(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】食品用包装材
(51)【国際特許分類】
B65D 65/34 20060101AFI20240322BHJP
B65D 65/32 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B65D65/34
B65D65/32
(21)【出願番号】P 2019164988
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241186
【氏名又は名称】朋和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】白井 直人
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-221062(JP,A)
【文献】特開2000-085832(JP,A)
【文献】特開2013-256299(JP,A)
【文献】登録実用新案第3073773(JP,U)
【文献】登録実用新案第3089616(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0066465(KR,A)
【文献】特開2003-341715(JP,A)
【文献】特開2018-113948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/32
B65D 65/34
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを用いて構成される食品用包装材であって、
シートは、
第1方向及び第1方向と交差する第2方向に沿って4辺を有する矩形状であり、
第1方向に延びる開封用条体と、
開封用条体を所定箇所で分断するように形成される切込線と、
切込線の形成により形成される遊離片と、
シートの外面に配置され、シートの外面側から切込線及び遊離片を覆ってシートにヒートシールにより接合される被覆片であって、摘み部を有する被覆片とを備え、
シールは、切込線及び遊離片を覆う面シールであり、かつ、シール強度は、2.49N/15mm以上6.0N/15mm以下に設定され、
正面視が円形状又は四角形状で、所定の厚みないし幅を有する立体形状に仕上げられ、正面、背面及び周状の側面を有する食品を包み込むように突き上げ包装するのに用いられ
、
切込線及び遊離片は、シートのうち食品の側面に接する箇所に形成され、
被覆片は、シートのうち食品の側面に接する箇所及び食品の側面から正面に掛かる箇所に跨って接合される
食品用包装材。
【請求項2】
シートを用いて構成される食品用包装材であって、
シートは、
第1方向及び第1方向と交差する第2方向に沿って4辺を有する矩形状であり、
第1方向に延び、シートの一端から他端にかけて波形でかつ互いに交差する一対の開封用条体と、
開封用条体を所定箇所で分断するように形成される切込線と、
切込線の形成により形成される遊離片と、
シートの外面に配置され、シートの外面側から切込線及び遊離片を覆ってシートにヒートシールにより接合される被覆片であって、摘み部を有する被覆片とを備え、
シールは、切込線及び遊離片を覆う面シールであり、かつ、シール強度は、2.49N/15mm以上6.0N/15mm以下に設定され、
シールによる接合部は、切込線から接合部の外縁までの最短距離が2mm以上となるような大きさに形成され、
シールによる接合部の第2方向における幅は、一対の開封用条体の最大幅よりも大きく、
正面視が円形状又は四角形状で、所定の厚みないし幅を有する立体形状に仕上げられ、正面、背面及び周状の側面を有する食品を包み込むように突き上げ包装するのに用いられる
食品用包装材。
【請求項3】
開封用条体は、シートの一端から他端にかけて波形でかつ互いに交差する一対の開封用条体であり、
切込線は、一対の開封用条体の交差部に形成され、
一対の開封用条体の交差部の厚みは、シートの厚みよりも大きい
請求項1
又は請求項2に記載の食品用包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
正面視が円形状又は四角形状あるいはこれらに類似する形状で、所定の厚みないし幅を有する立体形状に仕上げられた、おにぎり、ピラフ、チャーハン、寿司等の米飯加工食品等の食品は、食品を包装可能に面状に形成された包装材を用い、包装材を食品の形状に沿わすように変形させて、食品を包み込むように包装するのが一般的である。
【0003】
