(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】吊り工具及び吊上げ方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20240322BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/00
(21)【出願番号】P 2020196566
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】後藤 政則
(72)【発明者】
【氏名】木村 翔
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-43107(JP,U)
【文献】特開2014-147274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕金を含む装柱物を吊り上げるために用いられる吊り工具であって、
前記腕金をクランプするためのクランプ部と、
吊り装置と接続可能な吊上げ部と、
前記クランプ部と前記吊上げ部との間に設けられるクラッチ部と、
を備え、
前記クランプ部は、ネジ軸の回転によって前記腕金を押圧/押圧解除することが可能な押圧部材を備え、
前記クラッチ部は、前記吊上げ部の下方で前記吊上げ部に対して昇降可能な昇降部材を備え、
前記昇降部材と前記吊上げ部との距離が長い状態では、前記クラッチ部は、前記吊上げ部の回転を前記ネジ軸に伝達しない遮断状態となり、
前記昇降部材と前記吊上げ部との距離が短い状態では、前記クラッチ部は、前記吊上げ部の回転を前記ネジ軸に伝達する接続状態となり、
前記吊り装置で前記吊上げ部を吊り上げた場合に、重力により、前記昇降部材と前記吊上げ部との距離が長い状態となることを特徴とする吊り工具。
【請求項2】
請求項1に記載の吊り工具であって、
前記昇降部材と前記吊上げ部との距離を増加させる方向の弾性力を加える弾性部材を備えることを特徴とする吊り工具。
【請求項3】
請求項2に記載の吊り工具であって、
前記弾性部材の弾性力は、前記吊上げ部が前記吊り装置に接続されていない状態で、前記吊上げ部の重量に抗して前記吊上げ部を押し上げて前記クラッチ部を前記遮断状態とすることが可能な大きさであることを特徴とする吊り工具。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の吊り工具であって、
前記クラッチ部は、前記吊上げ部と一体的に、上下方向の回転軸を中心として回転する回転入力部材を備え、
前記回転入力部材及び前記昇降部材の一方には、突起が設けられ、
前記回転入力部材及び前記昇降部材の他方には、
差し込まれた前記突起が周方向に移動可能な環状溝として形成された第1凹部と、
前記第1凹部に接続し、差し込まれた前記突起が周方向に移動するのを阻止する第2凹部と、
が形成され、
前記突起が前記第1凹部に入ることで、前記クラッチ部が前記遮断状態となり、
前記突起が前記第2凹部に入ることで、前記クラッチ部が前記接続状態となることを特徴とする吊り工具。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の吊り工具であって、
前記クランプ部はC字状に形成されることを特徴とする吊り工具。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の吊り工具であって、
前記クランプ部に着脱可能に取り付けられ、接地面より上方で前記クランプ部を支持する支持部を備えることを特徴とする吊り工具。
【請求項7】
請求項6に記載の吊り工具であって、
前記クランプ部が前記支持部に装着された状態でロックするロック部を備えることを特徴とする吊り工具。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の吊り工具であって、
前記支持部は、開閉可能な複数の脚部を備えることを特徴とする吊り工具。
【請求項9】
ネジ軸の回転に伴って腕金を押圧/押圧解除することが可能な押圧部材によって前記腕金をクランプするためのクランプ部と、
吊り装置と接続可能な吊上げ部と、
前記クランプ部と前記吊上げ部との間に設けられるクラッチ部と、
を備える吊り工具を用いて、腕金を含む装柱物を吊り上げる吊上げ方法であって、
前記吊上げ部と、前記吊上げ部の下方で前記吊上げ部に対して昇降可能な昇降部材と、の距離が短い状態とすることで、前記クラッチ部を、前記吊上げ部の回転が前記ネジ軸に伝達される接続状態として、前記吊上げ部とともに前記ネジ軸を回転させて、前記腕金を前記押圧部材によってクランプさせるクランプ工程と、
前記吊り装置で前記吊上げ部を吊り上げることで、重力により、前記昇降部材と前記吊上げ部との距離が長い状態とし、これに伴って、前記クラッチ部を、前記吊上げ部の回転が前記ネジ軸に伝達されない遮断状態とする吊り工程と、
を含むことを特徴とする吊上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕金を含む装柱物の吊上げに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、装柱物を電柱等の支柱に取り付けるための吊り工具が知られている。特許文献1は、この種の吊り工具を開示する。
【0003】
