(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】三次元プリンティング装置、三次元プリンティング方法、及び圧縮装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20240322BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20240322BHJP
B29C 64/218 20170101ALI20240322BHJP
B29C 64/188 20170101ALI20240322BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240322BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240322BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/295
B29C64/218
B29C64/188
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2023569784
(86)(22)【出願日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2023025703
【審査請求日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2022112292
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】上田 政人
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-084779(JP,A)
【文献】特表2016-531020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを介してプリント材料を連続的にフィードする第1機構と、
前記プリント材料が積層されるテーブルを有する第2機構と、
加熱ローラを有する第3機構と、
前記第1機構、前記第2機構、及び前記第3機構を制御する制御部であり、
前記ノズルから供給された前記プリント材料をプリントパスに沿って配置しシート状の材料層を形成する第1モードであり、前記材料層が1層からなる又は複数層からなる、前記第1モードと、
前記第1モードの後に、前記テーブルに対する前記ノズルからの前記プリント材料の供給を停止した状態で、前記テーブルと前記
加熱ローラとの間の相対移動を行いながら、前記材料層を前記
加熱ローラで圧縮する第2モードと、を含む、前記制御部と、
を備え
、
前記加熱ローラは、周面、球面、又は湾曲面を有する所定面を有し、
前記第2モードにおいて、前記所定面が前記材料層を押圧可能となるように第1方向の所定位置に前記加熱ローラが配置された状態で、前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記テーブルと前記加熱ローラとの間の前記相対移動が実行される、
三次元プリンティング装置。
【請求項2】
前記第2モードは、少なくとも部分的に前記プリントパスと前記
加熱ローラの移動の向きとが交差するように前記相対移動を行うことを含む、請求項1に記載の三次元プリンティング装置。
【請求項3】
前記第2モードは、前記相対移動における、前記プリント材料の前記プリントパスの主延在方向と前記相対移動の方向との間の角度を制御することを含む、請求項1に記載の三次元プリンティング装置。
【請求項4】
前記第2モードは、第1ターゲット温度において前記材料層を前記
加熱ローラで圧縮することと、前記第1ターゲット温度と異なる第2ターゲット温度において前記材料層を前記
加熱ローラで圧縮することと、を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の三次元プリンティング装置。
【請求項5】
前記第2モードは、第1表面特性を有する前記
加熱ローラの第1接触面で前記材料層を圧縮することと、前記第1表面特性と異なる第2表面特性を有する前記
加熱ローラの第2接触面で前記材料層を圧縮することと、を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の三次元プリンティング装置。
【請求項6】
前記
加熱ローラは、前記テーブルの上面と平行な軸芯を中心として回転可能に支持された円柱形状の加熱ローラを有する、請求項1から3のいずれか一項に三次元プリンティング装置。
【請求項7】
前記加熱ローラは、前記軸芯に沿った方向の長さ寸法が、前記テーブル上の前記プリント材料の配置可能領域の前記軸芯に沿った方向の長さ寸法よりも大きい、請求項6に記載の三次元プリンティング装置。
【請求項8】
前記第3機構の前記
加熱ローラは、前記プリント材料を押圧する場合に、前記ノズルにおける前記プリント材料の加熱温度よりも低い温度又は高い温度に設定される、又は、前記ノズルにおける前記プリント材料の加熱温度と同程度の温度に設定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の三次元プリンティング装置。
【請求項9】
前記テーブルの少なくとも表面が前記プリント材料と同一の材料を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の三次元プリンティング装置。
【請求項10】
ノズルを介してプリント材料を連続的にフィードする第1機構と、
前記プリント材料が積層されるテーブルを有する第2機構と、
加熱部材を有する第3機構と、
前記第1機構、前記第2機構、及び前記第3機構を制御する制御部であり、
前記ノズルから供給された前記プリント材料をプリントパスに沿って配置しシート状の材料層を形成する第1モードであり、前記材料層が1層からなる又は複数層からなる、前記第1モードと、
前記第1モードの後に、前記テーブルと前記加熱部材との間の相対移動を行いながら、前記材料層を前記加熱部材で圧縮する第2モードと、を含む、前記制御部と、
を備え、
前記第2モードは、第1ターゲット温度において前記材料層を前記加熱部材で圧縮することと、前記第1ターゲット温度と異なる第2ターゲット温度において前記材料層を前記加熱部材で圧縮することと、を含む、
三次元プリンティング装置。
【請求項11】
ノズルを介してプリント材料を連続的にフィードする第1機構と、
前記プリント材料が積層されるテーブルを有する第2機構と、
加熱ローラを有する第3機構と、
前記第1機構、前記第2機構、及び前記第3機構を制御する制御部であり、
前記ノズルから供給された前記プリント材料をプリントパスに沿って配置しシート状の材料層を形成する第1モードであり、前記材料層が1層からなる又は複数層からなる、前記第1モードと、
前記第1モードの後に、前記テーブルと前記
加熱ローラとの間の相対移動を行いながら、前記材料層を前記
加熱ローラで圧縮する第2モードと、を含む、前記制御部と、
を備え、
前記加熱ローラは、周面、球面、又は湾曲面を有する所定面を有し、
前記第3機構の前記
加熱ローラは、前記材料層を圧縮する際に、
前記プリント材料が軟化する所定温度であって前記ノズルにおける前記プリント材料の加熱温度よりも
低い前記所定温度に昇温され
、
前記第2モードにおいて、前記所定面が前記材料層を押圧可能となるように第1方向の所定位置に前記加熱ローラが配置された状態で、前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記テーブルと前記加熱ローラとの間の前記相対移動が実行される、
三次元プリンティング装置。
【請求項12】
ヘッドユニットに設けられたノズルを介してプリント材料を連続的にフィードする第1機構と、
前記プリント材料が積層されるテーブルを有する第2機構と、
前記ヘッドユニットとは別のユニットに設けられた
加熱ローラを有する第3機構と、
前記第1機構、前記第2機構、及び前記第3機構を制御する制御部であり、
前記ノズルから供給された前記プリント材料をプリントパスに沿って配置しシート状の材料層を形成する第1モードであり、前記材料層が1層からなる又は複数層からなる、前記第1モードと、
前記第1モードの後に、前記テーブルと前記
加熱ローラとの間の相対移動を行いながら、前記材料層を前記
加熱ローラで圧縮する第2モードと、を含む、前記制御部と、
を備え
、