そして、シートの開裂手段として、波形でかつ互いに交差する一対の開封用条体を用い、一対の開封用条体の交差部に切込線を形成して遊離片を形成し、シートの外面側から切込線及び遊離片を被覆片で覆い、被覆片の摘み部を摘んで開封操作することにより、開封用条体による開裂開口を幅広に形成して、シートと食品との接触面積を少なくし、食品を取り出しやすくした食品用包装材が知られている(特許文献1)。
【0004】
図8(a)は、この特許文献1に記載された食品用包装材と同様の包装材1’を示す。かかる包装材1’には、食品よりも大きな矩形状のシート2’が用いられる。シート2’は、内面の一端から他端にかけて波形でかつ互いに交差する一対の開封用条体20’,20’を備える。シート2’の一端側であって、開封用条体20’,20’の交差部には、シート2’の他端側への指向性を有するU字状の切込線21’が形成されるとともに、切込線21’を外形線とする遊離片22’が形成される。
【0005】
食品を包装するには、包装材1’の下方に食品を配置し、食品を下方から突き上げて包装材1’の内面の中央部に押し込むことで、包装材1’を食品の形状に沿わすように変形させて、食品を包み込み、この後、包装材1’の外周端部を集束させて、ここにシールやラベルを貼着するといういわゆる突き上げ包装が用いられる(
図8(b))。
【0006】
なお、被覆片3’は、食品Fを包装する際に、又は、食品Fを包装した後に、シート2’に貼着される。被覆片3’は、シート2’の外面に剥離自在に粘着する粘着面を有する本体部30’と、本体部30’から突出する摘み部31’とを備える。本体部30’は、切込線21’及び遊離片22’を覆うようにシート2’の外面に貼着される。
【0007】
包装材1’により包装された食品Fを食する際には、
図8(c)に示す如く、被覆片3’の摘み部31’を摘んで引く。そうすると、一対の開封用条体20’,20’が引っ張られてシート2’に幅広の分断開放部が形成され、この分断開放部から食品Fを取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、この種の食品は、調理時に炒める等して油分を含んでいることが多い。この油分は、時として切込線21’から染み出ることがある。しかし、被覆片3’は、シート2’に貼着されているだけであるため、切込線21’から染み出した油分がさらに被覆片3’の外縁からシート2’表面に染み出る(油漏れする)のを防ぐ能力は高くない。そして、油分がシート2’表面に染み出た包装体を持つと、手に油分が付き、これが気になる人にとっては、手を拭いたり、手を洗わなければならないという煩わしさが生じる。
【0010】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、被包装物の食品が含んでいる油分が染み出るのを好適に防止することができる食品用包装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る食品用包装材は、
シートを用いて構成される食品用包装材であって、
シートは、
第1方向及び第1方向と交差する第2方向に沿って4辺を有する矩形状であり、
第1方向に延びる開封用条体と、
開封用条体を所定箇所で分断するように形成される切込線と、
切込線の形成により形成される遊離片と、
シートの外面に配置され、シートの外面側から切込線及び遊離片を覆ってシートにヒートシールにより接合される被覆片であって、摘み部を有する被覆片とを備え、
シールは、切込線及び遊離片を覆う面シールであり、かつ、シール強度は、2.49N/15mm以上6.0N/15mm以下に設定され、
正面視が円形状又は四角形状で、所定の厚みないし幅を有する立体形状に仕上げられ、正面、背面及び周状の側面を有する食品を包み込むように突き上げ包装するのに用いられ、
切込線及び遊離片は、シートのうち食品の側面に接する箇所に形成され、
被覆片は、シートのうち食品の側面に接する箇所及び食品の側面から正面に掛かる箇所に跨って接合される
食品用包装材である。
【0013】
また、本発明に係る食品用包装材は、
シートを用いて構成される食品用包装材であって、
シートは、
第1方向及び第1方向と交差する第2方向に沿って4辺を有する矩形状であり、
第1方向に延び、シートの一端から他端にかけて波形でかつ互いに交差する一対の開封用条体と、
開封用条体を所定箇所で分断するように形成される切込線と、
切込線の形成により形成される遊離片と、
シートの外面に配置され、シートの外面側から切込線及び遊離片を覆ってシートにヒートシールにより接合される被覆片であって、摘み部を有する被覆片とを備え、
シールは、切込線及び遊離片を覆う面シールであり、かつ、シール強度は、2.49N/15mm以上6.0N/15mm以下に設定され、
シールによる接合部は、切込線から接合部の外縁までの最短距離が2mm以上となるような大きさに形成され、