特許文献1の吊り工具は、向かい合うように配置されたリンク部材と補助フレームを備える。リンク部材と補助フレームとの間に、トンボ腕金の保持用の保持部が形成されている。リンク部材にはロック部材が接続され、このロック部材は、補助フレームの先端部に係合することができる。この係合状態において、締付部材をロック部材の先端部に螺合させて締め付けることにより、保持部内のトンボ腕金の保持状態をロックすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、トンボ腕金の保持状態をロックした後でも、吊上げ作業の過程で、例えば締付部材が周辺の物に接触した場合、締付けが緩み、ロック及び保持が意図せず解除されるおそれがあった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、吊上げ時の意図しないクランプ解除を防止することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の取付け工具が提供される。即ち、この取付け工具は、腕金を含む装柱物を吊り上げるために用いられる。前記吊り工具は、クランプ部と、吊上げ部と、クラッチ部と、を備える。前記クランプ部は、前記腕金をクランプする。前記吊上げ部は、吊り装置と接続可能である。前記クラッチ部は、前記クランプ部と前記吊上げ部との間に設けられる。前記クランプ部は、ネジ軸の回転によって前記腕金を押圧/押圧解除することが可能な押圧部材を備える。前記クラッチ部は、前記吊上げ部の下方で前記吊上げ部に対して昇降可能な昇降部材を備える。前記昇降部材と前記吊上げ部との距離が長い状態では、前記クラッチ部は、前記吊上げ部の回転を前記ネジ軸に伝達しない遮断状態となる。前記昇降部材と前記吊上げ部との距離が短い状態では、前記クラッチ部は、前記吊上げ部の回転を前記ネジ軸に伝達する接続状態となる。前記吊り装置で前記吊上げ部を吊り上げた場合に、重力により、前記昇降部材と前記吊上げ部との距離が長い状態となる。
【0009】
この構成で、吊上げ部が吊り装置によって吊り上げられる場合、昇降部材と吊上げ部との間の距離が長い状態になる。従って、クラッチ部が自動的に遮断状態になるので、吊上げ部の回転がネジ軸に伝達されない。この結果、吊上げ時に腕金のクランプが意図せず解除されるのを防止することができる。
【0010】
前記の吊り工具においては、前記昇降部材と前記吊上げ部との距離を増加させる方向の弾性力を加える弾性部材を備えることが好ましい。
【0011】
これにより、吊上げ部が吊り上げられる場合に、クラッチ部を確実に遮断状態とすることができる。
【0012】
前記の吊り工具においては、前記弾性部材の弾性力は、前記吊上げ部が前記吊り装置に接続されていない状態で、前記吊上げ部の重量に抗して前記吊上げ部を押し上げて前記クラッチ部を前記遮断状態とすることが可能な大きさであることが好ましい。
【0013】
これにより、吊り工具が吊り上げられる前の段階においても、クラッチ部を遮断状態で維持することができる。
【0014】
前記の吊り工具においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記クラッチ部は、前記吊上げ部と一体的に、上下方向の回転軸を中心として回転する回転入力部材を備える。前記回転入力部材及び前記昇降部材の一方には、突起が設けられる。前記回転入力部材及び前記昇降部材の他方には、第1凹部と、第2凹部と、が形成される。前記第1凹部は、差し込まれた前記突起が周方向に移動可能な環状溝として形成される。前記第2凹部は、前記第1凹部に接続して形成される。前記第2凹部は、差し込まれた前記突起が周方向に移動するのを阻止する。前記突起が前記第1凹部に入ることで、前記クラッチ部が前記遮断状態となる。前記突起が前記第2凹部に入ることで、前記クラッチ部が前記接続状態となる。
【0015】
これにより、簡素でコンパクトな構成のクラッチ部を実現できる。
【0016】
前記の吊り工具においては、前記クランプ部はC字状に形成されることが好ましい。
【0017】
これにより、簡素かつ軽量な構成のクランプ部を実現できる。
【0018】
前記の吊り工具においては、前記クランプ部に着脱可能に取り付けられ、接地面より上方で前記クランプ部を支持する支持部を備えることが好ましい。
【0019】
これにより、腕金に対する作業が容易になる。また、作業完了後に、腕金とともに吊り工具を簡単な作業で吊り上げることができる。
【0020】
前記の吊り工具においては、前記クランプ部が前記支持部に装着された状態でロックするロック部を備えることが好ましい。
【0021】
これにより、クランプ部が支持部から意図せず外れないようにすることができる。
【0022】
前記の吊り工具においては、前記支持部は、開閉可能な複数の脚部を備えることが好ましい。
【0023】
これにより、吊り工具の非使用時に、支持部をコンパクトに収納することができる。
【0024】
本発明の第2の観点によれば、以下の吊上げ方法が提供される。即ち、この吊上げ方法は、クランプ部と、吊上げ部と、クラッチ部と、を備える吊り工具を用いて、腕金を含む装柱物を吊り上げる。前記クランプ部は、ネジ軸の回転に伴って腕金を押圧/押圧解除することが可能な押圧部材によって前記腕金をクランプする。前記吊上げ部は、吊り装置と接続可能である。前記クラッチ部は、前記クランプ部と前記吊上げ部との間に設けられる。前記吊上げ方法は、クランプ工程と、吊り工程と、を含む。前記クランプ工程では、前記吊上げ部と、前記吊上げ部の下方で前記吊上げ部に対して昇降可能な昇降部材と、の距離が短い状態とすることで、前記クラッチ部を、前記吊上げ部の回転が前記ネジ軸に伝達される接続状態とする。前記クランプ工程では、前記クラッチ部の接続状態において、前記吊上げ部とともに前記ネジ軸を回転させて、前記腕金を前記押圧部材によってクランプさせる。前記吊り工程では、前記吊り装置で前記吊上げ部を吊り上げることで、重力により、前記昇降部材と前記吊上げ部との距離が長い状態とし、これに伴って、前記クラッチ部を、前記吊上げ部の回転が前記ネジ軸に伝達されない遮断状態とする。
