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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】サイレンサ
(51)【国際特許分類】
   F22D 11/06 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
F22D11/06 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020151769
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022045976
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹中 俊喜
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019937(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207637(WO,A1)
【文献】特開2018-194184(JP,A)
【文献】特開2018-194185(JP,A)
【文献】特公昭45-027517(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0245582(US,A1)
【文献】特開2020-183828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 11/06
F16L 55/045
F16T 1/38
F28B 9/00 - 9/10
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気の流路が形成され、ドレン配管のドレンに没する没水部を備え、
前記没水部には、
前記流路に連通し、前記ドレン配管のドレンが流入して前記蒸気と混合するドレン流入口と、
前記流路における前記ドレン流入口よりも下流側の部分に連通し、前記混合した蒸気およびドレンを、前記ドレン配管の上流側へ向かって流出させる流出口とが設けられている
ことを特徴とするサイレンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のサイレンサにおいて、
前記没水部には、前記ドレン配管の上流側へ向かって開口させる前記ドレン流入口が設けられている
ことを特徴とするサイレンサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のサイレンサにおいて、
前記没水部は、円柱状に形成され、
前記流路は、前記没水部の軸方向に延びており、
前記ドレン流入口は、前記流路の側方に設けられ、前記没水部の外周面に開口し、
前記流出口は、前記流路の下流端に連通し、前記没水部の外周面に開口している
ことを特徴とするサイレンサ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のサイレンサにおいて、
前記没水部は、前記流路における蒸気を加速減圧させることによって、前記ドレン配管のドレンを前記ドレン流入口から吸引するように構成されている
ことを特徴とするサイレンサ。
【請求項5】
請求項3に記載のサイレンサにおいて、
前記ドレン流入口は、前記没水部の周方向において複数設けられている
ことを特徴とするサイレンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、蒸気をドレンと混合させるサイレンサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、蒸気使用機器等で発生したドレンが回収管に回収されるものが知られている。この特許文献1のものでは、蒸気使用機器で蒸気の凝縮により発生した高温のドレンが、分岐管のスチームトラップ等を介して回収管に流れ、回収管のドレンと合流して回収される。
【0003】
上述したような回収管では衝撃(ウォーターハンマー)が発生する虞がある。スチームトラップから排出された高温のドレンは、一部が再蒸発して蒸気(フラッシュ蒸気)となる場合がある。その蒸気が回収管に流入すると、回収管では比較的大きな蒸気の塊(空間)が形成される。その蒸気の塊は低温のドレンと接して急激に凝縮し、そのため、蒸気が存在していた空間は一気に真空状態になる。この真空状態の空間にドレンが一気に流れ込み、ドレン同士が衝突したり、ドレンが管壁に衝突したりすることによって、ウォーターハンマーが発生する。
