(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】オイル含有繊維構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 13/02 20060101AFI20240322BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20240322BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20240322BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240322BHJP
D01F 6/46 20060101ALI20240322BHJP
D01D 5/08 20060101ALI20240322BHJP
D06M 13/00 20060101ALI20240322BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
D06M13/02
C08L53/02
C08L91/00
C08L101/00
D01F6/46 A
D01D5/08 C
D06M13/00
D04H3/16
(21)【出願番号】P 2019152880
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】307046545
【氏名又は名称】クラレクラフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 英治
(72)【発明者】
【氏名】小畑 創一
(72)【発明者】
【氏名】中山 和之
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-186719(JP,A)
【文献】国際公開第2005/090466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/715
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
D01D 1/00 - 13/02
D01F 1/00 - 6/96
D01F 9/00 - 9/04
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンエラストマー
を含む繊維を含む繊維集合体と、該繊維集合体100質量部に対して100から200質量部のオイル成分とを含むオイル含有繊維構造体であり、前記スチレンエラストマーがポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEEPS)、およびポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン(SEBS)からなる群から選択される少なくとも1種であ
り、前記繊維の質量を100質量%として、スチレンエラストマーの量が70から90質量%であるオイル含有繊維構造体。
【請求項2】
繊維集合体がスチレンエラストマー
を含む繊維を50質量%以上含む、請求項1に記載のオイル含有繊維構造体。
【請求項3】
繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径が0.5から20μmである、請求項1または2に記載のオイル含有繊維構造体。
【請求項4】
前記スチレンエラストマー
を含む繊維が、さらに熱可塑性樹脂を含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のオイル含有繊維構造体。
【請求項5】
熱可塑性樹脂がポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートアクリル樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4に記載のオイル含有繊維構造体。
【請求項6】
オイル含有繊維構造体がシート状である、請求項1から5のいずれか1項に記載のオイル含有繊維構造体。
【請求項7】
繊維集合体が不織布である、請求項6に記載のオイル含有繊維構造体。
【請求項8】
不織布がメルトブローン不織布である、請求項7に記載のオイル含有繊維構造体。
【請求項9】
オイル成分が前記繊維集合体内に膨潤含浸してなる、請求項1から8のいずれか1項に記載のオイル含有繊維構造体。
【請求項10】
前記オイル成分が、流動パラフィン、鉱物油、植物油、美容油、および香料からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1から9のいずれか1項に記載のオイル含有繊維構造体。
【請求項11】
前記オイル成分が、保湿剤、冷感剤、温感剤、防虫剤、忌避剤、誘引剤、防ダニ剤、抗菌剤、および難燃剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項10に記載のオイル含有繊維構造体。
【請求項12】
スチレンエラストマー
を含む繊維を含む繊維集合体と、該繊維集合体100質量部に対して100から200質量部のオイル成分とを含むオイル含有繊維構造体であり、前記オイル成分が、保湿剤、冷感剤、温感剤、防虫剤、忌避剤、誘引剤、防ダニ剤、抗菌剤、および難燃剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有するオイル含有繊維構造体。
【請求項13】
(1)スチレンエラストマーを含む原料100質量部にオイル成分を0から90質量部添加し繊維原料を得る工程、
(2)得られた繊維原料から繊維集合体を得る工程、および
(3)前記繊維集合体100質量部に対してオイル成分が100から200質量部となるように前記繊維集合体にオイル成分を添加してオイル含有繊維構造体を得る工程、
を含む請求項1~12のいずれか1項に記載のオイル含有繊維構造体の製造方法。
【請求項14】
スチレンエラストマーを含む原料がスチレンエラストマーと熱可塑性樹脂の組成物である、請求項13に記載のオイル含有繊維構造体の製造方法。
【請求項15】
スチレンエラストマーがポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEEPS)、およびポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン(SEBS)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13または14に記載のオイル含有繊維構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルを含有する繊維構造体およびその製造方法に関する。さらに詳細にはスチレンエラストマーからなるオイル含有繊維構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレンエラストマーは熱可塑性エラストマーの中では比較的低コストで、ゴムに近い弾性率を持っており、他の熱可塑性エラストマーよりもやわらかく、硬度の範囲も幅広い。また他の樹脂との相性もよく、低温物性に優れるなど、ゴムの代替品として広く用いられている。
【0003】
スチレンエラストマーの用途は、靴底、自動車部品、筆記具のグリップ、スポーツ用品や、他の樹脂とのラミネート、アスファルトブレンド、磁気材料、電子線架橋等広きにわたっている。
スチレンエラストマーは、ポリオレフィンやゴム用軟化剤との相溶性が良いことから、スチレンエラストマーとこれらの組成物も広く使用されている。
【0004】
一方で、透明でかつさらに硬度の低い素材としてスチレンエラストマー組成物が求められている。スチレンエラストマーに鉱物油を軟化剤として添加すると硬度が低下して柔軟性が増すことが知られているが、多量に使用すると鉱物油がブリードアウトし、手で触れたり足に触れたりした時、べた付いた感じとなる。またスチレンエラストマーに多量の鉱物油を添加すると、スチレンエラストマーが未溶融状態で分散し透明性が悪化する。
【0005】
スチレンエラストマーに、結晶性プロピレン樹脂と非結晶プロピレン-α-オレフィン共重合体を所定の割合で混合したものと、所定の物性を有するエチレン-α-オレフィン共重合体を配合することにより鉱物油系のゴム用軟化剤のブリードアウトを抑えた半透明のエラストマー組成物が提案されている(例えば特許文献1)。
【0006】
また、透明度が高く滑り止め性が良く、しかも表面べとつき性の少ない使用感が良好なエラストマー組成物として、質量平均分子量10万~20万のスチレンエラストマーに動粘度30~150cStの鉱物油を120~500質量部を添加したスチレンエラストマー組成物も提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-220513号公報
【文献】特開2008-63365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物は、粘着性と透明性との両立という面では未だ十分ではなく、さらに粘着性に富んだ透明な素材が要求されている用途には向かないものであった。
【0009】
さらに、特許文献2に記載の組成物を例えば紡糸等により繊維としようとしても繊維状とはならず、また鉱物油のブリードアウトが激しく繊維同士がくっつき、繊維構造体を得ることは困難であった。
【0010】
したがって上記課題を解決し、透明性、粘着性、およびハンドリング性に優れる繊維構造体が求められている。
すなわち本発明の目的は透明性、粘着性、およびハンドリング性に優れるオイル含有繊維構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らはオイル成分を繊維集合体に含浸させると、多量のオイル成分を含浸させても表面のべた付きがなく、粘着性および透明性に優れる繊維構造体が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の繊維構造体を提供する。
[1]スチレンエラストマーを含む繊維を含む繊維集合体と、該繊維集合体100質量部に対して100から200質量部のオイル成分とを含むオイル含有繊維構造体であり、前記スチレンエラストマーがポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEEPS)、およびポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン(SEBS)からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記繊維の質量を100質量%として、スチレンエラストマーの量が70から90質量%であるオイル含有繊維構造体。
[2]繊維集合体がスチレンエラストマーを含む繊維を50質量%以上含む、上記[1]に記載のオイル含有繊維構造体。
[3]繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径が0.5から20μmである、上記[1]から[2]に記載のオイル含有繊維構造体。
[4]前記スチレンエラストマーを含む繊維が、さらに熱可塑性樹脂を含有する、上記[1]から[3]のいずれかに記載のオイル含有繊維構造体。
[5]熱可塑性樹脂がポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートアクリル樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[4]に記載のオイル含有繊維構造体。
[6]オイル含有繊維構造体がシート状である、上記[1]から[5]のいずれかに記載のオイル含有繊維構造体。
[7]繊維集合体が不織布である、上記[6]に記載のオイル含有繊維構造体。
[8]不織布がメルトブローン不織布である、上記[7]に記載のオイル含有繊維構造体。
[9]オイル成分が前記繊維集合体内に膨潤含浸してなる、上記[1]から[8]のいずれかに記載のオイル含有繊維構造体。
[10]前記オイル成分が、流動パラフィン、鉱物油、植物油、美容油、および香料からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]から[9]のいずれかに記載のオイル含有繊維構造体。
