(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】腫瘍を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240322BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240322BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240322BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240322BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240322BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240322BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K39/395 E
A61K39/395 G
A61K39/395 U
A61P35/00
G01N33/574 Z
G01N33/53 M
C07K16/28
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2019553464
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 US2018025518
(87)【国際公開番号】W WO2018183928
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-29
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】プラブ・セシャイエル・バガヴァティースワラン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・アラン・ジョン・ボットウッド
(72)【発明者】
【氏名】ハン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーリー・フー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジェイ・ギース
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・エイ・グリーン・ザ・フォース
(72)【発明者】
【氏名】ダイアン・ヒーリー
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ・マイアー
(72)【発明者】
【氏名】フェイス・イー・ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】アブデラヒム・ウケスー
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・セルヴァッジ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ダニエル・シュスタコウスキー
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/077553(WO,A1)
【文献】Cancer immunology. Mutational landscape determines sensitivity to PD-1 blockade in non-small cell lung cancer,Science,2015年04月03日,Vol. 348, No. 6230,p. 124-128,doi: 10.1126/science.aaa1348
【文献】BMS to Use Foundation Medicine Platform in Immuno-Oncology Partnership,GEN Genetic Engineering & Biotechnology News,2017年03月30日,https://www.genengnews.com/topics/drug-discovery/bms-to-use-foundation-medicine-platform-in-immuno-oncology-partnership/
【文献】FOUNDATIONONE CURRENT GENE LIST,2017年,https://www.foundationmedicineasia.com/content/dam/rfm/apac_v2-en/FOne_Current_Gene_List.pdf
【文献】Severe nivolumab-induced pneumonitis preceding durable clinical remission in a patient with refractory, metastatic lung squamous cell cancer: a case report,Journal of Hematology & Oncology,2017年02月28日,Vol. 10, Article number 64,p. 1-9,DOI 10.1186/s13045-017-0433-z
【文献】肺癌患者におけるPD-L1検査の手引き,第1.0版,2017年03月27日,p. 1-25,https://www.haigan.gr.jp/uploads/files/photos/1400.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗CTLA-4抗体」)と組み合わせて腫瘍に罹患している対象を処置するための、ニボルマブを含む医薬組成物であって、
ここで該腫瘍は50%以上のPD-L1発現を有し、
ここで該腫瘍は、以下の遺伝子:ABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、GATA3、JAK2、MITF、PDCD1LG2、RBM10、STAT4、ABL2、BRCA1、CHEK2、FANCD2、GATA4、JAK3、MLH1、PDGFRA、RET、STK11、ACVR1B、BRCA2、CIC、FANCE、GATA6、JUN、MPL、PDGFRB、RICTOR、SUFU、AKT1、BRD4、CREBBP、FANCF、GID4(C17orf39)、KAT6A(MYST3)、MRE11A、PDK1、RNF43、SYK、AKT2、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、KDM5A、MSH2、PIK3C2B、ROS1、TAF1、AKT3、BTG1、CRLF2、FANCL、GNA11、KDM5C、MSH6、PIK3CA、RPTOR、TBX3、ALK、BTK、CSF1R、FAS、GNA13、KDM6A、MTOR、PIK3CB、RUNX1、TERC、AMER1(FAM123B)、C11orf30(EMSY)、CTCF、FAT1、GNAQ、KDR、MUTYH、PIK3CG、RUNX1T1、TERT(プロモーターのみ)、APC、CARD11、CTNNA1、FBXW7、GNAS、KEAP1、MYC、PIK3R1、SDHA、TET2、AR、CBFB、CTNNB1、FGF10、GPR124、KEL、MYCL(MYCL1)、PIK3R2、SDHB、TGFBR2、ARAF、CBL、CUL3、FGF14、GRIN2A、KIT、MYCN、PLCG2、SDHC、TNFAIP3、ARFRP1、CCND1、CYLD、FGF19、GRM3、KLHL6、MYD88、PMS2、SDHD、TNFRSF14、ARID1A、CCND2、DAXX、FGF23、GSK3B、KMT2A(MLL)、NF1、POLD1、SETD2、TOP1、ARID1B、CCND3、DDR2、FGF3、H3F3A、KMT2C(MLL3)、NF2、POLE、SF3B1、TOP2A、ARID2、CCNE1、DICER1、FGF4、HGF、KMT2D(MLL2)、NFE2L2、PPP2R1A、SLIT2、TP53、ASXL1、CD274、DNMT3A、FGF6、HNF1A、KRAS、NFKBIA、PRDM1、SMAD2、TSC1、ATM、CD79A、DOT1L、FGFR1、HRAS、LMO1、NKX2-1、PREX2、SMAD3、TSC2、ATR、CD79B、EGFR、FGFR2、HSD3B1、LRP1B、NOTCH1、PRKAR1A、SMAD4、TSHR、ATRX、CDC73、EP300、FGFR3、HSP90AA1、LYN、NOTCH2、PRKCI、SMARCA4、U2AF1、AURKA、CDH1、EPHA3、FGFR4、IDH1、LZTR1、NOTCH3、PRKDC、SMARCB1、VEGFA、AURKB、CDK12、EPHA5、FH、IDH2、MAGI2、NPM1、PRSS8、SMO、VHL、AXIN1、CDK4、EPHA7、FLCN、IGF1R、MAP2K1、NRAS、PTCH1、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、MAP2K2、NSD1、PTEN、SOCS1、WT1、BAP1、CDK8、ERBB2、FLT3、IKBKE、MAP2K4、NTRK1、PTPN11、SOX10、XPO1、BARD1、CDKN1A、ERBB3、FLT4、IKZF1、MAP3K1、NTRK2、QKI、SOX2、ZBTB2、BCL2、CDKN1B、ERBB4、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、RAC1、SOX9、ZNF217、BCL2L1、CDKN2A、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、NUP93、RAD50、SPEN、ZNF703、BCL2L2、CDKN2B、ERRFI1、FRS2、INPP4B、MDM4、PAK3、RAD51、SPOP、BCL6、CDKN2C、ESR1、FUBP1、IRF2、MED12、PALB2、RAF1、SPTA1、BCOR、CEBPA、EZH2、GABRA6、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、BCORL1、CHD2、FAM46C、GATA1、IRS2、MEN1、PAX5、RARA、STAG2、BLM、CHD4、FANCA、GATA2、JAK1、MET、PBRM1、RB1、およびSTAT3、からなるゲノムプロファイリングアッセイによって測定される少なくとも243の遺伝子変異の腫瘍変異量(TMB)状態を有すると同定されるものであり、
ここで対象のTMB状態は処置前に測定されるものである、医薬組成物。
【請求項2】
TMB状態が、腫瘍中の核酸を配列決定し、配列決定された核酸中の遺伝子変異を同定することにより決定されるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
遺伝子変異が、以下:
(a)体細胞変異;
(b)非同義変異;
(c)ミスセンス変異;
(d)塩基対置換;
(e)塩基対挿入;
(f)塩基対欠失;
(g)コピー数変化(CNA);
(h)遺伝子再構成、または
(i)(a)~(h)のあらゆる組合せ、
である、請求項
1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
腫瘍が、肺がん、腎細胞がん、卵巣がん、大腸がん、消化管がん、食道がん、膀胱がん、または黒色腫を含む、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
ニボルマブの治療有効量が、2、3または4週間毎に1回、約0.1mg/kg~約10.0mg/kg体重、または約200mg~約1200mgである、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
ニボルマブの治療有効量が、約200mg、約240mgまたは480mgである、請求項1~5のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象に免疫療法を施すことを含む、高い腫瘍変異量(TMB)状態を有する腫瘍に罹患している対象を処置する方法を提供する。いくつかの実施態様において、免疫療法は抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。ある実施態様において、免疫療法は、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分または抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分を含む。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
ASCIIテキストファイルで電子的に提出された配列表(名称:3338066PC02_sequence_ST25.txt;サイズ:38,235バイト;および作成日:2018年3月30日)の内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ヒトのがんは多数の遺伝子変異およびエピジェネティック変化を有し、免疫系によって潜在的に認識可能なネオアンチゲンを生成する(Sjoblom et al., Science (2006) 314(5797):268-274)。Tリンパ球およびBリンパ球から構成される適応免疫系は強力な抗がん能を有し、多様な腫瘍抗原に応答する広範な能力および精巧な特異性を有する。さらに、免疫系は十分な柔軟性および記憶要素を示す。適応免疫系のこれら全ての特性をうまく利用することにより、免疫療法はあらゆるがん処置様式の中で特有なものとなる。
【0004】
最近まで、がんの免疫療法は、活性化エフェクター細胞の養子移植、関連抗原に対する免疫化または非特異的免疫刺激物質(サイトカインなど)の供給によって抗腫瘍免疫応答を増強する手法に多大な労力を注いできた。しかし過去10年間において、特異的な免疫チェックポイント経路阻害剤を開発するための集中的な取り組みが、がん処置のための新たな免疫療法の手法を提供し始めており、これはプログラム死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、阻害性PD-1/PD-1リガンド経路を遮断する抗体(ニボルマブおよびペンブロリズマブ(以前はランブロリズマブ;USAN Council Statement, 2013)など)の開発を含む(Topalian et al., 2012a, b; Topalian et al., 2014; Hamid et al., 2013; Hamid and Carvajal, 2013; McDermott and Atkins, 2013)。
【0005】
PD-1は活性化TおよびB細胞により発現される重要な免疫チェックポイント受容体であり、免疫抑制を媒介する。PD-1は受容体のCD28ファミリーのメンバーであり、これにはCD28、CTLA-4、ICOS、PD-1およびBTLAが含まれる。PD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンド(プログラム死リガンド-1(PD-L1)およびプログラム死リガンド‐2(PD-L2))が同定されており、これらは抗原提示細胞および多くのヒトがん上に発現し、PD-1との結合によりT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御することが示されている。PD-1/PD-L1相互作用の阻害は前臨床モデルにおいて強力な抗腫瘍活性を媒介し(米国特許第8,008,449号および第7,943,743号)、がんを処置するためのPD-1/PD-L1相互作用の抗体阻害剤の使用は臨床試験に入っている(Brahmer et al., 2010; Topalian et al., 2012a; Topalian et al., 2014; Hamid et al., 2013; Brahmer et al., 2012; Flies et al., 2011; Pardoll, 2012; Hamid and Carvajal, 2013)。
【0006】
ニボルマブ(以前は5C4、BMS-936558、MDX-1106またはONO-4538と呼ばれていた)は、PD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との相互作用を選択的に妨げ、それにより抗腫瘍T細胞機能の下方制御を遮断する完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害抗体である(米国特許第8,008,449号;Wang et al., 2014)。ニボルマブは、多様な進行性固形腫瘍(腎細胞がん(腎臓腺がんまたは副腎腫)、黒色腫および非小細胞肺がん(NSCLC)を含む)で活性を示す(Topalian et al., 2012a; Topalian et al., 2014; Drake et al., 2013; WO2013/173223)。
【0007】
免疫系および免疫療法に対する応答は複雑である。さらに、抗がん物質は患者に特有の特徴に基づいてその有効性が変動し得る。したがって、特定の抗がん物質に応答する可能性が高い患者を同定し、結果としてがんと診断された患者の臨床結果を改善する標的治療戦略が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、治療有効量の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、腫瘍に罹患している対象を処置する方法を提供し、ここで腫瘍は高い腫瘍変異量(TMB)のTMB状態を有する。いくつかの実施態様において、本方法は、対象から得られた生体試料のTMB状態を測定することをさらに含む。
【0009】
本開示はまた、対象の生体試料のTMB状態を測定することを含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の治療に適した対象を同定する方法を提供し、ここでTMB状態は高いTMBであり、それにより対象は抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の治療に適していると同定される。ある実施態様において、本方法は、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することをさらに含む。
【0010】
いくつかの実施態様において、TMB状態は、腫瘍中の核酸を配列決定し、配列決定された核酸中のゲノム変化を同定することにより決定される。いくつかの実施態様において、ゲノム変化は1以上の体細胞変異を含む。いくつかの実施態様において、ゲノム変化は1以上の非同義変異を含む。特定の実施態様において、ゲノム変化は1以上のミスセンス変異を含む。他の特定の実施態様において、ゲノム変化は、塩基対置換、塩基対挿入、塩基対欠失、コピー数変化(CNA)、遺伝子再構成およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される1以上の変化を含む。
【0011】
特定の実施態様において、TMB状態は、ゲノムシーケンシング、エクソームシーケンシングおよび/またはゲノムプロファイリングによって決定される。ある実施態様において、ゲノムプロファイルは、少なくとも300遺伝子、少なくとも305遺伝子、少なくとも310遺伝子、少なくとも315遺伝子、少なくとも320遺伝子、少なくとも325遺伝子、少なくとも330遺伝子、少なくとも335遺伝子、少なくとも340遺伝子、少なくとも345遺伝子、少なくとも350遺伝子、少なくとも355遺伝子、少なくとも360遺伝子、少なくとも365遺伝子、少なくとも370遺伝子、少なくとも375遺伝子、少なくとも380遺伝子、少なくとも385遺伝子、少なくとも390遺伝子、少なくとも395遺伝子、または少なくとも400遺伝子を含む。特定の実施態様において、ゲノムプロファイルは少なくとも325遺伝子を含む。
【0012】
