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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】化粧料塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20240322BHJP
   A46B 3/18 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A45D34/04 510A
A45D34/04 515C
A45D34/04 515Z
A46B3/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022548314
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2020034274
(87)【国際公開番号】W WO2022054196
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000146825
【氏名又は名称】株式会社新和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】田中 章浩
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-050183(JP,A)
【文献】特開2004-329946(JP,A)
【文献】特開2012-055492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
A46B 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口し前後に延びる略半円筒型塗布具ボディ下面に下方に延出する薄板状の櫛歯が該ボディの長手方向等ピッチに形成された櫛部材と、直線状の芯線軸から放射状に延出するブラシ毛が該芯線軸を柱状に取り囲むブラシ毛体を形成するブラシ部材と、を一体化した塗布部を備えた化粧用塗布具であって、
前記塗布部は、
前記櫛部材の塗布具ボディの前後端部それぞれに該ボディと同軸状に設けた軸受けに前記ブラシ部材の芯線軸前後端部がそれぞれ支持されて、前記塗布具ボディに収容された前記ブラシ毛体の略上半分の領域が該塗布具ボディの上方に露出するように構成された化粧用塗布具において、
前記ブラシ部材は、
前記芯線軸の後端部が前記塗布具ボディの後方に延出し上方に開口する横断面U字型の前記後端側の軸受けに固定されて、前記櫛部材に対し片持ち支持されるとともに、
前記芯線軸の前端部が前記塗布具ボディの前方上方に立壁状に延出し下方に開口する横断面U字型の前記前端側の軸受けに係合し、前記塗布具ボディに収容された前記ブラシ毛体の略下半分の領域における各ブラシ毛の先端が該塗布具ボディの内周面に面一に当接することを特徴とする化粧料塗布具。
【請求項2】
前記塗布具ボディに収容された前記ブラシ毛体の前端部および後端部が前記前端側の軸受けの該塗布具ボディ内への開口周縁部および前記後端側の軸受けの該塗布具ボディ内への開口周縁部にそれぞれ当接することで、前記櫛部材に対し前記ブラシ部材が軸方向に位置決めされていることを特徴とする請求項1に記載の化粧料塗布具。
【請求項3】
前記塗布部の横断面において、前記ブラシ部材の芯線軸は、前記塗布具ボディの左右の側縁部と略面一に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の化粧用塗布具。
【請求項4】
前記ブラシ部材の芯線軸の後端部は、前記塗布具ボディ後端側の軸受けとともに中空のシャフト先端部に加締め固定されたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の化粧用塗布具。
【請求項5】
前記前端側の軸受けは、最前方位置の櫛歯よりも前方に離間する位置に設けられた正面視門型の球面状尖頭部に形成されるとともに、
前記最前方位置の櫛歯と前記球面状尖頭部との間に、前記櫛歯よりも幅狭で延出長の短い櫛歯状突状部が設けられたことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の化粧料塗布具。
【請求項6】
前記櫛歯状突状部の前面は、前記球面状尖頭部の前面に倣う形状に形成されたことを特徴とする請求項5に記載の化粧料塗布具。
【請求項7】
前記櫛歯は、前記塗布具ボディ内側の幅よりも幅狭の正面視鋭角状の嘴型に形成されるとともに、
前記塗布具ボディの略下半分には、前記櫛歯間の隙間に等しい幅で該ボディを横切る横断面円弧状のスリットが形成されて、前記櫛歯間の隙間が該スリットを介して前記塗布具ボディの内側に連通することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の化粧料塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスカラ液などの液体化粧料の塗布に最適な化粧料塗布具に係り、特に、櫛部材とブラシ部材を一体化した塗布部を備えた化粧料塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、等ピッチで連続する櫛歯14を備えた櫛部材2と、芯材21を円柱状に取り囲むブラシ毛体22を備えたブラシ部材3とを一体化した塗布部を備えた化粧料塗布具が記載されている。
【0003】
即ち、前後に延びる塗布部の下面側には櫛歯14が設けられ、塗布部の上面側にはブラシ毛体22が露出するように設けられており、塗布部の櫛歯14でまつ毛をすきながら、櫛歯14間の隙間に保持されているマスカラ液をまつ毛に付着させることができ、次いで、塗布部上面側のブラシ毛体22(櫛歯14と反対側に露出するブラシ毛体22)でまつ毛をすくことで、マスカラ液が付着したまつ毛を整えることができる。
【0004】
詳しくは、櫛部材2は、前後に平行に延びる左右一対の梁12A,12Bの下方に略U字型の薄板状の櫛歯14が前後方向等ピッチに形成されるとともに、該一対の梁12A,12Bの前後端部に立壁状の手元側接合部11および先端側接合部13が一体に形成されることで、上方に開口する前後方向に長い略半円筒形状の塗布具ボディを備えている。即ち、櫛部材2の塗布具ボディの下面側に櫛歯14が形成されている。
