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特許7458095表示システム及びプラネタリウムシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】表示システム及びプラネタリウムシステム
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240322BHJP
   G09B 27/00 20060101ALI20240322BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240322BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240322BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20240322BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240322BHJP
   G09G 3/32 20160101ALI20240322BHJP
   G09G 3/3208 20160101ALI20240322BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240322BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20240322BHJP
   G09G 5/37 20060101ALI20240322BHJP
   G09G 5/377 20060101ALI20240322BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G09B27/00 B
G09F9/00 313
G09F9/00 360D
G09F9/00 360K
G09F9/00 362
G09F9/30 308A
G09F9/30 365
G09F9/33
G09G3/20 612U
G09G3/20 621E
G09G3/20 642E
G09G3/20 680C
G09G3/20 680E
G09G3/32 A
G09G3/3208
G09G5/00 510B
G09G5/00 510V
G09G5/10 B
G09G5/37 320
G09G5/377 100
H04N5/74 C
H04N5/74 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022534119
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2021025055
(87)【国際公開番号】W WO2022004866
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2020115410
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508067839
【氏名又は名称】有限会社大平技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 貴之
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第210297933(CN,U)
【文献】特開平09-114003(JP,A)
【文献】特開2006-178340(JP,A)
【文献】特開2003-307781(JP,A)
【文献】特開2008-032925(JP,A)
【文献】特開2020-088739(JP,A)
【文献】特開2006-201205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B21/00-21/10
21/12-21/30
21/56-21/64
33/00-33/16
G09B23/00-29/14
G09F9/00-9/46
G09G3/00-3/08
3/12-3/16
3/19-3/26
3/30-3/34
3/38-5/42
H04N5/66-5/74
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の映像を表示するように構成された、光を放射する複数の画素を含む表示パネルを有する表示面と、
第2の映像を前記表示面に投影するように構成されたプロジェクタと
前記第1の映像を前記表示パネルに表示させ、前記第2の映像を前記プロジェクタにより前記表示面に投影して表示させ、全体として前記第1の映像と前記第2の映像とが重畳した映像を表示させる制御装置と
を備え、
前記表示パネルが表示可能である第1の輝度範囲は、前記プロジェクタが表示可能である第2の輝度範囲より高輝度な範囲を含み、
