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特許7458168蒸気弁及び蒸気タービン設備並びに蒸気弁の組立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】蒸気弁及び蒸気タービン設備並びに蒸気弁の組立て方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20240322BHJP
   F01D 17/10 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F16K1/32 B
F01D17/10 B
F01D17/10 C
F16K1/32 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019205978
(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公開番号】P2021080931
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】畑 斉樹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 弘之
(72)【発明者】
【氏名】園田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文之
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-176502(JP,A)
【文献】特開2017-207174(JP,A)
【文献】米国特許第06308930(US,B1)
【文献】特開2012-021568(JP,A)
【文献】中国実用新案第206816308(CN,U)
【文献】中国実用新案第202788950(CN,U)
【文献】特開平09-004728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/10
F16K 1/00 - 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿って延在する弁棒と、
前記弁棒によって駆動されるように構成された第1弁体と、
前記第1弁体が着座するように構成された第1弁座と、
前記弁棒の外周側に位置し、前記弁棒を前記水平方向に沿って案内するための第1ブッシュと、
を備え、
前記第1弁座の中心軸は、前記第1ブッシュの中心軸に対して、鉛直方向において下方にずれて位置し、
開状態の前記第1弁体を閉弁方向に動かして前記第1弁体と第1弁座とが最初に接触する位置において、前記第1弁座の下端部で前記第1弁体と前記第1弁座とが接触し、前記第1弁座の上端部で前記第1弁体と前記第1弁座との間に隙間が形成されるように構成された
蒸気弁。
【請求項2】
前記第1弁体を前記水平方向に沿って摺動可能に案内するための第2ブッシュをさらに備え、
前記第1弁体が前記第1弁座に着座した状態で、前記第1弁体の上端部と前記第2ブッシュの内周面との間に隙間が形成され、前記第1弁体の下端部と前記第2ブッシュの前記内周面とが接触する
請求項1に記載の蒸気弁。
【請求項3】
水平方向に沿って延在する弁棒と、
前記弁棒によって駆動されるように構成された第1弁体と、
前記第1弁体が着座するように構成された第1弁座と、
前記弁棒の外周側に位置し、前記弁棒を前記水平方向に沿って案内するための第1ブッシュと、
を備え、
前記第1弁座の中心軸は、前記第1ブッシュの中心軸に対して、鉛直方向において下方にずれて位置し、
開状態の前記第1弁体を閉弁方向に動かして前記第1弁体と第1弁座とが最初に接触する位置において、前記第1弁座の上端部で前記第1弁体と前記第1弁座とが接触し、前記第1弁座の下端部で前記第1弁体と前記第1弁座との間に隙間が形成されるように構成された
蒸気弁。
【請求項4】
前記第1弁体を前記水平方向に沿って摺動可能に案内するための第2ブッシュをさらに備え、
前記第1弁体が前記第1弁座に着座した状態で、前記第1弁体の上端部と前記第2ブッシュの内周面との間に隙間が形成され、前記第1弁体の下端部と前記第2ブッシュの前記内周面とが接触する
請求項3に記載の蒸気弁。
【請求項5】
前記弁棒と前記第1弁体との間に設けられ、前記弁棒の軸方向に沿った付勢力を前記第1弁体に与えるように構成された付勢部を備え、
前記第1弁座の座面は、前記第1弁座の軸方向に対して、前記第1弁体の閉弁方向に向かって前記第1弁座の中心軸に近づくように傾斜している
請求項1乃至4の何れか一項に記載の蒸気弁。
【請求項6】
前記弁棒の先端側に設けられ、前記第1弁体の内壁面によって画定される前記第1弁体の内部空間に収容され、前記内壁面によって形成される第2弁座に着座可能な第2弁体を備え、
前記第1弁体は、前記第2弁体を介して、前記弁棒によって駆動されるように構成された
請求項1乃至の何れか一項に記載の蒸気弁。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか一項に記載の蒸気弁と、
前記蒸気弁の下流側に設けられる蒸気タービンと、
を備えることを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項8】
水平方向に沿って延在する弁棒と、
前記弁棒によって駆動されるように構成された第1弁体と、
前記第1弁体が着座するように構成された第1弁座と、
前記弁棒の外周側に位置し、前記弁棒を前記水平方向に沿って案内するための第1ブッシュと、
