(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】凍結手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 10/04 20060101AFI20240322BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20240322BHJP
A61B 10/02 20060101ALI20240322BHJP
A61B 18/02 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A61B10/04
A61B1/018 515
A61B10/02 500
A61B18/02
(21)【出願番号】P 2022210011
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2018137461の分割
【原出願日】2018-07-23
【審査請求日】2022-12-27
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】アヒム・ブロドベック
(72)【発明者】
【氏名】ヨルグ・クロネンタラー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・アドラー
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ・アンデル
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・フィッシャー
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-516696(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0310822(US,A1)
【文献】特表平09-511414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/02-10/04
A61B 1/018
A61B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジュール・トムソン効果を利用して動作する凍結手術器具であって、
流体、具体的にはガスを、シャフト(11)の封鎖された遠位端に配置された膨張チャンバ(18)内に供給し、かつ前記膨張チャンバ(18)内で終端となるキャピラリライン部(21)を有する供給ライン(15)と、
前記膨張チャンバ(18)から出たガスを帰還させるために、前記膨張チャンバ(18)と連結されている帰還システム(19)とを備え、
前記キャピラリライン部(21)の開口(22)と前記膨張チャンバ(18)の対向壁面(26)との間の距離(25)は、0.5ミリメータ以上5ミリメータ以下であり、
前記キャピラリライン部(21)の長さは、1ミリメータ以上15ミリメータ以下であり、
前記キャピラリライン部(21)の内径は、200マイクロメータ以下であ
り、
前記供給ライン(15)は、前記膨張チャンバ(18)に向かう前記流体の流れ方向に、漏斗形状に先細になる移行部を前記キャピラリライン部(21)の上流側に有する
凍結手術器具(10)。
【請求項2】
前記キャピラリライン部(21)の長さに対する前記キャピラリライン部(21)の内径の比は、0.004以上0.2以下である
請求項1に記載の凍結手術器具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュール・トムソン効果を利用して動作する凍結手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術において、作業端が冷却され、それによって患者の組織に生理学的または治療的効果をもたらす医療器具が開示されている。たとえば、国際公開第02/02026号から、切断用先端部を備える冷凍ゾンデ(Cryoprobe)が知られており、この場合、当該先端部を冷却するために液体の冷凍剤が先端部に供給される。米国特許第6830581号明細書において、血管に挿入される熱交換素子が記載されており、この場合、冷却された作業剤が当該器具の先端部に供給されるため、当該素子は血管内の血液を冷却する。
【0003】
凍結手術作業用の器具において、たとえば、標的を絞ってジュール・トムソン効果を利用し、この場合、流体が減速されることでその温度が低下する。
【0004】
独国特許出願公開第102008024946号明細書において、たとえば、流体、具体的にはガスを、膨張チャンバに供給するための供給ラインをプローブのヘッドに備える凍結手術器具が開示されている。この供給ラインの前側には、開口を有する開口部があり、流体が供給ラインから当該開口を通って膨張チャンバに流れ出ることで当該流体が膨張し、それによって流体が冷却される。こうすることで、プローブ先端が冷却される。冷却された流体は、プローブ先端から、ガスの戻り管路を通って戻って流れる。
【0005】
国際公開第2006/006986号において、1つの端部が封鎖されているチューブを備える凍結手術器具が記載されている。当該チューブの内側には、ガス供給ラインが配置され、その端部にはキャピラリチューブが接続され、この場合、後者の端部は、プローブの先端における膨張チャンバにおいて終端となる。
【0006】
米国特許出願公開第2012/0130359号明細書において、寒冷療法のための器具が記載されており、これを使用して、冷却することによって作業場所の神経に治療を目的とした作用を与えることができる。この器具は、シャフトを備え、その端部に作業部が設けられる。冷却液を作業部に戻すための供給ラインは、作業部における当該シャフトを貫通して存在する。供給ラインの端部に、開口部またはキャピラリチューブが設けられてもよく、これによって、供給ラインは、作業領域における膨張チャンバにおいて終端となる。
【0007】