【0025】
この方法では、吊上げ部が吊り装置によって吊り上げられる吊り工程において、昇降部材と吊上げ部との間の距離が長い状態になる。従って、クラッチ部が自動的に遮断状態になるので、吊上げ部の回転がネジ軸に伝達されない。この結果、吊上げ時に腕金のクランプが意図せず解除されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吊り工具の側面図。
【
図9】
図8の状態から吊上げ部及び回転筒が下降した状態を示す断面図。
【
図10】
図9の状態から吊上げ部、回転筒及びネジ軸を回転させ、ネジ送りで押圧部材を下降させた状態を示す断面図。
【
図14】吊り工具を使用して腕金を吊り上げる様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。まず、
図1から
図3までを参照して、本発明の一実施形態に係る吊り工具1の全体的な構成について説明する。
図1は、吊り工具1の側面図である。
図2は、吊り工具1の正面図である。
図3は、吊り工具1の斜視図である。
【0028】
吊り工具1は、
図14に示す支柱9の上部に腕金3等の装柱物を固定する作業において、装柱物を吊り上げるために用いられる。腕金3は、直線状に細長い部材である。腕金3の適宜の位置には図略の帯状の部材(ハンガバンド)が固定されており、この部材を介して、当該腕金3を支柱9に固定することができる。吊り工具1は、腕金3とともに、ウインチ等の吊り装置7により吊り上げることができる。
【0029】
詳細は後述するが、吊り工具1は、支柱9に腕金3が取り付けられる前に、腕金3に碍子5等の器具を取り付けるために用いることもできる。従って、吊り工具1は取付け工具と呼ぶこともできる。
【0030】
吊り工具1を用いて腕金3に碍子5が取り付けられるとき、腕金3は支柱9から取り外された状態である。腕金3への碍子5の取付けは、例えば、吊り工具1が地上に設置された状態で行われる。その後、碍子5が取り付けられた腕金3が吊り装置7により吊り上げられて、支柱9の上部の所定箇所に取り付けられる。
【0031】
図1から
図3までに示すように、吊り工具1は、クランプ部11と、吊上げ部13と、クラッチ部15と、支持スタンド(支持部)17と、を備えている。以下では、各構成の相対的な位置関係等を説明するために、
図1から
図3までに示す矢印に従って吊り工具1の前後方向、左右方向、及び上下方向を定義する。ただし、これらの方向の定義は便宜的なものである。左右方向は、吊り工具1に取り付けられる腕金3の長手方向と一致する。後方向は、腕金3をクランプ部11にセットする方向である。前方向は、腕金3をクランプ部11から取り外す方向である。
【0032】
クランプ部11、吊上げ部13、及びクラッチ部15は、吊り工具1の上部に設けられている。クランプ部11は、吊上げ部13の下方に位置する。クラッチ部15は、上下方向においてクランプ部11と吊上げ部13との間に配置されている。支持スタンド17は、吊り工具1の下部に設けられている。
【0033】
次に、
図4、
図5及び
図6を参照して、吊り工具1のクランプ部11について説明する。
図4は、吊り工具1の上部の側面図である。
図5は、吊り工具1の上部の正面図である。
図6は、吊り工具1の上部の底面図である。
【0034】
クランプ部11は、腕金3をクランプすることができる。
図4及び
図5に示すように、クランプ部11は、中空状に構成されている。クランプ部11の内部空間31は、左右方向両側が開口するとともに、前方が開放されている。クランプ部11は、腕金3を左右方向に向けた状態で内部空間31に通し、移動不能に固定することができる。
【0035】
本実施形態では、クランプ部11は、前方に向かって開口するC字状に形成されている。クランプ部11は、第1延長部21と、第2延長部23と、第3延長部25と、押圧部材27と、装着部29と、を有している。
【0036】
第1延長部21は、前後方向に延びるように設けられている。第2延長部23は、上下方向に延びるように設けられている。第3延長部25は、前後方向に延びるように設けられている。第1延長部21と第3延長部25とは、上下方向に所定間隔をあけて対向するように略平行に配置されている。第2延長部23は、第1延長部21と第3延長部25との間に配置されている。
【0037】
第2延長部23の下端部に、第1延長部21の後端部が連結されている。第2延長部23の上端部に、第3延長部25の後端部が連結されている。これにより、第1延長部21、第2延長部23、及び第3延長部25は、全体として略C字状となるように連続的に設けられている。
【0038】
クランプ部11のうち第1延長部21、第2延長部23及び第3延長部25は、C字状の板状部材を1対で配置することで構成される。2つの板状部材の間には、
図3に示すように適宜の隙間が形成されている。
【0039】
押圧部材27は、クランプ部11の内部空間31(第1延長部21、第2延長部23、第3延長部25により囲まれた空間)に配置され、上下方向に移動可能に設けられている。押圧部材27は、内部空間31に対して第3延長部25に近い側(上側)に位置する。内部空間31に腕金3を入れた状態で押圧部材27が下へ移動することで、当該押圧部材27と第1延長部21とで腕金3を上下方向で挟むことができる。この結果、腕金3の長手方向途中部をクランプ部11に固定することができる。
【0040】
押圧部材27の上下方向の移動は、クラッチ部15を介したネジ軸51の回転により行われる。この点については後述する。
【0041】