前記第1弁座を有する弁ケーシングと、
前記弁棒が貫通するとともに、前記第1ブッシュが取り付けられるボンネットと、
を含む蒸気弁の組立て方法であって、
前記第1弁座の中心軸が、前記第1ブッシュの中心軸に対して、鉛直方向において下方にずれて位置するように、前記第1弁座に対する前記第1ブッシュの位置を調節するステップを備え、
前記調節するステップでは、前記第1弁座の中心軸が、前記第1ブッシュの中心軸に対して、鉛直方向において下方にずれて位置するように、前記弁ケーシングに対する前記ボンネットの位置を調節し、
前記ボンネットおよび前記弁ケーシングをインロー嵌合させるステップと、
前記ボンネットおよび前記弁ケーシングをインロー嵌合させた状態において、前記インロー嵌合のインロー隙間の範囲内で、前記ボンネットが前記弁ケーシングに接触する基準位置まで前記ボンネットを前記弁ケーシングに対して相対的に下方又は上方に動かすステップと、
前記インロー隙間の範囲内で、前記ボンネットの前記弁ケーシングに対する鉛直方向の相対位置を前記基準位置から規定量ずらすステップと、
を備える
蒸気弁の組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気弁及び蒸気タービン設備並びに蒸気弁の組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン設備等で用いられる蒸気弁として、水平方向に沿って弁体が駆動される蒸気弁が用いられることがある。
【0003】
例えば特許文献1には、弁体に連結される弁棒に水平方向の進退力を作用させることで、弁体が水平方向に駆動される水平弁(蒸気弁)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-21568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水平方向に沿って駆動される蒸気弁の作動中、弁体の自重等により、弁体の中心軸が水平方向から傾斜するように弁体が傾くことがある。この場合、弁閉時に弁体が弁座に完全にはシートできず、シート漏れが生じる可能性がある。そこで、水平弁において、閉弁時におけるシート漏れを抑制することが望まれる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、シート漏れを抑制可能な蒸気弁及び蒸気タービン設備並びに蒸気弁の組立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気弁は、
水平方向に沿って延在する弁棒と、
前記弁棒によって駆動されるように構成された第1弁体と、
前記第1弁体が着座するように構成された第1弁座と、
前記弁棒の外周側に位置し、前記弁棒を前記水平方向に沿って案内するための第1ブッシュと、
を備え、
前記第1弁座の中心軸は、前記第1ブッシュの中心軸に対して、鉛直方向において下方にずれて位置する。
【0008】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る及び蒸気タービン設備は、
上述の構成を有する蒸気弁と、
前記蒸気弁の下流側に設けられる蒸気タービンと、
を備える。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る及び蒸気弁の組立て方法は、
水平方向に沿って延在する弁棒と、
前記弁棒によって駆動されるように構成された第1弁体と、
前記第1弁体が着座するように構成された第1弁座と、
前記弁棒の外周側に位置し、前記弁棒を前記水平方向に沿って案内するための第1ブッシュと、
を含む蒸気弁の組立て方法であって、
前記第1弁座の中心軸が、前記第1ブッシュの中心軸に対して、鉛直方向において下方にずれて位置するように、前記第1弁座に対する前記第1ブッシュの位置を調節するステップを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、シート漏れを抑制可能な蒸気弁及び蒸気タービン設備並びに蒸気弁の組立て方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る蒸気タービン設備の概略構成図である。
図2】一実施形態に係る蒸気弁の全体を示す概略構成図である。
図3】一実施形態に係る蒸気弁の要部を示す構成図である。
図4】一実施形態に係る蒸気弁の要部を示す構成図である。
図5】一実施形態に係る蒸気弁の要部を示す構成図である。
図6】一実施形態に係る蒸気弁のケーシングの概略図である。
図7】一実施形態に係る蒸気弁のケーシングの概略的な部分断面図である。
図8】一実施形態に係る蒸気弁の組立て方法を説明するための図である。
図9】一実施形態に係る蒸気弁の組立て方法を説明するための図である。
図10】一実施形態に係る蒸気弁の組立て方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
なお、以下においては、幾つかの実施形態に係る蒸気弁が蒸気タービン設備に用いられる場合を一例として説明するが、幾つかの実施形態に係る蒸気弁は、蒸気タービン設備以外の用途に用いられるものであってもよい。
【0014】
(蒸気タービン設備の構成)
図1は、一実施形態に係る蒸気弁が適用される蒸気タービン設備の概略構成図である。図1に示すように、蒸気タービン設備1は、蒸気を生成するためのボイラ2と、ボイラ2からの蒸気の圧力を回転エネルギーに変換する蒸気タービン4と、蒸気タービン4の回転により駆動される発電機8と、を含む。
【0015】
