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特許7458079仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20240322BHJP
   C09D 5/20 20060101ALI20240322BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240322BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240322BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240322BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20240322BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240322BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20240322BHJP
   C08F 220/36 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D5/20
C09D7/65
C09J4/02
C09J11/08
C08F2/38
C08F2/44 C
C08F220/26
C08F220/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021033487
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134392
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】青野 智史
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-122120(JP,A)
【文献】特開平10-130309(JP,A)
【文献】特開平11-071553(JP,A)
【文献】特開2017-052885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 2/60
C08F 220/00-220/70
C09D 4/00- 4/06
C09D 5/00- 5/46
C09D 7/00- 7/80
C09J 4/00- 4/06
C09J 11/00- 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合反応性成分(A)と、連鎖移動剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含む、マスキング用光硬化性樹脂組成物であって、
成分(A)は、分子内に1つ以上のOH基を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)、及び、O及び/又はNを含むヘテロ環構造を分子内に1つ以上持つラジカル重合反応性モノマー(A2)からなる群より選択される1種以上を含有し、かつ、
成分(A)中の2官能以上のオリゴマー及びモノマーの合計の含有量が10重量%未満であり、
成分(A)中、成分(A1)及び成分(A2)の合計の含有量が20重量%超50重量%以下であることを特徴とする
スキング用光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
成分(B)が、α-メチルスチレン構造を持つ化合物又はチオール基を持つ化合物である、請求項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
光硬化性樹脂組成物中、成分(B)の含有量が0.5~10重量%である、請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
ラジカル重合反応性成分(A)と、連鎖移動剤(B)と、光重合開始剤(C)と、アルコール又は親アルコール性有機溶媒に溶解するポリマー(d1)とを含む、仮固定用光硬化性樹脂組成物であって、
成分(A)は、分子内に1つ以上のOH基を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)、及び、O及び/又はNを含むヘテロ環構造を分子内に1つ以上持つラジカル重合反応性モノマー(A2)からなる群より選択される1種以上を含有し、かつ、
成分(A)中の2官能以上のオリゴマー及びモノマーの合計の含有量が10重量%未満であり、
成分(A)中、成分(A1)及び成分(A2)の合計の含有量が20重量%超50重量%以下であり、
成分(d1)が、セルロース誘導体、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、又は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステルからなる群より選択される2種以上の共重合体であることを特徴とする、
仮固定用光硬化性樹脂組成物
【請求項5】
成分(B)が、α-メチルスチレン構造を持つ化合物又はチオール基を持つ化合物である、請求項4に記載の光硬化性樹脂組成物
【請求項6】
光硬化性樹脂組成物中、成分(B)の含有量が0.5~10重量%である、請求項4又は5に記載の光硬化性樹脂組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性を有するポリマー(水溶性高分子)は、様々な用途で用いられている。基材などを皮膜で一時的に保護することにより傷つき、汚れの付着、変質等を防止するマスキングや、ある部材を一時的に何か別の部材に接着させる仮固定も、そのような用途の一つである。
【0003】