図4に示すように、第1延長部21の前端部には、上向きに突出する第1ストッパ33が形成される。押圧部材27の前端部には、下向きに突出する第2ストッパ35が形成される。第1ストッパ33と第2ストッパ35とは、上下方向で互いに対向するように配置されている。第1ストッパ33及び第2ストッパ35は、内部空間31の前方の開口を一部閉鎖する。第1延長部21と押圧部材27とで腕金3が挟まれた状態で、腕金3がクランプ部11から抜けるのを第1ストッパ33及び第2ストッパ35により防止することができる。
【0042】
装着部29は、クランプ部11を支持スタンド17に着脱可能に取り付けるために用いられる。装着部29は、クランプ部11の下側に設けられている。装着部29は、ブロック状に形成されている。装着部29には、挿入孔が上下方向に形成されている。底面図である
図6に示すように、挿入孔の内部には、後述の支持スタンド17の突出部89を挿入可能な挿入空間37が形成されている。
【0043】
装着部29には、第1ピン41と、第2ピン43と、が設けられている。第1ピン41及び第2ピン43は、装着部29に水平方向に差し込まれている。第1ピン41及び第2ピン43は、向きを互いに異ならせて配置されている。第1ピン41は、円形の挿入空間37の中心に向かって突出し、第2ピン43は、挿入空間37の接線方向に沿って突出している。
【0044】
第1ピン41及び第2ピン43のそれぞれは、その長手方向に移動可能となるように装着部29に支持される。第1ピン41及び第2ピン43は、挿入空間37の内部に突出したロック位置と、挿入空間37から退避したロック解除位置と、の間で移動することができる。
図6には、第1ピン41及び第2ピン43のロック位置が実線又は破線で示され、ロック解除位置が鎖線で示されている。このように、第1ピン41及び第2ピン43は、装着部29が支持スタンド17に装着された状態を保持するロック部として機能する。
【0045】
第1ピン41及び第2ピン43には、作業者が指を掛けるためのハンドル部が設けられている。図示しないが、装着部29には、第1ピン41及び第2ピン43の位置を保持するための公知のデテント機構が設けられている。
【0046】
次に、
図4及び
図5を参照して、吊り工具1の吊上げ部13について説明する。
【0047】
吊上げ部13は、腕金3が吊り装置7により吊り上げられるときに当該吊り装置7と接続される。吊上げ部13は、クランプ部11の上側に配置されている。吊上げ部13は、クラッチ部15を介して、クランプ部11と連結されている。
【0048】
吊上げ部13には、開口部49が形成される。これにより、
図14に示すように、吊り装置7の吊上げロープ47の下端に固定されたフックを、吊上げ部13に掛けて接続することができる。開口部49が形成されたリング状の部分は、作業者が吊上げ部13を回転させるために指を掛けるハンドル部としても機能する。吊上げ部13は、C字形状を有するクランプ部11の前後幅及び左右幅よりもそれぞれ小さい前後幅及び左右幅を有し、小型化が図られている。
【0049】
次に、
図4、
図5、
図7、
図8、
図9、及び
図10を参照して、吊り工具1のクラッチ部15について説明する。
図7は、
図5の一部拡大図である。
図8は、
図7のA-A断面矢視図である。
図9は、
図8の状態から吊上げ部13及び回転筒53が下降した状態を示す断面図である。
図10は、
図9の状態から吊上げ部13、回転筒53及びネジ軸51を回転させ、ネジ送りで押圧部材27を下降させた状態を示す断面図である。
【0050】
図4及び
図5に示すように、クラッチ部15は、クランプ部11と吊上げ部13との間に設けられている。クラッチ部15が備えるネジ軸51を回転させることにより、クランプ部11による腕金3の保持/保持解除を切り換えることができる。具体的には、ネジ軸51の回転によるネジ送りによって、押圧部材27の上下位置を変更することができる。これにより、第1延長部21と押圧部材27とで腕金3を挟んだ状態と、押圧部材27が腕金3から離れた状態と、を切り換えることができる。
【0051】
図7及び
図8に示すように、クラッチ部15は、ネジ軸(昇降部材)51と、回転筒(回転入力部材)53と、第1弾性部材(弾性部材)55と、を有している。ネジ軸51は、クランプ部11に対して、上下方向の軸を中心として相対回転可能に設けられている。ネジ軸51はクランプ部11に対してネジ結合されているので、前記の相対回転に連動して、ネジ軸51は、クランプ部11に対して上下方向に相対移動可能である。ネジ軸51の上部は、クランプ部11の上方に突出している。ネジ軸51の上端は、回転筒53により覆われている。
【0052】
ネジ軸51は、軸状部材から構成されている。ネジ軸51は、軸方向が上下方向に沿うように配置されている。ネジ軸51は、第3延長部25を上下方向に貫通するように設けられている。ネジ軸51の突出端部(下端部)には、押圧部材27が相対回転可能に支持されている。
【0053】
ネジ軸51には、オネジ部67が設けられている。オネジ部67は、第3延長部25に固定されたナット部69のメネジ部にねじ込まれている。こうして、ネジ軸51が、第3延長部25(クランプ部11)と連結されている。ネジ軸51が一側に回転すると、ネジ軸51が下方へ移動し、反対側に回転すると、ネジ軸51が上方へ移動する。
【0054】
押圧部材27は、ネジ軸51の移動に伴って、上下方向に移動する。押圧部材27は、クランプ部11が備える2つのC字状の板状部材の間に挟まれるように配置される。これにより、ネジ軸51が回転しても、押圧部材27がつられて回転しないようにすることができる。
【0055】
ネジ軸51において、第3延長部25から上方へ突出する部分に、第1溝部(第1凹部)71と、第2溝部(第2凹部)73と、が形成されている。第2溝部73は、本実施形態では複数(4つ)形成されている。
【0056】
第1溝部71は、ネジ軸51の周方向に延びる環状に形成されている。