シールによる接合部の第2方向における幅は、一対の開封用条体の最大幅よりも大きく、
正面視が円形状又は四角形状で、所定の厚みないし幅を有する立体形状に仕上げられ、正面、背面及び周状の側面を有する食品を包み込むように突き上げ包装するのに用いられる
食品用包装材である。
【0018】
また、本発明に係る食品用包装材の別の態様として、
開封用条体は、シートの一端から他端にかけて波形でかつ互いに交差する一対の開封用条体であり、
切込線は、一対の開封用条体の交差部に形成され、
一対の開封用条体の交差部の厚みは、シートの厚みよりも大きい
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上の如く、本発明に係る食品用包装材によれば、被覆片がシートに適切なシール強度で接合されるため、被包装物の食品が含んでいる油分が染み出るのを好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る包装材を外面側から見た平面図であり、
図1(b)は、同包装材を内面側から見た平面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1(a)のA部拡大図であり、
図2(b)は、
図1(a)のB-B線断面図であり、
図2(c)は、
図2(a)のC-C線断面図であり、
図2(d)は、切込線の拡大図である。
【
図3】
図3(a)は、同包装材により包装された包装体の正面斜視図であり、
図3(b)は、同包装体の背面斜視図である。
【
図4】
図4は、同包装体を開封する様子の斜視図である。
【
図5】
図5は、同包装材原反の製造工程の説明図であって、長手方向に沿って波形でかつ互いに交差する一対の開封用条体が貼着されたシート原反を搬送する工程の説明図である。
【
図6】
図6は、同包装材原反の製造工程の説明図であって、シート原反に切込線を形成する工程の説明図である。
【
図7】
図7は、同包装材原反の製造工程の説明図であって、シート原反に被覆片を配置、接合する工程の説明図である。
【
図8】
図8(a)は、従来の包装材と同種の包装材を外面側から見た平面図であり、
図8(b)は、同包装材により包装された包装体の正面斜視図であり、
図8(c)は、同包装体を開封する様子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態として、突き上げ包装用の包装材及び突き上げ包装体について、
図1ないし
図7を参酌して説明する。
【0024】
図1及び
図2に示す如く、包装材1は、主としてシート2を用いて構成される。シート2は、単枚のシートである。シート2は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のヒートシール性を有するプラスチックシートからなり、内容物である食品を包むことができる大きさの形状を有する。本実施形態においては、シート2は、素材が柔らかく、突き上げ包装による食品との一体性が良好で、物流時に傷が付きにくい二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のシートである。また、本実施形態においては、シート2は、シート2の流れ方向(搬送方向、
図1では上下方向)を第1方向、シート2の流れ方向と交差する方向(幅方向、
図1では左右方向)を第2方向とした場合に、第2方向よりも第1方向が長い矩形状である。
【0025】
シート2の第1方向の一端(
図1では上方の端)から他端(
図1では下方の端)にかけて、シート2の内面には、帯状開封用条体20が設けられる。本実施形態においては、開封用条体20は、シート2の幅方向の中央部に配置される。
【0026】
開封用条体20は、一対設けられる。一対の開封用条体20,20は、シート2の一端から他端にかけて、二つの波が形成されるよう、第1方向(本実施形態においては、シート2の幅方向の中心線)に対して蛇行した形で、シート2に全長に亘って貼着される。一対の開封用条体20,20は、第1方向に対して線対称に設けられ、これにより、シート2の一端から他端にかけて、二箇所で交差して第1交点20a及び第2交点20bが設けられる。また、一端と第1交点20aとの間に、第1幅広部20cが形成され、第1交点20aと第2交点20bとの間に、第2幅広部20dが形成される。本実施形態においては、一対の開封用条体20,20は、シート2の一端から他端にかけて、小さい波と大きい波の二つの波が形成されるようにシート2に貼着され、これにより、第1幅広部20cよりも第2幅広部20dの方が、幅が広く、長手方向における長さが長くなっている。
【0027】
