(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】スイッチング電源制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
H02M3/28 B
H02M3/28 C
(21)【出願番号】P 2019220884
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恭成
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-195750(JP,A)
【文献】特開2013-070576(JP,A)
【文献】特開2018-174633(JP,A)
【文献】実開平03-039382(JP,U)
【文献】特開2002-044942(JP,A)
【文献】特開平05-211715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側入力回路と二次側出力回路との間に介装された絶縁トランスの一次巻線に接続された電力変換用のスイッチング素子をスイッチング制御するもので、異常検出信号を検出する
と前記スイッチング制御を停止しその状態を保持するラッチ動作
を行う制御部と、
前記スイッチング制御に伴って前記一次巻線に磁気結合された補助巻線に誘起される電圧
から生成した電圧を前記制御部の電源端子
に供給する制御部電源回路と、
前
記制御部の
前記電源端
子の電圧
を降下させることが可能な第1の電圧降下回路と、
前記二次側出力回路の出力電圧を前記制御部のフィードバック端子にフィードバックするフィードバック回路と、
前
記制御部
の前記フィードバック端子の電圧を降下させることが可能な第2の電圧降下回路と
を備え、
前記第1の電圧降下回路および前記第2の電圧降下回路は、それぞれ、前記制御部が前記ラッチ動作を行っているときに該ラッチ動作を解除させる場合、および前記制御部が前記ラッチ動作を行っていないときに前記二次側出力回路の出力を停止させる場合に入力される外部信号に従って前記電圧を降下させるよう構成されており、
前記制御部は、前記電源端子の電圧が予め設定されたラッチ解除電圧以下になると前記ラッチ動作を解除するよう構成されており、
前記制御部は、前記フィードバック端子の電圧が前記第2の電圧降下回路によって降下させられると前記スイッチング制御を停止するよう構成されており、
前記電源端子の電圧は、前記制御部が前記ラッチ動作を行っているときに前記ラッチ解除電圧よりも高い電圧に保たれており、前記第1の電圧降下回路によって降下させられることで前記ラッチ解除電圧以下になる
ことを特徴とするスイッチング電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側入力回路に入力した交流電力をスイッチングして絶縁トランスの一次巻線から二次巻線に誘導し、直流電力に変換して二次側出力回路から出力するスイッチング電源制御装置に関する。詳しくは、一次巻線に対して直列に接続された電力変換用のスイッチング素子をスイッチング制御する制御部と、一次巻線に磁気結合された補助巻線に誘起される電圧で前記制御部の電源端子に電源を供給する制御部電源回路とを備え、さらに、前記制御部は異常検出信号を入力すると前記スイッチング素子に対するスイッチング制御を停止し保持するラッチ動作の機能を有しているスイッチング電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3はこの種のスイッチング電源制御装置の従来例を示す(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
リレー61はAC入力部51をダイオードブリッジ52に対して継断するための手段として設けられている。電源投入に伴いAC入力部51から入力されてくる交流電圧はダイオードブリッジ52と平滑コンデンサ53とによって直流電圧に変換される。この直流電圧によって図示しない起動回路が駆動され、ICで構成される制御部56によるスイッチング素子55に対するスイッチング制御が開始される。絶縁トランス54における一次巻線54aからコア(鉄心)を介して磁気結合された二次巻線54bに対し変圧(降圧または昇圧)された電圧が二次側出力回路に誘導され、図示しない要素(整流ダイオードと平滑コンデンサ)により直流電圧に変換されて負荷回路へ出力される。同様に、一次巻線54aからコアを介して磁気結合された補助巻線54cに誘起された電圧が図示しない要素(整流ダイオードと平滑コンデンサ)により直流電圧に変換されて制御部56の電源端子Vccに印加され、これ以降はこの電源端子Vccに供給される電圧によって制御部56の駆動が維持される(起動回路は停止)。なお、62はフライホイールダイオードである。
【0004】
上記の電源投入に伴う起動に際してはリレー61におけるリレー接点61aが閉じられている必要がある。すなわち、外部信号Soが“H”レベルとなって、NPN型のトランジスタ64が導通し、連動してPNP型のトランジスタ67も導通し、リレーコイル61bの励磁によりリレー接点61aが閉じられる。
【0005】
