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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】光学基板のコーティング方法、および窓
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/116 20150101AFI20240322BHJP
   C03C 17/245 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G02B1/116
C03C17/245 Z
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022124541
(22)【出願日】2022-08-04
(62)【分割の表示】P 2018044925の分割
【原出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2022183144
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】15/457,021
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501348092
【氏名又は名称】グッドリッチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー ディー.シュワルツ
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-025996(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1567502(CN,A)
【文献】特開2015-146191(JP,A)
【文献】特開2004-075472(JP,A)
【文献】特開2016-181695(JP,A)
【文献】特開昭54-004395(JP,A)
【文献】米国特許第04395467(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/116
C03C 17/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学基板のコーティング方法であって、
前記光学基板の表面上に、広帯域光透過率を有する半導体コーティングを堆積させ、
前記半導体コーティング上に保護膜を堆積させて、前記半導体コーティングに電子を注入し
前記保護膜の一部を選択的に除去して、前記半導体コーティングの領域を露出させ、
前記半導体コーティングの露出部分をドープし、
前記半導体コーティングのドープされた露出部分をアニールして、前記半導体コーティング内のドーパントを活性化し、拡散させ、
前記保護膜の残りの部分を除去して、光学基板上に半導体コーティングのドープされた部分の空間的に変化するパターンを備えた半導体コーティングを生成する、
ことを備えた、光学基板のコーティング方法。
【請求項2】
前記保護膜が、酸窒化シリコンを備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半導体コーティングが、InおよびZnOからなる群から選択された少なくとも一つの部材を備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記半導体コーティングのドープされていない部分の電気的シート抵抗が、2000Ω/平方インチよりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記保護膜を、プラズマ化学気相堆積法によって堆積させることを備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記保護膜の一部を選択的に除去することが、
前記保護膜上にフォトレジストを堆積させ、
前記フォトレジストの一部を選択的に除去して、前記保護膜の一部を露出させ、
前記保護膜の前記露出部分を選択的に除去する、
ことを備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記保護膜の前記露出部分をフッ化水素酸と接触させることにより、前記保護膜の前記露出部分を選択的に除去することを備えた、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記保護膜の残りの部分の上に堆積された前記フォトレジストの残りの部分を除去することをさらに備えた、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記フォトレジストの残りの部分を除去する前に、前記半導体コーティングの前記露出部分をドープすることを備えた、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記半導体コーティングの前記露出部分をドープする前に、前記フォトレジストの残りの部分を除去することを備えた、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記半導体コーティングのドープ領域の電気抵抗が、100Ω/平方インチ未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