UV硬化後に、その硬化物が水や有機溶剤に溶解する組成物は、部材加工時の仮固定やマスキング剤など、様々な分野への応用が期待される。特許文献1には、UV硬化後、水に溶解する、仮固定のためやマスキング剤として用いられる組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-122120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたような、光硬化性樹脂組成物において、水を嫌う部材への使用は困難であり、毒性の低いエタノールなどのアルコール系洗浄剤で溶解する組成物の開発が待たれている。
【0006】
本発明は、エネルギー線の照射によって硬化し、さらにその硬化物がアルコール系洗浄剤への高い溶解性をもつ、仮固定又はマスキング用の光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に関する。
[1]ラジカル重合反応性成分(A)と、連鎖移動剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含む、仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物であって、成分(A)は、分子内に1つ以上のOH基を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)、及び、O及び/又はNを含むヘテロ環構造を分子内に1つ以上持つラジカル重合反応性モノマー(A2)からなる群より選択される1種以上を含有し、かつ、成分(A)中の2官能以上のオリゴマー及びモノマーの合計の含有量が10重量%未満であることを特徴とする、仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物。
[2]成分(A)中、成分(A1)及び成分(A2)の合計の含有量が20~100重量%である、[1]の光硬化性樹脂組成物。
[3]成分(B)が、α-メチルスチレン構造を持つ化合物又はチオール基を持つ化合物である、[1]又は[2]の光硬化性樹脂組成物。
[4]光硬化性樹脂組成物中、成分(B)の含有量が0.5~10重量%である、[1]~[3]のいずれかの光硬化性樹脂組成物。
[5]成分(A)中、成分(A1)及び成分(A2)の合計の含有量が20重量%超50重量%以下である[1]~[4]のいずれかの光硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エネルギー線の照射によって硬化し、さらにその硬化物がアルコール系洗浄剤への高い溶解性をもつ、仮固定又はマスキング用の光硬化性樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[用語の定義]
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方の意味を有する。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方の意味を有する。
「ラジカル重合反応性成分(A)」を「成分(A)」ともいう。「連鎖移動剤(B)」等についても同様である。
数値範囲に関して「~」は、その両端の値を含むことを意味する。また、「以下」は「同じ又は未満」を意味し、「以上」は「同じ又は超える」を意味する。即ち、「20~100重量%」は、「20重量%以上100重量%以下」を意味し、「20重量%超100重量%以下」、「20重量%以上100重量%未満」、「20重量%超100重量%未満」の意味を包含する
【0010】
[仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物]
仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物(以下、単に「光硬化性樹脂組成物」ともいう)は、ラジカル重合反応性成分(A)と、連鎖移動剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含む、仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物であって、成分(A)は、分子内に1つ以上のOH基を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)、及び、分子内にO及び/又はNを含むヘテロ環構造を1つ以上持つラジカル重合反応性モノマー(A2)からなる群より選択される1種以上を含有し、かつ、成分(A)中の2官能以上のオリゴマー又はモノマーの含有量が10重量%未満である。
【0011】
<ラジカル重合反応性成分(A)>
ラジカル重合反応性成分(A)は、ラジカル重合反応性の官能基を有するものであれば特に限定されず、ラジカル重合反応性オリゴマー、ラジカル重合反応性モノマーが挙げられる。ラジカル重合反応性の官能基は、不飽和二重結合含有基であれば特に限定されないが、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)又は(メタ)アクリロイル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
【0012】
成分(A)は、成分(A1)及び成分(A2)からなる群より選択される1種以上を含有する。成分(A)は、成分(A1)又は成分(A2)のいずれか一方のみを含んでいてもよく、成分(A1)及び成分(A2)の両方を含んでいてもよい。成分(A)は、前記成分(A1)及び成分(A2)以外のラジカル重合反応性オリゴマー又はモノマー(A3)を含んでいてもよい。よって、成分(A)は、ラジカル重合反応性モノマーのみからなるか、ラジカル重合反応性モノマー及びラジカル重合反応性オリゴマーの混合物である。
【0013】
成分(A)において、ラジカル重合反応性オリゴマーの重量平均分子量は、1,500以上であることが好ましく、1,500~30,000であることが特に好ましい。