装置が正常に動作している通常動作モードにおいて、任意に二次側出力回路からの出力をオフ状態に切り替え操作する場合には、外部信号Soを“L”レベルに切り替える。すると、上記の動作とは逆に、トランジスタ64およびトランジスタ67がターンオフし、リレーコイル61bが消磁されてリレー接点61aがオープンとなり、AC入力が遮断される。このAC入力の遮断に引き続いてAC入力を再投入すると、二次側出力回路からの直流電圧の出力が再開される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-166561号公報
【文献】特開2018-174633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スイッチング電源における制御部(制御IC)には通常、出力が短絡するなど異常状態が発生した際に、安全のためスイッチングを停止し、出力を停止する保護機能が搭載されている。この保護機能については、自動復帰型とラッチ型が存在する。自動復帰型は異常状態が解除されれば再びスイッチングを開始し通常動作をするが、ラッチ型は異常状態が解除されても、出力がゼロのまま保持され、制御ICの電源端子Vccを一度オフし、再度入れ直すまで復帰せず、スイッチング動作を停止し続けるといった特徴がある。
【0008】
上記のラッチ型の従来例においては、ラッチ動作後のラッチ解除を行うためには、
制御ICの電源端子Vccに供給される電圧をラッチ解除電圧以下にするため、AC入力のOFF→ONの切り替え操作が必要となっている。そして、このAC入力のOFF→ONの切り替え操作を実現するための手段として、AC入力部51とダイオードブリッジ52との電源ライン中にリレー61のリレー接点61aを介装するとともに、このリレー61を制御するための外部信号Soによって動作する回路要素を設けている。
【0009】
しかしながら、このようにリレーおよびリレー制御回路を設けるとなると、部品コストが高くなり、スペース的にも不利となる。さらには、リレーは電気接点方式ではなく物理接点方式であるため、オン/オフの切り替え動作の繰り返しや異物混入などに起因して摩耗・品質劣化等の問題を生じる懸念がある。
【0010】
図4は比較例としてのスイッチング電源制御装置を示す。これは、本発明者において、
図3の従来例のラッチ解除の手段としてのリレー61に代えて、外部信号Soを利用することによってラッチ解除の要件を満たすように考えたものである。
【0011】
図4において、9は一次巻線L1に磁気結合された補助巻線L3に誘起される電圧で制御部8の電源端子Vccに電源を供給する制御部電源回路、13は外部信号Soによってオン/オフ制御されるもので、制御部電源回路9と接地ラインとの間に挿入された電圧降下回路である。
【0012】
制御部電源回路9は、平滑コンデンサ15、NPN型のトランジスタ16、整流ダイオード17、バイアス用の抵抗素子18、ツェナーダイオード19を備えている。すなわち、補助巻線L3の出力ラインと接地ラインとの間に平滑コンデンサ15が接続され、平滑コンデンサ15の正極端子と制御部8における電源端子Vccとの間にトランジスタ16と整流ダイオード17の直列回路が接続され、トランジスタ16のコレクタ・ベース間に抵抗素子18が接続され、トランジスタ16のベースと接地ラインとの間にツェナーダイオード19が接続されている。
【0013】
電圧降下回路13は、絶縁型信号伝達素子としてのフォトカプラ23、抵抗素子24,25、コンデンサ26、NPN型のトランジスタ27、ツェナーダイオード28、抵抗素子29および抵抗素子30を備えている。23aはフォトカプラ23における発光ダイオードなどの発光素子、23bはフォトトランジスタなどの受光素子である。受光素子23bの正極端子(コレクタ)と接地ラインとの間に抵抗素子24,25の抵抗分割回路が接続されている。抵抗素子25の両端子間にコンデンサ26が接続され、コンデンサ26と抵抗素子24,25の共通接続点にNPN型のトランジスタ27のベースが接続されている。トランジスタ27のエミッタは接地され、コレクタはツェナーダイオード28と抵抗素子29を介して制御部8の電源端子Vccに接続されている。また、抵抗素子30が受光素子23bの正極端子(コレクタ)と抵抗素子24とを接続するラインと、電源端子Vccとを繋ぐように介装されている。
【0014】
20は制御部8における電源端子Vccと接地ラインとの間に接続されたコンデンサ、21は同じ回路構成の平滑コンデンサである。
【0015】
過電流(過負荷)発生などの異常事態の発生が検出されたとき、異常検出信号(ラッチ信号)Sdによって制御部8は電力変換用のスイッチング素子7のスイッチング動作を停止する。これに伴って、二次側出力回路からの直流電力の出力が停止するとともに、一次巻線L1に磁気結合された補助巻線L3に誘起される電圧が消失する。
【0016】
そして、その後異常状態が解除されても、制御部の電源端子Vccに供給される電圧がラッチ解除電圧を下回るまで、スイッチング動作は停止し続ける。具体的には、<a1>スイッチング駆動停止、<a2>DC出力停止、<a3>補助巻線電圧消失、<a4>制御部がラッチ状態を保持の4つの状況が発現する(ラッチ動作)。
【0017】