[11]前記オイル成分が、保湿剤、冷感剤、温感剤、防虫剤、忌避剤、誘引剤、防ダニ剤、抗菌剤、および難燃剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、上記[10]に記載のオイル含有繊維構造体。
[12]スチレンエラストマーを含む繊維を含む繊維集合体と、該繊維集合体100質量部に対して100から200質量部のオイル成分とを含むオイル含有繊維構造体であり、前記オイル成分が、保湿剤、冷感剤、温感剤、防虫剤、忌避剤、誘引剤、防ダニ剤、抗菌剤、および難燃剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有するオイル含有繊維構造体。
【0012】
さらに本発明は、以下のオイル含有繊維構造体の製造方法を提供する。
[13](1)スチレンエラストマーを含む原料100質量部にオイル成分を0から90質量部添加し繊維原料を得る工程、
(2)得られた繊維原料から繊維集合体を得る工程、および
(3)前記繊維集合体100質量部に対してオイル成分が100から200質量部となるように前記繊維集合体にオイル成分を添加してオイル含有繊維構造体を得る工程、
を含む上記[1]~[12]のいずれかに記載のオイル含有繊維構造体の製造方法。
[14]スチレンエラストマーを含む原料がスチレンエラストマーと熱可塑性樹脂の組成物である、上記[13]に記載のオイル含有繊維構造体の製造方法。
[15]スチレンエラストマーがポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEEPS)、およびポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン(SEBS)からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[13]または[14]に記載のオイル含有繊維構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明性、粘着性、およびハンドリング性に優れるオイル含有繊維構造体、およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のオイル含有繊維構造体の透明性評価において、評価1(透明性は全くなく文字は見えない)の模式図である。
【
図2】本発明のオイル含有繊維構造体の透明性評価において、評価2(透明ではないがシートに透け感がある。文字は見えない)の模式図である。
【
図3】本発明のオイル含有繊維構造体の透明性評価において、評価3(文字が霞んで見える)の模式図である。
【
図4】本発明のオイル含有繊維構造体の透明性評価において、評価4(文字がクリアに透けて見える)の模式図である。
【
図5】実施例1で得られたオイル含有繊維構造体の表面を示す電子顕微鏡写真(倍率:30倍)である。
【
図6】実施例1で得られたオイル含有繊維構造体の表面を示す電子顕微鏡写真(倍率:200倍)である。
【
図7】比較例3で得られたオイル含有繊維構造体の表面を示す電子顕微鏡写真(倍率:30倍)である。
【
図8】比較例3で得られたオイル含有繊維構造体の表面を示す電子顕微鏡写真(倍率:200倍)である。
【
図9】比較例4で得られたオイル含有繊維構造体の表面を示す電子顕微鏡写真(倍率:30倍)である。
【
図10】比較例4で得られたオイル含有繊維構造体の表面を示す電子顕微鏡写真(倍率:200倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のオイル含有繊維構造体は、スチレンエラストマーからなる繊維を含む繊維集合体と、該繊維集合体100質量部に対して100から200質量部のオイル成分とを含んでなる。このような特定量のオイル成分を含有するオイル含有繊維構造体は、透明性、粘着性、およびハンドリング性に優れる。オイル含有繊維構造体の製造方法として、例えば下記の方法が挙げられる。
(1)スチレンエラストマーを含む原料100質量部にオイル成分を0から90質量部添加し繊維原料を得る工程、
(2)得られた繊維原料から繊維集合体を得る工程、および
(3)前記繊維集合体100質量部に対してオイル成分が100から200質量部となるように前記繊維集合体にオイル成分を添加してオイル含有繊維構造体を得る工程、
を含むオイル含有繊維構造体の製造方法。
【0016】
本発明に用いるスチレンエラストマーは、主な単量体であるスチレンと、必要に応じて他の単量体との共重合体であって、熱可塑性を示す高分子である。通常、スチレンエラストマーは、ハードセグメントと呼ばれるポリスチレンブロックと柔軟なエラストマーブロックで構成されており、ジブロックまたはトリブロックのように複数のブロック部分を有するブロック共重合体である。
【0017】
柔軟なエラストマーブロックは通常、ポリオレフィンブロックでありエチレンまたはプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等の炭素数3から10のα-オレフィンとの共重合体からなる。ポリオレフィンブロックはエチレンとα-オレフィンとの共重合体がエラストマー性の観点から好ましく、エチレンとα-オレフィンとのランダム共重合部分を複数含むブロック共重合体がより好ましい。
【0018】
スチレンエラストマーの例としては、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEEPS)およびポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン(SEBS)が挙げられる。これらのなかでも、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)またはポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEEPS)がより好ましく、後述するオイル成分との相溶性の観点から、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEEPS)がさらに好ましい。
【0019】