前記加熱ローラは、周面、球面、又は湾曲面を有する所定面を有し、回転可能に支持される加熱ローラを有し、
前記第2モードにおいて、前記所定面が前記材料層を押圧可能となるように第1方向の所定位置に前記加熱ローラが配置された状態で、前記第1方向と交差する第2方向における前記テーブルと前記加熱ローラとの間の相対移動に伴って前記材料層に押圧された前記加熱ローラが回転する、
三次元プリンティング装置。
【請求項13】
ノズルから供給されたプリント材料をプリントパスに沿ってテーブル上に配置してシート状の材料層を形成する第1工程であり、前記材料層が1層からなる又は複数層からなる、前記第1工程と、
第1工程の後に、前記テーブルに対する前記ノズルからの前記プリント材料の供給を停止した状態で、前記テーブルと
加熱ローラとの間の相対移動を行いながら、前記材料層を前記
加熱ローラで圧縮する第2工程と、
を備え
、
前記加熱ローラは、周面、球面、又は湾曲面を有する所定面を有し、
前記第2工程において、前記所定面が前記材料層を押圧可能となるように第1方向の所定位置に前記加熱ローラが配置された状態で、前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記テーブルと前記加熱ローラとの間の前記相対移動が実行される、
三次元プリンティング方法。
【請求項14】
ノズルから供給されたプリント材料をプリントパスに沿ってテーブル上に配置してシート状の材料層を形成する第1工程であり、前記材料層が1層からなる又は複数層からなる、前記第1工程と、
第1工程の後に、前記テーブルと加熱部材との間の相対移動を行いながら、前記材料層を前記加熱部材で圧縮する第2工程と、
を備え、
前記第2工程は、第1ターゲット温度において前記材料層を前記加熱部材で圧縮することと、前記第1ターゲット温度と異なる第2ターゲット温度において前記材料層を前記加熱部材で圧縮することと、を含む、
三次元プリンティング方法。
【請求項15】
ノズルから供給されたプリント材料をプリントパスに沿ってテーブル上に配置してシート状の材料層を形成する第1工程であり、前記材料層が1層からなる又は複数層からなる、前記第1工程と、
第1工程の後に、前記テーブルと
加熱ローラとの間の相対移動を行いながら、前記材料層を前記
加熱ローラで圧縮する第2工程と、
を備え、
前記加熱ローラは、周面、球面、又は湾曲面を有する所定面を有し、
前記第2工程は、
前記プリント材料が軟化する所定温度であって前記ノズルにおける前記プリント材料の加熱温度よりも
低い前記所定温度に、前記
加熱ローラを昇温することを含
み、
前記第2工程において、前記所定面が前記材料層を押圧可能となるように第1方向の所定位置に前記加熱ローラが配置された状態で、前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記テーブルと前記加熱ローラとの間の前記相対移動が実行される、
三次元プリンティング方法。
【請求項16】
ヘッドユニットに設けられたノズルから供給されたプリント材料をプリントパスに沿ってテーブル上に配置してシート状の材料層を形成する第1工程であり、前記材料層が1層からなる又は複数層からなる、前記第1工程と、
第1工程の後に、前記テーブルと前記ヘッドユニットとは別のユニットに設けられた
加熱ローラとの間の相対移動を行いながら、前記材料層を前記
加熱ローラで圧縮する第2工程と、
を備え
、
前記加熱ローラは、周面、球面、又は湾曲面を有する所定面を有し、回転可能に支持される加熱ローラを有し、
前記第2工程において、前記所定面が前記材料層を押圧可能となるように第1方向の所定位置に前記加熱ローラが配置された状態で、前記第1方向と交差する第2方向における前記テーブルと前記加熱ローラとの間の相対移動に伴って前記材料層に押圧された前記加熱ローラが回転する、
三次元プリンティング方法。
【請求項17】
三次元プリンティング装置用の圧縮装置であって、
前記三次元プリンティング装置は、
プリント材料を連続的にフィードするノズルを有する第1機構と、
前記プリント材料が積層されるテーブル
を有する第2機構と、
制御部と、
を備え、
前記圧縮装置は、
加熱ローラを有する熱圧縮機構を備え、
前記加熱ローラは、周面、球面、又は湾曲面を有する所定面を有し、
前記熱圧縮機構は、
前記プリント材料が軟化する所定温度であって前記ノズルにおける前記プリント材料の加熱温度よりも
低い前記所定温度に前記
加熱ローラを昇温した状態で、前記プリント材料によって形成されたシート状の材料層を前記
加熱ローラで圧縮するように構成され
、
前記所定面が前記材料層を押圧可能となるように第1方向の所定位置に前記加熱ローラが配置された状態で、前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記テーブルと前記加熱ローラとの間の相対移動が実行される、
三次元プリンティング装置用の圧縮装置。
【請求項18】
三次元プリンティング装置用の圧縮装置であって、
前記三次元プリンティング装置は、
プリント材料を連続的にフィードするノズルを有するヘッドユニットを備える第1機構と、
前記プリント材料が積層されるテーブル
を有する第2機構と、
制御部と、
を備え、
前記圧縮装置は、
加熱ローラを有する熱圧縮機構を備え、
前記加熱ローラは、周面、球面、又は湾曲面を有する所定面を有し、回転可能に支持される加熱ローラを有し、
前記熱圧縮機構は、前記ヘッドユニットとは別のユニットに前記加熱
ローラが取り付けられ、前記プリント材料によって形成されたシート状の材料層を前記加熱
ローラで圧縮するように構成され
、
前記所定面が前記材料層を押圧可能となるように第1方向の所定位置に前記加熱ローラが配置された状態で、前記第1方向と交差する第2方向における前記テーブルと前記加熱ローラとの間の相対移動に伴って前記材料層に押圧された前記加熱ローラが回転する、
三次元プリンティング装置用の圧縮装置。
【請求項19】
三次元プリンティング装置用の圧縮装置であって、
前記三次元プリンティング装置は、
プリント材料を連続的にフィードするノズルを有する第1機構と、
前記プリント材料が積層されるテーブル有する第2機構と、
制御部と、
を備え、
前記圧縮装置は、第1ターゲット温度に設定される第1加熱部材と、前記第1ターゲット温度と異なる第2ターゲット温度に設定される第2加熱部材と、を有する熱圧縮機構を備え、
前記熱圧縮機構は、前記プリント材料によって形成されたシート状の材料層を前記第1加熱部材と第2加熱部材とで圧縮するように構成される、
三次元プリンティング装置用の圧縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元プリンティング装置、三次元プリンティング方法、及び圧縮装置に関するものである。
本願は、2022年7月13日に出願された特願2022-112292号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば、立体的な形状を有する物体を造形する装置として、三次元プリンティング装置が知られている(例えば特許文献1参照)。三次元プリンティング装置は、コストのかかる金型や治具などを必要とせずに、既存技術では形成が難しい三次元形状を容易に造形することができる。三次元プリンティング装置の中でも、熱で融解した樹脂を少しずつ積み重ねていく熱溶解積層方式は、装置の製造コストが低いため、製造業において部品の試作などに使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状の熱溶解積層方式の三次元プリンティング装置は、熱可塑性樹脂からなるフィラメントを加熱して軟化し、軟化したフィラメントをノズルから押し出す機構を有する。例えば、フィラメントは、断面が円形状の線状の形状を有する。このようなフィラメントを密接するように連続的に配置してシート状に成形し、さらに積層すると、フィラメント同士の間に空隙が生じる。このような空隙は、三次元プリンティング装置で形成された造形体に残り、造形体の力学特性を低下させる。
【0005】
本発明は、造形体の力学的特性向上に有利な三次元プリンティング装置、三次元プリンティング方法、及び三次元プリンティング装置用圧縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の第1の態様において、三次元プリンティング装置は、ノズルを介してプリント材料を連続的にフィードする第1機構と、前記プリント材料が積層されるテーブルを有する第2機構と、加熱部材を有する第3機構と、前記第1機構、前記第2機構、及び前記第3機構を制御する制御部と、を備える。制御部は、前記ノズルから供給された前記プリント材料をプリントパスに沿って配置しシート状の材料層を形成する第1モードであり、前記材料層が1層からなる又は複数層からなる前記第1モードと、前記第1モードの後に、前記テーブルと前記加熱部材との間の相対移動を行いながら、前記材料層を前記加熱部材で圧縮する第2モードと、を含む。