米国特許出願公開第2005/0016188号明細書において、遠位端が封鎖されているチューブを有する凍結カテーテルを備える、凍結手術による組織の切除のための器具が記載されており、戻り管路は、当該チューブ内から器具の端部まで延在し、この場合、キャピラリチューブが供給ラインの端部に配置され、当該キャピラリチューブは、器具の遠位端にあるチャンバで終端となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、改良された凍結手術器具を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、たとえば、組織サンプルを採取するために配置されてもよい、請求項1に記載の凍結手術器具によって達成される。本発明に係る凍結手術器具は、たとえば、作業流体、具体的にはガスを、当該器具の遠位端に配置されていることが好ましい膨張チャンバ内に供給するための供給ラインを備える。供給ラインは、膨張チャンバ内で終端となるキャピラリライン部を有する。膨張チャンバから帰還するガスのための帰還機構が、膨張チャンバと連結されている。供給ラインは、異なる寸法の内断面(内断面積)を有するライン部を形成する、少なくとも1つの第1部分と1つの第2部分とを有する。内断面は、供給ラインを通る流体のための第1および第2部分における流れ断面を決定する。本発明に係る器具の供給ラインは、供給ラインを通る流体の流路が、第1部分から第2部分へ、膨張チャンバに向かう方向に、供給ラインの移行部において漏斗形状で先細になるように設計される。供給ラインの移行部における内断面がこのように漏斗状に先細になることで、内断面が減少するとともに、流れ断面が供給ラインに沿って段階的になることが可能になり、この内断面の減少は、連続的(一定)または段階的に変化することが好ましい。供給ラインの内断面が、膨張チャンバに向かう方向であって供給ラインを通る流体の流れ方向に、漏斗形状に少なくとも1回先細になるということによって、流体は、供給ラインの少なくとも1つの漏斗形状の移行部において、加速される。移行部において漏斗形状に先細になることによって、流れ断面は、第1部分の流れ断面から、第1部分の流れ断面よりも小さい第2部分の流れ断面に向かって突然(急激に)減少しない。したがって、移行部の漏斗形状によって、漏斗形状の移行部の後に続く供給ラインの部分において、加速された流体の圧力の変動を概ね減少させる、または防止することができる。
【0010】
本発明に係る器具は、器具の作業部を冷却するために、膨張チャンバ内で流体が膨張するときに流体に現れるジュール・トムソン効果を利用することによって、機能する。移行部において均一に加速されることによって、またキャピラリライン部を供給ラインの遠位端部として使用することによって、説明した漏斗形状の先細形状とキャピラリライン部とを備えない器具と比べて、流体の粒子が開口から膨張チャンバの中へ出たときに、概ね一体となっている距離が長くなる。これによって、具体的には、開口から出た後に噴射が過剰に広がることで膨張チャンバから出るガスの流れ戻りを妨げることを防ぐことができる。その結果、膨張チャンバを含み、かつ帰還システムの少なくとも1つの部分を含んでもよい器具ヘッドを、細く設計することができる。これによって、小型化された器具ヘッドを得ることが容易になる。キャピラリラインを流体のための開口部として利用し、流れ断面が漏斗形状に先細になる少なくとも1つの移行部において、流体の圧力が概ね急増せずに加速されることを利用することによって、具体的には、特に細い器具ヘッドの実現を容易にし、その器具ヘッドによって、たとえば、組織サンプルの安全な除去を簡単に行うことができる。
【0011】
供給ラインは、供給ラインの内断面が、移行部においてキャピラリライン部に向かって、漏斗形状に先細になるように構成されることが特に好ましい。その結果、流体を加速させることができ、流体がキャピラリライン部に入るときに圧力が変動することを概ね減少させる、またはキャピラリライン部に入ると防止することができる。これによって、流体の自由経路の長さが長くなり、キャピラリライン部から膨張チャンバの中へ出ると、その長さに沿って流体の粒子が概ね一体のままになる。内断面が先細になることは、移行部の前からキャピラリライン部に向かって、移行部を通ってキャピラリライン部の中に延在する、移行領域において継続していることが好ましい。移行領域における供給ラインの内壁面は、エッジがないことが好ましい。そうすることによって、流路に沿って移行領域内において、内断面の傾斜が突然変化することがない。
【0012】
少なくとも移行部においてキャピラリライン部に向かって供給ラインの内断面が先細になる先細角度は、15°以上40°以下であることが好ましい。先細角度は、移行部を通る流れ断面を決定する移行部の内壁面の対向部分によって含まれる。
【0013】
キャピラリライン部の長さは、1mm以上15mm以下であることが好ましい。キャピラリライン部の流れ断面を決定するキャピラリライン部の内径は、60マイクロメータ以上200マイクロメータ以下であることが好ましい。
【0014】
供給ラインは、少なくとも2つの移行部を有し、ここにおける供給ラインを通る流体の流れの経路が、膨張チャンバに向かう流れ方向に、漏斗形状で先細になることが好ましい。
【0015】
第1部分および第2部分は、供給ラインの2つ、3つ、または3つを超える一連のステップ部を形成し、移行部は、各2つのステップ部の間に設けられ、当該移行部は、2つのステップ部に隣接していることが好ましい。説明したように、少なくとも1つの移行部を通る流れ断面が、各移行部において、供給ラインの開口の膨張チャンバに向かう方向に、漏斗状に減少することが好ましい。各ステップ部の内断面積の領域容量は、内断面ステップの一部分であり、ステップ部領域の内断面ステップの内断面積の領域容量は、下流のキャピラリライン部の開口に向かう方向に当該移行部と隣接するステップ部の内断面積の領域容量よりも大きい。その結果、流れ断面が供給ラインから供給ラインの開口まで段階的になり、この場合、漏斗状の先細形状を有する移行部における流路は、漏斗形状であることによって、1つの断面ステップから次の断面ステップまで急激に減少しない。