【0014】
重量平均分子量の測定方法としては、オリゴマーやポリマー等の分子量が比較的高い成分については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果を、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算する手法が一般に知られている。また、モノマーは分子量分布を有さないため、構造式から求めることができる。
【0015】
<<分子内に1つ以上のOH基を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)>>
成分(A1)は、ラジカル重合反応性基及びOH基を持つ化合物である。成分(A1)が有するOH基の数は、1~3であることが好ましく、1であることが特に好ましい。成分(A1)が有するラジカル重合反応性基の数は、1~2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。成分(A1)としては、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0016】
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。成分(A1)は、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましく、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
【0017】
<<O及び/又はNを含むヘテロ環構造を、分子内に1つ以上持つラジカル重合反応性モノマー(A2)>>
成分(A2)は、ラジカル重合反応性基と、O及び/又はNを含むヘテロ環構造の1つ以上とを有する化合物である。成分(A2)が有するヘテロ環構造(以下、単に「環構造」ともいう。)は、環構造を構成するヘテロ原子として、酸素原子及び窒素原子からなる群より選択される1種以上を有する。環構造は、酸素原子のみを有していてもよく、窒素原子のみを有していてもよく、酸素原子及び窒素原子の両方を有していてもよい。
【0018】
環構造が酸素原子を含む場合、当該環構造が有する酸素原子の数は、1~3であることが好ましく、1~2であることが特に好ましい。環構造が窒素原子を含む場合、当該環構造が有する窒素原子の数は、1~2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。環構造が酸素原子及び窒素原子の両方を含む場合、当該環構造が有する酸素原子及び窒素原子の合計の数は、2~4であることが好ましく、2~3であることが特に好ましい。
【0019】
環構造は、単環又は多環であってもよい。1つの環構造を構成する原子の総数は、特に限定されないが、3~20であることが好ましい。環構造は、5員環又は6員環の単環のヘテロ環であることが好ましい。環構造の例として、モルホリン、フラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリドン、マレイミド等が挙げられる。
【0020】
成分(A2)が有する環構造の総数は、1~3であることが好ましく、1~2であることが特に好ましい。ここで、環構造が多環構造である場合は、当該多環構造を1とする。また、成分(A2)が有するラジカル重合反応性基の数は、1~2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。
【0021】
成分(A2)の具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレートカプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート(4-(メタ)アクリロイルモルホリン等)、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
<<成分(A1)及び成分(A2)以外のラジカル重合反応性成分(A3)>>
成分(A3)は、特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー又はモノマーであることが好ましい。
【0023】
<<<(メタ)アクリレートモノマー>>>
(メタ)アクリレートモノマーとしては、脂環式(メタ)アクリレートモノマー、芳香族(メタ)アクリレートモノマー、アルキル(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
【0024】
脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
芳香族(メタ)アクリレートモノマーは、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
<<<(メタ)アクリレートオリゴマー>>>
(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子中に1以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーであれば特に限定されない。(メタ)アクリレートオリゴマー(A)としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0028】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、芳香族系、脂肪族系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリエステル系又はこれらの組合せのポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品としては、実施例に記載のものの他に、EBECRYL4858(ダイセル・オルネクス社製)、UN-2301(根上化学社製)、EBECRYL4859(ダイセル・オルネクス社製)、EBECRYL4738(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