【0004】
このようなウォーターハンマーの発生を抑制するためのサイレンサが、例えば特許文献2に開示されている。この特許文献2のサイレンサは、蒸気が流通する吸込部材を有しており、吸込部材には、側壁に吸込口が設けられ、底壁に吐出口が設けられている。吸込部材における蒸気は、吸込口から流入したドレンと混合してある程度凝縮し、その後、吐出口から吐出される。そのため、ドレン中に蒸気の塊が形成され難くなり、ウォーターハンマーの発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭50-55701号公報
【文献】特開2019-39585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したようなサイレンサでは、ドレン配管のドレン流量が少ない場合、吸込口からドレンが流入し難くなる虞がある。つまり、ドレン配管のドレン流量が少ない場合、吐出口から下方へ流出した蒸気およびドレンの混合流体によってドレンが吹き上げられ、吸込口の近傍にはドレンが存在しなくなるため、吸込口からのドレンの流入が困難になる。そうすると、蒸気とドレンとの混合作用が低下し、ウォーターハンマーの発生を抑制することが困難になる。
【0007】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドレン配管のドレン流量が少ない場合でも、ウォーターハンマーの発生を十分に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示の技術は、蒸気の流路が形成され、ドレン配管のドレンに没する没水部を備えたサイレンサである。前記没水部には、ドレン流入口と、流出口とが設けられている。前記ドレン流入口は、前記流路に連通し、前記ドレン配管のドレンが流入して前記蒸気と混合するものである。前記流出口は、前記流路における前記ドレン流入口よりも下流側の部分に連通し、前記混合した蒸気およびドレンを、前記ドレン配管の上流側へ向かって流出させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示の技術によれば、ドレン配管のドレン流量が少ない場合でも、ウォーターハンマーの発生を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るドレン回収システムの概略構成を示す配管系統図である。
図2図2は、実施形態に係るサイレンサの概略構成を示す断面図である。
図3図3は、従来のサイレンサにおける混合流体の流出状態を説明するための模式的な図である。
図4図4は、実施形態に係るサイレンサにおける混合流体の流出状態を説明するための模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0012】
本実施形態のドレン回収システム1は、蒸気によって対象物を加熱すると共に、それによって発生したドレンを回収するものである。図1に示すように、ドレン回収システム1は、蒸気供給管11と、蒸気使用部13と、ドレン回収管14と、複数のドレン排出管16と、サイレンサ20とを備えている。
【0013】
蒸気供給管11は、蒸気使用部13に接続されている。蒸気供給管11は、例えばボイラー設備(図示省略)に接続されており、ボイラー設備で生成された蒸気が蒸気使用部13に供給される。蒸気供給管11には、蒸気の圧力を調節する減圧弁12が設けられている。
【0014】
蒸気使用部13は、例えば熱交換器である。蒸気使用部13では、蒸気供給管11から供給された蒸気が対象物に放熱して凝縮し、対象物が加熱される。蒸気は、凝縮することによってドレン(復水)になる。つまり、蒸気使用部13では、蒸気の凝縮潜熱が対象物に付与されることにより、対象物が潜熱加熱される。
【0015】
ドレン回収管14は、蒸気使用部13に接続されている。ドレン回収管14では、蒸気使用部13において蒸気の凝縮により発生したドレンが回収される。ドレン回収管14は、例えば、蒸気使用部13よりも下方に配置され、蒸気使用部13からドレンが流下して流入するように構成されている。ドレン回収管14は、ドレンが流通するドレン配管の一例である。
【0016】