しかしながら、連続的にまたは段階的に減少すること、または少なくとも1つの移行部の長手方向断面において連続的に減少し、少なくとも別の移行部の長手方向断面において、膨張チャンバに向かう方向に段階的に減少することが好ましく、ステップ部に沿って、ステップ部において概ね一定を維持することが好適である。キャピラリライン部は、最後のステップ部の開口に向かう流れ方向における一連のステップ部において、最後のステップ部を形成してもよい。漏斗形状の移行部において加速されることで、流体粒子が開口から出ると、膨張チャンバ内へ遠く流体の噴射を運ぶ速い速度が流体粒子に伝わり、その結果、流体の膨張範囲が拡大され、冷却の効果を向上させることができる。漏斗状に先細りにすること、およびステップ部を設けることによって、膨張チャンバに向かう方向へ流体の加速が、一連の経路にわたって見て段階的に生じ、それによって、流体における圧力の急増(サージ)および乱流を減少させることが可能である。その結果、圧力チャンバにおけるガスの膨張範囲が拡大される。
【0016】
キャピラリ部の開口から膨張チャンバ内への移行中に、流体に対する流れ断面が急増することが好ましい。これによって、膨張する流体に対して強いジュール・トムソン効果を生じさせることが促進される。さらに、膨張チャンバの一部分は、帰還システムの一部として利用可能であってもよい。
【0017】
供給ラインは、帰還ライン内に配置されることが好ましく、および/または帰還ラインが、例えば、供給ラインの隣に配置されることが好ましい。キャピラリライン部の内断面に対する、キャピラリライン部の隣および/またはキャピラリライン部の周囲の帰還ラインにおける流れ断面の比は、5以上であることが特に好ましい。
【0018】
供給ラインは、供給ラインの外断面(外断面積)が、ステップ部の外断面から当該移行部に隣接するステップ部の外断面まで、漏斗形状の移行部で急激に減少しないことが好ましいが、連続的にもしくは段階的に減少することが好ましく、または外断面が先細になる供給ラインの部分の少なくとも1つのサブセクションにおいて段階的に、かつ当該部分の別のサブセクションにおいて連続的に、キャピラリライン部の開口に向かう方向に減少するように構成されることが好ましい。膨張に続いて、膨張チャンバから流出するガスの流れ方向に見て、供給ラインの外断面は、それに従って急激に増加しないことが好ましいが、連続的におよび/または段階的に増加することが好ましい。供給ラインの壁が同時に、帰還システムの壁、具体的には帰還ラインを形成する場合、膨張領域から、外断面の減少によって形成される空間を通るガスの帰還を改善させることができる。開口に向かう方向における供給ラインの外断面の急激な減少とは異なり、戻って流れるガスの流れ断面の外径は、急激に減少せず、たとえば、先細になっている。その結果、帰還システム、具体的には、帰還ラインの流れ抵抗が減少してもよい。
【0019】
器具は、膨張チャンバから離れて戻る間のガスの流れ方向における帰還ラインの流れ断面が、移行部において連続的もしくは段階的に、または少なくとも1つの長さ部分における移行部において、連続的に減少し、少なくとも別の長さ部分において、段階的に減少するように構成されてもよい。
【0020】
少なくとも供給ラインの、キャピラリライン部とキャピラリライン部に隣接する移行部とを有する部分は、継ぎ目がないように構成されることが好ましい。これによって、供給ラインの開口までの流れ断面の問題および急激な変化を回避するために、器具の信頼のおける製造工程が簡略化される。少なくともフィードバックラインの、キャピラリライン部と漏斗形状の移行部とを有する部分は、継ぎ目がないように一体に構成されることが特に好ましい。それによって、移行部およびキャピラリライン部の信頼のおける製造工程が簡略化される。
【0021】
概して、供給ラインは、ロータリースエージングプロセスを用いて製造されてもよい。少なくとも供給ラインの、キャピラリライン部を有する部分およびキャピラリライン部に隣接する移行部は、ロータリースエージングプロセスによって作成されることが好ましい。少なくとも供給ラインの、キャピラリライン部と漏斗形状の移行部とを有する部分は、ロータリースエージングプロセスによって作成されることが特に好ましい。ロータリースエージングプロセスを用いることによって、流れ断面を決定する供給ラインの内面の表面粗さが少なく、表面うねりがより少ないという高い品質を確実に実現することが可能である。
【0022】
キャピラリライン部の壁の厚さは、キャピラリライン部に対して、上流の移行部に隣接する供給ライン部の壁の厚さ以下であってもよい。これによって、キャピラリライン部に隣接して、またはキャピラリライン部の周囲に、膨張区間からガスが戻るための広い空間を容易に提供できる。さらに、キャピラリライン部に隣接して、またはその周囲に戻ったガスと、キャピラリライン部を通って供給されるガスとの間の伝熱が増加される。
【0023】
キャピラリライン部の長さに対するキャピラリライン部の内径の比は、0.004以上0.2以下であることが好ましい。
【0024】
流体が供給ラインから出て膨張チャンバに入るために通るキャピラリライン部の開口は、キャピラリライン部の前側に位置することが好ましい。キャピラリライン部の内腔を囲い、流体を運ぶキャピラリライン部の外装は、側方の開口がないことが好ましい。
【0025】
開口と、膨張チャンバの内腔を画定する対向壁面との間の距離は、0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る凍結手術器具のさらなる好適な特徴は、従属請求項、以下の記載、および図面から導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、先行技術に係る凍結手術器具の遠位端の長手方向における詳細断面図である。
【
図2a】
図2aは、本発明に係る例示的な凍結手術器具の長手方向における詳細断面図である。
【
図2b】
図2bは、
図2aに示されている本発明に係る器具の、
図2a示されている切断面での断面図である。
【
図2c】
図2cは、本発明に係る器具の、
図2aに示されている切断面での断面図である。
【
図2d】
図2dは、本発明に係る器具の、