ある実施態様において、ゲノムプロファイルは、ABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、GATA3、JAK2、MITF、PDCD1LG2、RBM10、STAT4、ABL2、BRCA1、CHEK2、FANCD2、GATA4、JAK3、MLH1、PDGFRA、RET、STK11、ACVR1B、BRCA2、CIC、FANCE、GATA6、JUN、MPL、PDGFRB、RICTOR、SUFU、AKT1、BRD4、CREBBP、FANCF、GID4(C17orf39)、KAT6A(MYST3)、MRE11A、PDK1、RNF43、SYK、AKT2、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、KDM5A、MSH2、PIK3C2B、ROS1、TAF1、AKT3、BTG1、CRLF2、FANCL、GNA11、KDM5C、MSH6、PIK3CA、RPTOR、TBX3、ALK、BTK、CSF1R、FAS、GNA13、KDM6A、MTOR、PIK3CB、RUNX1、TERC、AMER1(FAM123B)、C11orf30(EMSY)、CTCF、FAT1、GNAQ、KDR、MUTYH、PIK3CG、RUNX1T1、TERT(プロモーターのみ)、APC、CARD11、CTNNA1、FBXW7、GNAS、KEAP1、MYC、PIK3R1、SDHA、TET2、AR、CBFB、CTNNB1、FGF10、GPR124、KEL、MYCL(MYCL1)、PIK3R2、SDHB、TGFBR2、ARAF、CBL、CUL3、FGF14、GRIN2A、KIT、MYCN、PLCG2、SDHC、TNFAIP3、ARFRP1、CCND1、CYLD、FGF19、GRM3、KLHL6、MYD88、PMS2、SDHD、TNFRSF14、ARID1A、CCND2、DAXX、FGF23、GSK3B、KMT2A(MLL)、NF1、POLD1、SETD2、TOP1、ARID1B、CCND3、DDR2、FGF3、H3F3A、KMT2C(MLL3)、NF2、POLE、SF3B1、TOP2A、ARID2、CCNE1、DICER1、FGF4、HGF、KMT2D(MLL2)、NFE2L2、PPP2R1A、SLIT2、TP53、ASXL1、CD274、DNMT3A、FGF6、HNF1A、KRAS、NFKBIA、PRDM1、SMAD2、TSC1、ATM、CD79A、DOT1L、FGFR1、HRAS、LMO1、NKX2-1、PREX2、SMAD3、TSC2、ATR、CD79B、EGFR、FGFR2、HSD3B1、LRP1B、NOTCH1、PRKAR1A、SMAD4、TSHR、ATRX、CDC73、EP300、FGFR3、HSP90AA1、LYN、NOTCH2、PRKCI、SMARCA4、U2AF1、AURKA、CDH1、EPHA3、FGFR4、IDH1、LZTR1、NOTCH3、PRKDC、SMARCB1、VEGFA、AURKB、CDK12、EPHA5、FH、IDH2、MAGI2、NPM1、PRSS8、SMO、VHL、AXIN1、CDK4、EPHA7、FLCN、IGF1R、MAP2K1、NRAS、PTCH1、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、MAP2K2、NSD1、PTEN、SOCS1、WT1、BAP1、CDK8、ERBB2、FLT3、IKBKE、MAP2K4、NTRK1、PTPN11、SOX10、XPO1、BARD1、CDKN1A、ERBB3、FLT4、IKZF1、MAP3K1、NTRK2、QKI、SOX2、ZBTB2、BCL2、CDKN1B、ERBB4、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、RAC1、SOX9、ZNF217、BCL2L1、CDKN2A、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、NUP93、RAD50、SPEN、ZNF703、BCL2L2、CDKN2B、ERRFI1、FRS2、INPP4B、MDM4、PAK3、RAD51、SPOP、BCL6、CDKN2C、ESR1、FUBP1、IRF2、MED12、PALB2、RAF1、SPTA1、BCOR、CEBPA、EZH2、GABRA6、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、BCORL1、CHD2、FAM46C、GATA1、IRS2、MEN1、PAX5、RARA、STAG2、BLM、CHD4、FANCA、GATA2、JAK1、MET、PBRM1、RB1、STAT3およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される1以上の遺伝子を含む。
【0013】
いくつかの実施態様において、本方法は、ETV4、TMPRSS2、ETV5、BCR、ETV1、ETV6およびMYBのうち1つ以上においてゲノム変化を同定することをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施態様において、高いTMBは、少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、少なくとも245、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、少なくとも400、少なくとも405、少なくとも410、少なくとも415、少なくとも420、少なくとも425、少なくとも430、少なくとも435、少なくとも440、少なくとも445、少なくとも450、少なくとも455、少なくとも460、少なくとも465、少なくとも470、少なくとも475、少なくとも480、少なくとも485、少なくとも490、少なくとも495、または少なくとも500のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも221、少なくとも222、少なくとも223、少なくとも224、少なくとも225、少なくとも226、少なくとも227、少なくとも228、少なくとも229、少なくとも230、少なくとも231、少なくとも232、少なくとも233、少なくとも234、少なくとも235、少なくとも236、少なくとも237、少なくとも238、少なくとも239、少なくとも240、少なくとも241、少なくとも242、少なくとも243、少なくとも244、少なくとも245、少なくとも246、少なくとも247、少なくとも248、少なくとも249、または少なくとも250のスコアを有する。特定の実施態様において、高いTMBは少なくとも243のスコアを有する。
【0015】
いくつかの実施態様において、本方法は、対象のTMB状態を基準のTMB値と比較することをさらに含む。ある実施態様において、対象のTMB状態は、基準のTMB値の最も高いフラクタイル(fractile)内にある。別の実施態様において、対象のTMB状態は、基準のTMB値の最高三分位内にある。
【0016】
いくつかの実施態様において、生体試料は腫瘍組織生検(例えば、ホルマリン固定されたパラフィン包埋腫瘍組織または新鮮凍結腫瘍組織)である。他の実施態様において、生体試料は液体生検である。いくつかの実施態様において、生体試料は、血液、血清、血漿、exoRNA、循環腫瘍細胞、ctDNAおよびcfDNAのうち1つ以上を含む。
【0017】
いくつかの実施態様において、対象は高いネオアンチゲン量を有する腫瘍を有する。他の実施態様において、対象のT細胞レパートリーは増加している。
【0018】
いくつかの実施態様において、腫瘍は肺がんである。ある実施態様において、肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)である。NSCLCは扁平上皮組織構造または非扁平上皮組織構造を有し得る。
【0019】
他の実施態様において、腫瘍は、腎細胞がん、卵巣がん、大腸がん、消化管がん、食道がん、膀胱がん、肺がんおよび黒色腫から選択される。
【0020】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD-1との結合についてニボルマブと交差競合する。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ニボルマブと同一のエピトープに結合する。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒトモノクローナル抗体、またはそれらの抗原結合部分である。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgG1アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む。特定の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分はニボルマブまたはペンブロリズマブである。
【0021】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、2、3または4週間毎に1回、0.1mg/kg~10.0mg/kg体重の用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、3週間毎に1回、5mg/kgまたは10mg/kg体重の用量で投与される。別の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、3週間毎に1回、5mg/kg体重の用量で投与される。さらに別の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、2週間毎に1回、3mg/kg体重の用量で投与される。
【0022】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、一定用量(flat dose)で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mg、または少なくとも約550mgの一定用量で投与される。別の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、1、2、3または4週間毎に約1回、一定用量で投与される。
【0023】
いくつかの実施態様において、対象は、投与後少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の無憎悪生存期間を示す。
【0024】
他の実施態様において、対象は、投与後少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の全生存期間を示す。
【0025】
さらに他の実施態様において、対象は、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約100%の奏効率を示す。
【0026】
いくつかの実施態様において、腫瘍は、少なくとも約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%または約50%のPD-L1発現を有する。
【0027】
本開示の他の特徴および利点は以下の詳細な説明および実施例から明らかであり、これらは限定するものと解釈されるべきではない。引用された全ての引用文献(本願のあらゆる箇所で引用される科学論文、新聞記事、GenBankエントリー、特許および特許出願を含む)の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0028】
実施態様
実施態様1。プログラム死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する治療有効量の抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体またはその抗原結合部分」)を対象に投与することを含む、腫瘍に罹患している対象を処置する方法、ここで腫瘍は高い腫瘍変異量(TMB)のTMB状態を有する。
【0029】
実施態様2。対象から得られた生体試料のTMB状態を測定することをさらに含む、実施態様1記載の方法。
【0030】
実施態様3。対象の生体試料のTMB状態を測定することを含む、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の治療に適した対象を同定する方法、ここでTMB状態は高いTMBであり、対象は抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の治療に適していると同定される。
【0031】
実施態様4。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することをさらに含む、実施態様3記載の方法。
【0032】
実施態様5。TMB状態が、腫瘍中の核酸を配列決定し、配列決定された核酸中のゲノム変化を同定することにより決定される、実施態様1~4のいずれかに記載の方法。
【0033】
実施態様6。ゲノム変化が1以上の体細胞変異を含む、実施態様5記載の方法。
【0034】
実施態様7。ゲノム変化が1以上の非同義変異を含む、実施態様5または6に記載の方法。
【0035】
実施態様8。ゲノム変化が1以上のミスセンス変異を含む、実施態様5~7のいずれかに記載の方法。
【0036】
実施態様9。ゲノム変化が、塩基対置換、塩基対挿入、塩基対欠失、コピー数変化(CNA)、遺伝子再構成およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される1以上の変化を含む、実施態様5~8のいずれかに記載の方法。
【0037】
実施態様10。高いTMBが、少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、少なくとも245、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、少なくとも400、少なくとも405、少なくとも410、少なくとも415、少なくとも420、少なくとも425、少なくとも430、少なくとも435、少なくとも440、少なくとも445、少なくとも450、少なくとも455、少なくとも460、少なくとも465、少なくとも470、少なくとも475、少なくとも480、少なくとも485、少なくとも490、少なくとも495、または少なくとも500のスコアを有する、実施態様1~9のいずれかに記載の方法。
【0038】
実施態様11。高いTMBが、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも221、少なくとも222、少なくとも223、少なくとも224、少なくとも225、少なくとも226、少なくとも227、少なくとも228、少なくとも229、少なくとも230、少なくとも231、少なくとも232、少なくとも233、少なくとも234、少なくとも235、少なくとも236、少なくとも237、少なくとも238、少なくとも239、少なくとも240、少なくとも241、少なくとも242、少なくとも243、少なくとも244、少なくとも245、少なくとも246、少なくとも247、少なくとも248、少なくとも249、または少なくとも250のスコアを有する、実施態様1~9のいずれかに記載の方法。
【0039】
実施態様12。高いTMBが少なくとも243のスコアを有する、実施態様1~11のいずれかに記載の方法。
【0040】
実施態様13。対象のTMB状態を基準のTMB値と比較することをさらに含む、実施態様1~12のいずれかに記載の方法。
【0041】
実施態様14。対象のTMB状態が基準のTMB値の最も高いフラクタイル内にある、実施態様13記載の方法。
【0042】
実施態様15。対象のTMB状態が基準のTMB値の最高三分位内にある、実施態様13記載の方法。
【0043】
実施態様16。生体試料が腫瘍組織生検である、実施態様1~15のいずれかに記載の方法。
【0044】
実施態様17。腫瘍組織が、ホルマリン固定されたパラフィン包埋腫瘍組織または新鮮凍結腫瘍組織である、実施態様16記載の方法。
【0045】
実施態様18。生体試料が液体生検である、実施態様1~15のいずれかに記載の方法。
【0046】
実施態様19。生体試料が、血液、血清、血漿、exoRNA、循環腫瘍細胞、ctDNAおよびcfDNAのうち1つ以上を含む、実施態様1~15のいずれかに記載の方法。
【0047】
実施態様20。TMB状態がゲノムシーケンシングにより決定される、実施態様1~19のいずれかに記載の方法。
【0048】
実施態様21。TMB状態がエクソームシーケンシングにより決定される、実施態様1~19のいずれかに記載の方法。
【0049】
実施態様22。TMB状態がゲノムプロファイリングにより決定される、実施態様1~19のいずれかに記載の方法。
【0050】
実施態様23。ゲノムプロファイルが、少なくとも300遺伝子、少なくとも305遺伝子、少なくとも310遺伝子、少なくとも315遺伝子、少なくとも320遺伝子、少なくとも325遺伝子、少なくとも330遺伝子、少なくとも335遺伝子、少なくとも340遺伝子、少なくとも345遺伝子、少なくとも350遺伝子、少なくとも355遺伝子、少なくとも360遺伝子、少なくとも365遺伝子、少なくとも370遺伝子、少なくとも375遺伝子、少なくとも380遺伝子、少なくとも385遺伝子、少なくとも390遺伝子、少なくとも395遺伝子、または少なくとも400遺伝子を含む、実施態様22記載の方法。
【0051】
実施態様24。ゲノムプロファイルが少なくとも325遺伝子を含む、実施態様22記載の方法。
【0052】
実施態様25。ゲノムプロファイルが、ABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、GATA3、JAK2、MITF、PDCD1LG2、RBM10、STAT4、ABL2、BRCA1、CHEK2、FANCD2、GATA4、JAK3、MLH1、PDGFRA、RET、STK11、ACVR1B、BRCA2、CIC、FANCE、GATA6、JUN、MPL、PDGFRB、RICTOR、SUFU、AKT1、BRD4、CREBBP、FANCF、GID4(C17orf39)、KAT6A(MYST3)、MRE11A、PDK1、RNF43、SYK、AKT2、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、KDM5A、MSH2、PIK3C2B、ROS1、TAF1、AKT3、BTG1、CRLF2、FANCL、GNA11、KDM5C、MSH6、PIK3CA、RPTOR、TBX3、ALK、BTK、CSF1R、FAS、GNA13、KDM6A、MTOR、PIK3CB、RUNX1、TERC、AMER1(FAM123B)、C11orf30(EMSY)、CTCF、FAT1、GNAQ、KDR、MUTYH、PIK3CG、RUNX1T1、TERT(プロモーターのみ)、APC、CARD11、CTNNA1、FBXW7、GNAS、KEAP1、MYC、PIK3R1、SDHA、TET2、AR、CBFB、CTNNB1、FGF10、GPR124、KEL、MYCL(MYCL1)、PIK3R2、SDHB、TGFBR2、ARAF、CBL、CUL3、FGF14、GRIN2A、KIT、MYCN、PLCG2、SDHC、TNFAIP3、ARFRP1、CCND1、CYLD、FGF19、GRM3、KLHL6、MYD88、PMS2、SDHD、TNFRSF14、ARID1A、CCND2、DAXX、FGF23、GSK3B、KMT2A(MLL)、NF1、POLD1、SETD2、TOP1、ARID1B、CCND3、DDR2、FGF3、H3F3A、KMT2C(MLL3)、NF2、POLE、SF3B1、TOP2A、ARID2、CCNE1、DICER1、FGF4、HGF、KMT2D(MLL2)、NFE2L2、PPP2R1A、SLIT2、TP53、ASXL1、CD274、DNMT3A、FGF6、HNF1A、KRAS、NFKBIA、PRDM1、SMAD2、TSC1、ATM、CD79A、DOT1L、FGFR1、HRAS、LMO1、NKX2-1、PREX2、SMAD3、TSC2、ATR、CD79B、EGFR、FGFR2、HSD3B1、LRP1B、NOTCH1、PRKAR1A、SMAD4、TSHR、ATRX、CDC73、EP300、FGFR3、HSP90AA1、LYN、NOTCH2、PRKCI、SMARCA4、U2AF1、AURKA、CDH1、EPHA3、FGFR4、IDH1、LZTR1、NOTCH3、PRKDC、SMARCB1、VEGFA、AURKB、CDK12、EPHA5、FH、IDH2、MAGI2、NPM1、PRSS8、SMO、VHL、AXIN1、CDK4、EPHA7、FLCN、IGF1R、MAP2K1、NRAS、PTCH1、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、MAP2K2、NSD1、PTEN、SOCS1、WT1、BAP1、CDK8、ERBB2、FLT3、IKBKE、MAP2K4、NTRK1、PTPN11、SOX10、XPO1、BARD1、CDKN1A、ERBB3、FLT4、IKZF1、MAP3K1、NTRK2、QKI、SOX2、ZBTB2、BCL2、CDKN1B、ERBB4、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、RAC1、SOX9、ZNF217、BCL2L1、CDKN2A、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、NUP93、RAD50、SPEN、ZNF703、BCL2L2、CDKN2B、ERRFI1、FRS2、INPP4B、MDM4、PAK3、RAD51、SPOP、BCL6、CDKN2C、ESR1、FUBP1、IRF2、MED12、PALB2、RAF1、SPTA1、BCOR、CEBPA、EZH2、GABRA6、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、BCORL1、CHD2、FAM46C、GATA1、IRS2、MEN1、PAX5、RARA、STAG2、BLM、CHD4、FANCA、GATA2、JAK1、MET、PBRM1、RB1、STAT3およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される1以上の遺伝子を含む、実施態様22~24のいずれかに記載の方法。
