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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ペット用ガム
(51)【国際特許分類】
   A01K 15/02 20060101AFI20240322BHJP
   A23K 50/40 20160101ALI20240322BHJP
   A23K 10/20 20160101ALI20240322BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20240322BHJP
【FI】
A01K15/02
A23K50/40
A23K10/20
A23K20/163
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019196183
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021069285
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】597036477
【氏名又は名称】ライオンペット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 健一郎
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3164297(JP,U)
【文献】登録実用新案第3096655(JP,U)
【文献】特開2013-074817(JP,A)
【文献】特表2016-515809(JP,A)
【文献】特表2014-527409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0235179(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 15/02
A23K 50/40
A23K 10/20
A23K 20/163
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状体であるペット用ガムであって、
前記柱状体の一端の端部から他端の端部まで長手方向に連続的に延伸する中空部を画成する内壁部と、
前記柱状体の外形を画成する外壁部と、を具備し、
前記外壁部から前記中空部に連通する切り込みであるスリットが設けられており、
前記柱状体を長手方向に直行する平面で切断した時の断面において、スリットを画成する1対の第1端面部及び第2端面部の少なくとも一部が互いに当接している状態であり、
使用時において、前記柱状体が、前記内壁部のうちの少なくとも一部分同士を接触させる柔軟性を有している、ペット用ガム。
【請求項2】
柱状体であるペット用ガムであって、
前記柱状体の一端の端部から他端の端部まで長手方向に連続的に延伸する中空部を画成する内壁部と、
前記柱状体の外形を画成する外壁部と、を具備し、
前記外壁部から前記中空部に連通する切り込みであるスリットが設けられており、
前記柱状体を長手方向に直行する平面で切断した時の断面において、スリットを画成する1対の第1端面部及び第2端面部の少なくとも一部が互いに離間しており、かつ、第1端面部側の内壁部の一部が第2端面部側の外壁部に重なる状態、又は第2端面部側の内壁部の一部が第1端面部側の外壁部に重なる状態であり、
使用時において、前記柱状体が、前記内壁部のうちの少なくとも一部分同士を接触させる柔軟性を有している、ペット用ガム。
【請求項3】
前記スリットが、前記柱状体の前記長手方向に、直線状又はらせん状に延在している、請求項1又は2に記載のペット用ガム。
【請求項4】
前記外壁部の少なくとも一部の表面に、該表面から突出する1又は2以上の凸部が設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のペット用ガム。
【請求項5】
前記柱状体が、前記柱状体の前記長手方向と直交する方向における最大径の中点を通る軸を中心軸としてねじられた柱状体である、請求項1~のいずれか1項に記載のペット用ガム。
【請求項6】
前記ペットがイヌであり、
前記柱状体の最大径が、1.5~20.0mmである、請求項1~のいずれか1項に記載のペット用ガム。
【請求項7】
前記ペットがネコであり、
前記柱状体の最大径から前記中空部の内径を引いた値が、4.0~16.0mmである、請求項1~のいずれか1項に記載のペット用ガム。
【請求項8】
前記スリットと、前記中空部とが一体的に構成された溝状である、請求項1~のいずれか1項に記載のペット用ガム。