図2aに示されている切断面での断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る例示的な凍結手術器具の長手方向における詳細断面図である。
【
図4】
図4は、別の例示的な実施の形態に係る凍結手術器具の長手方向における詳細断面図である。
【
図5】
図5は、内視鏡の作業チャネルに導かれた、本発明に係る例示的な凍結手術器具の長手方向における詳細断面図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る例示的な器具の、長手方向における詳細断面図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る例示的な器具の、長手方向における詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、先行技術に係る凍結手術器具10の遠位端部13の長手方向における詳細断面図である。器具10は、シャフト11を有し、シャフト11は、器具10の遠位端13aにある器具10のヘッド12まで延在する。ヘッド12の外側に、除去のために組織サンプルが凍結されて付着することができる接着表面14が設けられる。シャフト11の内部には、器具10の遠位端13aにガスを供給するための供給ライン15が配置される。この供給ライン15は、開口17を有する開口部16で終端となり、そこを通ってガスが供給ライン15から、器具10のヘッド12における膨張チャンバ18内に流出してもよい。供給ライン15からのガスの流れが開口部16で減速され、ガスが膨張チャンバ18に入って開口部16の下流で膨張するとき、膨張チャンバ18において膨張されたガスの温度が下降するというジュール・トムソン効果が、ガスに対して顕著に表れる。その結果、当該ガスは、接着表面14を有する器具10のヘッド12を冷却することが可能である。冷却されたガスは、シャフト11内において、供給ライン15の隣に配置されている帰還ライン19を通って膨張チャンバ18を出る。膨張チャンバ18から出て、帰還ライン19内にガスが戻って流れることは、
図1に矢印によって示されるように、開口17から出るガスによって妨害されることがある。したがって、確実かつ適切な流れ戻りを可能にするためには、比較的大きな膨張チャンバ18を設ける必要がある。
【0029】
図2aは、本発明に係る凍結手術器具10の長手方向における断面図である。本発明に係る凍結手術器具10において、供給ライン15の遠位端20は、キャピラリライン部(21)(キャピラリチューブ部)によって形成されている。キャピラリライン部21は、膨張チャンバ18内に、キャピラリライン部21の前側23に開口22を有する。キャピラリライン部21は、膨張チャンバ18を囲うキャップ24によって形成される、器具10のヘッド12内まで延在する。キャピラリライン部21の開口22と、膨張チャンバ18を画定するキャップ24の対向壁面26との間の距離25は、0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。膨張チャンバ18の内腔27を画定するキャピラリチューブ部21の開口22に対向するキャップ24の壁面26は、図示されているように、キャップ24の壁面26に当たるガスをフィードバックライン19まで運ぶように設けられて配置された、たとえば球形のキャップ面26であってもよい。
【0030】
キャピラリライン部21は、一連のn個のステップ部30nを形成し、少なくともn=2であり、好ましくはn>2であり、たとえば、
図2aに示されているように、供給ライン15の、n=3のステップ部30n-2、30n-1、30nである。供給ライン15のステップ部30n-2、30n-1、30nの2つの間に、それぞれ、1つの移行部32n-2、32n-1が配置されており、これらは2つのステップ部30n-2および30n-1、または30n-1および30nに隣接している。移行部32n-2、32n-1のうちの少なくとも1つにおいて、供給ライン15の内断面積33内は、遠位方向34に、キャピラリライン部21の開口22に向かって漏斗状に、たとえば、円錐状に減少することが好ましい。これにより、たとえばガスなどの流体で器具10が充填されている場合、移行部32n-2、32n-1において、開口22に向かって供給ライン15を通る流体が加速される。キャピラリチューブ部21に隣接する移行部32n-1の内壁面35は、ガスの流れ方向34に垂直な表面部を基本的に有しないことが好ましい。ガスは、移行部を通って内壁面35に対向して膨張チャンバ18に向かう流れ方向34に流れる必要がある。これは、残りの移行部32n-1にも同様に適用されることが好ましい。より正確に言うと、図示された、キャピラリチューブ部21に向かう例示的な移行部32n-1は、移行部32n-1を通る長手方向の断面視において、流れ方向34に対して傾斜している内壁面35を有する。これらの周辺部分は、流れ方向34に対して90°より小さい鋭角を含む。残りの移行部32n-2も同様に構成されることが好ましい。
図2aは、最後から2番目のステップ部30n-1に向かって漏斗形状の移行部32n-2と、一連のステップ部の最後のステップ部30nを形成する、キャピラリライン部30nに向かって漏斗形状の移行部32n-1を示す。流路は、移行部32n-1の前から、キャピラリライン部21における移行部32n-1を通って、キャピラリライン部30n、21までの移行領域36において連続的に先細になることが好ましい。供給ライン15における流路内の移行領域35において、特に、流れ断面を急激に変化させ得る、流れ方向34に対して垂直な供給ライン15の内壁面はないことが好ましい。供給ライン15の流れ断面は、供給ライン15の各移行部32n-2、32n-1において、ステップ部30n-2、30n-1、30nの間で、開口22に向かう方向であって流れ方向34に、漏斗状に減少することが好ましい。これによって、ステップ部30n-2、30n-1、30nと、内部が先細になる断面である漏斗形状を有する移行部32n-2、32n-1とが交互に配置されて一連に形成されることが好ましい。
【0031】
