてリンクチェーン5cの端部は自由端となっている。
【0031】
なお本実施形態ではスリングはリンクチェーン5であるが、これに限るものではなくワイヤーロープであってもよい。スリングがワイヤーロープの場合は、ホイール31がドラム形状となってワイヤーロープを巻回し、ワイヤーロープの端部はドラムの円柱面に固定される。
【0032】
アーム支柱8はアーム4を旋回させるための軸に繋がった部材である。アーム支柱8は、アーム4を旋回させるための軸となる旋回用回転軸71と連結されている。旋回用回転軸71は、減速機72の出力軸である。減速機72は旋回モータ73の回転速度を減速して、トルクを増大させる。減速機72は例えば波動歯車減速機である。旋回モータ73は例えば交流サーボモータである。旋回モータ73の反負荷側には旋回位置検出部74が連結されている。旋回位置検出部74は、旋回モータ73の回転角位置を検出するエンコーダであって、光学式にて回転角位置を検出して位置値を位置信号として制御部51へ送信する。したがってこの旋回位置検出部74は、アーム4の旋回位置を検出することができる。旋回位置検出部74は、光学式に限らず磁気式や静電容量式等であっても良い。
【0033】
減速機72、旋回モータ73、旋回位置検出部74のいずれかの固定部と、支柱3との間には旋回力検出部75が配置されている。旋回力検出部75は例えば両側にフランジ部と、このフランジ部に挟まれた直径が小さくて薄肉の起歪部と、この起歪部に添着された感歪抵抗体を含んで構成されている。したがって旋回力検出部75は、リンクチェーン5と、案内ブロック15と、を介してアーム4にC方向(図2参照)の外力が加わるとその力の反力を検出して制御部51へ力信号を送信する。
【0034】
制御部51は、重量検出部12と、位置検出部36と、力検出部16a、16bと、水平位置検出部24と、昇降モータ34と、移動モータ23と、からの各種信号を元にして、昇降モータ34と、移動モータ23との制御を実行する。制御部51は、さらに旋回力検出部75、旋回位置検出部74、旋回モータ73と、からの各種信号を元にして、旋回モータ73の制御を実行する。なお旋回モータ73の制御は制御部51で実行しても良いし、別途の制御装置で実行しても良い。
【0035】
制御部51はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えて、各モータ等の制御を行う。制御部51は例えば支柱3の側面にカバーで覆われて設置されている。
【0036】
図3は本発明の実施形態に係る荷役助力装置81の電子回路のブロック構成図である。荷役助力装置81は、リモコン41と、制御部51と、各検出部と、各モータ部と、を含んで構成されている。
【0037】
制御送受信部52が、制御部51と併設されている。制御送受信部52は、リモコン41と無線にて通信するための電子回路を有している。
【0038】
制御部51は荷役助力装置81全体の制御を行っている。制御部51は、昇降モータ34、移動モータ23、旋回モータ73を駆動する駆動回路を含んでいる。そして制御部51は、重量検出部12から昇降作動部38に加わる重量値を重量信号として受信し、位置検出部36から昇降モータ34の回転角の位置値を位置信号として受信する。その一方で、制御部51はリモコン41と通信を行うために制御送受信部52と信号の送受信を行う。制御送受信部52との制御部51とは有線で繋がっていて、極めて短い時間間隔で高速に信号の送受信を行う。
【0039】
制御送受信部52は、リモコン41の操作指令送受信部42と無線にて通信を行う。制御送受信部52及び操作指令送受信部42は無線通信を行う電子回路で構成され、電波による送信器と受信器を有する他、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有する場合がある。
【0040】
リモコン41は、荷役助力装置81を遠隔にて操作するためのものであって、本実施形態では電波によって通信している。リモコン41は、電池によって駆動される。リモコン41は、操作手段として例えばバランス釦44、保持釦45、上昇釦46及び下降釦47等を有している。
【0041】
操作指令制御部43はリモコン41全体の制御を行っている。操作指令制御部43は操作手段による操作指令を受けて、操作の指令信号を操作指令送受信部42へ送信する。そして操作指令送受信部42は操作指令制御部43から受信した操作の指令を、制御送受信部52へ無線にて送信する。この指令を含んだ信号は、リモコン41と制御部51とのペアリングを行うためにリモコン41の識別情報が付与されている。