【請求項9】
長手方向と直交する方向における厚さ(d2-d1)/2(式中、d1、d2は、それぞれ中空部の内径、柱状体の最大径を表す)が、1.0~4.0mmである、請求項1~8のいずれか1項に記載のペット用ガム。
【請求項10】
デジタルフォースゲージをペット用ガムの長手方向と直交する方向に押し付けて破壊が起きたときの押し付けた力のピーク値が、41.2~52.5Nである、請求項1~9のいずれか1項に記載のペット用ガム。
【請求項11】
前記柱状体が、少なくとも畜水産食品及び澱粉を含む混合物からなる、請求項1~10のいずれか1項に記載のペット用ガム。
【請求項12】
少なくとも畜水産食品及び澱粉を含む混合物を押出成形して製造される成形体である、請求項1~11のいずれか1項に記載のペット用ガム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットの歯垢除去に好適に使用し得るペット用ガムに関する。
【背景技術】
【0002】
イヌ、ネコなどのペット用ガム製品は、多種多様な原料のものがある。ペット用ガム製品は、長く噛ませることで、一定程度の歯垢除去効果が見込めることが知られている。
【0003】
特許文献1には、噛み物の特性を向上させ、口腔内の占有時間を長くし、口腔衛生を促進させる独特なねじれた形状を有する食用ペット向け噛み物が提案されている。
特許文献2、3には、犬や猫などのペットがペットフードを噛む際、摩擦・研磨により歯の機械的なクリーニング(歯みがき)をおこないやすくなるよう、デンタルケア機能を備えたペットフードが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2016-515809号公報
【文献】特開2012-34675号公報
【文献】特開2012-34674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなペット用ガム製品は、動物の種類によって求められるガムの特性が異なる。ネコを例にすると、ネコは食べようとしたものが中々噛み切れないと、噛むことをすぐやめてしまう。
そのため、噛み切れやすく、短時間で歯垢除去効果を有するペット用ガムが必要である。
【0006】
また、イヌやネコの歯は、食べるものを切断する為の形状と配置をしている。口の奥の上下顎の後臼歯は、口の内側と外側で交差する。口の横側の前臼歯は、上下顎がそれぞれ交互に凸凹と交差する噛み合わせをしている。
さらに、動物個体の噛み合わせの差や、ガムと噛む歯の角度やガムを噛む位置がランダムに変化する。
そのため、歯垢除去効果を常に高められるガムが望まれている。
【0007】
本発明の課題は、歯垢除去効果をより向上し得るペット用ガムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、柱状体に中空部を画成する内壁部と、外壁部と、を具備し、外壁部から中空部に連通するスリットを設けるとともに、使用時に、柱状体が、内壁部のうちの少なくとも一部分同士を接触させる柔軟性を有することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔9〕を提供する。
〔1〕柱状体であるペット用ガムであって、前記柱状体の長手方向に延伸する中空部を画成する内壁部と、前記柱状体の外形を画成する外壁部と、を具備し、前記外壁部から前記中空部に連通するスリットが設けられており、使用時において、前記柱状体が、前記内壁部のうちの少なくとも一部分同士を接触させる柔軟性を有している、ペット用ガム。
〔2〕前記スリットが、前記柱状体の前記長手方向に、直線状又はらせん状に延在している、上記〔1〕に記載のペット用ガム。
〔3〕前記外壁部の少なくとも一部の表面に、該表面から突出する1又は2以上の凸部が設けられている、上記〔1〕又は〔2〕に記載のペット用ガム。
〔4〕前記柱状体が、前記柱状体の前記長手方向と直交する方向における最大径の中点を通る軸を中心軸としてねじられた柱状体である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のペット用ガム。
〔5〕前記ペットがイヌであり、前記柱状体の最大径が、前記イヌの歯の高さと等しい値以下である、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のペット用ガム。
〔6〕前記ペットがネコであり、前記柱状体の最大径から前記中空部の内径を引いた値が、前記ネコの歯の高さと等しい値以下である、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のペット用ガム。