【0005】
そして、ブラシ部材3の芯材21前後端部が、塗布具ボディ前後端部の手元側接合部11および先端側接合部13に固着される(段落0015,図1参照)ことで、櫛部材2とブラシ部材3が同軸状に一体化されて、塗布具ボディ内に収容されているブラシ部材3のブラシ毛体22の上略半分の領域が該塗布具ボディから露出する塗布部を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-117368号公報(段落0008~0017、図1,2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
塗布部は、櫛部材2の塗布具ボディを構成する立壁状の手元側接合部11および先端側接合部13にそれぞれ同軸状に設けた取付孔90Bに、ブラシ部材3の芯材21の前後端部を取り付けて固着する(段落0015,0087,図1,図19参照)ことで、櫛部材2とブラシ部材3とが固定一体化されている。そして、塗布部は、塗布具ボディを構成する立壁状の手元側接合部11から後方に延出する連結部10の中心孔10Aを介して、キャップ部材のシャフト(図示せず)に嵌め込まれて固定されている(段落0017,図1(c)参照)。
【0008】
このため、第1には、接近離反方向(上下方向)に動作する上下一対の金型で櫛部材2を射出成形しようとすると、櫛部材2の塗布具ボディを構成する立壁状の手元側接合部11および先端側接合部13にそれぞれ設ける前後方向に延びる取付孔90Bがアンダーカットを構成するので、上下一対の金型に加えて、上下方向に対し直交する前後方向に移動する分割金型が必要となるなど、櫛部材2を射出成形する金型の構造が複雑になり、それだけ櫛部材の製造にコストがかかる分、化粧用塗布具の価格に影響する。
【0009】
第2には、ブラシ部材3の全長が塗布具ボディ内の前後長さ(手元側接合部11と先端側接合部13間の距離)より大きいので、ブラシ部材3の芯材21前後端部を各取付孔90Bに取り付ける(挿入する)には、ブラシ部材3(の芯材21)を湾曲(弾性変形)させた形態で取り付ける(挿入する)必要があり、取り付け(組付け)固定作業が非常に面倒である。特に、ブラシ部材3をその弾性限界を超えて湾曲させると、ブラシ部材3の芯材21に塑性変形が残り、塗布具ボディから露出するブラシ毛体22の外形が軸方向に揃わない不良品となる。
【0010】
そこで、発明者は、前記した第1、第2の課題を改善する構造として、櫛部材の上方に開口し前後に延びる略半円筒型塗布具ボディで、その下方に延出する櫛歯が長手方向等ピッチに形成された塗布具ボディの前後端部それぞれに該ボディと同軸状に設けた軸受けに、ブラシ部材の芯線軸前後端部がそれぞれ支持されることで、前記塗布具ボディに収容されたブラシ毛体の略上半分の領域が該塗布具ボディの上方に露出するように構成した塗布部において、
塗布具ボディ後端側の軸受けを上方に開口する横断面U字型、塗布具ボディ前端側の軸受けを下方に開口する横断面U字型にそれぞれ構成し、塗布具ボディに収容されたブラシ毛体が塗布具ボディ内周面に面一に当接する形態で、ブラシ部材の芯線軸後端部を塗布具ボディ後端側の軸受けに固定して、ブラシ部材を櫛部材に対し片持ち支持する構造を考えた。
【0011】
そして、試作品を作り、その効果を検証したところ、有効であることが確認されたことを受けて、この度の出願に至ったものである。
【0012】
本発明は、前記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、塗布部を構成する櫛部材を成形する金型構造が簡潔で、ブラシ部材の櫛部材への組付け固定が容易な塗布部を備えた化粧料塗布具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記第1,第2の課題を達成するために、本発明のある態様の化粧料塗布具は、
上方に開口し前後に延びる略半円筒型塗布具ボディ下面に下方に延出する薄板状の櫛歯が該ボディの長手方向等ピッチに形成された櫛部材と、直線状の芯線軸から放射状に延出するブラシ毛が該芯線軸を柱状に取り囲むブラシ毛体を形成するブラシ部材と、を一体化した塗布部を備えた化粧用塗布具であって、
前記塗布部は、
前記櫛部材の塗布具ボディの前後端部それぞれに該ボディと同軸状に設けた軸受けに前記ブラシ部材の芯線軸前後端部がそれぞれ支持されて、前記塗布具ボディに収容された前記ブラシ毛体の略上半分の領域が該塗布具ボディの上方に露出するように構成された化粧用塗布具において、
前記ブラシ部材は、
前記芯線軸の後端部が前記塗布具ボディの後方に延出し上方に開口する横断面U字型の前記後端側の軸受けに固定されて、前記櫛部材に対し片持ち支持されるとともに、
前記芯線軸の前端部が前記塗布具ボディの前方上方に立壁状に延出し下方に開口する横断面U字型の前記前端側の軸受けに係合し、前記塗布具ボディに収容された前記ブラシ毛体の略下半分の領域における各ブラシ毛の先端が該塗布具ボディの内周面に面一に当接することを特徴とする。
【0014】
この態様によれば、射出成形品である櫛部材には、上方に開口し前後に延びる略半円筒型塗布具ボディに櫛歯や軸受けが一体に形成されているが、塗布具ボディ下面に下方に延出する櫛歯を該ボディの長手方向等ピッチに形成し、後端側の軸受けを、塗布具ボディの後方に延出し上方に開口する横断面U字型に構成し、一方、前端側の軸受けを、塗布具ボディの前方上方に立壁状に延出し下方に開口する横断面U字型に構成したので、接近離反方向(上下方向)に動作する上下一対の金型によって櫛部材成形用のキャビティを形成する際、櫛歯や軸受けに対応するキャビティがアンダーカットを構成しない。このため、分割金型などの複雑な金型構造を採用することなく、上下方向に接近離反動作する簡潔な一対の金型によって、下面に櫛歯を形成した塗布具ボディの前後端部にそれぞれ軸受けを一体に形成した櫛部材を射出成形できる。
【0015】
また、ブラシ部材を櫛部材に組付けるには、櫛部材の塗布具ボディの前方上方に立壁状に延出し下方に開口する前端側の軸受けに、ブラシ部材の先端部(芯線軸前端部)を塗布具ボディ内後方から斜め前方下向きに挿入し、ブラシ部材の先端部(芯線軸前端部)が係合する前端側の軸受けを支点として、ブラシ部材後端側を下向きに回動(傾動)すれば、ブラシ毛体を塗布具ボディに、芯線軸後端部を上方に開口する後端側の軸受けに、それぞれ係合させることができる。