開封用条体20は、シート2を破断することができる強度を有する例えばカットテープや糸等である。本実施形態においては、開封用条体20は、カットテープである。カットテープ20は、二軸延伸ポリエステルないしポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)等のヒートシール性を有するプラスチックシートを細くカットしたものである。本実施形態においては、カットテープ20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)であり、シート2の内面にヒートシールにより接合される。また、本実施形態においては、シート2の厚さ(10μm以上、あるいは20μm以上であって、30μm以下、あるいは40μm)と同じ程度の厚さを有する。また、カットテープ20は、1.5mm以上、あるいは2mm以上であって、4mm以下、あるいは3mm以下の幅を有する。
【0028】
シート2のうち、一対の開封用条体20,20が通る所定箇所には、切込線21が形成される。これにより、一対の開封用条体20,20は、切込線21が通る箇所で分断される。切込線21は、切込線21が通る箇所の一対の開封用条体20,20の幅よりも僅かに幅広に形成される。本実施形態においては、切込線21は、第1交点20aの近傍部、より詳しくは、第1交点20aの第2幅広部20d側の近傍部に形成される。
【0029】
切込線21は、両端点がシート2の他端に向かう形状である。これにより、切込線21を外形線とし、両端点間を固定端とし、シート2の一端側を自由端とする遊離片22が形成される。本実施形態においては、切込線21は、円弧状に形成される。これにより、遊離片22は、シート2の一端側に突出し、シート2の他端への指向性を有する円弧片となる。
【0030】
シート2の外面には、シート2の外面側から切込線21及び遊離片22を覆って封止することで、切込線21及び遊離片22を介して異物等が内部に侵入するのを防止するための封止材として、被覆片3が設けられる。
【0031】
被覆片3は、切込線21及び遊離片22を内包することができる大きさの形状を有する本体部30と、本体部30からシート2の一端側に突出する摘み部31とを備える。本実施形態においては、被覆片3、本体部30及び摘み部31は、それぞれ矩形状である。
【0032】
被覆片3は、ヒートシール性を有するプラスチックシートを所定の形状に切断したものである。本体部30は、切込線21及び遊離片22を覆うようにシート2の外面にヒートシールにより接合される(接合部32)。本実施形態においては、被覆片3は、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)の基材層と、ヒートシール性に優れた無延伸ポリプロピレン(CPP)のヒートシール層の二層を備えて構成される積層シートである。この二層は、たとえば共押出により得られるが、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のシートにヒートシール性に優れた樹脂を塗布するようにしてもよい。被覆片3は、透明なシートであり(3%ないし4.5%のヘイズ)、被覆片3からでも、包装体における内容物を確認することができる。
【0033】
摘み部31は、小さいと、摘まみにくい。逆に、摘み部31が大きいと、包装材1の製造過程において、摘み部31が引っ掛かり、搬送性に影響を与える可能性を否定できない。あるいは、摘み部31が大きいと、後述するとおり、包装材原反をロール状に巻き取る際に、一部には摘み部31が折れ曲がった状態で巻き取られるおそれがある。このため、摘み部31の突出量は、5mm以上、あるいは8mm以上であって、15mm以下、あるいは12mm以下の範囲となるように、設定される。
【0034】
接合部32は、面シール(べたシール)である。本実施形態においては、接合部32は、被覆片3の形状に伴い、矩形状である。接合部32の幅が小さいと、切込線21の端点から接合部32の外縁までの最短距離が短くなり、油漏れ対策の観点から好ましくない。このため、接合部32の幅は、切込線21の各端点から接合部32の両側の各外縁までの最短距離が、2mm以上、あるいは4mm以上、あるいは5mm以上となるように、設定される。また、切込線21の各端点から接合部32の摘み部31と反対側の外縁も同様である。また、切込線21の中点から接合部32の摘み部31側の外縁も同様である。
【0035】