前記プロジェクタは、単色の映像を表示するように構成されている、
表示システム。
【請求項2】
第1の映像を表示するように構成された、光を放射する複数の画素を含む表示パネルを有する表示面と、
第2の映像を前記表示面に投影するように構成されたプロジェクタと
前記第1の映像を前記表示パネルに表示させ、前記第2の映像を前記プロジェクタにより前記表示面に投影して表示させ、全体として前記第1の映像と前記第2の映像とが重畳した映像を表示させる制御装置と
を備え、
前記表示パネルが表示可能である第1の輝度範囲は、前記プロジェクタが表示可能である第2の輝度範囲より高輝度な範囲を含み、
前記プロジェクタは、前記表示パネルよりも低解像度の映像を表示するように構成されている、
表示システム。
【請求項3】
前記プロジェクタは、前記表示パネルよりも低解像度の映像を表示するように構成されている、請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記表示パネルには、前記放射された光を透過し、前記プロジェクタから投影された光を反射する機能を有することでスクリーンとして機能するように構成された、半透過膜が設けられている、請求項1~3の何れかに記載の表示システム。
【請求項5】
前記表示パネルは、前記画素を構成する複数の自発光素子を有する、請求項1~4の何れかに記載の表示システム。
【請求項6】
前記自発光素子は、LED素子又は有機EL素子を含む、請求項に記載の表示システム。
【請求項7】
前記制御装置は、元映像データを取得し、当該元映像データに基づいて、前記第1の輝度範囲内で構成される前記第1の映像と、前記第2の輝度範囲内で構成される前記第2の映像とを作成する機能を有する、請求項1~の何れかに記載の表示システム。
【請求項8】
請求項1~の何れかに記載の表示システムを備え、
前記表示面は、ドームの内面に設けられている、
プラネタリウムシステム。
【請求項9】
ドームの内面に設けられ、第1の映像を表示するように構成された、光を放射する複数の画素を含む表示パネルを有する表示面と、
第2の映像を前記表示面に投影するように構成されたプロジェクタと
前記第1の映像を前記表示パネルに表示させ、前記第2の映像を前記プロジェクタにより前記表示面に投影して表示させ、全体として前記第1の映像と前記第2の映像とが重畳した映像を表示させる制御装置と
を備え、
前記表示パネルが表示可能である第1の輝度範囲は、前記プロジェクタが表示可能である第2の輝度範囲より高輝度な範囲を含み、
前記制御装置は、各星の座標と輝度値の情報を有している元映像データを取得し、当該元映像データに基づいて、所定の閾値よりも高い輝度を有する星を抽出して元映像データの輝度値を階調値に変換することで当該星について前記第1の輝度範囲内で構成される前記第1の映像を作成し、前記所定の閾値以下の輝度を有する星を抽出して元映像データの輝度値を階調値に変換することで当該星について前記第2の輝度範囲内で構成される前記第2の映像を作成する機能を有する、
プラネタリウムシステム
【請求項10】
星の像を前記表示面に投影するように構成された光学式プラネタリウムをさらに備える、請求項8又は9に記載のプラネタリウムシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システム及びプラネタリウムシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
投影機によって天体像をドーム状のスクリーンに投影するプラネタリウムが一般に知られている。これに対し、ドームの内面全面に発光ダイオード(Light Emitting Diode;LED)素子を配置したLEDパネルによって天体を表示するプラネタリウムが提案されている。例えば特許文献1には、このようなプラネタリウムについて開示されている。LEDパネルによれば、シャープな天体像が表示される。
【0003】
一方、実際の夜空には、月及び恒星のような明るい天体から天の川のような暗い天体まで存在する。天の川のような暗い天体の輝度は、明るい天体の輝度のわずか数百万分の一程度しかない。このため、夜空を忠実に再現しようとする場合、表示装置には極めて広いダイナミックレンジが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開昭63-285577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
