(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】振止め固定装置
(51)【国際特許分類】
E04B 2/72 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
E04B2/72 H
(21)【出願番号】P 2020047224
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】393016837
【氏名又は名称】株式会社桐井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴原 浩史
(72)【発明者】
【氏名】相原 正史
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】実公平07-020248(JP,Y2)
【文献】特開平11-181927(JP,A)
【文献】特開2003-253844(JP,A)
【文献】特開平11-141248(JP,A)
【文献】実開昭54-027496(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
2/72 - 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在し水平方向に間隔をあけて配列された複数の金属製下地材間に架け渡された振止め部材を躯体壁に固定する振止め固定装置において、
前記躯体壁に取り付けられる壁取付部材と、前記振止め部材を固定する下地取付部材と、前記壁取付部材と前記下地取付部材との間に介設される緩衝部材とを備え、
前記緩衝部材は、前記下地取付部材が前記壁取付部材に対して横方向に移動した際に前記緩衝部材のせん断方向に変形するように配置されており、
前記壁取付部材は、前記躯体壁に当接して固定される当接部と当該当接部の幅方向両端部から前記躯体壁から離間する方向に張り出す一対の張出部とを備えた第一部材と、前記第一部材に取り付けられるとともに前記緩衝部材が固定される第二部材とを備え、
前記第二部材は、前記第一部材に固定前の状態で前記第一部材に対して前記躯体壁に近接離間する方向にスライド可能である
ことを特徴とする振止め固定装置。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記壁取付部材の上側に固定され、
前記下地取付部材は、前記緩衝部材の上側に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振止め固定装置。
【請求項3】
前記張出部は、前記躯体壁に沿った横方向に間隔をあけて一対設けられており、
前記第二部材は、前記一対の張出部の上に掛け渡される基板部と、前記一対の張出部の外側側面にそれぞれ接合される一対の接合部と、前記一対の張出部の内側への変位を規制する規制部とを備えている
ことを特徴とする請求項
1に記載の振止め固定装置。
【請求項4】
前記下地取付部材は、前記振止め部材を固定するカシメ固定部を備えており、
前記カシメ固定部は、前記振止め部材の一方の側面に当接する立上り部と、前記立上り部に連続する折曲げ部とを備え、前記折曲げ部を折り曲げることで前記振止め部材をカシメ固定する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項
3のいずれか一項に記載の振止め固定装置。
【請求項5】
前記下地取付部材は、前記立上り部に対向する位置に設けられ、前記振止め部材の他方の側面に当接する第二立上り部を備えた第二固定部をさらに備えている
ことを特徴とする請求項
4に記載の振止め固定装置。
【請求項6】
前記第二固定部は、前記第二立上り部の上端部に連続して屈曲する屈曲部をさらに備え、
前記屈曲部は、前記振止め部材を上側から押さえる位置で屈曲しており、
前記カシメ固定部と前記第二固定部とで、前記振止め部材の側部と上部を覆う門型形状を呈している
ことを特徴とする請求項
5に記載の振止め固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振止め固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
壁の揺れを防止するための振止め構造として、上下方向に延在する金属製下地材に水平方向に延在する振止め部材を架け渡して固定する振止め構造が知られている。このような振止め構造において、振止め部材を固定する種々の構造が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の振止め固定構造(壁材留付装置)は、一端部が躯体壁面に固定された取付ボルトの他端部に取り付けられた金具本体によって、振止め部材が支持されている。金具本体は、取付ボルトに螺合する一対のナットに挟持されており、ナットを回転させることで、躯体壁面との離間距離が調整されている。さらに、ナット間には緩衝ゴムが介設されており、振止め部材の揺れを吸収する緩衝材の役目を果たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の振止め固定構造では、緩衝ゴムは取付ボルトを囲うように設けられており、緩衝ゴムが圧縮方向に変形することで振れ止め部材の揺れを吸収するように構成されている。そのため緩衝ゴムの変形量は小さく緩衝性能の改善の余地が残されている。特に、体育館等において、室内競技等で競技者が壁へ衝突した際の身体への衝撃や負担を軽減するための壁においては、高い緩衝性能が要求されている。