ドレン回収管14には、液体圧送装置15が設けられている。液体圧送装置15は、蒸気使用部13で発生したドレンをドレン回収管14を通じて下流側へ圧送するポンプである。例えば、液体圧送装置15では、蒸気使用部13のドレンがドレン回収管14を介して流入し、一時的に貯留される。ドレンの貯留量が所定量になると、液体圧送装置15に高圧の作動気体が導入され、液体圧送装置15に貯留されていたドレンは作動気体の圧力によって下流側へ圧送(排出)される。ドレンが圧送されると、再び蒸気使用部13からドレンが液体圧送装置15に流入し貯留される。こうして、液体圧送装置15では、ドレンの流入と、ドレンの圧送(排出)とが交互に行われる。
【0017】
複数のドレン排出管16は、蒸気供給管11とドレン回収管14との間に接続されている。具体的に、複数のドレン排出管16は、蒸気供給管11の管軸方向に順に設けられており、互いに間隔(例えば、20~30m)を置いて設けられている。各ドレン排出管16は、上流端が蒸気供給管11に接続され、下流端がサイレンサ20を介してドレン回収管14に接続されている。
【0018】
ドレン排出管16は、蒸気供給管11で発生したドレンをドレン回収管14に回収するためのものである。つまり、蒸気供給管11では蒸気の一部が凝縮しドレンになる場合があり、そのドレンはドレン排出管16およびサイレンサ20を介してドレン回収管14に回収される。
【0019】
ドレン排出管16の途中には、スチームトラップ17が設けられている。スチームトラップ17は、蒸気供給管11で発生したドレンがドレン排出管16を介して流入する。スチームトラップ17は、その上下流の圧力差(上流側の圧力と下流側の圧力との差)によって、流入したドレンのみを下流側へ自動的に排出する自動弁である。なお、実際、スチームトラップ17には蒸気混じりのドレンが流入する。
【0020】
こうして、蒸気供給管11で発生したドレンは、ドレン回収管14において蒸気使用部13で発生したドレンと合流し下流側へ圧送される。なお、ドレン回収管14は蒸気供給管11よりも下方に配置され、ドレン排出管16は上下方向に延びてドレン回収管14の上部にサイレンサ20を介して接続されている。
【0021】
〈サイレンサの構成〉
サイレンサ20は、ドレン回収管14とドレン排出管16との間に設けられている。サイレンサ20は、その内部で蒸気をドレンと混合させるものである。図2に示すように、サイレンサ20は、本体21と、多孔状部材40とを備えている。
【0022】
本体21は、上下流方向に延びる略棒状に形成されている。図2に示す本体21は、上側が上流側であり、下側が下流側である。本実施形態では、本体21は、上下方向に延びる状態で、ドレン排出管16とドレン回収管14とに接続されている。より詳しくは、本体21は、ドレン排出管16の管軸と同一方向に延びる一方、ドレン回収管14の管軸と直交する方向に延びている。
【0023】
本体21は、頭部22と没水部26を有している。本体21において、没水部26は頭部22の下流側(下方)に連続して形成されている。
【0024】
頭部22は、ドレン排出管16およびドレン回収管14と接続される部分である。頭部22は、角柱部23、第1接続部24および第2接続部25を有している。
【0025】
角柱部23は、扁平な略六角柱状に形成されており、軸方向が上下方向と一致している。第1接続部24は、角柱部23と同軸の円柱状に形成され、角柱部23の上流側(上方)に連続して形成されている。第1接続部24には、例えばテーパ状の雌ねじが形成されており、ドレン排出管16の下流端が接続(螺合)される。第2接続部25は、角柱部23(第1接続部24)と同軸の略円柱状に形成され、角柱部23の下流側(下方)に連続して形成されている。第2接続部25には、例えばテーパ状の雄ねじが形成されている。第2接続部25は、ドレン回収管14と接続される。より詳しくは、第2接続部25は、ドレン回収管14の上部に設けられた接続孔14aに螺合する。つまり、本体21は、第2接続部25が接続孔14aに螺合されることにより、ドレン回収管14に接続される。第1接続部24および第2接続部25の外径は、角柱部23の外形よりも小さい。
【0026】
没水部26は、頭部22と同軸の円柱状に形成され、上下流方向(上下方向)に延びている。没水部26は、第2接続部25の下流側(下方)に連続して形成されている。没水部26は、本体21がドレン回収管14に接続された際、ドレン回収管14のドレンに没する部分である。
【0027】
本体21の内部には、蒸気の流路35が形成されている。また、本体21には、それぞれ流路35と連通する、蒸気流入口31、ドレン流入口32および流出口33が設けられている。
【0028】
