(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】頭部装着型視認装置および視認画像表示システム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/64 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2022113808
(22)【出願日】2022-07-15
【審査請求日】2023-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305021650
【氏名又は名称】株式会社近藤研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健人
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-041218(JP,A)
【文献】登録実用新案第3231356(JP,U)
【文献】実開昭51-073049(JP,U)
【文献】特開2004-053910(JP,A)
【文献】実開昭62-065621(JP,U)
【文献】国際公開第2018/123198(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0039066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/64-5/655
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の頭部に装着される頭部装着部と、
前記頭部装着部に配設された支持手段と、
前記支持手段に支持されて前記装着者の両眼前に夫々配置され、前記装着者の左右の視線を前方へ夫々透過させて、両視線が交わる視点位置にある対象物を視認させる左右の視線透過部材と
を備えたものであって、
前記支持手段は、
前記左右の視線透過部材を左右横方向へ移動可能かつ左右横方向に傾動可能に支持し、該視線透過部材を、左右横方向への移動に連動させて前記視点位置を保つように傾動させる視点保持連動手段を備えたものであ
り、
視点保持連動手段は、
視線透過部材の少なくとも上下一方に配設された透過部材支持部材と、
前記透過部材支持部材の、装着者の両眼に夫々対応する左右の位置に夫々設けられ、左右横方向に沿って直線状に形成された左右の第一案内路部と、
前記透過部材支持部材の、前記左右の第一案内路部の外側に夫々設けられ、該第一案内路部に対して前方へ湾曲状または直線状に傾斜された左右の第二案内路部と、
左右の視線透過部材に夫々設けられ、前記透過部材支持部材に左右横方向へ傾動自在に支持されると共に前記第一案内路部によって左右横方向へ案内される第一被案内部と、
左右の視線透過部材に夫々設けられ、前記透過部材支持部材に左右横方向へ傾動自在に支持されると共に前記第二案内路部によって左右方向へ案内される第二被案内部と
を備え、
前記視線透過部材の第一被案内部が前記第一案内路部で案内され且つ第二被案内部が前記第二案内路部で案内されることにより、当該視線透過部材を左右横方向に移動させつつ視点位置を保って傾動させるようにしたものであることを特徴とする頭部装着型視認装置。
【請求項2】
請求項1に記載の頭部装着型視認装置が、視線透過部材を介して装着者に視認される対象物を撮像する撮像手段を備えたものであり、
前記撮像手段で撮像された前記対象物の画像情報に基づいて、該対象物の画像を表示する視認画像表示システムであって、
前記頭部装着型視認装置と、
前記頭部装着型視認装置の撮像手段から前記画像情報を取得して記憶する画像情報記憶手段と、
前記頭部装着型視認装置から取得した前記画像情報を表示する画像表示手段と
を備えたものであることを特徴とする視認画像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の頭部に装着されて、該装着者の左右の視線が交わる視点位置にある対象物を視認できる頭部装着型視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医療分野では、頭部に装着できる双眼ルーペが用いられており、医師が装着して使用することによって、患部を拡大視できる。こうした双眼ルーペとして、例えば特許文献1には、左右のルーペを左右方向に位置変換できる構成が提案されている。かかる構成は、左右のルーペを支持する支持体がセンターを中心として前方へ所定角度で屈曲されており、左右のルーペを該支持体に沿って左右方向へ位置変換させることによって、装着者の眼幅に合わせて左右のルーペを位置変換できる共に、左右のルーペから視点までの距離を一定に保つことができる。これにより、眼幅の異なる装着者にあっても、ルーペから同距離にある対象物に焦点を合わせ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した特許文献1の従来構成は、左右のルーペを支持体に沿って左右方向へ位置変換させると、該ルーペから視点までの距離を一定に保てるものの、ルーペと眼との間隔が変化する。これは、ルーペが、前方へ屈曲された支持体に沿って位置変換することに因る。このようにルーペと眼との間隔が変わると、視認できる範囲が狭くなったり、左右で焦点を合わせ難くなったりすることから、装着者の眼幅によって使い勝手に差が生じていた。
【0005】