【0053】
実施態様26。ETV4、TMPRSS2、ETV5、BCR、ETV1、ETV6およびMYBのうち1つ以上においてゲノム変化を同定することをさらに含む、実施態様1~25のいずれかに記載の方法。
【0054】
実施態様27。対象が高いネオアンチゲン量を有する腫瘍を有する、実施態様1~26のいずれかに記載の方法。
【0055】
実施態様28。対象のT細胞レパートリーが増加している、実施態様1~27のいずれかに記載の方法。
【0056】
実施態様29。腫瘍が肺がんである、実施態様1~28のいずれかに記載の方法。
【0057】
実施態様30。肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、実施態様29記載の方法。
【0058】
実施態様31。NSCLCが扁平上皮組織構造を有する、実施態様30記載の方法。
【0059】
実施態様32。NSCLCが非扁平上皮組織構造を有する、実施態様30記載の方法。
【0060】
実施態様33。腫瘍が、腎細胞がん、卵巣がん、大腸がん、消化管がん、食道がん、膀胱がん、肺がんおよび黒色腫から選択される、実施態様1~28のいずれかに記載の方法。
【0061】
実施態様34。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が、ヒトPD-1との結合についてニボルマブと交差競合する、実施態様1~33のいずれかに記載の方法。
【0062】
実施態様35。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が、ニボルマブと同一のエピトープに結合する、実施態様1~34のいずれかに記載の方法。
【0063】
実施態様36。抗PD-1抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒトモノクローナル抗体、またはそれらの抗原結合部分である、実施態様1~35のいずれかに記載の方法。
【0064】
実施態様37。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が、ヒトIgG1アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む、実施態様1~36のいずれかに記載の方法。
【0065】
実施態様38。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分がニボルマブである、実施態様1~37のいずれかに記載の方法。
【0066】
実施態様39。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分がペンブロリズマブである、実施態様1~37のいずれかに記載の方法。
【0067】
実施態様40。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が、2、3または4週間毎に1回、0.1mg/kg~10.0mg/kg体重の用量で投与される、実施態様1~39のいずれかに記載の方法。
【0068】
実施態様41。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が、3週間毎に1回、5mg/kgまたは10mg/kg体重の用量で投与される、実施態様1~40のいずれかに記載の方法。
【0069】
実施態様42。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が、3週間毎に1回、5mg/kg体重の用量で投与される、実施態様1~41のいずれかに記載の方法。
【0070】
実施態様43。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が、2週間毎に1回、3mg/kg体重の用量で投与される、実施態様1~40のいずれかに記載の方法。
【0071】
実施態様44。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が一定用量で投与される、実施態様1~39のいずれかに記載の方法。
【0072】
実施態様45。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mg、または少なくとも約550mgの一定用量で投与される、実施態様44記載の方法。
【0073】
実施態様46。抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が、1、2、3または4週間毎に約1回、一定用量で投与される、実施態様44または45に記載の方法。
【0074】
実施態様47。対象が、投与後少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の無憎悪生存期間を示す、実施態様1~46のいずれかに記載の方法。
【0075】
実施態様48。対象が、投与後少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の全生存期間を示す、実施態様1~47のいずれかに記載の方法。
【0076】
実施態様49。対象が、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約100%の奏効率を示す、実施態様1~48のいずれかに記載の方法。
【0077】
実施態様50。腫瘍が、少なくとも約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%または約50%のPD-L1発現を有する、実施態様1~49のいずれかに記載の方法。
【0078】
実施態様51。プラットフォームを用いて対象の腫瘍試料のTMB状態を測定することを含む、がん治療に適した対象を同定する方法、ここでTMB状態はがん関連遺伝子および選択されたイントロンを配列決定することにより決定される。
【0079】
実施態様52。がん治療が、プログラム死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する治療有効量の抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体またはその抗原結合部分」)を対象に投与することを含む、実施態様51記載の方法。
【0080】
実施態様53。腫瘍が、腎細胞がん、卵巣がん、大腸がん、消化管がん、食道がん、膀胱がん、肺がんおよび黒色腫から選択される、実施態様51または52に記載の方法。
【0081】
実施態様54。TMB状態がFOUNDATIONONE(登録商標)アッセイを用いて測定される、実施態様1~53のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】
図1は、患者の性質の臨床試験報告に関する統合基準(CONSORT)ダイアグラムを示す。
【0083】
【0084】
【
図3】
図3は、5%以上のPD-L1発現を有する患者の無憎悪生存期間(PFS)を示す。
【0085】
【
図4】
図4は、無作為化された全ての患者の無憎悪生存期間(PFS)を示す。
【0086】
【
図5】
図5は、5%以上のPD-L1発現を有する患者の全生存期間(OS)を示す。
【0087】
【
図6】
図6は、無作為化された全ての患者の全生存期間(OS)を示す。
【0088】
【
図7】
図7は、サブグループによる無作為化された全ての患者の無憎悪生存期間(PFS)を示す。ECOS PSは米国東海岸癌臨床試験グループの全身状態を意味する。
【0089】
【
図8】
図8は、サブグループによる無作為化された全ての患者の全生存期間(OS)を示す。ECOS PSは米国東海岸癌臨床試験グループの全身状態を意味する。
【0090】
【
図9】
図9は、高い腫瘍変異量(TMB)を有する評価可能な患者の無憎悪生存期間(PFS)を示す。
【0091】
【
図10】
図10は、低いまたは中程度の腫瘍変異量(TMB)を有する評価可能な患者の無憎悪生存期間(PFS)を示す。
【0092】
【
図11】
図11は、高い腫瘍変異量(TMB)を有する評価可能な患者の全生存期間(OS)を示す。
【0093】
【
図12】
図12は、低いまたは中程度の腫瘍変異量(TMB)を有する評価可能な患者の全生存期間(OS)を示す。
【0094】
【
図13】
図13は、全エクソーム変異および遺伝子パネルを用いた腫瘍量分析を示す。
【0095】
【
図14】
図14は、腫瘍変異量(TMB)を評価可能な患者の無憎悪生存期間(PFS)を示す。
【0096】
【
図15】
図15は、腫瘍変異量(TMB)を評価可能な患者の全生存期間(OS)を示す。
【0097】
【
図16】
図16は、ニボルマブ群(arm)の腫瘍変異量(TMB)三分位による無憎悪生存期間(PFS)を示す。
【0098】
【
図17】
図17は、化学療法群の腫瘍変異量(TMB)三分位による無憎悪生存期間(PFS)を示す。
【0099】
【
図18】
図18は、評価可能な患者における腫瘍変異量(TMB)とPD-L1発現との間の関連の分析を示す。
【0100】
【
図19】
図19は、腫瘍変異量(TMB)およびPD-L1発現による奏効率(ORR)を示す。
【0101】
【
図20】
図20は、評価可能な患者の腫瘍変異量(TMB)三分位による部分応答(PR)および完全寛解(CR)を示す。
【0102】
【
図21】
図21は、44人の患者の試料の腫瘍変異量(TMB)分析の実験計画を示す。WES:全エクソームシーケンシング;F1:FOUNDATIONONE
(登録商標)シーケンシング。
【0103】
【
図22】
図22は、FOUNDATIONONE
(登録商標)シーケンシング(F1)による腫瘍変異量(TMB)と全エクソームシーケンシング(WES)によるTMBとの間の高い相関を示す。網掛け部分は、ブートストラップ(分位点)法を用いて計算された95%信頼区間の範囲を表す。水平方向の破線は、同等のF1 TMBレベル(1メガベースあたり7.64個の体細胞変異)を示す。垂直方向の破線は、中央値に設定された任意のWES TMB値(148個のミスセンス変異)を示す。
【0104】
【
図23】
図23は、抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)単独療法、または抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)および抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)を含む併用療法を用いたSCLCの処置に関する臨床試験プロトコルの略図である。
【0105】
【
図24】
図24は、TMB予備分析のための方法および試料の流れを説明する略図である。
【0106】
【
図25】
図25A~Dは、抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)単独療法(
図25Aおよび25B)、または抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)および抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)を含む併用療法(
図25Cおよび25D)で処理された対象の無憎悪生存期間(PFS;
図25Aおよび25C)および全生存期間(OS;
図25Bおよび25D)のグラフである。ITT患者およびTMB評価可能な患者のPFSおよびOSは、図に示されるように重ねて描画されている(
図25A~25D)。
【0107】
【
図26】
図26A~Cは、本明細書に記載のSCLC臨床試験の対象(
図26A)、プールされたSCLC研究の対象(
図26B)および非小細胞肺がんの処置に関する従前の臨床試験からのプールされた対象(
図26C)のTMB分布のグラフである。
【0108】
【
図27】
図27は、抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)、または抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)および抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)で処理されたTMB評価可能な全ての対象、ならびにTMB状態(低い、中程度または高い)によって分類された同対象の奏効率(ORR)を示す棒グラフである。
【0109】
【
図28】
図28A~28Bは、抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)単独療法(
図28A)、または抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)および抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)を含む併用療法(
図28B)のいずれかで処理された対象のTMB分布のグラフであり、ここで対象は最良総合効果により分類されている。CR=完全寛解;PR=部分応答;SD=安定疾患;PD=進行性疾患;NE=未評価。
【0110】
【
図29】
図29A~29Bは、図に示されるようにTMB状態(低い、中程度または高い)により分類された、抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)単独療法(
図29A)、または抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)および抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)を含む併用療法(
図29B)で処理された対象の無憎悪生存期間(PFS)を示す。各試料集団について、1年間のPFSにマークがされている。
【0111】
【
図30】
図30A~30Bは、図に示されるようにTMB状態(低い、中程度または高い)により分類された、抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)単独療法(
図30A)、または抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)および抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)を含む併用療法(
図30B)で処理された対象の全生存期間(OS)を示す。各試料集団について、1年間のOSにマークがされている。
【0112】
【
図31】
図31は、NSCLCを処置する研究計画を示す。対象をPD-L1発現状態によって分類した(すなわち、1%以上のPD-L1発現対1%未満のPD-L1発現)。次に、各群の対象を、(i)3mg/kg q2Qの用量の抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)および1mg/kg q6Wの用量の抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)(n=396またはn=187);(ii)組織学に基づく化学療法(n=397またはn=186)、ならびに(iii)240mg q2Wの一定用量の抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)単独(n=396またはn=177)を受ける3つの群(1:1:1)に分類した。組織学に基づく化学療法を受けた対象をその状態(すなわち、扁平上皮(SQ)NSCLCまたは非扁平上皮(NSQ)NSCLC)によってさらに分類した。化学療法を受けたNSQ NSCLCを有する対象は、ペメトレキセド(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)またはカルボプラチン(AUC5または6)を4以下のサイクルのQ3Wで受け、任意で化学療法後にペメトレキセド(500mg/m2)維持療法またはニボルマブ+化学療法後にニボルマブ(360mg Q3W)+ペメトレキセド(500mg/m2)維持療法を受けた。化学療法を受けたSQ NSCLCを有する対象は、ゲムシタビン(1000または1250mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)、またはゲムシタビン(1000mg/m2)+カルボプラチン(AUC5)を4以下のサイクルのQ3Wで受けた。TBM共主要(co-primary)分析を、10変異/Mb以上の評価可能なTMBを有していたニボルマブ+イピリムマブまたは化学療法に無作為に分けられた患者のサブセットにおいて実施した。
【0113】
【
図32】
図32は、TMB評価可能な全ての患者におけるTMBおよびPD-L1発現の散布図を示す。y軸は1メガベースあたりの変異数を示し、x軸はPD-L1発現を示す。散布図内の記号(点)は、特に1%未満のPD-L1発現を有する患者について複数のデータ点を表し得る。
【0114】
【
図33】
図33Aは、無作為化された全ての患者における抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)プラス抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)対化学療法の無憎悪生存期間を示す。CIは信頼区間を示す;HRはハザード比を示す。
図33Bは、TMB評価可能な患者における抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)プラス抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)対化学療法の無憎悪生存期間を示す。
【0115】
【
図34】
図34Aは、10変異/Mb以上のTMBを有する患者における抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)プラス抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)(Nivo+Ipi)対化学療法(Chemo)の無憎悪生存期間を示す。1-y PFS=1年の無憎悪生存期間;*95% CI、0.43~0.77。
図34Bは、10変異/Mb以上のTMBを有する患者における抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)プラス抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)(Nivo+Ipi)対化学療法(Chemo)の奏功期間を示す。DOR:奏功期間;中央値、DOR、mo:奏功期間の中央値の月数;1-y DOR:1年間の奏功期間。
【0116】
【
図35】
図35は、10変異/Mb未満のTMBを有する患者における抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)プラス抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)対化学療法の無憎悪生存期間を示す。
【0117】
【
図36A】
図36Aは、1%以上のPD-L1発現による10変異/Mb以上のTMBを有する患者における無憎悪生存期間のサブグループ分析を示す。PFS(%):無憎悪生存期間の割合。
【
図36B】
図36Bは、1%未満のPD-L1発現による10変異/Mb以上のTMBを有する患者における無憎悪生存期間のサブグループ分析を示す。
【
図36C】
図36Cは、扁平上皮細胞腫瘍組織構造を有する患者における10変異/Mb以上のTMBを有する患者の無憎悪生存期間のサブグループ分析を示す。
【
図36D】
図36Dは、非扁平上皮細胞腫瘍組織構造を有する患者における10変異/Mb以上のTMBを有する患者の無憎悪生存期間のサブグループ分析を示す。
【0118】
【
図37】
図37は、13変異/Mb以上のTMBおよび1%以上の腫瘍PD-L1発現を有する患者における抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)単独療法対化学療法の無憎悪生存期間を示す。95%CIは0.95(0.64、1.4)である。