なお、この段階では外部信号Soは“H”レベルのままであり、電圧降下回路13は不動作(非接地)状態であるので、制御部8の電源端子Vccに供給される電圧はラッチ解除電圧よりも高い状態を保っている(ラッチ解除までには至っていない)。
【0018】
その後、制御部8におけるラッチ解除を行うために、外部信号Soを“L”レベルにすると、電圧降下回路13が動作する。すなわち、定常状態において電圧降下回路13のトランジスタ27をオフ状態とするため“H”レベルとしていた外部信号Soを“L”レベルに切り替えると、フォトカプラ23が非動作状態となり、受光素子23bがターンオフするためノードAの電位が反転して“H”レベルとなる。その結果、トランジスタ27が反転してターンオンし、電圧降下回路13が導通状態に切り替わる。そして、導通状態となった電圧降下回路13を介して制御部電源回路9つまりは制御部8の電源端子Vccの電圧降下(接地電位引き込み)が開始される。
【0019】
この電源端子Vccの電圧降下が行われる場合に考えられる動作として、電源端子Vccに供給される電圧が制御部8のラッチ解除電圧以下まで降下すれば、制御部8のラッチ状態が解除される。これは一次側入力回路1におけるAC入力の遮断と同等の効果であり、外部信号Soの反転によるラッチ解除も可能となる。
【0020】
ところで、ラッチ動作時ではなく通常動作時において、二次側出力回路からの直流電圧の出力を停止しようとする場合に、次のような課題が残っていることが分かった。以下、
図4に示す比較例に認められた不都合について説明する。
【0021】
通常動作時において外部信号Soを“L”レベルに切り替えると、上記のように電圧降下回路13が導通して制御部8の電源端子Vccを接地ラインに接続することになるが、ラッチ動作時ではなく通常動作時であるために、電源端子Vccに供給される電圧が上記のように速やかに降下する動作が期待できない。それは、ラッチ動作時とは違って、スイッチング素子7のスイッチング動作の停止がなく、補助巻線L3には引き続き電圧誘起が保持されていて、制御部電源回路9から制御部8の電源端子Vccに対して継続的に電力が供給され、電源端子Vccに供給される電圧の降下速度がかなり小さなものになってしまうからである。
【0022】
このため、電圧降下回路13が導通状態であるにもかかわらず、電源端子Vccに供給される電圧はスイッチング動作開始電圧(VthH)まで降下するのに比較的長時間を要することになる。その結果として、導通状態に切り替わったトランジスタ27に過大な電流が流れてしまうことが避けられず、トランジスタ27が破壊されるに至るという重大問題が残っている。ツェナーダイオード28と抵抗素子29とを付加することによってトランジスタ27に流れ込む電流を制限する対策を講じてはいるが、その対策が有効になっても今度は電源端子Vccに供給される電圧を動作停止電圧まで降下させることができず、制御部8の発振を停止させることができない(つまり当初の目的である直流電圧の出力停止が実現できない)という課題が残ってしまうこととなる。
【0023】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、異常検出信号を検出するとスイッチング素子に対するスイッチング制御を停止し保持するラッチ動作の機能を有する制御部と、一次巻線に磁気結合された補助巻線に誘起される電圧で前記制御部の電源端子に電源を供給する制御部電源回路とを有するスイッチング電源制御装置に関して、ラッチ解除を行う外部信号を利用しながら通常動作モードで直流電力の出力停止機能を確実に実現できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0025】
本発明によるスイッチング電源制御装置は、
一次側入力回路と二次側出力回路との間に介装された絶縁トランスの一次巻線に接続された電力変換用のスイッチング素子をスイッチング制御するもので、異常検出信号を検出すると前記スイッチング素子に対するスイッチング制御を停止しその状態を保持するラッチ動作の機能を有する制御部と、
前記一次巻線に磁気結合された補助巻線に誘起される電圧で前記制御部の電源端子に電源を供給する制御部電源回路と、
外部信号によってオン/オフ制御され、前記制御部の電源端子に供給される電圧を前記制御部の動作停止電圧以下に降下させることが可能な第1の電圧降下回路と、
前記外部信号によってオン/オフ制御され、前記制御部における前記電源端子以外の他の端子に印加されている電圧を降下させることで前記スイッチング制御に必要な前記制御部の発振動作を停止させることが可能な第2の電圧降下回路と
を備え、
前記外部信号によって前記ラッチ動作を解除する際に前記第1の電圧降下回路に加えて前記第2の電圧降下回路を動作させることを特徴とする。
【0026】
本発明の上記の構成によれば、次のような作用が発揮される。
【0027】
(a)ラッチ動作モード解除時
過電流(過負荷)発生などの異常事態の発生があったとき、異常検出信号が制御部で検出され、電力変換用のスイッチング素子のスイッチング動作が停止され、二次側出力回路からの直流電力の出力が停止する。また、絶縁トランスの一次巻線に磁気結合された補助巻線に誘起される電圧が消失する。なお、この段階では第1の電圧降下回路も第2の電圧降下回路も不動作状態(端子電圧降下が機能していない状態)であるので、制御部の電源端子に供給される電圧はラッチ解除電圧よりも高い状態を保っている(制御部はラッチ状態)。