本発明において、スチレンエラストマーからなる繊維は、上記スチレンエラストマーを繊維原料として紡糸を行い繊維としてもよいし、上記スチレンエラストマーと他の樹脂との組成物とし、得られた組成物を繊維原料として紡糸を行い繊維としてもよい。繊維原料であるスチレンエラストマー、またはスチレンエラストマーと他の樹脂との組成物には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤を添加してもよい。
【0020】
スチレンエラストマーと他の樹脂との組成物とする場合、他の樹脂としては、熱可塑性樹脂がスチレンとの相溶性の観点から好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリスチレン(PS)、ポリアセタール(POM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタレートアクリル樹脂等の汎用プラスチック、ポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、環状ポリオレフィン(COP)等のエンジニアリングプラスチック、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)(Polyether sulfone)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)(Polyamide-imide)等のスーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0021】
これら熱可塑性樹脂の中でも、汎用プラスチックがコストの観点から好ましく、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートアクリル樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。ポリオレフィンとしては上述と同様に、エチレンまたはプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等の炭素数3から10のα-オレフィンの重合体またはこれらの共重合体が好ましく、紡糸性の観点からプロピレン単位を含む重合体とスチレンエラストマーとの組成物が好ましい。
【0022】
上記スチレンエラストマーまたはスチレンエラストマーと他の樹脂との組成物を繊維原料として紡糸を行い、スチレンエラストマーからなる繊維とする。スチレンエラストマーからなる繊維としては、最終的に得られるオイル含有繊維構造体の強度の観点から、スチレンエラストマーと他の樹脂との組成物からなる繊維が好ましい。スチレンエラストマーと他の樹脂との組成物からなる繊維の場合、該繊維中のスチレンエラストマーの量は繊維の質量を100質量%として、50質量%以上が好ましく、60から95質量%がより好ましく、70から90質量%がさらに好ましい。例えば上記スチレンエラストマーとポリプロピレンのようなポリオレフィンとの組成物からなる繊維の場合、スチレンエラストマーの量を上記範囲内とすることで、得られるオイル含有繊維構造体のハンドリング性と強度のバランスが優れたものとなる。また後述するように、繊維集合体とする時にスチレンエラストマーの含有量が異なる複数種の組成物からなる繊維を用いて繊維集合体としてもよい。
【0023】
上記スチレンエラストマーからなる繊維とする方法は特に限定されないが、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、ゲル紡糸法、液晶紡糸法等があり、なかでも溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法が生産性の観点から好ましく、溶融紡糸法がより好ましい。後述する繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径は特に限定されないが、ハンドリング性および透明性の観点から、0.5から20μmが好ましく、1から15μmがより好ましく、2から10μmがさらに好ましい。繊維の平均繊維径とは、単繊維の数平均繊維径を意味し、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
【0024】
上記紡糸された複数の繊維により集積層を形成し、さらに各繊維同士を結合させることで繊維集合体となる。繊維集合体の前駆体を形成する方法は例えば、乾式法、湿式法、スパンボンド法、およびメルトブローン法である。これら方法の中では、生産効率の観点からメルトブローン法が好ましい。
【0025】
上記スチレンエラストマーからなる繊維を形成する工程から繊維集合体を形成する工程は連続的に行ってもよいし、一旦、繊維としたものを別途、繊維集合体としてもよい。生産性の観点から連続的に行うことが好ましい。
【0026】
各繊維同士を結合させる方法として、例えば、繊維同士を熱により融着する方法、圧力により圧着する方法、接着剤等で化学的に結合させる方法、繊維同士を外部からの力等により絡ませる方法が挙げられる。これらの方法の例として、サーマルボンド法、スチームジェット法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、水流絡合法等が挙げられる。
上記方法により、シート状またはフィルム状の繊維集合体となる。繊維集合体の形態としては、例えば、不織布、織物、編物、フェルトおよびスポンジ等が挙げられる。得られた繊維集合体はさらに圧空、真空成形等により二次加工を施してもよいし、貼合、接合等により三次元集合体としてもよい。
【0027】
上記繊維集合体は、スチレンエラストマーとは異なる樹脂の繊維を含んでいてもよい。スチレンエラストマーとは異なる樹脂の繊維を含む場合、予め短繊維として、スチレンエラストマーからなる繊維と混合し、繊維集合体としてもよいし、共押出により異なるノズルから別々に紡糸し、スパンボンド法やメルトブローン法により繊維集合体としてもよい。
繊維集合体がスチレンエラストマーとは異なる樹脂の繊維を含む場合、スチレンエラストマーからなる繊維の量は、繊維集合体を100質量%として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。繊維集合体中のスチレンエラストマーからなる繊維の量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0028】