【0016】
そして、塗布具ボディに係合したブラシ毛体は、その略下半分の領域における各ブラシ毛の先端が該塗布具ボディの内周面に面一に当接して、ブラシ部材の先端部(芯線軸前端部)および後端部(芯線軸後端部)が櫛部材(塗布具ボディ)前端側の軸受および後端側の軸受にそれぞれ係合した形態に位置決め保持されるので、即ち、塗布部を構成するブラシ部材と櫛部材が同軸状に位置決め保持されるので、ブラシ部材の芯線軸後端部を櫛部材の後端側の軸受けに固定して、ブラシ部材を櫛部材に対し片持ち支持構造とする作業をスムーズに遂行できる。
【0017】
また、本態様に係る化粧料塗布具は、
前記塗布具ボディに収容された前記ブラシ毛体の前端部および後端部が前記前端側の軸受けの該塗布具ボディ内への開口周縁部および前記後端側の軸受けの該塗布具ボディ内への開口周縁部にそれぞれ当接することで、前記櫛部材に対し前記ブラシ部材が軸方向に位置決めされていてもよい。
【0018】
この態様によれば、塗布部として組付け一体化された櫛部材とブラシ部材は、同軸状に位置決めされた形態に保持されるとともに、軸方向にも位置決めされた形態に保持されるので、ブラシ部材の芯線軸後端部が櫛部材の後端側の軸受けに固定された片持ち支持構造では、塗布部の塗布具ボディから露出するブラシ毛体全体の形状が製品毎にばらつくことなく一定となる。
【0019】
これにより、塗布具ボディから露出するブラシ毛体全体の形状が、製品毎にばらつくことなく一定である塗布部を備えた化粧料塗布具を提供できる。
【0020】
また、本態様に係る化粧料塗布具は、
前記塗布部の横断面において、前記ブラシ部材の芯線軸は、前記塗布具ボディの左右の側縁部と略面一に配置されていてもよい。
【0021】
一般に、化粧料容器の開口部内側には、化粧料容器内において塗布部に過剰に付着した液体化粧料(例えば、マスカラ液)を扱くためのワイパーが設けられている。そして、化粧料容器内で液体化粧料が付着した塗布部は、化粧料容器から抜き出す際にワイパーで扱かれることで、櫛部材では櫛歯間の隙間に保持された以外の不要な液体化粧料が扱き落され、ブラシ部材では塗布具ボディから露出するブラシ毛に保持された液体化粧料の一部が掻き落とされて適量に調整される。
【0022】
なお、ワイパーの内径(扱き径)の大きさと、液体化粧料の扱き量とは、略反比例するので、ワイパーによる液体化粧料の扱き量は、ワイパーの内径(扱き径)で調整される。
例えば、塗布部の櫛歯だけでなく、塗布部のブラシ毛によっても、液体化粧料を塗布対象毛に塗布したい場合は、塗布部のブラシ毛体にもある程度の量の液体化粧料を保持させることが望ましいため、内径(扱き径)の比較的大きいワイパーが採用される。一方、塗布部の櫛歯によって液体化粧料を塗布した塗布対象毛をもっぱら整えるために、塗布部のブラシ毛を使用したい場合は、塗布部のブラシ毛には少量の液体化粧料を保持させることが望ましいため、内径(扱き径)の比較的小さいワイパーが採用される。
【0023】
そして、塗布部の横断面において、ブラシ部材の芯線軸が塗布具ボディの左右の側縁部より低い位置に配置されていると、塗布具ボディから露出するブラシ毛の根元側の液体化粧料をワイパーでは扱ききれないため、塗布具ボディから露出するブラシ毛に保持される液体化粧料の調整が難しい。
【0024】
一方、ブラシ部材の芯線軸が塗布具ボディの左右の側縁部より高い位置に配置されていると、塗布具ボディから露出するブラシ毛の根元側まで液体化粧料をワイパーで扱けるため、ブラシ毛に保持される液体化粧料の調整は易しい。しかし、ブラシ部材は、櫛部材に対しその芯線軸の後端部が片持ち支持されているため、塗布部がワイパーでしごかれる際、ブラシ部材と櫛部材間に作用するワイパーの圧縮力により、ブラシ部材の芯線軸が塗布具ボディ内に沈み込む方向に撓むことで、ワイパーによる扱き量が塗布部の長手方向に異なるおそれがある。
【0025】
然るに、この態様によれば、ブラシ部材の芯線軸が塗布具ボディの左右の側縁部と略面一に配置されているため、それだけ塗布部がワイパーでしごかれる際、ブラシ部材と櫛部材間に作用する圧縮力が小さい。さらに、塗布具ボディに収容されたブラシ毛体の各ブラシ毛の先端が該塗布具ボディの内周面に面一に当接するため、ブラシ毛体と塗布具ボディの内周面間に作用する反力(弾発力)がブラシ部材の芯線軸の撓みを確実に抑制する。従って、塗布部がワイパーでしごかれる際に、ブラシ部材の芯線軸が撓むことはない。
【0026】
したがって、内径(扱き径)の異なる(扱き力の異なる)いかなる仕様のワイパーにおいても、塗布部がワイパーで扱かれる際に、塗布部から扱き落される液体化粧料の量は塗布部の長手方向において一定となるため、塗布具ボディから露出するブラシ毛体のブラシ毛に保持されている液体化粧料の量が塗布具ボディの長手方向のどこにおいても同じとなるように調整される。従って、操作性に優れた塗布部を備えた化粧料塗布具を提供できる。
【0027】
また、本態様に係る化粧料塗布具は、
前記ブラシ部材の芯線軸の後端部が前記塗布具ボディ後端側の軸受けとともに中空のシャフト先端部に加締め固定されていてもよい。
【0028】
この態様によれば、ブラシ部材を櫛部材に組付けた状態、即ち、ブラシ部材の芯線軸前後端部を櫛部材の塗布具ボディの前後端側の軸受けにそれぞれ係合し、ブラシ部材のブラシ毛体を櫛部材の塗布具ボディに係合した形態で、塗布具ボディ後端側の軸受けを芯線軸後端部と一体に中空のシャフト先端部に挿入し、シャフト先端部外周面を内側に加締めることで、中空のシャフト先端部に塗布部が取り付けられるとともに、塗布部を構成するブラシ部材が櫛部材に対し片持ち支持された形態となる。
【0029】
このため、塗布部の後端部を中空のシャフト先端部に加締める作業だけで、塗布部のシャフト先端部への固定と、塗布部におけるブラシ部材の片持ち支持構造とを同時に実現できるので、化粧料塗布具を製造する作業効率に優れる。
【0030】
また、本態様に係る化粧料塗布具は、
前記前端側の軸受けが、最前方位置の櫛歯よりも前方に離間する位置に設けられた正面視門型の球面状尖頭部に形成されるとともに、