本発明は、眼幅の異なる装着者であっても、使い勝手に差が生じ難く、同じように使用し得る頭部装着型視認装置と、該頭部装着型視認装置を備えた視認画像表示システムとを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、装着者の頭部に装着される頭部装着部と、前記頭部装着部に配設された支持手段と、前記支持手段に支持されて前記装着者の両眼前に夫々配置され、前記装着者の左右の視線を前方へ夫々透過させて、両視線が交わる視点位置にある対象物を視認させる左右の視線透過部材とを備えたものであって、前記支持手段は、前記左右の視線透過部材を左右横方向へ移動可能かつ左右横方向に傾動可能に支持し、該視線透過部材を、左右横方向への移動に連動させて前記視点位置を保つように傾動させる視点保持連動手段を備えたものであることを特徴とする頭部装着型視認装置である。
【0007】
かかる構成にあっては、視線透過部材が、左右横方向への移動に連動して視点位置を保ちながら傾動するようにしたものであるから、該視線透過部材の左右横方向の位置に関わらず、装着者の眼と該視線透過部材との間隔を略一定に保つことができると共に、左右の視線が交わる視点位置を、同じ位置(または略同じ位置)で保つことができる。これにより、装着者の眼幅に応じて左右の視線透過部材を左右横方向へ位置変換しても、同じように視点位置の対象物を視認できることから、該対象物を容易かつ安定して視認でき、使い勝手に極めて優れている。
【0008】
前述した本発明の頭部装着型視認装置にあって、視点保持連動手段は、視線透過部材の少なくとも上下一方に配設された透過部材支持部材と、前記透過部材支持部材の、装着者の両眼に夫々対応する左右の位置に夫々設けられ、左右横方向に沿って直線状に形成された左右の第一案内路部と、前記透過部材支持部材の、前記左右の第一案内路部の外側に夫々設けられ、該第一案内路部に対して前方へ湾曲状または直線状に傾斜された左右の第二案内路部と、左右の視線透過部材に夫々設けられ、前記透過部材支持部材に左右横方向へ傾動自在に支持されると共に前記第一案内路部によって左右横方向へ案内される第一被案内部と、左右の視線透過部材に夫々設けられ、前記透過部材支持部材に左右横方向へ傾動自在に支持されると共に前記第二案内路部によって左右方向へ案内される第二被案内部とを備え、前記視線透過部材の第一被案内部が前記第一案内路部で案内され且つ第二被案内部が前記第二案内路部で案内されることにより、当該視線透過部材を左右横方向に移動させつつ視点位置を保って傾動させるようにしたものである構成が提案される。
【0009】
かかる構成にあっては、視線透過部材の第一被案内部が第一案内路部に沿って左右横方向に移動されると、第二被案内部が第二案内路部に沿って移動されることによって、当該視線透過部材が左右横方向に傾動されるものである。そして、第一案内路部による前記左右横方向への移動に連動して、前記視点位置を保って視線透過部材が傾動する。かかる構成によれば、視線透過部材を安定して作動させることができるため、前述した本発明の作用効果が一層安定して発揮される。
【0010】
一方、本発明は、前述した頭部装着型視認装置が、視線透過部材により装着者に視認される対象物を撮像する撮像手段を備えたものであり、前記撮像手段で撮像された前記対象物の画像情報に基づいて、該対象物の画像を表示する視認画像表示システムであって、前記頭部装着型視認装置と、前記頭部装着型視認装置の撮像手段から前記画像情報を取得して記憶する画像情報記憶手段と、前記頭部装着型視認装置から取得した前記画像情報を表示する画像表示手段とを備えたものであることを特徴とする視認画像表示システムである。ここで、撮像手段は動画および/または静止画を撮像可能なものであり、画像情報が動画や静止画の情報である構成が好適である。
【0011】
かかる構成にあっては、頭部装着型視認装置を装着した装着者に視認される対象物を撮像して、その画像情報を画像表示手段で表示するものであるから、該画像表示手段によって該装着者と同じものを見ることができる。ここで、撮像手段により撮像した画像情報をリアルタイムで表示すれば、装着者以外の者が、該装着者の見ているものを同時に見ることができる。また、撮像した後に記憶装置から読み込んで表示することによって、装着者や該装着者以外の者が見ることも可能である。こうしたことから、本構成を学校や研究施設などで利用することによって、学習効果や研究効果を飛躍的に向上させることができる。
【0012】
前述した本発明の頭部装着型視認装置にあって、視線透過部材は、装着者の眼前に配置されて視点位置の対象物を拡大視させる拡大鏡を備えたものである構成が提案される。
【0013】
かかる構成にあっては、拡大鏡が、左右横方向への移動に連動して視点位置を保ちながら傾動することから、該拡大鏡の左右横方向位置に関わらず、該拡大鏡と装着者の眼との間隔を略一定に保ちつつ、該拡大鏡を介した視線の視点位置が同じ位置で保たれる。したがって、本構成によれば、拡大鏡を左右横方向へ位置変換しても、拡大鏡で拡大視される対象物を容易かつ安定して視認することができる。
【0014】
また、前述した本発明の頭部装着型視認装置にあって、少なくとも左右一方の視線透過部材は、静止画および/または動画を撮像可能な撮像手段と、装着者の眼前に配置され、該装着者の視線を前方へ透過させると共に、前記撮像手段の光軸を屈折させて該視線と一致させる光軸屈折部材とを備えたものである構成が提案される。
【0015】