広いダイナミックレンジを有する表示を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、表示システムは、第1の映像を表示するように構成された、光を放射する複数の画素を含む表示パネルを有する表示面と、第2の映像を前記表示面に投影するように構成されたプロジェクタであって、前記表示パネルが表示可能である第1の輝度範囲と当該プロジェクタが表示可能である第2の輝度範囲とは互いに他方に含まれない範囲を少なくともその一部に有している、プロジェクタと、前記第1の映像を前記表示パネルに表示させ、前記第2の映像を前記プロジェクタにより前記表示面に投影して表示させ、全体として前記第1の映像と前記第2の映像とが重畳した映像を表示させる制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、広いダイナミックレンジを有する表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係るプラネタリウムシステムの構成例の概略を示す模式図である。
図2図2は、プラネタリウムシステムによる映像の表示を説明するための模式図である。
図3A図3Aは、比較例に係る映像の表示について説明するための図である。
図3B図3Bは、比較例に係る映像の表示について説明するための図である。
図4図4は、LEDパネルユニットにおけるLED素子の配列パターンの一例を示す図である。
図5図5は、LEDパネルユニットの断面を模式的に示す図である。
図6図6は、LEDパネルユニットの他の例を模式的に示す図である。
図7図7は、制御装置の構成例の概略を示す機能ブロック図である。
図8図8は、変形例に係るプラネタリウムシステムの構成例の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、LEDパネルを用いつつ広いダイナミックレンジを実現できる表示システムに関する。特に、本実施形態は、半球状のドームの内面に星空や景色などを表示するプラネタリウムシステムに、当該表示システムを適用した例に関する。本実施形態のプラネタリウムシステムは、天の川のような暗いものから月や夜景など明るいものまで適切に表現できる、広いダイナミックレンジを有する表示システムを有している。
【0010】
[プラネタリウムシステムの構成]
図1は、本実施形態に係るプラネタリウムシステム1の構成例の概略を示す模式図である。プラネタリウムシステム1は、その内面に星空などの映像が表示されるドーム2を備える。プラネタリウムシステム1が表示する映像は、星に関する映像に限らず、景色、人物、建築物、乗物、空想物など、様々な映像を含む。プラネタリウムシステム1は、LEDパネル3とプロジェクタ5と制御装置6とを含む表示システム10を用いて映像を表示する。すなわち、ドーム2の内面全面には、3色の発光ダイオード(Light Emitting Diode;LED)素子が多数並べられたLEDパネル3が設けられている。LEDパネル3は、LED駆動回路4によって駆動される。LEDパネル3の表面の表示面30には、LEDパネル3によって映像が表示される。LEDパネル3は、表示面30における明るい映像の表示を担う。
【0011】
ドーム2内には、ドーム2の内面に設けられたLEDパネル3の表示面30に映像を投影するプロジェクタ5が設けられている。プロジェクタ5は、暗い映像の表示を担う。このように、LEDパネル3が表示可能である第1の輝度範囲とプロジェクタ5が表示可能である第2の輝度範囲とは互いに他方に含まれない範囲を少なくともその一部に有している。より具体的には、LEDパネル3が表示可能である第1の輝度範囲は、プロジェクタ5が表示可能である第2の輝度範囲よりも高輝度な範囲を含んでいる。プラネタリウムシステム1は、LEDパネル3とプロジェクタ5とを併用することによって、暗い映像から明るい映像まで、多階調の表示を実現する。
【0012】
プラネタリウムシステム1は、制御装置6と映像提供装置8とを備える。映像提供装置8は、ドーム2の内面に表示する映像を表す元映像データを出力する。映像提供装置8は、プラネタリウムに関する元映像データを出力する専用の装置であってもよいし、例えばパーソナルコンピュータ(PC)のような情報端末であってもよいし、その他の映像再生装置であってもよい。また、映像提供装置8は、遠隔地に設けられたサーバなどであってもよく、通信ネットワークを介して制御装置6に元映像データが提供されてもよい。制御装置6は、映像提供装置8から入力された元映像データに基づいて、LED駆動回路4の動作とプロジェクタ5の動作とを制御し、これらにドーム2の内面に映像を表示させる。
【0013】