記半導体コーティングの前記ドープされた露出部分をアニールすることが、前記半導体コーティングの前記ドープされた露出部分をレーザ放射で加熱することを備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アニールが、真空下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記半導体コーティングの前記露出部分をドープすることが、前記半導体コーティングの前記露出部分に、Sn,Mo,W,Ti,AlおよびGaからなる群から選択された少なくとも一つの原子を導入することを備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記半導体コーティングの前記露出部分を、イオン注入によりドープすることを備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ドーパントの原子が前記半導体コーティングの前記ドープされた露出部分を通して拡散し、前記光学基板に到達するように、前記アニールを行なうことを備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記光学基板と、前記半導体コーティングのドープされた部分の空間的に変化するパターンを備えた前記半導体コーティングと、が研磨されておらず、平坦化されていない窓を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記半導体コーティングのドープされた部分と、前記半導体コーティングのドープされていない部分と、が光散乱を軽減するように屈折率が近似的に整合する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記保護膜のプラズマ化学気相堆積法により、前記半導体コーティング内に過剰な水素を堆積させることをさらに備えた、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記半導体コーティングを水素プラズマ源に曝露することにより、前記半導体コーティング内に過剰な水素を堆積させることをさらに備えた、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学コーティングに関し、より詳細には、導電性光学コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学(EO:Electro-optic)システムは、センサ及び電子装置を外部要素から保護するために窓を必要とする。雨、埃等に加えて、多くの場合、窓は、さらにEOシステム性能を普通なら妨げることになる電磁干渉(EMI:electromagnetic interference)を阻止しなければならない。
【0003】
EMIシールディングは、導電性でかつ光学的に透明である窓によって達成され得る。3つの従来タイプのシールディングが存在する。
【0004】
第1のタイプのEMIシールド式窓(EMI shielded window)は、リン、アルシン、またはアンチモン等のV族元素がドープされたシリコンまたはゲルマニウム等の半導体材料を使用して、更なる電子を供給し、それにより、電気伝導性を付与する。これらの窓は、可視波長について不透明であり、そのため、広帯域EOシステムには有用でない。
【0005】
第2のタイプのシールド式窓は、連続する透明な導電性コーティングを使用する。これらのコーティングは、広帯域光透過性を有する酸化インジウム(In)及び酸化亜鉛(ZnO)等の広いバンドギャップの半導体からなる。半導体はドープされて、電気伝導性を付与する。しかし、ドーピングが増加して電気伝導性及びEMI減衰を増大させるにつれて、光透過率が減少する。この作用は、プラズマ反射及び電子からの自由キャリア吸収が共に透過率を減少させる長波長側から始まる。伝統的な透明で導電性の半導体コーティングは、0.4~2.0ミクロン範囲、短波長可視から短波長赤外(SWIR:short wavelength infrared)においてだけ実用的である。
【0006】
第3のタイプのシールド式窓は、可視から長波赤外(LWIR:long-wave infrared)までの広帯域用途に伝統的に必要とされる。微細金属線のグリッドが、窓の表面上に被着される。典型的な寸法は、140ミクロン間隔を有する5ミクロン幅ラインである。これらのグリッド式窓は、広い波長範囲にわたる光透過率を可能にするが、不明瞭化及び散乱によって光透過率を制限する。
【0007】
特許文献1は、導電性グリッドからの光散乱を低減するための方法を提示する。チャネルが、窓基材内にエッチングされ、電気伝導性の半導体が、窓の表面が平坦になるようにチャネル内に堆積される。半導体は、可視及び短波長赤外(SWIR)波長に対して透過性を有するが、中波長赤外(MWIR:mid wavelength infrared)以上の波長に対して反射性であり、また吸収性である。基材の屈折率に近い屈折率を有する半導体を使用することは、グリッド線からの光散乱を最小にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第9276034号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技法は、その意図される目的のために十分であると考えられてきた。しかし、例えば、広帯域光学部品のための、改善された導電性光学コーティングについての常に存在する必要性がある。本開示は、この問題についての解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