かかる構成にあっては、撮像手段の光軸が、装着者の視線を妨げること無く,該視線と一致することから、該撮像手段によって該装着者の目線で撮像できる。さらに、本構成は、光軸屈折部材が、左右横方向への移動に連動して視点位置を保ちながら傾動するものである。こうしたことから、光軸屈折部材(および撮像手段)の左右横方向位置に関わらず、該光軸屈折部材と装着者の眼との間隔を略一定に保ちつつ、該光軸屈折部材を介した視線の視点位置が同じ位置で保たれる。したがって、本構成によれば、視線透過部材を左右横方向へ位置変換しても、光軸屈折部材を介して対象物を容易かつ安定して視認できると共に、撮像手段により装着者の目線で安定して撮像できる。
【0016】
尚、本構成にあって、左右一方の視線透過部材が撮像手段と光軸屈折部材とを備えた構成では、左右他方の視線透過部材が該光軸屈折部材を備えた構成(撮像手段の無い構成)が好適である。この構成では、左右の視線が夫々の光軸屈折部材を透過することから、左右の眼で同じように対象物を見ることができるという利点がある。
【0017】
前述した本発明の頭部装着型視認装置にあって、左右の視線透過部材は、装着者の眼前に配置されて視点位置の対象物を拡大視させる拡大鏡を夫々備えており、さらに、少なくとも左右一方の視線透過部材は、静止画および/または動画を撮像可能な撮像手段と、前記拡大鏡の前後一側に配置され、装着者の視線を前方へ透過させると共に前記撮像手段の光軸を屈折させて該視線と一致させる光軸屈折部材とを備えたものである構成が提案される。
【0018】
かかる構成にあっては、撮像手段の光軸が、装着者の視線を妨げること無く,該視線と一致することから、該撮像手段によって該装着者の目線で撮像できる。さらに、本構成は、光軸屈折部材と拡大鏡とが、左右横方向への移動に連動して視点位置を保ちながら傾動するものである。こうしたことから、光軸屈折部材および拡大鏡の左右横方向位置に関わらず、これらと装着者の眼との間隔を略一定に保ちつつ、これらを介した視線の視点位置が同じ位置で保たれる。したがって、本構成によれば、視線透過部材を左右横方向へ位置変換しても、光軸屈折部材および拡大鏡を介して対象物を容易かつ安定して視認できると共に、撮像手段により装着者の目線で安定して撮像できる。
【0019】
尚、本構成にあって、左右一方の視線透過部材が撮像手段と光軸屈折部材とを備えた構成では、左右他方の視線透過部材が、拡大鏡の前後一側に光軸屈折部材を備えた構成(撮像手段の無い構成)が好適である。この構成では、左右の視線が夫々の光軸屈折部材と拡大鏡とを透過することから、左右の眼で同じように対象物を見ることができるという利点がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の頭部装着型視認装置にあっては、左右の視線透過部材を、装着者の眼幅に応じて左右横方向へ位置変換できると共に、該位置変換に連動して視点位置を保ちながら傾動する。これにより、左右の視線透過部材を左右横方向へ移動させても、同じ視点位置の対象物を容易かつ安定して視認でき、使い勝手に極めて優れている。
【0021】
また、本発明の視認画像表示システムにあっては、装着者が見たものを表示することから、例えば学校や研究施設などで利用されることで、学習効果や研究効果を飛躍的に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1の頭部装着型視認装置1を示す斜視図である。
【
図2】頭部装着型視認装置1の、(A)平面図と、(B)正面図である。
【
図3】(A)頭部装着型視認装置1の視線透過部材6a,6bの使用状態と、(B)待機状態とを示す側面図である。
【
図4】案内支持部材7と視線透過部材6a,6bとを分離して示す斜視図である。
【
図5】(A)左右の光軸屈折部材36,37の斜視図と、(B)各光軸屈折部材36,37の分解斜視図である。
【
図6】視線透過部材6a,6bの位置変換態様と、視点位置Tとの位置関係を示す説明図である。
【
図7】頭部装着型視認装置1を備えた視認画像表示システム101を示す説明図である。
【
図8】実施例2の頭部装着型視認装置51を示す斜視図である。
【
図9】案内支持部材7と視線透過部材56a,56bとを分離して示す斜視図である。
【
図10】視線透過部材56a,56bの位置変換態様と、視点位置Tとの位置関係を示す説明図である。
【
図11】実施例3の頭部装着型視認装置71を示す斜視図である。
【
図12】視線透過部材76,76の位置変換態様と、視点位置との位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を具体化した実施例1~3を、添付図面を用いて説明する。尚、実施例にあって、前後方向は、実施例の頭部装着型視認装置1を装着した装着者における前後方向を示し、左右は、同様に該装着者における左右を示す。そして、前後方向と上下方向(縦方向)とに直交する左右方向を左右横方向という。また、左右方向にあって、左右の外側から装着者の中心に向かう方向を、内方とする。さらに、実施例にあって、前面と正面とは、同じ意味で用いている。
【実施例1】
【0024】
実施例1の頭部装着型視認装置は、
図1~3に示すように、装着者の両眼前方に配設されて両眼を覆う透明なシールド部4と、該装着者の両耳に掛けられることによって該装着者の頭部に装着されるフレーム部3とが一体的に設けられた保護メガネ2を備え、さらに、前記フレーム部3の中央部に跳上連結部材5を介して取り付けられた案内支持部材7と、該案内支持部材7に支持された左右の視線透過部材6a,6bとを備えたものである。