〔7〕前記スリットと、前記中空部とが一体的に構成された溝状である、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のペット用ガム。
〔8〕前記柱状体が、少なくとも畜水産食品及び澱粉を含む混合物からなる、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のペット用ガム。
〔9〕少なくとも畜水産食品及び澱粉を含む混合物を押出成形して製造される成形体である、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のペット用ガム。
【発明の効果】
【0009】
本発明のペット用ガムによれば、歯垢除去効果をより向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、ペット用ガムの概略的な平面図である。
図1B図1Bは、図1A中の1B-1B一点鎖線で示される位置で切断したペット用ガムの切断端面を示す概略的な図である。
図2A図2Aは、ペット用ガムの概略的な平面図である。
図2B図2Bは、図2A中の2B-2B一点鎖線で示される位置で切断したペット用ガムの切断端面を示す概略的な図である。
図3A図3Aは、ペット用ガムの概略的な平面図である。
図3B図3Bは、図3A中の3B-3B一点鎖線で示される位置で切断したペット用ガムの切断端面を示す概略的な図である。
図3C図3Cは、図3A中の3C-3C一点鎖線で示される位置で切断したペット用ガムの切断端面を示す概略的な図である。
図4A図4Aは、ペット用歯みがきガムの概略的な平面図である。
図4B図4Bは、図4A中の4B-4B一点鎖線で示される位置で切断したペット用ガムの切断端面を示す概略的な図である。
図5A図5Aは、ペット用ガムの概略的な平面図である。
図5B図5Bは、図5A中の5B-5B一点鎖線で示される位置で切断したペット用ガムの切断端面を示す概略的な図である。
図6図6は、ペット用ガムの使用時において、内壁部の一部分同士が接触している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお各図は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置について概略的に示されている。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
また以下の説明に用いる各図において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。
【0012】
1.用語の解説
「使用時において、柱状体が、内壁部のうちの少なくとも一部分同士を接触させる」とは、図6に示すように、本発明のペット用ガム1をペットが噛んだ際、咬合力により内壁部1aの表面のうちの互いに離間している部分領域の少なくとも一部分同士が接触部7で接することをいう。
【0013】
「スリット」とは、本発明のペット用ガムを長手方向に直交する平面で切断したときの断面において、周方向の一部で連続しない領域、すなわち、切り欠かれた領域、くり抜かれた領域、切り込みを入れたことにより形成された間隙、又は切り込み自体などをいう。具体的には、図1Bに示すように、例えば、外壁部1bから、中空部2を画成する内壁部1aまで連通する間隙をいう。
本発明のペット用ガムにおいて、スリットは、長手方向に連続して設けられていてもよく、断続的に設けられていてもよい。また、スリットは、直線状であってもよく、らせん状であってもよい。さらに、長手方向に直交する平面で切断したときの断面において、周方向に1か所のみ設けられていてもよく、複数設けられていてもよい。
【0014】
「中空部」とは、円柱状や角柱状の柱状体の長手方向に直交する方向(厚さ方向)において、内壁部によって画成される領域をいう。中空部は、ペット用ガム(柱状体)の長手方向に延在する中心軸の近傍に位置することが好ましく、中空部が中心軸を含むことがより好ましい。複数の中空部が1つの柱状体に存在する場合もある。中空部の長手方向の長さは、本発明の効果を奏する限り、特に限定されない。
なお、スリットと、中空部とは一体的に構成された溝状にすることができる。
【0015】
本発明のペット用ガムは、柱状体の長手方向の少なくとも一部において、内壁部の一部分同士が接触していてもよい。「柱状体の長手方向の少なくとも一部において、内壁部の一部分同士が接触している」とは、中空部を画成する内壁部の一部分同士が、使用時以外においても接触している状態をいう。当該接触している状態において、中空部は、柱状体の長手方向と直交する面で切断した断面を観測した際に、閉塞していてもよく、接触部分以外においては開口していてもよい。