図2は、プラネタリウムシステム1による映像の表示を説明するための模式図である。図2(a)は、映像提供装置8から出力される元映像データが表す星空の映像を模式的に示す図である。この図において、明るい星は大きな円で、暗い星は小さい円で示されている。この映像(元映像91と称することにする)には、明るい星々と暗い星々とが含まれている。例えば、天の川は暗い星々が多く集まっている領域である。プラネタリウムシステム1では、制御装置6が、図2(b)に模式的に示すように、明るい星々を含む映像(高輝度映像92と称することにする)と、図2(c)に模式的に示すように、暗い星々を含む映像(低輝度映像93と称することにする)とに分割する。制御装置6は、明るい星々を含む高輝度映像92(図2(b))をLEDパネル3に表示させ、暗い星々を含む低輝度映像93(図2(c))をプロジェクタ5により表示面30に投影して表示させる。その結果、ドーム2の内面の表示面30には、図2(d)に模式的に示すように、高輝度映像92と低輝度映像93とが重畳された映像(合成映像94と称することにする)が表示されることになる。合成映像94は、元映像91を精度よく再現する。
【0014】
仮に、本実施形態のプラネタリウムシステム1と異なり、ダイナミックレンジが狭い表示システムを用いて、図2(a)のような元映像91を表示しようとすると、図3Aに模式的に示すように、暗い星々が表示されなかったり、図3Bに模式的に示すように、暗い星々までが明るく表示されたりして、図2(d)に模式的に示す合成映像94のように、精度よく元映像91が再現されない。
【0015】
[LEDパネルの構成]
LEDパネル3は、複数のLEDパネルユニット31を含む。複数のLEDパネルユニット31が継ぎ合わされてドーム2の内面の全面を覆うLEDパネル3が形成されている。LEDパネル3における複数のLEDパネルユニット31への分割の態様やLEDパネルユニット31の配置は、任意であり、種々の態様の何れが採られてもよい。各々のLEDパネルユニット31の表面は、平面でもよいが、ドーム2の曲率に合わせて湾曲していることが好ましい。
【0016】
図4は、LEDパネルユニット31におけるLED素子の配列パターンの一例を示す。図4に示すように、LEDパネルユニット31には、複数のLED画素ユニット32が配列されている。複数のLED画素ユニット32は、横線を付した円で模式的に図示する赤色LED素子33と、縦線を付した円で模式的に図示する緑色LED素子34と、斜線を付した円で模式的に図示する青色LED素子35とを含む。赤色LED素子33、緑色LED素子34及び青色LED素子35の配置は、図4に示すものに限らず、どのような配置であってもよい。
【0017】
各々の赤色LED素子33、緑色LED素子34及び青色LED素子35の発光の有無及び発光輝度は、LED駆動回路4によるパルス幅変調(pulse width modulation;PWM)方式の駆動によって制御される。制御装置6の制御下で、LED駆動回路4が各LED素子の輝度を調整することで、LEDパネル3にはフルカラーの高輝度映像92が表示される。
【0018】
LEDパネル3の表示面30には、プロジェクタ5により低輝度映像93が投影される。低輝度映像93の表示を最適化するために、LEDパネル3の表面の反射状態は制御されていることが好ましい。図5は、LEDパネルユニット31の断面を模式的に示す図である。この図に示すように、LEDパネルユニット31では、基板36上に、赤色LED素子33、緑色LED素子34、及び青色LED素子35が形成されており、これらを覆うように、透光板37が設けられている。透光板37の上には、半透過膜38が設けられていることが好ましい。半透過膜38は、赤色LED素子33、緑色LED素子34、及び青色LED素子35から放射された光を透過させるとともに、プロジェクタ5から投影された光を反射する機能を有することでスクリーンとして機能するように構成されている。半透過膜38によって、観客からは、LEDパネル3による表示とプロジェクタ5による表示とが適切に見える。
【0019】
あるいは、透光板37の上に半透過膜38を設けることに代えて、図6に模式的に示すように、LED素子が設けられていない部分に、プロジェクタ5による投影光を反射する機能を有することでスクリーンとして機能するように構成されている反射面39が設けられてもよい。反射面39がプロジェクタ5による投影光を反射することで、観客からは、LEDパネル3による表示とプロジェクタ5による表示とが適切に見える。
【0020】
[プロジェクタの構成]
プロジェクタ5は、ドーム2の内面全面に設けられたLEDパネル3の表示面30に映像を投影できるように構成されている。このため、プロジェクタ5は、1台のプロジェクタユニット51で構成されていてもよいが、複数台のプロジェクタユニット51で構成されていてもよい。本実施形態のプラネタリウムシステム1では、広い投影範囲に容易に映像を投影するために、複数台のプロジェクタユニット51が用いられている。プロジェクタユニット51の数は、いくつであってもよい。複数台のプロジェクタユニット51は、ドーム2の中央部に集めて配置されてもよいが、ドーム2の円周部に分散して配置されるなど、他の態様で配置されてもよい。
【0021】