図1に示す実施形態では、蒸気タービン4は、高圧蒸気タービン5と、中圧蒸気タービン6と、低圧蒸気タービン7と、を含み、高圧蒸気タービン5と中圧蒸気タービン6との間には、再熱器9が設けられる。高圧蒸気タービン5から排出された蒸気は、再熱器9により再加熱されて、中圧蒸気タービン6に供給されるようになっている。また、中圧蒸気タービン6から排出された蒸気は、低圧蒸気タービン7に供給されるようになっている。
【0016】
ボイラ2と高圧蒸気タービン5とは、主蒸気供給配管3を介して接続されており、主蒸気供給配管3には、止め弁11及び加減弁12が設けられている。止め弁11を閉じることにより、ボイラ2から高圧蒸気タービン5に供給される蒸気の流れを遮断することが可能となっている。また、加減弁12の開度を調節することにより、ボイラ2から高圧蒸気タービン5に供給される蒸気の流量を調節可能となっている。
【0017】
また、再熱器9と中圧蒸気タービン6とを接続する配管には止め弁13及び加減弁14が設けられており、これらの止め弁13及び加減弁14によって、中圧蒸気タービン6に供給される蒸気の流れを遮断し、あるいは蒸気の流量を調節することが可能となっている。
【0018】
幾つかの実施形態において、止め弁11は以下に説明する蒸気弁20である。幾つかの実施形態では、止め弁13、加減弁12、又は加減弁14が以下に説明する蒸気弁20であってもよい。
【0019】
(蒸気弁の構成)
次に、図2図5を参照して、幾つかの実施形態に係る蒸気弁20についてより詳細に説明する。
【0020】
図2は、幾つかの実施形態に係る蒸気弁の全体を示す概略構成図である。図2に示すように、幾つかの実施形態に係る蒸気弁20は、水平方向に沿って延在する弁棒30と、弁棒30によって駆動されるように構成された第1弁体(主弁)40と、第1弁体40が着座するように構成された第1弁座(主弁弁座)42と、を備えている。
【0021】
蒸気弁20は、第1弁体40の内壁面41によって画定される内部空間44に収容される第2弁体(子弁)60を備えている。第2弁体60は弁棒30の先端側に設けられており、弁棒30によって駆動されるようになっている。第1弁体40は、第2弁体60を介して弁棒30によって駆動されるようになっている。第2弁体60は、第1弁体40の内壁面41によって形成される第2弁座(子弁弁座)62に着座可能になっている。
【0022】
蒸気弁20は、第1弁体40及び第2弁体60を収容するケーシング22を備えている。ケーシング22は、弁ケーシング24と、弁ケーシング24に取付けられるボンネット26とを含み、弁ケーシング24及びボンネット26によって、蒸気入口17から蒸気出口19につながる蒸気流路18、及び、第1弁体40及び第2弁体60の収容空間が形成されている。弁ケーシング24は、第1弁体40が着座可能な第1弁座42を有する。ボンネット26は水平方向に沿って延びる貫通孔28を有し、該貫通孔28に弁棒30が挿通されている。
【0023】
第1弁体40には、第1弁体40の内部空間44と、蒸気入口17側の蒸気流路18とを連通させる通路46が設けられている。ボンネット26には、第1弁体40の背面側空間50と、蒸気入口17側の蒸気流路18とを連通させるバランス孔52が設けられている。
【0024】
弁棒30は、レバー32を介してアクチュエータ34(例えば油圧アクチュエータ)に接続されている。また、蒸気弁20は、弁棒30を介して第2弁体60に閉弁方向の付勢力を与えるためのスプリング36を備える。蒸気弁20の閉状態においては、第1弁体40及び第2弁体60は、スプリング36により、それぞれ、第1弁座42及び第2弁座62に向かって(閉弁方向に向かって)付勢されている。
【0025】
蒸気弁20が開かれるとき、アクチュエータ34を作動させて(例えば油圧アクチュエータの場合、油圧室に油を供給して)、レバー32を介して、スプリング36の付勢力と反対方向の駆動力が弁棒30に対して与えられる。そして、アクチュエータ34により弁棒30に付与される駆動力がスプリング36の付勢力に打ち勝つことにより、まず、弁棒30とともに第2弁体60が開弁方向(弁座から離れる方向)に移動して、第2弁体60が第2弁座62から離れる。その後、弁開閉方向に沿った向きにおいて互いに対向する弁棒30の弁棒側当接面72(図3参照)と第1弁体40の主弁側当接面73(図3参照)とが当接して、第1弁体40が弁棒30及び第2弁体60とともに開弁方向に移動して、第1弁体40が第1弁座42から離れる。このようにして、蒸気弁20が開弁状態となる。
【0026】
一方、蒸気弁20が閉じられるとき、アクチュエータ34を作動させて(例えば油圧アクチュエータの場合、油圧室から油を排出して)、アクチュエータ34によりレバー32を介して弁棒に与える開弁方向の駆動力を減少させる。そして、第1弁体40及び第2弁体60は、スプリング36の付勢力により、第1弁座42及び第2弁座62に向かって移動し、着座する。このようにして、蒸気弁20が閉弁状態となる。
【0027】
図3図5は、それぞれ、一実施形態に係る蒸気弁20の要部を示す構成図である。なお、図3図5は、開状態の第1弁体40を弁棒30を介して閉弁方向に動かして、第1弁体40と第1弁座42とが最初に接触する位置にあるときを示す図である。なお、図3図5において、通路46及びバランス孔52等(図2参照)の図示は省略されている。
【0028】
蒸気弁20は、弁棒30の外周側に位置し、弁棒30を水平方向に沿って案内するための第1ブッシュ56を含む。第1ブッシュ56は、ボンネット26に設けられている。第1ブッシュ56は、第1ブッシュ56の中心軸L1が水平方向に沿うように設けられている。また、ボンネット26には、弁棒30の軸方向(弁開閉方向)の摺動を案内するためのスリーブ58が設けられている。