【0028】
その後、制御部におけるラッチ解除を行うために、外部信号のオン/オフ状態が切り替わると、第1の電圧降下回路と第2の電圧降下回路が動作する。すなわち、第1の電圧降下回路により制御部の電源端子に供給される電圧が制御部の動作停止電圧以下に降下するとともに、第2の電圧降下回路により電源端子以外の他の端子に印加されている電圧が降下し、スイッチング制御に必要な制御部の発振動作が停止する。両者が実行されることにより、電源端子に供給される電圧が制御部のラッチ解除電圧以下まで速やかに降下し、ラッチ解除できる。これは一次側入力回路によるAC入力の遮断と同等の効果であり、外部信号の反転によるラッチ解除も可能となる。
【0029】
(b)通常動作モードでの出力停止時
一方、装置が正常に動作している通常動作モードにおいて、任意に二次側出力回路からの出力をオン/オフ切り替え操作する場合には(ラッチとは無関係)、次のようになる。
【0030】
二次側出力回路からの出力をオフするべく外部信号のオン/オフ状態が切り替わると、上記(a)で説明したのと同様に、第1の電圧降下回路と第2の電圧降下回路が動作する。すなわち、第1の電圧降下回路により制御部の電源端子に供給される電圧が制御部の動作停止電圧以下に降下するとともに、第2の電圧降下回路により電源端子以外の他の端子に印加されている電圧が降下し、スイッチング制御に必要な制御部の発振動作が停止する。両者が実行されることにより、電源端子に供給される電圧がスイッチング動作開始電圧(VthH)を下回るレベルまで速やかに降下し、短時間のうちに、電力変換用のスイッチング素子はスイッチング動作を停止するとともに、一次巻線に磁気結合された補助巻線に誘起される電圧が消失する。また、二次側出力回路からの直流電力の出力が停止する。
【0031】
そして、補助巻線電圧消失の結果、電源端子に供給される電圧の降下が加速され、制御部の動作停止電圧以下まで速やかに降下し、制御部の発振が停止する。この(b)での制御は二次側出力回路からの出力をオフしたいという動機に基づくものであり、(a)でのラッチ動作後のラッチ解除とは相違している。その後、外部信号を反転(オン/オフ状態を切り替え)すれば、二次側出力回路からの出力が再開可能となる。
【0032】
なお、第2の電圧降下回路を有しない上記の比較例においては、(b)の通常動作モードにおいて、第1の電圧降下回路による制御部の電源端子の電圧降下はあっても、第2の電圧降下回路による制御部の発振動作が停止されないので、補助巻線に誘起される電圧がまだ有効である。この場合は、電源端子に供給される電圧の降下が緩く、スイッチング動作開始電圧(VthH)を下回るレベルまで降下しにくいものとなる。その結果、電力変換用のスイッチング素子のスイッチング動作が継続され、補助巻線電圧が有効のままとなり、二次側出力回路からの直流電力の出力の停止がされない。
【0033】
これに対して、本発明の場合には、制御部の電源端子に供給される電圧の降下と制御部の発振動作の停止とが行われるため、電源端子に供給される電圧のスイッチング動作開始電圧(VthH)を下回るレベルまで速やかな降下ひいてはスイッチング動作の停止、補助巻線電圧の消失を経た直流電力の出力停止が確実に実現する。
【0034】
ここで、第1の電圧降下回路は、制御部電源回路と接地ラインとの間を短絡することで簡易な構成により制御部の電源端子に供給される電圧を制御部の動作停止電圧以下に降下させることができる。同様に、第2の電圧降下回路は、他の端子と接地ラインとの間を短絡することで簡易な構成によりスイッチング制御に必要な制御部の発振動作を停止させることができる。
【0035】
上記構成の本発明のスイッチング電源制御装置において、前記第1の電圧降下回路と第2の電圧降下回路を動作させるタイミングに関して、同時でもよいし、前記第2の電圧降下回路を動作させるタイミングの方を優先させてもよい。
【0036】
第2の電圧降下回路を動作させるタイミングを第1の電圧降下回路を動作させるタイミングよりも早く設定しておくことにより、制御部の発振停止を優先し、これによってスイッチング素子のスイッチング動作停止および補助巻線電圧の消失を可及的に早め、直流電力の出力停止までの所要時間を短縮化することが可能となる。
【0037】
なお、上記構成の本発明のスイッチング電源制御装置には、前記他の端子について、前記二次側出力回路の出力電圧を所定範囲内に制御するための、前記二次側出力回路で検出されて前記制御部にフィードバックされる電圧を入力するフィードバック端子とする、という態様がある。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、ラッチ解除を行う外部信号を利用して第1の電圧降下回路とともに第2の電圧降下回路を動作させて、制御部の電源端子に供給される電圧を制御部の動作停止電圧以下に降下させることに加えてスイッチング制御に必要な制御部の発振動作を停止させるように構成したので、スイッチング動作開始電圧を下回るレベルまで速やかに電源端子に供給される電圧を降下させ、スイッチング素子のスイッチング動作の停止、補助巻線電圧の消失を経て、通常動作モードでの直流電力の出力停止を確実にすることができる。