接合部32は、本体部30の三方の外縁(両側の外縁及び摘み部31と反対側の外縁)よりも内側の位置に形成される。これにより、本体部30の各外縁から接合部32の外縁までの本体部30の部分は、細帯状の非接合部33となっている。非接合部33を設けなかったり、非接合部33の幅が小さいと、製造装置の精度等の影響により、接合手段が本体部30の外縁を踏み越えてなされる懸念があり、この場合、踏み越えたシート2の部分が熱損傷を受けて不良となる懸念がある。このため、非接合部33の幅は、1mm以上、あるいは2mm以上となるように、設定される。なお、非接合部33の幅が指で摘める程度の大きさであれば、この非接合部33を摘み部31と同様に摘み部として利用することができる。
【0036】
被覆片3は、遊離片22に接合することで、開封操作片としても機能する。このため、本体部30と遊離片22とは、適切なシール強度で接合される必要がある。遊離片22が小さいと、適切なシール強度が得られないおそれがある。逆に、遊離片22が大きいと、包装材1の製造過程において、遊離片22が引っ掛かり、搬送性に影響を与える可能性を否定できない。あるいは、遊離片22が大きいと、後述するとおり、シート原反をロール状に巻き取る際に、一部には遊離片22が折れ曲がった状態で巻き取られるおそれがある。このため、遊離片22の突出量H(
図2(d)参照)は、遊離片22の面積が大きくなり過ぎず、また、小さくなり過ぎないよう、適宜の値が選択される。たとえば、切込線21の半径を10mm以上、あるいは12mm以上、20mm以下、あるいは18mm以下とし、切込線21の円弧の角度を50度以上、あるいは70度以上、120度以下、あるいは100度以下として、遊離片22の突出量Hは、1mm以上、あるいは2mm以上であって、10mm以下、あるいは8mm以下、あるいは5mm以下の範囲となるように、設定される。
【0037】
なお、被覆片3に近接して、シート2の中央部(後述する包装体6の正面部)の領域23(
図1(a)参照)は、包装体の商品名や商品情報やこれに関連する意匠を表示する領域となっている。この表示領域23は、被覆片3とは重合しない。
【0038】
ここで、適切なシール強度を求めるために、シール条件が異なる複数のサンプルを用意し、シール強度の測定を行った。シール強度は、引張試験機を用い、25℃、相対湿度60%±10%の雰囲気下において、JIS Z0238:1998に準拠して測定した。この測定結果を表1に示す。
【表1】
【0039】
また、上記各シール条件に基づき、
図1及び2に示す形態(下記参照)の各サンプルを作製し、被覆片3のシール性及び開封性、並びに油漏れの有無について評価実験を行った。この評価結果を表2に示す。
シート2:厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のシート
開封用条体20:厚み12μm、幅2mmのポリエチレンテレフタレート(PET)のカットテープ
被覆片3:厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)の基材層と、厚み20μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)のヒートシール層の二層の積層シート
切込線21の形状:曲率半径約15mm、幅(両端点間の距離)20mm、突出量3.8mm
接合部32の形状:縦30mm×横35mmの矩形状
【表2】
【0040】
これらの結果から、i)被覆片3の外縁からシート2表面への油分の染み出し(油漏れ)はなく、ii)開封時は被覆片3がシート2から適切に剥がれるとともに、iii)被覆片3の本体部30と遊離片22とが適切なシール強度で接合されているために開封が切込線21から適切に行われる、との全ての効果を奏するのに適切なシール強度(ヒートシール強度)は、25℃、相対湿度60%±10%で、0.44N/15mm(≒0.45N/15mm)以上、より好ましくは、1.42N/15mm(≒1.4N/15mm)以上であって、6.08N/15mm(≒6.0N/15mm)以下、より好ましくは、5.12N/15mm(≒5.1N/15mm)以下の範囲であることがわかった。
【0041】
以上の構成からなる包装材1を用いて食品を包装するには、包装材1の下方に食品を配置し、食品を下方から突き上げて包装材1の内面の中央部に押し込むことで、包装材1を食品の形状に沿わすように変形させて、食品を包み込み、この後、包装材1の外周端部を集束させて、ここにシール又はラベルを貼着するといういわゆる突き上げ包装が用いられる。
図3に示す如く、食品Fは、一例として、正面及び背面が円形状で、所定の厚みないし幅を有して側面が円周状となる扁平な円柱状の立体形状に仕上げられたおにぎりである。突き上げ包装により、包装体(突き上げ包装体)6は、食品Fを包み込み、正面部及び背面部が平坦面で、側面部が周状となり、背面部にシール又はラベル7が貼着された形態となる。
【0042】
