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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】吸着装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/22 20060101AFI20240322BHJP
   B21D 43/18 20060101ALI20240322BHJP
   B23P 15/26 20060101ALI20240322BHJP
   B23D 33/02 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B21D43/22 A
B21D43/18 C
B23P15/26
B23D33/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022063622
(22)【出願日】2022-04-06
(65)【公開番号】P2023154342
(43)【公開日】2023-10-19
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390034809
【氏名又は名称】日高精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】一由 想平
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-226418(JP,A)
【文献】特開2008-056460(JP,A)
【文献】実開昭63-073260(JP,U)
【文献】特開2008-266020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/22
B21D 43/18
B23P 15/26
B23D 33/02
B26D 7/02
B65H 29/24
B65H 29/32
B21D 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス装置により所定形状に形成された金属帯状体を所定長さに切断して製品に個片化するカットオフ装置と、前記カットオフ装置により個片化された前記製品をスタックするスタック装置と、を少なくとも具備するプレス成型品製造装置における前記カットオフ装置の搬送方向の下流側であって、前記スタック装置の上方位置に配設され、
筒状体をなす本体部と、
前記本体部の側周面に開閉可能に配設されたフラップと、
前記本体部の内部空間における空気を外部に排出するファンと、
前記本体部の底面に形成された吸着面と、
前記吸着面の前記カットオフ装置の側の端部に、前記吸着面における吸着力以上の前記吸着力で前記金属帯状体を吸着する吸着部と、を具備し、
前記吸着面には、複数本の製品幅金属帯状体を個別に吸着する搬送経路が複数形成されており、
前記吸着部は、各前記搬送経路に個別に対応して複数設けられていることを特徴とする吸着装置。
【請求項2】
各前記吸着部には、前記吸着力が異なる複数種類の吸着源によって前記吸着力が供給されており、
各前記吸着部に供給される前記吸着力が選択可能であることを特徴とする請求項記載の吸着装置。
【請求項3】
前記吸着源は、前記ファンによる前記吸着力と同じ前記吸着力を有する第1吸着源と、前記ファンによる前記吸着力以上の前記吸着力を有する第2吸着源と、を有していることを特徴とする請求項記載の吸着装置。
【請求項4】
前記吸着部が、前記金属帯状体の搬送方向における先端部の位置が前記吸着面の搬送方向における所定範囲内にあるときのみ、前記吸着力がオンになるように動作を制御する動作制御部を有していることを特徴とする請求項1~のうちのいずれか一項に記載の吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸着装置に関し、より詳細には、プレス装置により長尺に形成されたプレス成型品をカットオフ装置で所定長さ毎に切断する際において、長尺のプレス成型品を吸着装置によって高速かつ確実に搬送方向に送り出すことが可能な吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコン等に採用される熱交換器は、熱媒管挿通部が形成された放熱用フィンに熱媒管を挿通させることにより形成されている。