【0119】
【
図38】
図38は、10変異/Mb以上のTMBおよび1%以上の腫瘍PD-L1発現を有する患者における抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)プラス抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブ)対抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)単独療法および化学療法の無憎悪生存期間を示す。ニボルマブ+イピリムマブ対化学療法について、95% CIは0.62(0.44、0.88)である。
【発明を実施するための形態】
【0120】
本開示は、患者に免疫療法を施すことを含む、高いTMB状態を有する腫瘍を有するがん患者を処置する方法に関する。いくつかの実施態様において、免疫療法は抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。ある実施態様において、免疫療法は、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分または抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分を含む。本開示はまた、患者の生体試料のTMB状態を測定することを含む、免疫療法での処置(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分での処置)に適したがん患者を同定する方法に関する。
【0121】
用語
本発明がより容易に理解され得るように、特定の用語を最初に定義する。本願で使用される場合、本明細書において他に明示的に示されていない限り、以下の各用語は以下に記載される意味を持つものとする。さらなる定義が本願のあらゆる箇所に記載される。
【0122】
「投与」は、当業者に公知の様々な方法および送達システムのうちいずれかを用いた治療物質を含む組成物の対象への物理的導入を指す。免疫療法(例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体)のための好ましい投与経路には、(例えば注射または注入による)静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄、または他の非経口投与経路が含まれる。本明細書における語句「非経口投与」は、(通常、注射による)経腸および局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入、ならびにインビボでのエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない。他の非経口でない経路には、経口、局所、表皮または粘膜の投与経路(例えば、鼻腔内、膣内、直腸内、舌下または局所)が含まれる。投与は、例えば1回、複数回、および/または1以上の長期間にわたって実施され得る。
【0123】
本明細書における「有害事象」(AE)は、医学的処置の使用に関連するあらゆる好ましくなく、一般に意図されておらず、または望ましくない徴候(異常な検査所見を含む)、症状または疾患である。例えば、有害事象は、処置に対する応答における免疫系の活性化または免疫系細胞(例えば、T細胞)の増殖に関連し得る。医学的処置は1以上の関連するAEを有し得、各AEは同一または異なるレベルの重症度を有し得る。「有害事象を変化させる」ことができる方法への言及は、異なる処置計画の使用に関連する1以上のAEの発生率および/または重症度を低下させる処置計画を意味する。
【0124】
「抗体」(Ab)は、限定されないが、抗原に特異的に結合する糖タンパク質免疫グロブリンを含み、ジスルフィド結合によって相互接続している少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖、またはそれらの抗原結合部分を含む。各H鎖は重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つの定常ドメインCH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つの定常ドメインCLを含む。VH領域およびVL領域は、より保存された領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)が散在している超可変性の領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)にさらに細分類され得る。各VHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2,FR3、CDR3およびFR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと宿主組織または因子(免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一の成分(C1q)を含む)との結合を媒介し得る。
【0125】
免疫グロブリンは一般的に知られているいずれかのアイソタイプに由来し得、これは限定されないが、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含む。IgGサブクラスは当業者に周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むが、これらに限定されない。「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体のクラスまたはサブクラス(例えばIgMまたはIgG1)を指す。例として、用語「抗体」は、天然に存在する抗体および天然に存在しない抗体の両方;モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体;キメラ抗体およびヒト化抗体;ヒト抗体または非ヒト抗体;完全合成された抗体;ならびに単鎖抗体を含む。非ヒト抗体は、ヒトにおける免疫原性を低下させるために組換え法によりヒト化され得る。明示的に記載されていない場合、および文脈から他の指示がない限り、用語「抗体」には上記のいずれかの免疫グロブリンの抗原結合フラグメントまたは抗原結合部分が含まれ、一価および二価のフラグメントまたは部分ならびに単鎖抗体が含まれる。
【0126】
「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、PD-1に特異的に結合する単離抗体はPD-1以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、PD-1に特異的に結合する単離抗体は、他の抗原(異なる種由来のPD-1分子など)との交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0127】
用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、単一の分子組成の抗体分子(すなわち、一次配列が本質的に同一であり、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す抗体分子)の天然に存在しない調製物を指す。モノクローナル抗体は単離抗体の一例である。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術、組換え技術、トランスジェニック技術または当業者に公知の他の技術によって産生され得る。
【0128】
「ヒト抗体」(HuMAb)は、フレームワーク領域およびCDR領域がともにヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来している可変領域を有する抗体を指す。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロ(in vitro)でのランダム変異もしくは部位特異的変異によって、またはインビボ(in vivo)での体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において用語「ヒト抗体」は、別の哺乳類種(マウスなど)の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体を含むことを意図しない。用語「ヒト抗体」および「完全ヒト抗体」は同意語として使用される。
【0129】
「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体のCDR以外のいくつか、ほとんどまたは全てのアミノ酸がヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸に置換されている抗体を指す。ヒト化型抗体のある実施態様において、CDR以外のいくつか、ほとんどまたは全てのアミノ酸はヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸に置換されているが、1以上のCDR中のいくつか、ほとんどまたは全てのアミノ酸は変化していない。抗体が特定の抗原に結合する能力を抑制しない限り、アミノ酸の少数の付加、欠失、挿入、置換または改変が許容される。「ヒト化抗体」は、元の抗体に類似した抗原特異性を保持する。
【0130】
「キメラ抗体」は、可変領域がある種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体(可変領域がマウス抗体に由来し、定常領域がヒト抗体に由来する抗体など)を指す。
【0131】
「抗抗原抗体」は抗原に特異的に結合する抗体を指す。例えば、抗PD-1抗体はPD-1に特異的に結合する。
【0132】
抗体の「抗原結合部分」(「抗原結合フラグメント」とも呼ばれる)は、抗体全体により結合される抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体の1以上のフラグメントを指す。
【0133】
「がん」は、体内の異常細胞の制御されない増殖を特徴とする様々な疾患の広範な群を指す。無秩序な細胞分裂および増殖は、隣接組織に浸潤し、リンパ系または血流を通って身体の遠隔部位に転移し得る悪性腫瘍の形成をもたらす。
【0134】
用語「免疫療法」は、免疫応答の誘導、増強、抑制または他の改変を含む方法による疾患に罹患している対象、または疾患の再発に罹患し、もしくは苦しむリスクがある対象の処置を指す。対象の「処置」または「治療」は、疾患に関連する症状、合併症もしくは状態または生化学的兆候の発生、進行、発達、重症度または再発を回復、緩和、改善、阻害、減速または予防する目的で対象に対して実施されるあらゆる種類の介入もしくはプロセスまたは対象への活性物質の投与を指す。
【0135】
「プログラム死-1」(PD-1)はCD28ファミリーに属する免疫抑制受容体を指す。PD-1はインビボで既に活性化されたT細胞上に主に発現し、2つのリガンドPD-L1およびPD-L2に結合する。本明細書における用語「PD-1」は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1の変異体、アイソフォームおよび種ホモログ(species homolog)、ならびにhPD-1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。完全hPD-1配列は、GenBankアクセッション番号U64863に見出され得る。
【0136】
「プログラム死リガンド‐1」(PD-L1)は、PD-1との結合によりT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御するPD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドのうちの1つ(他方はPD-L2である)である。本明細書における用語「PD-L1」は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1の変異体、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhPD-L1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。完全hPD-L1配列は、GenBankアクセッション番号Q9NZQ7に見出され得る。
【0137】
「対象」は任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は脊椎動物(非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌおよびげっ歯類(マウス、ラットおよびモルモットなど)など)を含むが、これに限定されない。好ましい実施態様において、対象はヒトである。用語「対象」および「患者」は本明細書において互換的に使用される。
【0138】
本開示の方法および用量に関する用語「一定用量」の使用は、患者の体重または体表面積(BSA)に関係なく患者に投与される用量を意味する。したがって、一定用量はmg/kgの用量としてではなく、物質(例えば抗PD-1抗体)の絶対量として提供される。例えば、60kgのヒトと100kgのヒトが同一用量の抗体(例えば、240mgの抗PD-1抗体)を受ける。
【0139】
本開示の方法に関する用語「固定用量」の使用は、単一組成物中の2以上の異なる抗体(例えば、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体)が互いに特定の(固定された)比率で組成物中に存在することを意味する。いくつかの実施態様において、固定用量は抗体の重量(例えばmg)に基づく。ある実施態様において、固定用量は抗体の濃度(例えばmg/ml)に基づく。いくつかの実施態様において、mg第1の抗体(例えば抗PD-1抗体)対mg第2の抗体(例えば抗CTLA-4抗体)の比率は、少なくとも約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:15、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、約1:100、約1:120、約1:140、約1:160、約1:180、約1:200、約200:1、約180:1、約160:1、約140:1、約120:1、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約15:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、または約2:1である。例えば、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の3:1の比率は、バイアルが約240mgの抗PD-1抗体と80mgの抗CTLA-4抗体、または約3mg/mlの抗PD-1抗体と1mg/mlの抗CTLA-4抗体を含み得ることを意味し得る。
【0140】
本明細書における用語「体重に基づく用量」は、患者に投与する用量が患者の体重に基づいて計算されることを意味する。例えば、体重60kgの患者が3mg/kgの抗PD-1抗体を必要とする場合、投与に適切な量の抗PD-1抗体(すなわち180mg)が計算および使用され得る。
【0141】
薬物または治療物質の「治療有効量」または「治療有効用量」は、単独または別の治療物質と組み合わせて使用される場合に、疾患の発生から対象を保護し、または疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度および持続時間の増加もしくは疾患の苦痛による機能障害もしくは身体障害の予防により証明される疾患の退縮を促進する薬物の任意の量である。治療物質が疾患の退縮を促進する能力は、技術を持つ実行者に公知の多様な方法を用いて(例えば、臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系において、またはインビトロアッセイで物質の活性をアッセイすることによって)評価され得る。
【0142】
例として、「抗がん物質」は対象のがんの退縮を促進する。好ましい実施態様において、治療有効量の薬物はがんを除去するまでがんの退縮を促進する。「がんの退縮を促進すること」は、有効量の薬物を単独または抗腫瘍物質と組み合わせて投与することが、腫瘍の増殖もしくはサイズの減少、腫瘍の壊死、少なくとも1つの疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度および持続時間の増加、または疾患の苦痛による機能障害もしくは身体障害の予防をもたらすことを意味する。さらに、処置に関する用語「有効」および「有効性」は、薬理学的有効性および生理学的安全性の両方を含む。薬理学的有効性は薬物が患者のがんの退縮を促進する能力を指す。生理学的安全性は薬物の投与に起因する毒性のレベル、または細胞、臓器および/または生物のレベルでの他の有害な生理学的効果(有害効果)を指す。
【0143】
腫瘍の処置の例として、治療有効量の抗がん物質は、未処置の対象と比較して細胞増殖または腫瘍増殖を好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらになお好ましくは少なくとも約80%阻害する。本開示の他の好ましい実施態様において、腫瘍の退縮は、少なくとも約20日間、より好ましくは少なくとも約40日間、またはさらにより好ましくは少なくとも約60日間観察され得、継続し得る。治療有効性のこれらの基本的な測定にもかかわらず、免疫療法薬の評価は免疫に関連する応答パターンも考慮しなければならない。
【0144】
「免疫応答」は当分野で理解されており、外来物質または異常物質(例えばがん細胞)に対する脊椎動物内の生物学的応答を一般に指し、この応答はこれらの物質およびそれらにより生じる疾患から生物を保護する。免疫応答は、免疫系の1以上の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、樹状細胞または好中球)およびこれらの任意の細胞または肝臓によって産生される可溶性巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用によって媒介され、これは侵入した病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がん細胞もしくは他の異常細胞、または自己免疫もしくは病的炎症の場合に、正常ヒト細胞もしくは組織の選択的なターゲティング、結合、損傷、破壊および/または脊椎動物の身体からの除去をもたらす。免疫応答は、例えばT細胞(例えば、エフェクターT細胞、Th細胞、CD4+細胞、CD8+T細胞またはTreg細胞)の活性化もしくは阻害、または免疫系の他のあらゆる細胞(例えばNK細胞)の活性化もしくは阻害を含む。
【0145】
「免疫に関連した応答パターン」は、がん特異的な免疫応答を誘導することにより、または天然の免疫プロセスを改変することにより抗腫瘍効果を引き起こす免疫治療物質で処置されたがん患者においてよく観察される臨床応答パターンを指す。この応答パターンは腫瘍量の初期の増加または新たな病変の出現に続く有利な治療効果によって特徴付けられ、これは従来の化学療法物質の評価では疾患の進行として分類され、薬物の失敗と同義である。したがって、免疫療法物質の適切な評価には、標的疾患に対するこれらの物質の効果の長期のモニタリングが必要とされ得る。
【0146】
「免疫修飾物質」または「免疫調節物質」は、免疫応答の修飾、調節または改変に関与し得る物質(例えば、シグナル伝達経路の構成要素を標的とする物質)を指す。免疫応答の「修飾」、「調節」または「改変」は、免疫系の細胞またはそのような細胞(例えばTh1細胞などのエフェクターT細胞)の活性のあらゆる変化を指す。そのような調節には、様々な細胞型の数の増加もしくは減少、それらの細胞の活性の増加もしくは減少、または免疫系において生じ得る他のあらゆる変化によって示され得る免疫系の刺激または抑制が含まれる。阻害性免疫調節物質および刺激性免疫調節物質はともに同定されており、それらのいくつかは腫瘍の微小環境において機能を増強し得る。いくつかの実施態様において、免疫調節物質はT細胞の表面上の分子を標的とする。「免疫修飾標的」または「免疫調節標的」は、物質、化学物質、部分、化合物または分子によって結合の標的とされ、それらの結合によって活性が変化する分子(例えば細胞表面分子)である。免疫調節標的には、例えば細胞表面上の受容体(「免疫調節受容体」)および受容体リガンド(「免疫調節リガンド」)が含まれる。
【0147】