また繊維集合体を100質量%として、スチレンエラストマーの含有量は50質量%以上であることが、最終的に得られるオイル含有繊維構造体のハンドリング性の観点から好ましく、95質量%以下がオイル含有繊維構造体の強度の観点から好ましい。オイル含有繊維構造体のハンドリング性と強度の観点からスチレンエラストマーの量は70から90質量%がより好ましい。
【0029】
上記繊維集合体は、表面積を大きくでき、適量のオイル成分を均一に膨潤含浸できる観点から、シート状の不織布であることが好ましい。不織布としては、メルトブローン不織布、エレクトロスピニング不織布、や極細繊維不織布等がある。極細繊維不織布としては、例えば、分割繊維を不織布としてから分割繊維を繊維方向に解繊して得られる不織布、海島繊維を不織布としてから海部分を溶出させて得られる不織布、不織布を形成する繊維を外部からの物理的力によりフィブリル化してられる不織布などが挙げられる。ハンドリング性の観点から、繊維集合体はメルトブローン不織布が好ましい。
【0030】
メルトブローン不織布は、ノズルから押し出された溶融熱可塑性ポリマーを、熱風噴射することにより繊維状に細化し、得られた繊維の自己融着特性を利用して繊維ウェブとして形成させるメルトブローン法により得ることができる。
【0031】
繊維集合体の目付は特に限定されないが、10~200g/m2程度であってもよく、12~180g/m2が好ましく、15~150g/m2がさらに好ましい。繊維構造体の目付は、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
【0032】
繊維集合体の厚さは特に限定されないが、0.10~7.00mm程度であってもよく、0.15~6.00mmが好ましく、0.20~5.00mmがより好ましい。繊維構造体の厚さは、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。なお、厚さを測定する際の断面写真の倍率は、繊維構造体の厚さ方向全体が表示される倍率であればよく、例えば10~100倍であってもよい。
【0033】
本発明のオイル含有繊維構造体は上記繊維集合体がさらにオイル成分を含有している。オイル成分とは、40℃での動的粘度が20から2000cSt(mm2/s)の液体であり、鉱物油、植物油、動物油等があり、使用目的によっては潤滑油、機械油、食用油、美容油、香油などが挙げられる。オイル成分は1種でも2種以上であってもよい。
【0034】
また、上記オイル成分は、本発明のオイル含有繊維構造体の使用目的に応じて、種々の剤を含んでもよい。含まれる剤としては防虫剤、忌避剤、誘引剤、防ダニ剤、抗菌剤、保湿剤、湿布薬剤、冷感剤、温感剤等が挙げられる。これらの成分を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0035】
本発明のオイル含有繊維構造体は上記オイル成分を、上記繊維構造体100質量部に対して100から200質量部含有する。100質量部より少ないとオイル含有繊維構造体は粘着性と透明性に劣り、200質量部より多いとハンドリング性に劣る。オイル含有繊維構造体100質量部に対する、上記オイル成分の含有量は、110から190質量部が好ましく、120から180質量部がより好ましい。
【0036】
上記オイル含有繊維構造体がオイル成分を上記範囲内で含有することで、上記オイル成分が分散媒、上記繊維が分散質となり、オイル含有繊維構造体は、オイル成分と繊維の混合物の粘度が大きくなって流動性を失った状態、いわゆるゲル化状態となっている。ゲル化することにより、本発明のオイル含有繊維構造体は、透明性および粘着性に優れた構造体となる。また粘着性に優れるが、オイル成分のブリードアウトが少なく表面のベト付きがなく、ハンドリング性に優れたオイル含有繊維構造体となる。
【0037】
本発明のオイル含有繊維構造体は、繊維集合体にオイル成分が含浸し、繊維集合体がオイル成分で膨潤することで上記ゲル化が進行する。なおオイル成分が繊維集合体に膨潤含浸しているとは、上記繊維構造体において、繊維が網の目構造を形成し、オイル成分が網の目間に浸透するとともに、該網の中にオイル成分が抱込まれ、微視的に繊維の網の目構造が膨張した状態にあることをいう。
【0038】
オイル含有繊維構造体がゲル化状態となっているかどうかは、例えば、走査型電子顕微鏡でオイル含有繊維構造体の表面を観察することで、判別できる。オイル含有繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で観察し写真を撮影した時、黒い影のように写り、繊維間の境界が明確に観察できなければ、オイル含有繊維構造体はゲル化していると判断できる。
【0039】
上記ゲル化状態を達成するために、前記繊維集合体にオイル成分を上記範囲となるように添加する。添加の方法は、繊維集合体をオイル成分に浸漬する方法、オイル成分を繊維集合体に塗布する方法、オイル成分を繊維集合体に噴霧する方法等がある。浸漬する方法としては、繊維集合体が連的に長尺形状で製造される場合、オイル成分が貯蔵した槽に繊維集合体を搬送しながら浸漬し、ロール間で含浸させるディッピング法またはパディング法がある。
【0040】
浸漬するディッピング法としてはディップニップ法がある。
塗布する方法としては、グラビアコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティング、ホットメルトコーティング等のコーティング法がある。
【0041】
噴霧する方法はスプレー法、シャワー滴下法等がある。またスクリーン印刷やグラビア印刷、インクジェット印刷等の印刷法により、オイル成分を繊維集合体に添加してもよい。
【0042】
オイル成分は繊維集合体全体に添加してもよく、また部分的に添加してもよい。オイル成分を部分的に添加することで、上記したゲル化した部分とゲル化してない部分がオイル含有繊維構造体に共存することとなり、意匠性や部分粘着性に優れたオイル含有繊維構造体とすることができる。部分的にオイル成分を添加する場合、上記の印刷法やコーティング法が好ましい。