このような熱交換器に用いられる放熱用フィンは、金属製の薄板からなる長尺体の幅方向に複数列の放熱用フィンをプレス装置(プレス金型)によってまとめて形成し、熱媒管挿通部の列間に列間スリットと称される切断部分を形成したうえで分割(分離)させて製品幅の金属帯状体とした後、所定長さにカットオフされることにより形成されている。このような放熱用フィンの製造装置としては、例えば特許文献1(特許第5295290号公報)や特許文献2(特開2009-226418号公報)において開示されているような構成が出願人によって提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5295290号公報(明細書段落0034-0036;図3等)
【文献】特開2009-226418号公報(明細書段落0011-0016;図2-4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2における吸着装置(サクション装置)は、ドーム状の本体部内部の空気をブロアモータにより排出することにより本体部の下面である吸着面に吸着力を発生させている。吸着面における吸着力の強弱調整はブロアモータの回転数の増減により行われ、吸着力のオンオフ切り替えは本体部の側面に形成された開口面を覆うフラップを回動させることによって行われている。ところで、カットオフ装置から送り出された金属帯状体は、吸着装置に吸着された状態で吸着装置内をスライド移動するようにして搬送されている。そしてカットオフ装置からの送り出し長さが所定長さになったときにカットオフ装置により製品に切断処理され、その後スタック装置に積層される。吸着装置は、吸着面に金属帯状体を吸着させる際や金属帯状体の搬送中において吸着力の強弱調整や吸着力のオンオフの切り替えが行われるが、ブロアモータの回転数の増減やフラップの回動によってのみでの切り替えでは応答性が悪いといった課題がある。
【0005】
また、吸着装置は、カットオフ装置から搬送方向に離れた位置に配設されているため、吸着面の吸着力が弱いとカットオフ装置から送り出された金属帯状体の先端部を吸着することができず、適切なカットオフ処理ができないことがある。また、カットオフ装置から送り出された金属帯状体の先端部を確実に吸着させるために吸着力を強くしすぎると、金属帯状体が吸着装置内で円滑にスライド移動させることができず、金属帯状体が座屈してしまうおそれもある。このようにカットオフ装置から送り出された金属帯状体を確実に吸着し、吸着装置においては円滑にスライド移動させるための吸着力の微調整が困難であるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは以下のとおりである。すなわち、吸着面における吸着力の強弱やオンオフ切り替えの短時間化が可能であると共に、カットオフ装置から送り出された金属帯状体を確実に吸着すると共に金属帯状体を搬送方向に円滑にスライド移動させるため、吸着力の微調整が可能な吸着装置を提供することにある。
【0007】
上記課題を解決するために発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち本発明は、プレス装置により所定形状に形成された金属帯状体を所定長さに切断して製品に個片化するカットオフ装置と、前記カットオフ装置により個片化された前記製品をスタックするスタック装置と、を少なくとも具備するプレス成型品製造装置における前記カットオフ装置の搬送方向の下流側であって、前記スタック装置の上方位置に配設され、筒状体をなす本体部と、前記本体部の側周面に開閉可能に配設されたフラップと、前記本体部の内部空間における空気を外部に排出するファンと、前記本体部の底面に形成された吸着面と、前記吸着面の前記カットオフ装置の側の端部に、前記吸着面における吸着力以上の前記吸着力で前記金属帯状体を吸着する吸着部と、を具備し、前記吸着面には、複数本の製品幅金属帯状体を個別に吸着する搬送経路が複数形成されており、前記吸着部は、各前記搬送経路に個別に対応して複数設けられていることを特徴とする吸着装置である。
【0008】
これにより、吸着面における吸着力の強弱やオンオフ切り替えの短時間化が可能であると共に、カットオフ装置から送り出された金属帯状体を確実に吸着し、吸着装置においては金属帯状体を搬送方向へ円滑にスライド移動させるための吸着力の微調整が可能になる。また、カットオフ装置から供給される金属帯状体を複数列にすることができ、製品の製造効率を高めることができる。