光学基板をコーティングする方法は、光学基板の表面の上に、半導体コーティングを堆積させることを含み、半導体コーティングは広帯域光透過率を有する。半導体コーティングの所定の部分はドープされて、半導体コーティング内に、ドープされた半導体の空間的に変化したパターン(spatially varied pattern)を形成する。本方法は、半導体コーティングの非ドープ領域内の酸素を増加させること、または、半導体コーティングのドープされた領域内の酸素を減少させることのうち少なくとも一方を行うように、アニールすることを含む。
【0011】
半導体コーティングをアニールすることは、半導体コーティングの透明導電性酸化物(TCO)材料の結晶品質を改善するとともに半導体コーティングのドープされた領域内の電気伝導性を増大させるように、所定のパターンにレーザアニールすることを含み得る。
【0012】
半導体コーティングをアニールすることは、ドーパントを活性化して拡散させ、半導体コーティングの非ドープ領域内の酸素を増加させるように、空気中でアニールすることを含み得る。半導体コーティングの所定の部分をドープすることは、
半導体コーティングの上にフォトレジストを塗布することと、
フォトレジストを選択的に露光することと、
フォトレジストを所定のパターンに現像(developing)することと、
フォトレジストの開口部を通して半導体コーティングをドープすることと、
半導体コーティング上に、所定のパターンでドープされた半導体を残すように、フォトレジストを取除くことと、
半導体コーティングの全表面の上に酸窒化シリコンのコーティングを被着させることと、
酸窒化シリコンの上にフォトレジストを塗布し、フォトレジストを露光し、フォトレジストを現像することと、
フォトレジストによって覆われていない酸窒化シリコンの所定の部分を取除き、次に、任意の残りのフォトレジストを取除くことと、を含むことができ、
半導体コーティングをアニールすることは、ドーパントを活性化して拡散させ、半導体コーティングの非ドープ領域内の酸素を増加させるように、空気中で酸窒化シリコン及び半導体コーティングをアニールすることを含む。
【0013】
半導体コーティングをアニールすることが、ドーパントを活性化して拡散させ、半導体コーティングのドープされた領域内の酸素を減少させるように、真空下でアニールすることを含み得ることが同様に企図される。半導体コーティングの所定の部分をドープすることは、
半導体コーティングが非ドープの状態で半導体コーティングの全表面の上に酸窒化シリコンのコーティングを被着させることと、
酸窒化シリコンの上にフォトレジストを塗布し、フォトレジストを露光し、フォトレジストを現像することと、
フォトレジストによって覆われていない酸窒化シリコンの部分を取除くことと、
フォトレジストの開口部を通して半導体コーティングをドープすることと、
半導体コーティング上に、パターン状にドープされた半導体を残すように、フォトレジストを取除くことと、を含んでもよく、
半導体コーティングをアニールすることは、ドーパントを活性化して拡散させ、半導体コーティングのドープされた領域内の酸素を減少させるように、真空中で酸窒化シリコン及び半導体コーティングをアニールすることを含む。
【0014】
半導体コーティングは、InまたはZnOの少なくとも一方を含み得る。空間的に変化したパターンを形成するように半導体コーティングの所定の部分をドープすることは、イオン注入、スピンオンまたはスプレーオン溶液、または他の方法によってドーパントを付与することを含み得る。ドープされた半導体は、Sn、Mo、W、Ti、Al、またはGaの少なくとも1つを含み得る。半導体コーティングは、少なくとも可視及び赤外スペクトルにおいて広帯域光透過率を有し得る。半導体コーティングを堆積させることは、半導体コーティングが非ドープの状態で半導体コーティングを堆積させることを含み得る。半導体コーティングの所定の部分をドープし、半導体コーティングをアニールすることは、半導体コーティングを通して光学基板までドーパント原子を拡散させることを含み得る。半導体コーティングを堆積させることは、光学基板の全体の表面の上に半導体コーティングを堆積させることを含み得る。空間的に変化したパターンを形成するように半導体コーティングの所定の部分をドープすることは、半導体コーティングの表面がその全体をパターンで覆われるように半導体コーティングの表面をドープすることを含み得る。半導体コーティング内にアニールされ活性化されかつドープされた半導体を含む半導体コーティング、及び光学基板は、エッチングなしで、及び/または研磨またはポストプロセス平坦化なしで窓になるよう形成され得る。活性化されかつドープされたの半導体及び半導体コーティングは、パターンからの光散乱を軽減するため近似的に整合した屈折率を有し得る。ドープされた半導体と半導体コーティングとの屈折率の比が0.82と1.22との間である場合、界面反射は、垂直入射で1%未満であることになる。例えば、632.8nmにおけるドープされた及び非ドープのInの屈折率は、それぞれ、約2.00及び1.77である。1.13の屈折率比は、0.37%の反射しか生じない。本方法は、ドープされた半導体を電気伝導性にすることを含み得る。プラズマ化学気相堆積法(PECVD:plasma-enhanced chemical vapor deposition)による酸窒化シリコンプロセスまたは水素プラズマの使用等により、ドープされた半導体に水素を添加して、電子を付加し、欠陥を不活性化(passivate)することによって導電率を増加させ得る。