なお、本発明のペット用ガムによれば、柱状体であるペット用ガムを、その長手方向に直交する面で切断したとき、又は柱状体の長手方向に沿って、中心軸(径)を通る面で切断したときに、ペット用ガムの断面を直接的に、又は任意好適な光学的手段により撮像した像を目視するか、又はさらに拡大鏡(顕微鏡)等の手段を用いる、画像解析を行うなどすることにより、「内壁」の存在、ひいては中空部の存在を確認することができる。ここで、内壁のうちの少なくとも一部分同士が接触している(閉塞している)場合には、内壁部同士が接触することにより生じる界面も観察され得る。
【0016】
「スリットと、中空部とが一体的に構成された溝状である」とは、スリットと中空部とが明確な境界をもって区別されない態様で一体的に構成され、全体として溝状である形態をいう。この形態は、スリットを画成する1対の端面部と、中空部を画成する内壁部とが明確な境界をもって区別されない形態でもある。換言すると、スリットを画成する1対の端面部と、中空部を画成する面とは、それぞれ一体的に一平面をなす。
【0017】
2.ペット用ガムの構成例
(1)第1実施形態
図1A及び図1Bを参照して、ペット用ガムの第1実施形態について説明する。
第1実施形態において、図1Aに示すように、ペット用ガム1は、柱状体の長手方向に延伸する中空部2を画成する内壁部1aと、柱状体の外形を画成する外壁部1bと、を具備している。そして、外壁部1bには中空部2に連通するスリット3が設けられている。
図1Aにおいて、柱状体は管状であり、中空部2は、柱状体の長手方向の一端側の端部1cから他端側の端部1dまで連続的に延伸しており、かつ一端側の端部1c及び他端側の端部1dにおいて開口している。ペット用ガムにおいて、中空部の態様はこの実施形態に限定されるものではなく、図示はしないが、柱状体の長手方向の少なくとも一部において、内壁部の一部分同士が接触していてもよい。接触箇所は、開口していても、閉塞していてもよい。
本明細書中、「一端側の端部から他端側の端部まで連続的に」とは、柱状体の長手方向の両端面間に及ぶことをいう。例えば、図1Aに示すように、中空部2は、柱状体の長手方向に、一端側の端部1cから他端側の端部1dまで連続的に延伸しており、かつ一端側の端部1c及び他端側の端部1dにおいて開口している。即ち、この場合、柱状体は管状となる。また、スリット3は、柱状体の一端側の端部1cから他端側の端部1dまで直線的に延在している。
【0018】
該スリット3は、中心軸Cと略平行方向に直線状に延在している。また、該スリット3は、1本のみ設けられており、柱状体の長手方向の一端側の端部1cから他端側の端部1dまで連続的に設けられている。そして、図1Bに示すように、該スリット3を画成する、1対の第1端面部3a及び第2端面部3bは、互いに離間している。なお、図示はしないが、スリットを画成する、1対の第1端面部及び第2端面部は、互いに当接していてもよい。
本明細書中、「スリットを画成する、1対の第1端面部及び第2端面部が互いに離間」とは、図1Bに示すように、第1端面部3aと第2端面部3bが離れている状態、即ち、1対の端面部が対向している状態、或いは図示はしないが、第1端面部側の内壁部の一部が、第2端面部側の外壁部に重なる、或いは第2端面部側の内壁部の一部が、第1端面部側の外壁部に重なって端面部同士が離間している状態、即ち、1対の端面部が互い違いになる状態をいう。但し、内壁部の一部が、外壁部と重なって端面部同士が離間している状態には、過度にオーバーラップしている状態、即ち、本発明のペット用ガムを対象動物が噛んだ際、内壁部と外壁部の重なる状態が維持される状態は含まれない。
「スリットを画成する、1対の第1端面部及び第2端面部が互いに当接」とは、図示はしないが、第1端面部及び第2端面部の平面の一部が癒着せずに接している状態をいう。即ち、第1端面部と第2端面部が互いに当接しているけれども、本発明のペット用ガムを対象動物が噛んだ際、咬合力により第1端面部と第2端面部が離間する状態をいう。ここでいう「当接」とは、端面部全面同士が当接している状態の他、一部の面同士が当接している状態も含む。
なお、「第1端面部及び第2端面部」とは、1本のスリットを画成する端面部をいう。すなわち、第1端面部及び第2端面部は、複数のスリットが存在する場合、互いに異なるスリットを画成するものではない。
【0019】