【0030】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ樹脂中の全てのエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応しているオリゴマーである。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ樹脂中の一部のエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応しているオリゴマー、すなわち、樹脂中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを含んでいてもよい。ここで、エポキシ樹脂として、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及びその他のエポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、芳香族エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0031】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品としては、EB3700(ダイセル・オルネクス製)、EB3708(ダイセル・オルネクス製)等が挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリレートオリゴマーが有する(メタ)アクリロイル基の数は、1~6であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1~2であることが特に好ましい。
【0033】
成分(A3)は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。例えば、成分(A3)は、1種又は2種以上の(メタ)アクリレートモノマーと、1種又は2種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーとの組合せでもよい。
【0034】
<連鎖移動剤(B)>
連鎖移動剤(B)は、連鎖移動反応を起こす成分である。ここで、連鎖移動反応とは、ラジカル重合において、成長ラジカルが重合系中の他の化学種と反応し、成長の停止、ラジカルの移動及び成長の再開始を伴う反応をいう。成分(B)としては、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー等のα-メチルスチレン構造を持つ化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;四塩化炭素、クロロホルム等のハロゲン類;及び、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のチオール基を持つ化合物からなる群から選ばれる一種以上が挙げられ、α-メチルスチレン構造を持つ化合物又はチオール基を持つ化合物が好ましい。
成分(B)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0035】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)は、エネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物であれば特に限定されない。成分(C)は、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-メチルチオ]フェニル]-2-モルホリノプロパンー1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、オリゴ2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノール、オリゴ2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、イソプロピルチオキサントン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン、2,4-ジエチルチオキサントン、2ークロロチオキサントン、ベンゾフェノン、エチルアントラキノン、ベンゾフェノンアンモニウム塩、チオキサントンアンモニウム塩、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4ジベンゾイルベンゼン、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2,2’ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)1,2’-ビイミダゾール、2,2’ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、4-ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、o-メチルベンゾイルベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル、活性ターシャリアミン、カルバゾール・フェノン系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、ベンゾイル系光重合開始剤などが挙げられる。
【0036】