【0005】
このような観点から、本発明は、壁の緩衝性能を高めることができる振止め固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明は、上下方向に延在し水平方向に間隔をあけて配列された複数の金属製下地材間に架け渡された振止め部材を躯体壁に固定する振止め固定装置において、前記躯体壁に取り付けられる壁取付部材と、前記振止め部材を固定する下地取付部材と、前記壁取付部材と前記下地取付部材との間に介設される緩衝部材とを備え、前記緩衝部材は、前記下地取付部材が前記壁取付部材に対して横方向に移動した際に前記緩衝部材のせん断方向に変形するように配置されており、前記壁取付部材は、前記躯体壁に当接して固定される当接部と当該当接部の幅方向両端部から前記躯体壁から離間する方向に張り出す一対の張出部とを備えた第一部材と、前記第一部材に取り付けられるとともに前記緩衝部材が固定される第二部材とを備え、前記第二部材は、前記第一部材に固定前の状態で前記第一部材に対して前記躯体壁に近接離間する方向にスライド可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る振止め固定装置によれば、緩衝部材は圧縮方向よりも変形量が大きいせん断方向に変形することで、下地取付部材は壁取付部材に対して大きく移動することができるので、緩衝性能を高めることができる。さらに、第二部材の第一部材に対する固定位置の位置決め調整を容易に行うことができる。
【0008】
本発明の振止め固定装置においては、前記緩衝部材は、前記壁取付部材の上側に固定され、前記下地取付部材は、前記緩衝部材の上側に固定されているものが好ましい。このような構成によれば、下地取付部材が壁取付部材に対して移動する際に、緩衝部材がせん断方向に変形する。
【0010】
さらに、本発明の振止め固定装置においては、前記張出部は、前記躯体壁に沿った横方向に間隔をあけて一対設けられており、前記第二部材は、前記一対の張出部の上に掛け渡される基板部と、前記一対の張出部の外側側面にそれぞれ接合される一対の接合部と、前記一対の張出部の内側への変位を規制する規制部とを備えているものが好ましい。このような構成によれば、第二部材を第一部材へ取りつける際に張出部の変形を抑制できるとともに、壁取付部材の剛性を高めることができる。
【0011】
また、本発明の振止め固定装置においては、前記下地取付部材は、前記振止め部材を固定するカシメ固定部を備えており、前記カシメ固定部は、前記振止め部材の一方の側面に当接する立上り部と、前記立上り部に連続する折曲げ部とを備え、前記折曲げ部を折り曲げることで前記振止め部材をカシメ固定するものが好ましい。このような構成によれば、振止め部材をガタツキなく固定することができる。
【0012】
さらに、本発明の振止め固定装置においては、前記下地取付部材は、前記立上り部に対向する位置に設けられ、前記振止め部材の他方の側面に当接する第二立上り部を備えた第二固定部をさらに備えているものが好ましい。このような構成によれば、振止め部材をカシメ固定部と第二固定部とで挟持できるので、振止め部材の固定強度を高めることができる。
【0013】
また、本発明の振止め固定装置においては、前記第二固定部は、前記第二立上り部の上端部に連続して屈曲する屈曲部をさらに備え、前記屈曲部は、前記振止め部材を上側から押さえる位置で屈曲しており、前記カシメ固定部と前記第二固定部とで、前記振止め部材の側部と上部を覆う門型形状を呈しているものが好ましい。このような構成によれば、振止め部材を、両側部と上部から固定できるので、振止め部材の固定強度をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る振止め固定構造によれば、壁の衝撃性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る振止め固定装置の取付状態を示した斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る振止め固定装置を示した斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る振止め固定装置を示した分解斜視図である。
【