【0039】
加えて、リレーおよびリレー制御回路を必要とし摩耗・ 品質劣化等の懸念があった従来例に比べると、本発明ではそのような懸念を払拭するとともに、製品コストの低減化、省スペースを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の実施例におけるスイッチング電源制御装置の構成を示す回路図
【
図2】
図1における制御部電源回路、第1の電圧降下回路、第2の電圧降下回路の詳しい回路構成を併せて示す回路図
【
図3】従来例におけるスイッチング電源制御装置の構成を示す回路図
【
図4】比較例におけるスイッチング電源制御装置の構成を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、上記構成の本発明のスイッチング電源制御装置につき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0042】
図1、
図2において、符号の1は一次側入力回路、2は二次側出力回路、3は絶縁トランス、4はAC入力部、5はダイオードブリッジ、6は平滑コンデンサ、7は電力変換用のスイッチング素子、8はICで構成される制御部、9は制御部電源回路、10はDC出力部、11はフィードバック回路、12は絶縁型信号伝達素子としてのフォトカプラ、13は第1の電圧降下回路、14は第2の電圧降下回路である。
【0043】
一次側入力回路1は、AC入力部4、ダイオードブリッジ5、平滑コンデンサ6、スイッチング素子7を備えている。二次側出力回路2は、DC出力部10、フィードバック回路11を備えている。絶縁トランス3は一次側入力回路1と二次側出力回路2との間に介装されている。絶縁トランス3における一次巻線L1と二次巻線L2はコア(鉄心)を介して磁気結合するようになっている。
【0044】
一次側入力回路1における電力変換用のスイッチング素子7は絶縁トランス3の一次巻線L1に対して直列に接続されている。制御部8は、その出力端子OUTからスイッチング素子7の駆動制御端子(ゲート)に対して制御信号を出力することにより、スイッチング素子7に対するスイッチング制御を行うものとして構成されている。また、制御部8は、異常検出信号Sdを検出すると動作を停止し、その状態を保持するように構成されている(ラッチ動作)。
【0045】
外部信号Soは第1および第2の電圧降下回路に対し負論理に基づくローアクティブ信号となっている。第1の電圧降下回路13は、外部信号Soが“H”レベルのときはオフ状態にあるが、外部信号Soが“L”レベルになるとターンオンして制御部電源回路9から制御部8の電源端子Vccに至る線路を接地短絡するように構成されている。
【0046】
第2の電圧降下回路14は、外部信号Soが“H”レベルのときはオフ状態にあるが、外部信号Soが“L”レベルになるとターンオンして、フォトカプラ12の受光素子から制御部8のフィードバック端子FBに至る線路を接地短絡し、制御部8の発振を停止させるように構成されている。フィードバック端子FBは、外部信号Soを“L”レベルにすることによりスイッチング制御に必要な制御部8の発振動作駆動を停止させることが可能な発振停止可能端子の一例である。
【0047】
全波整流用のダイオードブリッジ5は整流用の4つのダイオードをブリッジ状に接続したもので、その交流入力点はAC入力部4の出力端子間に接続され、その直流出力点は平滑コンデンサ6の両端子間に接続されている。絶縁トランス3における一次巻線L1に対して電力変換用のスイッチング素子7が直列に接続され、この直列回路が平滑コンデンサ6の両端子間に接続されている。スイッチング素子7はそのスイッチング動作が制御部8によって制御されるように構成されている。
【0048】
制御部8に対する電源供給源として制御部電源回路9が設けられている。制御部電源回路9は絶縁トランス3におけるコアに磁気結合された補助巻線L3に誘起される電圧で制御部8の電源端子Vccに電源を供給するものとして構成されている(詳細は後述する)。
【0049】
二次側出力回路2は絶縁トランス3におけるコアに磁気結合された二次巻線L2を電力源とするもので、DC出力部10には二次巻線L2に直列に接続された整流ダイオード(図示省略)や二次巻線L2に並列に接続された平滑コンデンサ(図示省略)が設けられている。二次巻線L2の両端子間に接続されたフィードバック回路11はDC出力部10の出力電圧を検出し、その検出電圧に応じた電流をフォトカプラ12の発光ダイオードなどの発光素子に供給するようになっている。フォトカプラ12におけるフォトトランジスタなどの受光素子は制御部8におけるフィードバック端子FBに接続されている。
【0050】
以下、制御部電源回路9、第1の電圧降下回路13および第2の電圧降下回路14について詳しく説明する。
【0051】
図2に示すように、制御部電源回路9は、平滑コンデンサ15、NPN型のトランジスタ16、整流ダイオード17、バイアス用の抵抗素子18、ツェナーダイオード19を備えている。すなわち、補助巻線L3の出力ラインと接地ラインとの間に平滑コンデンサ15が接続され、平滑コンデンサ15の正極端子と制御部8における電源端子Vccとの間にトランジスタ16と整流ダイオード17の直列回路が接続され、トランジスタ16のコレクタ・ベース間に抵抗素子18が接続され、トランジスタ16のベースと接地ラインとの間にツェナーダイオード19が接続されている。