蒸気流入口31は、頭部22および没水部26のうち、頭部22に設けられている。より詳しくは、蒸気流入口31は、頭部22(第1接続部24)の上流側端面に開口し、上下流方向に延びている。蒸気流入口31の内周面には上述した雌ねじが形成されており、蒸気流入口31にドレン排出管16が接続される。つまり、蒸気流入口31には、ドレン排出管16から蒸気またはドレンが流入する。
【0029】
ドレン流入口32および流出口33は、頭部22および没水部26のうち、没水部26に設けられている。ドレン流入口32および流出口33の詳細は後述する。
【0030】
流路35は、頭部22と没水部26とに跨って形成され、上下流方向(即ち、没水部26の軸方向)に延びている。流路35は、直線状の流路であり、絞り部35aと、混合部35bと、連通路35cとを有している。なお、流路35は、没水部32のみに形成されていてもよい。
【0031】
絞り部35aは、頭部22と没水部26とに跨って設けられている。絞り部35aは、蒸気流入口31と連通しており、蒸気流入口31から流入した蒸気を加速減圧するように構成されている。つまり、絞り部35aは、蒸気の流速を増加させると共に、蒸気の圧力を減少させるように構成されている。具体的に、絞り部35aの内径(流路断面積)は、流路35における他の部分(混合部35bおよび連通路35c)の内径よりも小さい。また、絞り部35aの内径は、蒸気流入口31、ドレン流入口32および流出口33のそれぞれの内径よりも小さい。
【0032】
混合部35bは、没水部26に設けられている。混合部35bは、絞り部35aと連通しており、絞り部35aと同軸の円柱状に形成されている。混合部35bは、蒸気が、ドレン流入口32から流入したドレン回収管14のドレンと混合する部分である。
【0033】
より詳しくは、混合部35bは、絞り部35aから蒸気が高速で流通することにより圧力が低下し、ドレン回収管14のドレンがドレン流入口32を介して吸引される吸引部を構成している。つまり、没水部26は、流路35における蒸気を加速減圧させることによって、ドレン回収管14のドレンをドレン流入口32から吸引するように構成されている。
【0034】
連通路35cは、没水部26に設けられている。連通路35cは、混合部35bと連通しており、混合部35bと同軸の円柱状に形成されている。連通路35cの内径は、混合部35bの内径よりも大きい。連通路35cは、混合部35bと流出口33とを連通させる。つまり、連通路35cは、流路35の下流端を構成している。
【0035】
ドレン流入口32は、流路35における混合部35bと連通している。ドレン流入口32は、ドレン回収管14のドレンが流入して流路35の蒸気と混合する流入口である。
【0036】
ドレン流入口32は、混合部35b(流路35)の側方に設けられ、没水部26の外周面に開口している。ドレン流入口32は、没水部26の周方向において複数(本実施形態では、4つ)設けられている。複数のドレン流入口32は、互いに等間隔(本実施形態では、90°間隔)を置いて設けられている。
【0037】
より詳しくは、複数のドレン流入口32の少なくとも1つは、ドレン回収管14の上流側(図2において右側)へ向かって開口させるためのものである。つまり、サイレンサ20(本体21)は、複数のドレン流入口32の少なくとも1つはドレン回収管14の上流側へ向かって開口するように、ドレン回収管14に接続される。本実施形態では、図2に示すように、4つのうち1つのドレン流入口32がドレン回収管14の上流側へ向かって開口するように、本体21がドレン回収管14に接続される。
【0038】
流出口33は、流路35におけるドレン流入口32よりも下流側の部分に連通している。そして、流出口33は、流路35(混合部26)において混合した蒸気およびドレン(以下、混合流体ともいう)を、ドレン回収管14の上流側へ向かって流出させるものである。
【0039】
より詳しくは、流出口33は、流路35の下流端である連通路35cに連通している。流出口33は、ドレン流入口32と同様、没水部26の外周面に開口している。流出口33は、没水部26の外周面において、何れか1つのドレン流入口32の直下に位置している。サイレンサ20(本体21)は、流出口33がドレン回収管14の上流側へ向かって開口するように、ドレン回収管14に接続される。本実施形態では、流出口33は1つ設けられている。
【0040】
多孔状部材40は、ドレン流入口32へのドレンの流入は許容する一方、ドレン流入口32への異物の流入は阻止するフィルタである。具体的に、多孔状部材40は、円筒状に形成され、没水部26の外周に設けられている。多孔状部材40は、ドレン流入口32を覆っている。多孔状部材40は、異物の通過を阻止し得る小さい孔を多数有している。多孔状部材40として、例えば、金属メッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタル、細線焼結体等が用いられる。