図4】(a)は本発明の実施形態に係る振止め固定装置の壁取付部材の第一部材を示した正面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図5】(a)は本発明の実施形態に係る振止め固定装置の壁取付部材の第二部材を示した正面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図6】(a)は本発明の実施形態に係る振止め固定装置の下地取付部材を示した正面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る振止め固定装置の取付状態を示した側面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る振止め固定装置の変形例を示した斜視図である。
【0016】
本発明の実施形態に係る振止め固定装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示すように、振止め固定装置1は、上下方向に延在し水平方向に間隔をあけて配列された複数の金属製下地材2間に架け渡された振止め部材3を躯体壁4に固定する。本実施形態の金属製下地材2、振止め部材3および振止め固定装置1からなる振止め構造は、体育館等に設けられた壁(図示せず)の下地を構成するとともに、室内競技等で競技者が壁へ衝突した際の身体への衝撃や負担を軽減する。また、前記振止め構造は、地震時に間仕切壁の揺れを吸収することもできる。
【0017】
金属製下地材2は、室内の床部と天井部に設けられたランナー(図示せず)間に設けられている。ランナーは、ともに溝型のチャンネル材にて構成されている。床部に設けられた下側のランナーは、溝が上向きに開くように配置されていて、天井部に設けられた上側のランナーは、溝が下向きに開くように配置されている。金属製下地材2の下端部は、下側のランナーの内側に上側から嵌合されてビス等によって固定されている。金属製下地材2の上端部は、上側のランナーの内側に下側から嵌合されてビス等によって固定されている。金属製下地材2は、ランナーの長手方向に沿って所定間隔をあけて複数配列されている。なお、金属製下地材2は、前記構成に限定されるものではなく、例えば角パイプ形状やH型形状の他の形状であってもよい。
【0018】
金属製下地材2は、金属板を曲げ加工して形成されており、断面矩形の溝型状に形成されている。金属製下地材2の溝形の側面のうち躯体壁4側の側面は、躯体壁4に当接してビス等によって固定されている。金属製下地材2の溝形の側面のうち室内側の側面には、間仕切壁の下地板(図示せず)が貼り付けられる。金属製下地材2の溝形の底面(隣り合う金属製下地材2に対向する面)には、振止め部材3が挿通される開口部5が形成されている。開口部5は、縦長形状の貫通孔であり、底部に振止め部材3が載置される。
【0019】
振止め部材3は、溝型のチャンネル材にて構成されており、水平方向に延在している。振止め部材3は、溝が上向きに開くように配置されていて、隣り合う金属製下地材2の開口部5間に架け渡されている。振止め部材3は、複数の所定高さで配置されており、上下に複数段配置されている。なお、振止め部材3は、前記構成に限定されるものではなく、溝型のチャンネル材を、溝が下向きに開くように配置してもよいし、溝型とは異なる角パイプ形状やH型形状であってもよい。
【0020】
振止め固定装置1は、振止め部材3の長手方向に沿って所定の間隔をあけて配置されている。
図2および
図3にも示すように、本発明に係る振止め固定装置1は、躯体壁4に取り付けられる壁取付部材10と、振止め部材3を固定する下地取付部材30と、壁取付部材10と下地取付部材30との間に介設される緩衝部材50とを備えている。
【0021】
壁取付部材10は、躯体壁4に取り付けられる部材であって、緩衝部材50と下地取付部材30とを支持する。壁取付部材10は、第一部材11と第二部材12とを備えている。
図4にも示すように、第一部材11は、金属製の板材を折り曲げ加工して形成され、当接部13と一対の張出部14,14とを備えている。当接部13は、躯体壁4に当接して固定される部位であって、縦長の矩形板形状を呈している。第一部材11の下部には、第一部材11を躯体壁4に固定するためのビスVが挿通するビス孔15が形成されている。
【0022】
張出部14は、当接部13の左右両端にそれぞれ設けられており、躯体壁4に沿った横方向に間隔をあけて一対設けられている。張出部14は、当接部13に対して直交する板状部材であり、躯体壁4から離間する方向に張り出す。当接部13と一対の張出部14,14とで平面視U字形状を呈している(
図4の(a)参照)。張出部14の高さ寸法は、当接部13の高さ寸法の略半分である。張出部14は、当接部13の上部に繋がっている。張出部14には、第二部材12を固定するためのビスVが挿通する挿通孔16が形成されている。挿通孔16は、両張出部14,14にそれぞれ形成されている。挿通孔16は、張出部14の張出方向(躯体壁4に直交する方向)に長い長孔にて構成されている。挿通孔16を長孔としたことによって、第二部材12をビスVで固定する前の状態で、長孔の範囲内でスライド可能となっている。張出部14は、振止め部材3の下方で張り出すように配置される。
【0023】
第二部材12は、第一部材11に取り付けられるとともに、緩衝部材50が固定される部位である。
図2,
図3および