【0043】
最終的に得られるオイル含有繊維構造体のオイル成分の含有量が上記範囲にあればよく、例えば、上述したスチレンエラストマーまたはスチレンエラストマーを含有する組成物(以下、スチレンエラストマーを含む原料と称する場合がある)に、予めオイル成分を添加して繊維原料として、該繊維原料を上述した方法により紡糸し繊維を得てもよい。
【0044】
スチレンエラストマーを含む原料にオイル成分を添加する場合、添加するオイル成分はスチレンエラストマーを含む原料100質量部に対して90質量部以下が好ましい。90質量部を超えて添加すると、スチレンエラストマーを含む原料の紡糸性が低下し、糸条物が互いに固着し、得られる繊維集合体の取り扱いが難しくなる。
【0045】
スチレンエラストマーを含む原料に必要に応じて所望の量のオイル成分を添加し、スクリュー、ミキサー、ブレンダー等により均一に混合し、繊維原料を得ることができる。得られた繊維原料はオイル成分を、スチレンエラストマーを含む原料100質量部に対して、0から90質量部含んでもよく、0から50質量部が好ましく、0から10質量部がより好ましく、0質量部であってもよい。
【0046】
上記繊維原料を上述した方法により紡糸し、繊維が得られる。得られた繊維を上述した方法により繊維集合体とする。繊維集合体とするとき、繊維原料として上述のとおりスチレンエラストマー以外の樹脂からなる繊維を添加してもよい。さらに繊維原料はオイル成分を含んでもよいが、最終的に得られるオイル含有繊維構造体のオイル成分の含有量は上記範囲となるように調整する。
【0047】
また繊維集合体を製造するときに、スチレンエラストマーの含有量が異なる複数種のスチレンエラストマーを含む原料を用いもよいし、スチレンエラストマー以外の複数種の樹脂を用いてもよい。さらにオイル成分の含有量が異なるスチレンエラストマーを含む原料またはスチレンエラストマー以外の樹脂を用いてもよい。
【0048】
得られた繊維集合体100質量部に対してオイル成分が100から200質量部となるように、オイル成分を添加し、本発明のオイル含有繊維構造体が得られる。添加方法は上述のとおりである。なお、オイル成分を含む繊維原料を用いて繊維集合体を得た場合、繊維集合体の質量にオイル成分の質量は含まないものとする。また、本発明のオイル含有繊維構造体を三次元構造体として用いる場合は、オイル成分を繊維集合体に添加する前に上述した二次加工等により三次元構造体とし、その後、オイル成分を添加する方法が成形加工の観点から好ましい。
【0049】
上記方法により得られた本発明のオイル含有繊維構造体は透明性、粘着性、およびハンドリング性に優れ、種々の用途に用いることができる。
本発明のオイル含有繊維構造体をシート状とし、例えばポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなるシートに添付することで、必要な部分に粘着性を付与することができる。
【0050】
例えば、ポリプロピレン樹脂のような熱可塑性樹脂からなる繊維で構成された不織布の上で、上記スチレンエラストマーからなる繊維を上記メルトブローン法等により紡糸し、上述のとおりオイル含有繊維構造体とすることで、熱可塑性樹脂からなる繊維で構成された不織布と本発明のオイル含有繊維構造体を含む二層以上の多層構造の複合不織布を得ることができる。
【0051】
さらには、熱可塑性樹脂からなる繊維とスチレンエラストマーからなる繊維を別々に紡糸、繊維集合体として、両者を熱エンボス等の方法で貼り合せてもよい。上述のように本発明のオイル含有繊維構造体は種々の構造体と複合化することで、さまざまな用途に応用することができる。
【0052】
またオイル成分に上述のような種々の剤を含有させて、本発明のオイル含有繊維構造体とすることで、種々の機能を備えたシート状等の構造体とすることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0054】
[粘着性]以下の方法によりサンプルを作成し、触感により下記の基準にて4段階で判定した。
後述する各実施例および比較例で作製したオイル含有繊維構造体を10cm角にカットし台紙に置いて感触評価用サンプルとした。
1:粘着性全く無く、表面はさらさらしている。指で押してもべた付くことはない。
2:粘着性があるがべた付くことはない。
3:粘着性がありややべた付く。
4:粘着性が高くべた付く。
上記評価結果において、1が最も粘着性が低く、4が最も粘着性が高い。
【0055】
[透明性]以下の方法によりサンプルを作成し、
図1から
図4に示した基準にて下記の4段階で判定した。
後述する各実施例および比較例で作製したオイル含有繊維構造体を10cm角にカットし評価用サンプルとした。普通紙にレーザープリンターで黒字印字した「ABC」の文字の上にサンプルを置き無荷重下で透明性を評価した。
1:透明性は全くなく文字は見えない。(
図1)
2:透明ではないがシートに透け感がある。文字は見えない。(
図2)
3:文字が霞んで見える。(
図3)
4:文字がクリアに透けて見える。(
図4)
上記評価結果において、1が最も透明性が低く、4が最も透明性が高い。
【0056】
[ハンドリング性の評価]
以下の方法によりサンプルを作成し、以下の基準により下記の3段階で判定した。
後述する各実施例および比較例で作製したオイル含有繊維構造体を10cm角にカットして、上部1辺を固定し吊り下げ、自重での変化を10分間観察してハンドリング性を評価した。
×:直ぐに垂れて伸びてしまい変形し厚みも不均一になり、ハンドリング性に劣る。
△:若干垂れがあり少し変形するが、ハンドリング性は問題ない。
〇:垂れはほとんどなく原形を留めており、ハンドリング性に優れる。
【0057】
[平均繊維径の測定]
繊維集合体を走査型電子顕微鏡(「JMC-6000Plus」、日本電子株式会社製)により1000倍の倍率で観察した。電子顕微鏡写真より無作為に選択した繊維の単繊維径をノギスを用いて測定した。異なる繊維50本の繊維径を測定し、平均値を算出して平均繊維径とした。
【0058】
[目付]
JIS L 1913「一般不織布試験方法」の6.2に準じて、繊維集合体の目付(g/m2)を測定した。
【0059】
[厚さ]