【0052】
20は制御部8における電源端子Vccと接地ラインとの間に接続されたコンデンサ、21は同じ回路構成の平滑コンデンサ、22は制御部8におけるフィードバック端子FBと接地ラインとの間に接続されたコンデンサである。
【0053】
第1の電圧降下回路13は、絶縁型信号伝達素子としてのフォトカプラ23、抵抗素子24,25、コンデンサ26、NPN型のトランジスタ27、ツェナーダイオード28、抵抗素子29を備えている。23aはフォトカプラ23における発光ダイオードなどの発光素子、23bはフォトトランジスタなどの受光素子である。受光素子23bの正極端子(コレクタ)と接地ラインとの間に抵抗素子24,25の抵抗分割回路が接続されている。抵抗素子25の両端子間にコンデンサ26が接続され、コンデンサ26と抵抗素子24,25の共通接続点にNPN型のトランジスタ27のベースが接続されている。トランジスタ27のエミッタは接地され、コレクタはツェナーダイオード28と抵抗素子29を介して制御部8の電源端子Vccに接続されている。
【0054】
第2の電圧降下回路14は、抵抗素子30,31,32、コンデンサ33、NPN型のトランジスタ34を備えている。フォトカプラ23における受光素子23bの正極端子(コレクタ)と接地ラインとの間に抵抗素子31,32の抵抗分割回路が接続されている。抵抗素子32の両端子間にコンデンサ33が接続され、コンデンサ33と抵抗素子31,32の共通接続点にNPN型のトランジスタ34のベースが接続されている。トランジスタ34のエミッタは接地され、コレクタは制御部8のフィードバック端子FBに接続されている。抵抗素子31,32の抵抗分割回路は抵抗素子30を介して制御部8の電源端子Vccに接続されている。
【0055】
AC入力部4とダイオードブリッジ5との間には上記した従来例におけるようなリレー61は介装されていない。
【0056】
次に、上記のように構成されたスイッチング電源制御装置の動作を説明する。
【0057】
AC入力部4に交流電圧が入力されると、ダイオードブリッジ5で全波整流され、平滑コンデンサ6で平滑化された直流電圧が絶縁トランス3の一次巻線L1に印加される。これと同時に、図示しない起動回路が動作して制御部8の電源端子Vccにつながるコンデンサ20に充電が行われ、制御部・電源端子Vccに供給される電圧が制御部8のスイッチング動作開始電圧VthHまで上昇すると、制御部8はその制御出力端子OUTからスイッチング素子7に対するスイッチング制御信号の出力を開始する。
【0058】
これにより、絶縁トランス3において二次巻線L2と補助巻線L3に電圧が誘起され、二次側出力回路2におけるDC出力部10は電圧変換(降圧または昇圧)と平滑化を行って図示しない負荷回路に対し直流電圧を出力する。
【0059】
二次側出力回路2におけるフィードバック回路11は出力電圧を検出し、その検出信号をフォトカプラ12を介して制御部8のフィードバック端子FBにフィードバックする。その結果として、制御部8はスイッチング制御信号を制御し、出力電圧を安定的に一定範囲内に保持することになる(負帰還制御)。すなわち、出力電圧が増加すればスイッチング素子7に対するスイッチング制御信号のオンデューティを減少させることにより出力電圧を降下させ、逆に、出力電圧が降下すればオンデューティを増加させることにより出力電圧を増加させる。
【0060】
次に、ラッチ動作モードと通常動作モードとを説明する。
【0061】
(a)ラッチ動作モード
過電流(過負荷)発生などの異常事態の発生が検出されたとき、異常検出信号(ラッチ信号)Sdによって制御部8は電力変換用のスイッチング素子7のスイッチング動作を停止する。これに伴って、二次側出力回路2からの直流電力の出力が停止するとともに、一次巻線L1に磁気結合された補助巻線L3に誘起される電圧が消失する。
【0062】
そして、その後異常状態が解除されても、制御部8の電源端子Vccに供給される電圧がラッチ解除電圧を下回るまで、スイッチング動作を停止し続ける。
【0063】
すなわち、<a1>スイッチング駆動停止、<a2>DC出力停止、<a3>補助巻線電圧消失、<a4>制御部8がラッチ状態を保持の4つの状況が発現する(ラッチ動作)。なお、この段階では外部信号Soは“H”レベルのままで第1の電圧降下回路13も第2の電圧降下回路14も不動作(非接地)状態であるので、制御部8の電源端子Vccに供給される電圧はラッチ解除電圧よりも高い状態を保っている。なお、ラッチ解除電圧はスイッチング動作開始電圧VthHよりも低いレベルに設定されている。
【0064】
その後、制御部8におけるラッチ解除を行うために、外部信号Soを“L”レベルに切り替えると、第1の電圧降下回路13と第2の電圧降下回路14が動作する。すなわち、第1の電圧降下回路13を介して制御部電源回路9つまりは制御部8の電源端子Vccにおける電圧降下が開始されるとともに、第2の電圧降下回路14を介して制御部8の発振停止可能端子であるフィードバック端子FBが接地電位に引き込まれる。このフィードバック端子FBの電圧降下と電源端子Vccの電圧降下とが同時的ないし並行的に行われると、電源端子Vccに供給される電圧が制御部8のラッチ解除電圧以下まで速やかに降下し、制御部8のラッチ状態が解除される。これは一次側入力回路1におけるAC入力の遮断と同等の効果であり、外部信号Soの反転によるラッチ解除も可能となる。