第1実施形態において、ペット用ガム1は、その長手方向と直交する短手方向に延在する平面で切断した断面の外形の輪郭の形状が円形であるが、本発明のペット用ガム1は、斯かる形状に限定されない。柱状体であるペット用ガム1は、該断面の外形の輪郭の形状が楕円形、三角形、四角形、或いは多角形であってもよい。また、内壁部1aによって画成される中空部2の該断面の形状は、その内径d1及び最大径d2の中点をとおる軸を中心軸Cとした円形であるが、斯かる形状に限定されない。中空部2の該断面の形状は、楕円形、三角形、四角形、或いは多角形であってもよい。
なお、図1A及び1Bにおいて、最大径d2は、柱状体の外径の輪郭の形状を画成する円の直径を示している。最大径d2は、柱状体の長手方向と直交する短手方向に延在する平面で切断したときの断面における、柱状体の外径の輪郭の形状のうち2点間の最大長である。例えば、柱状体の外径の輪郭の形状が楕円形である場合、当該楕円の長径に該当し、三角形の場合は、最長の辺に該当する。また、内径d1は、柱状体の長手方向と直交する短手方向に延在する平面で切断したときの断面における中空部2の輪郭の形状である円の直径を示している。内径d1も、最大径d2と同様に、該断面における中空部の輪郭の形状のうち2点間の最大長である。以下、別途記載がない限り、ペット用ガム1は、その外形の輪郭の形状が円形である柱状体として説明する。
【0020】
ペット用ガム1は、中空部2と、該中空部2と連通するスリット3を有している、すなわち、柱状体の外壁部1bにはスリット3が設けられており、スリット3より内側に、内壁部1aによって画成された中空部2が形成される。そのため、図6に示すように、使用時において、柱状体が、中空部2を介して離間している内壁部1aのうちの少なくとも一部分同士を接触させて接触部7を形成する柔軟性を有している。このような柔軟性を有するペット用ガムは、ペットの咬合力で、変形しながらつぶれやすく、フレキシブルに曲がりやすく、さらには歯間の隙間により入りやすくなる。そのため、ペットが噛んだ際、歯の表面をこするので、歯垢除去効果がより向上し得る。
また、ペット用ガム1は、中空部2を画成するように内壁部1aを構成とするため、中実のペット用ガムと比較して、噛み切れやすい。そのため、ネコを対象とした製品とし得る。
【0021】
長手方向の長さL1は、ペットの種類に応じて適宜変更し得る。例えば、イヌである場合、1.0~15.0cmが好ましく、ネコである場合、1.0~10.0cmが好ましい。
内径d1も、ペットの種類に応じて適宜変更し得る。例えば、イヌである場合、1.0~18.0mmが好ましく、ネコである場合、1.0~11.0mmが好ましい。
【0022】
柱状体の最大径d2は、ペットが噛み切ることができる大きさに設定する。斯かる大きさとして、ペットの歯の高さに基づいて算出される閾値以下が好ましい。閾値は、例えば、イヌである場合、最大径d2は、イヌの歯の高さと等しい値以下が好ましく、1.5~20.0mmがより好ましい。ネコである場合、最大径d2から中空部の内径d1を引いた値が、ネコの歯の高さと等しい値以下が好ましく、4.0~16.0mmがより好ましい。最大径d2から中空部の内径d1を引いた値とは、ペット用ガムの厚さの2倍と等しい値である。すなわち、ネコである場合、使用時において、中空部を介して離間している内壁部のうちの少なくとも一部分同士が接触した接触部における厚さの2倍が、ネコの歯の高さ以下であることが好ましい。
ペット用ガム1の長手方向と直交する方向における厚さ(d2-d1)/2は、噛み切れやすくするという観点から、1.0~3.0mmが好ましい。
なお、ここでいう「イヌの歯の高さ」とは、第1後臼歯の歯の高さをいい、「ネコの歯の高さ」とは、同じく第1後臼歯の歯の高さをいう。
【0023】
(2)第2実施形態
図2A及び図2Bを参照して、ペット用ガムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態において、ペット用ガム1は、外壁部1bから中空部2に連通するスリット3が、柱状体の長手方向に、らせん状に延在している。すなわち、第2実施形態において、ペット用ガム1は、長手方向と直交する方向における最大径d2の中点を通る軸を中心軸Cとしてねじられた柱状体である。
スリット3が、中心軸C周りにらせん状に延在することで、柱状体の長手方向と直交する方向にペットの咬合力がかけられた際、ペット用ガム1がより変形しやすくなる。そのため、歯垢除去効果がさらに向上し得る。
他の構成は、第1実施形態と同じであるため、上記した通り省略する。
【0024】
(3)第3実施形態
図3A図3Cを参照して、ペット用ガムの第3実施形態について説明する。