繊維集合体の厚さ方向に対して平行に、かつ後述するメルトブローンの機械方向(MD)に対して垂直となるように、剃刀(「フェザー剃刀S片刃」、フェザー安全剃刀(株)社製)を用いて任意の10カ所を切断し、デジタル顕微鏡での写真にてそれぞれの断面を観察した。一方の表面から他方の表面までの厚さ方向の距離を各切断面において測定し、これら10ヶ所の平均値を算出することにより、繊維集合体の厚さ(mm)を求めた。
【0060】
[実施例1]
(1)繊維集合体の作製
スチレンエラストマーとしてポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)(スチレン含有量は30質量%)85質量部に対し、他の樹脂としてポリプロピレン(PP)15質量部をドライブレンドした後、220℃で10分間溶融混練することで組成物を得た。得られた組成物を繊維原料として、一般的なメルトブローン設備を使用し、紡糸温度310℃、エア流量25Nm3/min、単孔吐出量0.4g/分、ノズル孔径0.3mm、にてメルトブローンを行い、繊維の平均繊維径5μm、目付100g/m2、厚さ0.5mmの繊維集合体を得た。得られた繊維集合体は、スチレンエラストマーからなる繊維で構成されるメルトブローン不織布であった。
【0061】
(2)オイル含有繊維構造体の作製
次いで、(1)で得られた繊維集合体100質量部に対して、オイル成分として流動パラフィン70-S(三光化学工業株式会社製)150質量部をディップニップ法で添加し、オイル含有繊維構造体を作製した。得られたオイル含有繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で観察した時の写真を
図5および6に示した。写真において、繊維間の境界が明確でなく、オイル成分が繊維間に膨潤含浸、し、オイル含有繊維構造体がゲル化していることを示している。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2]
実施例1(1)で得られた繊維集合体を用いて、繊維集合体100質量部に対するオイル成分の含浸量を110質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、オイル含有繊維構造体を作製した。得られたオイル含有繊維構造体は、ゲル状であり、オイル成分がスチレンエラストマーからなる繊維に膨潤含浸していた。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0063】
[実施例3]
実施例1(1)で得られた繊維集合体を用いて、繊維集合体100質量部に対するオイル成分の含浸量を190質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、オイル含有繊維構造体を作製した。得られたオイル含有繊維構造体は、ゲル状であり、オイル成分がスチレンエラストマーからなる繊維に膨潤含浸していた。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例4]
(1)繊維集合体の作製
スチレンエラストマーとしてポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)(スチレン含有量は30質量%)100質量部を繊維原料として、一般的なメルトブローン設備を使用し、紡糸温度310℃、エア流量25Nm3/min、単孔吐出量0.4g/分、ノズル孔径0.3mmにてメルトブローン行い、繊維の平均繊維径5μm、目付100g/m2、厚さ0.5mmの繊維集合体を得た。得られた繊維集合体は、スチレンエラストマーからなる繊維で構成されるメルトブローン不織布であった。
【0065】
(2)オイル含有繊維構造体の作製
次いで、(1)で得られた繊維集合体100質量部に対して、オイル成分として流動パラフィン70-S(三光化学工業株式会社製)150質量部をディップニップ法で添加し、オイル含有繊維構造体を作製した。得られたオイル含有繊維構造体は、ゲル状であり、オイル成分がスチレンエラストマーからなる繊維に膨潤含浸していた。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0066】
[実施例5]
ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)に代えて、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン(SEBS)(スチレン含有量は30質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、オイル含有繊維構造体を作製した。得られたオイル含有繊維構造体は、ゲル状であり、オイル成分がスチレンエラストマーからなる繊維に膨潤含浸していた。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0067】
[実施例6]
ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)70質量部に対して、ポリプロピレン(PP)を30質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、オイル含有繊維構造体を作製した。得られたオイル含有繊維構造体は、ゲル状であり、オイル成分がスチレンエラストマーからなる繊維に膨潤含浸していた。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0068】
[実施例7]
ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)65質量部に対して、ポリプロピレン(PP)を35質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、オイル含有繊維構造体を作製した。得られたオイル含有繊維構造体は、ゲル状であり、オイル成分がスチレンエラストマーからなる繊維に膨潤含浸していた。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0069】
[実施例8]