【0015】
窓(window)は、透明基板であって、コーティングが透明基板の上にある透明基板を含み、コーティングは、透明半導体と透明半導体より低い透明度を有する電気伝導性の半導体の両方で形成されており、電気伝導性の半導体は、透明半導体内で、空間的に変化したパターンにアニールされており、分布している。
【0016】
主題開示のシステム及び方法のこれらの、また他の特徴は、図面と一緒に読まれる好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者により容易に明らかになるであろう。
【0017】
主題開示が関連する当業者が、過度な実験なしで、主題開示の装置及び方法をどのように作製及び使用するかを容易に理解するように、その好ましい実施形態は、本明細書において以下で特定の図を参照して詳細に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示に従って構築される窓または光学部品の例示的な実施形態の概略的な断面立面図であり、光学基板上の半導体コーティングを示す図。
図2図1の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、半導体コーティング上に堆積されたフォトレジスト層を示す図。
図3図2の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、所定の空間的に変化したパターンをなす半導体コーティングのドーピングを可能にするように取除かれた現像されたフォトレジストの部分を示す図。
図4図3の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、取除かれたフォトレジスト及び半導体コーティング内のドープされたパターンを示す図。
図5図4の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、半導体コーティング上に堆積された酸窒化シリコン層を示す図。
図6図5の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、酸窒化シリコン層上に堆積されたフォトレジスト層を示す図。
図7図6の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、現像されたフォトレジスト層及び取除かれた酸窒化シリコンの部分を示す図。
図8図7の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、取除かれたフォトレジストを示す図。
図9図8の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、空気中でのアニールプロセスと、半導体コーティングを通して基板まで拡散したドーパント原子とを示す図。
図10図9の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、半導体コーティング内に電気伝導性のパターンを残すように取除かれた酸窒化シリコンを示す図。
図11図1の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、半導体コーティングが最初に酸窒化シリコンでコーティングされる別の実施形態の方法を示す図。
図12図11の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、酸窒化シリコン上に堆積されたフォトレジスト層を示す図。
図13図12の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、所定の空間的に変化したパターンをなす半導体コーティングのドーピングを可能にするように取除かれた現像されたフォトレジスト及び酸窒化シリコンの部分を示す図。
図14図13の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、取除かれたフォトレジスト及び半導体コーティング内のドープされたパターンを示す図。
図15図14の窓または光学部品の概略的な断面立面図であり、半導体コーティング内に電気伝導性のパターンを形成するための真空中でのアニールプロセスを示し、電気伝導性のパターンは、酸窒化シリコンを取除いた後、図10に示される通りである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、参照が図面に対して行われることになる。図面において、同様の参照符号は、主題開示の同様な構造的特徴または態様を特定する。限定ではなく、説明及び例証のため、本開示による窓または光学部品の例示的な実施形態の部分的な図が図1に示され、全体的に参照文字100で指定される。本開示または本開示の態様による窓または光学部品の他の実施形態は、述べるように、図2~15に提供される。本明細書で述べるシステム及び方法を使用して、光学部品及び窓(windows)用の透明酸化物コーティングの空間制御されたまたは空間的に変化した(spatially varied)電気伝導性を提供し得る。これは、スマート窓用途または任意の他の適した用途のための電磁干渉(EMI)シールディング、空間的に変化したシート抵抗に使用され得る。