【0025】
前記跳上連結部材5は、前記保護メガネ2のフレーム部3に固定される基部11と、該基部11に上下方向へ摺動可能かつ任意の高さ位置で固結される摺動部12と、該摺動部12に回動可能に設けられた可動部13と、該可動部13の先端部に回動可能に設けられた取付部14とを備え、該取付部14に前記案内支持部材7が固定される。可動部13は、前記摺動部12に回動可能に設けられた第一支軸部(図示せず)と前記取付部14に回動可能に設けられた第二支軸部(図示せず)とが互いに回動可能に並設された構成である。こうした跳上連結部材5により、案内支持部材7と視線透過部材6a,6bとを一体的に上下方向へ可動させることが可能である(
図3参照)。また、本実施例にあっては、前記取付部14にライト部材15が配設されている。このライト部材15により、装着者が前記視線透過部材6a,6bを介して見る対象物を照らすことができ、該対象物の視認性を向上できる。尚、ライト部材15には、図示しないON/OFFスイッチや電源などがケーブルを介して接続されている。
【0026】
このように本実施例の頭部装着型視認装置1は、前記跳上連結部材5によって、案内支持部材7と視線透過部材6a,6bとを、装着者の眼前に配置させる使用状態(
図3(A))と、該使用状態の上方へ傾動させた待機状態(
図3(B))とに変換させることができる。ここで、前記跳上連結部材5は、前述したように第一支軸部と第二支軸部とを介して上下方向に回動可能に設けられた構成であることから、前記視線透過部材6a,6bを装着者に応じた適切な位置(使用状態)に配置できる。
【0027】
次に、本発明の要部について説明する。
前記案内支持部材7は、
図1,2,4に示すように、左右方向へ延成されて成り、左右方向の中央部が前記跳上連結部材5の取付部14に固結されている。この案内支持部材7は、中央部に対して左右対称に形成されており、左右両側に第一案内長孔部21と第二案内長孔部22とが夫々設けられている。第一案内長孔部21は、左右横方向へ直線状に開口された長孔であり、案内支持部材7を上下方向に貫通している。左右の第一案内長孔部21は、装着者に装着された状態で、該装着者の左右両眼に対応する各両眼の前方位置に夫々設けられている。また、第二案内長孔部22は、前記第一案内長孔部21の外側に、該第一案内長孔部21に対して前方へ直線状に傾斜された長孔であり、案内支持部材7を上下方向に貫通している。
【0028】
視線透過部材6a,6bは、左右方向に長い略直方体状の筐体25と、該筐体25の内部に配設された光軸屈折部材36,37と、該筐体25の前方に一体的に固結されたルーペ部27とを備える。ここで、光軸屈折部材36,37は、各筐体25の内側寄りに配設されており、該筐体25の前面および後面には、光軸屈折部材36,37を臨む位置に開口部(図示せず)が夫々形成されている。そして、ルーペ部27は、筐体25の前面に設けられた開口部に対向させて、該筐体25の前面に取り付けられていると共に、筐体25は、後面に設けられた開口部が前記使用状態で保護メガネ2のシールド部4に対向する。さらに、左右一方の視線透過部材6aには、その筐体25の内部にカメラ部材28が配設されている。尚、本実施例では、左側の視線透過部材6aにのみカメラ部材28が配設されている。
【0029】
ルーペ部27は、略截頭円錐状の鏡筒と該鏡筒の前後端部に並設された二枚のレンズとを備えた構成である。こうしたルーペ部27は、従来から公知の構成を適用できることから、その詳細を省略する。
【0030】
光軸屈折部材36,37は、
図5に示すように、二個の直角プリズム38,38が互いの斜面38a,38a同士を重ね合わせて接合された立方体であり、いわゆるキューブ型のビームスプリッターである。光軸屈折部材36,37は、装着者の眼前(前記使用状態)で、斜面38aが内側前方へ傾斜するように配設され(
図4,6参照)、各光軸屈折部材36,37の前面36a,37aが前記ルーペ部27に対向される。そして、左側の視線透過部材6aの光軸屈折部材36は、前面36a、後面36b、および左側面36cに、反射防止コーティングが施されていると共に、その他の三面に、光の入出力を抑制する黒色コーティングが施されている。一方、右側の視線透過部材6bの光軸屈折部材37は、前面37a、後面37b、および右側面(図示せず)に、反射防止コーティングが施されていると共に、その他の三面に、光の入出力を抑制する黒色コーティングが施されている。さらに、各光軸屈折部材36,37の斜面38aには、ミラーコーティング(金属コーティング)が夫々施されている。尚ここで、本実施例にあっては、斜面38aの透過率(透明度)が20~60%となるように、前記ミラーコーティングを行っている。
【0031】
前記カメラ部材28は、CCDカメラにより構成され、カメラレンズを左側の光軸屈折部材36の左側面36cに対向させて、該光軸屈折部材36の左側方に配設されている。そして、カメラ部材28には、前記光軸屈折部材36の左側方に配設された状態における左側部に、ケーブル32が接続されており、該ケーブル32を介して制御装置33に接続されている。このケーブル32は、