この包装体6において、切込線21、遊離片22及び被覆片3は、包装体6の側面部に位置するとともに、被覆片3の摘み部31は、自由端となって、包装体6の側面部から後方に突出する。切込線21からシート2の他端側に延びる開封用条体20,20は、シート2の内面に沿って、包装体6の正面部を横断する配置となる。
【0043】
食品Fを食する際には、
図4に示す如く、被覆片3の摘み部31を摘んで引く。被覆片3の本体部30は、遊離片22と接合されており、また、遊離片22は、切込線21により分断された一対の開封用条体20,20の端部が接合されている。このため、被覆片3の摘み部31を摘んで引くと、開封用条体20,20が引っ張られてシート2に分断開放部が形成され、この分断開放部から食品Fを取り出すことができる。このとき、被覆片3が包装体6の側面部に位置することで、包装体6において、被覆片3の摘み部31は、シート2の外面から浮いて離間している。このため、視認性が高く、かつ、摘まみやすくなっていて、開封操作を円滑に行うことができる。しかも、被覆片3は、二軸延伸ポリプロピレンの基材層と無延伸ポリプロピレンのヒートシール層の積層構造であるため、基材層側に軽く湾曲(カール)する傾向にある。この場合、視認性及び開封操作性はさらに良好となる。また、被覆片3の厚みをシート2の厚みよりも大きくした場合は、被覆片3がコシのあるものとなり、被覆片3の開封操作性がさらに向上する。
【0044】
また、被覆片3の本体部30と遊離片22とは、適切なシール強度でヒートシールされている。このため、開封時に被覆片3の摘み部31を摘んで引く際、被覆片3が遊離片22から剥がれるといった開封不良は生じない。しかし、そのシール強度は、被覆片3の引っ張り操作によって、本体部30と遊離片22以外のシート2の部分との接合を解除可能な程度に設定され、しかも、切込線21が融着してしまわない程度に設定されている。このため、開封時に被覆片3がシート2から剥がれないといった開封不良や切込線21から開封されないといった開封不良も生じない。
【0045】
また、被覆片3の本体部30とシート2とが適切なシール強度で接合されることにより、シート2の切込線21及びその周辺部は被覆片3の本体部30によって完全に密閉され、食品Fの油分が切込線21から染み出ることはない。このため、包装体6を持つ人は、手に油分が付くことがなく、きれいな手のままで気持ちよく食品を食することができる。
【0046】
また、切込線21は、一対の開封用条体20,20の交差部(交点及びその近傍部を含む)に設けられる。これは、シート2に対して徐々に幅広となる分断開放部を形成するためである。交差部は、一対の開封用条体20,20の幅が一番小さい箇所であるので、切込線21の線長は短い。この点でも、油漏れを好適に防止することができる。また、一対の開封用条体20,20の交差部の厚み(すなわち、二本の開封用条体20,20の合計の厚み)をシート2の厚みよりも大きくした場合は、ヒートシールの際、切込線21及びその周辺部に対する押圧力が局所的に増すため、当該箇所におけるシール強度をより好適な状態にすることができる。
【0047】
しかも、被覆片3が幅広であるとともに、接合部32が幅広に形成されることにより、切込線21の端点から接合部32の外縁までの距離は十分に担保されている。また、接合部32の縦方向(第1方向)についても同様である。この点でも、油漏れを好適に防止することができる。
【0048】
また、シート2、被覆片3は、いずれも同素材のポリプロピレン系であり、この点、環境に配慮した設計となっている。
【0049】
本実施形態に係る包装材1及び包装体6は、以上のとおりであり、次に、本実施形態に係る包装材原反の製造方法について説明する。
【0050】
製造工程は、大きく分けると、
図5に示す、長手方向に沿って波形でかつ互いに交差する一対の開封用条体20,20が内面に貼着されたシート原反2Xを搬送する工程(第1工程)と、
図6に示す、シート原反2Xに切込線21を形成する工程、より詳しくは、シート原反2Xに、切込線21を形成するとともに、切込線21の形成により遊離片22を形成する工程(第2工程)と、
図7に示す、シート原反2Xの外面に、切込線21及び遊離片22を覆うように被覆片3を配置、接合する工程(第3工程)とを備える。
【0051】
第1工程において、長手方向に沿って波形でかつ互いに交差する一対の開封用条体20,20が内面に貼着されたシート原反2Xは、インラインで製造してもよいし、事前に製造したものを準備しておくようにしてもよい。製造方法は、たとえば特許6556931号公報に記載されたとおりであり、ここでは具体的な説明を割愛する。
【0052】
第2工程では、シート原反2Xが間欠的に搬送され、搬送経路上に配置された切込機構(図示せず)がシート原反2Xの間欠搬送に同期して作動することにより、