【0042】
次いでリモコン41に設けられている操作手段である各操作釦の役割について説明する。各操作釦は例えばプッシュスイッチである。作業者がバランス釦44を押すとリモコン41から重量登録指令が送信され、制御部51はこれを受信して荷役助力装置81をバランスモードへの移行を開始する。制御部51は、重量検出部12が昇降作動部38に加わる重量(荷重)を検出して出力した重量値を登録重量として記憶し、これを基に演算を行って、昇降作動部38に加わる重量をキャンセルしてバランス状態となるように昇降モータ34を制御する。荷役助力装置81がバランス状態になると、作業者が係止部材6若しくは荷役物7に僅かな外力を加えることで、係止部材6若しくは荷役物7を昇降させることができる。すなわち、係止部材6に荷役物7が係止されていない場合であっても、係止部材6及びリンクチェーン5の重量を元に重量検出部12が重量(荷重)を検出して出力することから、係止部材6はバランス状態となって作業者は自在に係止部材6を動かすことができる。
【0043】
一方で、作業者が保持釦45を押すと、リモコン41から保持指令が送信され、制御部51はこれを受信して、昇降作動部38を現在位置にて保持、すなわち係止部材6及び荷役物7の昇降位置を一定に保つように昇降モータ34を制御する。
【0044】
作業者が上昇釦46若しくは下降釦47を押すと、制御部51はこれを受けて昇降モータ34を制御して、係止部材6を上昇若しくは下降させる。作業者は上昇釦46若しくは下降釦47を連続的に押すことで、昇降モータ34により係止部材6及び荷役物7を連続的に上下昇降させることができる。係止部材6及び荷役物7が保持状態若しくはバランス状態のいずれにあっても、作業者が上昇釦46若しくは下降釦47を押すと、上昇若しくは下降を行い、押した上昇釦46若しくは下降釦47から手を離すとその直前の保持状態及びバランス状態のいずれかに戻る。
【0045】
図1と、図4から図7とは本発明の実施形態に係る荷役助力装置81を用い、荷役物7を移動させる一連の作業を模式的に表した正面模式図である。以下に、荷役物7を吊り上げて移動させる一連の作業例を説明する。
【0046】
図1において、荷役物7は床1に置かれている。荷役助力装置81の係止部材6は、任意の位置にある。制御部51は電源が投入されると保持状態となって待機する。この状態で作業者がリモコン41のバランス釦44を押すと、重量検出部12は現在加わっている重量を検出して重量信号を制御部51へ送信する。そして制御部51は重量検出部12から重量信号を受信して記憶し、係止部材6及びリンクチェーン5の重量をキャンセルしてバランスさせるように演算して昇降モータ34を制御する。作業者は荷役助力装置81がバランス状態になると、係止部材6を掴んで僅かな外力を加えることで自由に昇降させることができる。作業者は係止部材6を降下させて荷役物7に係止させる(図4参照)。
【0047】
この状態では荷役物7の重量が登録されていないので、作業者は以下の手順を踏んで荷役物7の重量登録を行う。作業者は保持釦45を押して一度保持状態とし、次いで上昇釦46を押し続けて荷役物7が床1から離れる高さH1まで上昇させる(図5参照)。この時、制御部51はリンクチェーン5を昇降モータ34及びホイール31によって巻き上げる。なお荷役物7の床1からの高さH1は予め定められるものでは無く、作業者が目視にて荷役物7が床1から離れて宙吊りとなったことを確認できた位置であれば良い。
【0048】
作業者は荷役物7が床1から離れたことを確認した後に上昇釦46を押すのを止めると、荷役物7は引き続きその位置で保持状態となる。次いで作業者がバランス釦44を押すと、重量検出部12は現在加わっている重量を検出して重量信号を制御部51へ送信する。制御部51は重量検出部12からの重量信号を受信して記憶し、係止部材6及び荷役物7の総和の重量をキャンセルしてバランスさせるように演算して昇降モータ34を制御する。作業者は荷役助力装置81がバランス状態になると、係止部材6若しくは荷役物7に僅かな鉛直上下方向の成分を有する外力を加えることで自由に昇降させることができる。図6は作業者が係止部材6若しくは荷役物7に対して鉛直上向きの僅かな外力を加えて高さH2まで上昇させた時の状態を表している。
【0049】