【0057】
複数の第2溝部73は、上下方向(回転筒53の回転軸と平行な方向)に延びるように形成されている。複数の第2溝部73は何れも、第1溝部71の下方に配置されている。それぞれの第2溝部73の上端は、第1溝部71と接続されている。複数の第2溝部73は、ネジ軸51の周方向において所定間隔毎に配置されている。
【0058】
第1溝部71及び第2溝部73には、回転筒53における後述の突起79を差込可能に構成されている。第1溝部71と第2溝部73との間で、突起79が移動することができる。
【0059】
図8のように第1溝部71に突起79が入っている場合、回転筒53はネジ軸51に対して相対回転可能である。この状態は、ネジ軸51と吊上げ部13との距離L1が相対的に長い状態であり、クラッチ部15の遮断状態に対応する。
【0060】
図9及び
図10のように第2溝部73に突起79が入っている場合、回転筒53はネジ軸51に対して相対回転不能である。この状態は、ネジ軸51と吊上げ部13との距離L1が相対的に短い状態であり、クラッチ部15の接続状態に対応する。
【0061】
回転筒53は、ネジ軸51の上部を側方及び上方から覆うように配置されている。回転筒53は、吊上げ部13と連結されている。回転筒53は、ネジ軸51に対して上下方向に移動可能に設けられている。
【0062】
回転筒53は、一端が閉鎖された筒部77を有している。筒部77は、開口部が下方を向くように配置されている。閉鎖側である筒部77の上端部には、吊上げ部13が固定されている。筒部77の開口部には、ネジ軸51の上端が挿入されている。筒部77は、ネジ軸51と同軸に配置されている。筒部77の内径は、ネジ軸51の上部の外径と略等しい。
【0063】
筒部77には、突起79が固定されている。突起79は、回転筒53から径方向内側へ突出するように設けられている。本実施形態では、突起79は、ボルトにより構成され、第2溝部73と等しい数(4個)備えられている。複数の突起79は、筒部77の周方向に等間隔で並べて配置されている。
【0064】
第1弾性部材55は、回転筒53の内部であって、ネジ軸51の上方に配置されている。第1弾性部材55は、回転筒53の閉鎖された端部と、ネジ軸51の上面と、の間に配置されている。第1弾性部材55は、本実施形態ではバネにより構成される。バネの伸縮方向は、上下方向に向けられている。
【0065】
回転筒53は、第1弾性部材55によりネジ軸51に対して上方へ押される。このバネ力は回転筒53及び吊上げ部13の重さよりも大きいので、回転筒53は通常、
図8に示すように、ネジ軸51に対して上方に離れた位置になる。このとき、突起79は第1溝部71に位置する。この状態では、回転筒53が、ネジ軸51の上部に対して相対回転可能となる。
【0066】
図8の状態では、回転筒53が回転しても、その回転はネジ軸51に伝達されない。よって、押圧部材27がネジ移動することはない。このように、クランプ部11による腕金3のクランプ/クランプ解除を切り換えることは実質的にできない。
【0067】
図9に示すように、外部からの力によって、回転筒53を、第1弾性部材55が押す力に抗して下側へ押すことができる。これに伴って、突起79は第1溝部71から第2溝部73に移動する。この状態では、回転筒53が、ネジ軸51の上部に対して相対回転不能となる。
【0068】
図9の状態では、回転筒53の回転をネジ軸51に伝達することができる。よって、ネジ軸51の回転によって押圧部材27を上下方向にネジ移動させて、クランプ部11による腕金3のクランプ/クランプ解除を切り換えることができる。
図10には、押圧部材27を少し下降させて腕金3をクランプした状態が示されている。
【0069】
次に、
図11、
図12及び
図13を参照して、吊り工具1の支持スタンド17について説明する。
図11は、吊り工具1の下部の側面図である。
図12は、吊り工具1の下部の正面図である。
図13は、吊り工具1の下部の底面図である。
【0070】
支持スタンド17は、クランプ部11に対して下側から装着される。支持スタンド17は、クランプ部11等を、支持スタンド17の設置面に対して上方に離れた状態で支持することができる。クランプ部11を支持スタンド17から上に引き抜くようにして取り外すこともできる。
図11及び
図12に示すように、支持スタンド17は、基部81と、複数の脚部83と、を有している。
【0071】
基部81は、支持スタンド17の上部に配置されている。基部81は、クランプ部11の装着部29に着脱可能である。基部81は、フレーム87と突出部89とから構成されている。フレーム87は、板状の部材を逆U字状に折り曲げて形成されている。フレーム87の内部には、複数の脚部83の長手方向一端部(上端部)が挿入されている。それぞれの脚部83は、フレーム87に対して回転可能に支持されている。
【0072】
突出部89は、フレーム87の上面から上方へ突出するように設けられている。突出部89は、円柱状に形成されている。突出部89は、クランプ部11が備える装着部29の挿入空間37に、下方から挿入可能である。突出部89の先端部(上端部)には、先細状のテーパ部が形成されている。これにより、突出部89を装着部29の挿入空間37に円滑に挿入することができる。
【0073】
突出部89には、複数(本実施形態では4個)の孔部91が形成されている。複数の孔部91は、突出部89の周方向に等しい間隔をあけて並べて配置されている。複数の孔部91は、それぞれ、円柱状の突出部89の径方向に延びるように形成されている。孔部91には、装着部29に設けられた第1ピン41を、孔部91の長手方向に挿入することができる。
【0074】