前記最前方位置の櫛歯と前記球面状尖頭部との間に、前記櫛歯よりも幅狭で延出長の短い櫛歯状突状部が設けられていてもよい。
【0031】
この態様によれば、塗布部の前端部が球面状尖頭部で構成されているので、化粧料容器の開口部や該開口部内側に設けられているワイパーに引っ掛からないように、塗布部を化粧料容器内にスムーズに挿入することができる。
【0032】
また、ワイパーから塗布部を抜き出す際、塗布部のブラシ毛体を扱くワイパーが球面状尖頭部の背面に引っ掛かる直前に、ワイパーがその内在する縮径力で最前方位置の櫛歯から、櫛歯状突状部の前面および球面状尖頭部の前面に沿って滑動するため、塗布部前端部を構成する球面状尖頭部がスムーズにワイパーを通過できる、即ち、ワイパーから塗布部をスムーズに抜き出すことができる。
【0033】
また、本態様に係る化粧料塗布具は、
前記櫛歯状突状部の前面が前記球面状尖頭部の前面に倣う形状に形成されていてもよい。
【0034】
この態様によれば、塗布部の前端部をワイパーに挿通する際の抵抗および塗布部の前端部をワイパーから抜き出す際の抵抗がいっそう小さくなるので、塗布部の化粧料容器への挿入および化粧料容器からの抜き出しがよりいっそうスムーズとなる。
【0035】
また、本態様に係る化粧料塗布具は、
前記櫛歯が前記塗布具ボディ内側の幅よりも幅狭の正面視鋭角状の嘴型に形成されるとともに、
前記塗布具ボディの略下半分には、前記櫛歯間の隙間に等しい幅で該ボディを横切る横断面円弧状のスリットが形成されて、前記櫛歯間の隙間が該スリットを介して前記塗布具ボディの内側に連通するように構成されてもよい。
【0036】
この態様によれば、櫛歯が幅狭で正面視鋭角状の嘴型に形成されているので、櫛歯で塗布対象毛(例えば、まつ毛)をすき易い。
【0037】
また、櫛歯の側面(櫛歯間の隙間の対向側面)と横断面円弧状のスリットの対向側面は面一に形成されているので、たとえ櫛歯の側面の面積(櫛歯間の隙間の容積)が小さくても、櫛歯間の隙間から前記スリット内にかけて多量の化粧料(例えば、マスカラ液)を保持できる。
【0038】
したがって、塗布部の櫛歯で塗布対象毛(例えば、まつ毛)をすくように操作すれば、スムーズに塗布対象毛(例えば、まつ毛)をすくことができ、しかも、すいた塗布対象毛(例えば、まつ毛)に、櫛歯間の隙間からスリット内にかけて保持されている多量の化粧料(例えば、マスカラ液)を塗布することができる。
【発明の効果】
【0039】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、櫛部材の製造コストが下がる分、化粧用塗布具を安価に提供できる。
【0040】
また、ブラシ部材を櫛部材に組付けて塗布部として一体化する作業をスムーズに遂行できる。
【0041】
また、櫛部材とブラシ部材を塗布部として組付け一体化すると、櫛部材とブラシ部材は同軸状に位置決めされた形態に保持されるので、前記ブラシ部材の芯線軸後端部を前記櫛部材の後端側軸受けに固定して、前記ブラシ部材を櫛部材に対し片持ち支持構造とするための作業をスムーズに遂行できる。
【0042】
特に、ブラシ部材を櫛部材に組付ける際、先行特許文献1のように、ブラシ部材(の芯線軸)を湾曲させる必要が全くないことから、塗布具ボディから露出するブラシ毛体の外形は常に一定の形状で、製造された化粧料塗布具の塗布部におけるブラシ毛体について一定の品質を保証できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の第1の実施例に係るマスカラ塗布具の要部である塗布部を示し、(a)は同塗布部の斜視図、(b)は同塗布具の縦断面図、(c)は同塗布具の加締め固定部の拡大横断面図(図1(b)の線Ic-Icに沿う断面図)、(d)は芯線軸前端部の拡大横断面図(図1(b)の線Id-Idに沿う断面図)である。
図2】(a)は櫛部材の側面図、(b)は櫛部材の平面図、(c)は櫛部材の底面図、(d)は櫛部材の左側面図(櫛部材を前面側から見た図)、(e)は櫛部材の右側面図(櫛部材を背面側から見た図)である。
図3】(a)は櫛部材の縦断面図、(b)は櫛部材の拡大横断面図(図2(a)のIIIb-IIIbに沿う断面図)、(c)は櫛部材の拡大横断面図(図2(a)の線IIIc-IIIcに沿う断面図)である。
図4】マスカラ塗布具の要部である塗布部の拡大縦断面図(図1(b)の線IV-IVに沿う拡大断面図)である。
図5】ブラシ部材を櫛部材に組付ける手順を説明する説明図である。
図6】本発明の第2の実施例に係るマスカラ塗布具の要部である塗布部を示し、(a)は同塗布部を構成する櫛部材の側面図、(b)は同塗布部の縦断面図、(c)は同櫛部材の拡大横断面図(図6(a)に示す線VIc-VIcに沿う断面図で、図4に対応する図)である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0045】
図1~5は、本発明の第1の実施例に係るマスカラ塗布具の要部である塗布部を示す図である。
【0046】
液体化粧料であるマスカラ液を収容したマスカラ容器(図示せず)の開口部には、キャップ(図示せず)が取り外し自在に螺着されている。このキャップには、シャフト50(図1(a),(b)参照)が一体化されており、該シャフト50の中空の先端部52には、櫛部材110とブラシ部材140を同軸状に一体化した塗布部100が加締め固定されている。図1(a)の符号56は、シャフト先端部52の外周面に残る加締め痕である。
【0047】
マスカラ容器の開口部内側には、マスカラ容器内において塗布部100(図1(a),(b)参照)に過剰に付着したマスカラ液を扱くためのワイパー(塗布部100の横断面積よりかなり開口面積の小さい塗布部挿通用の円孔を設けたゴム製のしごき部材)が設けられており、マスカラ容器内でマスカラ液を付着させた塗布部100は、マスカラ容器から抜き出す際にワイパーでしごかれて、塗布部100におけるマスカラ液の保持量が調整される。
【0048】
本実施例のマスカラ塗布具では、塗布部100の櫛歯114だけでなく、塗布部100のブラシ毛145によっても、十分な量のマスカラ液をまつ毛に塗布できるように、内径(扱き径)の比較的大きいワイパーが採用されている。
【0049】