「免疫療法」は、免疫系または免疫応答の誘導、増強、抑制または他の改変を含む方法による疾患に罹患している対象、または疾患の再発に罹患し、もしくは苦しむリスクがある対象の処置を指す。ある実施態様において、免疫療法は対象に抗体を投与することを含む。他の実施態様において、免疫療法は対象に小分子を投与することを含む。他の実施態様において、免疫療法は、サイトカインまたはその類似体、変異体もしくはフラグメントを投与することを含む。
【0148】
「免疫刺激治療」または「免疫賦活治療」は、(例えばがんを処置するために)対象の免疫応答の増加(誘導または増強)をもたらす治療を指す。
【0149】
「内因性免疫応答を増強すること」は、対象の既存の免疫応答の有効性または効力を増加させることを意味する。この有効性および効力の増加は、例えば内因性宿主免疫応答を抑制する機構を克服することによって、または内因性宿主免疫応答を増強する機構を刺激することによって達成され得る。
【0150】
薬物の治療有効量は「予防有効量」を含み、これはがんが発生するリスクがある対象(例えば前悪性状態を有する対象)またはがんの再発が起こるリスクがある対象に単独または抗腫瘍物質と組み合わせて投与した場合に、がんの発生または再発を阻害する薬物の任意の量である。好ましい実施態様において、予防有効量はがんの発生または再発を完全に予防する。がんの発生または再発を「阻害すること」は、がんの発生または再発の可能性を減少させるか、またはがんの発生または再発を完全に予防するかのいずれかを意味する。
【0151】
本明細書における用語「腫瘍変異量」(TMB)は、腫瘍のゲノムにおける体細胞変異の数および/または腫瘍のゲノムの領域あたりの体細胞変異の数を指す。免疫系が生殖系列(遺伝性)バリアントを自己として認識する可能性は高いため、TMBを決定する場合、生殖系列(遺伝性)バリアントは除外される。腫瘍変異量(TMB)はまた、「腫瘍変異負荷」、「腫瘍突然変異量」または「腫瘍突然変異負荷」と互換的に使用され得る。
【0152】
TMBは腫瘍のゲノムの遺伝子解析であり、したがって当業者に周知の配列決定法を適用することにより測定され得る。腫瘍DNAは、生殖細胞系列変異または遺伝子多型を除去するために適合した患者の正常組織由来のDNAと比較され得る。
【0153】
いくつかの実施態様において、TMBはハイスループットな配列技術(例えば、次世代シーケンシング(NGS)またはNGSに基づく方法)を用いて腫瘍DNAを配列決定することにより決定される。いくつかの実施態様において、NGSに基づく方法は、全ゲノムシーケンシング(WGS)、全エクソームシーケンシング(WES)、またはがん遺伝子パネルの網羅的なゲノムプロファイリング(CGP)(FOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標)およびMSK-IMPACT臨床試験など)から選択される。いくつかの実施態様において、本明細書におけるTMBは、配列決定されたDNAの1メガベース(Mb)あたりの体細胞変異の数を指す。ある実施態様において、TMBは、あらゆる遺伝性生殖系列遺伝子変異を除去するために適合した腫瘍を生殖系列試料に正規化することにより同定される、非同義変異(例えばミスセンス変異、すなわちタンパク質中の特定のアミノ酸の変化)および/またはナンセンス(これは中途終止、したがってタンパク質配列の短縮化を引き起こす)の総数を用いて測定される。別の実施態様において、TMBは腫瘍中のミスセンス変異の総数を用いて測定される。TMBを測定するために、十分な量の試料が必要とされる。ある実施態様において、組織試料(例えば、最低でも10枚のスライド)が評価のために使用される。いくつかの実施態様において、TMBは1メガベースあたりのNsM(NsM/Mb)として表される。1メガベースは百万塩基である。
【0154】
TMB状態は、数値または相対値(例えば高い、中程度、または低い;基準のセットの最も高いフラクタイル内、または最高三分位内)であり得る。
【0155】
本明細書における用語「高いTMB」は、正常または平均の体細胞変異の数よりも多い腫瘍のゲノム中の体細胞変異の数を指す。いくつかの実施態様において、TMBは、少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、少なくとも245、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、少なくとも400、少なくとも405、少なくとも410、少なくとも415、少なくとも420、少なくとも425、少なくとも430、少なくとも435、少なくとも440、少なくとも445、少なくとも450、少なくとも455、少なくとも460、少なくとも465、少なくとも470、少なくとも475、少なくとも480、少なくとも485、少なくとも490、少なくとも495、または少なくとも500のスコアを有する;他の実施態様において、高いTMBは、少なくとも221、少なくとも222、少なくとも223、少なくとも224、少なくとも225、少なくとも226、少なくとも227、少なくとも228、少なくとも229、少なくとも230、少なくとも231、少なくとも232、少なくとも233、少なくとも234、少なくとも235、少なくとも236、少なくとも237、少なくとも238、少なくとも239、少なくとも240、少なくとも241、少なくとも242、少なくとも243、少なくとも244、少なくとも245、少なくとも246、少なくとも247、少なくとも248、少なくとも249、または少なくとも250のスコアを有する;および、特定の実施態様において、高いTMBは少なくとも243のスコアを有する。他の実施態様において、「高いTMB」は、基準のTMB値の最も高いフラクタイル内のTMBを指す。例えば、評価可能なTMBデータを有する全ての対象はTMBのフラクタイル分布に従って分類される(すなわち、対象は遺伝子変異の最も高い数から最も低い数に順位付けされ、規定された数の群に分類される)。ある実施態様において、評価可能なTMBデータを有する全ての対象は順位付けおよび3分割され、「高いTMB」は基準のTMB値の最高三分位内である。特定の実施態様において、三分位の境界は、0<100遺伝子変異;100~243遺伝子変異;および>243遺伝子変異である。順位付けされた場合、評価可能なTMBデータを有する対象は任意の数の群(例えば四分位、五分位など)に分類できることが理解されるはずである。いくつかの実施態様において、「高いTMB」は、少なくとも約20変異/腫瘍、少なくとも約25変異/腫瘍、少なくとも約30変異/腫瘍、少なくとも約35変異/腫瘍、少なくとも約40変異/腫瘍、少なくとも約45変異/腫瘍、少なくとも約50変異/腫瘍、少なくとも約55変異/腫瘍、少なくとも約60変異/腫瘍、少なくとも約65変異/腫瘍、少なくとも約70変異/腫瘍、少なくとも約75変異/腫瘍、少なくとも約80変異/腫瘍、少なくとも約85変異/腫瘍、少なくとも約90変異/腫瘍、少なくとも約95変異/腫瘍、または少なくとも約100変異/腫瘍のTMBを指す。いくつかの実施態様において、「高いTMB」は、少なくとも約105変異/腫瘍、少なくとも約110変異/腫瘍、少なくとも約115変異/腫瘍、少なくとも約120変異/腫瘍、少なくとも約125変異/腫瘍、少なくとも約130変異/腫瘍、少なくとも約135変異/腫瘍、少なくとも約140変異/腫瘍、少なくとも約145変異/腫瘍、少なくとも約150変異/腫瘍、少なくとも約175変異/腫瘍、または少なくとも約200変異/腫瘍のTMBを指す。ある実施態様において、高いTMBを有する腫瘍は少なくとも約100変異/腫瘍を有する。
【0156】
「高いTMB」はまた、例えば変異アッセイ(例えばFOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標)アッセイ)により測定される、配列決定されたゲノムの1メガベースあたりの変異数と表現され得る。ある実施態様において、高いTMBは、FOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標)アッセイにより測定される、ゲノムの1メガベースあたり少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、または少なくとも約20個の変異を指す。特定の実施態様において、「高いTMB」は、FOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標)アッセイにより配列決定されるゲノムの1メガベースあたり少なくとも10個の変異を指す。
【0157】
本明細書において、用語「中程度のTMB」は、正常または平均の体細胞変異の数付近である腫瘍のゲノム中の体細胞変異の数を指し、用語「低いTMB」は、正常または平均の体細胞変異の数よりも少ない腫瘍のゲノム中の体細胞変異の数を指す。特定の実施態様において、「高いTMB」は少なくとも243のスコアを有し、「中程度のTMB」は100~242のスコアを有し、「低いTMB」は100未満(または0~100)のスコアを有する。「中程度または低いTMB」は、例えばFOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標)アッセイにより測定される、配列決定されたゲノムの1メガベースあたり9個未満の変異を指す。
【0158】
本明細書における用語「基準のTMB値」は、表9に示されるTMB値であり得る。
【0159】
いくつかの実施態様において、TMB状態は喫煙状態と相関し得る。特に、現在または過去に喫煙していた対象は、喫煙したことがない対象よりも多くの遺伝子変異(例えばミスセンス変異)を有することが多い。
【0160】
高いTMBを有する腫瘍はまた、高いネオアンチゲン量を有し得る。本明細書において、用語「ネオアンチゲン」は、免疫系によって以前に認識されていなかった新たに形成された抗原を指す。ネオアンチゲンは、免疫系によって外来性(または非自己)として認識されるタンパク質またはペプチドであり得る。体細胞変異を有する腫瘍ゲノムにおける遺伝子の転写は、翻訳された場合に変異タンパク質を生じる変異mRNAをもたらし、これは次にプロセシングされ、ER内腔に輸送され、MHCクラスI複合体に結合し、ネオアンチゲンのT細胞認識を促進する。ネオアンチゲン認識は、T細胞活性化、クローン増殖、ならびにエフェクターおよびメモリーT細胞への分化を促進し得る。ネオアンチゲン量はTMBと相関し得る。いくつかの実施態様において、TMBは、腫瘍のネオアンチゲン量を測定するための代替物として評価される。腫瘍のTMB状態は、患者が特定の抗がん物質または特定の種類の処置もしくは治療(例えば免疫腫瘍物質(immuno-oncology agent)、例えば抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分、または抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合部分)から恩恵を受ける可能性があるか否かを決定する際の因子として、単独または他の因子と組み合わせて使用され得る。ある実施態様において、高いTMB状態(または高いTMB)は免疫腫瘍学から恩恵を受ける可能性の増大を示し、したがって抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の治療から恩恵を受ける可能性が高い患者を同定するのに使用され得る。同様に、高い腫瘍ネオアンチゲン量および高いTMBを有する腫瘍は、低いネオアンチゲン量および低いTMBを有する腫瘍よりも免疫原性である可能性が高い。さらに、高いネオアンチゲン/高いTMBの腫瘍は免疫系によって非自己と認識される、それにより免疫介在性抗腫瘍応答を引き起こす可能性が高い。ある実施態様において、高いTMB状態および高いネオアンチゲン量は、(例えば免疫療法を用いた)免疫腫瘍学からの恩恵の可能性の増大を示す。本明細書において、用語「治療からの恩恵」は、全生存期間、無憎悪生存期間、部分応答、完全寛解および奏効率のうち1つ以上の改善を指し、腫瘍の増殖もしくはサイズの減少、疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度および持続時間の増加、または疾患の苦痛による機能障害もしくは身体障害の予防を含み得る。
【0161】
その他の因子(例えば、環境因子)がTMB状態に関連し得る。例えば、NSCLC患者の喫煙状態はTMB分布と相関しており、現在および過去の喫煙者は、喫煙したことがない患者と比較して高いTMBの中央値を有していた。Peters et al., AACR, April 1-5, 2017, Washington, D.C参照。NSCLC腫瘍におけるドライバー変異の存在は、若年、女性および非喫煙者の状態と関連していた。Singal et al., ASCO, June 1-5, 2017; Chicago, IL参照。ドライバー変異(EGFR、ALKまたはKRASなど)の存在がより低いTMBと関連しているという傾向が観察された(P=0.06)。Davis et al., AACR, April 1-5, 2017, Washington, D.C。
【0162】
本明細書における用語「体細胞変異」は、受胎後に生じるDNAの後天的な変化を指す。体細胞変異は生殖細胞(精子および卵子)を除く身体の細胞のいずれかで生じ得るため、子供には受け継がれない。これらの変化は必ずではないが、がんまたは他の疾患を引き起こし得る。用語「生殖細胞変異」は、子孫の体内の全ての細胞のDNAに組み込まれることになる身体の生殖細胞(卵子または精子)の遺伝子変化を指す。生殖細胞変異は親から子孫に受け継がれる。「遺伝性変異」とも呼ばれる。TMBの分析では、生殖細胞変異は「ベースライン」と見なされ、腫瘍生検において見出された変異の数から差し引かれ、腫瘍中のTMBが決定される。生殖細胞変異は体内の全ての細胞に見出されるため、その存在は腫瘍生検よりも侵襲性の低い試料採取(血液または唾液など)を介して決定され得る。生殖細胞変異は特定のがんが発生するリスクを増加させ得、化学療法に対する応答に関与し得る。
【0163】
TMB状態に関する場合、用語「測定する」、「測定される」または「測定」は、対象の生体試料中の体細胞変異の測定可能な量を決定することを意味する。測定は、試料中の核酸(例えば、cDNA、mRNA、exoRNA、ctDNAおよびcfDNA)を配列決定することにより実施され得ることが理解される。測定は対象の試料および/または1以上の基準試料に対して実施され、例えば新たに検出され得、または以前の決定に対応し得る。測定は、当業者に公知のように例えばPCR法、qPCR法、サンガーシーケンシング法、(網羅的な遺伝子パネルを含む)ゲノムプロファイリング法、エクソームシーケンシング法、ゲノムシーケンシング法、および/または本明細書に開示されているあらゆる他の方法を用いて実施され得る。いくつかの実施態様において、測定は配列決定された核酸のゲノム変化を同定する。ゲノム(または遺伝子)プロファイリング法は遺伝子の所定のセット(例えば150~500遺伝子)のパネルを含み得、例えば、遺伝子のパネルにおいて評価されたゲノム変化は評価された全体の体細胞変異に相関している。
【0164】
本明細書における用語「ゲノム変化」は腫瘍のゲノムのヌクレオチド配列の変化(または変異)を指し、この変化は生殖系列ヌクレオチド配列には存在せず、いくつかの実施態様において非同義変異(限定されないが、塩基対置換、塩基対挿入、塩基対欠失、コピー数変化(CNA)、遺伝子再構成およびそれらのあらゆる組合せを含む)である。特定の実施態様において、生体試料において測定されるゲノム変化はミスセンス変異である。
【0165】
本明細書における用語「全ゲノムシーケンシング」または「WGS」は、ゲノム全体を配列決定する方法を指す。本明細書における用語「全エクソームシーケンシング」または「WES」は、ゲノムのタンパク質をコードする領域(エクソン)全体を配列決定する方法を指す。
【0166】
本明細書における「がん遺伝子パネル」「遺伝性がんパネル」、「網羅的がんパネル」または「多重遺伝子がんパネル」は、標的がん遺伝子のサブセットを配列決定する方法を指す。いくつかの実施態様において、CGPは、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45または少なくとも約50個の標的がん遺伝子を配列決定することを含む。
【0167】
用語「ゲノムプロファイリングアッセイ」、「網羅的ゲノムプロファイリング」または「CGP」は遺伝子のパネルを分析し、インビトロでの診断のためにイントロンを選択するアッセイを指す。CGPはNGSと標的バイオインフォマティクス分析の組合せであり、既知の臨床的に関連したがん遺伝子における変異をスクリーニングする。この方法は、「ホットスポット」(例えば、BRCA1/BRCA2変異またはマイクロサテライトマーカー)を検査することにより見逃された変異を見出すために使用され得る。ある実施態様において、パネル内の遺伝子はがん関連遺伝子である。別の実施態様において、ゲノムプロファイリングアッセイはFOUNDATIONONE(登録商標)アッセイである。
【0168】
用語「ハーモナイゼーション」は、2以上の測定および/または診断検査の間の比較可能性を決定するために実施される試験を指す。ハーモナイゼーション試験は、診断検査を相互にどのように比較するかという問題に対処する体系的な手法を提供し、患者の腫瘍のバイオマーカー状態を決定するために使用される場合に互換性を提供する。一般に、少なくとも1つの十分に特徴付けられた測定および/または診断検査が他との比較のための基準として使用される。一致評価はハーモナイゼーション試験で利用されることが多い。
【0169】
本明細書における用語「一致」は、2つの測定および/または診断検査間の一致の程度を指す。一致は、定性的方法および定量的方法の両方を用いて確立され得る。一致を評価するための定量的方法は測定の種類に基づいて様々である。特定の測定値は、1)カテゴリー変数/二分変数(dichotomized variable)または2)連続変数のいずれかで表現され得る。「カテゴリー変数/二分変数」(例えばTMBカットオフより上または下)は、一致を評価するために一致率(全体一致率(OPA)、陽性一致率(PPA)または陰性一致率(NPA)など)を使用し得る。「連続変数」(例えばWESによるTMB)は、スピアマンの順位相関またはピアソンの相関係数(r)(これは-1≦r≦+1の値を持つ)を用いて値のスペクトルにわたって一致を評価する(r=+1または-1は、各変数が完全に相関していることを意味することを記載しておく)。用語「分析的一致」は、臨床用途を支持する2つのアッセイまたは診断検査の能力(例えば、バイオマーカー、ゲノム変化の種類およびゲノムシグネチャーの同定、ならびに検査の再現性の評価)の一致の程度を指す。用語「臨床的一致」は、2つのアッセイまたは診断検査がどのように臨床結果と相関するかについての一致の程度を指す。
【0170】
用語「マイクロサテライト不安定性」または「MSI」は、マイクロサテライト(DNAの短い反復配列)の反復数が遺伝した際にDNA中に存在していた反復数と異なる特定の細胞(腫瘍細胞など)のDNA中で生じる変化を指す。MSIは高いマイクロサテライト不安定性(MSI-H)または低いマイクロサテライト不安定性(MSI-L)であり得る。マイクロサテライトは、1~6塩基の短いタンデムDNA反復配列である。これらはDNA複製エラーを起こしやすく、このDNA複製エラーはミスマッチ修復(MMR)によって修復される。したがって、マイクロサテライトはゲノム不安定性(特にミスマッチ修復の欠損(dMMR))の良い指標である。MSIは通常、5つのマイクロサテライトマーカー(BAT-25、BAT-26、NR21、NR24およびNR27)をスクリーニングすることによって診断される。MSI-Hは、分析された5つのマイクロサテライトマーカーのうち少なくとも2つの不安定なマーカー(またはより大きなパネルを使用する場合には30%以上のマーカー)の存在を表す。MSI-Lは、1つのMSIマーカー(またはより大きなパネルでは10%~30%のマーカー)の不安定性を意味する。MSSは、不安定なマイクロサテライトマーカーが存在しないことを意味する。
【0171】
本明細書における用語「生体試料」は、対象から単離された生体物質を指す。生体試料は、(例えば腫瘍(または循環腫瘍細胞)中の核酸を配列決定し、配列決定された核酸のゲノム変化を同定することにより)TMBを決定するのに適したあらゆる生体物質を含み得る。生体試料はあらゆる適切な生体組織または生体液(例えば、腫瘍組織、血液、血漿および血清など)であり得る。ある実施態様において、試料は腫瘍組織生検(例えば、ホルマリン固定されたパラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織または新鮮凍結腫瘍組織など)である。別の実施態様において、生体試料は、(いくつかの実施態様において、血液、血清、血漿、循環腫瘍細胞、exoRNA、ctDNAおよびcfDNAのうち1つ以上を含む)液体生検である。