【0011】
また、各前記吸着部には、前記吸着力が異なる複数種類の吸着源によって前記吸着力が供給されており、各前記吸着部に供給される前記吸着力が選択可能であることが好ましい。また、前記吸着源は、前記ファンによる前記吸着力と同じ前記吸着力を有する第1吸着源と、前記ファンによる前記吸着力以上の前記吸着力を有する第2吸着源と、を有していることがより好ましい。
【0012】
これらにより、それぞれの搬送経路において金属帯状体の吸着力を変更することができ搬送経路ごとに金属帯状体の吸着力を最適化することで、不良品の発生を低減することができる。
【0013】
また、前記吸着部が、前記金属帯状体の搬送方向における先端部の位置が前記吸着面の搬送方向における所定範囲内にあるときのみ、前記吸着力がオンになるように動作を制御する動作制御部を有していることが好ましい。
【0014】
これにより、カットオフ装置から送り出された金属帯状体の搬送方向における先端部に応じて吸着装置の吸着面における吸着力が切り替えられ、金属帯状体の吸着装置におけるハンドリングを最適化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明における吸着装置の構成を採用することにより、吸着面における吸着力の強弱やオンオフ切り替えの短時間化が可能であると共に、カットオフ装置から送り出された金属帯状体を確実に吸着し、吸着装置においては金属帯状体を搬送方向へ円滑にスライド移動させるための吸着力の微調整が可能になる。また、カットオフ装置から供給される金属帯状体を複数列にすることができ、製品の製造効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態におけるプレス成型品製造装置の概略側面図である。
図2】本実施形態における吸着装置の側面図である。
図3】本実施形態における吸着装置の上方斜視図である。
図4】本実施形態における吸着装置の下方斜視図である。
図5】吸着装置で搬送される製品幅金属帯状体の先端部の位置と、吸着面における吸着力の対応状態の一例を示すための説明側面図その1である。
図6】吸着装置で搬送される製品幅金属帯状体の先端部の位置と、吸着面における吸着力の対応状態の一例を示すための説明側面図その2である。
図7】吸着装置で搬送される製品幅金属帯状体の先端部の位置と、吸着面における吸着力の対応状態の一例を示すための説明側面図その3である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる吸着装置40を有するプレス成型品製造装置100の実施形態について、図面に基づいて具体的に説明する。図1に本実施形態におけるプレス成型品製造装置100の概略構成を示しているが、各構成の大きさの比率は実際の比率とは異なっている。本実施形態における製品(プレス成型品)は所定形状に形成された熱交換器用フィン33を例示しているが、本発明にかかるプレス成型品製造装置100により製造される製品は、熱交換器用フィン33に限定されるものではない。本実施形態におけるプレス成型品製造装置100は、以下のような構成および工程によって製品の製造を行う。
【0018】
熱交換器用フィン33の材料である長尺体の板材としての金属製の薄板11は、アンコイラ10にコイル状に巻回されている。本実施形態における金属製の薄板11はアルミニウム製の長尺な板材を想定しているが、長尺体の板材はアルミニウム製の長尺な板体に限定されるものではない。動作制御部60によりアンコイラ10から引き出された薄板11は、ループコントローラ12に挿入され、動作制御部60により動作制御されている後述の送り装置20によって間欠送りされる薄板11のばたつきが抑えられている。ループコントローラ12の下流側には、金型装置16が内部に配置されたプレス装置18が設けられている。プレス装置18に供給された薄板11は、動作制御部60により動作制御されている金型装置16によって所定形状の金属帯状体19にプレス加工される。プレス装置18に配置された金型装置16によってプレス加工された金属帯状体19は、プレス装置18の下流側に設けられている送り装置20によって間欠的に搬送方向に送られる。
【0019】
送り装置20の具体的構成は特に限定されるものではないが、本実施形態における送り装置20は、搬送方向に往復動可能な送りピン21が設けられており、金属帯状体19を牽引するような構成を採用している。送り装置20による金属帯状体19(薄板11)の送りタイミングは、動作制御部60およびNCフィーダ14と連動して動作するように設定されており、安定した間欠送りが可能である。
