(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】保持具
(51)【国際特許分類】
F16B 5/10 20060101AFI20240322BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20240322BHJP
G09F 3/16 20060101ALI20240322BHJP
G09F 1/10 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F16B5/10 H
F16B5/06 Q
G09F3/16
G09F1/10 G
(21)【出願番号】P 2020183126
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】上野 明也
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-027887(JP,A)
【文献】特開2015-138214(JP,A)
【文献】特開2010-249196(JP,A)
【文献】特開2019-082201(JP,A)
【文献】特開2019-111304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 1/00- 5/04
G09F 3/06
F16B 5/00- 5/12
A45C 13/30
F16B 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する所定長の帯状部材と、前記帯状部材の長手方向略中央部に設けられ前記帯状部材の表面から突出する嵌合用突起と、前記嵌合用突起が嵌合されるように前記帯状部材の長手方向一端部に設けられた嵌合用孔部と、を備え、前記帯状部材を前記長手方向一端部から被保持物のスリットに挿通させた状態で前記帯状部材を折り曲げ前記嵌合用突起を前記嵌合用孔部に嵌合させることにより前記被保持物を保持するように構成された保持具であって、
前記帯状部材の長手方向に沿ってスライドするように前記帯状部材に取り付けられるとともに、前記嵌合用突起と前記嵌合用孔部とが嵌合された嵌合箇所を被覆するように構成されている被覆部材と、
前記嵌合箇所を被覆する位置にある前記被覆部材を前記帯状部材に対して固定する固定手段と、
を備える、保持具。
【請求項2】
前記帯状部材の裏面に装着されるベース部材を備え、
前記ベース部材は、前記帯状部材の長手方向略中央部に設けられた孔部に前記帯状部材の前記裏面から挿入され前記帯状部材の前記表面から突出して前記嵌合用突起を構成する突起を有し、
前記固定手段は、前記ベース部材に設けられた凸部と、前記凸部に嵌合するように前記被覆部材に設けられた凹部と、を有する、請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記被覆部材は、前記嵌合用突起に当接する被当接部を有しており、
前記被覆部材が前記嵌合箇所から離れた位置からスライドして前記嵌合箇所を被覆する位置に到達したときに、前記被当接部が前記嵌合用突起に当接して前記被覆部材のスライドが停止するようになっている、請求項2に記載の保持具。
【請求項4】
前記被覆部材が前記嵌合箇所から離れた位置からスライドして前記嵌合箇所を被覆する位置に到達し、前記被当接部が前記嵌合用突起に当接して前記被覆部材のスライドが停止したときに、前記ベース部材の凸部が前記被覆部材の凹部に嵌合する、請求項3に記載の保持具。
【請求項5】
前記被覆部材が前記嵌合箇所を被覆する位置から離れないように前記被覆部材のスライドを阻止する第一の姿勢と、前記被覆部材が前記嵌合箇所から離れるようにスライドすることを許容する第二の姿勢と、の双方を採るように、前記帯状部材の長手方向に対して略直交しかつ前記帯状部材の表面に対して略平行に配置された軸を中心に回動するように前記帯状部材に取り付けられた板状の回動部材を備える、請求項1から4の何れか一項に記載の保持具。
【請求項6】
前記被覆部材は、断面ロ字状を呈する中空管状部材であり、その対向する一組の内壁には、前記帯状部材の幅方向縁部を各々スライド可能に保持する溝部が設けられている、請求項1から5の何れか一項に記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シート状の被保持物(例えば、名札や名刺を収納するネームホルダ等)を保持するための保持具が種々提案され、実用化されている。例えば、現在においては、名札NTをシャツの胸ポケットPTに取り付けるための留め具1が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる従来の留め具1は、支持本体2と、操作体3と、可動支持体4と、を備えており、名札NTを可動支持体4に引っ掛けた状態で、支持本体2の下支持部12を胸ポケットPTに差し入れ、操作体3を回動操作して可動支持体4を支持本体2に押し付けることにより、可動支持体4の上支持部58と支持本体2の下支持部12で胸ポケットPTの生地を挟持し、かつ、操作体3の突出部56を可動支持体4の開口部70に嵌合させる。