【0041】
〈動作〉
このように構成されたサイレンサ20の動作について説明する。スチームトラップ17から排出された高温ドレンは、蒸気流入口31から流入し混合部35bでドレン回収管14の低温ドレンと混合する。混合したドレンは、連通路35cを介して流出口33からドレン回収管14に流出する。こうして、蒸気供給管11で発生したドレンは、サイレンサ20を介してドレン回収管14に回収される。
【0042】
スチームトラップ17から排出されたドレンの一部は再蒸発して蒸気(フラッシュ蒸気)となる場合がある。これは、蒸気供給管11からスチームトラップ17に流入するドレンは高温であるところ、その高温のドレンがスチームトラップ17から排出されて圧力が低下することによるものである。再蒸発した蒸気は、サイレンサ20に流入する。
【0043】
サイレンサ20において、蒸気流入口31に流入した蒸気は絞り部35aに流れる。蒸気は、絞り部35aを流れることによって加速減圧される。加速減圧された蒸気は、混合部35bを通過して連通路35cに流れる。このように蒸気が高速で混合部35bを流通することにより、混合部35bの圧力が低下する。そのため、ドレン回収管14の低温ドレンが、4つのドレン流入口32を介して混合部35bに流入し(吸引され)、蒸気と混合する。
【0044】
混合部35bで混合した混合流体は、連通路35cを介して流出口33から流出する。蒸気は、混合部35bで低温ドレンと混合することにより、細かく分散される。こうして、蒸気がサイレンサ20で細かく分散されてドレン回収管14に流れることにより、ドレン回収管14において発生する衝撃(ウォーターハンマー)が抑制される。なお、蒸気は、混合部35bで低温ドレンと混合することにより、一部が凝縮するため、このことからも、ドレン回収管14においてウォーターハンマーが抑制される。
【0045】
仮に、蒸気が分散されずにドレン回収管14に流れた場合、ドレン回収管14では蒸気の流入に伴って比較的大きな蒸気の塊(空間)が形成される。この蒸気の塊は、その周囲の低温ドレンによって冷却され急激に凝縮し、そのため、蒸気が存在していた空間は一気に真空状態になる。この真空状態の空間に周囲のドレンが一気に流れ込み、ドレン同士が衝突したり、ドレンがドレン回収管14の管壁に衝突したりすることによって、衝撃(ウォーターハンマー)が発生する。
【0046】
本実施形態では、蒸気がサイレンサ20によって細かく分散されてドレン回収管14に流入するため、ドレン回収管14において大きな蒸気の塊(空間)が形成され難くなる。そのため、蒸気の急激な凝縮によって発生する真空の空間は小さいものとなる。したがって、騒音や管の損傷を引き起こすような大きなウォーターハンマーの発生が抑制される。つまり、ウォーターハンマーの大きさが小さくなる。
【0047】
次に、ドレン回収管14におけるドレン流量が少ない場合、即ちドレン回収管14のドレン水位が低い場合のサイレンサ20の動作について説明する。
【0048】
図3に示すように、従来のサイレンサの没水部101では、絞り部104から混合部105に流れた蒸気が低温ドレンと混合し、流出口103から下方へ向かって流出する。そうすると、流出口103の周囲のドレンが吹き上げられる。そのため、ドレン流入口102の近傍においてドレンが殆ど存在しなくなる場合があり、これはドレン水位が低いほど顕著となる。そうなると、ドレン回収管14の低温ドレンがドレン流入口102に流入し難くなり、混合部105における蒸気とドレンとの混合作用が低下する。その結果、蒸気が分散されずにドレン回収管14に流出するため、ウォーターハンマーを抑制することが困難になる。
【0049】
一方、本実施形態では、図4に示すように、混合部35bで混合した蒸気およびドレンの混合流体は、流出口33からドレン回収管14の上流側へ向かって流出する。そのため、ドレン流入口32に流入した(吸引された)ドレンが、ドレン回収管14の上流側へ供給される(図4に示す破線の矢印を参照)。つまり、ドレン回収管14では、ドレンが没水部26に吸引される一方、その吸引されたドレンが没水部26から上流側に戻される。
【0050】