したがって、マスカラ容器から塗布部100を抜き出すと、櫛部材110の櫛歯114間の隙間114aには、多量のマスカラ液が保持されるとともに、塗布具ボディ112から露出するブラシ部材140のブラシ毛体144のブラシ毛145にも、比較的に多めのマスカラ液が保持される。
【0050】
そして、塗布部100下面側の櫛歯114を使って、まつ毛に多量のマスカラ液を塗布した後、塗布部100上面側のブラシ毛体144(ブラシ毛145)を使って、さらにまつ毛にマスカラ液を厚く塗布したり、あるいは、塗布部100下面側の櫛歯114を使うことなく、塗布部100上面側のブラシ毛体144(ブラシ毛145)だけを使って、まつ毛にマスカラ液を比較的多めに塗布することができる等、塗布部100の櫛歯114やブラシ毛体144(ブラシ毛145)の使い勝手は自由である。
【0051】
ブラシ部材140は、図1(a),(b)、図4に示すように、直線状の芯線軸142からブラシ毛145が放射状に延出して、芯線軸142の周りに横断面略扇形状のブラシ毛体144が形成されている。ブラシ部材140は、金属線材(例えば、直径0.75mm)141を二つ折りにした金属線材141,141間に所定長さのブラシ毛(例えば、直径0.1mm、長さ8mmのポリアミド合成繊維製ブリッスル)を挟んで捩じることで構成されている。横断面略扇形状のブラシ毛体144は、捩じられた一対の金属線材141,141間の螺旋溝に沿って放射状に分散するブラシ毛145によって形成されており、芯線軸142の前端部142aは、金属線材141の折り返し部(図1(b),(d))で構成されている。このため、図1(d)に示すように、金属線材141の折り返し部である芯線軸前端部142aの横断面は、直径0.75mmの円2つが左右に隣接する扁平な横長形状であるのに対し、芯線軸142の前端部142aを除く領域(金属線材141,141が捩じられた領域)の横断面は、2本の金属線材141(直径0.75mm)を捩じった直径略1.5mmの円である。
【0052】
なお、二つ折りにした金属線材141,141間に所定長さのブラシ毛を挟んで捩じると、芯線軸142の周りに横断面円形状のブラシ毛体が形成されるが、この横断面円形状のブラシ毛体を構成する各ブラシ毛145の先端をトリミングすることで、所定の望ましい横断面略扇形状、例えば、図4に示すように、ブラシ毛体144の略上半分の領域(芯線軸142より上方のブラシ毛145)は、横断面モヒカン形状に、ブラシ毛体144の略下半分の領域(芯線軸142より下方のブラシ毛145)は、後述する塗布具ボディ112のブラシ毛体収容空間Sに面一に収容できる横断面形状に形成されている。
【0053】
ここで、図1(d)に示す、芯線軸前端部142aの扁平な横長の横断面を基準として、芯線軸142より上方のブラシ毛145が形成するブラシ毛体144を「ブラシ毛体144の略上半分の領域」といい、芯線軸142より下方のブラシ毛145が形成するブラシ毛体144を「ブラシ毛体144の略下半分の領域」という。
【0054】
一方、櫛部材110は、上方に開口し前後に延びる略半円筒型塗布具ボディ112を備え、塗布具ボディ112の下面には、下方に延出する薄板状の櫛歯114が該ボディ112の長手方向等ピッチに形成されている。なお、櫛歯114の延出長(塗布具ボディ112の外周面から櫛歯114先端までの長さ)は約1.6mm、櫛歯114の厚さは0.40mm、櫛歯114のピッチは0.75mm、櫛歯114間の隙間114aは0.35mmに設定されている。
【0055】
特に、櫛歯114は、図3(c)に示すように、その付け根側の幅dが塗布具ボディ112内側の幅Dより狭く、正面視鋭角状の嘴型に形成されているので、まつ毛をすき易い。また、櫛歯114間の隙間114aには、多量のマスカラ液を保持できる。
【0056】
図1(b),図3(a),(c)に示すように、塗布具ボディ112の上下方向略下半分における内周面112aは円弧形状に形成され、塗布具ボディ112の上下方向略上半分における幅方向に対向する内周面112b,112bは鉛直面で形成されて、塗布具ボディ112の内側には、ブラシ部材140のブラシ毛体144を収容するブラシ毛体収容空間Sが設けられている。
【0057】
また、塗布具ボディ112の前端側には、図3(a)に示すように、ブラシ部材140の先端部(芯線軸前端部)142aを支持する軸受け116が、塗布具ボディ112の後端側には、ブラシ部材140の基端部(芯線軸後端部)142bを支持する軸受け118が、それぞれ塗布具ボディ112と一体に同軸状に形成されている。
【0058】
後端側の軸受け118は、図1図2(a)~(c),(e)、図3(a),(c)に示すように、塗布具ボディ112の後方に延出して上方に開口する横断面U字型に形成され、軸受け118のボディ112内への開口周縁部118aは、図1(b),図3(a),(c)に示すように、塗布具ボディ112内のブラシ毛体収容空間Sの後面を形成している。
【0059】
一方、前端側の軸受け116は、図1図2(a),(c),(d)、図3(a),(b)に示すように、塗布具ボディ112の前方上方に立壁状に延出して下方が開口する正面視門型の球面状尖頭部115の中央に、ブラシ部材140の芯線軸142の前端部(金属線材141の折り返し部)142aが下方向から係合できる下方に開口する横断面幅広U字型に形成されている。
【0060】
そして、図3(a),(b)に示すように、前端側の軸受け116の塗布具ボディ112内への開口周縁部116aは、球面状尖頭部115の後面に形成した段差部表面であって、塗布具ボディ112内のブラシ毛体収容空間S形成面を形成している。
【0061】
そして、塗布具ボディ112のブラシ毛体収容空間Sに収容されたブラシ毛体144は、図1(b)に示すように、芯線軸142からのブラシ毛145の延出長の短い、ブラシ毛体144の小径前端部144aが軸受け116の塗布具ボディ112内への開口周縁部116a(ブラシ毛体収容空間Sの前面)に当接するとともに、ブラシ毛体144の後端部144bが後端側の軸受け118の塗布具ボディ112内への開口周縁部118aに当接することで、櫛部材110とブラシ部材140が軸方向に位置決めされている。
【0062】