突出部89には、第3溝部93が形成されている。第3溝部93は、突出部89の周方向に延びる環状に形成されている。第3溝部93には、装着部29に設けられた第2ピン43を、環状の第3溝部93の接線方向に挿入することができる。
【0075】
支持スタンド17にクランプ部11を取り付ける場合、まず、支持スタンド17の突出部89をクランプ部11における装着部29の挿入空間37に挿入するようにして、クランプ部11を上側から支持スタンド17に装着する。このとき、装着部29の第1ピン41及び第2ピン43は、挿入空間37に突出しないロック解除位置に移動させられている。
【0076】
次に、第2ピン43をロック位置へ移動させて、突出部89の第3溝部93に嵌める。これにより、クランプ部11の抜止めを行うことができる。
【0077】
次に、支持スタンド17に対してクランプ部11を回転させて適宜の向きに調整した状態で、突出部89の何れかの孔部91に装着部29の第1ピン41を挿入する。これにより、クランプ部11の回転止めを行うことができる。
【0078】
支持スタンド17をクランプ部11から取り外す場合、第1ピン41及び第2ピン43をロック解除位置に移動させて、クランプ部11を支持スタンド17から引き上げれば良い。
【0079】
複数の脚部83は、上下方向から傾斜した向きに延びるように設けられている。複数の脚部83は、平面視で概ね放射状となるように配置されている。各脚部83は、水平な軸を中心として回転可能となるように基部81に支持されている。複数の脚部83は、その姿勢を、
図11に実線で示す展開姿勢と、鎖線で示す収納姿勢と、の間で変更することができる。
【0080】
展開姿勢は、開脚姿勢と呼ぶこともできる。複数の脚部83を展開姿勢とすることで、支持スタンド17を、設置面上で自立させることができる。この状態で、支持スタンド17に対してクランプ部11が取り付けられたり、取り外されたりする。
【0081】
収納姿勢は、複数の脚部83をまとめて配置した姿勢である。複数の脚部83を収納姿勢とすることで、支持スタンド17をコンパクトな状態にすることができる。
【0082】
支持スタンド17には、脚部ロック具101が設けられている。脚部ロック具101により、複数の脚部83を展開姿勢でロックしたり、当該ロックを解除したりすることができる。脚部ロック具101は、第3ピン103と、ストッパ104と、カム105と、第2弾性部材107と、を有している。
【0083】
図13に示すように、第3ピン103は、左右方向に延びるように、基部81のフレーム87に設けられている。第3ピン103は、直線状の部材であり、フレーム87の内部空間を貫通するように配置されている。第3ピン103は、長手方向の軸を中心として回転可能、かつ、軸方向に移動可能となるように、フレーム87に支持されている。第3ピン103には、指を掛けることが可能なハンドル部が形成されている。ハンドル部は、第3ピン103と一体的に回転する。
【0084】
図11及び
図12に示すように、ストッパ104は、基部81が備えるフレーム87の内側であって、脚部83の上端部近傍に設けられている。ストッパ104は、板状の部材である。脚部83が展開姿勢になると、脚部83の適宜位置にストッパ104が当たって、脚部83がそれ以上に開脚方向に回転するのを阻止する。
【0085】
カム105は、フレーム87内に配置されている。カム105は、第3ピン103の軸方向途中部に固定され、第3ピン103と一体的に回転する。カム105は、実質的に長方形状を有する。
図11のようにカム105の長手方向が水平方向に向けられるとロック状態となり、この状態では、カム105は、脚部83が展開姿勢から格納姿勢へ変化するのを阻止する。カム105の長手方向が上下方向に向けられるとロック解除状態となり、この状態では、脚部83は展開姿勢と格納姿勢との間で自由に変化することができる。
【0086】
第2弾性部材107は、フレーム87と、ハンドル部と、の間に配置されている。第2弾性部材107は、コイルバネとして構成され、その内部に第3ピン103が挿入されている。
図13等に示すように、第3ピン103のうちハンドル部と反対側の端部には、止め板109が固定されている。止め板109は、第3ピン103と一体的に回転可能であり、かつ、第3ピン103と一体的に軸方向に移動可能である。止め板109には突起111が設けられ、この突起111に対応して、フレーム87に孔113が形成されている。カム105が
図11に示すロック状態となる位相で、突起111が孔113に入ることができる。第2弾性部材107は、突起111を孔113に差し込む方向の力を第3ピン103に加える。
【0087】
カム105が
図11に示すロック状態であるとき、突起111が孔113に差し込まれているので、第3ピン103及びカム105は回転不能である。ロック状態であるカム105をロック解除状態に切り換える場合、作業者は、第2弾性部材107に抗してハンドル部を第3ピン103の軸方向に押し込んで、止め板109の突起111を孔113から抜く。これにより、第3ピン103及びカム105が回転可能になる。その状態でハンドル部とともにカム105を約90°回転させることで、カム105をロック解除状態とすることができる。この状態では、脚部83が開閉可能である。支持スタンド17の非使用時には、脚部83を格納姿勢として、コンパクトな状態で搬送、収納等を行うことができる。
【0088】
ロック解除状態であるカム105をロック状態に切り換える場合、作業者は、事前に脚部83を展開姿勢としておく。次に、作業者は、ハンドル部を約90°回転させる。止め板109の突起111が孔113の位置と一致すると、第2弾性部材107の力により、突起111が孔113に差し込まれる。これにより、第3ピン103及びカム105が回転不能となる。この位相で、カム105は