図1に示すように、左側の視線透過部材6aを構成する筐体25の左側部から左側方へ差し出されて、前記保護メガネ2のフレーム部3の左側部に連結される。そして、装着者に保持された制御装置33に接続されている。こうしたケーブル32によって、カメラ部材28と前記制御装置33との間で、カメラ部材28に撮像を指示する信号と、該カメラ部材28で撮像した画像データとが送受信されると共に、制御装置33からカメラ部材28へ電力が供給される。前記制御装置33は、カメラ部材28に撮像させるスイッチ、電源、無線通信機能などを備えており、該無線通信機能によって、カメラ部材28から入力した画像データをネットワークを介して通信することができる(
図7参照)。
【0032】
こうした視線透過部材6a,6bでは、ルーペ部27の正面から入射した入射光が光軸屈折部材36,37により、該光軸屈折部材36,37の斜面38aを透過する透過光と、該斜面38aで反射して外側方(左側の光軸屈折部材36では左側方、右側の光軸屈折部材37では右側方)へ透過する反射光とに分けられる。これにより、
図6に示すように、カメラ部材28の光軸が、左側の光軸屈折部材36を透過する左側の視線S1と一致する。ここで、本実施例では、左右の視線透過部材6a,6bが光軸屈折部材36,37を夫々備え、装着者の左右の視線S1,S2が左右の光軸屈折部材36,37を透過することから、該装着者の左右の眼に映る像に対する違和感を抑制できる。尚、視線S1,S2は、視線透過部材6a,6bのルーペ部27,27の中心または中心近傍を通過する視線を示す。
【0033】
筐体25は、
図1~4に示すように、上面から上方へ突出された第一被案内部41と第二被案内部42とを備える。第一被案内部41は、前記案内支持部材7の第一案内長孔部21に挿通する丸棒状の挿通杆部41aと、該挿通杆部41aの上部に設けられて該第一案内長孔部21を通過不能な円盤状の支持部41bとを備えてなり、前記光軸屈折部材36,37の直上(筐体25の上面の内端寄り部位)に配設されている。第二被案内部42は、前記案内支持部材7の第二案内長孔部22に挿通する丸棒状の挿通杆部42aと、該挿通杆部42aの上部に設けられて該第二案内長孔部22を通過不能な円盤状の支持部42bとを備えてなり、筐体25の外端寄り部位に配設されている。こうした第一被案内部41の挿通杆部41aを第一案内長孔部21に挿通させて支持部41bを該第一案内長孔部21上に配し、且つ第二被案内部42の挿通杆部42aを第二案内長孔部22に挿通させて支持部42bを該第二案内長孔部22上に配することにより、筐体25(視線透過部材6a,6b)が案内支持部材7に左右方向へ移動可能に支持される。この筐体25を左右方向へ移動させると、第一被案内部41が、左右横方向へ直線状に形成された第一案内長孔部21に案内されることによって、該筐体25の内側部分が左右横方向に移動すると共に、第二被案内部42が、前方へ傾斜された第二案内長孔部22に案内されることによって、該筐体25が第一被案内部41を略中心として左右横方向へ傾動する(
図6参照)。尚、「左右横方向へ傾動」とは、第一被案内部41の挿通杆部41aに直交する平面内で左右方向に傾動することを言う。
【0034】
ここで、筐体25の第一,第二被案内部41,42と案内支持部材7の第一,第二案内長孔部21,22とにあって、夫々の設置位置や寸法形状等は、左右の筐体25の左右方向への移動によって前記視点位置T(左右の視線S1,S2の交わる位置)が略変わらずに傾動するように、設定されている。この視点位置Tを保つこととは、換言すれば、案内支持部材7の左右方向中央部位から両視線S1,S2の交わる位置(視点位置T)までの距離Mを略一定に保つことであるから、該距離Mを略一定に保つことができるように、各被案内部41,42と各案内長孔部21,22とが設定されている。これにより、
図6に示すように、左右の視線透過部材6a,6bの左右方向への位置変換に関わらず、左右の光軸屈折部材36,37(およびルーペ部27)を夫々透過する左右の視線S1,S2が交わる視点位置Tが、略一定に保たれる。
【0035】
また、本実施例の第一被案内部41と第二被案内部42とは、
図4に示すように、筐体25に着脱可能に設けられている。具体的には、第一被案内部41の挿通杆部41aの下部と、第二被案内部42の挿通杆部42aの下部とに雄螺子部が形成されると共に、筐体25の上面に該挿通杆部41a,42aに螺合される雌螺子孔が夫々形成されている。そして、各挿通杆部41a,42aを各案内長孔部21,22を上方から挿通させて各雌螺子孔に螺合することにより、筐体25に第一被案内部41と第二被案内部42とが取り付けられて、案内支持部材7に支持される。案内支持部材7に支持された状態で、各被案内部41,42を締め付けることにより、該案内支持部材7に筐体25(視線透過部材6a,6b)を位置決め固定できる。このように本実施例では、各被案内部41,42を締め付けることにより、視線透過部材6a,6bを左右方向の所望位置で位置決めできると共に、各被案内部41,42を締め付け解除することにより、該視線透過部材6a,6bを左右方向へ移動できる。
【0036】
このように案内支持部材7に夫々支持された左右の視線透過部材6a,6bは、
図6に示すように、装着者の眼幅に応じて左右方向位置を適宜変えることができる。例えば、比較的眼幅の狭い装着者にあっては、
図6(A)に示すように、左右の視線透過部材6a,6bを夫々の内側寄りに配置して位置決めする。この状態で、当該装着者が、光軸屈折部材36,37とルーペ部27とを透過した視線S1,S2の交わる視点位置Tに焦点を合わせることができ、該視点位置Tにある対象物をはっきりと拡大視できる。一方、比較的眼幅の広い他の装着者にあっては、