供給ライン15の移行部32n-2、32n-1における流れ断面が、供給ライン15のステップ部30n-2または30n-1における流れ断面から急激に減少しないことが好ましい。当該ステップ部は、供給ライン15におけるステップ部30n-1または30nにおける流れ断面に向かって、移行部32n-2または32n-1の前に配置され、移行部32n-2または32n-1に隣接する。当該部分は、移行部32n-2または32n-1における流路において、移行部32n-2または32n-1に隣接する。しかしながら、移行部32n-2、32n-1における流路は、流路の経路部を超えて開口22に向かって先細になることが好ましい。これによって、移行部32n-2または32n-1に続く供給ライン15のステップ部30n-1、30nにおける流体の渦および流体の圧力の変動が減少する。
【0032】
移行部32n-1における内断面33がキャピラリチューブ部21、30nに向かって先細になる先細角度37は、15°以上40°以下であることが好ましい。先細角度37は、移行部32n-1を通る流れ断面を側方から画定する移行部32n-1の内壁面35によって決定される。流れ方向34に沿って、供給ライン15を通る長手方向の断面視において、移行部32n-2、32n-1の内壁面35は、流れ方向34に対して傾斜して配置されることが好ましい。内壁面35は、たとえば、先端を切った円錐、または先端を切った角錐の側面であってもよい。最後から2番目のステップ部30n-1に向かう移行部32n-2、および/または、キャピラリライン部21に向かう移行部32n-1は、流れ方向34に平行な面に対して、対称であってもよい。最後から2番目のステップ部30n-1に向かう移行部32n-2における流れ断面積の中心、および/または、キャピラリライン部21の移行部32n-1における移行部32n-2における流れ断面積の中心は、対称の漏斗のように、各移行部32n-1、32n-2における入口の流れ断面積に垂直に伸びる直線上にあってもよい。1つ以上の移行部32n-2、32n-1において、流れ断面を対称の漏斗形状に先細にすることの代りに、移行部32n-2の流れ断面が、たとえば、非対称の漏斗のように、最後から2番目のステップ部30n-1に向かって、および/または最後のステップ部30nに向かう移行部32n-1に向かって、先細になってもよい。
【0033】
ステップ部30n-2、30n-1、30nは、内断面ステップを画定する。ステップ部30n-2、30n-1、30nにおいて、内断面は、内断面ステップの一部分である。各ステップ部30n-2、30n-1、30nの内部において、供給ライン15の内断面は、特定の寸法範囲内(ステップ)を維持する。ステップ部30n-1、30n内において、流れ断面は、たとえば、一定であってもよい。ステップ部30n-2、30n-1の内断面の寸法範囲は、それぞれ(開口に向かう)下流のステップ部30nの内断面の寸法範囲よりも大きい。したがって、供給ライン15において、移行部32n-2、32n-1におけるステップ間で、内断面が急激に段階的に増加するのではないが、流れ断面が次のステップに向かって、連続的にまたは段階的に変化することが好ましい。行部32n-2、32n-1の少なくとも1つの第1の長手方向断面における少なくとも1つの移行部32n-2、32n-1で、流れ断面を段階的に先細にすることが可能であり、第1の長手方向断面の上流または下流に位置する移行部32n-2、32n-1の少なくとも別の1つの長手方向断面で、流れ断面を連続的に先細にすることが可能である。これによって、移行部32n-2、32n-1における流れ断面が全体において、次のステップに向かって連続的かつ段階的に先細になる。具体的には、供給ライン15は、供給ライン15の内断面が、一連のステップ部30n-2、30n-1、30nの始めから供給ライン15の開口22まで、流れ方向34に単調に減少するように構成されてもよい。これは、少なくとも一部の部分において、内断面が正確に単調に減少し、他の部分においては、任意で変化しないままであってもよいことを意味する。
【0034】
一実施の形態において、キャピラリライン部21に向かい、キャピラリライン部21内から供給ライン15の開口までの供給ライン15の移行部30n-1における内壁面35は、供給ライン15を通る流れ方向34を横切るように配向されたエッジまたは湾曲部がなくてもよい。このエッジまたは湾曲部は、供給ライン15の流れ断面の傾斜が突然変化することを潜在的に意味する。
【0035】
供給ライン15の隣、および/または供給ライン15の周囲に、帰還ライン19の流れ断面が形成されることが好ましい。図示された例示的な実施の形態において、供給ライン15は、少なくとも一部の部分において、帰還ライン19に配置されてもよい。帰還ライン19の流れ断面は、一方では、シャフトの壁38aおよびヘッド12の壁38bによって画定されているが、他方では供給ライン15の壁39によって画定される。
図2aにおいて、供給ライン15は、シャフト11および/またはキャップ24と同軸上に配置されているように示されている。しかしながら、供給ライン15、ならびにシャフト11および/またはキャップ24は、同軸上でなくてもよく、すなわち、好ましくは、並行な複数の中心軸を有してもよい。
【0036】
図示されているように、移行部32n-2、32n-1における供給ライン15の外断面40は、方向34において開口22に向かって急激に減少せず、連続的または段階的に減少することが好ましい。少なくとも1つの移行部32n-2、32n-1において、供給ライン15の外断面は、開口22に向かう方向に、長手方向断面において連続的に、および長手方向断面において段階的に減少してもよい。その結果、帰還ライン19の流れ断面41は、