【0020】
本実施形態におけるプレス成型品製造装置100のように、熱交換器用フィン33の幅寸法より幅広寸法の薄板11が用いられている場合、送り装置20の下流側に列間スリット装置22が設けられていることが好ましい。列間スリット装置22は、金属帯状体19の上面側に配置された列間スリット上刃23と、金属帯状体19の下面側に配置された列間スリット下刃24とを有する。列間スリット装置22は、プレス装置18の上下動動作を利用して列間スリット上刃23と列間スリット下刃24を接近および離反させる機構が採用されている。列間スリット上刃23と列間スリット下刃24は、金属帯状体19の搬送方向に沿って長尺に形成されており、間欠送りされる金属帯状体19を噛み合わせて金属帯状体19を切断する。これにより金属帯状体19は、搬送方向(長手方向)と直交する方向の複数列に分割され、搬送方向に長い帯状の複数本の製品幅金属帯状体26に形成される。
【0021】
列間スリット装置22によって形成された製品幅金属帯状体26は、動作制御部60により動作が制御される送り装置20の動作によって送り出されてカットオフ装置30に送り込まれる。カットオフ装置30は、製品幅金属帯状体26の上面側に配置されたカットオフ上刃32と、製品幅金属帯状体26の下面側に配置されたカットオフ下刃34と、カットオフユニット36とを有する。カットオフユニット36にはカットオフ下刃34が固定されている。これに対してカットオフ上刃32は、カットオフユニット36に固定されていない。カットオフ上刃32の上方には、動作制御部60により動作が制御されている往復動装置37が設けられており、カットオフ上刃32の上部には、往復動装置37の作動ロッド38が取り付けられている。
【0022】
往復動装置37としては、エアシリンダ、電動アクチュエータ等に代表されるようにカットオフ上刃32に取り付けられた作動ロッド38を上下方向に往復動するものであれば具体的な構成は特に限定されるものではない。往復動装置37とカットオフ上刃32とはクランプ機構等によって着脱可能である。往復動装置37は、カットオフ上刃32から切り離された際に、カットオフ上刃32の上方位置から退避可能に設けられている。退避方向としては、カットオフ上刃32の上方位置から退避することができれば製品幅金属帯状体26の搬送方向や、製品幅金属帯状体26の搬送方向に水平面内で直交するいわゆる幅方向等どの方向であってもよい。
【0023】
製品幅金属帯状体26は、カットオフユニット36に形成されている隙間を通してカットオフ上刃32とカットオフ下刃34の間に送り込まれる。そして往復動装置37によりカットオフ上刃32をカットオフ下刃34に接近させ、カットオフ上刃32とカットオフ下刃34とが型閉じする。このようにしてカットオフ装置30からはみ出した状態の製品幅金属帯状体26が搬送方向に沿って所定長さに切断され、製品としての熱交換器用フィン33に個片化される。カットオフ装置30の下流側には、動作制御部60により動作が制御されている吸着装置40と、製品である熱交換器用フィン33を熱交換器用フィン33の板厚方向(上下方向)にスタックさせるスタック装置50とが設けられている。吸着装置40は製品幅金属帯状体26の上方位置に配置され、スタック装置50は熱交換器用フィン33の下方位置に配置されている。
【0024】
吸着装置40は、筒状体をなす本体部42の内部空間に設けられたファン(図示はせず)により本体部42の内部空間における空気を本体部42の外部に排出することで本体部42の内部空間を減圧している。本体部42の底面は吸着面43に形成されており、製品幅金属帯状体26は吸着面43に吸着された状態でスタック装置50に向けて送り装置20により間欠的にスライド移動しながら搬送される。スタック装置50はベース52にスタックピン54が立設された公知の構造である。吸着装置40の吸着面43の吸着力が解除されて吸着面43から落下してきた熱交換器用フィン33は、プレス加工によって形成された透孔や切り欠き部に、スタックピン54を進入させることでベース52の上にスタックされる。
【0025】
以上に説明したプレス成型品製造装置100における各構成の動作を制御する動作制御部60は、別体のパーソナルコンピュータの記憶部に予めインストールした動作制御プログラムと、この動作制御プログラムに基づいて作動するCPUとにより実現可能である。このような動作制御部60は、プレス成型品製造装置100の中央制御部と共通させることもできる。