図6(B)に示すように、左右の視線透過部材6a,6bを夫々外側寄りに配置して位置決めする。この状態を、視線透過部材6a,6bを内側寄りに配置した場合(
図6(A))と比較すると、左右の視線透過部材6a,6bが夫々外側に移動していると共に、各視線透過部材6a,6bが外側に向かって前方へ傾斜している。これに伴って、各視線透過部材6a,6bの光軸屈折部材36,37とルーペ部27とが、内側寄りに配置した場合に比して、装着者の眼と光軸屈折部材36,37との間隔を略一定に保ちつつ外側に位置し、且つ外側に向かって前方傾斜している。これにより、光軸屈折部材36,37とルーペ部27とを透過した視線S1,S2が、内側寄りに配置した場合と略同じ視点位置Tで交わるため、装着者が該視点位置Tで焦点を合わせ易く、該視点位置Tにある対象物をはっきりと拡大視できる。このように左右の視線透過部材6a,6bの左右方向位置に関わらず、案内支持部材7から略等しい距離Mにある視点位置Tで左右の視線S1,S2が交わるため、眼幅の異なる装着者にあっても視点位置Tの対象物を同様に拡大視できる。
【0037】
一方、実施例1の頭部装着型視認装置1は、
図7に示す視認画像表示システム101を構成している。視認画像表示システム101は、前記制御装置33により送信された画像データを受信するコンピュータ102と、該コンピュータ102を介して該画像データを記憶する記憶装置103と、該画像データに基づいて動画や静止画を表示する画像表示装置104とを備える。ここで、コンピュータ102は、中央制御装置、データを送受信する装置、画像データを読み込んで画像表示装置104に動画や静止画を表示させる装置などを備えている。こうした視認画像表示システム101は、前記制御装置33とコンピュータ102とを制御することによって、カメラ部材28で撮像した画像データをリアルタイムで画像表示装置104で表示させることができると共に、コンピュータ102を操作することによって、記憶装置103に記憶した画像データを選択して読み込んで、画像表示装置104で表示させることもできる。
【0038】
本実施例1の頭部装着型視認装置1は、保護メガネ2を装着者の頭部に装着されて、案内支持部材7および視線透過部材6a,6bを使用状態とすることによって、該装着者が対象物を拡大視できるものである。すなわち、
図6に示すように、装着者の左右の視線S1,S2が、左右の視線透過部材6a,6bの光軸屈折部材36,37およびルーペ部27を通過して、視点位置Tで交わることから、該装着者は、該視点位置Tにある対象物に焦点が合って、該対象物を拡大視できる。
【0039】
さらに、本実施例1の構成は、左右の視線透過部材6a,6bを左右方向へ移動させることができると共に、該左右方向への移動により、左右の光軸屈折部材36,37およびルーペ部27を左右横方向へ移動させつつ視点位置Tを保って左右横方向へ傾動させることができる。これにより、装着者の眼と光軸屈折部材36,37との間隔を略保ちつつ該装着者の眼幅に合わせて左右の視線透過部材6a,6bを左右方向へ移動させて位置決めできると共に、各視線透過部材6a,6bの左右方向位置に関わらず、前記視点位置Tを略一定の位置に保つことができる。こうした本実施例1の構成によれば、装着者が自らの眼幅に応じて左右の視線透過部材6a,6bを左右方向へ位置変換しても、視点位置Tの対象物を同様に拡大視できることから、眼幅の異なる装着者であっても対象物を容易かつ安定して視認でき、使い勝手に優れる。
【0040】
また、左側の視線透過部材6aに配設されたカメラ部材28は、その光軸が光軸屈折部材36の斜面38aで屈折して装着者の左眼の視線S1と一致することから、装着者の目線で静止画や動画を撮像することができる。そして、このカメラ部材28で撮像した画像データを制御装置33からコンピュータ102に送信することにより、該画像データの記憶をすると共に画像表示装置104で表示できる。こうした本実施例の視認画像表示システム101は、カメラ部材28で撮像した動画や静止画を画像表示装置104に映すことができ、装着者以外の者が該装着者と同じ目線で対象物を見ることができる。これにより、例えば、手術で執刀医が頭部装着型視認装置1を用いて、カメラ部材28で撮像した画像データをリアルタイムで表示することによって、アシスタントや見学者などが該執刀医と同じ目線で手術の状況を見ることができる。そのため、手術中であれば、アシスタントや見学者が手術状況を正確に知ることができるため、手術状況に応じて的確なアドバイス等を行うことが可能である。また、手術後に記憶装置103に記憶した画像データを読み込んで画像表示装置104で見ることによって、学生や他の医療関係者に様々な手術状況に関する知見を正確に広めることに役立つ。
【実施例2】
【0041】
実施例2の頭部装着型視認装置51は、
図7,8に示すように、左右の視線透過部材56a,56bの前方に、矩形状の拡大鏡57,57が夫々配設されたものであり、左右の拡大鏡57,57が、視線透過部材56a,56bと別に案内支持部材7に取り付けられている。実施例2の視線透過部材56a,56bは、ルーペ部を備えず且つ該ルーペ部に代えて拡大鏡57を備えた構成であり、この点が実施例1と異なる。実施例2にあっては、実施例1と同様の保護メガネ2、跳上連結部材5、および案内支持部材7を備えている。
【0042】
実施例2の視線透過部材56a,56bは、実施例1と同様の筐体25と、該筐体25の内部に配設された光軸屈折部材36,37とを備え、該筐体25に設けられた第一被案内部41と第二被案内部42とにより前記案内支持部材7に支持されている。そして、筐体25の前面には、光軸屈折部材36,37の前面36a,37a(