これにより、支持本体2を胸ポケットPTに取り付けると同時に、可動支持体4に引っ掛けた名札NTが抜け落ちることを防止できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたような留め具1においては、支持本体2の反対側に操作体3を回動させると、操作体3の突出部56と可動支持体4の開口部70との嵌合(ロック)状態が解除され、その結果、可動支持体4に引っ掛けた名札NTが抜け落ちてしまう虞がある。そこで近年においては、特許文献1に記載されたような一次的なロック機構に加えて、二次的なロック機構を設けた保持具が提案されている。ところが、このような二重のロック機構を備えた従来の保持具は取扱いが容易でない(例えば、ユーザが簡単にロックを外すことが難しい)という問題があった。
【0006】
本発明は、二重のロック機構を有しつつユーザが極めて容易に取り扱うことができる保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、可撓性を有する所定長の帯状部材と、帯状部材の長手方向略中央部に設けられ帯状部材の表面から突出する嵌合用突起と、嵌合用突起が嵌合されるように帯状部材の長手方向一端部に設けられた嵌合用孔部と、を備え、帯状部材を長手方向一端部から被保持物のスリットに挿通させた状態で帯状部材を折り曲げ嵌合用突起を嵌合用孔部に嵌合させることにより被保持物を保持するように構成された保持具であって、帯状部材の長手方向に沿ってスライドするように帯状部材に取り付けられるとともに、嵌合用突起と嵌合用孔部とが嵌合された嵌合箇所を被覆するように構成されている被覆部材と、嵌合箇所を被覆する位置にある被覆部材を帯状部材に対して固定する固定手段と、を備える保持具を提供する。
【0008】
かかる構成を採用すると、帯状部材を長手方向一端部から被保持物のスリットに挿通させた状態で帯状部材を折り曲げ、帯状部材の長手方向略中央部に設けられた嵌合用突起を、帯状部材の長手方向一端部に設けられた嵌合用孔部に嵌合させることにより、被保持物を保持することができる(一次的なロック状態)。そして、帯状部材の長手方向に沿ってスライドするように帯状部材に取り付けられた被覆部材により、嵌合用突起と嵌合用孔部とが嵌合された嵌合箇所を被覆するとともに、その位置にある被覆部材を固定手段で帯状部材に対して固定することができる(二次的なロック状態)。従って、嵌合用突起と嵌合用孔部とが嵌合された嵌合箇所を被覆部材で被覆することができ、かつ、その状態を維持することができるため、嵌合用突起と嵌合用孔部とが嵌合された嵌合箇所が露出することを抑制することができるので、両者の嵌合状態が解除されて被保持物が保持具から取り外されることを防止することができる。一方、固定手段を解除し被覆部材をスライドさせて嵌合箇所から移動させることにより二次的なロック状態を容易に解除することができ、さらに、嵌合用孔部と嵌合用突起との嵌合状態を解除することにより一次的なロック状態をも容易に解除することができる。従って、本保持具は、二重のロック機構を有しつつも取扱いが極めて容易であるという利点がある。
【0009】
本発明に係る保持具において、帯状部材の裏面に装着されるベース部材を備えることができる。かかる場合において、ベース部材は、帯状部材の長手方向略中央部に設けられた孔部に帯状部材の裏面から挿入され帯状部材の表面から突出して嵌合用突起を構成する突起を有することができ、固定手段は、ベース部材に設けられた凸部と、凸部に嵌合するように被覆部材に設けられた凹部と、を有することができる。
【0010】
かかる構成を採用すると、帯状部材の裏面に装着されたベース部材の突起を、帯状部材の孔部に裏面から挿入し表面から突出させて、嵌合用突起を構成することができる。また、ベース部材に設けた凸部と、この凸部に嵌合するように被覆部材に設けた凹部と、によって固定手段を構成することができる。すなわち、嵌合用突起と、固定手段の一部(凸部)と、を共通の部材(ベース部材)で構成することができる。
【0011】
本発明に係る保持具において、被覆部材は、嵌合用突起に当接する被当接部を有することができる。かかる場合において、被覆部材が嵌合箇所から離れた位置からスライドして嵌合箇所を被覆する位置に到達したときに、被当接部が嵌合用突起に当接して被覆部材のスライドが停止するように構成することができる。
【0012】
かかる構成を採用すると、被覆部材を嵌合箇所から離れた位置からスライドさせ、嵌合箇所を被覆する位置に到達させたときに、被覆部材の被当接部を嵌合用突起に当接させて、被覆部材のスライドを停止させることができる。従って、被覆部材を嵌合箇所に向けてスライドさせたときに、被覆部材が嵌合箇所とは異なる位置までスライドすることを抑制することができる。