【0020】
酸化インジウムスズ(ITO:indium tin oxide)及び酸化アルミニウム亜鉛(AZO:aluminum zinc oxide)等の透明導電性酸化物(TCO:transparent conductive oxide)は、光学的透過性及び電気伝導性を必要とする多種多様な製品にとって重要なコーティング材料である。酸化インジウム(In)及び酸化亜鉛(ZnO)の広いバンドギャップの半導体は、広帯域光透過性を有する。材料はドープされて、電気伝導性を提供し得る。しかし、ドーピングが増加して電気伝導性を増大させるにつれて、光透過率が減少する。この作用は、プラズマ反射及び電子からの自由キャリア吸収が共に透過率を減少させる、長波長側で始まる。一般的な導電性酸化物コーティングは、一般に、0.4~2.0ミクロン波長範囲内でのみ透過性を有する。本開示は、コーティングの異なる領域において透明酸化物薄膜の伝導性及び透過率を空間的に制御する方法を説明する。
【0021】
光学基板102をコーティングする方法は、光学基板102の表面の上に、例えば、光学基板102の全表面の上に半導体コーティング104を堆積させることを含む。半導体コーティング104を堆積させることは、半導体コーティング104が非ドープ(undoped)の状態でかつ酸素の存在下で半導体コーティング104を堆積させることを含み得る。代替的にまたは付加的に、酸化物半導体は、空気中でアニールされて、半導体コーティング104内に過剰の酸素を提供し得る。半導体コーティング104は、透明導電性酸化物(TCO)材料として広帯域光透過率を有し、例えば、In、ZnO等を含み得、電気シート抵抗(electrical sheet resistance)は2000Ω毎スクウェア(ohms/square)より大きい。したがって、半導体コーティングは、少なくとも可視及び赤外スペクトルにおいて広帯域光透過率を有し得る。
【0022】
半導体コーティング104の所定の部分はドープされて、以下で更に述べるように半導体コーティング内にドープされた半導体の空間的に変化したパターン(spatially varied pattern)を形成する。空間的に変化したパターンを形成するように半導体コーティングの所定の部分をドープすることは、ドナー原子のイオン注入によってドーパントを付与することを含み得る。スピンオンまたはスプレーオンドーパント溶液等の任意の他の適した技法が、本開示の範囲から逸脱することなく使用され得る。ドープされた半導体は、Sn、Mo、W、Ti、Al、またはGaの少なくとも1つを含み得る。水素は、電子ドナーとして役立ち得るとともに、欠陥を不活性化(passivate)し得る。
【0023】
本方法は、半導体コーティング104をアニール(annealing)することであって、それにより、半導体コーティングを通してドーパント原子を拡散させ、半導体コーティングの非ドープ領域内の酸素を増加させること、または、半導体コーティングのドープされた領域内の酸素を減少させることの少なくとも一方を行うことを含む。これらのうちのそれぞれは以下で述べられる。
【0024】
まず、半導体コーティング104をアニールすることは、半導体コーティング104のTCO材料の結晶品質を改善し、半導体コーティング104のドープされた領域内の電気伝導性を増大させるように、所定のパターンに熱アニールすること及び/またはレーザアニールすることを含み得る。半導体コーティング104をアニールすることは、ドーパントを活性化して拡散させ、半導体コーティング104の非ドープ領域内の酸素を増加させるように、空気中でアニールすることを含み得る。半導体コーティング104の所定の部分にドープすることは、図2に示すように半導体コーティングの上にフォトレジスト106を塗布することを含み得る。フォトレジストを、選択的に露光し、所定の空間的に変化したパターンに現像する。すなわち、任意のパターンが使用され得るが、図3では、パターンの空間的変化は、フォトレジスト106内の右開口部に比べて左開口部にフォトレジスト106のより広い開口部を含む。本方法は、図3に示す下方矢印で示すように、フォトレジスト106内の開口部105を通して半導体コーティング104にドープすることを含む。図4を参照すると、フォトレジスト106は、例えば溶媒を使用して、取除かれて、半導体コーティング104内にドープされた半導体108をパターンで残す。酸窒化シリコン110のコーティングを、図5に示すように、半導体コーティング104の全表面の上に、プラズマ化学気相堆積法(PECVD)を使用して被着させる。PECVDプロセスにおける水素は、酸化物半導体において電子を付加し、欠陥を不活性化(passivate)することによって導電率を増加させる。水素プラズマが、同様に使用され得る。酸窒化シリコンが本明細書の例として使用されるが、任意の他の適した保護膜が本開示の範囲から逸脱することなく使用され得ることを当業者は容易に認識するであろう。別のフォトレジスト112を、図6に示すように、酸窒化シリコン110の上に塗布する。このフォトレジスト112を、第1のフォトレジスト106の反転パターンに露光及び現像し、フォトレジストによって覆われていない酸窒化シリコンの部分を、例えば、希釈フッ化水素酸(HF:HO)を使用して図7に示すように取除く。