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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】錠剤用崩壊剤及びこれを利用した錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20240322BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240322BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240322BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20240322BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K47/36
A61K9/20
A61K9/28
A61K47/46
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021123685
(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公開番号】P2023019170
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594069580
【氏名又は名称】株式会社三協
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】和田 伸行
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰規
(72)【発明者】
【氏名】金井 真梨子
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146642(WO,A1)
【文献】特表2012-522058(JP,A)
【文献】特表2012-521360(JP,A)
【文献】特表2018-513872(JP,A)
【文献】AAPS PharmSciTech,2014年,Vol.15, No.2,p.279-286
【文献】食品と開発,2018年,Vol.53, No.4,p.75-77
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤用崩壊剤としてシトラス由来食物繊維素材を含有し、コーティングされてなるコーティング錠剤であって、
前記シトラス由来食物繊維素材は、フルーツ由来の多孔質の構造を有する食物繊維を含み1gあたりの保水量が15g以上であることを特徴とするコーティング錠剤。
【請求項2】
前記錠剤用崩壊剤を前記錠剤の総量あたり0.1~60質量%含有する、請求項1記載のコーティング錠剤。
【請求項3】
前記錠剤用崩壊剤を含有し、更に、CMC-Ca、CMC-Na、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、メチルセルロース、デンプン、部分アルファー化デンプン、及び寒天からなる群から選ばれる1種類又は2種類以上を含有する、請求項1又は2記載のコーティング錠剤。
【請求項4】
前記錠剤は、前記錠剤用崩壊剤が未添加であることを除いて同じ配合原料からなる錠剤に対して、第十七改正日本薬局方の崩壊試験法により測定される崩壊時間が10%以上短縮されている、請求項1~のいずれか1項に記載のコーティング錠剤。
【請求項5】
前記錠剤は、第十七改正日本薬局方の崩壊試験法により測定される崩壊時間が60分以内とされている、請求項1~のいずれか1項に記載のコーティング錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤の崩壊性を向上させるための錠剤用崩壊剤及びこれを利用した錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤は薬物を飲みやすい形態に成形したものである。一般に、錠剤は、有効成分を扱いやすい量にするための賦形剤や、原薬を結合して成形できるようにするための結合剤や、粉体や顆粒の付着性を抑えて打錠機の臼穴や杵への付着を防止するための滑沢剤や、苦味や臭いのマスキングするためのコーティング剤などから構成されている。また、このように錠剤を形成するための成分を配合する必要がある一方で、飲用した際には胃の蠕動運動等により薬物の有効成分を効率的に放出するようにしなければならず、そのためには水分を吸収して膨潤する性質を有する崩壊剤が用いられる。
【0003】