【0013】
本発明に係る保持具において、被覆部材が嵌合箇所から離れた位置からスライドして嵌合箇所を被覆する位置に到達し、被当接部が嵌合用突起に当接して被覆部材のスライドが停止したときに、ベース部材の凸部が被覆部材の凹部に嵌合するように構成することができる。
【0014】
かかる構成を採用すると、被覆部材が嵌合箇所から離れた位置からスライドして嵌合箇所を被覆する位置に到達し、被当接部が嵌合用突起に当接して被覆部材のスライドが停止したときに、ベース部材の凸部を被覆部材の凹部に嵌合させて、嵌合箇所を被覆する位置にある被覆部材を帯状部材に対して固定することができる。この際、凸部と凹部の嵌合によりユーザにクリック感を提供することができるので、被覆部材が嵌合箇所を被覆する位置に到達して帯状部材に固定されたことをユーザに知らせることができる。
【0015】
本発明に係る保持具において、被覆部材が嵌合箇所を被覆する位置から離れないように被覆部材のスライドを阻止する第一の姿勢と、被覆部材が嵌合箇所から離れるようにスライドすることを許容する第二の姿勢と、の双方を採るように、帯状部材の長手方向に対して略直交しかつ帯状部材の表面に対して略平行に配置された軸を中心に回動するように帯状部材に取り付けられた板状の回動部材を備えることができる。
【0016】
かかる構成を採用すると、回動部材は、被覆部材が嵌合箇所を被覆する位置から離れないように被覆部材のスライドを阻止する第一の姿勢を採ることができるので、固定手段が解除されて被覆部材が帯状部材に対して固定されていない状態となっても、被覆部材が嵌合箇所を被覆する状態を維持することができる。一方、被保持具を保持具から取り外したい場合には、回動部材は、被覆部材が嵌合箇所から離れるようにスライドすることを許容する第二の姿勢を採ることもできる。
【0017】
本発明に係る保持具において、被覆部材として、断面ロ字状を呈する中空管状部材を採用することができる。かかる場合において、被覆部材(中空管状部材)の対向する一組の内壁に、帯状部材の幅方向縁部を各々スライド可能に保持する溝部を設けることができる。
【0018】
かかる構成を採用すると、帯状部材に対する被覆部材(中空管状部材)のスライド動作を、簡素な構成で実現させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、二重のロック機構を有しつつユーザが極めて容易に取り扱うことができる保持具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る保持具の上面図(平面図)である。
【
図2】本発明の実施形態に係る保持具の側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る保持具の正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る保持具の背面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る保持具の下面図(底面図)である。
【
図6】本発明の実施形態に係る保持具を斜め上方から見た場合の斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る保持具の斜め下方から見た場合の斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る保持具が一次的なロック状態(帯状部材を折り曲げて嵌合用突起と嵌合用孔部とを嵌合させた状態)にあるときの上面図(平面図)である。
【
図9】本発明の実施形態に係る保持具が一次的なロック状態にあるときの側面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る保持具が一次的なロック状態にあるときの下面図(底面図)である。
【
図11】本発明の実施形態に係る保持具が一次的なロック状態にあるときを斜め上方から見た場合の斜視図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る保持具が一次的なロック状態にあるときを斜め下方から見た場合の斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る保持具が一次的なロック状態にあるときに
図8のXIII-XIII部分で切断した際の部分断面を含む斜視図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る保持具が二次的なロック状態(被覆部材で嵌合箇所を被覆した状態)にあるときの上面図(平面図)である。
【
図15】本発明の実施形態に係る保持具が二次的なロック状態にあるときの側面図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る保持具が二次的なロック状態にあるときの下面図(底面図)である。