次いで作業者が荷役物7の高さH2を保持したまま方向Bへ移動させる場合について図7を参照して説明する。作業者が荷役物7の側面に対し、方向Bに外力を加えると、リンクチェーン5aが力検出部16bを付勢し、力検出部16bは検出した力に応じた信号を制御部51へ送信する。制御部51は力検出部16bから力の信号を受信すると、この力の大きさに応じて移動モータ23を回転させて、ボールねじ21を回転させてボールねじナット13を方向Bへ移動させる。制御部51は例えば、力検出部16bから大きな力の信号を受信すると、移動モータ23を比較的速く回転させることで、ボールねじナット13を速く移動させる。制御部51は例えば、力検出部16bから小さな力の信号を受信すると、移動モータ23を比較的遅く回転させることで、ボールねじナット13を遅く移動させる。この水平方向の移動速度は重量検出部12から受信して記憶した重量値によって可変しても良い。すなわち記憶した重量値が所定より大きい場合は水平の移動速度の最大値を小さくし、記憶した重量値が所定よりも小さい場合は水平の移動速度の最大値を大きくするなどの変形である。
【0050】
これと同時に、制御部51は、水平位置検出部24からボールねじナット13の水平位置信号を受信して、ボールねじナット13の位置の変化量を演算する。制御部51は、例えばボールねじナット13の位置の変化量に応じて、リンクチェーン5の繰り出し量を変化させる。すなわち作業者が荷役物7の側面に対して方向Bに外力を加えると、制御部51は水平位置が変化した分の距離に応じてリンクチェーン5を巻き上げて、荷役物7の高さH2を保持する。なおこの時、荷役助力装置81はバランス状態にあっても良いし保持状態にあっても良い。
【0051】
一方、作業者が荷役物7の側面に対して方向Aに外力を加えると、リンクチェーン5aが力検出部16aを付勢し、力検出部16aは検出した力に応じた信号を制御部51へ送信する。制御部51は力検出部16aから力の信号を受信すると、この力の大きさに応じて移動モータ23を回転させる。そして移動モータ23はボールねじ21を回転させてボールねじナット13を方向Aへ移動させる。この時、制御部51はボールねじナット13の水平位置が変化した分の距離に応じてリンクチェーン5を繰り出して、荷役物7の高さH2を保持する。
【0052】
作業者が荷役物7を方向Cまたは方向Dのいずれかへ移動させたい場合には、作業者が係止部材6若しくは荷役物7の側面を方向Cまたは方向Dに外力を加える。すると旋回力検出部75は検出した力に応じた力信号を制御部51へ送信する。制御部51は旋回力検出部75から力信号を受信すると、この力の大きさに応じて旋回モータ73を回転させる。旋回モータ73は減速機72を介して旋回用回転軸71に固定されているアーム支柱8及びアーム4をそれぞれの方向に規制された角度の範囲で回転させる。
【0053】
本発明によれば、鉛直方向に吊り上げるスリングがアームに沿うように水平方向へ向きを変える案内ローラを、アームの横近傍に配置したことで、荷役物の吊り上げの揚程を高くすることが可能な荷役助力装置を提供できる。また作業者がアームの伸びた方向に荷役物を動かした際にも、バランス状態の荷役物の高さを保って荷役物の移動ができることから、操作性に優れた荷役助力装置を提供できる。
【0054】
なお本発明の上述の実施形態ではアームの長さは固定であるが、アームをレールによる伸縮式の部材で構成して、水平移動駆動部によってこれを伸縮させるなどの変形であっても良い。
【0055】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の活用例として、荷役物の移動を助力して行う荷役助力装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 :床
2 :天井
3 :支柱
4 :アーム
5a~5c :リンクチェーン(スリング)
6 :係止部材
7 :荷役物
8 :アーム支柱
11 :案内ローラ
12 :重量検出部
13 :ボールねじナット
14 :案内ブラケット
15 :案内ブロック
16a、16b :力検出部
21 :ボールねじ
22 :減速機
23 :移動モータ
24 :水平位置検出部
25 :支持部
26 :水平移動駆動部
31 :ホイール
32 :出力軸
33 :減速機
34 :昇降モータ
35 :ブレーキ
36 :位置検出部
37 :チェーン収納箱
38 :昇降作動部
41 :リモコン
51 :制御部
52 :制御送受信部
71 :旋回用回転軸
72 :減速機
73 :旋回モータ
74 :旋回位置検出部
75 :旋回力検出部
81 :荷役助力装置



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7