【0008】
本発明の第2の態様において、三次元プリンティング方法は、ノズルから供給されたプリント材料をプリントパスに沿ってテーブル上に配置してシート状の材料層を形成する第1工程であり、前記材料層が1層からなる又は複数層からなる前記第1工程と、第1工程の後に、前記テーブルと加熱部材との間の相対移動を行いながら、前記材料層を前記加熱部材で圧縮する第2工程と、を備える。
【0009】
本発明の第3の態様において、三次元プリンティング装置は、プリント材料を連続的にフィードするノズルを有する第1機構と、前記プリント材料が積層されるテーブル有する第2機構と、制御部と、を備える。三次元プリンティング装置用の圧縮装置は、加熱部材を有する熱圧縮機構を備え、前記熱圧縮機構は、前記プリント材料によって形成されたシート状の材料層を前記加熱部材で圧縮するように構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、造形材料の積層途中で造形材料が加熱かつ押圧される。このため、造形材料が軟化された状態で押圧され、造形材料同士の間の空隙を減少させることができる。また、造形材料同士の接着強度を高めることができる。したがって、造形体の力学的特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】三次元プリンティング装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】三次元プリンティング方法の一例を示す概念図である。
【
図3】加熱ローラと造形テーブルとの関係を模式的に示す斜視図である。
【
図4】フィラメントの層が加熱ローラで押圧される様子を示す模式図である。
【
図5】フィラメントの層の断面を模式的に示す図であり、(a)が押圧されていない状態を示し、(b)が押圧された状態を示す。
【
図6】三次元プリンティング装置の変形例を示す模式図である。
【
図7】三次元プリンティング装置の変形例を示す模式図である。
【
図8】三次元プリンティング装置の変形例を示す模式図である。
【
図9】三次元プリンティング装置の変形例を示す模式図である。
【
図10】三次元プリンティング装置の変形例を示す模式図である。
【
図11】プリントパスに対する加熱ローラの移動向きを説明するための図である。
【
図12】三次元プリンティング装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0013】
図1は、三次元プリンティング装置1の概略構成を示す模式図である。一実施形態において、三次元プリンティング装置1は、フィラメントF(造形材料、プリント材料)を造形テーブル(ベッド、プラットフォーム)3上に連続的に吐出することで三次元状の造形体を形成する装置である。三次元プリンティング装置1は、軟化させたフィラメントFを造形テーブル3に積層する。積層体が固化することで三次元構造物である造形体が形成される。三次元プリンティング装置1における、フィラメントFの積層過程において、新たなフィラメントFが先に配置されたフィラメントF上に配置される。
【0014】
造形体の原材料となるフィラメント(プリント材料)Fは、線状形状を有する。フィラメントFは、中心軸に沿って連続的に延在した連続材料である。一例において、フィラメントFは、軸方向の全体にわたり同じ断面形状を有する。他の例において、フィラメントは、部分的に異なる断面形状を有することができる。フィラメントFは、例えば、円形状又は楕円状の断面を有する。フィラメントFの断面形状として、円(又は楕円)に限定されず、多角形など様々な形状が適用可能である。一例において、フィラメントFは、線状(糸状)に形成された樹脂部と、樹脂部の内部に含まれる繊維とを有する。樹脂部は、例えば、PLA樹脂(Poly-Lactic Acid、ポリ乳酸)、ABS樹脂、ナイロン樹脂などの熱可塑性樹脂で形成されている。他の例において、樹脂部は、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)樹脂、PEKK(Poly Ether Ketone Ketone)樹脂、PEI(Poly Ether Imide)樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックを用いることができる。上記以外の熱可塑性樹脂もフィラメントとして適用可能である。繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維あるいは植物繊維などである。上記以外の繊維も繊維要素として適用可能である。フィラメントFは、カーボンナノチューブを含んでもよい。
【0015】
一例において、連続する線状(糸状)の繊維が断面円形の樹脂部の中央部に配置されたフィラメントFを用いることができる。他の例において、造形材料として、短繊維、非線状繊維が樹脂部に分散されたフィラメントを用いることができる。造形材料は、上述のフィラメントFに限られるものではなく、例えば、繊維を含まない樹脂部からなるフィラメントであってもよい。フィラメントの直径(最大幅)は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、又は10mmにできる。また、フィラメントの直径(最大幅)は、0.1mm未満であってもよく、10mm以上であってもよい。
【0016】
一例において、
図1に示すように、繊維を含むフィラメントFがボビン50に巻回された状態で準備される。ボビン50からフィラメントFが引き出されて三次元プリンティング装置1に供給される。他の例において、線状の樹脂部が巻回されたボビンと、繊維が巻回されたボビンとが別に準備され、各々のボビンから引き出された樹脂部と繊維とが三次元プリンティング装置1にて合体される。フィラメントFの収容状態は、巻回タイプに限定されない。
【0017】
図1に示すように、三次元プリンティング装置1は、ノズル64を介してフィラメント(プリント材料)Fを連続的にフィードする第1機構100と、フィラメントFが積層される造形テーブル3を有する第2機構200と、加熱部材としての加熱ローラ81を有する第3機構(熱圧縮機構)300と、第1機構100、第2機構200、及び第3機構300を制御する制御装置(制御部、コントローラ)9と、を備える。制御装置9は、制御プログラム、記憶部(メモリ)、及び制御プログラムを実行するためのプロセッサ(processor, processing circuitry, circuitry)等を有する。一例において、第1機構100は、ヘッドユニット6と、ヘッド移動機構7と、を備える。一例において、第2機構200は、フレーム2と、造形テーブル3と、昇降装置4と、スライド機構5と、を備える。一例において、第3機構300は、押圧ローラユニット8を備える。
【0018】
制御装置9は、ノズル64から供給されたフィラメント(プリント材料)Fをプリントパスに沿って造形テーブル3上に連続的に配置し、シート状の材料層FLを形成する第1モード(
図2の(a)部)を有する。第1モードにおいて、ヘッドユニット6(ノズル64)と造形テーブル3との間の相対移動(プリント移動、プリントモード移動)が行われる。シート状の材料層FLは、実質的に互いに異なるタイミングで形成された、少なくとも2つの隣接要素(例えば、互いに隣接して並ぶ複数の線要素)を含む。シート状の材料層FLは、第1タイミングでの第1プリント移動によって形成された第1セグメントと、第1タイミングと実質的に異なる第2タイミングでの第2プリント移動によって形成され、第1セグメントに隣接する第2セグメントと、を含む。シート状の材料層FLの形状は、矩形に限定されない。シート状の材料層FLは、多角形状、線状、湾曲形状、円形状、楕円形状、環形状など、様々な形状を含むことができる。シート状の材料層FLは、切り欠き部、開口部、折り返し部を含んでもよい。制御装置9は、第1モードの後に、造形テーブル3と加熱部材(加熱ローラ)81との間の相対移動を行いながら、材料層FLを加熱ローラ81で圧縮する第2モード(