成分(C)の市販品としては、DKSHジャパン製のKIP-150、IGM Resins B.V.製の、Omnirad184、Omnirad819、Omnirad127、Omnirad1173等のOmnirad(登録商標)シリーズ、Darocur1173等のDarocur(登録商標)シリーズ、Lucirin TPO等のLucirin(登録商標)シリーズ、ESACUR日本シイベルヘグナー社のESACURE 1001M等が挙げられる。成分(A)のラジカル反応において未硬化の要因となる酸素阻害を受けにくくするという観点、さらには成分(A)及びアルコール系洗浄剤への溶解性の観点からOmnirad1173やOmnirad184が好ましい。
成分(C)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0037】
<更なる成分(D)>
光硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、更なる成分(D)を含むことができる。成分(D)として、アルコール類又は親アルコール性有機溶媒に溶解するポリマー、無機物を含むチキソ付与剤、シランカップリング剤、界面活性剤、スリップ剤、重合禁止剤、光増感剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、溶剤、充填剤等が挙げられる。
成分(D)は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0038】
<<アルコール又は親アルコール性有機溶媒に溶解するポリマー>>
アルコール又は親アルコール性有機溶媒に溶解するポリマー(以下、「成分(d1)」ともいう。)は、ラジカル重合反応性の官能基を有さず、アルコール又は親アルコール性有機溶媒と、光硬化性樹脂組成物との両方に溶解する性質を有する高分子であれば特に限定されない。アルコール又は親アルコール性有機溶媒は、後述するアルコール系洗浄剤に記載のとおりである。また、本明細書において、「アルコール又は親アルコール性有機溶媒」を「アルコール類」という場合がある。成分(d1)は、組成物の粘度を効率的に調整することができる。成分(d1)としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、またはそれらの共重合体;等が挙げられる。成分(d1)は、少なくともエタノールに溶解するポリマーであることが好ましい。
【0039】
成分(d1)の重量平均分子量は、300~100,000であることが好ましく、500~50,000であることがより好ましく、500~20000であることが特に好ましい。成分(d1)の重量平均分子量が前記範囲であると、光硬化性樹脂組成物の粘度を効率的に増加させることができ、且つUV硬化後の光硬化性樹脂組成物のアルコール等(特にエタノール)への溶解性がより高まる傾向がある。
【0040】
<<無機物を含むチキソ付与剤>>
無機物を含むチキソ付与剤は、少量の添加で増粘又はチキソ化効果の高いものであれば特に限定されない。チキソ付与剤に含まれる無機物としては、フュームドシリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、カオリン、クレー、活性白土、ケイ砂、ケイ石、ケイ藻土、無水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸マグネシウム、タルク、パーライト、ホワイトカーボン、マイカ微粉末、ベントナイト等のなどが挙げられる。また、チキソ付与剤は、無機物のみからなっていてもよく、脂肪酸及び/又は樹脂酸で表面処理された無機物であってもよい。
【0041】
上記した成分以外の更なる成分は、光硬化性樹脂組成物で通常用いられている成分であれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。
【0042】
(各成分の含有量)
光硬化性樹脂組成物において、成分(A)中の2官能以上のオリゴマー及びモノマーの合計の含有量が10重量%未満である。ここで、2官能以上のオリゴマー及びモノマーとは、分子内にラジカル重合反応性基を2つ以上有するオリゴマー及びモノマーをいう。光硬化性樹脂組成物において、成分(A)中の2官能以上のオリゴマー及び2官能以上のモノマーの合計の含有量が10重量%以上である場合、得られる硬化物のアルコール等(特にエタノール)への溶解性が劣る。成分(A)中の2官能以上のオリゴマー又はモノマーの含有量は、得られる硬化物のアルコール等(特にエタノール)への溶解性がより優れる観点から、8重量%未満であることが好ましく、5重量%以下であることが特に好ましい。
【0043】
成分(A)中、成分(A1)及び成分(A2)の合計の含有量は、得られる硬化物のアルコール等(特にエタノール)への溶解性がより優れる観点から、20~100重量%であることが好ましく、30~90重量%であることが特に好ましい。また、成分(A)中、成分(A1)及び成分(A2)の合計の含有量は、非水溶性が優れる観点から、20~70重量%であることが好ましく、20重量%超50重量%以下であることが特に好ましい。光硬化性樹脂組成物の非水溶性が優れる場合、水を嫌う部材だけでなく、水で加工する部材へも、仮固定剤又はマスキング剤として使用することが可能となる。成分(A)から成分(A1)及び成分(A2)を除いた残余は、成分(A3)である。
【0044】
成分(A)の含有量は、光硬化性樹脂組成物の主剤として、光硬化性樹脂組成物中、55重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが特に好ましい。
【0045】
成分(B)の含有量は、エネルギー線硬化性及びUV硬化後の水溶性等の観点から、光硬化性樹脂組成物中、0.5~10重量%であることが好ましく、0.8~10重量%であることがより好ましく、1.0~7.0重量%であることが特に好ましい。
【0046】