従来、崩壊剤として、例えば、カルボキシメチルセルロースのカルシウム塩、デンプングリコール酸ナトリウム、寒天、デンプンなどが用いられてきた。ただし、錠剤原料として高度に純化した成分であると消化性に問題がでることがあるため、崩壊剤としても、より天然素材に近い素材が望まれることがある。しかし、天然素材に近い崩壊剤として使用されている寒天などでは、コーティング錠剤としたときひび割れや膨潤等が生じ、外観や成形性が劣るなどの問題があった。
【0004】
崩壊剤に関して、例えば、特許文献1には、(1)固形または粉末の寒天を加水して吸水膨潤させこれを脱水乾燥させる、(2)寒天を加水し加熱溶解して得られた寒天ゾルを冷却して寒天ゲルを形成しこれを凍結乾燥した後粉砕する、(3)寒天を加水し加熱溶解して得られた寒天ゾルを冷却して寒天ゲルを形成しこれを微粒子化した後凍結乾燥して粉砕するといった方法により調製してなる、錠剤用寒天について記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、崩壊剤として大豆由来の食物繊維を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-45628号公報
【文献】特開2014-156436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、錠剤の崩壊性を改善することができる各種の成分について知られていたが、利用するものの利便性のためには、更なる素材の開発が望まれていた。
【0008】
本発明の目的は、錠剤の崩壊性を向上させる効果に優れた新規崩壊剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明者らは種々研究した結果、シトラス由来食物繊維素材に、錠剤の崩壊を促す作用効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、その第1の観点においては、1gあたりの保水量が15g以上であるシトラス由来食物繊維素材を有効成分とする錠剤用崩壊剤を提供するものである。
【0011】
本発明の錠剤用崩壊剤によれば、特定の保水量を有するシトラス由来食物繊維素材を有効成分とするので、これを錠剤中に含有せしめることで得られる錠剤の崩壊性を向上させることができる。
【0012】
上記錠剤用崩壊剤においては、前記シトラス由来食物繊維素材がフルーツ由来の多孔質の構造を有する食物繊維を含むことが好ましい。これによれば、フルーツを原料としたジュース製造の副産物である搾りかす等を、本発明の有効成分として好適に利用することができる。
【0013】
本発明は、その第2の観点においては、上記錠剤用崩壊剤を錠剤原料中に添加することを特徴とする錠剤の崩壊性向上方法を提供するものである。
【0014】
本発明の錠剤の崩壊性向上方法によれば、上記錠剤用崩壊剤の有効成分であるシトラス由来食物繊維素材を錠剤の配合原料中に添加するので、これにより得られる錠剤の崩壊性を向上させることができる。
【0015】
上記方法においては、前記錠剤用崩壊剤を、前記錠剤の総量あたりの含有量が0.1~60質量%となるよう添加することが好ましい。これによれば、シトラス由来食物繊維素材を崩壊性向上のための有効量で錠剤中に含有せしめることを確実にすることができる。
【0016】
上記方法においては、前記錠剤の錠剤原料中に、更に、CMC-Ca、CMC-Na、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、メチルセルロース、デンプン、部分アルファー化デンプン、及び寒天からなる群から選ばれる1種類又は2種類以上を添加することが好ましい。これによれば、シトラス由来食物繊維素材とともに崩壊性向上のための他の成分を錠剤の配合原料中に添加するので、得られる錠剤におけるシトラス由来食物繊維素材による崩壊性向上の作用効果を、更により確実に発揮させることができる。
【0017】
本発明は、その第3の観点においては、上記錠剤用崩壊剤を含有することを特徴とする錠剤を提供するものである。
【0018】
本発明の錠剤によれば、上記錠剤用崩壊剤の有効成分であるシトラス由来食物繊維素材を錠剤中に含有せしめるので、これによりその錠剤の崩壊性を向上させることができる。
【0019】
上記錠剤においては、前記錠剤用崩壊剤を前記錠剤の総量あたり0.1~60質量%含有することが好ましい。これによれば、シトラス由来食物繊維素材を崩壊性向上のための有効量で錠剤中に含有せしめることを確実にすることができる。
【0020】
上記錠剤においては、前記錠剤用崩壊剤を含有し、更に、CMC-Ca、CMC-Na、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、メチルセルロース、デンプン、部分アルファー化デンプン、及び寒天からなる群から選ばれる1種類又は2種類以上を含有することが好ましい。これによれば、シトラス由来食物繊維素材とともに崩壊性向上のための他の成分を錠剤中に含有するので、得られる錠剤におけるシトラス由来食物繊維素材による崩壊性向上の作用効果を、更により確実に発揮させることができる。