これにより、没水部26周囲のドレン水位、特に没水部26よりも上流側のドレン水位が維持される。つまり、ドレン流入口32の近傍においてドレンを存在させることができる。そのため、ドレン流入口32へのドレンの流入が維持され、混合部35bにおける蒸気とドレンとの混合作用が維持される。その結果、ドレン回収管14のドレン流量が少ない場合でも、ウォーターハンマーの発生が十分に抑制される。
【0051】
この点、従来のサイレンサでは、流出口103から下方に流出した混合流体は、上流側および下流側へ向かって流れようとする(図3に示す破線の矢印を参照)。下流側へ向かって流れようとする混合流体は、ドレン回収管14におけるドレン流れによってそのまま下流側へ流れる。一方、上流側へ向かって流れようとする混合流体は、ドレン回収管14におけるドレン流れに逆行するため、上流側へは流れ難くなる。そのため、ドレン回収管14では、ドレンが没水部101に吸引される一方、その吸引されたドレンの殆どが没水部101から下流側へ向かって流れる。その結果、没水部101周囲のドレン水位が低下し、ドレン流入口102の近傍においてドレンが存在しなくなる。
【0052】
以上のように、上記実施形態のサイレンサ20は、蒸気の流路35が形成され、ドレン回収管14のドレンに没する没水部26を備えている。没水部26には、流路35に連通し、ドレン回収管14のドレンが流入して蒸気と混合するドレン流入口32と、流路35におけるドレン流入口32よりも下流側の部分に連通し、混合した蒸気およびドレンを、ドレン回収管14の上流側へ向かって流出させる流出口33とが設けられている。
【0053】
上記の構成によれば、ドレン流入口32から流入したドレンを、ドレン回収管14における没水部32よりも上流側に戻すことができる。そのため、没水部26周囲のドレン水位、特に没水部26よりも上流側のドレン水位を維持することができる。そのため、混合部35bにおける蒸気とドレンとの混合作用を維持することができる。その結果、ドレン回収管14のドレン流量が少ない場合でも、ウォーターハンマーの発生を十分に抑制することができる。
【0054】
また、上記実施形態のサイレンサ20において、没水部26には、ドレン回収管14の上流側へ向かって開口させるドレン流入口32が設けられている。
【0055】
上記の構成によれば、効果的にドレン回収管14のドレンをドレン流入口32に流入させることができる。そのため、混合部35bにおける蒸気とドレンとの混合作用をより維持することができる。
【0056】
また、上記実施形態のサイレンサ20において、没水部26は、円柱状に形成されている。流路35は、没水部26の軸方向に延びている。ドレン流入口32は、流路35の側方に設けられ、没水部26の外周面に開口している。流出口33は、流路35の下流端に連通し、没水部26の外周面に開口している。
【0057】
上記の構成によれば、容易にドレン流入口32および流出口33の両方をドレン回収管14の上流側へ向かって開口させることができる。
【0058】
また、上記実施形態のサイレンサ20において、没水部26は、流路35における蒸気を加速減圧させることによって、ドレン回収管14のドレンをドレン流入口32から吸引するように構成されている。
【0059】
上記の構成によれば、確実にドレン回収管14のドレンをドレン流入口32に流入させることができる。したがって、混合部35bにおける蒸気とドレンとの混合作用を確実に発揮させることができる。
【0060】
また、上記実施形態のサイレンサ20において、ドレン流入口32は、没水部26の周方向において複数設けられている。
【0061】
上記の構成によれば、ドレン流入口32へのドレンの必要流入量を容易に確保することができる。
【0062】
(その他の実施形態)
本願に開示の技術は、上記実施形態において以下のような構成としてもよい。
【0063】
例えば、ドレン流入口32の数量は、1つであってもよいし、4つ以外の複数であってもよい。
【0064】
また、ドレン流入口32にドレン回収管14のドレンを流入させることができれば、流路35において絞り部35aを省略するようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、ドレン配管の一例としてドレン回収管14を開示したが、ドレンが流通するドレン配管であれば如何なるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本願に開示の技術は、蒸気をドレンと混合させるサイレンサについて有用である。
【符号の説明】
【0067】
14 ドレン回収管(ドレン配管)
20 サイレンサ
26 没水部
32 ドレン流入口
33 流出口
35 流路
図1
図2
図3
図4