図2の(b)部)を含む。圧縮対象の材料層FLは、1層(単層)からなる又は複数層からなる。代替的及び/又は追加的に、三次元プリンティング装置1は、初期装置に対して、第3機構(熱圧縮機構)300を備える圧縮装置が追加的に設置された構成にできる。圧縮装置は、取り付け機構を含むことができる。また、圧縮装置において、第1機構100及び第2機構200の少なくとも一部が第3機構として共用可能である。あるいは、圧縮装置において、第3機構300の一部が第1機構100及び第2機構200の一部として共用可能である。なお、
図1において、矢印Zは鉛直方向(上下方向)を示し、矢印Xは水平方向の一方向示し、矢印Yは水平方向であってZ方向及びX方向に直交する方向を示している。
【0019】
フレーム2は、造形テーブル(テーブル)3、昇降装置4、スライド機構5、ヘッドユニット6、ヘッド移動機構7、及び押圧ローラユニット8を直接的あるいは間接的に支持する強度部材である。フレーム2は、例えば全体形状が直方体や立方体状を有するように組み立てられる。フレーム2の内部に造形テーブル3、昇降装置4、スライド機構5、ヘッドユニット6、ヘッド移動機構7、及び押圧ローラユニット8が収容される。なお、フレーム2の複数の開口面を塞ぐ複数の壁部を設置してもよい。これらの壁部の少なくとも一部は、開閉可能な扉を有することができる。扉によって、フレーム2の内部で形成された造形体をフレーム2の外部に容易に取り出すことができる。一例において、フレーム2は、処理室を囲うケーシングを含む。ケーシングは、フレーム2の開口面を塞ぐ。ケーシングは、必要に応じて室内の環境を制御する環境制御ユニット(不図示)を備えることができる。例えば、環境制御ユニットは、フレーム2の内部空間を加熱する機構を有してもよい。例えば、フレーム2の内部空間が加熱された状態で造形体を形成することで、造形体の反りを抑制するなど、造形体に対する熱影響を制御できる。
【0020】
造形テーブル3は、ヘッドユニット6の下方に配置されている。一例において、造形テーブル3は、上面がフィラメントFの吐出ターゲット面である平板状の部材(ベースプレート、ベッド)を有する。他の例において、造形テーブル3は、別の形状を有することができる。一例において、造形テーブル3は、昇降装置4によってZ方向に移動可能(昇降可能)である。また、造形テーブル3は、スライド機構5によってX方向に移動可能である。例えば、造形テーブル3は、ヘッドユニット6の真下の位置から、押圧ローラユニット8の真下の位置まで移動可能である。他の例において、造形テーブル3の動きは任意に設定可能である。
【0021】
造形テーブル3は、加熱装置(ヒータ)を有してもよい。例えば、造形テーブルにヒータが内蔵されることで、ヒータを用いて造形テーブル3上のフィラメントFを加熱することができる。フィラメントFが配置される造形テーブル3の一面が加熱されることで、造形テーブル3上のフィラメントFの状態を制御する(例えば、硬化を抑制する)ことができる。造形テーブル3の加熱装置として、プレートヒータ、面ヒータ等の他、造形テーブル3上の樹脂の温度を制御可能な様々な機構が適用可能である。
【0022】
昇降装置4は、造形テーブル3を下方から支持する。昇降装置4は、制御装置9の制御に基づいて、造形テーブル3をZ方向に移動させる。一例において、昇降装置4は、造形テーブル3を昇降させる動力を発生するシリンダ装置あるいはモータ等を備える。造形テーブル3が上下動自在であることによって、ヘッドユニット6のノズル64と造形テーブル3との距離(及び相対位置関係)が自在に調整可能である。
【0023】
スライド機構5は、昇降装置4を下方から支持する。スライド機構5は、制御装置9の制御に基づいて、昇降装置4をX方向に移動させる。一例において、スライド機構5は、昇降装置4を水平移動させる動力を発生するアクチュエータや、昇降装置4の移動を案内するリニアガイド等を備える。昇降装置4が移動されることで造形テーブル3がX方向に移動される。スライド機構5は、昇降装置4を介して、造形テーブル3をX方向に移動させる。
【0024】
例えば、スライド機構5は、造形テーブル3上にフィラメントFの材料層が形成されると、材料層を押圧ローラユニット8で押圧可能な位置まで造形テーブル3を移動させる。スライド機構5は、フィラメントFの材料層を押圧する処理に際し、造形テーブル3をヘッドユニット6の下方から押圧ローラユニット8の下方まで移動させる。
【0025】
ヘッドユニット6は、フィラメントFを造形テーブル3の造形面に向けて吐出する。ヘッドユニット6は、ヘッド移動機構7に上方から支持されている。また、ヘッドユニット6は、ヘッド移動機構7によってX方向及びY方向に移動可能である。一例において、ヘッドユニット6は、制御装置9の制御に基づいて、フィラメントFをボビン50から引き出すと共に、フィラメントFを加熱して軟化させてから吐出する。
【0026】
ヘッドユニット6は、一対のフィラメント駆動ローラ61と、フィラメント駆動ローラ61を駆動するモータ62とを有している。一例において、モータ62として、ステッピングモータを用いることができる。他の例において、モータ62として、サーボモータ等の他の駆動手段を用いることができる。モータ62は、フィラメント駆動ローラ61を任意の速度で駆動するように構成される。一例において、ヘッドユニット6は、フィラメントFを切断する不図示の切断装置を備えている。例えば、切断装置は、フィラメントFにおける樹脂要素と繊維要素との両方を切断することができる。フィラメントFを配置する層を変更する等の所定のタイミングにおいて、ヘッドユニット6は、切断装置でフィラメントFを切断する。他の例において、ヘッドユニット6は、フィラメントFを分断する他の手段を備えることができる。
【0027】
一例において、フィラメント駆動ローラ61は、周方向と直交する方向に延びるフィラメント保持溝が形成された外周面を有するタイヤ形状のローラである。一対のフィラメント駆動ローラ61は、フィラメントFを挟持可能な位置に配置されている。各々のフィラメント駆動ローラ61の回転速度は、ヘッドユニット6から吐出されるフィラメントFの量に応じて、制御装置9によって制御される。
【0028】
ヘッドユニット6は、フィラメントFを加熱するフィラメント加熱装置63と、フィラメントFを吐出するノズル64とを備える。フィラメント加熱装置63は、フィラメント駆動ローラ61の下方に配置されている。一例において、フィラメント加熱装置63は、ノズル64の周囲を覆うように配置されている。フィラメント加熱装置63は、フィラメントFを加熱する。フィラメントFは、フィラメント加熱装置63で加熱されることで軟化する。フィラメント加熱装置63は、例えば、カートリッジヒータやアルミ箔ヒータを用いることができる。フィラメント加熱装置63の加熱方法としては、例えば、電気ヒータ(面ヒータ、プレートヒータ、アルミ箔ヒータ、カートリッジヒータ)、高周波加熱、誘導加熱、超音波加熱、レーザ加熱などが挙げられる。
【0029】
ノズル64は、フィラメント駆動ローラ61の下方に配置されている。一例において、ノズル64は、筒状に形成されている。フィラメント駆動ローラ61から送り出されるフィラメントFがノズル64の内部に供給される。ノズル64は様々な形状を適用可能である。ノズル64には、フィラメントFを射出する開口(ノズル開口、出口開口)が設けられている。ノズル開口は、射出するフィラメントFの太さに応じて設定される。例えば、ノズル64を別のノズルに交換することで、ノズル開口を変更することができる。追加的及び/又は代替的に、複数のノズル64を1つのヘッドユニット6に設けることができる。ヘッドユニット6における入口(入口ポート)の数と出口(出口ポート)の数は同じでもよく異なってもよい。
【0030】
ヘッド移動機構7は、ヘッドユニット6をY方向と交差する方向(例えば、X方向及びY方向)に移動させる機構である。一例において、ヘッド移動機構7は、X軸駆動装置71と、Y軸駆動装置72とを備える。X軸駆動装置71は、制御装置9の制御に基づいて、ヘッドユニット6をX方向に移動させる。Y軸駆動装置72は、制御装置9の制御に基づいて、ヘッドユニット6をY方向に移動させる。つまり、ヘッド移動機構7は、制御装置9の制御に基づいて、ヘッドユニット6をX方向及びY方向に二次元的に移動させる。ヘッド移動機構7は、様々なタイプを適用可能である。一例において、ヘッド移動機構7は、ロボットアームを有することができる。ロボットアームを用いて、ヘッドユニット6が造形テーブル3と平行な面に沿って移動可能である。別の一例において、ヘッド移動機構7は、ヘッドユニット6を三次元に移動可能、あるいは6自由度(X、Y、Z、θX、θY、θZ)に移動可能に構成できる。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向におけるヘッドユニット6と造形テーブル3との相対的な位置関係に加え、傾き及び回転角度の少なくとも一部に関する姿勢が調整可能となるように、ヘッド移動機構7を構成できる。