第3実施形態において、ペット用ガム1は、外壁部1bから中空部2に連通するスリット3が、柱状体の一端側の端部1cから他端側の端部1dまで連続的に設けられていないことを除いて、第1実施形態と同じ構成をとる。すなわち、第3実施形態において、ペット用ガム1は、図3Bに示すように、長手方向と直交する方向にスリットが設けられた構成と、図3Cに示すように、長手方向と直交する方向にスリットが設けられていない構成が混在する実施形態である。このような構成とすることで、長手方向と直交する方向にスリットが設けられた部位(図3Bに該当する部位)をペットが噛んだ際、柱状体の長手方向と直交する方向に加わる咬合力により、ペット用ガム1がより噛み切れやすくなる。
他の構成は、第1実施形態と同じであるため、上記した通り省略する。
【0025】
(4)第4実施形態
図4A及び図4Bを参照して、ペット用ガムの第4実施形態について説明する。
第4実施形態において、ペット用ガム1は、外壁部1bの表面に、長手方向に直交する短手方向から外壁部1bをみたときに、該表面から突出する畝状の凸部5が複数設けられている。そして、該複数の凸部5は、柱状体の長手方向の一端側の端部1cから他端側の端部1dまで延伸しており、各凸部5はスリット3と略平行に配置されるとともに、複数の凸部5同士は互いに略平行に配置されている。なお、該凸部5は、斯かる形態に限定されるものではない。例えば、長手方向に分割されて配置されてもよく、突起のような形態であってもよく、らせん状にねじれていてもよい。
凸部5を設けることで、ペット用ガム1を噛む際、歯についた歯垢と最初に触れる外壁部1bの摩擦力が大きくなるとともに、ペット用ガム1が歯間の窪みに届くことで、歯垢を掻き出すことができる。そのため、歯垢除去効果のさらなる向上を期待し得る。
他の構成は、第1実施形態と同じであるため、上記した通り省略する。
【0026】
柱状体の長手方向に直交する平面で切断したときの凸部5の断面の形状は、略三角形又は略四角形等の多角形であってもよく、半円形であってもよい。中でも、歯垢除去効果のさらなる向上という観点からは、略三角形又は略四角形等の多角形が好ましく、略三角形又は略四角形がより好ましい。
本明細書中、「略三角形又は略四角形」とは、三角形や四角形のみならず、頂点が丸みを帯びた三角形又は四角形を含むことをいう。
なお、凸部5を設けた場合の最大径d2は、凸部5を加味した大きさである。外壁部1bの表面から突出する凸部5の高さは、0.5~2.5mmが好ましい。また、2以上の凸部5を設ける場合、長手方向と直交する方向における凸部同士の間隔は、0.5~4.0mmが好ましい。さらに、凸部が複数存在する場合、長手方向と直交する方向における凸部の本数は、2~20本が好ましい。
【0027】
(5)第5実施形態
図5A及び図5Bを参照して、ペット用ガムの第5実施形態について説明する。
第5実施形態において、ペット用ガム1は、外壁部1bから中空部2に連通するスリット3が、柱状体の長手方向に、らせん状に延在している。すなわち、第5実施形態において、ペット用ガム1は、長手方向と直交する方向における最大径d2の中点を通る軸を中心軸Cとしてねじられた柱状体である。また、外壁部1bの表面に、長手方向に直交する短手方向から外壁部1bをみたときに、該表面から突出する畝状の凸部5が複数設けられている。そして、該複数の凸部5は、柱状体の長手方向の一端側の端部1cから他端側の端部1dまで延伸しており、各凸部5はスリット3と略平行に配置されるとともに、複数の凸部5同士は互いに略平行に配置されている。すなわち、ペット用ガム1の第5実施形態は、スリット3がらせん状に配置された第2実施形態と、外壁部1bの表面に凸部5が設けられた第4実施形態の構成を併せ持つ実施形態といえる。
他の構成は、第1実施形態、第2実施形態、第4実施形態と同じであるため、上記した通り省略する。
【0028】
(6)第6実施形態
図示はしないけれども、ペット用ガムの第6実施形態について説明する。
第6実施形態におけるペット用ガムは、第1~第5実施形態におけるペット用ガムの中空部とスリットとが一体的に構成された溝状であることを除いて、第1~第5実施形態と同じ構成をとる。すなわち、第6実施形態において、中空部及びスリットは一体的に全体として溝状に構成されており、換言すると、外壁部から柱状体の中心軸近傍の領域にまで至る溝として設けられている。よって、かかる溝の外壁部側の一部領域は、スリットの第1及び第2端面部に相当し、かかる第1及び第2端面部に相当する領域に境界をもって区別されることなく滑らかに連続している中心軸近傍の残余の領域は、中空部の内壁部とみなすことができる。
柱状体の長手方向と直交する方向における、第6実施形態の中空部及びスリット、すなわち溝の輪郭の形状は特に限定されず、凹状(略四角形)であってもよく、おうぎ状(略三角形)であってもよい。