【0021】
上記錠剤においては、前記錠剤は、素錠又はコーティング錠であることが好ましい。
【0022】
上記錠剤においては、前記錠剤は、前記錠剤用崩壊剤が未添加であることを除いて同じ配合原料からなる錠剤に対して、第十七改正日本薬局方の崩壊試験法により測定される崩壊時間が10%以上短縮されていることが好ましい。
【0023】
上記錠剤においては、前記錠剤は、第十七改正日本薬局方の崩壊試験法により測定される崩壊時間が60分以内とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、シトラス由来食物繊維素材を利用して、錠剤の崩壊性を向上させることができる。また、コーティング錠剤とする場合にも、ひび割れなどの外観や成形性の問題を生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に用いるシトラス由来食物繊維素材は、柑橘類植物(シトラス:Citrus)に由来する食物繊維素材であればよく、特にその種類等に制限はない。例えば、レモン、ライム、ミカン、ユズ、キンカン、オレンジ、グレープフルーツ、ボンタン、ハッサク、ダイダイ、ザボンなどに由来する食物繊維素材を用いることができる。その食物繊維素材の調製方法についても特に限定されないが、例えば、柑橘類植物の果実(フルーツ等)から脱汁後、外果皮、内果皮、じょうのう膜、果心、維管束などの果実由来組織が含まれる部分を乾燥してピールとなし、これを粉砕して、食物繊維素材を調製することなどが好ましく例示される。通常、このように調製された食物繊維素材は、柑橘類植物の細胞壁に由来するセルロースやヘミセルロースといった不溶性食物繊維を主成分としており、顕微観察すると、スポンジ構造様の多孔質の構造を有することを確認できる。更に具体的には、経口摂取可能に調製された食物繊維素材等であればよい。
【0026】
本発明に用いるシトラス由来食物繊維素材としては、食物繊維が100%を占める素材でなくとも食物繊維を主成分とする素材であれば用いることができる。食物繊維含量としては、例えば、50~100質量%であってよく、55~100質量%であってよく、60~95質量%であってよく、65~95質量%であってよく、70~90質量であってよい。なお、食物繊維含量は周知の分析方法で測定することができ、例えば、AOAC法985.29(プロスキー法)により測定することができる。
【0027】
本発明に用いるシトラス由来食物繊維素材は、別の観点からは、その保水力を品質の基準としてもよい。すなわち、錠剤は、飲用され胃液等の水性溶媒に接したときに有効成分放出のために効率よく崩壊する必要がある。このとき水分を取り込んで膨潤する性質が錠剤の崩壊性に有利にはたらくからである。この点、本発明に用いるシトラス由来食物繊維素材は、シトラス由来食物繊維素材1gあたりの保水量が15g以上であることが好ましく、20g以上であることがより好ましい。上記範囲未満であると、錠剤に含有せしめたときその錠剤の崩壊性を向上させ得る効果に乏しくなる。ここで、保水量は、当該食物繊維素材を乾燥状態で水中に分散し、24時間静置後に遠心分離を行って水分を保持した食物繊維素材を分離して重量測定を行って、乾燥状態にあったときの重量を差し引いた値を求めるなどして算出することができる。
【0028】
本発明に用いるシトラス由来食物繊維素材としては、例えば、「ヘルバセルAQプラスCF」(商品名、ヘルバフード社製)など、市販の食物繊維素材を用いてもよい。
【0029】
本発明においては、上記シトラス由来食物繊維素材を錠剤中に含有せしめて、その錠剤の崩壊性を向上させる。
【0030】
上記シトラス由来食物繊維素材の錠剤中の含有量は、錠剤の総量あたり、例えば、0.1~60質量%であってよく、0.5~50質量%であってよく、1~40質量%であってよく、3~30質量%であってよく、5~20質量%であってよい。上記範囲未満であると、錠剤の崩壊性を向上させる効果を得にくくなる。上記範囲を超えると、錠剤中に薬物の有効成分やその他の成分を配合しづらくなる。
【0031】
上記シトラス由来食物繊維素材によって錠剤の崩壊性を向上させることができたかどうかは、上記シトラス由来食物繊維素材が未添加であることを除いて同じ配合原料からなる錠剤に対して、錠剤の崩壊性を比較することにより評価することができる。崩壊性は、例えば、第十七改正日本薬局方の崩壊試験法に則して行うことができる。その評価基準は任意に定めることができるが、典型的に例えば、複数個の錠剤について試験した結果、その崩壊時間の平均がシトラス由来食物繊維素材未添加の錠剤のそれに対して、10%以上短縮することなどを基準として設定してよく、30%以上短縮することなどを基準として設定してもよい。また、例えば、試験した錠剤の個数の9割において崩壊時間が60分以内であることを基準として設定してよく、30分以内であることを基準として設定してもよい。