【0026】
本実施形態にかかるプレス成型品製造装置100においては、カットオフ装置30から送り出された製品幅金属帯状体26の先端部26Aを確実に吸着装置40の吸着面43に吸着させるための吸着部44が配設されている点が最大の特徴である。以下、本実施形態における吸着装置40の詳細について説明する。本実施形態における吸着装置40は、図2図4に示すように、本体部42、吸着部44、マニホールド45、吸着源46、分岐弁47、サクションホース48および電磁弁49を具備する。なお、図2図4においては、図面を簡略化するため一部構成の表示が省略されている。
【0027】
本体部42は、四角錐台状の筒状体をなすサクションボックス42Aと、サクションボックス42Aの上部に連結された筒状体をなすダンパーボックス42Bとを有する複合的な筒状体に形成されている。また、ダンパーボックス42Bの上面に形成された開口部42Cにはファンを収容したファンボックス(いずれも図示はせず)が接続されている。本体部42の底面には、第1吸着板43Aと第2吸着板43Bが取り付けられた吸着面43に形成されている。第1吸着板43Aにおける吸着力はファンおよび吸着源46により生成され、第2吸着板43Bにおける吸着力はファンにより生成されている。
【0028】
吸着部44はサクションボックス42Aのカットオフ装置30の側の端部所定範囲でカットオフ装置30から送り出された製品幅金属帯状体26の先端部26Aを吸着させるものである。マニホールド45はエジェクタに代表される吸着源46によるエア吸引による減圧を均一にするためのものである。吸着源46とマニホールド45はカスケード配置された分岐弁47およびサクションホース48で接続されている。マニホールド45とそれぞれの吸着部44もサクションホース48および電磁弁49によって接続されている。吸着源46の出力を増減させることにより吸着部44における吸着力の強弱調整が可能である。
【0029】
吸着装置40の基本構成について説明する。サクションボックス42Aの上側に取り付けられたダンパーボックス42Bの側周面には外部空間に開口する連通部(図示はせず)を覆うフラップ42Dが対向する2面に設けられている。フラップ42Dは、図示しない開閉モータによってダンパーボックス42Bの側面に配設された回転軸42Eを回転の中心として回動し、ダンパーボックス42Bの連通部の開閉状態が切り替え可能になっている。また、図示しないファンは動作制御部60により回転数が増減可能に設定されており、ファンの回転数の増減により吸着面43の基本吸着力(第2吸着板43Bにおける吸着力)が調整可能になっている。
【0030】
フラップ42Dを閉じた状態(ダンパーボックス42Bの側面の開口部42Cを閉塞した状態)で動作制御部60がファンを所定の回転数で回転させると、サクションボックス42Aの内部空間の空気が開口部42Cから吸い上げられる。吸い上げられた空気はファンボックスを経由して吸着装置40の外部に排出される。これにより第2吸着板43Bにおける気圧が大気圧から所定量減圧された基本吸着力により、第2吸着板43Bに製品幅金属帯状体26を吸着させた状態で送り装置20の動作によってスタック装置50に向けて確実にスライド移動させることができる。
【0031】
吸着面43を構成する第1吸着板43Aはサクションボックス42Aの底面のカットオフ装置30の側における端部側所定範囲(ここではサクションボックス42Aの搬送方向における1/5程度の範囲)に装着されている。なお、吸着面43における第1吸着板43Aの装着範囲は、本実施形態における装着範囲に限定されるものではない。また、吸着面43の残りの範囲には第2吸着板43Bが装着されている。第1吸着板43Aには吸着部44が搭載されており、第1吸着板43Aのうちサクションボックス42Aに連通する範囲には送風ファンにより生成された基本吸着力が供給され、他の部分には吸着源46により生成された吸着力が供給されている。吸着面43のうち第2吸着板43Bはサクションボックス42Aの内部空間に直接連通しており、第2吸着板43Bには送風ファンにより生成された基本吸着力が供給されている。本実施形態においては、第1吸着板43Aに供給される吸着力が第2吸着板43Bに供給される基本吸着力以上となるように設定されている。これにより、従来のサクションボックス42Aに比べてカットオフ装置30からはみ出すように送り出された製品幅金属帯状体26の先端を確実に吸着することができる。