【0029】
蒸気弁20は、第1弁体40の外周側に位置し、第1弁体40を水平方向に沿って摺動可能に案内するための第2ブッシュ54を含む。第2ブッシュ54は、ボンネット26に設けられている。第2ブッシュ54は、第2ブッシュ54の中心軸が水平方向に沿うように設けられている。第2ブッシュ54は、第1弁体40の外周面に対向する内周面55を有する。
【0030】
また、第1弁座42の座面は、第1弁座42の軸方向(中心軸L2の方向)に対して、第1弁体40の閉弁方向に向かって第1弁座42の中心軸L2に近づくように傾斜している。
【0031】
幾つかの実施形態では、例えば図3図5に示すように、蒸気弁20において、第1弁座42の中心軸L2は、第1ブッシュ56の中心軸L1に対して、鉛直方向において下方にずれて位置している。図3図5において、第1弁座42の中心軸L2に対する第1ブッシュ56の中心軸L1の鉛直方向のずれ量(偏心量)をd1で示す。このずれ量d1は、例えば、0.1mm以上0.5mm以下程度であってもよい。
【0032】
水平方向に沿って駆動される蒸気弁の弁体は、該蒸気弁の作動中、自重等によって、弁棒を案内するブッシュの中心軸方向に対して傾斜することがある。このように弁体が傾斜すると、閉弁時において、弁体と弁座の間に隙間が生じ、該隙間からの流体漏れ(即ちシート漏れ)が生じる可能性がある。この点、上述の実施形態によれば、第1弁体40が着座する第1弁座42の中心軸L2を、弁棒30を水平方向に沿って案内する第1ブッシュ56の中心軸L1に対して下方にずらして位置させたので(即ち、第1弁座42を第1ブッシュ56に対して偏心させたので)、第1弁体40が自重で傾斜しても確実に第1弁座42に着座しやすくなり、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0033】
上述のずれ量(偏心量)d1は第1弁体40及び弁棒30の摺動部における径方向の間隙の大きさなどから、幾何学的に算出するようにしてもよい。また、蒸気タービン設備1の運転時における温度等の環境を考慮して、上述のずれ量d1を決定するようにしてもよい。
【0034】
幾つかの実施形態では、例えば図3及び図4に示すように、第1弁体40が第1弁座42に着座した状態で、第1弁体40の上端部40aと第2ブッシュ54の内周面55との間に隙間G1が形成され、第1弁体40の下端部40bと第2ブッシュ54の内周面55とが接触している。
【0035】
図3に示す例示的な実施形態では、第2ブッシュ54の先端側端54aを含む軸方向範囲内にて、第1弁体40の下端部40bと第2ブッシュ54の内周面55とが接触し、軸方向における第2ブッシュ54と第1弁体40の摺動範囲全域にて、第1弁体40の上端部40aと第2ブッシュ54の内周面55との間に隙間G1が形成されている。図4に示す例示的な実施形態では、第2ブッシュ54の先端側端54aにて第1弁体40の下端部40bと第2ブッシュ54の内周面と55が接触し、軸方向における第2ブッシュ54と第1弁体40の摺動範囲全域にて、第1弁体40の上端部40aと第2ブッシュ54の内周面55との間に隙間G1が形成されている。なお、上述の「軸方向」とは、第1ブッシュ56の軸方向である。
【0036】
水平方向に沿って駆動される蒸気弁20では、例えば図3図4に示すように、第1弁体40が第1弁座42に着座した状態で、第1弁体40の上端部40aと、第1弁体40を水平方向に沿って案内する第2ブッシュ54の内周面55との間に隙間G1が形成され、第1弁体40の下端部40bと第2ブッシュ54の内周面55とが接触する状態となり得る。この点、上述の実施形態によれば、このような特徴を有する蒸気弁20において、第1弁座42の中心軸L2を、第1ブッシュ56の中心軸L1に対して下方にずらして位置させたので(即ち、第1弁座42を第1ブッシュ56に対して下方に偏心させたので)、第1弁体40が自重で傾斜しても確実に第1弁座42に着座しやすくなり、後述するように閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、例えば図3に示すように、蒸気弁20は、開状態の第1弁体40を閉弁方向に動かして第1弁体40と第1弁座42とが最初に接触する位置において、第1弁座42の上端部42a及び下端部42bの両方で、第1弁体40と第1弁座42とが接触するように構成される。
【0038】
水平方向に沿って駆動される蒸気弁20において、第1弁体40を閉弁方向に動かして第1弁体40と第1弁座42とが最初に接触する位置では、第1弁体40は、通常、自重等によって、弁棒を案内するブッシュの中心軸方向に対して傾斜する。この点、上述の実施形態によれば、第1弁体40の上述の位置において、第1弁座42の上端部42a及び下端部42bの両方で第1弁体40と第1弁座42とが接触するようにしたので、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、例えば図4に示すように、蒸気弁20は、開状態の第1弁体40を閉弁方向に動かして第1弁体40と第1弁座42とが最初に接触する位置において、第1弁座42の下端部42bで第1弁体40と第1弁座42とが接触し、第1弁座42の上端部42aで第1弁体40と第1弁座42との間に隙間G2が形成されるように構成される。
【0040】