【0172】
用語「約1週間毎に1回」、「約2週間毎に1回」または本明細書で使用されるあらゆる他の類似の投与間隔の用語は、おおよその数を意味する。「約1週間毎に1回」には、7日±1日毎(すなわち6日毎~8日毎)が含まれ得る。「約2週間毎に1回」には、14日±3日毎(すなわち11日毎~17日毎)が含まれ得る。同様の近似が、例えば、約3週間毎に1回、約4週間毎に1回、約5週間毎に1回、約6週間毎に1回、および約12週間毎に1回に適用される。いくつかの実施態様において、約6週間毎に1回または約12週間毎に1回の投与間隔は、最初の投与が最初の週の任意の日に投与され得、次の投与がそれぞれ6週目または12週目の任意の日に投与され得ることを意味する。他の実施態様において、約6週間毎に1回または約12週間毎に1回の投与間隔は、最初の投与が最初の週の特定の日(例えば月曜日)に投与され、次の投与がそれぞれ6週目または12週目の同じ日(すなわち月曜日)に投与されることを意味する。
【0173】
選択肢の使用(例えば「または」)は、選択肢の一方、両方またはそれらの任意の組合せを意味することが理解されるはずである。本明細書において、不定冠詞「a」または「an」は、記載または列挙された任意の構成要素の「1つ以上」を指すことが理解されるはずである。
【0174】
用語「約」または「本質的に含む」は、当業者によって決定される特定の値または組成の許容誤差範囲内にある値または組成を指し、これは値または組成がどのように測定または決定されるか(すなわち測定系の限界)に部分的に依存する。例えば、「約」または「本質的に含む」は、当分野における実施あたり1以下または1より大きな標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」または「本質的に含む」は最大10%の範囲を意味し得る。さらに、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、これらの用語は最大1桁分または最大5倍の値を意味し得る。本願および特許請求の範囲において特定の値または組成が与えられた場合、特に明記しない限り、「約」または「本質的に含む」の意味はその特定の値または組成の許容誤差範囲内であると想定されるはずである。
【0175】
他の指示がない限り、本明細書において、あらゆる濃度範囲、割合の範囲、比率の範囲または整数の範囲は、記載された範囲内のあらゆる整数の値、および適切な場合にはその小数(整数の10分の1および100分の1など)を含むことが理解されるはずである。
【0176】
略称の一覧を表1に示す。
表1:略称の一覧
【表1-1】
【表1-2】
【0177】
本開示の様々な態様が以下の小項目においてさらに詳細に記載される。
【0178】
予測および予後のための腫瘍変異量(TMB)測定の方法
本開示は、対象の生体試料の腫瘍変異量(TMB)状態を測定することを含む、免疫療法(例えば、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体」)または抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合部分(「抗PD-L1抗体」))での処置に適した対象を同定する方法に関する。本開示は、異なる腫瘍型は異なるレベルの免疫原性を示し、腫瘍の免疫原性はTMBおよび/またはネオアンチゲン量に直接関連するという事実に基づく。
【0179】
腫瘍が成長すると、生殖系列DNAには存在しない体細胞変異が蓄積される。腫瘍変異量(TMB)は、(生殖系列変異DNAを考慮した後の)腫瘍のゲノム内の体細胞変異の数および/または腫瘍ゲノムの領域あたりの体細胞変異の数を指す。体細胞変異の取得、したがってより高いTMBは特徴的な機構(外因性変異原への曝露(例えば、タバコの喫煙またはUV光への曝露)およびDNAミスマッチ修復変異(例えば、大腸がんおよび食道がんのMSI)など)によって影響され得る。固形腫瘍では、変異の約95%が一塩基置換である。(Vogelstein et al., Science (2013) 339:1546-1558)。本明細書における「非同義変異」は、タンパク質のアミノ酸配列を変化させるヌクレオチド変異を指す。ミスセンス変異およびナンセンス変異はともに非同義変異であり得る。本明細書における「ミスセンス変異」は、単一のヌクレオチド変化が異なるアミノ酸をコードするコドンをもたらす非同義点変異を指す。本明細書における「ナンセンス変異」は、コドンが得られるタンパク質の短縮化をもたらす未成熟終止コドンに変化する非同義点変異を指す。
【0180】
ある実施態様において、体細胞変異はRNAレベルおよび/またはタンパク質レベルで発現し得、これはネオアンチゲン(ネオエピトープとも呼ばれる)をもたらし得る。ネオアンチゲンは免疫介在性抗腫瘍応答に影響を与え得る。例えば、ネオアンチゲン認識は、T細胞活性化、クローン増殖、ならびにエフェクターおよびメモリーT細胞への分化を促進し得る。
【0181】
腫瘍が発生すると、早期クローン変異(early clonal mutation)(または「トランク変異(trunk mutation)」)はほとんどまたは全ての腫瘍細胞が保有し得るが、後期変異(late mutation)(または「ブランチ変異(branch mutation)」)は腫瘍細胞または腫瘍領域のサブセットでのみ発生し得る。(Yap et al., Sci Tranl Med (2012) 4:1-5; Jamai-Hanjani et al., (2015) Clin Cancer Res 21:1258-1266)。結果として、クローン「トランク」変異由来のネオアンチゲンは「ブランチ」変異よりも腫瘍ゲノムに広範囲に存在しているため、クローンのネオアンチゲンに対して反応性の多数のT細胞をもたらし得る。(McGranahan et al., (2016) 351:1463-1469)。一般に、高いTMBを有する腫瘍はまた、高いネオアンチゲン量を有し得、これは高い腫瘍免疫原性ならびにT細胞反応性および抗腫瘍応答の増加をもたらし得る。そのようなものとして、高いTMBを有するがんは、免疫療法(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体)での処置によく応答し得る。
【0182】
シーケンシング技術の進歩により、腫瘍のゲノム変異ランドスケープ(genomic mutation landscape)の評価が可能である。(例えば、腫瘍に罹患している対象由来の生体試料から得られる)腫瘍ゲノム由来の核酸を配列決定するために、当業者に公知の任意のシーケンシング法が使用され得る。ある実施態様において、PCR法もしくはqPCR法、サンガーシーケンシング法または次世代シーケンシング(「NGS」)法(ゲノムプロファイリング、エクソームシーケンシングまたはゲノムシーケンシングなど)がTMBを測定するのに使用され得る。いくつかの実施態様において、TMB状態はゲノムプロファイリングを用いて測定される。ゲノムプロファイリングは腫瘍試料由来の核酸(コード領域および非コード領域を含む)を分析することを含み、統合および最適化された核酸選択、リードアラインメント(read alignment)および変異の呼び出し(mutation calling)を有する方法を用いて実施され得る。いくつかの実施態様において、遺伝子プロファイリングは、がん毎、遺伝子毎および/または部位毎に基づいて最適化され得る腫瘍の次世代シーケンシング(NGS)に基づく分析を提供する。ゲノムプロファイリングは、シーケンシング法(特に、多数の多様な遺伝子における多数の多様な遺伝子イベントの超並列シーケンシングに依存した方法)の能力を最適化するために個別に調整された複数のアライメント法またはアルゴリズムの使用を組み込み得る。ゲノムプロファイリングは対象のがんゲノムの網羅的分析を臨床用の質で提供し、遺伝子分析の出力はがん治療の質および効率を向上させるために関連する科学的および医学的知識で文脈化(contextualize)され得る。
【0183】
ゲノムプロファイリングは、わずか5遺伝子、または1000もの遺伝子、約25遺伝子~約750遺伝子、約100遺伝子~約800遺伝子、約150遺伝子~約500遺伝子、約200遺伝子~約400遺伝子、約250遺伝子~約350遺伝子を含む遺伝子の所定のセットのパネルを含む。ある実施態様において、ゲノムプロファイルは少なくとも300遺伝子、少なくとも305遺伝子、少なくとも310遺伝子、少なくとも315遺伝子、少なくとも320遺伝子、少なくとも325遺伝子、少なくとも330遺伝子、少なくとも335遺伝子、少なくとも340遺伝子、少なくとも345遺伝子、少なくとも350遺伝子、少なくとも355遺伝子、少なくとも360遺伝子、少なくとも365遺伝子、少なくとも370遺伝子、少なくとも375遺伝子、少なくとも380遺伝子、少なくとも385遺伝子、少なくとも390遺伝子、少なくとも395遺伝子、または少なくとも400遺伝子を含む。別の実施態様において、ゲノムプロファイルは少なくとも325遺伝子を含む。特定の実施態様において、ゲノムプロファイルは、少なくとも315個のがん関連遺伝子および28遺伝子のイントロン(FOUNDATIONONE(登録商標))、または406遺伝子の完全なDNAコード配列、再構成を伴う31遺伝子のイントロンおよび265遺伝子のRNA配列(cDNA)(FOUNDATIONONE(登録商標) Heme)を含む。別の実施態様において、ゲノムプロファイルは、26遺伝子および1000個の関連する変異を含む(EXODX(登録商標) Solid Tumor)。さらに別の実施態様において、ゲノムプロファイルは76遺伝子を含む(Guardant360)。さらに別の実施態様において、ゲノムプロファイルは73遺伝子を含む(Guardant360)。別の実施態様において、ゲノムプロファイルは、354遺伝子および再構成のための28遺伝子のイントロンを含む(FOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標))。ある実施態様において、ゲノムプロファイルはFOUNDATIONONE(登録商標) F1CDxである。別の実施態様において、ゲノムプロファイルは468遺伝子を含む(MSK-IMPACT(商標))。より多くの遺伝子が腫瘍学に関連していると同定されている場合、1以上の遺伝子がゲノムプロファイルに追加され得る。
【0184】
FOUNDATIONONE
(登録商標)アッセイ
FOUNDATIONONE
(登録商標)アッセイは固形腫瘍(限定されないが、肺、結腸および乳房の固形腫瘍、黒色腫ならびに卵巣がんを含む)のための網羅的なプロファイリングアッセイである。FOUNDATIONONE
(登録商標)アッセイは、ハイブリッドキャプチャーの次世代シーケンシングテストを用いてゲノム変化(塩基の置換、挿入および欠失、コピー数変化ならびに再構成)を同定し、ゲノムシグネチャー(例えば、TMBおよびマイクロサテライト不安定性)を選択する。このアッセイは、322個の固有の遺伝子(315個のがん関連遺伝子のコード領域全体を含む)および28個の遺伝子からの選択されたイントロンを包含する。FOUNDATIONONE
(登録商標)アッセイ遺伝子の完全なリストを表2および3に示す。FoundationMedicine.comで入手可能な、2018年3月16日に最後に確認したFOUNDATIONONE: Technical Specifications, Foundation Medicine, Inc.を参照、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
表2:コード配列全体がFOUNDATIONONE
(登録商標)アッセイでアッセイされる遺伝子の一覧。
【表2-1】
【表2-2】
表3:選択されたイントロンがFOUNDATIONONE
(登録商標)アッセイでアッセイされる遺伝子の一覧。
【表3】
【0185】
FOUNDATIONONE
(登録商標) Hemeアッセイ
FOUNDATIONONE
(登録商標) Hemeアッセイは、血液系腫瘍および肉腫のための網羅的なゲノムプロファイリングアッセイである。FOUNDATIONONE
(登録商標) Hemeアッセイは、ハイブリッドキャプチャーの次世代シーケンシングテストを用いてゲノム変化(塩基の置換、挿入および欠失、コピー数変化ならびに再構成)を同定する。このアッセイは、がんにおいて一般に再構成される406遺伝子のコード領域、31遺伝子の選択されたイントロンおよび265遺伝子のRNA配列を分析する。FOUNDATIONONE
(登録商標) Hemeアッセイ遺伝子の完全なリストを表4、5および6に示す。FoundationMedicine.comで入手可能な、2018年3月16日に最後に確認したFOUNDATIONONE
(登録商標) HEME: Technical Specifications, Foundation Medicine, Inc.を参照、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
表4:コード配列全体がFOUNDATIONONE
(登録商標) Hemeアッセイでアッセイされる遺伝子の一覧。
【表4-1】
【表4-2】
表5:選択されたイントロンがFOUNDATIONONE
(登録商標) Hemeアッセイでアッセイされる遺伝子の一覧。
【表5】
表6:RNA配列がFOUNDATIONONE
(登録商標) Hemeアッセイでアッセイされる遺伝子の一覧。
【表6】
【0186】
EXODX
(登録商標)Solid Tumorアッセイ
ある実施態様において、TMBはEXODX
(登録商標)Solid Tumorアッセイを用いて測定される。EXODX
(登録商標)Solid TumorアッセイはexoRNAおよびcfDNAに基づくアッセイであり、がん経路の実施可能な変異を検出する。EXODX
(登録商標)Solid Tumorアッセイは、組織試料を必要としない血漿に基づくアッセイである。EXODX
(登録商標)Solid Tumorアッセイは、26遺伝子および1000個の変異を包含している。EXODX
(登録商標)Solid Tumorアッセイに包含される具体的な遺伝子を表7に示す。exosomedx.comで入手可能な、2018年3月16日に最後にアクセスしたPlasma-Based Solid Tumor Mutation Panel Liquid Biopsy, Exosome Diagnostics, Inc.を参照。
表7:EXODX
(登録商標)Solid Tumorアッセイに包含される遺伝子。
【表7】
【0187】
Guardant360アッセイ
いくつかの実施態様において、TMB状態はGuardant360アッセイを用いて決定される。Guardant360アッセイは、少なくとも73遺伝子(表8)、23個のインデル(表9)、18個のCNV(表10)および6個の融合遺伝子(表11)の変異を測定する。2018年3月16日に最後にアクセスしたGuardantHealth.com参照。
表8:Guardant360アッセイの遺伝子。
【表8】
表9:Guardant360アッセイのインデル
【表9】
表10:Guardant360アッセイの増幅物(CNV)
【表10】
表11:Guardant360アッセイの融合物
【表11】
【0188】
ILLUMINA
(登録商標) TruSightアッセイ
いくつかの実施態様において、TMBはTruSight Tumor 170アッセイ(ILLUMINA
(登録商標))を用いて決定される。TruSight Tumor 170アッセイは一般的な固形腫瘍に関連する170遺伝子を包含する次世代シーケンシングアッセイであり、DNAとRNAを同時に分析する。TruSight Tumor 170アッセイは、融合物、スプライスバリアント、挿入/欠失、単一ヌクレオチド変異(SNV)および増幅物を評価する。TruSight Tumor 170アッセイの遺伝子の一覧を表12~14に示す。
表12:TruSight Tumor 170アッセイの遺伝子(増幅物)
【表12】
表13:TruSight Tumor 170アッセイの遺伝子(融合物)
【表13】
表14:TruSight Tumor 170アッセイの遺伝子(小変異体)
【表14】
【0189】
FOUNDATIONONE(登録商標) F1CDxアッセイ
FOUNDATIONONE(登録商標) CDx(商標)(「F1CDx」)は、ホルマリン固定されたパラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織標本から単離されたDNAを用いて、324遺伝子の置換、挿入および欠失の変化(インデル)ならびにコピー数変化(CNA)、選択された遺伝子再構成、ならびにゲノムシグネチャー(マイクロサテライト不安定性(MSI)および腫瘍変異量(TMB)を含む)を検出するための次世代シーケンシングに基づくインビトロでの診断デバイスである。F1CDxは、複数の腫瘍の適応症(NSCLC、黒色腫、乳がん、大腸がんおよび卵巣がんを含む)について米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。
【0190】
F1CDxアッセイは通常のFFPE生検または外科的切除標本からの単一DNA抽出法を利用し、そのうち50~1000ngにより全ゲノムショットガンライブラリー構築、ならびに309個のがん関連遺伝子からの全てのコーディングエクソン、34個の通常再構成されている遺伝子(このうち21個はコーディングエクソンも含む)からの1つのプロモーター領域、1つの非コード領域(ncRNA)および選択されたイントロン領域のハイブリダイゼーションに基づく捕捉を行う。表15および16は、F1CDxに含まれる遺伝子の完全なリストを示す。全体として、このアッセイは合計324遺伝子の変化を検出する。ILLUMINA
(登録商標) HiSeq 4000プラットフォームを用いて、ハイブリッドキャプチャーにより選択されたライブラリーは均一で高度な深度(>100Xのカバー率において>99%のエクソンを伴う>500Xのカバー率の中央値を標的とする)まで配列決定される。その後、配列データはあらゆる種類のゲノム変化(塩基置換、インデル、コピー数変化(増幅およびホモ接合遺伝子欠失)および選択されたゲノム再構成(例えば遺伝子融合)を含む)を検出するように設計およびカスタマイズされた分析パイプラインを用いて処理される。さらに、ゲノムシグネチャー(マイクロサテライト不安定性(MSI)および腫瘍変異量(TMB)を含む)が報告される。
表15:置換、挿入および欠失(インデル)ならびにコピー数変化(CNA)を検出するためにFOUNDATIONONE
(登録商標) CDx
(商標)に含まれる完全なコーディングエクソン領域を含む遺伝子。
【表15】
表16:遺伝子再構成を検出するための選択されたイントロン領域を含む遺伝子、3’UTRを含む1つの遺伝子、プロモーター領域を含む1つの遺伝子、および1つのncRNA遺伝子。
【表16】
【0191】
F1CDxアッセイは、遺伝子および/またはイントロン配列の様々な変化(置換、挿入/欠失およびCNAを含む)を同定する。F1CDxアッセイは、外部検証されたNGSアッセイおよびFOUNDATIONONE(登録商標)(F1 LDT)アッセイと一致していると以前に同定された。FoundationMedicine.comで入手可能な、2018年3月16日に最後に確認したFOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標): Technical Information, Foundation Medicine, Inc.を参照、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0192】
MSK-IMPACT
(商標)
いくつかの実施態様において、TMB状態は、MSK-IMPACT
(商標)アッセイを用いて評価される。MSK-IMPACT
(商標)アッセイは次世代シーケンシングを用いて468遺伝子の変異状態を分析する。標的遺伝子は、ILLUMINA
(登録商標) HISEQ
(商標)装置上で捕捉および配列決定される。MSK-IMPACT
(商標)アッセイは、固形悪性腫瘍の体細胞変異およびマイクロサテライト不安定性の検出についてUS FDAにより承認されている。MSK-IMPACT
(商標)アッセイにより分析される468遺伝子の完全なリストを表17に示す。accessdata.fda.govで入手可能なMSK-IMPACTについてのクラスIII自動指定の評価(実施可能ながん標的の組込み変異プロファイリング):Decision Summary, United States Food and Drug Administration, November 15, 2017参照。
表17:MSK-IMPACT
(商標)アッセイにより分析される遺伝子。
【表17-1】
【表17-2】
【0193】