【0032】
第1吸着板43Aの底面には、製品幅金属帯状体26が進入可能な幅寸法に形成されていると共に搬送方向に延伸する複数本の搬送経路としての凹溝43Cが設けられている。各々の凹溝43Cには吸着部44が個別に取り付けられている。また、凹溝43Cの内底面には、吸着部44と凹溝43Cの内底面とを連通させる連通孔により形成された吸着口43Dが搬送方向に所定間隔をあけた複数箇所に形成されている。第2吸着板43Bの底面には、凹溝43Cの幅寸法と同幅寸法に形成されていると共に搬送方向に延伸する複数本の搬送経路としての凹溝43Eが第1吸着板43Aの各々の凹溝43Cの延長線上に設けられている。各々の凹溝43Eには、凹溝43Eの内底面とサクションボックス42Aの内部空間とを連通させる連通孔により形成された吸着口43Fが搬送方向に所定の間隔で複数箇所に形成されている。
【0033】
このように搬送方向において吸着力が異なる吸着面43の構成を採用すると共に、第1吸着板43Aおよび第2吸着板43Bの吸着力を各々独立して調整可能にしたことにより、以下のような効果が得られる。すなわち、カットオフ装置30から送り出された製品幅金属帯状体26の先端部26Aを強い吸着力により第1吸着板43Aに確実に吸着させることができる。また、製品幅金属帯状体26をできるだけ弱い吸着力で第2吸着板43Bの凹溝43Eに吸着させることで、製品幅金属帯状体26を吸着させた状態で搬送方向に確実にスライド移動させることができる。
【0034】
カットオフ装置30からの製品幅金属帯状体26のはみ出し長さが所定の長さになると動作制御部60がカットオフ装置30を作動させて製品幅金属帯状体26を切断して熱交換器用フィン33に個片化する。この後、動作制御部60が吸着装置40の吸着力を解除(吸着源46とファンからの吸着力の供給を遮断)すれば、熱交換器用フィン33が吸着面43から落下し、ベース52の上にスタックピン54に沿ってスタックされる。
【0035】
また、本実施形態における分岐弁47には、上流側連結口が1つで下流側連結口が2つのものが用いられている。このような分岐弁47をサクションホース48の延長方向においてカスケード配設することで、複数本の凹溝43Cに対して吸着力を供給するための吸着源46の配設数を削減することができる点で好都合である。また、各吸着源46における吸着力のばらつきは、後述するマニホールド45で均一化され、各々の吸着部44に提供される吸着力も均一化することができる。本実施形態のように吸着源46には、吸着力の異なる複数種類のエジェクタが用いられていることが好ましい。
【0036】
具体的には第2吸着板43Bにおける吸着力と等しい吸着力を生成する第1吸着源としての第1エジェクタ46Aと第1エジェクタ46Aよりも強力な吸着力を生成する第2吸着源としての第2エジェクタ46Bが用いられている。本実施形態における吸着源46は、第1エジェクタ46Aの元圧を0.1MPaとし、第2エジェクタ46Bの元圧を0.4MPaとしている。なお、第1エジェクタ46Aの元圧や第2エジェクタ46Bの元圧は以上の数値に限定されるものではない。
【0037】
第1エジェクタ46Aは、サクションホース48によりマニホールド45の側面に接続されている。これに対して第2エジェクタ46Bは、サクションホース48によりマニホールド45の上面に接続されている。マニホールド45の側面の接続部は、すべての吸着部44(すべての凹溝43C)に連通している。マニホールド45の上面の接続部には電磁弁49が個別の吸着部44に対応させた状態で配設されており、電磁弁49のオンオフ切り替えにより、第2エジェクタ46Bにより生成された吸着力が供給される吸着部44を任意に切り替えすることができる。本実施形態においては電磁弁49がオフになった吸着部44に対して第2エジェクタ46Bにより生成された吸着力が供給され、他の吸着部44には第1エジェクタ46Aにより生成された第2吸着板43Bにおける吸着力と等しい吸着力が供給されている。
【0038】
このように、各々の吸着部44に対応させて配設した電磁弁49のオンオフ切り替えによりカットオフ装置30から送り出された製品幅金属帯状体26の吸着状態に応じて各々の吸着部44における吸着力の強弱を個別に切り替えすることができる。これにより、吸着面43の吸着力不足による製品幅金属帯状体26の吸着ミスや吸着力過剰による製品幅金属帯状体26の吸着搬送中における座屈等に起因する不良品の発生を防止することができる。