上述の実施形態では、第1弁体40の上述の位置において、第1弁座42の下端部42bで第1弁体40と第1弁座42とが接触し、第1弁座42の上端部42aで第1弁体40と第1弁座42との間に隙間G2が形成されるので、後述するように第1弁体40の閉弁時に、第1弁体40の前後の蒸気の圧力差によって、第1弁体40が第1弁座42に対して上方にずれて調芯されやすい。
【0041】
すなわち、蒸気タービン設備1の運転中、第1弁体40(蒸気弁20)の上流側(蒸気入口17側)の空間は、第1弁体40(蒸気弁20)の下流側(蒸気出口19側)の空間に比べて圧力が高い。このため、第1弁体40が第1弁座42に着座するとき、第1弁体40には、第1弁体40の上流側空間と下流側空間との圧力差により、閉弁方向の力が作用する。そして、第1弁座42の座面が第1弁座42の中心軸L2に対して傾斜しているため、閉弁方向の力が第1弁体40に作用したとき、該力の第1弁座42の座面に平行な成分によって、第1弁体40が第1弁座42に対して上方に移動して調芯される。
【0042】
したがって、上述の実施形態によれば、このように第1弁体40が調芯されることで、閉弁時において第1弁座42の上端部42a及び下端部42bの両方で第1弁体40と第1弁座42とが接触しやすくなり、これにより、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0043】
幾つかの実施形態では、例えば図5に示すように、蒸気弁20は、開状態の第1弁体40を閉弁方向に動かして第1弁体40と第1弁座42とが最初に接触する位置において、第1弁座42の上端部42aで第1弁体40と第1弁座42とが接触し、第1弁座42の下端部42bで第1弁体40と第1弁座42との間に隙間G3が形成されるように構成される。
【0044】
上述の実施形態によれば、第1弁体40の上述の位置において、第1弁座42の上端部42aで第1弁体40と第1弁座42とが接触し、第1弁座42の下端部42bで第1弁体40と第1弁座42との間に隙間G3が形成されるようにしたので、後述するように閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0045】
図3図5に示すように、蒸気弁20は、弁棒30と第1弁体40との間に設けられる付勢部66をさらに備えていてもよい。付勢部66は、弁棒30の軸方向に沿った付勢力を第1弁体40に与えるように構成される。
【0046】
図3図5に示す例示的な実施形態では、弁棒30の先端部において弁棒30の軸方向に延在する弁棒穴64が、弁棒30の先端面(不図示)に開口するように設けられており、該弁棒穴64の内部に付勢部66としてのばねが設けられている。したがって、付勢部66による付勢力は、第2弁体60を介して第1弁体40に伝達される。また、弁棒30からの駆動力は、付勢部66を介して第2弁体60及び第1弁体40に伝達される。
【0047】
上述の実施形態によれば、弁棒30の軸方向に沿った付勢力を第1弁体40に与える付勢部66を設けるとともに、第1弁座42の座面を第1弁座42の中心軸L2に対して傾斜させているので、蒸気弁20の動作時に上述の付勢力が第1弁体40に作用したとき、該付勢力の第1弁座42の座面に平行な成分によって、第1弁体40が第1弁座に対して調芯されやすい。したがって、閉弁時において第1弁座42の上端部42a及び下端部42bの両方で第1弁体40と第1弁座42とが接触しやすくなり、これにより、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0048】
(蒸気弁の組立て方法)
次に、図6図10を参照して、上述した蒸気弁20の組立て方法について説明する。
【0049】
図6は、幾つかの実施形態に係る蒸気弁20のケーシング22を、第1ブッシュ56の中心軸L1及び第1弁座42の中心軸L2の方向から視た概略図であり、図7は、幾つかの実施形態に係る蒸気弁20のケーシング22の概略的な部分断面図である。
【0050】
幾つかの実施形態では、蒸気弁20の組立て方法は、第1弁座42の中心軸L2が、第1ブッシュ56の中心軸L1に対して、鉛直方向において下方にずれて位置するように、第1弁座42に対する第1ブッシュ56の位置を調節するステップを備える。
【0051】
上述の組立て方法についてより具体的に説明する。幾つかの実施形態に係る蒸気弁20の組立て方法は、弁ケーシング24にボンネット26を設置する工程を含み、この工程において、第1弁座42に対する第1ブッシュ56の位置を調節する。すなわち、この工程において、第1弁座42の中心軸L2が、第1ブッシュ56の中心軸L1に対して、鉛直方向において下方にずれて位置するように、弁ケーシング24に対するボンネット26の位置を調節する。
【0052】
なお、弁ケーシング24にボンネット26を設置する前に、予め、弁ケーシング24に第1弁座42を設置するとともに、ボンネット26に弁棒30、第1弁体40、第2弁体60及び第1ブッシュ56等を組み込んでおく。このとき、蒸気弁20の組立て後におけるずれ量d1(第1弁座42の中心軸L2に対する第1ブッシュ56の中心軸L1の鉛直方向のずれ量(偏心量)d1)を見込んで、第1弁座42を弁ケーシング24に設置しておく。
【0053】
鉛直方向における弁ケーシング24に対するボンネット26の位置調節は、ジャッキボルトを用いて行ってもよい。図6及び図7に示す実施形態では、弁ケーシング24の上部に上側ジャッキボルト70Aが設置され、弁ケーシング24の下部に下側ジャッキボルト70Bが設置されている。
【0054】