各々のプロジェクタユニット51は、制御装置6から送られてくる映像信号に従って、ドーム2の内面の互いに異なる領域に当該映像信号が表す映像を投影する。隣り合う領域は、一部で重なり合っていてもよい。複数のプロジェクタユニット51によって、ドーム2の内面全体に映像が投影される。制御装置6は、各々のプロジェクタユニット51に映像信号を伝達し、各々のプロジェクタユニット51に投影を行わせることで、ドーム2の内面に全体として一つの低輝度映像93を表示させる。
【0022】
プロジェクタ5は、フルカラー表示を行えるものであってもよいし、極めて低輝度の映像の表示のみを行う場合には、例えば白色などの単色の表示のみを行えるものであってもよい。これは、ヒトの視覚は、低輝度の光の感知において、色をほとんど識別できないことによる。
【0023】
LEDパネル3は、プロジェクタ5による表示の輝度範囲よりも高い輝度範囲の表示を行えるように調整されている。プロジェクタ5は、LEDパネル3による表示の輝度範囲よりも低い輝度範囲の表示を行えるように調整されている。プラネタリウムシステム1は、LEDパネル3による表示とプロジェクタ5による表示とによって、広い輝度範囲の映像を表示することができる。
【0024】
[制御装置の構成]
図7は、制御装置6の構成例の概略を示す機能ブロック図である。制御装置6は、映像データ取得部61と、映像分割部62と、高輝度映像処理部63と、駆動信号作成部64と、駆動信号出力部65と、低輝度映像処理部66と、映像信号出力部67とを備える。
【0025】
映像データ取得部61は、映像提供装置8から出力された、ドーム2の内面に表示する元映像91を表す元映像データを取得する。映像データ取得部61は、取得した元映像データを映像分割部62へと伝達する。元映像データは、どのような形式のものであってもよい。例えば、ドーム2の各位置に対応する画素の赤緑青の各色の輝度値を示すデータであってもよい。また、各星のドーム2における座標と各星の色及び輝度を示すデータであってもよい。また、各星の基準となる座標と各星の色及び輝度を示すデータと、表示すべき座標と基準座標との関係を示すデータとを含むデータであってもよい。また、これらの組み合わせのデータであってもよい。
【0026】
映像分割部62は、取得した元映像91に関する元映像データに基づいて、LEDパネル3を用いて表示する高輝度な映像(高輝度映像92)のデータと、プロジェクタ5を用いて表示する低輝度な映像(低輝度映像93)のデータとを生成する。
【0027】
一例として、元映像データにおいて画素ごとの輝度値が16ビット階調で与えられており、プロジェクタ5とLEDパネル3との輝度比が1:256である場合について、最も簡素化した例を示す。
【0028】
16ビットで与えられている元映像91の階調値をINとする。8ビットで与えられるLEDパネル3を用いて表示する高輝度映像92の階調値をOUT_Hとする。8ビットで与えられるプロジェクタ5を用いて表示する低輝度映像93の階調値をOUT_Lとする。
【0029】
OUT_Lは、以下のように決定される。INが255以下である場合、OUT_LをINの下位8ビットとする。INが255以上である場合、OUT_L=255とする。すなわち、OUT_Lは、255でリミットされる。
【0030】
一方、OUT_Hは、以下のように決定される。
OUT_H=(IN-OUT_L)/256
【0031】
実際には、入力する映像データの階調値と、出力であるLEDパネル3又はプロジェクタ5を用いて表示される物理的な輝度との関係は、比例関係(リニアの関係)ではなく、例えば2.2乗関数といった所定の関係(ガンマカーブ)を有する。このため、実際には、この関係を補正することが行われる。
【0032】
また、例えば、惑星のような明るい天体から天の川のような暗い天体までをリアルに表示しようとすると、16ビットでは足りず、さらに大きいビット数が必要であることにも留意する必要がある。
【0033】
上述の例は、高輝度な部分をプロジェクタ5とLEDパネル3との両方を使って表現する例であるが、輝度に応じてプロジェクタ5とLEDパネル3との一方を使って表現してもよい。この場合、例えば、元映像データが画素ごとの輝度値の情報を有しているとき、元映像91のうち所定の閾値よりも高い輝度を有する画素を抽出して元映像91の輝度値を階調値に変換することで高輝度映像92のデータを生成し、元映像91のうち所定の閾値以下の輝度を有する画素を抽出して元映像91の輝度値を階調値に変換することで低輝度映像93のデータを生成することができる。また、元映像データが各星の座標と輝度値の情報を有しているとき、所定の閾値よりも高い輝度を有する星を抽出して元映像91の輝度値を階調値に変換することで高輝度映像92のデータを生成し、所定の閾値以下の輝度を有する星を抽出して元映像91の輝度値を階調値に変換することで低輝度映像93のデータを生成することができる。