図5参照)を臨む位置に、開口部59が形成されており、該筐体25の後面には、該光軸屈折部材36,37の後面を臨む位置に、開口部(図示せず)が形成されている。さらに、実施例1と同様に、左側の視線透過部材56aにカメラ部材28が設けられている。尚、筐体25、光軸屈折部材36,37、第一被案内部41、および第二被案内部42は、実施例1と同じ構成であることから、詳細な説明を省略する。
【0043】
こうした実施例2の視線透過部材56a,56bにあっては、前述した実施例1と同様に、左右横方向へ移動しつつ第一被案内部41を略中心として左右横方向へ傾動する。これにより、
図9に示すように、左右の視線透過部材56a,56bの左右方向への位置変換に関わらず、左右の光軸屈折部材36,37を夫々透過した視線S1,S2が交わる視点位置Tが、略一定の位置に保たれる。
【0044】
また、実施例2の構成は、左右の拡大鏡57,57が取付部61,61を介して案内支持部材7に配設されており、該案内支持部材7と一体的に設けられている。これら拡大鏡57,57は、左右横方向に移動する視線透過部材56a,56bの開口部59,59に対向するように配設されており、左右横方向への移動範囲内にある該開口部59,59を通過する視線S1,S2が、該拡大鏡57,57を介して前記視点位置Tに至るようになっている。尚、拡大鏡57は、略矩形状のレンズにより形成されたものであり、従来から公知の構成を適用できる。
【0045】
また、実施例2の頭部装着型視認装置51にあっても、実施例1と同様の視認画像表示システム101を構成する(
図7参照)。
【0046】
こうした実施例2の構成にあっても、前述した実施例1と同様に、左右の視線透過部材56a,56bを、装着者の眼と光軸屈折部材36,37との間隔を略一定に保ちつつ、該装着者の眼幅に応じて左右方向位置を適宜変えることができる。例えば、比較的眼幅の狭い装着者であれば、
図9(A)に示すように、左右の視線透過部材56a,56bを夫々の内側寄りに配置して位置決めすることにより、当該装着者が、光軸屈折部材36,37を介して拡大鏡57,57を透過した視線S1,S2の交わる視点位置Tに焦点を合わせることができ、該視点位置Tにある対象物をはっきりと拡大視できる。一方、比較的眼幅の広い装着者であれば、
図9(B)に示すように、左右の視線透過部材56a,56bを夫々の外側寄りに配置して位置決めする。この状態でも、各視線透過部材56a,56bを内側寄りに配置した場合と略同じ視点位置Tで左右の視線S1,S2が交わることから、該視点位置Tにある対象物をはっきりと視認できる。
【0047】
実施例2の頭部装着型視認装置51は、視線透過部材56a,56bがルーペ部を備えずに、該視線透過部材56a,56bの前方に拡大鏡57,57が配設されたものであり、該視線透過部材56a,56bの光軸屈折部材36,37を透過する視線S1,S2が該拡大鏡57,57を介して視点位置Tに至る。この実施例2の構成は、前述した実施例1と同様に、左右の視線透過部材56a,56bを左右方向へ移動させても、光軸屈折部材36,37を透過した視線S1,S2の視点位置Tが略一定に保たれる。さらに、実施例2の構成は、左側の視線透過部材56aがカメラ部材28を備えており、該カメラ部材28の光軸が光軸屈折部材36により視線S1と一致する。これにより、実施例1と同様に装着者の目線で静止画や動画を撮像できる。そして、視認画像表示システム101は、カメラ部材28で撮像した画像データを画像表示装置104で表示することによって、実施例1と同様に、装着者以外の者が該装着者と同じ目線で対象物を見ることができる。このように実施例2の構成は、前述した実施例1と同様の作用効果を奏する。
【実施例3】
【0048】
実施例3の頭部装着型視認装置71は、
図10,11に示すように、左右のルーペ部27,27が取付支持部75,75を介して案内支持部材7に夫々支持されたものであり、ルーペ部27と取付支持部75とにより視線透過部材76が構成されている。実施例3の視線透過部材76は、光軸屈折部材とカメラ部材と備えず且つ筐体25に変えて取付支持部75を備えた構成であり、この点が前述した実施例1と異なる。実施例3にあっては、実施例1,2と同様の保護メガネ2、跳上連結部材5、および案内支持部材7を備えている。
【0049】
実施例3の視線透過部材76は、前述したようにルーペ部27と取付支持部75とにより構成されている。ルーペ部27は、実施例1と同じ構成のものである。取付支持部75は、左右方向へ延成された板状をなし、その内側寄り下面にルーペ部27が連結されている。そして、取付支持部75には、その上面から上方へ突出された第一被案内部41と第二被案内部42とを備える。これら第一被案内部41と第二被案内部42とは、実施例1の筐体に設けられたものと同じ構成であり、該第一被案内部41が、ルーペ部27の直上(取付支持部75の内側寄り部位)に配設され、該第二被案内部42が、取付支持部75の外側寄り部位に配設されている。こうした視線透過部材76は、実施例1と同様に、第一被案内部41を案内支持部材7の第一案内長孔部21に挿通させ、且つ第二被案内部42を該案内支持部材7の第二案内長孔部22に挿通させることにより、案内支持部材7に左右方向へ移動可能に支持される。これにより、視線透過部材76を左右方向へ移動させると、第一被案内部41が第一案内長孔部21に案内されることによってルーペ部27が左右横方向に移動すると共に、第二被案内部42が第二案内長孔部22に案内されることによって第一被案内部41を略中心として左右横方向へ傾動する。尚ここで、実施例3の取付支持部75の第一,第二被案内部41,42と案内支持部材7の第一、第二案内長孔部21,22にあっても、実施例1と同様に、視線透過部材76,76の左右方向への移動によって視点位置T(左右の視線S1,S2の交わる位置)が略変わらずに保たれるように設けられている。