また、図7に示すように、弁ケーシング24とボンネット26との接触面には、インロー嵌合部74が設けられている。ここで、図8図10は、一実施形態に係る蒸気弁20の組立て方法を説明するための図であり、インロー嵌合部74を示す図である。図7及び図8に示すように、弁ケーシング24には円周状に延在する凹部25が設けられているとともに、ボンネット26には、円周状に延在し、凹部25に嵌合可能な凸部27が設けられている。
【0055】
幾つかの実施形態では、弁ケーシング24にボンネット26を設置する工程において、まず、ボンネット26及び弁ケーシング24をインロー嵌合させる。すなわち、弁ケーシング24に設けられた凹部25と、ボンネット26に設けられた凸部27とを嵌合させる。この状態では、図8に示すように、インロー嵌合部74において、凹部25の側壁面25aと、凸部27の側壁面27aとの間に、鉛直方向において若干の隙間が存在する。
【0056】
次に、ボンネット26および弁ケーシング24をインロー嵌合させた状態において、インロー嵌合部74のインロー隙間(鉛直方向の隙間)の範囲内で、ボンネット26が弁ケーシング24に接触する基準位置までボンネット26を弁ケーシング24に対して相対的に下方又は上方に動かす。ここでは、ボンネット26を弁ケーシング24に対して下方に動かす場合について説明する。
【0057】
図6及び図7に示す実施形態の場合、上側ジャッキボルト70Aを適切にねじ込むことにより、上述の基準位置まで、ボンネット26を弁ケーシング24に対して下方に動かす。図9は、基準位置におけるボンネット26及び弁ケーシング24を示す図である。基準位置においては、インロー嵌合部74の下側部74Bでは凹部25の側壁面25aと凸部27の側壁面27aとが接触している。なお、この時、インロー嵌合部74の上側部74Aでは、凹部25の側壁面25aと凸部27の側壁面27aとの間に隙間が存在する。
【0058】
次に、インロー隙間の範囲内で、ボンネット26の弁ケーシング24に対する鉛直方向の相対位置を基準位置(図9参照)から規定量ずらす。図6及び図7に示す実施形態の場合、下側ジャッキボルト70Bのねじ込み量を適切に調節することで、ボンネット26を弁ケーシング24に対して、上方に規定量h1(図10)だけずらす。この規定量h1は、予め設定されたずれ量d1に対応して決まる量である。
【0059】
この結果、図10に示すように、弁ケーシング24に対するボンネット26の鉛直方向における位置を精度良く調節することができる。したがって、第1ブッシュ56の中心軸L1に対する第1弁座42の中心軸L2に対する鉛直方向のずれ量d1(偏心量)を所望の値に精度良く調整することができる。
【0060】
組立て後の蒸気弁20における第1弁体40のシート性は、例えば以下のようにして確認できる。蒸気タービン設備1の運転中における蒸気弁20の構成部材の熱伸びを考慮して、ずれ量(偏心量)d1を決定する。そして、決定したずれ量d1とした場合に、コールド時(温度が低く熱伸びがほとんどない状態)において第1弁体40の第1弁座42に対するシート状態がどのようになるか(例えば、第1弁座42の上端部42a及び下端部42bにて第1弁座42と第1弁体40とが接触するか否か)を予測する。そして、蒸気弁20を組み立てた状態で、第1弁体40を閉弁方向に動かし、第1弁体40と第1弁座42とが最初に接触する位置において、予測どおりのシート性になっているか否かを確認する。このようにして、組立て後の蒸気弁20における第1弁座42のシート性を確認することができる。
【0061】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0062】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気弁(20)は、
水平方向に沿って延在する弁棒(30)と、
前記弁棒によって駆動されるように構成された第1弁体(40)と、
前記第1弁体が着座するように構成された第1弁座(42)と、
前記弁棒の外周側に位置し、前記弁棒を前記水平方向に沿って案内するための第1ブッシュ(56)と、
を備え、
前記第1弁座の中心軸(L2)は、前記第1ブッシュの中心軸(L1)に対して、鉛直方向において下方にずれて位置する。
【0063】
水平方向に沿って駆動される蒸気弁の弁体は、該蒸気弁の作動中、自重等によって、弁棒を案内するブッシュの中心軸方向に対して傾斜することがある。このように弁体が傾斜すると、閉弁時におけるシート漏れが生じる可能性がある。この点、上記(1)の構成によれば、第1弁体が着座する第1弁座の中心軸を、弁棒を水平方向に沿って案内する第1ブッシュの中心軸に対して下方にずらして位置させたので、第1弁体が自重で傾斜しても確実に着座しやすくなり、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0064】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記蒸気弁は、
前記第1弁体を前記水平方向に沿って摺動可能に案内するための第2ブッシュ(54)をさらに備え、
前記第1弁体が前記第1弁座に着座した状態で、前記第1弁体の上端部(40a)と前記第2ブッシュの内周面(55)との間に隙間(G1)が形成され、前記第1弁体の下端部(40b)と前記第2ブッシュの前記内周面とが接触する。
【0065】
水平方向に沿って駆動される蒸気弁では、第1弁体が第1弁座に着座した状態で、第1弁体の上端部と、第1弁体を水平方向に沿って案内する第2ブッシュの内周面との間に隙間が形成され、第1弁体の下端部と第2ブッシュの内周面とが接触する状態となり得る。この点、上記(2)の構成によれば、このような特徴を有する蒸気弁において、上記(1)で述べたように、第1弁体が自重で傾斜しても確実に着座しやすくなり、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0066】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記蒸気弁は、