【0032】
本発明により提供される錠剤は、上記シトラス由来食物繊維素材を錠剤原料中に添加すること以外、通常の錠剤の調製方法により製造することができる。例えば、錠剤製造に用いられる、直打法、乾式造粒法、湿式造粒法、湿式打錠法等のいずれの製造方法も採用し得る。また、錠剤の製造工程中、上記シトラス由来食物繊維素材の添加のタイミングは、錠剤原料としていずれのタイミングで添加してもよいが、例えば、湿式造粒法の場合は、造粒時にバインダーの水分によって膨潤するのを防ぐため、造粒後に添加することが好ましい。あるいは、直打や乾式造粒の場合には、原薬の混合時に他の配合原料と一緒に混合してもよい。
【0033】
本発明により提供される錠剤には、上記シトラス由来食物繊維素材による作用効果を害しない範囲で、適宜、上記シトラス由来食物繊維素材以外の他の成分を配合してもよい。例えば、結晶セルロース、麦芽糖、還元麦芽糖水飴、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)等の結合剤、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、粉末油脂等の滑沢剤、二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム等の流動化剤、グァーガム、キサンタンガム等の安定剤等が挙げられる。あるいは、着色料、香料、甘味料、酸味料等が挙げられる。
【0034】
一方、本発明の限定されない任意の態様においては、本発明により提供される錠剤は、上記シトラス由来食物繊維素材以外に、他の崩壊剤を含んでいてもよい。他の崩壊剤としては、例えば、CMC-Ca(カルボキシメチルセルロースカルシウム)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、メチルセルロース、デンプン、部分アルファー化デンプン、寒天などが挙げられる。この場合、他の崩壊剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
上記シトラス由来食物繊維素材以外の崩壊剤を錠剤中に含有せしめる場合、その含有量は、錠剤の総量あたり、例えば、0.1~20質量%であってよく、0.5~15質量%であってよく、1~10質量%であってよく、1.5~8質量%であってよく、2~5質量%であってよい。また、上記シトラス由来食物繊維素材に対する質量比にして、0.01:100(シトラス由来食物繊維素材の比が後者、以下同様)であってよく、1:80であってよく、1:10であってよく、1:5であってよく、1:1であってよい。上記シトラス由来食物繊維素材以外の崩壊剤の錠剤中の含有量が上記範囲未満であると、錠剤の崩壊性を更に向上させる効果を得にくくなる。上記範囲を超えると、錠剤中に薬物の有効成分や上記シトラス由来食物繊維素材、その他の成分を配合しづらくなる。
【0036】
本発明の他の態様においては、上記シトラス由来食物繊維素材を含有せしめる錠剤は、コーティング処理を施されてない素錠の形態であってもよく、コーティング処理を施されてなるコーティング錠の形態であってもよい。すなわち、素錠の形態である場合、錠剤の全体中に上記シトラス由来食物繊維素材を含有せしめることで、崩壊性が向上する。一方、コーティング処理を施すことで、崩壊性向上の効果とともに、苦味や臭いをマスキングしたり、光や湿気による安定性を高めたりした錠剤となすことができる。コーティングの処理は、一般的なコーティング錠の製造方法に則して行うことができ、例えば、セラック、ツェイン、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、HPC、イーストラップ等によるフィルムコーティング、セラック、ツェイン等による腸溶性コーティング、砂糖、水飴、糖アルコール等による糖衣コーティングなど、いずれの方法も採用することができる。なお、シトラス由来食物繊維素材によれば、膨潤速度が比較的緩やかであるため、コーティング液の噴霧・乾燥工程における錠剤のひび割れや崩壊を防ぐ効果も得られる。一方、崩壊剤として寒天は、コーティング錠剤の調製の際にはひび割れや崩壊を生じやすくなるため、併用しないほうがよい。
【実施例
【0037】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
<試験例1>
錠剤にシトラス由来食物繊維素材を含有せしめることによる効果について調べた。具体的には、下記表に示す各配合で常法に従い錠剤を調製し、第十七改正日本薬局方の崩壊試験法に則って崩壊時間を測定した。
【0039】