【0065】
(b)通常動作モード
一方、装置が正常に動作している通常動作モードにおいて、任意に二次側出力回路2からの出力をオフ/オン切り替え操作する場合には(ラッチとは無関係)、次のようになる。
【0066】
二次側出力回路2からの出力をオフするべく外部信号Soを“L”レベルに切り替えると、上記(a)で説明したのと同様に、第1の電圧降下回路13と第2の電圧降下回路14が動作する。すなわち、第1の電圧降下回路13を介して制御部電源回路9つまりは制御部8の電源端子Vccにおける電圧降下が開始されるとともに、第2の電圧降下回路14を介して制御部8の発振停止可能端子であるフィードバック端子FBが接地電位に引き込まれる。この制御部8のフィードバック端子FBの電圧降下と制御部8の電源端子Vccの電圧降下とが同時的ないし並行的に行われると、電源端子Vccに供給される電圧が比較的速やかに降下し、スイッチング動作開始電圧VthHを下回って、スイッチング素子7はスイッチング動作を停止するとともに、絶縁トランス3の一次巻線L1に磁気結合された補助巻線L3に誘起される電圧が消失する。また、二次側出力回路2からの直流電力の出力が停止する。
【0067】
そして、補助巻線電圧消失の結果、電源端子Vccに供給される電圧の降下が加速され、制御部8の動作停止電圧以下まで速やかに降下し、制御部8の発振が停止する。この(b)での制御においては、外部信号Soを“L”レベルにすることの理由は、二次側出力回路2からの出力をオフしたいという動機に基づくものであり、(a)でのラッチ動作後のラッチ解除とは相違している。
【0068】
なお、その後、外部信号Soを反転して“H”レベルにすれば、二次側出力回路2からの出力再開が可能となる。
【0069】
第2の電圧降下回路14を有しない上記の比較例においては、(b)の通常動作モードにおいて、第1の電圧降下回路13による制御部8の電源端子Vccの電圧降下はあっても、第2の電圧降下回路14による制御部8のフィードバック端子FBの電圧降下がないので、補助巻線L3に誘起される電圧がまだ有効であり、そのために電源端子Vccに供給される電圧の降下が緩く、スイッチング動作開始電圧VthHを下回るレベルまでの降下がしにくいものとなる。その結果、スイッチング素子7のスイッチング動作が継続され、補助巻線電圧が有効のままとなり、二次側出力回路2からの直流電力の出力停止が実現されないものとなる。
【0070】
これに対して、本発明の場合には、制御部8の発振停止可能端子であるフィードバック端子FBの電圧降下と制御部8の電源端子Vccの電圧降下とが同時的ないし並行的に行われるため、スイッチング動作開始電圧VthHを下回るレベルまでの電源端子Vccに供給される電圧の速やかな降下ひいてはスイッチング動作の停止、補助巻線電圧の消失を経た直流電力の出力停止が確実に実現する。
【0071】
以下では、制御部電源回路9、第1の電圧降下回路13および第2の電圧降下回路14の動作を詳しく説明する。
【0072】
いま、スイッチング電源制御装置の動作状態が正常であって、補助巻線L3に誘起された電圧が制御部8の電源端子Vccに供給されているとする。この場合、補助巻線L3からの出力電圧によって平滑コンデンサ15に対する充電が行われ、その充電電圧が抵抗素子18を介してツェナーダイオード19のカソードに印加されるため、NPN型のトランジスタ16のベースにはツェナーダイオード19の降伏によって規定されるツェナー電圧(一定電圧)が印加され、トランジスタ16はオン状態にあり、そこを流れる一定の電流が制御部8の電源端子Vccに供給される。電源端子Vccに供給される電圧はコンデンサ20および平滑コンデンサ21における充電電圧によって安定的に維持される。これにより、電源端子Vccに供給される電圧が所定レベルに保持されて、制御部8が所定の動作を安定的に維持し、スイッチング素子7に対するスイッチング制御を司ることになる。
【0073】
このとき、外部信号Soは“H”レベル状態であり、フォトカプラ23が動作状態にあって受光素子23bが導通状態となっているため、抵抗素子24,30,31の共通接続ノードBが“L”レベルで、第1の電圧降下回路13のNPN型のトランジスタ27も第2の電圧降下回路14のNPN型のトランジスタ34も非導通状態となっている。したがって、制御部8の電源端子Vccもフィードバック端子FBも電圧降下は受けていない。
【0074】
次に、二次側出力回路2のDC出力部10からの出力を任意に停止させる場合の動作を詳しく説明する。
【0075】
定常状態において“H”レベルであった外部信号Soを“L”レベルに切り替えると、フォトカプラ23が非動作状態となり、受光素子23bがターンオフするためノードBの電位が反転して“H”レベルとなる。その結果、トランジスタ27およびトランジスタ34が反転してターンオンし、第1の電圧降下回路13と第2の電圧降下回路14が同時的に導通状態に切り替わる。
【0076】