なお、ペット用ガムの長手方向と直交する方向における、中空部及びスリットに相当する溝のサイズは、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないけれども、少なくとも柱状体の長手方向と直交する方向における最大径の中点(柱状体の中心軸)にまで至る深さとされることが好ましい。
その他の構成は、上記第1~第5実施形態と同じであるため、省略する。
【0029】
3.ペット用ガムの製造方法
ペット用ガムの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも畜水産食品及び澱粉を含む混合物を混合し、押出成形により成形した成形物を乾燥することで製造し得る。
また、混合物を内径d1に相当する太さの棒に巻きつけて乾燥することでも製造し得る。なお、ペット用ガム1にスリットを設ける場合には、スリットの形成は、乾燥物から棒を外す前後のいずれで行ってもよい。
【0030】
一例として、押出成形による製造について、より詳細に説明する。柱状体の長手方向と直交する方向における外壁部及び内壁部、外壁部及び内壁部の間の領域を中空とした形状のダイを使用して押出成形した後、乾燥することにより、本発明のペット用ガムを製造し得る。なお、ペット用ガムにスリットを設けるために、ダイに所望のスリットの形状に対応した形状を付加することが肝要である。また、外壁部の外表面に対応する領域を中空とすることで、凸部を設け得る。すなわち、ダイの形状を変更することで、第1実施形態、第4実施形態のペット用ガムを製造し得る。
ダイの穴をらせん状に加工する、或いはダイを回転させながら押出成形することで、スリットをらせん状に形成し、長手方向と直交する方向における最大径d2の中点を通る軸を中心軸Cとしてねじられた柱状体を得ることができる。すなわち、第2実施形態、第5実施形態のペット用ガムを製造し得る。
【0031】
混合物は、少なくとも畜水産食品及び澱粉を含むものであればよく、対象とするペットの種類に応じて組成を変更する。但し、畜水産食品及び澱粉の合計が、混合物中の主成分となる量とし、好ましくは50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上となる量とする。
畜水産食品としては、ブタ、ウシ、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イノシシなどの家畜、ニワトリ、七面鳥、ガチョウ、カモ、ハトなどの家禽、白身魚、サケ、カニなどの魚介類、それらの肉や皮又はそれらの加工品が挙げられる。イヌであれば、牛皮、豚皮、鶏肉又はそれらの加工品が好ましい。また、ネコであれば、鶏肉、牛皮、白身魚又はそれらの加工品が好ましい。
澱粉は、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α化デンプンの他、アセチル化アジピン酸架橋でん粉、アセチル化リン酸化架橋でん粉、アセチル化酸化でん粉、オクテニルコハク酸でん粉ナトリウム、酢酸でん粉、酸化でん粉、ヒドロキシプロピル化でん粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋でん粉、リン酸化でん粉、リン酸架橋でん粉、でん粉グリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等の加工でん粉が挙げられる。
【0032】
混合物は、上記に加え、チキンエキス等の畜肉エキス;イワシ、マグロ、カツオ、サバ、タイ、ヒラメ、サケ、マス、カニ、エビなどを原料とした魚介エキス;アウレオバシジウム培養液、アマシードガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸、ウェランガム、エレミ樹脂、カシアガム、カードラン、カラギナン、カラヤガム、カロブビーンガム、キサンタンガム、キチン、キトサン、グァーガム、グァーガム酵素分解物、ガティガム、グルコサミン、酵母細胞壁、サイリウムシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、タラガム、デキストラン、トラガントガム、トロロアオイ、納豆菌ガム、微小繊維状セルロース、ファーセレラン、フクロノリ抽出物、プルラン、ペクチン、モモ樹脂、ランザンガム、レバン、アルギン酸又はその誘導体(例:アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸エステル)、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、カルボキシメチルセルロース又はその誘導体(例:カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのカルボキシメチルセルロース塩)等の増粘安定剤;グリセリン;酸化防止剤;微粒二酸化ケイ素、炭酸カルシウム等の研磨剤;亜硫酸水素ナトリウム;pH調整剤;カゼインナトリウム;着色料;ローズマリー抽出物;ポリリジン等の公知の添加剤を含んでもよい。