実施例1(1)で得られた繊維集合体を用いて、オイル成分として流動パラフィン70-Sに代えてレモンユーカリオイルを用いた以外は実施例1と同様にして、オイル含有繊維構造体を作製した。得られたオイル含有繊維構造体は、ゲル状であり、オイル成分がスチレンエラストマーからなる繊維に膨潤含浸していた。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0070】
[実施例9]
(1)繊維集合体の作製
スチレンエラストマーとしてポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEEPS)(スチレン含有量は30質量%)85質量部に対し、他の樹脂としてポリプロピレン(PP)15質量部をドライブレンドした後、220℃で10分間溶融混練することで組成物を得た。得られた組成物を繊維原料として、一般的なメルトブローン設備を使用し、紡糸温度310℃、エア流量25Nm3/min、単孔吐出量0.3g/分、孔径0.4mmにてメルトブローンを行い、繊維の平均繊維径5μm、目付100g/m2、厚さ0.5mmの繊維集合体を得た。得られた繊維集合体は、スチレンエラストマーからなる繊維で構成されるメルトブローン不織布であった。
【0071】
(2)オイル含有繊維構造体の作製
次いで、(1)で得られた繊維集合体100質量部に対して、オイル成分としてペパーミントオイル(高砂香料工業株式会社製「PEPPERMINT Oil ChineseRC」)150質量部をディップニップ法で添加し、オイル含有繊維構造体を作製した。得られたオイル含有繊維構造体は、ゲル状であり、オイル成分がスチレンエラストマーからなる繊維に膨潤含浸していた。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0072】
[実施例10]
実施例1(1)で得られた繊維集合体を用いて、オイル成分として流動パラフィン70-Sに代えてペパーミントオイルを用いた以外は実施例1と同様にして、オイル含有繊維構造体を作製した。得られたオイル含有繊維構造体は、ゲル状であり、オイル成分がスチレンエラストマーからなる繊維に膨潤含浸していた。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0073】
[比較例1]
実施例1(1)で得られた繊維集合体を用いて、繊維集合体100質量部に対してオイル成分の含浸量を90質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、オイル含有繊維構造体を得た。オイル成分の含浸量が少なかったため、得られたオイル含有繊維構造体はゲル化していなかった。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0074】
[比較例2]
実施例1(1)で得られた繊維集合体を用いて、繊維集合体100質量部に対してオイル成分の含浸量を210質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、オイル含有繊維構造体を得た。オイル成分の含浸量が多すぎため、得られたオイル含有繊維構造体はフィルム状になり、持ち上げると繊維構造体が崩壊する程ハンドリング性が悪かった。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0075】
[比較例3]
実施例1(1)で得られた、オイル含浸前の繊維集合体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。また、得られた繊維集合体の表面を走査型電子顕微鏡で観察した時の写真を
図7および8に示した。
図7および8から明らかなとおり、オイル成分が含まれていないため、スチレンエラストマーからなる繊維1本1本を観察することができた。
【0076】
[比較例4]
スチレンエラストマーとしてポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン(SEPS)(スチレン含有量は30質量%)85質量部に対し、他の樹脂としてポリプロピレン(PP)15質量部をドライブレンドした後、さらにSEPSとPPとの合計100質量部に対して、オイル成分として流動パラフィン70-S(三光化学工業株式会社製)90質量部をブレンドした後、220℃で10分間溶融混練することで組成物を得た。得られた組成物を繊維原料として、一般的なメルトブローン設備を使用し、紡糸温度310℃、エア流量25Nm3/min、単孔吐出量0.3g/分、孔径0.3mm、にてメルトブローンを行い、繊維の平均繊維径10μm、目付100g/m2、厚さ0.5mmのオイル含有繊維構造体を得た。得られた繊維構造体は、スチレンエラストマーからなる繊維とオイル成分とで構成されるメルトブローン不織布であった。
【0077】
また、得られた繊維集合体の拡大表面写真を
図9および10に示す。
図9および10から明らかな通り、少量のオイル成分を練りこんだ組成物から得られるオイル含有繊維構造体は、繊維間の境界が明確に観察され、ゲル化しておらず、オイル成分がスチレンエラストマーからなる繊維に膨潤含浸していなかった。得られたオイル含有繊維構造体について、上述の方法により粘着性、透明性、およびハンドリング性を評価した、評価結果を表1に示す。
【0078】
[比較例5]
SEPSとPPとの合計100質量部に対するオイル成分の添加量を150質量部としたこと以外は比較例4と同様にしてオイル含有繊維構造体を作製しようと試みたが、オイルの添加量が多すぎたため、紡糸できずオイル含有繊維構造体を得ることはできなかった。
具体的には、オイル成分を150質量部にして溶融混錬した樹脂組成物(ペレット)はオイル成分がブリードしてべた付いており、ブロッキングを起こしホッパーから上手く落ちて行かず安定に吐出できなかった。そのためメルトブローンを行えず、オイル含有繊維構造体を得ることができなかった。
【0079】
【0080】
上記表1から明らかなように、本発明のオイル含有繊維構造体は透明性、粘着性、およびハンドリング性に優れ、またハンドリング性に優れる。またオイル成分を繊維構造体に添加することで高濃度のオイル成分を含む繊維構造体を得ることができる。