NEOGENOMICS(登録商標) NEOTYPE(商標)アッセイ
いくつかの実施態様において、TMBはNEOGENOMICS(登録商標) NEOTYPE(商標)アッセイを用いて決定される。いくつかの実施態様において、TMBはNEOTYPE(商標) Discoveryプロファイルを用いて決定される。いくつかの実施態様において、TMBはNEOTYPE(商標) Solid Tumorプロファイルを用いて決定される。NEOGENOMICS(登録商標)アッセイは、配列決定されたDNAの1メガベースあたりの非同義DNAコード配列変化の数を測定する。
【0194】
ONCOMINE(商標)腫瘍変異負荷アッセイ
いくつかの実施態様において、TMBはTHERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標) ONCOMINE(商標)腫瘍変異アッセイを用いて決定される。いくつかの実施態様において、TMBはTHERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標) ION TORRENT(商標) ONCOMINE(商標)腫瘍変異アッセイを用いて決定される。ION TORRENT(商標) ONCOMINE(商標)腫瘍変異アッセイは、体細胞変異を定量化して腫瘍変異負荷を決定するターゲットNGSアッセイである。このアッセイは1.7MbのDNAを包含する。
【0195】
NOVOGENE(商標) NOVOPM(商標)アッセイ
いくつかの実施態様において、TMBはNOVOGENE(商標) NOVOPM(商標)アッセイを用いて決定される。いくつかの実施態様において、TMBはNOVOGENE(商標) NOVOPM(商標) Cancer Panelアッセイを用いて決定される。NOVOGENE(商標) NOVOPM(商標) Cancer Panelアッセイは、548遺伝子の完全なコード領域および21遺伝子のイントロン(これは約1.5MbのDNAである)を分析し、全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)のガイドラインおよび医学文献による固形腫瘍の診断および/または処置に関連する網羅的なNGSがんパネルである。このアッセイは、SNV、InDel、融合物およびコピー数多型(CNV)のゲノム異常を検出する。
【0196】
他のTMBアッセイ
いくつかの実施態様において、TMBはCARIS(登録商標) Life Sciencesにより提供されるTMBアッセイを用いて決定される。いくつかの実施態様において、TMBはPESONALIS(登録商標) ACE ImmunoIDアッセイを用いて決定される。いくつかの実施態様において、TMBはPGDX(登録商標) CANCERXOME(商標)-Rアッセイを用いて決定される。
【0197】
さらに別の特定の実施態様において、ゲノムプロファイリングは、あらゆる種類の変異(すなわち、単一ヌクレオチド変異、挿入/欠失(インデル)、コピー数多型および再構成(例えば、転座、発現およびエピジェネティックマーカー))を検出する。
【0198】
網羅的な遺伝子パネルは、分析される腫瘍の種類に基づいて選択される所定の遺伝子を含むことが多い。したがって、TMB状態を測定するのに使用されるゲノムプロファイルは、対象が有する腫瘍の種類に基づいて選択され得る。ある実施態様において、ゲノムプロファイルは固形腫瘍に特有の遺伝子のセットを含み得る。別の実施態様において、ゲノムプロファイルは、血液系腫瘍および肉腫に特有の遺伝子のセットを含み得る。
【0199】
ある実施態様において、ゲノムプロファイルは、ABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、GATA3、JAK2、MITF、PDCD1LG2、RBM10、STAT4、ABL2、BRCA1、CHEK2、FANCD2、GATA4、JAK3、MLH1、PDGFRA、RET、STK11、ACVR1B、BRCA2、CIC、FANCE、GATA6、JUN、MPL、PDGFRB、RICTOR、SUFU、AKT1、BRD4、CREBBP、FANCF、GID4(C17orf39)、KAT6A(MYST3)、MRE11A、PDK1、RNF43、SYK、AKT2、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、KDM5A、MSH2、PIK3C2B、ROS1、TAF1、AKT3、BTG1、CRLF2、FANCL、GNA11、KDM5C、MSH6、PIK3CA、RPTOR、TBX3、ALK、BTK、CSF1R、FAS、GNA13、KDM6A、MTOR、PIK3CB、RUNX1、TERC、AMER1(FAM123B)、C11orf30(EMSY)、CTCF、FAT1、GNAQ、KDR、MUTYH、PIK3CG、RUNX1T1、TERT(プロモーターのみ)、APC、CARD11、CTNNA1、FBXW7、GNAS、KEAP1、MYC、PIK3R1、SDHA、TET2、AR、CBFB、CTNNB1、FGF10、GPR124、KEL、MYCL(MYCL1)、PIK3R2、SDHB、TGFBR2、ARAF、CBL、CUL3、FGF14、GRIN2A、KIT、MYCN、PLCG2、SDHC、TNFAIP3、ARFRP1、CCND1、CYLD、FGF19、GRM3、KLHL6、MYD88、PMS2、SDHD、TNFRSF14、ARID1A、CCND2、DAXX、FGF23、GSK3B、KMT2A(MLL)、NF1、POLD1、SETD2、TOP1、ARID1B、CCND3、DDR2、FGF3、H3F3A、KMT2C(MLL3)、NF2、POLE、SF3B1、TOP2A、ARID2、CCNE1、DICER1、FGF4、HGF、KMT2D(MLL2)、NFE2L2、PPP2R1A、SLIT2、TP53、ASXL1、CD274、DNMT3A、FGF6、HNF1A、KRAS、NFKBIA、PRDM1、SMAD2、TSC1、ATM、CD79A、DOT1L、FGFR1、HRAS、LMO1、NKX2-1、PREX2、SMAD3、TSC2、ATR、CD79B、EGFR、FGFR2、HSD3B1、LRP1B、NOTCH1、PRKAR1A、SMAD4、TSHR、ATRX、CDC73、EP300、FGFR3、HSP90AA1、LYN、NOTCH2、PRKCI、SMARCA4、U2AF1、AURKA、CDH1、EPHA3、FGFR4、IDH1、LZTR1、NOTCH3、PRKDC、SMARCB1、VEGFA、AURKB、CDK12、EPHA5、FH、IDH2、MAGI2、NPM1、PRSS8、SMO、VHL、AXIN1、CDK4、EPHA7、FLCN、IGF1R、MAP2K1、NRAS、PTCH1、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、MAP2K2、NSD1、PTEN、SOCS1、WT1、BAP1、CDK8、ERBB2、FLT3、IKBKE、MAP2K4、NTRK1、PTPN11、SOX10、XPO1、BARD1、CDKN1A、ERBB3、FLT4、IKZF1、MAP3K1、NTRK2、QKI、SOX2、ZBTB2、BCL2、CDKN1B、ERBB4、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、RAC1、SOX9、ZNF217、BCL2L1、CDKN2A、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、NUP93、RAD50、SPEN、ZNF703、BCL2L2、CDKN2B、ERRFI1、FRS2、INPP4B、MDM4、PAK3、RAD51、SPOP、BCL6、CDKN2C、ESR1、FUBP1、IRF2、MED12、PALB2、RAF1、SPTA1、BCOR、CEBPA、EZH2、GABRA6、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、BCORL1、CHD2、FAM46C、GATA1、IRS2、MEN1、PAX5、RARA、STAG2、BLM、CHD4、FANCA、GATA2、JAK1、MET、PBRM1、RB1、STAT3およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される1以上の遺伝子を含む。他の実施態様において、TMB分析は、ETV4、TMPRSS2、ETV5、BCR、ETV1、ETV6およびMYBのうち1つ以上においてゲノム変化を同定することをさらに含む。
【0200】
別の実施態様において、ゲノムプロファイルは、ABL1、12B、ABL2、ACTB、ACVR1、ACVR1B、AGO2、AKT1、AKT2、AKT3、ALK、ALOX、ALOX12B、AMER1、AMER1(FAM123BまたはWTX)、AMER1(FAM123B)、ANKRD11、APC、APH1A、AR、ARAF、ARFRP1、ARHGAP26(GRAF)、ARID1A、ARID1B、ARID2、ARID5B、ARv7、ASMTL、ASXL1、ASXL2、ATM、ATR、ATRX、AURKA、AURKB、AXIN1、AXIN2、AXL、B2M、BABAM1、BAP1、BARD1、BBC3、BCL10、BCL11B、BCL2、BCL2L1、BCL2L11、BCL2L2、BCL6、BCL7A、BCOR、BCORL1、BIRC3、BLM、BMPR1A、BRAF、BRCA1、BRCA2、BRD4、BRIP1、BRIP1(BACH1)、BRSK1、BTG1、BTG2、BTK、BTLA、C11orf 30(EMSY)、C11orf30、C11orf30(EMSY)、CAD、CALR、CARD11、CARM1、CASP8、CBFB、CBL、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CCT6B、CD22、CD274、CD274(PD-L1)、CD276、CD36、CD58、CD70、CD79A、CD79B、CDC42、CDC73、CDH1、CDK12、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2Ap14ARF、CDKN2Ap16INK4A、CDKN2B、CDKN2C、CEBPA、CENPA、CHD2、CHD4、CHEK1、CHEK2、CIC、CIITA、CKS1B、CPS1、CREBBP、CRKL、CRLF2、CSDE1、CSF1R、CSF3R、CTCF、CTLA-4、CTNN B1、CTNNA1、CTNNB1、CUL3、CUL4A、CUX1、CXCR4、CYLD、CYP17A1、CYSLTR2、DAXX、DCUN1D1、DDR1、DDR2、DDX3X、DH2、DICER1、DIS3、DNAJB1、DNM2、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、DOT1L、DROSHA、DTX1、DUSP2、DUSP4、DUSP9、E2F3、EBF1、ECT2L、EED、EGFL7、EGFR、EIF1AX、EIF4A2、EIF4E、ELF3、ELP2、EML4、EML4-ALK、EP300、EPAS1、EPCAM、EPHA3、EPHA5、EPHA7、EPHB1、EPHB4、ERBB2、ERBB3、ERBB4、ERCC1、ERCC2、ERCC3、ERCC4、ERCC5、ERF、ERG、ERRFI1、ERRFl1、ESR1、ETS1、ETV1、
【0201】
ETV4、ETV5、ETV6、EWSR1、EXOSC6、EZH1、EZH2、FAF1、FAM175A、FAM46C、FAM58A、FANCA、FANCC、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FANCI、FANCL、FAS、FAS(TNFRSF6)、FAT1、FBXO11、FBXO31、FBXW7、FGF1、FGF10、FGF12、FGF14、FGF19、FGF2、FGF23、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FH、FHIT、FLCN、FLI1、FLT1、FLT3、FLT4、FLYWCH1、FOXA1、FOXL2、FOXO1、FOXO3、FOXP1、FRS2、FUBP1、FYN、GABRA6、GADD45B、GATA1、GATA2、GATA3、GATA4、GATA6、GEN1、GID4(C17orf 39)、GID4(C17orf39)、GLI1、GLl1、GNA11、GNA12、GNA13、GNAQ、GNAS、GPR124、GPS2、GREM1、GRIN2A、GRM3、GSK3B、GTSE1、H3F3A、H3F3B、H3F3C、HDAC1、HDAC4、HDAC7、ヘッジホッグ、HER-2/NEU;ERBB2、HGF、HIST1H1C、HIST1H1D、HIST1H1E、HIST1H2AC、HIST1H2AG、HIST1H2AL、HIST1H2AM、HIST1H2BC、HIST1H2BD、HIST1H2BJ、HIST1H2BK、HIST1H2BO、HIST1H3A、HIST1H3B、HIST1H3C、HIST1H3D、HIST1H3E、HIST1H3F、HIST1H3G、HIST1H3H、HIST1H3I、HIST1H3J、HIST2H3C、HIST2H3D、HIST3H3、HLA-A、HLA-B、HNF1A、HOXB13、HRAS、HSD3B1、HSP90AA1、ICK、ICOSLG、ID3、IDH1、IDH2、IFNGR1、IGF1、IGF1R、IGF2、IKBKE、IKZF1、IKZF2、IKZF3、IL10、IL7R、INHA、INHBA、INPP4A、INPP4B、INPP5D(SHIP)、INPPL1、INSR、IRF1、IRF2、IRF4、IRF8、IRS1、IRS2、JAK1、JAK2、JAK3、JARID2、JUN、K14、KAT6A(MYST 3)、KAT6A(MYST3)、KDM2B、KDM4C、KDM5A、KDM5C、KDM6A、KDR、KEAP1、KEL、KIF5B、KIT、KLF4、KLHL6、KMT2A、KMT2A(MLL)、KMT2B、KMT2C、KMT2C(MLL3)、KMT2D、KMT2D(MLL2)、KNSTRN、KRAS、LAMP1、LATS1、LATS2、LEF1、LMO1、LRP1B、LRRK2、LTK、LYN、LZTR1、MAF、MAFB、MAGED1、MAGI2、MALT1、MAP2K1、MAP2K1(MEK1)、MAP2K2、MAP2K2(MEK2)、MAP2K4、MAP3、MAP3K1、MAP3K13、MAP3K14、MAP3K6、MAP3K7、MAPK1、MAPK3、MAPKAP1、MAX、MCL1、MDC1、MDM2、MDM4、MED12、MEF2B、MEF2C、MEK1、MEN1、MERTK、MET、MGA、MIB1、MITF、MKI67、MKNK1、MLH1、MLLT3、MPL、MRE 11A、MRE11A、MSH2、MSH3、MSH6、MSI1、MSI2、MST1、MST1R、MTAP、MTOR、MUTYH、MYC、MYCL、MYCL(MYC L1)、MYCL(MYCL1)、MYCL1、MYCN、MYD88、MYO18A、MYOD1、NBN、NCOA3、NCOR1、NCOR2、NCSTN、NEGR1、NF1、NF2、NFE2L2、NFKBIA、NKX2-1、NKX3-1、NOD1、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、NPM1、NRAS、NRG1、NSD1、NT5C2、NTHL1、NTRK1、NTRK2、NTRK3、NUF2、NUP93、NUP98、P2RY8、PAG1、PAK1、PAK3、PAK7、PALB2、PARK2、PARP1、PARP2、PARP3、PASK、PAX3、PAX5、PAX7、PBRM1、PC、PCBP1、PCLO、PDCD1、PDCD1(PD-1)、PDCD11、PDCD1LG2、PDCD1LG2(PD-L2)、PDGFRA、PDGFRB、PDK1、
【0202】
PDPK1、PGR、PHF6、PHOX2B、PIK3C2B、PIK3C2G、PIK3C3、PIK3CA、PIK3CB、PIK3CD、PIK3CG、PIK3R1、PIK3R2、PIK3R3、PIM1、PLCG2、PLK2、PMAIP1、PMS1、PMS2、PNRC1、POLD1、POLE、POT1、PPARG、PPM1D、PPP2、PPP2R1A、PPP2R2A、PPP4R2、PPP6C、PRDM1、PRDM14、PREX2、PRKAR1A、PRKCI、PRKD1、PRKDC、PRSS8、PTCH1、PTEN、PTP4A1、PTPN11、PTPN2、PTPN6(SHP-1)、PTPRD、PTPRO、PTPRS、PTPRT、QKI、R1A、RAB35、RAC1、RAC2、RAD21、RAD50、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD52、RAD54L、RAF1、RANBP2、RARA、RASA1、RASGEF1A、RB1、RBM10、RECQL、RECQL4、REL、RELN、RET、RFWD2、RHEB、RHOA、RICTOR、RIT1、RNF43、ROS1、RPS6KA4、RPS6KB1、RPS6KB2、RPTOR、RRAGC、RRAS、RRAS2、RTEL1、RUNX1、RUNX1T1、RXRA、RYBP、S1PR2、SDHA、SDHAF2、SDHB、SDHC、SDHD、SERP2、SESN1、SESN2、SESN3、SETBP1、SETD2、SETD8、SF3B1、SGK1、SH2B3、SH2D1A、SHOC2、SHQ1、SLIT2、SLX4、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMARCA1、SMARCA4、SMARCB1、SMARCD1、SMC1A、SMC3、SMO、SMYD3、SNCAIP、SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOS1、SOX10、SOX17、SOX2、SOX9、SPEN、SPOP、SPRED1、SPTA1、SRC、SRSF2、STAG2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5B、STAT6、STK11、STK19、STK40、SUFU、SUZ12、SYK、TAF1、TAP1、TAP2、TBL1XR1、TBX3、TCEB1、TCF3、TCF3(E2A)、TCF7L2、TCL1A(TCL1)、TEK、TERC、TERT、TERTプロモーター、TET1、TET2、TFRC、TGFBR1、TGFBR2、TIPARP、TLL2、TMEM127、TMEM30A、TMPRSS2、TMSB4XP8(TMSL3)、TNFAIP3、TNFRSF11A、TNFRSF14、TNFRSF17、TOP1、TOP2A、TP53、TP53BP1、TP63、TRAF2、TRAF3、TRAF5、TRAF7、TSC1、TSC2、TSHR、TUSC3、TYK2、TYRO3、U2AF1、U2AF2、UPF1、VEGFA、VHL、VTCN1、WDR90、WHSC1、WHSC1(MMSETまたはNSD2)、WHSC1L1、WISP3、WT1、WWTR1、XBP1、XIAP、XPO1、XRCC2、YAP1、YES1、YY1AP1、ZBTB2、ZFHX3、ZMYM3、ZNF217、ZNF24(ZSCAN3)、ZNF703、ZRSR2およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される1以上の遺伝子を含む。
【0203】
別の実施態様において、ゲノムプロファイリングアッセイは、ABL1、12B、ABL2、ACTB、ACVR1、ACVR1B、AGO2、AKT1、AKT2、AKT3、ALK、ALOX、ALOX12B、AMER1、AMER1(FAM123BまたはWTX)、AMER1(FAM123B)、ANKRD11、APC、APH1A、AR、ARAF、ARFRP1、ARHGAP26(GRAF)、ARID1A、ARID1B、ARID2、ARID5B、ARv7、ASMTL、ASXL1、ASXL2、ATM、ATR、ATRX、AURKA、AURKB、AXIN1、AXIN2、AXL、B2M、BABAM1、BAP1、BARD1、BBC3、BCL10、BCL11B、BCL2、BCL2L1、BCL2L11、BCL2L2、BCL6、BCL7A、BCOR、BCORL1、BIRC3、BLM、BMPR1A、BRAF、BRCA1、BRCA2、BRD4、BRIP1、BRIP1(BACH1)、BRSK1、BTG1、BTG2、BTK、BTLA、C11orf 30(EMSY)、C11orf30、C11orf30(EMSY)、CAD、CALR、CARD11、CARM1、CASP8、
【0204】