【0033】
混合物において、澱粉の配合量等を適宜変更することで、本発明のペット用ガムの物理的特性を調整し、使用時における柔軟性を付与し得る。
澱粉の配合量は、例えば、イヌ用の場合、混合物の総量に対して、0.5~45質量%が好ましく、ネコ用の場合、混合物の総量に対して、0.5~15質量%が好ましい。
【実施例
【0034】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。
【0035】
下記表1に記載の組成の混合物1及び混合物2を用意した。
【0036】
【表1】
【0037】
(実施例1)
所定形状のダイを用いて混合物1を押出成形して成形物を成形し、乾燥、裁断することにより、第1実施形態のペット用ガムを製造した。なお、該ペット用ガムの長さL1は、9.5cmであり、最大径d2は、11.0mmであり、中空部の内径d1は、3.0mmであり、外壁部と内壁部の間の厚さ(d2-d1)/2は、4.0mmであった。
【0038】
(比較例1)
所定形状のダイを用いて混合物1を押出成形して成形物を成形し、乾燥、裁断することにより、中空部及びスリットが存在しない中実円柱状のペット用ガムを製造した。なお、該ペット用ガムの長さL1は9.5cm、最大径d2は、11.0mmであった。
【0039】
(実施例2)
所定形状のダイを用いて混合物2を押出成形して成形物を成形し、乾燥、裁断することにより、第5実施形態のペット用ガムを製造した。なお、該ペット用ガムの長さL1は、6.0cmであり、最大径d2は、8.0mmであり、中空部の内径d1は、3.0mmであり、外壁部と内壁部の間の厚さ(d2-d1)/2は、2.5mmであり、長手方向と直交する方向における凸部の本数が、9本であり、外壁部の表面から突出する凸部の高さは、1.0mmであり、長手方向と直交する方向における凸部同士の間隔は、2.5mmであった。
【0040】
(比較例2)
所定形状のダイを用いて混合物2を押出成形して成形物を成形し、乾燥、裁断することにより、中空部及びスリットが存在せず、凸部が設けられた中実円柱状のペット用ガムを製造した。なお、該ペット用ガムの長さL1は、6.0cmであり、最大径d2は、8.0mmであり、長手方向と直交する方向における凸部の本数が、12本であり、外壁部の表面から突出する凸部の高さは、1.0mmであり、長手方向と直交する方向における凸部同士の間隔は、2.5mmであった。
【0041】
実施例1及び比較例1のペット用ガム、実施例2及び比較例2のペット用ガムを用いて、モデル歯垢除去率の測定を行うとともに、柱状体の長手方向と直交する方向におけるペットが噛んだ際の咬合力によるペット用ガムの噛み切り易さを、デジタルフォースゲージZTS-500N(イマダ製、付属の標準アタッチメントS-3(円錐)を使用)を用いて測定した。測定は一本のガムに対して1回ずつ測定することを5回繰り返し、それぞれの平均値を求めた。前記噛み切り易さは、前記デジタルフォースゲージを柱状体であるペット用ガムの長手方向と直交する方向に押し付けて破壊が起きたときの押し付けた力のピーク値により評価した。測定結果を表2に示す。
【0042】
なお、モデル歯垢除去率は以下のようにして測定した。対象となる評価用の顎模型(実施例1及び比較例1は小型犬、実施例2及び比較例2は猫)の規定の位置の歯(下顎の第1後臼歯)の表面に、着色された「モデル歯垢」液を塗布し、10分間乾燥した。乾燥した後、ペット用ガムを3回噛ませ、除去されたモデル歯垢の面積を測定した。
そして、モデル歯垢除去率は、以下の計算式で求めた。
モデル歯垢除去率(%)
=第1後臼歯に塗布したモデル歯垢が除去された面積÷第1後臼歯に塗布したモデル歯垢の面積×100
【0043】
【表2】
【0044】
表2から、同じ形状のペット用ガムを用いた場合であっても、中空部及びスリットを設けることで、より少ない力で破壊が生じ、モデル歯垢除去率が著しく向上したことがわかる。すなわち、本発明のペット用ガムは、より噛み切り易く、歯垢除去効果を向上し得るものである。
【符号の説明】
【0045】
1:ペット用ガム、1a:内壁部、1b:外壁部、1c:一端側の端部、1d:他端側の端部、2:中空部、3:スリット、3a:第1端面部、3b:第2端面部、5:凸部、7:接触部、L1:長手方向長さ、d1:内径、d2:最大径、C:中心軸。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6