図2aに係る例示的な実施の形態によって示されるように、移行部32n-2、32n-1において、移行部のそれぞれの長さに沿って、膨張チャンバ18から帰還ライン19を通ってガスが流れる方向42に、減少することができる。すなわち、移行部32n-2、32n-1の手前の流れ断面から、当該移行部32n-2、32n-1の後の流れ断面まで急激に減少しない。帰還ライン19の流れ断面41は、具体的には、連続的にまたは段階的に、または、長手方向断面において連続的に減少してもよく、具体的には、移行部32n-2、32n-1における膨張チャンバ18から流出するガスの流れ方向42において、連続的または段階的に減少し、または、長手方向断面において継続的かつ、長手方向断面において段階的に減少してもよい。キャピラリチューブ部21、30nの隣、またはキャピラリチューブ部21、30nの周囲、および/または、移行部32n-2、32n-1の間の帰還ライン19の流れ断面41は、概ね一定であってもよい。
【0037】
ステップ部30n-2、30n-1、30nは、外断面のステップ部を定めることが好ましい。30n-2、30n-1、30nのうちの1つのステップ部において、供給ライン15の外断面(外断面積)は、1つの外断面のステップ部の一部分である。各ステップ部内において、供給ラインの外断面は、特定の寸法範囲内(ステップ)を維持する。たとえば、1つのステップ部30n-2、30n-1、30nに沿って、ステップ部30n-2、30n-1、30nの外断面が一定であってもよい。1つのステップ部30n-2、30n-1の寸法範囲内の寸法の外断面は、当該ステップ部30n-1、30nのそれぞれ後に続く下流の(開口に向かう)寸法範囲内である外断面よりも大きい。そのため、供給ライン15は、移行部32n-2、32n-1におけるステップ間で、外断面が段階的に増加すること、外断面が次のステップに向かって急激に移行しないことが好ましい。より正確に言うと、移行は、移行部32n-2、32n-1の長さに亘って延在することが好ましく、および/または、次のステップに向かう外断面の移行は連続的、または流れる流体から見て、段階的に生じることが好ましい。
図2cに示されている移行部32n-2、32n-1間、およびキャピラリライン部21に向かう移行部32n-1と開口22との間の供給ライン15の外断面は、ほぼ一定であることが好ましい。これによって、キャピラリライン部21は、キャピラリライン部21の長手方向の長さに沿って概ね一定の外断面となる。
【0038】
図2b~
図2dを参照してわかるように、
図2aに示されている例示的な実施の形態を参照して、ある1つのステップ部30n-2、30n-1、30nの隣の帰還ライン19、またはステップ部30n-2、30n-1、30nの周囲の流れ断面積の容量41(An-2、An-1、An)の比は、シャフト11内に供給ライン15が形成されることによって、ステップ部からステップ部まで開口22に向かって流れ方向34に、ステップ部30における内断面積の容量33(Bn-2、Bn-1、Bn)に向かって増加する。これは、この比がキャピラリライン部21において最大であることを意味する。したがって、同様に、An:Bn≧An-1:Bn-1≧An-2:Bn-2が適用される。
【0039】
キャピラリライン部21の流れ断面の領域の容量に対する、キャピラリライン部21の隣および/またはキャピラリライン部21の周囲の帰還ライン19の流れ断面の領域の容量の比は、5以上であることが好ましい。キャピラリライン部の内径28(明瞭にするために、
図3に例示的に示している)によって、キャピラリライン部の流れ断面33が決定される。キャピラリライン部21の長さ(明瞭にするために、
図3に例示的に示している)に対する、キャピラリライン部21の内径28の比は、0.004以上0.2以下であることが好ましい。キャピラリライン部21を形成するキャピラリチューブの長さ29は、たとえば、1mm以上15mm以下であってもよい。キャピラリライン部21の内径28は、たとえば、60マイクロメータ以上200マイクロメータ以下であってもよい。
【0040】
供給ライン15の、移行部32n-2、32n-1、移行部32n-2、32n-1間のステップ部30n-1、およびキャピラリライン部21、30nを有する部分は、継ぎ目なく一体に形成されることが好ましい。たとえば、この部分はロータリースエージングプロセスを用いて形成され得る。接着表面14を有するヘッド12を形成するシャフトのキャップ24は、たとえば、ステンレス鋼から成ってもよい。たとえば、シャフト11は、PEEK、PA、PUR、またはPTFEから成ってもよい。シャフト11は、剛性または可撓性を有してもよい。
【0041】
凍結手術器具10の動作中に、以下が行われる。
【0042】
供給ライン15と連結されている流体供給源(図示せず)を使用することによって、供給ライン15は、具体的には、たとえばN
2OまたはCO
2である、ガスの流体が充填される。この場合、流体は、管形状のステップ部30n-2、30n-1、30nから、それぞれ隣接する移行部32n-2、32n-1を通って、開口22および膨張チャンバ18の方向に、次の管形状のステップ部30n-2、30n-1、30n内へ、凍結手術器具10の遠位作業端43を流れる。内断面33が漏斗状に減少し、そのため移行部32n-2、32n-1における、膨張チャンバ18の方向の供給ライン15の流れ断面が漏斗状に減少することで、移行部32n-2、32n-1において、流体が加速される。移行部における減少は急激ではないが、ステップからステップへ連続的または段階的な流れ断面33であることが好ましい、ある一定の長さに亘る減少であるため、各移行部32n-2、32n-1における加速によるステップ部32n-2、32n-1における流体の渦および流体の圧力の変動を概ね防止する。ステップ部30n-1、30n-2、30nは、それぞれ1つの長さを有することが好ましい。それによって、移行部32n-2、32n-1に続くステップ部30n-2、30n-1、30nにおける渦および/または圧力の変動が、概ねまたは完全に軽減される。ガスは、(n-1)番目のステップ部から(n-1)番目の移行部を通って、キャピラリチューブ部21(n番目のステップ部)内へ流れる。(n-1)番目のステップ部からキャピラリチューブ部21へ移行することに起因する、ガスに発生する可能性がある圧力の変動は、キャピラリチューブ部21の形成によって完全に軽減されることが好ましい。開口22に隣接するキャピラリチューブ部21の遠位端部における、キャピラリチューブ部21での圧力の変動を軽減することで、キャピラリチューブ部21において、流れ方向34において、変化しないことが好ましい対応の速度プロファイルを示す(妨害されない流れプロファイル)、開口22に向かって流れ方向34に層流が生じる。キャピラリチューブ部21は、ジュール・トムソン効果を形成するためのガスの開口部を形成する。したがって、開口部16において、