第1の電圧降下回路13の導通によって、制御部8における電源端子Vccに対して電圧降下が開始される。同時的に、第2の電圧降下回路14の導通によって、制御部8におけるフィードバック端子FBに対して電圧降下が開始される。
【0077】
ここで、電源端子Vccに対する電圧降下とフィードバック端子FBに対する電圧降下について、比較検討する。
【0078】
電源端子Vccには接地ラインとの間にコンデンサ20や平滑コンデンサ21が接続されており、これらに対して補助巻線L3からの電源供給が継続されている。それは、スイッチング素子7のスイッチング動作が継続しているためである(補助巻線L3からの充電により電源端子Vccに供給される電圧の降下速度が遅く、スイッチング動作開始電圧VthHより高い電位を維持しているため)。一方、フィードバック端子FBも接地ラインとの間にコンデンサ22が接続されているが、これに対しては補助巻線L3からのような電源供給は行われない。このような相違があるため、電源端子Vccの電圧降下とフィードバック端子FBの電圧降下との間には電圧降下速度の差異が生じる。フィードバック端子FBの電圧降下の速度は電源端子Vccの電圧降下の速度に比べてかなり高速である。
【0079】
フィードバック端子FBの電位が速やかに接地電位まで降下するが、このフィードバック端子FBは接地短絡によって制御部8の発振を停止させることが可能な発振停止可能端子であるから、制御部8は速やかに発振動作を停止し、絶縁トランス3の一次巻線L1に直列接続されたスイッチング素子7がそのスイッチング動作を停止する。その結果、絶縁トランス3の一次巻線L1にそれまで流れていた電流が途切れ、補助巻線L3における誘起電圧が速やかに消失する。
【0080】
このように外部信号Soを“L”レベルに切り替えると、速やかに補助巻線電圧が消失するので、補助巻線L3からコンデンサ20や平滑コンデンサ21への充電が無くなり、制御部8の電源端子Vccに供給される電圧が急速に接地レベルに近づき、速やかに動作停止電圧を下回るに至り、制御部8つまりはスイッチング電源制御装置は完全に動作を停止する。
【0081】
その後、外部信号Soを“H”レベルに戻せば、AC入力部4での電源再投入によりスイッチング電源制御装置が再起動される。
【0082】
以上のように、制御部8における電源端子Vccを外部信号Soによって電圧降下(接地短絡)させるための第1の電圧降下回路13に加えて、接地短絡によって制御部8の発振を停止させることが可能な発振停止可能端子であるフィードバック端子FBと接地ラインとの間に第2の電圧降下回路14を接続した上で、この第2の電圧降下回路14をも同じ外部信号Soによって接地短絡させるように構成したので、ラッチ解除のためにAC入力回路部分にリレー等の開閉器を備えていなくても、すなわち、リレーに要するコストアップの問題や、リレー接点が物理接点であることに起因する異物混入やON/OFF繰り返しによる摩耗・ 品質劣化等の問題を回避しながら、異常事態発生に伴うラッチ動作モード時の外部信号Soによるラッチ解除動作の有効性を確保しつつ、通常動作モード時において同じ外部信号Soを用いて出力のオン/オフ切り替えの機能を実現することができる。
【0083】
なお、上記実施例では、制御部8の電源端子Vccに繋がるラインと接地ラインとの間に挿入された第1の電圧降下回路13により制御部8の電源端子Vccを接地電位に引き込むことで制御部8の電源端子Vccに供給される電圧を降下させているが、これに限らず、制御部8の電源端子Vccに供給される電圧を制御部8の動作停止電圧以下に降下させることが可能であれば、その構成は問わない。
【0084】
同様に、上記実施例では、スイッチング制御に必要な制御部8の発振動作を停止させることが可能な発振停止可能端子(実施例では、フィードバック端子FB)に繋がるラインと接地ラインとの間に挿入された第2の電圧降下回路14により制御部8の発振停止可能端子を接地電位に引き込むことで制御部8のフィードバック端子FBを降下させているが、これに限らず、電源端子以外の他の端子に印加されている電圧を制御部8の発振動作が停止する電圧以下に降下させることが可能であれば、その構成は問わない。
【0085】
また、上記実施例では第1の電圧降下回路13と第2の電圧降下回路14との外部信号Soによる接地短絡(電圧降下)のタイミングを同時的なものに構成したが、(電圧降下)のタイミングに関しては第2の電圧降下回路14の方を優先して電圧降下させるように構成するのもよい。それに対しては、例えばトランジスタ27,34のベースに接続されたコンデンサ26とコンデンサ33との二者間において容量差をもたせるなどの対策がある。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、ラッチ解除を行う外部信号を有効利用しながら、通常動作モードでの直流電力出力の停止と再出力の切り替えを確実化する技術として有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 一次側入力回路
2 二次側出力回路
3 絶縁トランス
7 電力変換用のスイッチング素子
8 制御部
9 制御部電源回路
13 第1の電圧降下回路
14 第2の電圧降下回路
FB フィードバック端子(発振停止可能端子)
L1 一次巻線
L3 補助巻線
Sd 異常検出信号
So 外部信号
Vcc 電源端子