【0034】
LEDパネル3を用いて表示する第1の輝度範囲とプロジェクタ5を用いて表示する第2の輝度範囲とは、重なり合っていなくてもよいし、重なり合っていてもよい。LEDパネル3を用いて表示する第1の輝度範囲とプロジェクタ5を用いて表示する第2の輝度範囲とが重なり合っている場合、映像分割部62は、LEDパネル3でもプロジェクタ5でも表示できる場合には、表示内容に応じて当該表示内容を高輝度映像92に含めるか低輝度映像93に含めるか両方に含めるかを決定してもよい。
【0035】
映像分割部62は、高輝度映像92のデータを高輝度映像処理部63に伝達し、低輝度映像93のデータを低輝度映像処理部66に伝達する。
【0036】
高輝度映像処理部63は、高輝度映像92に関する各種処理を行う。例えば、高輝度映像92を複数のLEDパネルユニット31を用いて表示するために、高輝度映像処理部63は、高輝度映像92を各々のLEDパネルユニット31に表示させる映像に分割する。また、高輝度映像処理部63は、表示が適切に行われるように、各々の映像に対して、必要な画像処理を行う。高輝度映像処理部63は、処理後の映像のデータを駆動信号作成部64に伝達する。
【0037】
駆動信号作成部64は、高輝度映像処理部63から取得した映像のデータに基づいて、各々のLEDパネルユニット31に当該映像を表示させるためのLED素子を駆動するための駆動信号を作成する。駆動信号作成部64は、作成した駆動信号を、駆動信号出力部65を介して、LED駆動回路4へと出力する。
【0038】
低輝度映像処理部66は、低輝度映像93に関する各種処理を行う。例えば、低輝度映像93を複数のプロジェクタユニット51を用いて表示するために、低輝度映像処理部66は、低輝度映像93を各々のプロジェクタユニット51に表示させる映像に分割する。また、複数のプロジェクタユニット51が映像を投影する領域に重なりがある場合、当該重なる領域の映像が自然に表示されるように分割した映像に対する処理を施す。その他、低輝度映像処理部66は、表示が適切に行われるように、各々の映像に対して、必要な画像処理を行う。低輝度映像処理部66は、処理後の映像信号を、映像信号出力部67を介して、各々のプロジェクタユニット51へと出力する。
【0039】
制御装置6は、Central Processing Unit(CPU)、Random Access Memory(RAM)、Read Only Memory(ROM)、ストレージなど、集積回路やその他の装置によって構成されていてよく、CPUで動作するソフトウェアによって、上述の処理の一部又は全部が行われてもよい。また、制御装置6は、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、Field Programmable Gate Array(FPGA)、Graphics Processing Unit(GPU)等の集積回路を有していてもよく、ハードウェアによって、上述の処理の一部又は全部が行われてもよい。
【0040】
[プラネタリウムシステムの動作]
映像提供装置8から出力された元映像データは、上述のとおり制御装置6で処理される。制御装置6の駆動信号出力部65から出力された駆動信号を受信したLED駆動回路4は、この駆動信号に基づいて、各々のLEDパネルユニット31のLED素子を、すなわち、LEDパネル3を駆動する。その結果、LEDパネル3は、その表示面30に、高輝度映像92を表示する。また、制御装置6の映像信号出力部67から出力された映像信号を受信した各々のプロジェクタユニット51は、受信した映像信号に基づいて、ドーム2の内面の表示面30に映像を投影する。このようにして、プロジェクタ5は、低輝度映像93を表示面30に表示する。
【0041】
LEDパネル3から放射された光は、観客の目に届き、プロジェクタ5から投影された光は、LEDパネル3の表示面30で反射して観客の目に届く。すなわち、LEDパネル3によって表示面30に表示された高輝度映像92と、プロジェクタ5によって投影されて表示面30に表示された低輝度映像93とが、観客の目に届く。観客は、高輝度映像92と低輝度映像93とが合成された合成映像94を知覚する。このようにして、観客は、元映像91が再現よく表示された合成映像94を見ることができる。
【0042】
LED素子による明るさは、PWM信号のパルス幅に比例する。このため、LEDをPWM制御により調光すると、特に低輝度のときに明るさが段階的に変化するように見えてしまう。例えば、12ビット分解能のPWM信号では、最小の明るさのときのパルス幅は、1/4096となる。そして、これより一段明るくしたときのパルス幅は2/4096となり、明るさが2倍になる。その結果、低光量の領域では、明るさが段階的に変化するように見えてしまう。プロジェクタ5の場合も同様である。本実施形態の表示システム10を用いたプラネタリウムシステム1では、LEDパネル3は高輝度領域の映像を表示し、プロジェクタ5は低輝度領域の映像を表示する。このようにして、LEDパネル3が表現する階調の範囲とプロジェクタ5が表現する階調の範囲とが異なることで、互いの階調が補われ、プラネタリウムシステム1は、低輝度領域から高輝度領域まで滑らかな階調表示が可能となっている。