図11に示すロック状態となっているので、脚部83が意図せず収納姿勢に変化することはない。
【0089】
次に、
図1、
図2及び
図14を参照して、吊り工具1の利用法の一例について説明する。
図14は、吊り工具1を使用して腕金3を吊り上げる様子を示す図である。
【0090】
吊り工具1を使用する場合、事前に、支持スタンド17の脚部83を収納姿勢から展開姿勢に変更し、脚部ロック具101をロック状態にしておく。支持スタンド17を地面に設置した後、この支持スタンド17にクランプ部11を取り付ける。クランプ部11は、第1ピン41及び第2ピン43をロック位置に移動させることにより支持スタンド17に固定される。
【0091】
次に、クランプ部11に腕金3を保持させる。詳細には、作業者は、
図1に示すように、腕金3の長手方向中途部を、クランプ部11の内部空間31に差し込む。この状態で、作業者は、吊上げ部13を、第1弾性部材55の押す力に抗してクランプ部11側(下方)へ押す。これにより、クラッチ部15は、吊上げ部13の回転をネジ軸51に伝達可能な接続状態になる。
【0092】
作業者は、吊上げ部13(言い換えれば、回転筒53)を下へ押し込みながら回転させる。これにより、ネジ軸51がネジ移動するので、クランプ部11の押圧部材27を下降させて腕金3をクランプすることができる。
【0093】
作業者は、押圧部材27によって適宜の強さでクランプした後、吊上げ部13の下方への押込みを解除する。押込みの解除に伴って、第1弾性部材55によって回転筒53が押し上げられる。従って、クラッチ部15は、吊上げ部13の回転がネジ軸51に伝達されない遮断状態に戻る。
【0094】
次に、
図2に示すように、クランプ部11に保持された腕金3に碍子5を取り付ける。腕金3は、自立状態の支持スタンド17によって、支持スタンド17の設置面に対して所定高さだけ上方の位置に保持されている。従って、腕金3の周囲において広い作業空間を容易に確保することができるので、腕金3への碍子5の取付け作業を円滑に行うことができる。
【0095】
腕金3に碍子5を取り付けるとき、クラッチ部15は遮断状態である。従って、腕金3に対する作業時に、作業者が意図せず吊上げ部13及び回転筒53等に触れても、回転筒53はネジ軸51に対して空回りするだけである。従って、押圧部材27の腕金3に対するクランプが意図に反して強められたり弱められたりすることはない。
【0096】
次に、作業者は、吊り装置7の吊上げロープ47に固定されたフックを、吊上げ部13の開口部49に引っ掛ける。次に、作業者は、クランプ部11の第1ピン41及び第2ピン43を、クランプ部11を支持スタンド17から分離可能なロック解除位置へ移動させる。
【0097】
最後に、吊上げ部13を吊り装置7により吊り上げる。これにより、
図14に示すようにクランプ部11が支持スタンド17から外れ、吊上げ部13とともにクランプ部11が吊り上げられる。クランプ部11から分離された支持スタンド17は、設置面上に置かれた状態に保たれる。
図14の鎖線で示すように、腕金3は、適宜の高さまで吊り上げられた状態で、支柱9の上部の適宜の場所に固定される。
【0098】
吊上げ部13を吊り上げるときに、吊上げロープ47の撚り等に起因して、吊上げ部13がクランプ部11に対して回転することがある。しかし、クラッチ部15が遮断状態であるので、吊上げ部13が仮に回転しても、回転筒53はネジ軸51に対して空回りするだけである。従って、押圧部材27の腕金3に対するクランプが意図に反して解除されることはない。このように、クランプ状態を確実に維持しながら腕金3を吊り上げることができる。
【0099】
本実施形態の吊り工具1を用いる場合、吊上げ部13をクランプ部11に対して押し下げない限りはクラッチ部15が遮断状態に保たれる。このように、クラッチ部15が原則として遮断状態となるので、吊上げ部13を押し下げつつ回転させて、クランプ部11において腕金3をいったんクランプすれば、力を解除することで、そのクランプ状態を維持することができる。このように、吊り工具1は、クランプ状態を特別な操作なしで実質的にロックすることができ、利便性に優れている。
【0100】
以上に説明したように、本実施形態の吊り工具1は、腕金3を含む装柱物を吊り上げるために用いられる。吊り工具1は、クランプ部11と、吊上げ部13と、クラッチ部15と、を備える。クランプ部11は、腕金3をクランプする。吊上げ部13は、吊り装置7と接続可能である。クラッチ部15は、クランプ部11と吊上げ部13との間に設けられる。クランプ部11は、ネジ軸51の回転によって腕金3を押圧/押圧解除することが可能な押圧部材27を備える。クラッチ部15は、吊上げ部13の下方で吊上げ部13に対して昇降可能なネジ軸51を備える。ネジ軸51と吊上げ部13との距離L1が長い
図8の状態では、クラッチ部15は、吊上げ部13の回転をネジ軸51に伝達しない遮断状態となる。ネジ軸51と吊上げ部13との距離L1が短い
図9及び
図10の状態では、クラッチ部15は、吊上げ部13の回転をネジ軸51に伝達する接続状態となる。吊り装置7で吊上げ部13を吊り上げた場合に、ネジ軸51及びクランプ部11等に働く重力により、ネジ軸51と吊上げ部13との距離L1が長い状態となる。
【0101】
この構成で、吊上げ部13が吊り装置7によって吊り上げられる場合、ネジ軸51と吊上げ部13との間の距離が長い状態になる。従って、クラッチ部15が自動的に遮断状態になるので、吊上げ部13の回転がネジ軸51に伝達されない。この結果、吊上げ時に腕金3のクランプが意図せず解除されるのを防止することができる。
【0102】
また、本実施形態の吊り工具1は、ネジ軸51と吊上げ部13との距離L1を増加させる方向の弾性力を加える第1弾性部材55を備える。