図6に示す如く、切込線21が形成される。
【0053】
切込機構は、一例として、受けローラと工具とを備え、工具を受けローラに往復動させ、工具の表面に設けられたノッチ刃を受けローラに当接させることにより、シート原反2Xに切込線21を形成する構成となっている。ただし、切込機構は、かかる構成に限定されるものではなく、要は、シート原反2Xに切込線21を形成することができるものであれば、他の構成からなる機構であってもよい。
【0054】
ここで、包装材1の向きであるが、包装材1の他端が搬送方向の下流側、包装材1の一端が搬送方向の上流側となる向きである。このため、切込線21は、中央部が両端点よりも上流側になるように形成される。これにより、遊離片22は、搬送方向の上流側に突出する配置となる。
【0055】
第3工程では、シート原反2Xが間欠的に搬送され、搬送経路上に配置された切断・搬送・接合機構がシート原反2Xの間欠搬送に同期して作動することにより、被覆片3が被覆片原反から分離され、搬送されて、
図7に示す如く、シート原反2Xの外面に配置され、接合(接合部32)される。このとき、被覆片3は、摘み部31が搬送方向の上流側に突出する配置となる。また、被覆片3は、本体部30の外縁部が非接合部33となるように、接合される。
【0056】
包装材原反1Xは、以上のようにして製造される。そして、一旦ロール状に巻き取った後、突き上げ包装を行う自動包装機にロールがセットされる。あるいは、引き続き搬送されて、突き上げ包装を行う工程に移行する。いずれの場合でも、包装材原反1Xは、突き上げ包装に際し、1つ単位に切断されて分離され、枚葉状の包装材1にしてから、包装に用いられる。
【0057】
このように、包装材原反1Xは、インラインで製造することができる。従来は、包装材原反の製造工程と、被覆片の貼着工程とが別々であったが、本実施形態では、両工程をインライン化した。これにより、生産性が向上するとともに、製造コストを低減することができる。
【0058】
また、遊離片22及び被覆片3の摘み部31は、上述のとおり、突出量が大きくならない設定となっている。しかも、遊離片22及び被覆片3の摘み部31は、包装材原反1Xの製造工程において、突出方向が搬送方向の上流側となっている。このため、包装材原反1Xの製造過程において、遊離片22や摘み部31が引っ掛かり、搬送性に影響を与える可能性を排除することができる。
【0059】
また、これにより、包装材原反1Xをロール状に巻き取る際に、摘み部31が折れ曲がった状態で巻き取られるという不具合は発生しにくくなる。このため、摘み部31が折れ曲がった状態で巻き取られることにより、この部分の包装材1が不良品となり、歩留まりが低下するという問題は生じない。
【0060】
また、何らかの理由で、第2工程から第3工程にそのまま移行せず、第2工程を終えた段階で、シート原反2Xを一旦ロール状に巻き取るようにする場合がある。しかし、遊離片22は、突出量が小さく、また、一対の開封用条体20,20の交差部に設けるということで、幅も小さい。すなわち、遊離片33は、最小限の形状である。これにより、シート原反2Xをロール状に巻き取る際に、遊離片22が折れ曲がった状態で巻き取られるという不具合も発生しにくくなる。このため、遊離片22が折れ曲がった状態で巻き取られることにより、後の被覆片3の貼着工程において支障が生じてこの部分の包装材1が不良品となり、歩留まりが低下するという問題は生じない。
【0061】
また、第3工程において、被覆片3をシート原反2Xに接合する際、被覆片3の本体部30全体を接合するのではなく、外縁部に非接合部33が設けられる。このため、製造装置の精度等(たとえばシート原反2Xの蛇行等)の影響により、接合部32の位置が多少ずれたとしても、接合部32が本体部30の外縁を踏み越えてシート2の部分に熱損傷を与えるという不具合を好適に防止することができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
たとえば、開封用条体20、切込線21、遊離片22及び被覆片3の形状は、上記実施形態のものに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形成を選択することができる。
【0064】
また、開封用条体20は、波形であること及び交差することは必須ではない。たとえば、開封用条体は、一対であり、それぞれが波形であるとしても、交差せずに接離を繰り返す配置であってもよいし、接近部分が接する配置であってもよい。また、開封用条体は、一対であっても、少なくとも一方が波形でなく、直線状であってもよい。両方が直線状である場合は、互いに所定間隔を有して平行となる配置であってもよい。また、開封用条体は、1本であってもよい。あるいは、開封用条体は、3本以上であってもよい。また、開封用条体は、上記のような幅狭でなく、センチ単位の幅広であってもよい。