残りのフォトレジスト112を図8に示すように取除いて、基板をアニールに向けて準備する。本方法は、図9に示すように、空気中で酸窒化シリコン110及び半導体コーティング104をアニールすることを含む、半導体コーティング104をアニールすることを含み、それにより、ドーパントを活性化して拡散させ、半導体コーティング104の非ドープ領域内の酸素を増加させる。非ドープのInのシート抵抗は、空気アニールによって酸素を増加させることによって、100Ω毎スクウェア未満から2000Ω毎スクウェア以上にまで増加し得る。酸窒化シリコン110の残りの部分を、その後、図10に示すように基板から取除き、ドープされた領域108内の活性化され、かつアニールされたドーパントは、半導体コーティング104内で所定の電気伝導性のパターンを形成する。
【0025】
半導体コーティング104の所定の部分108にドープし、半導体コーティング104をアニールすることは、ドープされた半導体を、半導体コーティング104を通して光学基板102まで拡散させることを含み得る。すなわち、ドーパントは、図10に示すように、半導体コーティング104の厚さ全体を通して拡散する。半導体コーティング104の上面は、その全体がパターンで覆われ得、パターンは、空間的に変化して、窓または光学部品100上の2次元位置の関数として任意の所望の電気伝導性を達成し得る。そのため、光学部品または窓100は、エッチングなしで、及び/または、研磨またはポストプロセス平坦化なしで、広帯域透明度を有する電気伝導性のコーティングを有する窓になるよう形成され得る。活性化され、かつドープされた半導体部分108及び半導体コーティング104は、近似的に整合した屈折率を有して、パターンからの光散乱を軽減し得る。ドープされた半導体と半導体コーティングとの屈折率の比が0.82と1.22との間である場合、界面反射は、垂直入射で1%未満であることになる。例えば、632.8nmにおけるドープされた及び非ドープのInの屈折率は、それぞれ、約2.00及び1.77である。1.13の屈折率比は、0.37%の反射しか生じない。
【0026】
図10に示す、結果として得られる窓または光学部品100は、透明基板、すなわち、透明基板の上のコーティングであって、透明半導体と電気伝導性の半導体との両方で作製されている、コーティング、すなわち、電気伝導性部分108を有する半導体コーティング104を有する光学基板102を含む。
【0027】
ここで図11~15を参照すると、別の方法が述べられ、別の方法において、半導体コーティング104を図11に示すように堆積した後、酸窒化シリコン110のコーティングを、半導体コーティングが非ドープの状態で半導体コーティングの全表面の上に被着させる。フォトレジスト106を、図12に示すように、酸窒化シリコン110の上に塗布し、フォトレジスト106を、露光及び現像する。現像されたフォトレジスト106は、酸窒化シリコン110の所定の部分を保護し、酸窒化シリコン110の保護されていない部分を取除いて、図13に示すように半導体コーティング104の所定の部分108を露出させる。図13の下方矢印で示すように、半導体コーティング104を、フォトレジスト106内の開口105を通してドープする。任意選択で、フォトレジスト106をドーピング前に取除き、そうでなければ、フォトレジスト106を、図14に示すようにドーピング後に取除いて、半導体コーティング104内に、ドープされた半導体部分108をパターン状に残し得る。図15に示すように、真空下で酸窒化シリコン110及び半導体コーティング104をアニールすることは、ドーパントを活性化して拡散させ、半導体コーティング104のドープされた領域すなわち部分108内の、酸素を減少させる。酸素空孔は、電子に寄与し、酸化物半導体の導電率を増加させる。ドーパント原子を付加しない場合、Inのシート抵抗は、真空アニールによって酸素を減少させることによって、2000Ω毎スクウェア以上から100Ω毎スクウェア未満にまで減少し得る。酸窒化シリコン110を、その後、取除いて、図10に示す構造に到達し得る。
【0028】
本開示は、アニールプロセス中に、選択された領域において酸素の増加または減少がある、透明導電性酸化物(TCO)または酸化物半導体に関する。これらの酸素変化は、半導体の電子濃度及び導電率をそれぞれ減少または増加させる。非ドープのInのシート抵抗は、酸素を減少させること、また、増加させることによって、それぞれ、2000Ω毎スクウェア以上から100Ω毎スクウェア未満にまで、また、その逆にも同様に変更され得る。
【0029】
上述され、図面に示された本開示の方法及びシステムは、広帯域窓及び光学部品のための空間制御された電気伝導性を含む優れた特性を有する光学コーティングを提供する。主題開示の装置及び方法は、好ましい実施形態を参照して示され述べられたが、主題開示の範囲から逸脱することなく、好ましい実施形態に対する変更及び/または修正が行われてもよいことを当業者は容易に認識するであろう。
【符号の説明】
【0030】
100…光学部品または窓
102…光学基板
104…半導体コーティング
105…開口部
106…フォトレジスト
108…ドープされた半導体部分
110…酸窒化シリコン
112…フォトレジスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15