【0031】
押圧ローラユニット8は、造形テーブル3上のフィラメントFを加熱かつ押圧可能なユニットである。一例において、押圧ローラユニット8は、
図1に示すように、ノズル64を有するヘッドユニット6と別体で設けられている。押圧ローラユニット8は、ヘッドユニット6のフィラメント加熱装置63及び造形テーブル3に設けられた加熱装置とは別の加熱装置として、造形テーブル3上のフィラメントFを加熱する機構を備えている。
【0032】
押圧ローラユニット8は、加熱ローラ81(押圧部)と、軸受部82と、支持部83とを備えている。例えば、加熱ローラ81は、円柱形状に形成されており、造形テーブル3の造形面(上面)と平行な軸芯を中心として回転可能に支持されている。一例において、加熱ローラ81は、Y方向と平行な軸芯を中心として回転可能に支持されている。すなわち、加熱ローラ81の軸芯がY方向と平行である。他の例において、加熱ローラ81の軸芯がY方向と非平行に設定できる。例えば、加熱ローラ81の軸芯をX方向と平行としてもよいし、加熱ローラ81の軸芯をX方向及びY方向に対して傾くようにしてもよい。他の例において、加熱ローラ81のローラ本体の形状は、円柱形状以外の形状を有することができる。また、加熱ローラ81は、ローラ本体が実質的に回転しない構成であってもよい。
【0033】
加熱ローラ81は、ローラ本体と、ローラ本体の内部に配置されたヒータを有する。一例において、加熱ローラ81のヒータは、制御装置9の制御に基づいて発熱する。加熱ローラ81は、フィラメントF(材料層)を加熱かつ押圧する。加熱ローラ81は、両端部が軸受部82に軸支されている。加熱ローラ81の加熱手段としては、例えば、電気ヒータ(カートリッジヒータ、ヒートロール)、高周波加熱手段、誘導加熱手段、超音波加熱手段、レーザ加熱手段などが挙げられる。
【0034】
一例において、加熱ローラ81は、造形テーブル3のX方向に移動に伴って従動回転される。つまり、加熱ローラ81の周面が造形テーブル3上のフィラメントFに接触した状態で造形テーブル3がX方向に移動されることで、加熱ローラ81は、軸芯を中心として回転する。他の例において、押圧ローラユニット8は、加熱ローラ81を回転駆動する駆動部を備えることができる。このような駆動部を備える場合には、例えば、造形テーブル3のX方向への移動速度に応じて、加熱ローラ81の回転速度が調整される。
【0035】
一例において、加熱ローラ81は、ノズル64よりも高い温度に設定可能である。例えば、フィラメントFを押圧(圧縮)する際、加熱ローラ81(加熱ローラ81の表面)は、制御装置9の制御に基づいて、ノズル64よりも高い温度に加熱される。造形テーブル3上に吐出されたフィラメントFは、ノズル64から離れることで温度が低下して粘度が高くなる。加熱ローラ81は、冷えたフィラメントFに接触することで冷却される。加熱ローラ81の温度がノズル64の温度と同一である場合には、フィラメントFがノズル64からの吐出時と同じ温度まで昇温しない可能性がある。これに対して、上述のように加熱ローラ81をノズル64の設定温度よりも高い温度に設定することで、造形テーブル3上のフィラメントFの温度を、吐出時と同程度又はそれ以上に高めることができる。
【0036】
加熱ローラ81の設定温度は、ノズル64よりも高い温度に限定されず、任意に設定可能である。加熱ローラ81の設定温度は、例えば、ノズル64の設定温度に対して、-150℃~+150℃の範囲であり、約-150、-140、-130、-120、-110、-100、-90、-80、-70、-60、-50、-40、-30、-20、-10、0、+10、+20、+30、+40、+50、+60、+70、+80、+90、+100、+110、+120、+130、+140、又は+150℃である。加熱ローラ81の温度は、フィラメントFの材質、目標造形物の仕様、処理速度等に応じて設定される。加熱ローラ81の設定温度は、上記範囲外の値でもよい。
【0037】
図3は、加熱ローラ81と造形テーブル3との関係を模式的に示す斜視図であり、加熱ローラ81と造形テーブル3との比較を示す。
図3に示すように、加熱ローラ81の軸芯Lに沿った方向(Y方向)の長さ寸法をd1とする。また、造形テーブル3上のフィラメントFの配置可能領域RのY方向の長さ寸法(軸芯Lに沿った方向の長さ)をd2とする。一例において、加熱ローラ81の長さ寸法d1は、造形テーブル3の配置可能領域Rの長さ寸法d2よりも大きく設定される。この場合、造形テーブル3をX方向に移動させることで、Y方向に移動させることなく造形テーブル3上のフィラメントFの全体を加熱ローラ81で押圧することが可能である。造形テーブル3と加熱ローラ81との間の相対移動(Z方向と交差する方向の相対移動、圧縮モード移動)により、材料層FLの実質的な表面全体に対して押圧処理が実行される。一例において、加熱ローラ81の実質的な長さが材料層(圧縮ターゲット層)FLの幅に比べて大きく設定され、1回の相対移動によって材料層FLの実質的な表面全体に対して押圧処理が実行される。他の例において、加熱ローラ81の実質的な長さが材料層(圧縮ターゲット層)FLの幅に比べて大きく設定され、複数回の相対移動によって材料層FLの実質的な表面全体に対して押圧処理が実行される。別の例において、加熱ローラ81の実質的な長さが材料層(圧縮ターゲット層)FLの幅に比べて小さく設定され、複数回の相対移動によって材料層FLの実質的な表面全体に対して押圧処理が実行される。さらに別の例において、複数の加熱ローラ81を用いた相対移動によって、材料層(圧縮ターゲット層)FLの実質的な表面全体に対して押圧処理が実行される。
【0038】
一例において、加熱ローラ81の周面(外周面)に所定の機能性を付与する表面処理が施される。表面処理の付与機能としては、例えば、撥液性、密着性、離形性、耐薬品性、耐熱性、耐候性、耐食性、硬度、耐摩耗性、潤滑性、熱伝導性などが挙げられる。表面処理としては、例えば、めっき処理、化学処理、膜形成処理、コーティング処理、表面加工処理などが挙げられる。例えば、加熱ローラ81の本体の周面(外周面)に、微細な凹凸及び/又は溝を形成してもよい。例えば、加熱ローラ81の本体の周面(外周面)を樹脂コーティング(例えば、フッ素コーティング)してもよい。表面処理により、例えば、軟化されたフィラメントFの付着が抑制される。なお、このような表面処理は、ノズル64に対しても行ってもよい。
【0039】
図1に戻り、軸受部82は、加熱ローラ81を軸支する。軸受部82は、加熱ローラ81の両端部の各々に対して設けられている。これらの軸受部82は、支持部83を介して、フレーム2に支持されている。
【0040】
支持部83は、軸受部82を介して、加熱ローラ81を支持する。例えば、支持部83は、各々の軸受部82に対して設けられた複数のユニットが固定部(フレーム2等)に分けて取り付けられた構成を有する。あるいは、支持部83は、複数の軸受部82に対して設けられた1つのユニットが固定部(フレーム2等)に取り付けられた構成を有する。支持部83は、加熱ローラ81の支持位置を調整する位置調整機構を有することができる。例えば、支持部83は、加熱ローラ81の軸の6自由度(X、Y、Z、θX、θY、θZ)のうちの少なくとも1つを調整可能に構成できる。一例において、支持部83は、加熱ローラ81の姿勢を三次元に移動可能、あるいは6自由度(X、Y、Z、θX、θY、θZ)に移動可能に構成できる。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向における加熱ローラ81と造形テーブル3との相対的な位置関係に加え、傾き及び回転角度の少なくとも一部に関する姿勢が調整可能となるように、位置調整機構を構成できる。例えば、各々の支持部83は、上下方向(Z方向)に伸縮可能であってもよい。各々の支持部83が上下方向に伸縮可能であることで、加熱ローラ81のZ方向の位置及び/又は姿勢(軸の傾き等)を調整することができる。支持部83は、例えばシリンダユニットを備えることで、上下方向に伸縮可能となる。例えば、位置調整機構により、造形テーブル3と加熱ローラ81との間の相対移動の方向に対する加熱ローラ81の軸の傾き(例えば、θX及び/又はθZ)が制御される。