【0050】
こうした実施例3の構成にあっても、前述した実施例1と同様に、左右の視線透過部材76,76を、装着者の眼とルーペ部27,27との間隔を略一定に保ちつつ、該装着者の眼幅に応じて左右方向位置を適宜変えることができる。例えば、比較的眼幅の狭い装着者であれば、
図11(A)に示すように、左右の視線透過部材76,76を夫々の内側寄りに配置して位置決めすることにより、当該装着者が、ルーペ部27を透過した視線S1,S2の交わる視点位置Tに焦点を合わせることができ、該視点位置Tにある対象物をはっきりと拡大視できる。一方、比較的眼幅の広い装着者であれば、
図11(B)に示すように、左右の視線透過部材76,76を夫々の外側寄りに配置して位置決めする。この状態でも、各視線透過部材76,76を内側寄りに配置した場合と略同じ視点位置Tで左右の視線S1,S2が交わることから、該視点位置Tにある対象物をはっきりと視認できる。
【0051】
実施例3の頭部装着型視認装置71は、ルーペ部27,27(視線透過部材76,76)を左右横方向へ移動させることができると共に、該ルーペ部27,27が、左右横方向への移動に連動して視点位置Tを保って左右横方向へ傾動する。かかる構成によれば、装着者が自らの眼幅に応じて左右のルーペ部27,27(視線透過部材76,76)を左右横方向へ位置変換しても、視点位置Tの対象物を同様に拡大視できることから、眼幅の異なる装着者であっても、対象物を容易かつ安定して視認できるという使い勝手に優れる。
【0052】
前述した実施例1~3にあって、保護メガネ2が、本発明にかかる頭部装着部に相当し、跳上連結部材5と案内支持部材7とが、本発明にかかる支持手段に相当する。実施例1,2にあって、案内支持部材7の第一,第二案内長孔部21,22と筐体25の第一,第二案内長孔部21,22とが、本発明の視点保持連動手段に相当する。実施例3にあって、案内支持部材7の第一,第二案内長孔部21,22と取付支持部75の第一,第二案内長孔部21,22とが、本発明の視点保持連動手段に相当する。実施例1~3の案内支持部材7が、本発明にかかる透過部材支持部材に相当する。実施例1~3の第一案内長孔部21が、本発明の第一案内路部に相当し、第二案内長孔部22が、本発明の第二案内路部に相当する。実施例1,3のルーペ部27が、本発明の拡大鏡に相当する。実施例1,2のカメラ部材が、本発明の撮像手段に相当し、画像データが、本発明の画像情報に相当する。
【0053】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、前述の実施例における各部の寸法形状は、適宜変更することができる。
実施例1~3は、案内支持部材を視線透過部材の上方に配設した構成であるが、これに限らず、視線透過部材の下方に案内支持部材を配設した構成、又は視線透過部材の上下両方に案内支持部材を配設した構成とすることができる。また、実施例1~3にあって、視線透過部材の下方に、該視線透過部材を左右方向へ移動可能に支持する支持部材を備えた構成とすることもできる。
実施例1~3は、長孔状の第一,第二案内長孔部に第一,第二被案内部を挿通させた構成であるが、これに限らず、例えば、レール状の第一,第二案内路部と該第一,第二案内路部に案内される車輪状の第一,第二被案内部とを備えた構成とすることもできる。又は、第一,第二案内長孔部と第一,第二被案内部とに代えて、ラックアンドピニオンを利用した機構(本発明の視点保持連動手段に相当)を設けた構成とすることもできる。
実施例1,2は、左側の視線透過部材にのみカメラ部材を備えた構成であるが、これに限らず、右側の視線透過部材にのみカメラ部材を備えた構成としても良いし、左右両方の視線透過部材にカメラ部材を夫々備えた構成とすることもできる。
実施例2は、左右の視線透過部材の前方に拡大鏡を夫々配設した構成であるが、これに限らず、該拡大鏡を備えない構成とすることもできる。この場合には、視点位置Tの対象物を拡大視できないものの、装着者の目線で静止画や動画を撮像することができる。
実施例1は、光軸屈折部材の前方にルーペ部を設けた構成であるが、これに限らず、ルーペ部を光軸屈折部材の後方に設けた構成とすることもできる。同様に、実施例2にあって、拡大鏡を光軸屈折部材の後方に設けることも可能である。
前述の実施例では、制御装置が電源や無線機能などを備えた装置としたが、これに限らず、スマホやタブレットなどの携帯端末であっても良い。こうした携帯端末であれば、カメラ部材で撮像したデータの送受信が容易に行い得る。
【符号の説明】
【0054】
1,51,71 頭部装着型視認装置
2 保護メガネ
5 跳上連結部材
6a,6b,56a,56b,76 光軸屈折部材
7 案内支持部材
21 第一案内長孔部
22 第二案内長孔部
27 ルーペ部
28 カメラ部材
36,37 光軸屈折部材
41 第一被案内部
42 第二被案内部
57 拡大鏡
101 視認画像表示システム
103 記憶装置
104 画像表示装置
S1,S2 視線
T 視点位置