【0039】
さらに本実施形態における吸着装置40は、吸着装置40で搬送される製品幅金属帯状体26の先端部位置に応じて吸着面43の吸着力を変化させる制御を行うこともできる。図5図7は、吸着装置40で搬送される製品幅金属帯状体26の先端部26Aの位置と、吸着面43における吸着力の対応状態の一例を示すための説明側面図である。なお、本実施形態においては、プレス装置18におけるプレス加工の回数(ショット数)が16ショット毎にカットオフ装置30がカットオフ処理を行う形態で、所定ショット範囲毎の吸着面43の吸着力の変化状態について説明している。なお、カットオフ処理を行うショット数や、吸着面43の吸着力を変化させる際のトリガーとなるカットオフ処理後のプレス装置18のショット数(プレス加工の回数)は適宜変更することができる。
【0040】
図5には、カットオフ装置30による製品幅金属帯状体26をカットオフした直後の状態が実線で示されており、カットオフ後のプレス装置18の1ショット目の状態が破線で示されている。本実施形態においては、図5に示す実線の状態から破線の状態までの間、吸着源46(第1エジェクタ46Aと第2エジェクタ46B)を停止させる制御がなされている。すなわち、製品幅金属帯状体26の先端部26Aが吸着面43の平面位置に到達する直前までは、吸着面43の第1吸着板43Aの凹溝43Cの吸着口43Dにおける吸着力が作用していない状態である。これを換言すると、第2吸着板43Bの凹溝43Eの吸着口43Fのみに基本吸着力が作用している状態になっている。
【0041】
次に、図6には、カットオフ後のプレス装置18の2ショット目の状態が実線で示されており、カットオフ後のプレス装置18の6ショット目の状態が破線で示されている。図6からも明らかなとおり、カットオフ後のプレス装置18の2ショット目で製品幅金属帯状体26の先端部26Aの平面位置が初めて第1吸着板43Aの平面位置に重複した状態になっている。また、カットオフ後のプレス装置18の6ショット目で製品幅金属帯状体26の先端部26Aの平面位置が初めて第2吸着板43Bの平面位置に重複した状態になっている。
【0042】
本実施形態においては、図6に示す実線の状態から破線の状態までの間、吸着源46(第1エジェクタ46Aと第2エジェクタ46B)を作動させる制御がなされている。すなわち、吸着面43のカットオフ装置30の側の端部である第1吸着板43Aの吸着口43Dには第2吸着板43Bの吸着口43Fにおける吸着力よりも強力な吸着力が凹溝43Cのすべてまたは選択された一部に作用した状態になっている。また、第2吸着板43Bの吸着口43Fには基本吸着力が作用した状態になっている。このような状態にすることで、カットオフ装置30から送り出されてきた製品幅金属帯状体26の先端部26Aを確実に第1吸着板43Aの吸着部44(凹溝43C)に吸着させることができる。また、製品幅金属帯状体26の先端部26Aの平面位置が第2吸着板43Bの平面位置に所要長さ範囲で重複するまでの間は、第1吸着板43Aによる吸着が維持されている。これにより、少なくとも製品幅金属帯状体26の先端部26Aを第2吸着板43Bに確実に吸着させることができる。
【0043】
次に、図7には、カットオフ後のプレス装置18の7ショット目の状態が実線で示されており、カットオフ後のプレス装置18の16ショット目の状態が破線で示されている。本実施形態においては、図7に示す実線の状態から破線の状態までの間、吸着源46(第1エジェクタ46Aと第2エジェクタ46B)を停止させる制御がなされている。すなわち、吸着面43の第1吸着板43Aの吸着口43Dにおける吸着力が作用せず、第2吸着板43Bにおける吸着口43Fのみ基本吸着力が作用している状態になっている。
【0044】
図6および図7に示すように、吸着面43の序盤部分である第1吸着板43Aの吸着部44(凹溝43C)に製品幅金属帯状体26を確実に吸着させていると共に、先端部26Aの一部が第2吸着板43Bの凹溝43Eに吸着されている。これにより、製品幅金属帯状体26の先端部26Aの一部が第2吸着板43Bの凹溝43Eに吸着させた後は、従来技術における吸着面43と同程度の吸着力となる。このようにすることで、製品幅金属帯状体26を吸着面43に吸着させた状態で搬送方向に確実にスライド移動させることができる。
【0045】