図1に係る先行技術にあるように供給ライン15から出て膨張チャンバ18へ流れるときに流体の噴射が大きく広がり、それによって、戻って流れるガスに強い相互作用を与えることを、
図2aに示されているように、なくすことができる。ガス流は、キャピラリチューブ部21から出て膨張チャンバ18内に流れ、移行部32n-2、32n-1において加速されて開口22から流出される前に圧力の変動がないことから、器具ヘッド12の対向壁面26の方向に、膨張チャンバ18内へ遠く流れる。これによって、ガスは、戻って流れるガスによってほぼ妨害されずに、開口22から流出される。開口22から流出して膨張チャンバ18において膨張するガスは、ジュール・トムソン効果により温度が低下し、組織サンプルを接着表面14に凍結させることができるように、ヘッド12および接着表面14を冷却する。その後、器具10を引っ張ることによって、組織サンプルが分離されて、残存する組織から除去される。
【0043】
したがって、冷却されたガスの流れ戻りは、流出するガスによって妨害されない。より正確に言うと、膨張チャンバからの膨張ガスは、膨張チャンバ18から出て帰還ライン19へ、流れ方向と反対方向に、開口22を通って膨張チャンバ18へ供給ライン21から出る流体と並行に流れることが好ましい。この大量の流れ戻りは、器具10の遠位端13aの詳細を示す
図3に矢印で示されている。帰還ライン19を通って戻って流れるガスは、供給ライン15のキャピラリチューブ部21の外部壁面を通過して滑り、キャピラリライン部21を通って流れるガスから熱を奪う。キャピラリチューブ部21の壁44が、キャピラリチューブ部21に向かう移行部32n-1に隣接するステップ部30n-1の壁と同じ薄さ、またはそれよりも薄いことが好ましく、それによって上記の効果が促進される。
【0044】
戻って流れるガスは、たとえば、シャフト11の側方の開口(図示せず)を通って出てもよい。
【0045】
図4は、本発明に係る凍結手術器具10の、例示的な実施の形態の変形例の詳細を示す。器具10の端部13が示されている。
【0046】
供給ライン15および帰還ライン19は、器具10のシャフト11において、互いに隣接して形成される。供給ライン15のキャピラリチューブ部21は、シャフト11に設けられた供給ライン15の部分に挿入される。キャピラリチューブ部21は、器具10のキャップ24内に到達し、当該キャップは、膨張チャンバ18を囲う。
【0047】
供給ライン15は、少なくとも3つのステップ部30n-2、30n-1、30nを有し、最後のステップ部30nは、キャピラリチューブ部21によって形成される。最後から2番目のステップ部30n-1の少なくとも移行部32n-2において、供給ライン15の内断面が、膨張チャンバ18における開口22に向かう方向に、漏斗形状に減少する。
【0048】
シャフト11において、膨張チャンバ18と連結されている帰還ライン19の流れ断面は、帰還ライン19の移行部19m-2、19m-1において漏斗形状に減少する。帰還ライン19の移行部19m-2、19m-1間において、帰還ライン19の流れ断面は、概ね一定であってもよい。帰還ライン19の移行部19m-2、19m-1の数は、供給ライン15における移行部32n-3、32n-2、32n-1の数に対応してもよい。
【0049】
図5は、シャフト11が長手方向に、内視鏡46の作業チャネル45内に移動可能に導かれる、本発明に係る例示的な凍結手術器具10の長手方向における詳細断面図である。器具10のシャフト11の遠位端において、器具10のヘッド12には細い遠位端部47が配置され、この場合、端部47の外径48は、ヘッド12に隣接するシャフト部の外径49に対して小さくなっている。キャピラリチューブ部21は、狭い端部47内おいて、膨張チャンバ18内へ延在し、当該チャンバは端部47によって画定される。例示的な実施の形態において、膨張チャンバ18における開口22に向かって、流れ方向34に漏斗形状に内断面33がそれぞれ減少している、供給ライン15の少なくとも2つの連続する移行部32n-2、32n-1で流体が加速され、この場合、管状のステップ部30n-1、30nは、それぞれ、移行部32n-2、32n-1の後に続く。遠位の最後のステップ部30nは、キャピラリチューブ部21である。移行部32n-2、32n-1において均一に加速され、キャピラリチューブ部21における圧力の変動が軽減されることによって、供給ライン15を流れる流体の流れプロファイルは、キャピラリチューブ部21の端部において一定、すなわち、流れ方向34を変更しないことが好ましい。流体は、開口22を出た後、膨張チャンバ18内へ遠く流れる。その結果、器具ヘッド12の細い端部47によって制限された空間条件にもかかわらず、膨張チャンバ18から出て膨張されたガスが、開口22から膨張チャンバ18に流出するガスによって妨害されることなく適切に戻ることが可能である。このとき、器具ヘッド12を用いて組織サンプル50を採取することが可能であり、このサンプルの直径は、内視鏡46の作業チャネル45の直径よりも小さい。その結果、組織サンプル50を有する器具10のヘッド12、すなわち、組織サンプル50を採取した後に、器具10のヘッド12を内視鏡の作業チャネル45に引き戻すことができ、それによって、内視鏡46の作業チャネル45の組織サンプル50を、保護された状態で患者の体から取り除くことができる。
【0050】