【0041】
制御装置9は、昇降装置4と、スライド機構5と、ヘッドユニット6と、ヘッド移動機構7と、押圧ローラユニット8とを制御する。例えば、制御装置9は、ヘッドユニット6が昇降するように、昇降装置4を制御する。また、制御装置9は、造形テーブル3がX方向に移動するように、スライド機構5を制御する。また、制御装置9は、ヘッドユニット6を制御することで、フィラメントFを加熱するとともに、ノズル64からフィラメントFを吐出する。また、制御装置9は、ヘッドユニット6が移動するように、ヘッド移動機構7を制御する。また、制御装置9は、押圧ローラユニット8を制御することで、加熱ローラ81を昇温させる。
【0042】
また、制御装置9は、加熱ローラ81でフィラメントFを押圧する際、造形テーブル3が押圧ローラユニット8の下方に移動するように、スライド機構5を制御する。造形テーブル3に対して、フィラメントFの層が積み重なることで造形体が形成される。
【0043】
図2(a)に示すように、制御装置9は、フィラメントFをプリントパスに沿って造形テーブル3上に連続的に配置し、シート状の材料層FLを形成する。例えば、ヘッドユニット6が造形テーブル3に対してX方向及びY方向に相対的に移動するとともに、ヘッドユニット6から第1層のためのフィラメントFが吐出される。一例において、1つの層に対するプリントパスは、第1延在部(第1線要素)と、第2延在部(第2線要素)と、第1延在部と第2延在部との間の折り返し部(第3線要素、湾曲部、屈曲部、中間部)とを有する。第1延在部は、主に第1向きのヘッドユニット6の第1移動(第1相対移動、第1向きプリント移動)に対応する。第2延在部は、第1向きとは逆である、主に第2向きのヘッドユニット6の第2移動(第2相対移動、第2向きプリント移動)に対応する。要素エリアの一例において、第1延在部と第2延在部とが互いに隣接する。要素エリアの他の例において、複数の第1延在部が互いに隣接する、又は複数の第2延在部が互いに隣接する。折り返し部は、第1移動と第2移動との間のヘッドユニット6の遷移動き(折り返し移動)に対応する。例えば、折り返し部は、湾曲形状、折り曲げ形状を含む。第1層の形成が完了すると、造形テーブル3がヘッドユニット6から離れるように移動し、第1層の上に第2層を形成する工程が実行される。例えば、ヘッドユニット6が造形テーブル3に対してX方向及びY方向に相対的に移動するとともに、ヘッドユニット6から第2層のためのフィラメントFが吐出される。
【0044】
図2(b)に示すように、制御装置9は、造形体形成のためのフィラメントFの積層過程の途中で、材料層FLを加熱ローラ81で圧縮する。制御装置9は、加熱ローラ81が造形テーブル3上のフィラメントF(材料層FL)を圧縮するように、押圧ローラユニット8を制御する。
【0045】
一例において、制御装置9は、1層(単層)ごとに、圧縮処理を行う。すなわち、第1層からなる第1材料層FLが形成された後、第2層の形成の前に、第1材料層FLに対して圧縮処理が行われる。また、第2層からなる第2材料層FLが形成された後、第3層の形成の前に、第2材料層に対して圧縮処理が行われる。例えば、フィラメントFの押圧量(圧縮量)は、加熱ローラ81から造形テーブル3の造形面の距離に基づいて設定される。一例において、押圧量は、ヘッドユニット6から吐出されたフィラメントFの直径(一層の厚み)に対して、5%~95%に設定される。例えば、フィラメントFの直径が0.2mmである場合には、押圧量は、約0.01mm~0.19mmに設定される。一例において、押圧量は、ヘッドユニット6から吐出されたフィラメントFの直径(一層の厚み)に対して、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95%に設定される。他の例において、押圧量は、上記以外の値に設定可能である。一例において、制御装置9は、押圧量の調整のために、押圧ローラユニット8の支持部83の位置調整機構を制御する、及び/又は造形テーブル3のZ方向の位置を調整する。
【0046】
別の例において、制御装置9は、複数層ごとに、圧縮処理を行う。すなわち、複数層からなる第1材料層FLが形成された後、次の層の形成の前に、第1材料層FLに対して圧縮処理が行われる。また、複数層からなる第2材料層FLが形成された後、次の層の形成の前に、第2材料層FLに対して圧縮処理が行われる。一例において、押圧量は、複数層からなる材料層FLに対して、5%~95%に設定される。例えば、押圧量は、材料層(マルチ層)FLの厚みに対して、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95%に設定される。他の例において、押圧量は、上記以外の値に設定可能である。
【0047】
続いて、このような三次元プリンティング装置1の動作(三次元プリンティング方法)の例について説明する。
【0048】
制御装置9の記憶部又は外部の記憶部に、目標造形物の形状データがインプットされる。一例において、形状データは三次元データ(三次元モデルデータ)であり、制御プログラムによってスライスされ、二次元データを積層したものに変換される。さらに、制御プログラムによって、各層の二次元データにおけるプリント行程が決定される。制御プログラムは、決定された二次元データに基づいて、ノズル64の走行経路(プリントパス)を決定する。制御装置9は、スライド機構5を制御し、造形テーブル3がヘッドユニット6の下方に位置するように、造形テーブル3を移動する。制御装置9は、昇降装置4を制御し、造形テーブル3のZ方向の位置を調整する。例えば、制御装置9は、ヘッドユニット6から造形テーブル3の造形面までの距離がフィラメントFの吐出に適した距離となるように、昇降装置4を制御する。
【0049】
制御装置9は、ノズル64からフィラメントFが吐出されるように、ヘッドユニット6を制御する。ボビンBに巻回されたフィラメントFは、フィラメント駆動ローラ61によってボビン50から引き出され、フィラメント駆動ローラ61の下方に送られる。フィラメント駆動ローラ61の下方に送られたフィラメントFは、ノズル64に供給される。ノズル64に供給されたフィラメントFは、フィラメント加熱装置63によって加熱されて軟化される。軟化されたフィラメントFは、ノズル64から下方に吐出され、造形テーブル3上に配置される。
【0050】
制御装置9は、フィラメントFが吐出した状態において、ヘッド移動機構7を制御してヘッドユニット6を移動させる。制御装置9は、造形体の二次元データに基づいて、ヘッド移動機構7を介してヘッドユニット6(ノズル64)をX方向及びY方向を含む面に沿って移動させる。
【0051】
造形体は、フィラメントFをZ方向に複数層積層することで形成される。制御装置9は、複数の層を順次形成する。制御装置9は、ヘッド移動機構7を制御し、ヘッドユニット6をZ方向と交差する方向(例えばX方向及びY方向)に移動させる。ヘッドユニット6から連続的に吐出されるフィラメントFが造形テーブル3上に配置され、1つの層が形成される。
【0052】
制御装置9は、1つの層が形成されると、ヘッドユニット6を制御してフィラメントFの吐出を停止し、造形テーブル3を押圧ローラユニット8の下方に移動する。押圧ローラユニット8の加熱ローラ81は、造形テーブル3に配置されたフィラメントFの材料層FLのうち最も上層部を押圧可能な位置に配置される。制御装置9は、造形テーブル3を押圧ローラユニット8の下方に移動させる。制御装置9は、スライド機構5を制御し、造形テーブル3をX方向に移動させる。
図4に示すように、フィラメントFの材料層FLが加熱ローラ81で押圧される。
【0053】
また、制御装置9は、加熱ローラ81でフィラメントFの材料層FLを押圧する際、加熱ローラ81を加熱する。加熱ローラ81が加熱されることで、フィラメントFの材料層FLが加熱される。例えば、ノズル64から吐出された後に温度が下がることで硬化したフィラメントFが加熱されて再度軟化される。フィラメントFが軟化された状態で押圧されることで、例えば、隣接するフィラメントFの途中部位同士の周面の接着性が向上する。制御装置9は、フィラメント(プリント材料)Fの複数の線要素が横方向において互いに圧着されるように、フィラメントFの材料層FLに対して加熱ローラ81を押圧する。ここで、横方向は、1つの層の所定の領域(要素エリア、セグメント)においてZ方向及びフィラメントFの軸方向と交差する方向であり、1つの層のフィラメントFにおける、隣接する複数の線要素が並ぶ方向である。なお、必要に応じて、最も下層のフィラメントFの押圧により、最も下層のフィラメントFと造形テーブル3との接着性を向上させることができる。