図5に示すように、第二部材12は、金属製の板材を折り曲げ加工して形成され、基板部20と接合部21と規制部22とを備えている。基板部20は、一対の張出部14,14の上に掛け渡される部位であり、水平に広がっている。基板部20は矩形形状を呈している。基板部20の上面には、緩衝部材50が接着される。
【0024】
接合部21は、一対の張出部14,14の外側側面にそれぞれ接合される部位であり、躯体壁4に対向する方向に見て左右それぞれに一対設けられている。接合部21は、基板部20の左右両端から連続して下方に屈曲している。接合部21は、基板部20に直交して垂下している。接合部21には、第二部材12を第一部材11に固定するためのビスVが挿通する挿通孔23が形成されている。挿通孔23は、両接合部21,21にそれぞれ形成されている。挿通孔23は、ビスVの軸部が挿通可能な丸孔にて構成されている。両挿通孔23,23は、張出部14の挿通孔16に対応する高さにそれぞれ設けられ、躯体壁4から離間する方向においては、オフセットして配置されている。
【0025】
以上のように、張出部14に長孔からなる挿通孔16が形成され、接合部21には、丸孔からなる挿通孔23が形成されているので、第二部材12の第一部材11への固定前の状態で、第二部材12は、第一部材11に対して、躯体壁4に対して近接離間する方向にスライド可能となっている。言い換えれば、第二部材12と第一部材11との固定位置(ビズVが挿通する位置)は、長孔に沿って移動可能である。
【0026】
なお、本実施形態では、張出部14に長孔を形成し接合部21に丸孔を形成しているが、これに限定されるものではない。張出部14に丸孔を形成し接合部21に長孔を形成してもよいし、張出部14および接合部21両方に長孔を形成してもよい。さらには、張出部14に挿通孔を設けずに、ビスの先端で直接孔をあけるようにしてもよい。
【0027】
規制部22は、第二部材12を第一部材11に固定する際に、一対の張出部14,14が内側へ変位するのを規制する部位である。規制部22は、一対の張出部14,14の内側側面間に張り渡されている。規制部22は、張出部14の内側側面に対して直交しており、規制部22の端面が内側側面に当接している。規制部22は、基板部20の躯体壁4側端部(張出部14の基端側端部)と張出部14の先端側端部とにそれぞれ設けられている。規制部22は、基板部20に直交して垂下している。
【0028】
下地取付部材30は、振止め部材3を固定する部材であって、緩衝部材50を介して壁取付部材10に取り付けられている。
図2,
図3および
図6に示すように、下地取付部材30は、金属製の板材を屈曲して形成されており、ベース部31とカシメ固定部32と第二固定部33とを備えている。ベース部31は、緩衝部材50の上面に載置されて固定される部位であり、緩衝部材50の上面と概ね同等の矩形形状を呈している。ベース部31は、緩衝部材50の上面に接着されている。
【0029】
カシメ固定部32は、ベース部31の先端側端部に設けられており、振止め部材3を室内側からカシメ固定する。カシメ固定部32は、立上り部34と折曲げ部35とを備えている。立上り部34は、振止め部材3の一方(室内側)の側面に当接する部位であって、ベース部31から連続して直角に屈曲し、垂直に立ち上がっている。折曲げ部35は、立上り部34の上端に連続して上方に延在する部位である。折曲げ部35は、振止め部材3をカシメ固定する際に、振止め部材3の側面上端に沿って折り曲げられる(
図1および
図7参照)。立上り部34と折曲げ部35との屈曲部分には、開口部36が形成されている。開口部36は横長の矩形形状であって、カシメ固定部32の横方向両端部を残して開口している。開口部36を設けたことによって、折曲げ部35が立上り部34に対して折り曲げ容易になっている。
【0030】
第二固定部33は、ベース部31の基端側端部(躯体壁4側端部)に設けられており、振止め部材3を躯体壁4側から固定する。第二固定部33の振止め部材3の長手方向長さは、カシメ固定部32の振止め部材3の長手方向長さの2/5程度であり、第二固定部33は、カシメ固定部32の中間部に対向する位置に設けられている。第二固定部33は、第二立上り部37と屈曲部38とを備えている。第二立上り部37は、振止め部材3の他方(躯体壁4側)の側面に当接する部位であって、ベース部31から連続して直角に屈曲し、垂直に立ち上がっている。屈曲部38は、第二立上り部37の上端に連続して直角に屈曲した部位である。屈曲部38は、振止め部材3の上端部を上方から押さえる。このような形状の第二固定部33と、折曲げ部35を折り曲げた状態のカシメ固定部32とで、振止め部材3の両側部と上部を覆う門型形状を呈している。
【0031】
緩衝部材50は、直方体形状を呈しており、第二部材12の基板部20と略同等の平面形状を有している。緩衝部材50は、たとえばゴム、エラストマー、樹脂等の弾性部材にて構成されている。緩衝部材50は、壁取付部材10の上側に固定され、緩衝部材50の上面には、下地取付部材30が固定されている。これによって、下地取付部材30が壁取付部材10に対して横方向に移動した際に、緩衝部材50がせん断変形し、その上面が下面に対して平行移動するようになっている。なお、横方向とは、水平方向および水平方向から若干傾斜した斜め方向も含む。よって、緩衝部材50は、壁取付部材10および下地取付部材30に対して、せん断方向に変形するように配置されている。