図6は、器具10のシャフト11に管状の取り付け部51を有することができるヘッドを備える、本発明に係る器具10の詳細を示す図である。ヘッド12は、尖頭の端部52を有し、端部52および取り付け部51との間に、管状の接着部53が配置される。ヘッド12は、接着部53に腰部54を有する。具体的には、接着部53の外径は、尖頭の端部52の外径に対して小さくなっている。接着部53の壁は、取り付け部51と比較して、厚みが薄くなっていることが好ましい。接着部53は、尖頭の端部52内まで延在してもよい膨張チャンバ18を画定する。供給ライン15のキャピラリライン部21は、接着部53内まで延在する。尖頭の端部52は、サンプルを採取するために容易に組織を突き刺すことができる。サンプルを採取するために、器具10の供給ライン15は流体で充填され、この場合、流体は、供給ライン15を通って膨張チャンバ18に向かう流れ方向に流れ、膨張チャンバ内で膨張し、ヘッド12を冷却する。こうすることによって、具体的には、組織を凍結する効果は、接着部53から生じてもよい。接着部53の外径が、尖頭の端部52の外径よりも小さいことによって、ヘッド12と、凍結された、付着した組織との間に確かな結合が形成されるため、サンプルを採取することが容易になる。
【0051】
図7は、ヘッド受け部55によってシャフト11に取り付けられるヘッド12を備える、本発明に係る器具10の例示的な実施の形態の遠位端部13の詳細を示す図である。器具10のヘッド受け部55は、シャフト11およびヘッド12によって囲まれている内腔内に延在する。キャピラリライン部21の外径は、キャピラリライン部21に向かう移行部32n-1に隣接するステップ部30n-1の外径よりも小さい。移行部32n-1において、キャピラリライン部21に向かって供給ライン15の内断面が連続的に先細になっていることによって、供給ライン15から流出する流体によって、膨張されたガスの流れ戻りを妨げることが概ね防止される。さらに、供給ライン15の外断面40が移行部32n-1において(膨張チャンバ18から流出するガスの流れ方向に)連続的に増加することによって、急激に増加する器具と比較して、帰還ライン19の流れ抵抗を向上させることができる。供給ライン15の構成によって、ヘッド受け部55を通る自由体積を減少させたにもかかわらず、膨張されたガスが適切に帰還することが可能になる。キャピラリチューブ部21の開口22に対向し、膨張チャンバ18を画定する壁面26は、例示的な本実施の形態および
図6に係る実施の形態において、円錐の側面である。
【0052】
器具10の膨張チャンバ18内へ流体を運ぶための供給ライン15を備える凍結手術器具10を開示する。供給ライン15は、膨張チャンバ18内で終端となり、かつ当該流体のための開口部を形成するキャピラリライン部21を有することで、膨張チャンバ18において当該流体が膨張する間にジュール・トムソン効果を形成する。供給ライン15の流れ断面は、少なくとも1つの移行部32n-2、32n-1において減少し、好ましくは、供給ライン15の2以上の移行部32n-2、32n-1において、膨張チャンバ18に向かう流れ方向34に、漏斗形状に先細になる。流れ方向34に見て、各移行部32n-2、32n-1の後に、供給ライン15のステップ部30n-1、30nが移行部32n-2、32n-1に隣接して続くことが好ましく、流れ断面の後の方の部分は、概ね一定であることが好ましい。最後のステップ部30n-1、30nは、キャピラリライン部21によって形成されることが好ましい。流体における圧力の変動は、ステップ部30n-1、30nで減少させることができる。移行部32n-2、32n-1において流体が加速されることによって、また、キャピラリチューブ部21において、任意でさらなるステップ部30n-1、30n-2において、圧力の変動が減少されることによって、膨張チャンバ18から出た膨張ガスの流れ戻りを妨害することなく膨張チャンバ18における膨張範囲が拡大される。
【0053】
キャピラリチューブ部21および漏斗形状の移行部30n-2、30n-1を使用することによって、フィードバックライン15の端部に開口部を有する凍結手術器具と比較して、本発明に係る器具10内では流体の噴射を広げることなく、流体の噴射の自由経路の長さが大幅に増加される。それによって、開口22から流出して膨張チャンバ18内へ流れる流体と、膨張チャンバ18から戻って流れるガスとの干渉を大幅に減少させることができる。圧力の変動、および/または、供給ライン15を通って開口22に向かう方向に流れる流体の渦は、本発明に係る器具10の一実施の形態において、流体の噴射を膨張チャンバ18内で広げることなく流体の噴射の自由経路の長さを規定しない程度にキャピラリチューブ部21において軽減されることが好ましい。広がらない流体の噴射の自由経路の長さは、開口22から、流体の流れ方向34に、流体の噴射の直径が開口22におけるキャピラリライン部21の外径の寸法を超える膨張チャンバ18内の地点まで計測される。または、広がらない流体の噴射の自由経路の長さは、開口22から、流体の流れ方向34に、開口22から膨張チャンバ18内へ流出する流体の噴射とフィードバックライン19に戻って流れるガスと干渉が始まる位置における(流れ方向34の)膨張チャンバ18の地点まで測定される。
【符号の説明】
【0054】
10 器具
11 シャフト
12 ヘッド
13 器具の遠位端部
13a 器具の遠位端
14 接着表面
15 供給ライン
16 開口部
17 開口
18 膨張チャンバ
19 帰還ライン
19m-2、19m-1 帰還ラインの移行部
20 帰還ラインの遠位端
21 キャピラリライン部/キャピラリチューブ部
22 開口
23 前側
24 キャップ
25 距離
26 壁面
27 内腔
28 直径
29 長さ
30n-2、30n-1、30n ステップ部
32n-2、32n-1 移行部
33 内断面積/流れ断面積
34 膨張チャンバに向かう流れ方向
35 内壁面
36 移行領域
37 先細角度
38a シャフトの壁
38b ヘッドの壁
39 供給ラインの壁
40 外断面
41 帰還ラインの流れ断面
42 膨張チャンバから流出する流れ方向
43 遠位作業端
44 キャピラリチューブ部の壁
45 作業チャネル
46 内視鏡
47 端部
48 端部の外径
49 シャフトの外径
50 組織サンプル
51 取り付け部
52 端部
53 接着部
54 腰部
55 ヘッド受け部
An-2、An-1、An 帰還ラインの流れ断面積の容量
Bn-2、Bn-1、Bn 供給ラインの流れ断面積の容量
S1-S1、S2-S2,S3-S3 切断面