【0054】
制御装置9は、昇降装置4を制御して造形テーブル3を下降させる。例えば、一層の厚み分だけ造形テーブル3が下降する。制御装置9は、スライド機構5を制御し、造形テーブル3を再びヘッドユニット6の下方に移動させる。制御装置9は、ヘッドユニット6を制御し、先に造形テーブル3上に配置されたフィラメントFに積層するように、新たなフィラメントFを吐出させる。制御装置9は、新たな層がフィラメントFによって形成されると、再び押圧ローラユニット8によってフィラメントFの層を押圧する。制御装置9は、フィラメント(プリント材料)Fの複数の線要素が横方向において互いに圧着されるように、また、フィラメント(プリント材料)Fの複数の線要素が積層方向において互いに圧着されるように、フィラメントFの材料層FLに対して加熱ローラ81を押圧する。
【0055】
このような動作を繰り返すことで、加熱されたフィラメントFが造形テーブル3上に複数層に積層され、造形体が形成される。各層は、加熱ローラ81を用いて、フィラメントFの積層途中に押圧処理(熱圧縮)が施されている。
【0056】
図5は、フィラメントFの層の断面を模式的に示す図であり、(a)が押圧されていない状態を示し、(b)が押圧された状態を示す。
図5(a)に示すように、非押圧状態では、フィラメントFの途中部位同士の間(線要素の間)に空隙Kが発生する傾向にある。このような空隙Kは、造形体の剛性等の低下を招き、造形体の力学特性を低下させる要因となる。
【0057】
一方で、押圧された状態では、
図5(b)に示すように、フィラメントFが潰れるなどにより線要素の断面形状が変化し、隣接する線要素の樹脂同士が少なくとも部分的に結合する。その結果、フィラメントFの途中部位同士の間(線要素の間)の空隙Kが減少する又は消失する。空隙Kの減少は、造形体の剛性等の造形体の力学特性の向上に有利である。
【0058】
一般に、フィラメントFが繊維を含む場合、プリントパスにおける特に湾曲部分において繊維のねじれ等の特有の現象が発生しやすい。
図2(b)に示すように、制御装置9は、少なくとも部分的にプリントパスと加熱ローラ81の移動向きとが交差するように造形テーブル3と加熱ローラ81との間の相対移動(圧縮モード移動)を行う。例えば、プリントパスの湾曲部等において、プリントパスの延在方向と加熱ローラ81の相対移動方向とが交差する。プリントパスにおける延在部に加え、折り返し部(湾曲部)においても、フィラメントFが確実に熱圧縮される。フィラメントFが繊維を含む場合でも、材料層FLにおける隣接する線要素の樹脂同士が確実に結合する。これは、繊維含有の造形体の力学特性の向上に有利である。
【0059】
以上のような本実施形態の三次元プリンティング装置1は、ノズル64と、造形テーブル3と、加熱ローラ81と、制御装置9とを備えている。ノズル64は、加熱されたフィラメントFを連続的に吐出する。造形テーブル3は、ノズル64から吐出されたフィラメントFが複数層に積層される。加熱ローラ81は、造形テーブル3上のフィラメントFを加熱かつ押圧可能である。また、加熱ローラ81は、ノズル64と別体に設けられている。制御装置9は、フィラメントFを積層途中にて加熱ローラ81に造形テーブル3上のフィラメントFを押圧させる。
【0060】
このような三次元プリンティング装置1によれば、フィラメントFの積層途中でフィラメントFが加熱かつ押圧される。このため、造形テーブル3上のフィラメントFが軟化された状態で押圧され、フィラメントFの途中部位同士の間の空隙が減少する。さらに、フィラメントFの途中部位同士の接着性が向上する。したがって、本実施形態の三次元プリンティング装置1によれば、造形体の力学的特性が向上する。
【0061】
また、本実施形態の三次元プリンティング装置1においては、加熱ローラ81がノズル64と別体で設けられている。このような加熱ローラ81は、ノズル64から切り離して、造形テーブル3に対して相対移動させることができる。このため、加熱ローラ81をノズル64に追従させて移動させる必要がない。また、加熱ローラ81の位置を考慮しながらノズル64を移動させる必要がない。このため、制御を簡素化することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態の三次元プリンティング装置1においては、先に形成された層に次の層を形成するフィラメントFを吐出する前に、加熱ローラ81によって先に形成された層が加熱される。このため、先に形成された層が冷えている場合と比較して、先に形成された層と、新たに吐出するフィラメントFとの接着性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態の三次元プリンティング装置1においては、押圧部として、加熱ローラ81を用いる。例えば、加熱ローラ81は、円柱形状に形成されており、造形テーブル3の上面と平行な軸芯を中心として回転可能に支持されている。このような本実施形態の三次元プリンティング装置1によれば、造形テーブル3と加熱ローラ81とを相対的に移動させることで、容易に造形テーブル3上のフィラメントFを押圧することができる。
【0064】
また、本実施形態の三次元プリンティング装置1において、加熱ローラ81は、軸芯に沿った方向の長さ寸法d1が、造形テーブル3上のフィラメントFの配置可能領域Rの軸芯に沿った方向の長さ寸法d2よりも大きい。このような本実施形態の三次元プリンティング装置1によれば、加熱ローラ81を軸芯に沿った方向に移動させることなく、造形テーブル3上のフィラメントFを押圧することができる。
【0065】
また、本実施形態の三次元プリンティング装置1において、加熱ローラ81は、フィラメントFを押圧する場合に、ノズル64におけるフィラメントFの加熱温度よりも高い温度に昇温される。このような本実施形態の三次元プリンティング装置1によれば、加熱ローラ81をノズル64よりも高い温度に加熱することで、造形テーブル3上のフィラメントFの温度を吐出温度又はそれ以上に高めることができる。このため、フィラメントFを十分に軟化させた状態で押圧することができ、より確実にフィラメントFの途中部位同士の間の空隙を減少させることができる。
【0066】
また、本実施形態の三次元プリンティング方法は、加熱されたフィラメントFを造形テーブル3上に複数層に積層して造形体を形成する。また、本実施形態の三次元プリンティング方法は、フィラメントFを吐出するノズル64と別体の加熱ローラ81を加熱し、加熱した加熱ローラ81を用いて、造形テーブル3上のフィラメントFを積層途中にて押圧する。このような本実施形態の三次元プリンティング方法によれば、フィラメントFの積層途中でフィラメントFが加熱かつ押圧される。このため、吐出後のフィラメントFが軟化された状態で押圧され、フィラメントFの途中部位同士の間の空隙を減少させることができる。さらに、フィラメントFの途中部位同士の接着性を向上させることができる。したがって、本実施形態の三次元プリンティング方法によれば、造形体の力学的特性を向上させることが可能となる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態においては、加熱ローラ81にて所定の押圧量を一度に押圧する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図6に示すように、フィラメントFを複数回に分けて押圧し、これによって所定の押圧量を押圧するようにしてもよい。フィラメントFを複数回に分けて押圧することで、フィラメントFの急激な変位を抑制しながら、フィラメントFを押圧することができる。繰り返し回数は任意に設定可能である。また、複数の押圧工程において、加熱ローラ81の温度を変化させてもよい。一例において、第1ターゲット温度において材料層FLを加熱ローラ81で圧縮する。その後、第1ターゲット温度と異なる第2ターゲット温度において材料層FLを加熱ローラ81で圧縮する。さらにその後、第1ターゲット温度及び第2ターゲット温度と異なる第3ターゲット温度において材料層FLを加熱ローラで圧縮する。一例において、第1ターゲット温度が第2ターゲット温度より高く、第2ターゲット温度が第3ターゲット温度より高い。別の例において、第1ターゲット温度が第2ターゲット温度より低く、第2ターゲット温度が第3ターゲット温度より低い。さらに別の例において、第1ターゲット温度が第2ターゲット温度より高く、第2ターゲット温度が第3ターゲット温度より低い。上記に限定されず、温度変化は任意に設定可能である。