シトラス由来食物繊維素材としては、「ヘルバセルAQプラスCF-D/100」を用いた。なお、この食物繊維素材を乾燥状態で水中に分散し、24時間静置後に遠心分離を行って水分を保持した食物繊維素材を分離して重量測定を行って、乾燥状態にあったときの重量を差し引いて算出した保水量は、食物繊維素材1gあたりおよそ20gであった。
【0040】
【表1】
【0041】
表2には、上記比較例1-1又は実施例1-1で使用した錠剤素材をまとめて示す。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
表4には、上記比較例1-2又は実施例1-2で使用した錠剤素材をまとめて示す。
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
表6には、上記比較例1-3又は実施例1-3で使用した錠剤素材をまとめて示す。
【0048】
【表6】
【0049】
その結果、表1、3、5の各下段に示されるように、各配合の錠剤にシトラス由来食物繊維素材を配合すると、非含有の場合に比べ、錠剤の崩壊時間が短縮することが明らかとなった。なお、表1に示す配合による錠剤については、木屋式硬度計により硬度も測定した。その結果、錠剤中にシトラス由来食物繊維素材を10質量%含有せしめても硬度に影響は認められなかった。
【0050】
<試験例2>
錠剤の崩壊時間がシトラス由来食物繊維素材の添加量によってどのように変化するか調べた。具体的には、表7に示す配合で、0.1、0.5、1、5、20、30、60質量%と含有量を変えて配合したときの効果について、試験例1と同様にして調べた。
【0051】
【表7】
【0052】
表8には、上記比較例2又は実施例2-1~2-7で使用した錠剤素材をまとめて示す。
【0053】
【表8】
【0054】
その結果、シトラス由来食物繊維素材の錠剤中の含有量が0.1~60質量%の範囲で、崩壊時間の短縮が認められた。
【0055】
<試験例3>
錠剤にシトラス由来食物繊維素材を含有せしめることによる効果について、市販されている他のシトラス由来食物繊維素材についても調べた。具体的には、表9に示す配合で、シトラス由来食物繊維素材として、「シトリ100M20」、「シトリ100M40」、「シトリ100FG」(商品名、いずれもファイバースター社製)の3種を用いたときの効果について、試験例1と同様にして調べた。なお、これらの食物繊維素材を乾燥状態で水中に分散し、24時間静置後に遠心分離を行って水分を保持した食物繊維素材を分離して重量測定を行って、乾燥状態にあったときの重量を差し引いて算出した保水量は、いずれも食物繊維素材1gあたり15gに満たなかった。
【0056】
【表9】
【0057】
表10には、上記比較例3、実施例3、参考例3-1~3-3で使用した錠剤素材をまとめて示す。
【0058】
【表10】
【0059】
その結果、錠剤の崩壊時間の短縮に効果が認められるのは、シトラス由来食物繊維素材として試験例1、2に使用した「ヘルバセルAQプラス」のみであった。これは、「ヘルバセルAQプラス」以外の3種では、水を吸収して膨潤する性質に乏しく、一方で「ヘルバセルAQプラス」では錠剤の崩壊に必要な保水力が十分に備わるためではないかと考えられた。
【0060】
<試験例4>
錠剤に配合せしめる崩壊剤として、シトラス由来食物繊維素材以外に、他の崩壊剤を含有せしめたとき、錠剤の崩壊時間がどのように変化するか調べた。具体的には、表11に示す配合で、他の崩壊剤として、CMC-Na、デンプングリコール酸Na、デンプン、又は寒天を併用したときの効果について、試験例1と同様にして調べた。
【0061】
【表11】
【0062】
表12には、上記実施例4-1~4-5で使用した錠剤素材をまとめて示す。
【0063】
【表12】
【0064】
その結果、シトラス由来食物繊維素材を他の崩壊剤と併用した場合、シトラス由来食物繊維素材のみの錠剤よりもさらに短縮することが明らかとなった。
【0065】
<試験例5>
コーティング錠剤に、崩壊剤としてシトラス由来食物繊維素材を含有せしめたとき、その調製にどのように影響を与えるか調べた。具体的には、表13に示す配合で、コーティング剤としてセラックを使用して、常法に従いコーティング錠剤を調製した。また、試験例1と同様にして、崩壊時間を調べた。
【0066】
【表13】
【0067】
表14には、上記比較例5-1~5-2、実施例5で使用した錠剤素材をまとめて示す。
【0068】
【表14】
【0069】
その結果、崩壊剤としてCMC-Na及び寒天を使用した比較例5-1では、コーティング錠剤の調製の際にその崩壊剤が膨潤し、錠剤の表面が粉っぽくなってしまい、外観の問題があった。また、崩壊剤として寒天を使用した比較例5-2では、コーティング錠剤の調製の際にその崩壊剤が膨潤し、それが剥がれ、錠剤の表面に欠落やひび割れが認められ、外観の問題があった。一方、崩壊剤としてシトラス由来食物繊維素材を使用した実施例5では、問題なくコーティングできた。また、崩壊性にも優れていた。