開状態の前記第1弁体を閉弁方向に動かして前記第1弁体と第1弁座とが最初に接触する位置において、前記第1弁座の上端部(42a)及び下端部(42b)の両方で、前記第1弁体と前記第1弁座とが接触するように構成される。
【0067】
水平方向に沿って駆動される蒸気弁において、第1弁体を閉弁方向に動かして第1弁体と第1弁座とが最初に接触する位置では、第1弁体は、通常、自重等によって、弁棒を案内するブッシュの中心軸方向に対して傾斜する。上記(3)の構成によれば、第1弁体の上述の位置において、第1弁座の上端部及び下端部の両方で第1弁体と第1弁座とが接触するようにしたので、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0068】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記蒸気弁は、
開状態の前記第1弁体を閉弁方向に動かして前記第1弁体と第1弁座とが最初に接触する位置において、前記第1弁座の下端部で前記第1弁体と前記第1弁座とが接触し、前記第1弁座の上端部で前記第1弁体と前記第1弁座との間に隙間(G2)が形成されるように構成される。
【0069】
上記(4)の構成によれば、第1弁体の上述の位置において、第1弁座の下端部で第1弁体と第1弁座とが接触し、第1弁座の上端部で第1弁体と第1弁座との間に隙間が形成されるので、第1弁体の閉弁時に、第1弁体の前後の圧力差によって、第1弁体が第1弁座に対して上方にずれて調芯されやすい。すなわち、蒸気の圧力により第1弁体が上方に押し上げられ、第1弁体と第1弁座が上端部側でも接触し(すなわち隙間(G2)がゼロになり)、従って第1弁体は第1弁座の上端部及び下端部にて着座しやすい。したがって、閉弁時において第1弁座の上端部及び下端部の両方で第1弁体と第1弁座とが接触しやすくなり、これにより、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0070】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記蒸気弁は、
開状態の前記第1弁体を閉弁方向に動かして前記第1弁体と第1弁座とが最初に接触する位置において、前記第1弁座の上端部で前記第1弁体と前記第1弁座とが接触し、前記第1弁座の下端部で前記第1弁体と前記第1弁座との間に隙間(G3)が形成されるように構成される。
【0071】
上記(5)の構成によれば、第1弁体の上述の位置において、第1弁座の上端部で第1弁体と第1弁座とが接触し、第1弁座の下端部で第1弁体と第1弁座との間に隙間が形成されるようにしたので、第1弁体の閉弁時に、第1弁体の前後の圧力差によって、第1弁体が第1弁座に対して下方にずれて調芯されやすい。すなわち、蒸気の圧力により、第1弁体が下方に押し下げられ、第1弁体と第1弁座が下端部側でも接触し(すなわち隙間(G3)がゼロになり)、したがって第1弁体は第1弁座の上端部及び下端部にて着座しやすい。したがって、閉弁時において第1弁座の上端部及び下端部の両方で第1弁体と第1弁座とが接触しやすくなり、これにより、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0072】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記蒸気弁は、
前記弁棒と前記第1弁体との間に設けられ、前記弁棒の軸方向に沿った付勢力を前記第1弁体に与えるように構成された付勢部(66)を備え、
前記第1弁座の座面は、前記第1弁座の軸方向に対して、前記第1弁体の閉弁方向に向かって前記第1弁座の中心軸に近づくように傾斜している。
【0073】
上記(6)の構成によれば、弁棒の軸方向に沿った付勢力を第1弁体に与える付勢部を設けるとともに、第1弁座の座面を第1弁座の中心軸に対して傾斜させたので、蒸気弁の動作時に付勢力が第1弁体に作用したとき、該付勢力の第1弁座の座面に平行な成分によって、第1弁体が調芯されやすい。したがって、閉弁時において第1弁座の上端部及び下端部の両方で第1弁体と第1弁座とが接触しやすくなり、これにより、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0074】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記蒸気弁は、
前記弁棒の先端側に設けられ、前記第1弁体の内壁面(42)によって画定される前記第1弁体の内部空間(44)に収容され、前記内壁面によって形成される第2弁座(62)に着座可能な第2弁体(60)を備え、
前記第1弁体は、前記第2弁体を介して、前記弁棒によって駆動されるように構成される。
【0075】
上記(7)の構成によれば、第1弁体、及び、第1弁体(主弁)の内部空間に収容される第2弁体(子弁)を備え、第1弁体が第2弁体を介して駆動される上述の構成の蒸気弁において、第1弁体が着座する第1弁座の中心軸を、弁棒を水平方向に沿って案内する第1ブッシュの中心軸に対して下方にずらして配置する。したがって、第1弁体が自重で傾斜しても確実に着座しやすくなり、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0076】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービン設備は、