【0069】
また、例えば、
図7に示すように、加熱ローラ81に表面に付着したフィラメントFを除去するためのスクレーパ10を設けてもよい。スクレーパ10を設けることで、フィラメントFが加熱ローラ81に付着した場合であっても、加熱ローラ81の表面からフィラメントFを除去することができる。
【0070】
また、上記実施形態においては、加熱ローラ81でフィラメントFを押圧する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図8に示すように、加熱可能な押圧板11を用いてフィラメントFを押圧するようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、造形テーブル3をフィラメントFと同一の材料を含むものとしてもよい。例えば、造形テーブル3をフィラメントFの樹脂部と同一材料と形成してもよい。このように、造形テーブル3がフィラメントFと同一材料で形成することで、フィラメントFの造形テーブルに対する接着性が向上する。このため、安定期に造形体を形成することができる。なお、造形テーブル3の全体をフィラメントFと同一材料で形成せずに、造形テーブル3の表層のみをフィラメントFと同一材料で形成してもよい。つまり、造形テーブル3の少なくとも表面がフィラメントFと同一の材料を含めばよい。このような場合には、例えば、造形体が形成された後に、造形体と造形テーブル3とを切断する処理が行われる。
【0072】
また、上記実施形態では、フィラメントFのみを造形テーブル3上に配置する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、フィラメントFを支持するサポート材を造形テーブル3上に配置してもよい。このようなサポート材は、ヘッドユニット6から吐出することができる。また、サポート材の吐出専用のヘッドユニットを、フィラメントFを吐出するヘッドユニット6と別に設けてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、造形テーブル3をX方向及びZ方向に移動可能とし、ヘッドユニット6をX方向及びY方向に移動可能とする構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ヘッドユニット6をZ方向に移動可能としてもよい。また、例えば、造形テーブル3をY方向に移動可能としてもよい。また、加熱ローラ81をX方向やZ方向に移動可能としてもよい。
【0074】
図9に示す変形例において、押圧ローラユニット8は、複数の加熱ローラ81A、81B、81C、81Dを有する。複数の加熱ローラ81A、81B、81C、81Dと造形テーブル3との間の相対移動(圧縮モード移動)が実行される。複数の加熱ローラ81A、81B、81C、81Dのうちの2以上の加熱ローラ8が実質的同時に材料層FLに押圧される。複数の加熱ローラ81A、81B、81C、81Dの高さ位置(Z位置)は、任意に調整される。一例において、複数の加熱ローラ81A、81B、81C、81Dの高さ位置(Z位置)が実質的同じに設定される。別の例において、加熱ローラ81Aが造形テーブル3から比較的離れた高さ位置に設定され、加熱ローラ81Dが造形テーブル3に比較的近い高さ位置に設定され、加熱ローラ81B、81Cがその中間位置に設定される。複数の加熱ローラ81A、81B、81C、81Dの温度は、任意に調整される。例えば、第1ターゲット温度において材料層FLが1つの加熱ローラ8で圧縮され、第1ターゲット温度と異なる第2ターゲット温度において材料層FLが別の加熱ローラで圧縮される。一例において、複数の加熱ローラ81A、81B、81C、81Dのターゲット温度が実質的同じに設定される。別の例において、加熱ローラ81Aのターゲット温度が最も高く設定され、加熱ローラ81Dのターゲット温度が最も低く設定され、加熱ローラ81B、81Cのターゲット温度が中間温度に設定される。複数の加熱ローラ81A、81B、81C、81Dに対する表面処理は、任意に調整される。一例において、複数の加熱ローラ81A、81B、81C、81Dに対して同じ表面処理が施されている。別の例において、1つの加熱ローラ8に対して第1表面処理が施され、別の加熱ローラに対して第1表面処理と異なる第2表面処理が施される。例えば、第1表面特性を有する1つの加熱ローラ8の第1接触面で材料層FLが圧縮され、第1表面特性と異なる第2表面特性を有する別の加熱ローラの第2接触面で材料層FLが圧縮される。
【0075】
図10に示す変形例において、押圧ローラユニット8は、互いに異なる外径を有する複数の加熱ローラ81E、81Fを有する。複数の加熱ローラ81E、81Fと造形テーブル3との間の相対移動(圧縮モード移動)が実行される。例えば、第1外径を有する1つの加熱ローラ81Eの第1接触面で材料層FLが圧縮され、第1外径と異なる第2外径を有する加熱ローラ8Fの第2接触面で材料層FLが圧縮される。
【0076】
図11に示すように、プリントパスに対する加熱ローラ81の相対移動方向(圧縮パスの方向)は任意に調整される。熱圧縮時における、フィラメント(プリント材料)Fのプリントパスの主延在方向と相対移動の方向(圧縮パスの方向)との間の角度が制御される。
図11(a)に示す例において、プリントパスの主延在方向と圧縮パスの方向とが実質的に同じである。
図11(b)に示す例において、プリントパスの主延在方向と圧縮パスの方向との間に所定の角度(圧縮パスの傾き)θ1が設定されている。圧縮パスの傾きは、任意に設定可能である。例えば、圧縮パスの傾きθ1は、約0、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、又は90°である。
【0077】
図12に示す変形例において、押圧ローラユニット8は、ローラ本体が円柱形状以外の形状を有する加熱ローラ81を備える。一例において、加熱ローラ81は、少なくとも一部が球面又は湾曲面を有する。材料層FLに対する加熱ローラ81の接触面積が小さく設定されることで、精密な熱圧縮処理が可能となる。制御装置9(
図1)は、ノズル64から供給されたフィラメント(プリント材料)Fをプリントパスに沿って造形テーブル3上に連続的に配置しシート状の材料層FLを形成する第1モードと、第1モードの後に、造形テーブル3と加熱部材(加熱ローラ)81との間の相対移動を行いながら、圧縮パスに沿って材料層FLを加熱ローラ81で圧縮する第2モードとを含む。一例において、加熱ローラ81の圧縮パスが、少なくとも部分的にプリントパスに沿うように設定される。別の例において、加熱ローラ81の圧縮パスが、少なくとも部分的にプリントパスに対して所定の角度となるように、圧縮パスの傾きが設定される。例えば、加熱ローラ81の圧縮パスが、プリントパスと交差する。一例において、加熱ローラ81は、ノズル64(ヘッドユニット6)と別体として設けられる。別の例において、加熱ローラ81は、ヘッドユニット6に取り付けられる。第1モードにおいて、ノズル64を使った材料層FLの形成が実行され、第2モードにおいて、加熱ローラ81を使った材料層FLの熱圧縮が実行される。
【0078】
なお、本明細書で説明した第1部材と第2部材との間の相対移動(例えば、プリントモード移動、圧縮モード移動)は、第2部材に対する第1部材の移動、第1部材に対する第2部材の移動、及び/又は第1部材と第2部材との両方の移動を含むことができる。
【符号の説明】
【0079】
1……三次元プリンティング装置、2……フレーム、3……造形テーブル(テーブル)、4……昇降装置、5……スライド機構、6……ヘッドユニット、7……ヘッド移動機構、8……押圧ローラユニット、9……制御装置(制御部)、10……スクレーパ、11……押圧板(押圧部)、61……フィラメント駆動ローラ、62……モータ、63……フィラメント加熱装置、64……ノズル、71……X軸駆動装置、72……Y軸駆動装置、81……加熱ローラ(押圧部)、82……軸受部、83……支持部、F……フィラメント(造形材料、プリント材料)、100……第1機構、200……第2機構、300……第3機構、K……空隙、L……軸芯、R……配置可能領域
【要約】
三次元プリンティング装置において、ノズル(64)から供給されたプリント材料(F)がプリントパスに沿って配置され、1層からなる又は複数層からなるシート状の材料層(FL)が形成される。テーブル(3)と加熱部材(81)との間の相対移動を行いながら、材料層(FL)が加熱部材(81)で圧縮される。