成分(C)の含有量は、エネルギー線硬化性及びUV硬化後の水溶性等の観点から、光硬化性樹脂組成物中、0.1~10重量%であることが好ましく、0.5~8.0重量%であることがより好ましく、1.0~7.0重量%であることが特に好ましい。
【0047】
光硬化性樹脂組成物が成分(D)を含む場合、成分(D)の含有量は、得られる硬化物のアルコール等(特にエタノール)への溶解性がより優れる観点から、成分(A)の100重量部に対して、50重量部未満であることが好ましく、1~40重量部であることがより好ましく、1~20重量部であることが更に好ましく、1重量部以上20重量部未満であることが特に好ましい。
【0048】
(光硬化性樹脂組成物の製造方法)
光硬化性樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び任意成分である更なる成分(成分(D)等)を混合する工程を含む製造方法により得られる。
【0049】
[用途]
光硬化性樹脂組成物は、仮固定用の光硬化性樹脂組成物(仮固定材)又はマスキング用の光硬化性樹脂組成物(マスキング材)として用いることができる。光硬化性樹脂組成物は、水晶振動子、ガラスレンズ、プラスチックレンズ及び光ディスクの加工における仮固定に適用可能である。また、光硬化性樹脂組成物は、プリント配線板、電子部品、自動車部品等のマスキングに適用可能である。
【0050】
(仮固定材)
仮固定とは、一方の部材をもう一方の部材に、光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して、一時的に接着させることをいう。光硬化性樹脂組成物の硬化物は、後に除去されて、これにより、一方の部材ともう一方の部材との光硬化性樹脂組成物の硬化物による接着性が失われ、仮固定の目的を達成する。
【0051】
<仮固定方法>
仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた部材の仮固定方法は、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いて基材を貼り合わせる、又は2つの部材を重ねてその外周部に光硬化性樹脂組成物を塗布する工程と、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を硬化させて基材を接着して、仮固定する工程と、仮固定した基材を加工する工程と、加工した基材をアルコール系洗浄剤と接触させて、硬化した仮固定用の光硬化性樹脂組成物を除去する工程とを含む。
【0052】
また、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法としては、下記工程(A)又は(B)と、(C)~(E)とを含む方法が挙げられる。
(A)(a1)一方の基材に、光硬化性樹脂組成物を適用して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程と、(a2)光硬化性樹脂組成物層の上にもう一方の基材を貼り合わせて、積層体を得る工程と、又は
(B)一方の基材の上にもう一方の基材を重ね合わせた後に、その外周周辺端部又は重ね合わせ部に光硬化性樹脂組成物を適用して、積層体を得る工程と、
(C)工程(A)又は工程(B)で得られる積層体にエネルギー線を照射して、接着体を得る工程と、
(D)接着体を加工して、粗加工体を得る工程と、
(E)粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去して、加工体を得る方法を含む。
【0053】
工程(A)は、工程(a1)及び工程(b1)である。工程(a1)は、一方の基材に、光硬化性樹脂組成物を適用して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程である。基材の材質は、特に制限はないが、紫外線を透過できる材料からなる基材が好ましい。このような紫外線を透過できる材料としては、水晶、ガラス、プラスチック等が挙げられる。
【0054】
光硬化性樹脂組成物を基材に適用する方法は、特に限定されず、刷毛塗り法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、スプレー法、ディップ法、バーコーター、ロールコーター、スピンコーター、ダイコーター、ディスペンサー、その他の公知の塗布手段が挙げられる。光硬化性樹脂組成物を適用して形成される硬化性樹脂組成物層の厚みは、特に限定されないが、10~500μmであることが好ましく、30~350μmであることが特に好ましい。
【0055】
工程(a2)は、光硬化性樹脂組成物層の上にもう一方の基材を貼り合わせて、積層体を得る工程である。光硬化性樹脂組成物層を形成した基材の上に、硬化樹脂層に接するようにもう一方の基材を載置して、基材同士を貼り合わせることにより積層体が得られる。工程(a2)において、積層体を加圧処理する工程を含んでいてもよい。
【0056】
工程(B)は、一方の基材の上にもう一方の基材を重ね合わせた後に、その外周周辺端部又は重ね合わせ部に光硬化性樹脂組成物を適用して、積層体を得る工程である。工程(B)では、一方の基材の上に、もう一方の基材を載置し、その外周部周辺端部又は重ね合わせ部において、一方の基材ともう一方の基材とが光硬化性樹脂組成物によって固定されるように、光硬化性組成物が適用される条件であれば任意である。光硬化性樹脂組成物の適用方法は、工程(a1)で前記した方法が挙げられる。
【0057】
工程(C)は、工程(A)又は工程(B)で得られる積層体にエネルギー線を照射して、接着体を得る工程である。積層体にエネルギー線を照射することにより、一方の基材及びもう一方の基材の間の光硬化性樹脂組成物が硬化し、基材同士が接着する。
【0058】