以上に説明した吸着面43における吸着力の変更を繰り返し行うことにより、カットオフ装置30から送り出された製品幅金属帯状体26を確実に吸着面43(凹溝43C、凹溝43E)に吸着させると共に搬送方向にスライド移動させることができる。よって、従来技術における課題を解決することができる。また、オペレータがスタック装置50への熱交換器用フィン33のスタック状態を確認し、スタック状態の異常が確認されたときには、オペレータが図示しない操作パネル等により電磁弁49のオンオフを切り替えることもできる。これにより、製品幅金属帯状体26の状態に応じて第1吸着板43Aにおける吸着部44における吸着力を選択的に変更することができる。
【0046】
以上の本発明にかかる吸着装置40を有するプレス成型品製造装置100について実施形態に基づいて説明したが、本発明の技術的範囲は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、以上の実施形態においては、第1エジェクタ46Aの元圧を0.1MPaとし、第2エジェクタ46Bの元圧を0.4MPaとしているが、第1エジェクタ46Aと第2エジェクタ46Bの元圧は以上の数値に限定されるものではない。また、第1エジェクタ46Aおよび第2エジェクタ46Bには図示しない電磁ソレノイドに代表されるエジェクタ用電磁弁を個別に配設した形態を採用することもできる。エジェクタ用電磁弁をオンオフ切り替えすることにより、第1エジェクタ46Aおよび第2エジェクタ46Bの吸着力の生成をオンオフ切り替えが可能になる。
【0047】
また、本実施形態における吸着装置40においては、本体部42の一部であるファンボックスにファン(いずれも図示はせず)を配設した形態について説明いているがファンの配設位置は、ファンボックスに限定されるものではない。ファンは、本体部42の内部空間における空気を本体部42の外部に排出することができればよく、配設位置は特に限定されるものではない。
【0048】
また、以上の実施形態においては、プレス装置18とカットオフ装置30との間に列間スリット装置22が配設されているが、使用する長尺体の板材としての薄板11の幅寸法が製品幅である場合には、列間スリット装置22の配設は省略することもできる。また、列間スリット装置22を省略した場合には、第1吸着板43Aと第2吸着板43Bの搬送経路である凹溝43Cと凹溝43Eは1本のみにしてもよいし、凹溝43Cと凹溝43Eの配設を省略することもできる。
【0049】
また、以上の実施形態においては、カットオフ装置30から送り出される製品幅金属帯状体26の先端部26Aの吸着装置40の搬送方向における位置に応じて、吸着口43Dおよび吸着口43Fにおける吸着力を変更する形態が例示されている。しかしながら本発明は、この形態に限定されるものではない。カットオフ装置30から送り出される製品幅金属帯状体26の先端部26Aの吸着装置40の搬送方向における位置にかかわらず、吸着口43Dおよび吸着口43Fにおける吸着力を一定にした形態を採用することもできる。
【0050】
また、以上に説明した実施形態における各種変形例どうしを適宜組み合わせた構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
10:アンコイラ,11:薄板,12:ループコントローラ,14:NCフィーダ,
16:金型装置,18:プレス装置,19:金属帯状体
20:送り装置,21:送りピン,
22:列間スリット装置,23:列間スリット上刃,24:列間スリット下刃,
26:製品幅金属帯状体,26A:先端部
30:カットオフ装置,32:カットオフ上刃,34:カットオフ下刃,
33:熱交換器用フィン,
36:カットオフユニット,37:往復動装置,38:作動ロッド
40:吸着装置,
42:本体部,
42A:サクションボックス,42B:ダンパーボックス,42C:開口部,
42D:フラップ,42E:回転軸,
43:吸着面,43A:第1吸着板,43B:第2吸着板,
43C:凹溝,43D:吸着口,43E:凹溝,43F:吸着口,
44:吸着部,45:マニホールド,
46:吸着源,46A:第1エジェクタ,46B:第2エジェクタ,
47:分岐弁,48:サクションホース,49:電磁弁
50:スタック装置,52:ベース,54:スタックピン
60:動作制御部
100:プレス成型品製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7