【0043】
本実施形態に係る表示システム10を用いたプラネタリウムシステム1によれば、高階調な表示が行われる。例えば、LEDパネル3によるダイナミックレンジが12ビット相当であり、プロジェクタ5によるダイナミックレンジが8ビット相当である場合、LEDパネル3の低輝度側2ビット相当でプロジェクタ5の階調と重複するとしても、プラネタリウムシステム1は、18ビット相当のダイナミックレンジで映像の表示を行うことができる。
【0044】
本実施形態に係る表示システム10を用いたプラネタリウムシステム1では、プロジェクタ5は、低輝度のプロジェクタでもよい。また、ヒトの視覚の空間分解能は、極低輝度においては低下するので、プロジェクタ5の解像度はある程度低くても許容される。したがって、プロジェクタ5に関しては、コストが比較的抑制される。
【0045】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0046】
例えば、LEDパネル3が低輝度映像93を表示し、プロジェクタ5が高輝度映像92を表示してもよい。LEDパネル3が表示する第1の映像の輝度範囲と、プロジェクタ5が表示する第2の映像の輝度範囲とが、互いに異なっていることで、表示システム10及びそれを用いたプラネタリウムシステム1は広いダイナミックレンジで映像の表示を行うことができる。
【0047】
上述のプラネタリウムシステム1に係る実施形態は、表示を担う輝度範囲が互いに異なるLEDパネル3とプロジェクタ5とを組み合わせた表示システム10をプラネタリウムに適用した例である。表示を担う輝度範囲が互いに異なるLEDパネルとプロジェクタとを組み合わせた表示システム10は、プラネタリウムへの使用に限定されず、例えば、他の表示を行うためのシステムにも適用され得る。すなわち、表示面がドーム2の内面に設けられている必要はなく、表示面は平面などであってもよい。また、表示される映像は、星空などに限定されず、どのような映像であってもよい。例えば、表示面が平面状のものとされ、そこに広告等が表示される、大型のサイネージディスプレイなどに表示システム10が用いられてもよい。
【0048】
また、上述の実施形態では、LED素子を用いたLEDパネルを例に挙げて説明したが、これに限らない。LED素子ではなく、例えば有機EL(organic electro-luminescence)素子(OLED素子)といった他の自発光素子を用いた表示パネルが用いられてもよい。さらに、液晶表示パネルなど、光を放射する複数の画素を含む表示パネルであれば、他の種類の表示パネルが用いられてもよい。
【0049】
また、プラネタリウムシステム1では、図8にその構成例の概略を示すように、LEDパネル3及びプロジェクタ5に加えて、光学式プラネタリウム7が併用されてもよい。図8に示す例では、ドーム2の中央に光学式プラネタリウム7が配置され、ドーム2の周縁部にプロジェクタ5のプロジェクタユニット51が分散して配置されている。
【0050】
このプラネタリウムシステム1では、これに限らないが、例えば、次のようにして映像が表示される。すなわち、明るい星の像は、光学式プラネタリウム7を用いてLEDパネル3の表示面30に投影される。中程度の明るさの星、景色、星座を示す絵その他の映像などは、LEDパネル3を用いて表示される。暗い星の像や、景色、星座を示す絵その他の映像は、プロジェクタ5のプロジェクタユニット51を用いて、LEDパネル3の表示面30に投影される。このような構成によっても、プラネタリウムシステム1は上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 プラネタリウムシステム
2 ドーム
3 LEDパネル
10 表示システム
30 表示面
31 LEDパネルユニット
32 LED画素ユニット
33 赤色LED素子
34 緑色LED素子
35 青色LED素子
36 基板
37 透光板
38 半透過膜
39 反射面
4 LED駆動回路
5 プロジェクタ
51 プロジェクタユニット
6 制御装置
61 映像データ取得部
62 映像分割部
63 高輝度映像処理部
64 駆動信号作成部
65 駆動信号出力部
66 低輝度映像処理部
67 映像信号出力部
7 光学式プラネタリウム
8 映像提供装置
91 元映像
92 高輝度映像
93 低輝度映像
94 合成映像

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8