【
図17】本発明の実施形態に係る保持具が二次的なロック状態にあるときを斜め上方から見た場合の斜視図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る保持具が二次的なロック状態にあるときを斜め下方から見た場合の斜視図である。
【
図19】本発明の実施形態に係る保持具が二次的なロック状態にあるときに
図14のXIX-XIX部分で切断した際の部分断面を含む斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
【0022】
本実施形態に係る保持具1は、シート状の被保持物(例えば、名札や名刺を収納するネームホルダ等)を保持するためのものであり、
図1~
図7に示すように、所定長の帯状部材10と、ベース部材20と、被覆部材30と、回動部材40と、を備えている。保持具1は、帯状部材10を長手方向一端部から被保持物のスリットに挿通させた状態で帯状部材10を折り曲げ、嵌合用突起21(後述)を嵌合用孔部12(後述)に嵌合させることにより、被保持物を保持することができるようになっている。
【0023】
帯状部材10は、可撓性を有する比較的軟質の合成樹脂(例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)等)で構成された薄型で帯状の部材であり、その長手方向略中央部には、
図1及び
図6に示すように、ベース部材20に設けられた突起21(後述)を挿通させるための突起挿通用孔部11が設けられている。また、帯状部材10の長手方向一端部には、
図1及び
図5~
図7に示すように、帯状部材10を折り曲げたときに突起21が嵌合される嵌合用孔部12が設けられており、長手方向他端部には、
図1~
図7に示すように、回動部材40を含むピンチカバー機構50が取り付けられている。帯状部材10の長さは、折り曲げた状態で比較的コンパクトな長さ(例えば5cm程度)になるように、7~10cm程度に設定することができる。帯状部材10の幅及び厚さは、帯状部材10を被保持物のスリットに挿通することができるように、当該スリットのサイズに対応させて適宜設定することができる。
【0024】
ベース部材20は、剛性を有する比較的硬質の合成樹脂(例えばABS、ポリプロピレン、ポリアセテート、エンジニアリングプラスチック等)で成形された特定形状を有する部材であり、
図5及び
図7に示すように、帯状部材10の裏面に装着される。ベース部材20の表面には、帯状部材10の長手方向略中央部に設けられた突起挿通用孔部11に帯状部材10の裏面から挿入され帯状部材10の表面から突出する突起21が設けられている(以下、帯状部材10の表面から突出した突起21を「嵌合用突起21」と称する)。本実施形態においては、突起21よりも若干小さい二つの小突起22をベース部材20の表面に設けており、これら小突起22もまた、
図1に示すように、帯状部材10の長手方向略中央部に設けられた小突起挿通用孔部13に帯状部材10の裏面から挿入され、帯状部材10の表面から突出するようになっている。ベース部材20の裏面には、
図7、
図13、
図19等に示すように、被覆部材30の凹部33(後述)に嵌合するように構成された凸部23が設けられている。
【0025】
被覆部材30は、帯状部材10の長手方向略中央部に形成された嵌合用突起21と、帯状部材10の長手方向一端部に設けられた嵌合用孔部12と、が嵌合された嵌合箇所Fを被覆するように機能する部材であり、帯状部材10の長手方向に沿ってスライドするように帯状部材10に取り付けられている。被覆部材30は、剛性を有する比較的硬質の合成樹脂(例えばABS、ポリプロピレン、ポリアセテート、エンジニアリングプラスチック等)で成形された断面ロ字状を呈する中空管状部材であり、
図3に示すように、その対向する一組の内壁(側方の内壁)には、帯状部材10の幅方向縁部14を各々スライド可能に保持する溝部31が設けられている。また、被覆部材30の上方の内壁には、
図13及び
図19に示すように、嵌合用突起21に当接する被当接部32が設けられている。被覆部材30が嵌合箇所Fから離れた位置からスライドして嵌合箇所Fを被覆する位置に到達したときに、被覆部材30の被当接部32が嵌合用突起21に当接して被覆部材30のスライドが停止するようになっている。また、被覆部材30の下方の内壁には、
図13及び
図19に示すように、ベース部材20の凸部23を嵌合させる凹部33が設けられている。
【0026】
ベース部材20の凸部23と、被覆部材30の凹部33と、によって、嵌合用突起21と嵌合用孔部12とが嵌合された嵌合箇所Fを被覆する位置にある被覆部材30を帯状部材10に対して固定する固定手段が構成される。本実施形態においては、