【0032】
以下に本実施形態に係る振止め固定装置1の作用効果を説明する。かかる振止め固定装置1によれば、緩衝部材50は圧縮方向よりも変形量が大きいせん断方向に変形するので、下地取付部材30は壁取付部材10に対して大きく移動しつつ、緩衝部材50が衝撃を吸収することができる。したがって、緩衝性能を高めることができ、室内競技等で競技者が壁へ衝突した際の身体への衝撃や負担を軽減できる。
【0033】
具体的には、緩衝部材50は、壁取付部材10の上側に固定され、下地取付部材30は、緩衝部材50の上側に固定されていることで、下地取付部材30が壁取付部材10に対して横方向に移動する際に、緩衝部材50がせん断方向に変形する。
【0034】
また、本実施形態の振止め固定装置1では、壁取付部材10の第二部材12の第一部材11への固定位置が、躯体壁4に対して近接離間する方向にスライド可能であるので、第二部材12の第一部材11に対する固定位置の位置決め調整を容易に行うことができる。よって、躯体壁4に対する振止め部材3の距離が異なる振止め構造であっても、対応することができる。
【0035】
さらに、第二部材12は規制部22を備えているので、第二部材12を第一部材11に取り付ける際に、張出部14の変形を抑制できる。さらに、取付後においては、規制部22,22が張出部14,14と合わさって箱型形状を呈するので、壁取付部材10の剛性を高めることができる。
【0036】
また、下地取付部材30は、カシメ固定部32を備えているので、振止め部材3をガタツキなく固定することができる。さらに、下地取付部材30は、カシメ固定部32に対向する位置に第二固定部33を備えているので、振止め部材3をカシメ固定部32と第二固定部33とで挟持できる。よって、振止め部材3の固定強度を高めることができる。また、固定状態のカシメ固定部32と第二固定部33とで、振止め部材3の側部と上部を覆う門型形状を呈しているので、振止め部材3を、両側部と上部から固定できる。したがって、振止め部材3の固定強度をより一層高めることができる。
【0037】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、材質、形状や大きさなど適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、壁取付部材10の上に緩衝部材50を取り付け、さらにその上に下地取付部材30を取り付けたがこれに限定されるものではない。例えば、
図8に示すように、壁取付部材10の第一部材11の張出部14の下側に第二部材12を取り付け、その下に緩衝部材50を取り付け、さらに、緩衝部材50の下部に下地取付部材30を取り付けてもよい。この場合、張出部14は、振止め部材3の上方に位置するように配置され、第二部材12、緩衝部材50および下地取付部材30は、前記実施形態と天地逆向きにした状態で取り付けられる。このような構成によっても、緩衝部材50がせん断方向に変形するので、前記実施形態と同等の作用効果を得られる。
【0038】
また、壁取付部材10、緩衝部材50および下地取付部材30の配置方向は、上下方向に限らず、緩衝部材50がせん断方向に変形するように構成されれば、壁取付部材10、緩衝部材50および下地取付部材30を横方向に接続して配置してもよい。
【0039】
さらに、前記実施形態では、第一部材11の張出部14に長孔からなる挿通孔16を形成し、第二部材12の接合部21に丸孔からなる挿通孔23を形成しているが、これに限定されるものではない。張出部14に丸孔を形成し、接合部21に長孔を形成してもよい。
【0040】
また、張出部14には挿通孔を形成せずに、接合部21に丸孔を形成し、張出部14にビスを直接打ち込むようにしてもよい。このような構成においても、第二部材12を張出部14に固定する前の係止した状態で、躯体壁4に近接離間する方向にスライドさせることができる。第二部材12をスライドさせて位置決めを行った後に、第二部材12の挿通孔23からビスを挿入し、当該ビスを張出部14の板面に直接打ち込むことで固定する。このように張出部14にビスを直接打ち込む場合は、第二部材14のスライド可能範囲が、張出部14の全長に渡るので、張出部14に長孔を形成した場合(長孔の範囲となる)より長くなる。また、張出部14にビスを打ち込む際の応力が作用するので、規制部22による張出部14の変形抑制効果が大きくなる。
【符号の説明】
【0041】
1 固定装置
2 金属製下地材
3 振止め部材
4 躯体壁
10 壁取付部材
11 第一部材
12 第二部材
13 当接部
14 張出部
20 基板部
21 接合部
22 規制部
30 下地取付部材
31 ベース部
32 カシメ固定部
33 第二固定部
34 立上り部
35 折曲げ部
36 開口部
37 第二立上り部
38 屈曲部
50 緩衝部材