また、ボディ112内に収容されたブラシ毛体144の略下半分の領域における各ブラシ毛145の先端が塗布具ボディ112の内周面(ブラシ毛体収容空間S形成面)112a,112bに面一に当接することで、ブラシ毛体144の略上半分の領域が塗布具ボディ112の上方に露出するとともに、ブラシ部材140の先端部(芯線軸前端部)142aおよび後端部(芯線軸後端部)142bが櫛部材110(塗布具ボディ112)前端側の軸受け116および後端側の軸受け118にそれぞれ係合した形態に位置決めされている。即ち、櫛部材110とブラシ部材140が同軸状に位置決めされている。
【0063】
そして、塗布部100を構成する櫛部材110とブラシ部材140は、同軸状に位置決めされ、かつ軸方向に位置決めされた形態で、マスカラ容器のキャップ(図示せず)から延びるシャフト50の中空の先端部52に加締め固定されている。
【0064】
即ち、中空のシャフト先端部52に加締め固定された塗布部100は、ブラシ部材140の芯線軸後端部142bが櫛部材110の後端側の軸受け118に固定されて、櫛部材110に対しブラシ部材140が片持ち支持されるとともに、ブラシ部材140の芯線軸前端部142aが櫛部材110の前端側の軸受け116に係合し、ブラシ部材140のブラシ毛体144が塗布具ボディ112に係合するとともに、ブラシ毛体144の略下半分の領域における各ブラシ毛145の先端が該塗布具ボディ112の内周面112a,112bに面一に当接して、ブラシ毛体144の略上半分の領域が塗布具ボディ112の上方に露出するように配置されている。
【0065】
マスカラ容器の開口部内側には、塗布部100に過剰に付着したマスカラ液を扱くためのワイパーが設けられているが、本実施例では、塗布部100の前端に、櫛部材110に対し片持ち支持されたブラシ部材140の先端部(芯線軸前端部)142aを覆う立壁状の球面状尖頭部115を設けることで、マスカラ容器の開口部やワイパーに引っ掛からないように、塗布部100をマスカラ容器内にスムーズに挿入することができる。
【0066】
また、図1(a),(b)、図2(a),(c),(d)、図3(b)の符号117で示すように、球面状尖頭部115に設けた軸受け116の下方が幅広に前後に大きく開口することで、塗布部100をマスカラ容器に挿入したときには、マスカラ容器内のマスカラ液の、塗布部100のブラシ毛体144への供給(侵入)が促進され、塗布部100をマスカラ容器から抜き出すときには、ワイパーでしごかれたブラシ毛体144内の、過剰なマスカラ液のマスカラ容器内への排出が促進される。
【0067】
また、図1(a),(b)、図2(a),(c),(d)、図3(a)に示すように、塗布具ボディ112(櫛部材110)の前端部に設けた立壁状の球面状尖頭部115は、最前方位置の櫛歯114よりも前方に離間して設けられるとともに、最前方位置の櫛歯114と球面状尖頭部115との間に、櫛歯114よりも幅狭で延出長の短い櫛歯状突状部114bが設けられることで、塗布部100のワイパーからの抜き出しが容易となっている。
【0068】
詳しくは、櫛歯114形成位置前方近くに立壁状の球面状尖頭部115が設けられていると、ワイパーから塗布部100を抜き出す際に、球面状尖頭部115の背面115a(図1(b)、図2(a),(b),(e)参照)にワイパー(しごき部材の円孔周縁部)が引っ掛かって、塗布部100のスムーズな抜き出しが妨げられる。然るに、本実施例では、最前方位置の櫛歯114から球面状尖頭部115の背面115aまでが前後方向に大きく離間(図2(a)の符号δ参照)しており、さらに、最前方位置の櫛歯114と球面状尖頭部115の背面115aとの間に、櫛歯114よりも幅狭で延出長の短い櫛歯状突状部114bが設けられているため、ワイパーから塗布部100を抜き出す際、塗布部100のブラシ毛体144を扱くワイパーが球面状尖頭部115の背面115aに引っ掛かる直前に、ワイパーがその内在する縮径力で最前方位置の櫛歯114から櫛歯状突状部114bの前面および球面状尖頭部115の前面に沿って滑動するため、塗布部100の前端部を構成する球面状尖頭部115がスムーズにワイパーを通過できる、即ち、ワイパーから塗布部100をスムーズに抜き出すことができる。
【0069】
次に、中空のシャフト先端部52への塗布部100の加締め固定構造について説明する。
【0070】
中空のシャフト先端部52は、図1(a)~(c)に示すように、櫛部材110の後端側の軸受け118を挿入できる、前方に開口する長穴53を設けた円筒型に形成され、長穴53内周面の周方向所定位置には、軸受け118と軸方向に係合する横断面矩形状の縦リブ54が突設されている。縦リブ54は、軸受け118の上方開口部に係合し、軸受け118に支持されている芯線軸後端部142bの側面に当接して、塗布部100がシャフト50の軸周りに位置決めされる。
【0071】
横断面U字型の軸受け118の外周面には、図2(a)~(c)に示すように、加締め加工予定位置を示す幅狭のベルト状の縮径部119が設けられ、図1(c)の白抜き矢印に示すように、縮径部119に対応する位置で、シャフト先端部52外周が、芯線軸後端部142bの中心軸に直交する方向に加締められると、加締められたシャフト52構成樹脂材が、符号52aに示すように、軸受け118の縮径部119を挟持する形態に塑性変形して、芯線軸後端部142bおよび軸受け118がシャフト先端部52に固定一体化されている。
【0072】
即ち、本実施例では、中空のシャフト先端部52外周面を内側に加締めることで、シャフト先端部52に塗布部100が取り付け固定されると同時に、塗布部100を構成するブラシ部材140が櫛部材110に対し片持ち支持される。
【0073】
また、ブラシ部材140を櫛部材110に組付けるには、図5の矢印Aに示すように、櫛部材110(塗布具ボディ112)の前方上方に立壁状に延出し下方に開口する前端側の軸受け116に、ブラシ部材140の先端(芯線軸前端部)142aを塗布具ボディ112内後方から斜め前方下向きに挿入し、ブラシ部材140の先端(芯線軸前端部)142aが係合する前端側の軸受け116を支点として、矢印Bに示すように、ブラシ部材後端部(芯線軸後端部)142bを下向きに回動(傾動)すれば、ブラシ毛体144を塗布具ボディ112に、ブラシ部材後端部(芯線軸後端部)142bを後端側の軸受け118に、それぞれ係合させることができる。
【0074】