図19に示すように、被覆部材30が嵌合箇所Fから離れた位置からスライドして嵌合箇所Fを被覆する位置に到達し、被覆部材30被当接部32が嵌合用突起21に当接して被覆部材30のスライドが停止したときに、ベース部材20の凸部23が被覆部材30の凹部33に嵌合するようになっている。これによりユーザにクリック感を提供することができ、被覆部材30が嵌合箇所Fを被覆する位置に到達して帯状部材10に固定されたことをユーザに知らせることができる。
【0027】
回動部材40は、
図1~
図7に示すように、帯状部材10の長手方向他端部に取り付けられたピンチカバー機構50に含まれる平面視円形状を呈する板状の部材であり、剛性を有する比較的硬質の合成樹脂(例えばABS、ポリプロピレン、ポリアセテート、エンジニアリングプラスチック等)で成形されている。回動部材40は、被覆部材30が嵌合箇所Fを被覆する位置から離れないように被覆部材30のスライドを阻止する第一の姿勢(
図14~
図18参照)と、被覆部材30が嵌合箇所Fから離れるようにスライドすることを許容する第二の姿勢(
図1~
図12参照)と、の双方を採るように、帯状部材10の長手方向に対して略直交しかつ帯状部材10の表面に対して略平行に配置された横軸53(後述)を中心に回動するように構成されている。
【0028】
ピンチカバー機構50は、帯状部材10の長手方向他端部に取り付けられた機構であり、帯状部材10の表面に対して略直交する縦軸51を中心に回動するように帯状部材10の長手方向他端部に取り付けられた基体部52と、帯状部材10の長手方向に対して略直交しかつ帯状部材10の表面に対して略平行に配置された状態で基体部52に取り付けられた横軸53と、基体部52のうち帯状部材10と反対側の端部に設けられた紐挿通孔54と、を有している。横軸53には、既に述べたように回動部材40が取り付けられており、回動部材40は横軸53を中心に回動して第一の姿勢から第二の姿勢へと(又は第二の姿勢から第一の姿勢へと)その姿勢を変更することができるようになっている。紐挿通孔54には、図示されていない紐を挿通させることができる。ユーザは、保持具1のピンチカバー機構50の紐挿通孔54に挿通させた紐を環状にして首に掛けることにより、保持具1(及びそれによって保持されたネームホルダ等の被保持物)を首から下げることができる。
【0029】
次に、
図8~
図19等を用いて、本実施形態に係る保持具1の使用方法について説明する。
【0030】
被保持物を保持具1に取り付ける際には、まず、
図8~
図13に示すように、保持具1の帯状部材10を、その長手方向一端部から被保持物のスリットに挿通させた状態で折り曲げ、帯状部材10の長手方向略中央部の表面に突出した嵌合用突起21を、帯状部材10の長手方向一端部に設けられた嵌合用孔部12に嵌合させる。これにより、折り曲げられた帯状部材10によって被保持物が挟まれて保持され、嵌合用突起21と嵌合用孔部12との嵌合により一次的なロック状態が実現される。このとき、被覆部材30は、
図13等に示すように、嵌合用突起21と嵌合用孔部12とが嵌合された嵌合箇所Fから離れた位置にある。また、回動部材40は、
図8~
図12に示すように、被覆部材30が嵌合箇所Fから離れるようにスライドすることを許容する第二の姿勢をとっている。
【0031】
次いで、
図14~
図19に示すように、被覆部材30をスライドさせて、嵌合箇所Fを被覆する位置に到達させる。このとき、
図19に示すように、被覆部材30の被当接部32が嵌合用突起21に当接して、被覆部材30のスライドが停止するようになっており、さらにこのとき、ベース部材20の凸部23が被覆部材30の凹部33に嵌合し、ユーザにクリック感を提供することができるようになっている。これにより、二次的なロック状態が実現される。その後、
図14~
図18に示すように、回動部材40を帯状部材10に向けて回動させ、被覆部材30が嵌合箇所Fを被覆する位置から離れないように被覆部材30のスライドを阻止する第一の姿勢へと移行させる。
【0032】
一方、被保持物を保持具1から取り外す際には、上記と逆の手順を経ればよい。すなわち、まず、
図8~
図12に示すように、回動部材40を帯状部材10から離れる方向に回動させることにより、被覆部材30が嵌合箇所Fから離れるようにスライドすることを許容する第二の姿勢へと移行させる。次いで、
図8~
図12に示すように、被覆部材30を、嵌合箇所Fから離れるようにスライドさせる。このとき、
図13に示すように、ベース部材20の凸部23と被覆部材30の凹部33との嵌合も解除される。続いて、
図1~
図7に示すように、嵌合用突起21と嵌合用孔部12との嵌合を解除し、折り曲げられた帯状部材10を延ばし、帯状部材10の長手方向一端部から被保持物を取り外す。かかる手順を経ることにより、被保持物を容易に保持具1から取り外すことができる。
【0033】