エネルギー線は、特に限定されず、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線を使用することができる。エネルギー線は、紫外線であるのが好ましい。紫外線の光源としては、紫外線(UV)が発せられる光源を使用することができる。紫外線の光源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、ハロゲンランプ、パルスキセノンランプ、LED等が挙げられる。エネルギー線の積算光量は、例えば、365nmにおいて500~10,000mJ/cmであることが好ましく、1,000~8,000mJ/cmであることが特に好ましい。
【0059】
工程(D)は、接着体を加工して、粗加工体を得る工程である。加工としては、例えば、仮固定された接着体を所望の形状に切断、研削、研磨、孔開けを施すこと、塗装すること等が挙げられ、得られる加工体に応じて適宜設定される。
【0060】
工程(E)は、粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去して、加工体を得る方法である。光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去する方法は、粗加工体とアルコール系洗浄剤とを接触させる方法が挙げられ、例えば、アルコール系洗浄剤を光硬化性樹脂組成物の硬化物にスプレー塗布する方法、アルコール系洗浄剤中に粗加工体を浸漬する方法等が挙げられる。粗加工体とアルコール系洗浄剤とを接触させる方法により、粗加工体から光硬化性樹脂組成物の硬化物は、基材から剥離するか、溶解することにより除去される。
【0061】
アルコール系洗浄剤としては、アルコール及び親アルコール性有機溶媒からなる群より選択される1種以上が挙げられる。アルコール系洗浄剤は、更なる成分として、界面活性剤等のアルコール系洗剤に通常添加される成分を含んでいてもよい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1,2-プロパンジオール等が挙げられる。アルコールは、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
親アルコール性有機溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル;シクロヘキサノン等が挙げられる。親アルコール性有機溶媒は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、および陽イオン性からなるものが挙げられる。界面活性剤は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
アルコール系洗浄剤は、エタノール、又は、エタノールと界面活性剤との混合溶媒であることが好ましい。アルコール系洗浄剤において、アルコール等の含有量は、アルコール系洗浄剤中、55重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。残余は、界面活性剤を含む更なる成分である。
【0062】
工程(E)におけるアルコール系洗浄剤の温度は、特に限定されず、25~70℃であることが好ましい。また、工程(E)における粗加工体とアルコール系洗浄剤との接触時間は、粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去できる条件であれば特に限定されず、当業者によって適宜設定できる。光硬化性樹脂組成物の硬化物のアルコール系洗浄剤への溶解を加速させる観点から、超音波等によりアルコール系洗浄剤を振動させることが好ましい。工程(E)により、仮固定の目的は達成される。
【0063】
仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法により得られる加工体としては、水晶振動子、ガラスレンズ、プラスチックレンズ及び光ディスクが挙げられる。
【0064】
(マスキング材)
マスキングとは、基材等を光硬化性樹脂組成物の硬化物で一時的に保護することにより、当該基材の傷つき、汚れの付着、変質等を防止すること、又は成膜工程での配線上の成膜を防止すること等をいう。光硬化性樹脂組成物の硬化物は、後に除去されて、光硬化性樹脂組成物の硬化物によるマスキングの目的を達成する。光硬化性樹脂組成物は、被マスキング用の基材等(例えば、プリント配線板、電子部品)を一時的にマスキングするために用いることができる。
【0065】
<マスキング方法>
基材のマスキング方法としては、例えば、基材の表面の一部又は全部を、光硬化性樹脂組成物の硬化物で一時的に覆う方法が挙げられる。基材のマスキング方法によって、基材が取り扱われる場合や複数の基材が積み重ねられる場合などに、基材間に硬化膜が介在することで、基材が直接接触しなくなり、基材にキズ等の破損が生じること、異物が付着すること等を、抑制できる。また、自動車部品等を塗装する際、塗装されない領域をマスキング材の硬化膜で一時的に覆うことによって、塗装されない領域への塗料の飛び散りを抑制することができる。
【0066】
また、マスキング用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法としては、下記工程(F)~(I)を含む方法が挙げられる。
(F)基材に、光硬化性樹脂組成物を適用して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程、
(G)光硬化性樹脂組成物層にエネルギー線を照射して、光硬化性樹脂組成物の硬化物でマスキングされた基材を得る工程、
(H)光硬化性樹脂組成物の硬化物でマスキングされた基材を加工して、粗加工体を得る工程、及び
(I)粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去して、加工体を得る工程。
【0067】
基材への光硬化性樹脂組成物の塗布方法、光硬化性樹脂組成物の硬化方法、基材の加工方法、光硬化性樹脂組成物の硬化物の除去方法としては、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法において前記した方法が挙げられる。