そして、塗布具ボディ112に係合したブラシ毛体144は、その略下半分の領域における各ブラシ毛145の先端が該塗布具ボディ112の内周面112a,112bに面一に当接して、ブラシ部材140の先端部(芯線軸前端部)142aおよび後端部(芯線軸後端部)142bが櫛部材110(塗布具ボディ112)前端側の軸受け116および後端側の軸受け118にそれぞれ係合した形態に位置決め保持される。
【0075】
即ち、ブラシ部材140を櫛部材110に組付けて一体化すると、塗布部100を構成するブラシ部材140と櫛部材110は、同軸状に、かつ軸方向に位置決め保持されるので、中空のシャフト先端部52に塗布部100の後端部を加締め固定する作業をスムーズに遂行できる。
【0076】
また、塗布部100をマスカラ容器から抜き出す際(塗布部100がワイパーを通過する際)、塗布部100がワイパーでしごかれて、塗布具ボディ112から露出するブラシ毛体144のブラシ毛145に付着している過剰なマスカラ液が掻き落とされることで、塗布部100の塗布具ボディ112から露出するブラシ毛体144のブラシ毛145におけるマスカラ液の保持量が調整される。
【0077】
そして、本実施例では、塗布部100の櫛歯114だけでなく、塗布部100のブラシ毛体144のブラシ毛145によっても、比較的多量のマスカラ液をまつ毛に塗布する操作ができるように、マスカラ容器内には、内径(扱き径)の比較的大きいワイパーが設けられて、マスカラ容器から抜き出した塗布部100のブラシ毛体144には、ある程度の量(比較的多量)のマスカラ液が保持されるように構成されている。
【0078】
さらに、本実施例では、図4に示す塗布部100の横断面において、ブラシ部材140の芯線軸142が塗布具ボディ112の左右の側縁部上面112cと略面一に配置されることで、塗布部100がワイパーで扱かれる際に、塗布部100から扱き落されるマスカラ液の量が塗布部100の長手方向において一定となって、塗布具ボディ112から露出するブラシ毛体144のブラシ毛145に保持されたマスカラ液の量が、塗布具ボディ112の長手方向のどこにおいても同じとなるように調整されている。
【0079】
詳しくは、図4に示す塗布部100の横断面において、ブラシ部材140の芯線軸142が塗布具ボディ112の左右の側縁部上面112cより高い位置に配置されていると、塗布具ボディ112から露出するブラシ毛145の根元側まで液体化粧料をワイパーで扱けるため、ブラシ毛145に保持される液体化粧料の調整はし易い。しかし、ブラシ部材140は、櫛部材110に対しその芯線軸142の後端部が片持ち支持されているため、塗布部100がワイパーでしごかれる際、ブラシ部材140と櫛部材110間に作用するワイパーの圧縮力により、ブラシ部材140の芯線軸142が塗布具ボディ112内に沈み込む方向に撓むことで、ワイパーによる扱き量が塗布部100の長手方向において異なるおそれがある。
【0080】
然るに、本実施例では、ブラシ部材140の芯線軸142が塗布具ボディ112の左右の側縁部上面112cと略面一に配置されているため、それだけ塗布部100がワイパーでしごかれる際、ブラシ部材140と櫛部材110間に作用する圧縮力が小さい。
【0081】
さらに、本実施例では、前記したように、マスカラ容器から抜き出した塗布部100のブラシ毛体144に、ある程度の量(比較的多量)のマスカラ液が保持されるように、マスカラ容器内に設けたワイパーの内径(扱き径)が比較的大きいため、塗布部100がワイパーでしごかれる際、ブラシ部材140と櫛部材110間に作用する圧縮力はいっそう小さい。
【0082】
さらに、塗布具ボディ112に収容されたブラシ毛体144の略下半分の領域における各ブラシ毛145の先端が塗布具ボディ112の内周面112a,112bに面一に当接するように配置されているため、ブラシ部材140と櫛部材110間に作用するワイパーの圧縮力により、ブラシ部材140の芯線軸142が弾性変形しようとする(撓もうとする)動作に対し、ブラシ毛体144のブラシ毛145先端と塗布具ボディ112の内周面112a,112b間に作用する反力(弾発力)がブラシ部材140の芯線軸142の弾性変形(撓み)を抑制する。
【0083】
特に、本実施例では、図4に示すように、芯線軸142より上方のブラシ毛145(塗布具ボディ112の上方に露出するブラシ毛145)に比べて、芯線軸142より下方のブラシ毛145(塗布具ボディ112内に配置されたブラシ毛145)は、その長さが短い分、剛性が高いので、ブラシ毛体144と塗布具ボディ112の内周面112a間に作用する反力(弾発力)がブラシ部材140の芯線軸142の弾性変形(撓み)を確実に抑制する。
【0084】
したがって、本実施例では、塗布部100がワイパーでしごかれる際に、ブラシ部材140の芯線軸142は、櫛部材110に対し撓むことなく、塗布具ボディ112の左右の側縁部上面112cと略面一に配置された形態が保持される。
【0085】
このため、塗布具ボディ112から露出するブラシ毛体144のブラシ毛145に付着している過剰なマスカラ液のワイパーによる扱き量は、塗布部100の長手方向において一定となり、塗布具ボディ112から露出するブラシ毛体144のブラシ毛145に保持されたマスカラ液量は、塗布部100の長手方向に一定となるように調整される。
【0086】
したがって、マスカラ容器から塗布部100を抜き出せば、塗布具ボディ112から露出するブラシ毛体144のブラシ毛145に保持されているマスカラ液の量が塗布部100の長手方向のどこにおいても同じであることから、複数本のまつ毛のそれぞれに対し略均一な量のマスカラ液を塗布することができる。
【0087】
また、射出成形品である櫛部材110には、上方に開口し前後に延びる略半円筒型塗布具ボディ112に櫛歯114や軸受け116,118が一体に形成されているが、本実施例では、塗布具ボディ112下面に下方に延出する櫛歯114を該ボディ112の長手方向等ピッチに形成し、後端側の軸受け118を、塗布具ボディ112の後方に延出し上方に開口する横断面U字型に構成し、一方、前端側の軸受け116を、塗布具ボディ112の前方上方に立壁状に延出し下方に開口する横断面U字型に構成したので、接近離反方向(上下方向)に動作する射出成型用の上下一対の金型に櫛部材成形用のキャビティを形成する際、櫛歯114や軸受け116,118に対応するキャビティがアンダーカットを構成しない。