以上説明した実施形態に係る保持具1においては、帯状部材10を長手方向一端部から被保持物のスリットに挿通させた状態で帯状部材10を折り曲げ、帯状部材10の長手方向略中央部に設けられた嵌合用突起21を、帯状部材10の長手方向一端部に設けられた嵌合用孔部12に嵌合させることにより、被保持物を保持することができる(一次的なロック状態)。そして、帯状部材10の長手方向に沿ってスライドするように帯状部材10に取り付けられた被覆部材30により、嵌合用突起21と嵌合用孔部12とが嵌合された嵌合箇所Fを被覆するとともに、その位置にある被覆部材30を固定手段で帯状部材10に対して固定することができる(二次的なロック状態)。従って、嵌合用突起21と嵌合用孔部12とが嵌合された嵌合箇所を被覆部材30で被覆することができ、かつ、その状態を維持することができるため、嵌合用突起21と嵌合用孔部12とが嵌合された嵌合箇所Fが露出することを抑制することができるので、両者の嵌合状態が解除されて被保持物が保持具1から取り外されることを防止することができる。一方、固定手段を解除し被覆部材30をスライドさせて嵌合箇所Fから移動させることにより二次的なロック状態を容易に解除することができ、さらに、嵌合用孔部12と嵌合用突起21との嵌合状態を解除することにより一次的なロック状態をも容易に解除することができる。従って、本実施形態に係る保持具1は、二重のロック機構を有しつつも取扱いが極めて容易であるという利点がある。
【0034】
また、以上説明した実施形態に係る保持具1においては、帯状部材10の裏面に装着されたベース部材20の突起21を、帯状部材10の孔部11に裏面から挿入し表面から突出させて、嵌合用突起21を構成することができる。また、ベース部材20に設けた凸部23と、この凸部23に嵌合するように被覆部材30に設けた凹部33と、によって固定手段を構成することができる。すなわち、嵌合用突起21と、固定手段の一部(凸部23)と、を共通の部材(ベース部材20)で構成することができる。
【0035】
また、以上説明した実施形態に係る保持具1においては、被覆部材30を嵌合箇所Fから離れた位置からスライドさせ、嵌合箇所Fを被覆する位置に到達させたときに、被覆部材30の被当接部32を嵌合用突起21に当接させて、被覆部材30のスライドを停止させることができる。従って、被覆部材30を嵌合箇所Fに向けてスライドさせたときに、被覆部材30が嵌合箇所Fとは異なる位置までスライドすることを抑制することができる。
【0036】
また、以上説明した実施形態に係る保持具1においては、被覆部材30が嵌合箇所Fから離れた位置からスライドして嵌合箇所Fを被覆する位置に到達し、被当接部32が嵌合用突起21に当接して被覆部材30のスライドが停止したときに、ベース部材20の凸部23を被覆部材30の凹部33に嵌合させて、嵌合箇所Fを被覆する位置にある被覆部材30を帯状部材10に対して固定することができる。この際、凸部23と凹部33の嵌合によりユーザにクリック感を提供することができるので、被覆部材30が嵌合箇所Fを被覆する位置に到達して帯状部材10に固定されたことをユーザに知らせることができる。
【0037】
また、以上説明した実施形態に係る保持具1における回動部材40は、被覆部材30が嵌合箇所Fを被覆する位置から離れないように被覆部材30のスライドを阻止する第一の姿勢を採ることができるので、固定手段が解除されて被覆部材30が帯状部材10に対して固定されていない状態となっても、被覆部材30が嵌合箇所Fを被覆する状態を維持することができる。一方、被保持具を保持具1から取り外したい場合には、回動部材40は、被覆部材30が嵌合箇所Fから離れるようにスライドすることを許容する第二の姿勢を採ることもできる。
【0038】
また、以上説明した実施形態に係る保持具1においては、被覆部材30として、断面ロ字状を呈する中空管状部材を採用し、被覆部材30の対向する一組の内壁に、帯状部材10の幅方向縁部14を各々スライド可能に保持する溝部31を設けているため、帯状部材10に対する被覆部材30のスライド動作を簡素な構成で実現させることができる。
【0039】
なお、以上の実施形態においては、嵌合用突起21と、嵌合用凹部12と、を一つずつ設けた例を示したが、嵌合用突起及び嵌合用凹部の個数はこれに限られるものではなく、各々複数個ずつ設けることもできる。例えば、本実施形態における二つの小突起22をも嵌合用突起として機能させ、これら二つの小突起22を各々嵌合させるための二つの嵌合用凹部をさらに設けることもできる。
【0040】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、この実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0041】
1…保持具
10…帯状部材
11…突起挿通用孔部
12…嵌合用孔部
14…幅方向縁部
20…ベース部材
21…突起(嵌合用突起)
23…凸部(固定手段)
30…被覆部材
31…溝部
32…被当接部
33…凹部(固定手段)
40…回動部材
53…横軸
F…嵌合箇所