【0068】
マスキング用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法により得られる加工体としては、プリント配線板、ディスプレイ等の電子部品、自動車部品等が挙げられる。
【実施例
【0069】
本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。表における値は、特に断らない限り重量部である。
【0070】
(使用成分)
<成分(A):ラジカル重合反応性成分>
<<成分(A1):分子内に1つ以上のOH基を持つラジカル重合反応性モノマー>>
4HBA:ヒドロキシブチルアクリレード(大阪有機化学製)
<<成分(A2):分子内に1つ以上のヘテロ環構造を持つラジカル重合反応性モノマー>>
ACMO:4-アクリロイルモルホリン(KJケミカル製)
THF-A:テトラヒドロフルフリルアクリレート(昭和電工マテリアルズ製)
<<成分(A3):その他の(A)成分>>
IBOA:イソボルニルアクリレート(日本触媒製)
FA-513AS:ジシクロペンタニルアクリレート(昭和電工マテリアルズ製)
EBECRYL270:2官能ウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス製)
<成分(B):連鎖移動剤>
MSD-100:α-メチルスチレンダイマー(三井化学製)
カレンズMT PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工製)
カレンズMT BD1:1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工製)
<成分(C):光重合開始剤>
オムニラッド1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(IGM Resins B.V.製)
<成分(D):更なる成分>
<<成分(d1):アルコール等に溶解するポリマー>>
エトセルSTD20:エチルセルロース(ダウケミカル社製)
【0071】
〔評価条件〕
(1)UV硬化性
スライドガラス基板上に50μm厚となるようにスペーサーを置いて光硬化性樹脂組成物を0.05g程度塗布し、上からPETフィルムを貼った。メタルハライドランプ(アイグラフィックス製、M06-L31)にて1,500mJ/cmのUVを照射した後、PETフィルムを剥がしてから、光硬化性樹脂組成物が指触にて硬化しているかどうかを確認した。
○:硬化している(液ではないため、光硬化性樹脂組成物が手に付着しない)
×:硬化していない(液(光硬化性樹脂組成物)が付着する)
【0072】
(2)密着性
上記の「(1)UV硬化性」にて、UV硬化した後の光硬化性樹脂組成物を24時間放置してから目視で観察し、スライドガラス基板から剥がれていないかどうかを確認した。
○:剥がれなし
×:剥がれあり
【0073】
(3)エタノール溶解性
上記の「(1)UV硬化性」を確認した試験片を1Lビーカーに入れ、エタノールを100g程度注いだ。そのビーカーを超音波洗浄器(エスエヌディー製、US-20PS)に入れて最も弱いレベル(5段階の1段目)の超音波をかけた。その後、試験片を取り出し、目視で光硬化性樹脂組成物が残っているかどうかを確認した。
◎:光硬化性樹脂組成物が3分以内に全て溶解した
○:光硬化性樹脂組成物が3分超5分以内に全て溶解した
×:光硬化性樹脂組成物が5分以内では溶解しなかった
【0074】
(4)非水溶性
上記の「(1)UV硬化性」を確認した試験片を1Lビーカーに入れ、水を100g程度注いだ。そのビーカーを超音波洗浄器(エスエヌディー製、US-20PS)に入れて最も弱いレベル(5段階の1段目)の超音波を5分間かけた。その後、試験片を取り出し、目視で光硬化性樹脂組成物が残っているかどうかを確認した。
○:光硬化性樹脂組成物が残っている
×:光硬化性樹脂組成物が残っていない
【0075】
〔光硬化性樹脂組成物の製造〕
表に記載の配合比に従い、各成分をかくはん機付きフラスコで均一になるまで30分~1時間攪拌混合することにより、実施例及び比較例の液状の光硬化性樹脂組成物を得た。このうち、実施例12に関しては、成分(A)、成分(C)及び成分(D)を80℃で加熱しながら撹拌し、固体成分を溶解させた後、成分(B)を添加することにより、実施例及び比較例の液状の光硬化性樹脂組成物を得た。
【0076】
結果を以下の表に示す。各成分の配合量の値は全て重量部である。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1及び表2から、実施例の光硬化性樹脂組成物は、UV硬化性に優れていた。さらに、実施例の光硬化性樹脂組成物の硬化物は、エタノールへの溶解性が優れており、アルコール系洗浄剤への高い溶解性を持つといえる。また、実施例の光硬化性樹脂組成物は、密着性に優れており、仮固定又はマスキング用の光硬化性樹脂組成物として用いることができる。
【0080】
実施例1~3と実施例4~12との結果より、成分(A)中、成分(A1)及び成分(A2)の合計の含有量が20~50重量%である場合に、非水溶性に優れていた。また、実施例4~9及び11と実施例10との結果より、成分(A)中、成分(A1)及び成分(A2)の合計の含有量が20重量%超50重量%以下である場合に、エタノールの溶解性により優れていた。実施例7と実施例12との結果より、成分(A)の100重量部に対して、(D)成分の含有量が20重量部未満である場合に、エタノールの溶解性により優れていた。
【0081】
一方、比較例1及び2の組成物は、成分(B)を含まないため、得られる硬化物のエタノールへの溶解性が劣っていた。また、比較例3の組成物は、成分(A)中の2官能以上のオリゴマー及びモノマーの合計の含有量が10重量%であるため、得られる硬化物のエタノールへの溶解性が劣っていた。