上記(1)乃至(7)の何れか一項に記載の蒸気弁と、
前記蒸気弁の下流側に設けられる蒸気タービン(4)と、
を備える。
【0077】
上記(8)の構成によれば、蒸気タービン設備の蒸気弁において、第1弁体が着座する第1弁座の中心軸を、弁棒を水平方向に沿って案内する第1ブッシュの中心軸に対して下方にずらしたので、第1弁体が自重で傾斜しても確実に着座しやすくなり、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0078】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気弁の組立て方法は、
水平方向に沿って延在する弁棒(30)と、
前記弁棒によって駆動されるように構成された第1弁体(40)と、
前記第1弁体が着座するように構成された第1弁座(42)と、
前記弁棒の外周側に位置し、前記弁棒を前記水平方向に沿って案内するための第1ブッシュ(56)と、
を含む蒸気弁の組立て方法であって、
前記第1弁座の中心軸(L2)が、前記第1ブッシュの中心軸(L1)に対して、鉛直方向において下方にずれて位置するように、前記第1弁座に対する前記第1ブッシュの位置を調節するステップを備える。
【0079】
上記(9)の方法によれば、第1弁体が着座する第1弁座の中心軸が、弁棒を水平方向に沿って案内する第1ブッシュの中心軸に対して下方にずれて位置するように、第1弁座委に対する第1ブッシュの位置を調節するようにしたので、組立てた蒸気弁において、第1弁体が自重で傾斜しても確実に着座しやすくなり、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0080】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の方法において、
前記蒸気弁は、
前記第1弁座を有する弁ケーシング(24)と、
前記弁棒が貫通するとともに、前記第1ブッシュが取り付けられるボンネット(26)と、を含み、
前記調節するステップでは、前記第1弁座の中心軸が、前記第1ブッシュの中心軸に対して、鉛直方向において下方にずれて位置するように、前記弁ケーシングに対する前記ボンネットの位置を調節する。
【0081】
上記(10)の方法によれば、前記第1弁座の中心軸が、第1ブッシュの中心軸に対して、鉛直方向において下方にずれて位置するように、第1弁座を有する弁ケーシングに対する第1ブッシュが取り付けられるボンネットの位置を調節する。したがって、組立てた蒸気弁において、第1弁体が自重で傾斜しても確実に着座しやすくなり、閉弁時におけるシート漏れを効果的に抑制することができる。
【0082】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の方法において、
前記ボンネットおよび前記弁ケーシングをインロー嵌合させるステップと、
前記ボンネットおよび前記弁ケーシングをインロー嵌合させた状態において、前記インロー嵌合(例えばインロー嵌合部74)のインロー隙間の範囲内で、前記ボンネットが前記弁ケーシングに接触する基準位置まで前記ボンネットを前記弁ケーシングに対して相対的に下方又は上方に動かすステップと、
前記インロー隙間の範囲内で、前記ボンネットの前記弁ケーシングに対する鉛直方向の相対位置を前記基準位置から規定量(h1)ずらすステップと、
を備える。
【0083】
上記(11)の構成によれば、ボンネット及び弁ケーシングをインロー嵌合させた状態で、ボンネットが弁ケーシングに接触する基準位置までボンネットを弁ケーシングに対して動かしてから、ボンネットの弁ケーシングに対する鉛直方向の相対位置を基準位置から規定量ずらすようにしたので、鉛直方向におけるボンネットの弁ケーシングに対する位置を精度良く調節可能である。したがって、第1ブッシュの中心軸に対する第1弁座の中心軸に対する鉛直方向のずれ量(偏心量)を所望の値に調整しやすい。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0085】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0086】
1 蒸気タービン設備
2 ボイラ
3 主蒸気供給配管
4 蒸気タービン
5 高圧蒸気タービン
6 中圧蒸気タービン
7 低圧蒸気タービン
8 発電機
9 再熱器
11 止め弁
12 加減弁
13 止め弁
14 加減弁
17 蒸気入口
18 蒸気流路
19 蒸気出口
20 蒸気弁
22 ケーシング
24 弁ケーシング
25 凹部
25a 側壁面
26 ボンネット
27 凸部
27a 側壁面
28 貫通孔
30 弁棒
32 レバー
34 アクチュエータ
36 スプリング
40 第1弁体
40a 上端部
40b 下端部
41 内壁面
42 第1弁座
42a 上端部
42b 下端部
44 内部空間
46 通路
50 背面側空間
52 バランス孔
54 第2ブッシュ
54a 先端側端
55 内周面
56 第1ブッシュ
58 スリーブ
60 第2弁体
62 第2弁座
64 弁棒穴
66 付勢部
70A 上側ジャッキボルト
70B 下側ジャッキボルト
72 弁棒側当接面
73 主弁側当接面
74 インロー嵌合部
74A 上側部
74B 下側部
G1 隙間
G2 隙間
G3 隙間
L1 中心軸
L2 中心軸
d1 ずれ量
h1 規定量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10