【0088】
このため、本実施例では、分割金型などの複雑な金型構造を採用することなく、上下方向に接近離反動作する簡潔な一対の金型構造によって、下面に櫛歯114を形成した塗布具ボディ112の前後端部に軸受け116,118を一体に形成した櫛部材110を射出成形できる。
【0089】
したがって、本実施例では、櫛部材110の製造コストが下がる分、化粧用塗布具を安価に提供できる。
【0090】
図6は、本発明の第2の実施例に係るマスカラ塗布具の要部である塗布部100Aを示す。
【0091】
この第2の実施例の塗布部100Aは、櫛部材110Aの櫛歯114Aの延出長さと、塗布具ボディ112Aの構造が、前記した第1の実施例の塗布部100と相違するので、この第1の実施例との相違点を説明する。
【0092】
(第1の相違点)塗布具ボディ112Aの下面に形成されている櫛歯114Aの延出長(塗布具ボディ112Aの外周面から櫛歯114A先端まで長さ)が約1.3mmで、第1の実施例の塗布具ボディ112の下面に形成されている櫛歯114の延出長約1.6mmよりも0.3mm(延出長の約20%)ほど短い。
【0093】
このため、マスカラ容器から塗布部100Aを抜き挿しする際(塗布部100Aがワイパーを通過する際)、塗布部100Aはワイパーによるしごき抵抗を受けるが、塗布具ボディ112Aからの櫛歯114Aの延出長が短い分、ワイパーによるしごき抵抗が小さく、それだけマスカラ容器に対する塗布部100Aの抜き挿しがスムーズとなる。
【0094】
(第2の相違点)塗布具ボディ112Aの上下方向略下半分の領域には、櫛歯114A間の隙間114aと同幅のスリット113が設けられて、櫛歯114A間の隙間114aおよびスリット113内にマスカラ液を保持できる。
【0095】
特に、この第2の実施例では、櫛歯114Aの延出長が短くても、櫛歯114A間の隙間114aに連通するスリット113内に多量のマスカラ液を保持できる。
【0096】
詳しくは、櫛部材110Aは、上方に開口し前後に延びる略半円筒型塗布具ボディ112Aを備え、塗布具ボディ112Aの下面には、下方に延出する薄板状の櫛歯114Aが該ボディ112Aの長手方向等ピッチに形成されている。櫛歯114Aの延出長(塗布具ボディ112Aの外周面から櫛歯114A先端まで長さ)は約1.3mm、櫛歯114Aの厚さは0.40mm、櫛歯114Aのピッチは0.75mm、櫛歯114A間の隙間は0.35mmに設定されている。
【0097】
そして、塗布具ボディ112Aの略下半分には、櫛歯114A間の隙間114aに等しい幅で該ボディ112Aを横切る横断面円弧状のスリット113が長手方向等ピッチに形成されて、櫛歯114A間の隙間114aが該スリット113を介して塗布具ボディ112Aの内側(ブラシ毛体収容空間S)に連通している。
【0098】
また、図6(b),(c)に示すように、櫛歯114Aの対向側面(櫛歯114間の隙間114aの対向側面)114a1と横断面円弧状のスリット113の対向側面113a1は面一に形成されており、櫛歯114Aの対向側面114a1の面積(櫛歯114A間の隙間114aの容積)が小さくても、櫛歯114A間の隙間114aに連通するスリット113の対向側面113a1の面積(スリット113の容積)が十分に大きいので、それだけ櫛歯114間の隙間114aおよびスリット113に多量のマスカラ液を保持できる。
【0099】
さらに、塗布具ボディ112Aから露出するブラシ毛体144の略上半分の領域は、ワイパーで扱かれるため、塗布具ボディ112Aから露出するブラシ毛145間にはそれだけ少量のマスカラ液が保持される。一方、ワイパーで扱かれない、塗布具ボディ112Aの内側に収容されているブラシ毛体144の略下半分の領域には、ブラシ毛体144の略上半分の領域(塗布具ボディ112Aの上方に露出するブラシ毛145)に比べて、ブラシ毛145間に多量のマスカラ液を保持できることから、本実施例では、櫛歯114A間の隙間114aからスリット113および塗布具ボディ112A内のブラシ毛体144の略下半分の領域にかけて、多量のマスカラ液を保持できる。
【0100】
このように、第2の実施例では、第1の実施例に比べて、櫛歯114Aの延出長が0.3mm程小さい分、櫛歯114A間の隙間114aに保持できるマスカラ液の量は少ないが、櫛歯114A間の隙間114aからスリット113および塗布具ボディ112A内のブラシ毛体144の略下半分の領域にかけて、多量のマスカラ液を保持できる。
【0101】
したがって、第2の実施例の塗布部100Aの櫛歯114Aの方が、第1の実施例の塗布部100の櫛歯114よりも多量のマスカラ液をまつ毛に塗布することができる。
【0102】
その他は、前記第1の実施例の塗布部100と同一であるため、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0103】
この第2の実施例においても、櫛歯114Aが幅狭で正面視鋭角状の嘴型に形成されているので、櫛歯114Aでまつ毛をすき易い点は、前記第1の実施例の塗布部100と同じである。
【0104】
なお、前記した第1、第2の実施例では、いずれも、マスカラ液をまつ毛に塗布するマスカラ塗布具について説明したが、本発明は、マスカラ塗布具に限るものではなく、まつ毛や眉毛や髪の毛等に化粧料を塗布する化粧料塗布具に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
50 キャップから延びるシャフト
52 中空のシャフト先端部
54 縦リブ
56 加締め痕
100,100A 塗布部
110,110A 櫛部材
112,112A 塗布具ボディ
112a,112b 塗布具ボディ内周面
112c 塗布具ボディ側縁部上面
S ブラシ毛体収容空間
113 スリット
114,114A 櫛歯
114a 櫛歯間の隙間
114b 櫛歯状突状部
δ 最前方位置の櫛歯と球面状尖頭部の前後方向の離間距離
115 塗布具ボディ前端側に設けた球面状尖頭部
116 塗布具ボディ前端側の軸受け
118 塗布具ボディ後端側の軸受け
140 ブラシ部材
141 芯線材
142 芯線軸
142a 芯線軸前端部
142b 芯線軸後端部
144 ブラシ毛体
145 ブラシ毛
図1
図2
図3
図4
図5
図6