【0103】
これにより、吊上げ部13が吊り上げられる場合に、クラッチ部15を確実に遮断状態とすることができる。
【0104】
また、本実施形態の吊り工具1において、第1弾性部材55の弾性力は、吊上げ部13が吊り装置7に接続されていない状態で、吊上げ部13の重量に抗して
図8のように押し上げてクラッチ部15を遮断状態とすることが可能な大きさである。
【0105】
これにより、吊り工具1が吊り上げられる前の段階においても、クラッチ部15を遮断状態で維持することができる。
【0106】
また、本実施形態の吊り工具1において、クラッチ部15は、回転筒53を備える。回転筒53は、吊上げ部13と一体的に、上下方向の回転軸を中心として回転する。回転筒53には、突起79が設けられる。ネジ軸51には、第1溝部71と、第2溝部73と、が形成される。第1溝部71は、差し込まれた突起79が周方向に移動可能な環状溝として形成される。第2溝部73は、第1溝部71に接続する。第2溝部73は、差し込まれた突起79が周方向に移動するのを阻止する。突起79が第1溝部71に入ることで、クラッチ部15が遮断状態となる。突起79が第2溝部73に入ることで、クラッチ部15が接続状態となる。
【0107】
これにより、簡素でコンパクトな構成のクラッチ部15を実現できる。
【0108】
また、本実施形態の吊り工具1において、クランプ部11はC字状に形成される。
【0109】
これにより、簡素かつ軽量な構成のクランプ部11を実現できる。
【0110】
また、本実施形態の吊り工具1は、クランプ部11に着脱可能に取り付けられ、接地面より上方でクランプ部11を支持する支持スタンド17を備える。
【0111】
これにより、腕金3に碍子5を取り付ける等の作業が容易になる。また、作業完了後に、腕金3とともに吊り工具1を簡単な作業で吊り上げることができる。
【0112】
本実施形態の吊り工具1において、クランプ部11が支持スタンド17に装着された状態でロックする第1ピン41及び第2ピン43を備える。
【0113】
これにより、クランプ部11が支持スタンド17から意図せず外れないようにすることができる。
【0114】
本実施形態の吊り工具1において、支持スタンド17は、開閉可能な複数の脚部83を備える。
【0115】
これにより、吊り工具1の非使用時に、支持スタンド17をコンパクトに収納することができる。
【0116】
本実施形態では、クランプ工程と、吊り工程と、を含む吊上げ方法によって、腕金を含む装柱物の吊上げが行われている。クランプ工程では、吊上げ部13と、吊上げ部13の下方で吊上げ部13に対して昇降可能なネジ軸51と、の距離L1が短い状態とすることで、クラッチ部15を、吊上げ部13の回転がネジ軸51に伝達される接続状態とする。クランプ工程では、この接続状態で、吊上げ部13とともにネジ軸51を回転させて、腕金3を押圧部材27によってクランプさせる。吊り工程では、吊り装置7で吊上げ部13を吊り上げることで、ネジ軸51等に作用する重力により、ネジ軸51と吊上げ部13との距離L1が長い状態とし、これに伴って、クラッチ部15を、吊上げ部13の回転がネジ軸51に伝達されない遮断状態とする。
【0117】
この方法では、吊上げ部13が吊り装置7によって吊り上げられる吊り工程において、ネジ軸51と吊上げ部13との距離L1が長い状態になる。従って、クラッチ部15が自動的に遮断状態になるので、吊上げ部13の回転がネジ軸51に伝達されない。この結果、吊上げ時に腕金3のクランプが意図せず解除されるのを防止することができる。
【0118】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0119】
クランプ部11は、腕金3を通して当該腕金3の一部を内部空間31に収めることができるものであれば良く、特に限定されない。例えば、クランプ部11に、内部空間31の前方を開閉可能な部材が設けられても良い。クランプ部11は、上下方向に代えて、水平方向に腕金3をクランプ可能に構成されても良い。
【0120】
吊上げ部13の構成は特に限定されず、例えばリング状ではなくフック状に構成することもできる。
【0121】
クラッチ部15は、ネジ軸51に第1溝部71及び第2溝部73を設け、かつ、回転筒53に突起79を設ける代わりに、ネジ軸51に突起を設け、かつ、回転筒53にこの突起に対応する第1溝部及び第2溝部を設けても良い。
【0122】
クラッチ部15の構成も任意である。例えば、回転筒53及びネジ軸51に、上下方向で噛み合う歯を形成することで、クラッチ機能を実現しても良い。
【0123】
クランプ部11による腕金3のクランプ/クランプ解除のために、作業者は、吊上げ部13を、手で下方に押して回転させることもできるし、図略の工具を用いて下方に押して回転させることもできる。
【0124】
第1弾性部材55を省略することができる。この場合においても、
図14の鎖線で示す吊上げ時に、クラッチ部15を遮断状態とすることができる。
【0125】
支持スタンド17は、脚部83を閉じることができないように構成されても良い。
【0126】
吊り工具1において、第1ピン41及び第2ピン43を省略することができる。支持スタンド17及び装着部29を省略することもできる。
【0127】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0128】
1 吊り工具
3 腕金
7 吊り装置
11 クランプ部
13 吊上げ部
15 クラッチ部
17 支持スタンド(支持部)
27 押圧部材
51 ネジ軸(昇降部材)
53 回転筒(回転入力部材)
55 第1弾性部材(弾性部材)
71 第1溝部(第1凹部)
73 第2溝部(第2凹部)
79 突起
83 脚部
L1 距離