【0065】
また、開封用条体20は、シート2の内面に貼着されることは必須ではない。開封用条体は、シートの外面に貼着されるようにしてもよい。この場合、被覆片は、開封用条体の上からシートに接合されることになる。
【0066】
また、開封用条体20は、シートの一端から他端にかけて設けられることは必須ではない。開封用条体の端部がシートの端縁に至らない配置態様も採用可能である。
【0067】
また、開封用条体20が波形で互いに交差する一対からなるものである場合において、切込線21が開封用条体20,20の交差部に設けられることは必須ではない。切込線は、交差部から離れた箇所に形成されるようにしてもよい。
【0068】
また、切込線21は、全切線ではなく、開封操作による外力が加えられると、破断するものであれば、部分的に内外を貫通する線(たとえばミシン目)であってもよい。
【0069】
また、被覆片3の摘み部31は、上述のとおり、折れ曲がった状態で巻き取られるという心配はない。しかし、これをさらに確実にするために、たとえば摘み部の中心部等、摘み部の摘み性に影響を与えない箇所にポイントシール等を施して、摘み部を局所的にシートに接合するようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、遊離片22及び被覆片3の摘み部31が搬送方向の上流側に突出するようにシート原反2X及び包装材原反1Xを搬送した。しかし、これとは逆に、遊離片及び被覆片の摘み部が搬送方向の下流側に突出するようにシート原反及び包装材原反を搬送するようにしてもよい。
【0071】
また、「長方形状」、「矩形状」、「中央部」、「端部」、「側部」、「均等」、「一致」、「平行」、「垂直」といった形状、部位又は状態を特定する用語は、本発明において、そのもののほか、それに近いないし類するという意味の「略」の概念も含むものである。
【0072】
また、包装対象の食品は、包装材で包むことができる形であれば、おにぎり、ピラフ、チャーハン、寿司以外の米飯加工食品や、米飯加工食品以外の食品(たとえば、饅頭等の和菓子、ケーキ等の洋菓子、パン、サンドイッチ、ハンバーガー等)であってもよく、食品の種類は限定されない。
【0073】
また、包装対象の食品の形状も特に限定されるものではない。たとえば、正面が円形状ではなく、正面が四角形状の扁平な角柱状やブロック状であってもよいし、角柱状でなく、球状等、全面が連続した曲面状のものであってもよいし、長尺なものであってもよい。これらは一例にすぎず、要は、シートで包装できる形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0074】
また、包装材(包装材原反)は、上記実施形態に係る突き上げ包装といった特定の包装形態に用いるものに限定されるものではない。たとえば、おにぎりと海苔シートを分離した状態で包装する食品用包装材の外シートや、三角形状のサンドイッチを包装する台形状の食品用包装袋のシートや、平袋、ガゼット袋、ピロー包装袋等の一般的な袋に用いられるシート等、各種の包装形態に用いられる全てのものを対象とする。
【0075】
また、包装材(包装材原反)に用いられるシートは、単一のプラスチックシートからなるものに限定されない。たとえば紙又は紙質シート等、その他の材質のシートであってもよい。また、包装材のシートは、たとえば、二枚のシートを端部同士を接合して一枚のシートにしたものや、三枚のシートを順次端部同士を接合して一枚のシートにしたもののように、複数枚のシートを用いて一枚のシートに形成したものであってもよい。また、この場合、各シートの材質は異なるものであってもよい。たとえば、一部のシートには、プラスチックシートではなく、紙又は紙質シートを用いるようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、シート2、被覆片3は、いずれも同素材のポリプロピレンのシートである。ここで、ポリプロピレンのシートとは、純度100%のポリプロピレンのシートはもちろんのこと、ポリプロピレンを主成分として、他の成分(たとえばポリエチレンといった他の樹脂成分)を含有するシートも含む概念である。
【符号の説明】
【0077】
1…包装材、1X…包装材原反、2…シート、2X…シート原反、20…開封用条体、20a…第1交点、20b…第2交点、20c…第1幅広部、20d…第2幅広部、21…切込線、22…遊離片、23…表示領域、3…被覆片、30…本体部、31…摘み部、32…接合部、33…非接合部、6…包装体、7…シール又はラベル、F…食品、H…突出量