CBFB、CBL、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CCT6B、CD22、CD274、CD274(PD-L1)、CD276、CD36、CD58、CD70、CD79A、CD79B、CDC42、CDC73、CDH1、CDK12、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2Ap14ARF、CDKN2Ap16INK4A、CDKN2B、CDKN2C、CEBPA、CENPA、CHD2、CHD4、CHEK1、CHEK2、CIC、CIITA、CKS1B、CPS1、CREBBP、CRKL、CRLF2、CSDE1、CSF1R、CSF3R、CTCF、CTLA-4、CTNN B1、CTNNA1、CTNNB1、CUL3、CUL4A、CUX1、CXCR4、CYLD、CYP17A1、CYSLTR2、DAXX、DCUN1D1、DDR1、DDR2、DDX3X、DH2、DICER1、DIS3、DNAJB1、DNM2、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、DOT1L、DROSHA、DTX1、DUSP2、DUSP4、DUSP9、E2F3、EBF1、ECT2L、EED、EGFL7、EGFR、EIF1AX、EIF4A2、EIF4E、ELF3、ELP2、EML4、EML4-ALK、EP300、EPAS1、EPCAM、EPHA3、EPHA5、EPHA7、EPHB1、EPHB4、ERBB2、ERBB3、ERBB4、ERCC1、ERCC2、ERCC3、ERCC4、ERCC5、ERF、ERG、ERRFI1、ERRFl1、ESR1、ETS1、ETV1、ETV4、ETV5、ETV6、EWSR1、EXOSC6、EZH1、EZH2、FAF1、FAM175A、FAM46C、FAM58A、FANCA、FANCC、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FANCI、FANCL、FAS、FAS(TNFRSF6)、FAT1、FBXO11、FBXO31、FBXW7、FGF1、FGF10、FGF12、FGF14、FGF19、FGF2、FGF23、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FH、FHIT、FLCN、FLI1、FLT1、FLT3、FLT4、FLYWCH1、FOXA1、FOXL2、FOXO1、FOXO3、FOXP1、FRS2、FUBP1、FYN、GABRA6、GADD45B、GATA1、GATA2、GATA3、GATA4、GATA6、GEN1、GID4(C17orf 39)、GID4(C17orf39)、GLI1、GLl1、GNA11、GNA12、GNA13、GNAQ、GNAS、GPR124、GPS2、GREM1、GRIN2A、GRM3、GSK3B、GTSE1、H3F3A、H3F3B、H3F3C、HDAC1、HDAC4、HDAC7、ヘッジホッグ、HER-2/NEU;ERBB2、HGF、HIST1H1C、HIST1H1D、HIST1H1E、HIST1H2AC、HIST1H2AG、HIST1H2AL、HIST1H2AM、HIST1H2BC、HIST1H2BD、HIST1H2BJ、HIST1H2BK、HIST1H2BO、HIST1H3A、HIST1H3B、HIST1H3C、HIST1H3D、HIST1H3E、HIST1H3F、HIST1H3G、HIST1H3H、HIST1H3I、HIST1H3J、HIST2H3C、HIST2H3D、HIST3H3、HLA-A、HLA-B、HNF1A、HOXB13、HRAS、HSD3B1、HSP90AA1、ICK、ICOSLG、ID3、IDH1、IDH2、IFNGR1、IGF1、IGF1R、IGF2、IKBKE、IKZF1、IKZF2、IKZF3、IL10、IL7R、INHA、INHBA、INPP4A、INPP4B、INPP5D(SHIP)、INPPL1、INSR、IRF1、IRF2、IRF4、IRF8、IRS1、IRS2、JAK1、JAK2、JAK3、JARID2、JUN、K14、KAT6A(MYST 3)、KAT6A(MYST3)、KDM2B、KDM4C、KDM5A、KDM5C、KDM6A、KDR、KEAP1、KEL、KIF5B、KIT、KLF4、KLHL6、KMT2A、KMT2A(MLL)、KMT2B、KMT2C、KMT2C(MLL3)、KMT2D、KMT2D(MLL2)、KNSTRN、KRAS、LAMP1、LATS1、LATS2、LEF1、LMO1、LRP1B、
【0205】
LRRK2、LTK、LYN、LZTR1、MAF、MAFB、MAGED1、MAGI2、MALT1、MAP2K1、MAP2K1(MEK1)、MAP2K2、MAP2K2(MEK2)、MAP2K4、MAP3、MAP3K1、MAP3K13、MAP3K14、MAP3K6、MAP3K7、MAPK1、MAPK3、MAPKAP1、MAX、MCL1、MDC1、MDM2、MDM4、MED12、MEF2B、MEF2C、MEK1、MEN1、MERTK、MET、MGA、MIB1、MITF、MKI67、MKNK1、MLH1、MLLT3、MPL、MRE 11A、MRE11A、MSH2、MSH3、MSH6、MSI1、MSI2、MST1、MST1R、MTAP、MTOR、MUTYH、MYC、MYCL、MYCL(MYC L1)、MYCL(MYCL1)、MYCL1、MYCN、MYD88、MYO18A、MYOD1、NBN、NCOA3、NCOR1、NCOR2、NCSTN、NEGR1、NF1、NF2、NFE2L2、NFKBIA、NKX2-1、NKX3-1、NOD1、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、NPM1、NRAS、NRG1、NSD1、NT5C2、NTHL1、NTRK1、NTRK2、NTRK3、NUF2、NUP93、NUP98、P2RY8、PAG1、PAK1、PAK3、PAK7、PALB2、PARK2、PARP1、PARP2、PARP3、PASK、PAX3、PAX5、PAX7、PBRM1、PC、PCBP1、PCLO、PDCD1、PDCD1(PD-1)、PDCD11、PDCD1LG2、PDCD1LG2(PD-L2)、PDGFRA、PDGFRB、PDK1、PDPK1、PGR、PHF6、PHOX2B、PIK3C2B、PIK3C2G、PIK3C3、PIK3CA、PIK3CB、PIK3CD、PIK3CG、PIK3R1、PIK3R2、PIK3R3、PIM1、PLCG2、PLK2、PMAIP1、PMS1、PMS2、PNRC1、POLD1、POLE、POT1、PPARG、PPM1D、PPP2、PPP2R1A、PPP2R2A、PPP4R2、PPP6C、PRDM1、PRDM14、PREX2、PRKAR1A、PRKCI、PRKD1、PRKDC、PRSS8、PTCH1、PTEN、PTP4A1、PTPN11、PTPN2、PTPN6(SHP-1)、PTPRD、PTPRO、PTPRS、PTPRT、QKI、R1A、RAB35、RAC1、RAC2、RAD21、RAD50、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD52、RAD54L、RAF1、RANBP2、RARA、RASA1、RASGEF1A、RB1、RBM10、RECQL、RECQL4、REL、RELN、RET、RFWD2、RHEB、RHOA、RICTOR、RIT1、RNF43、ROS1、RPS6KA4、RPS6KB1、RPS6KB2、RPTOR、RRAGC、RRAS、RRAS2、RTEL1、RUNX1、RUNX1T1、RXRA、RYBP、S1PR2、SDHA、SDHAF2、SDHB、SDHC、SDHD、SERP2、SESN1、SESN2、SESN3、SETBP1、SETD2、SETD8、SF3B1、SGK1、SH2B3、SH2D1A、SHOC2、SHQ1、SLIT2、SLX4、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMARCA1、SMARCA4、SMARCB1、SMARCD1、SMC1A、SMC3、SMO、SMYD3、SNCAIP、SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOS1、SOX10、SOX17、SOX2、SOX9、SPEN、SPOP、SPRED1、SPTA1、SRC、SRSF2、STAG2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5B、STAT6、STK11、STK19、STK40、SUFU、SUZ12、SYK、TAF1、TAP1、TAP2、TBL1XR1、TBX3、TCEB1、TCF3、TCF3(E2A)、TCF7L2、TCL1A(TCL1)、TEK、TERC、TERT、TERTプロモーター、TET1、TET2、TFRC、TGFBR1、TGFBR2、TIPARP、TLL2、TMEM127、TMEM30A、TMPRSS2、TMSB4XP8(TMSL3)、TNFAIP3、TNFRSF11A、TNFRSF14、TNFRSF17、TOP1、TOP2A、TP53、TP53BP1、TP63、TRAF2、TRAF3、TRAF5、TRAF7、TSC1、TSC2、TSHR、TUSC3、TYK2、TYRO3、U2AF1、U2AF2、UPF1、VEGFA、VHL、VTCN1、WDR90、WHSC1、WHSC1(MMSETまたはNSD2)、WHSC1L1、WISP3、WT1、WWTR1、XBP1、XIAP、XPO1、XRCC2、YAP1、YES1、YY1AP1、ZBTB2、ZFHX3、ZMYM3、ZNF217、ZNF24(ZSCAN3)、ZNF703、ZRSR2およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも約120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190、少なくとも約200、少なくとも約210、少なくとも約220、少なくとも約230、少なくとも約240、少なくとも約250、少なくとも約260、少なくとも約270、少なくとも約280、少なくとも約290または少なくとも約300遺伝子を含む。
【0206】
別の実施態様において、ゲノムプロファイルは表2~17に記載の遺伝子から選択される1以上の遺伝子を含む。
【0207】
ある実施態様において、ゲノムプロファイリングに基づくTMB状態は、全エクソームシーケンシングまたは全ゲノムシーケンシングに基づくTMB状態と高度に相関する。本明細書において提供される証拠は、ゲノムプロファイリングアッセイ(F1CDxアッセイなど)の使用が全エクソームおよび/または全ゲノムシーケンシングアッセイと一致することを示す。これらのデータは、TMB状態の予後の質を失うことなくTMB状態を測定するより効率的な手段としてゲノムプロファイリングアッセイの使用を支持する。
【0208】
TMBは、組織生検試料、または代わりに循環腫瘍DNA(ctDNA)、cfDNA(セルフリーDNA)、および/または液体生検試料を用いて測定され得る。ctDNAは、利用可能な方法(例えばGRAIL, Inc)を用いて全エクソームもしくは全ゲノムシーケンシングまたはゲノムプロファイリングによりTMB状態を測定するために使用され得る。
【0209】
対象はTMB状態の測定および高いTMBの同定に基づいて(例えば、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合部分または抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合部分での)免疫療法に適していると同定される。いくつかの実施態様において、TMBスコアは、全エクソームシーケンシングまたは全ゲノムシーケンシングにより測定される腫瘍の非同義ミスセンス変異の総数として計算される。ある実施態様において、高いTMBは、少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、少なくとも245、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、少なくとも400、少なくとも405、少なくとも410、少なくとも415、少なくとも420、少なくとも425、少なくとも430、少なくとも435、少なくとも440、少なくとも445、少なくとも450、少なくとも455、少なくとも460、少なくとも465、少なくとも470、少なくとも475、少なくとも480、少なくとも485、少なくとも490、少なくとも495、または少なくとも500のスコアを有する。別の実施態様において、高いTMBは、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも221、少なくとも222、少なくとも223、少なくとも224、少なくとも225、少なくとも226、少なくとも227、少なくとも228、少なくとも229、少なくとも230、少なくとも231、少なくとも232、少なくとも233、少なくとも234、少なくとも235、少なくとも236、少なくとも237、少なくとも238、少なくとも239、少なくとも240、少なくとも241、少なくとも242、少なくとも243、少なくとも244、少なくとも245、少なくとも246、少なくとも247、少なくとも248、少なくとも249、または少なくとも250のスコアを有する。特定の実施態様において、高いTMBは少なくとも243のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは少なくとも244のスコアを有する。いくつかの実施態様において、高いTMBは少なくとも245のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは少なくとも246のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは少なくとも247のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは少なくとも248のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは少なくとも249のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは少なくとも250のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは、200~300またはそれ以上の任意の整数のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは、210~290またはそれ以上の任意の整数のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは、220~280またはそれ以上の任意の整数のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは、230~270またはそれ以上の任意の整数のスコアを有する。他の実施態様において、高いTMBは、235~265またはそれ以上の任意の整数のスコアを有する。
【0210】
あるいは、高いTMBは絶対値ではなく、相対値であり得る。いくつかの実施態様において、対象のTMB状態は基準のTMB値と比較される。ある実施態様において、対象のTMB状態は、基準のTMB値の最も高いフラクタイル内にある。別の実施態様において、対象のTMB状態は、基準のTMB値の最高三分位内にある。
【0211】
いくつかの実施態様において、TMB状態は、試料あたり、細胞あたり、エクソームあたり、またはDNAの長さ(例えばMb)あたりの変異数として表される。いくつかの実施態様において、腫瘍が少なくとも約50変異/腫瘍、少なくとも約55変異/腫瘍、少なくとも約60変異/腫瘍、少なくとも約65変異/腫瘍、少なくとも約70変異/腫瘍、少なくとも約75変異/腫瘍、少なくとも約80変異/腫瘍、少なくとも約85変異/腫瘍、少なくとも約90変異/腫瘍、少なくとも約95変異/腫瘍、少なくとも約100変異/腫瘍、少なくとも約105変異/腫瘍、少なくとも約110変異/腫瘍、少なくとも約115変異/腫瘍、または少なくとも約120変異/腫瘍を有する場合、腫瘍は高いTMB状態を有する。いくつかの実施態様において、腫瘍が少なくとも約125変異/腫瘍、少なくとも約150変異/腫瘍、少なくとも約175変異/腫瘍、少なくとも約200変異/腫瘍、少なくとも約225変異/腫瘍、少なくとも約250変異/腫瘍、少なくとも約275変異/腫瘍、少なくとも約300変異/腫瘍、少なくとも約350変異/腫瘍、少なくとも約400変異/腫瘍、または少なくとも約500変異/腫瘍を有する場合、腫瘍は高いTMB状態を有する。ある特定の実施態様において、腫瘍が少なくとも約100変異/腫瘍を有する場合、腫瘍は高いTMB状態を有する。
【0212】
いくつかの実施態様において、腫瘍が遺伝子(例えばTMBアッセイにより配列決定されたゲノム、例えばFOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標)アッセイにより配列決定されたゲノム)の1メガベースあたり少なくとも約5変異(変異/Mb)、少なくとも約6変異/Mb、少なくとも約7変異/Mb、少なくとも約8変異/Mb、少なくとも約9変異/Mb、少なくとも約10変異/Mb、少なくとも約11変異/Mb、少なくとも約12変異/Mb、少なくとも約13変異/Mb、少なくとも約14変異/Mb、少なくとも約15変異/Mb、少なくとも約20変異/Mb、少なくとも約25変異/Mb、少なくとも約30変異/Mb、少なくとも約35変異/Mb、少なくとも約40変異/Mb、少なくとも約45変異/Mb、少なくとも約50変異/Mb、少なくとも約75変異/Mb、または少なくとも約100変異/Mbを有する場合、腫瘍は高いTMB状態を有する。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約5変異/Mbを有する場合、腫瘍は高いTMB状態を有する。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約10変異/Mbを有する場合、腫瘍は高いTMB状態を有する。いくつかの実施態様において、腫瘍が少なくとも約11変異/Mbを有する場合、腫瘍は高いTMB状態を有する。いくつかの実施態様において、腫瘍が少なくとも約12変異/Mbを有する場合、腫瘍は高いTMB状態を有する。いくつかの実施態様において、腫瘍が少なくとも約13変異/Mbを有する場合、腫瘍は高いTMB状態を有する。いくつかの実施態様において、腫瘍が少なくとも約14変異/Mbを有する場合、腫瘍は高いTMB状態を有する。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約15変異/Mbを有する場合、腫瘍は高いTMB状態を有する。
【0213】
変異数は腫瘍の種類および他の方法(Q4およびQ5参照)により変動するため、「高TMB」および「低TMB」に関連する値は腫瘍の種類により異なり得る。
【0214】
PD-L1状態
TMB状態は、治療(特に、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などの免疫腫瘍物質での処置)に対する腫瘍応答を予測する手段として単独で、または他の因子と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施態様において、腫瘍のTMB状態のみを用いて(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体での)免疫療法に応答する可能性が高い腫瘍を有する患者を同定する。他の実施態様において、PD-L1状態およびTMB状態を用いて(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体での)免疫療法に応答する可能性が高い腫瘍を有する患者を同定する。
【0215】
対象の腫瘍のPD-L1状態は、あらゆる組成物を投与する前、または本明細書に開示されているあらゆる方法を用いる前に測定され得る。PD-L1発現は、当分野で公知の任意の方法により決定され得る。
【0216】
ある実施態様において、PD-L1発現を評価するために検査用組織試料が治療を必要とする患者から取得され得る。別の実施態様において、PD-L1発現の評価は、検査用組織試料を取得することなく達成され得る。いくつかの実施態様において、適切な患者を選択することは、(i)任意で組織のがんを有する患者から得た検査用組織試料を提供すること、ここで検査用組織試料は腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤炎症細胞を含む;および(ii)細胞表面上にPD-L1を発現する検査用組織試料中の細胞の割合が所定の閾値よりも高いという評価に基づいて、細胞表面上にPD-L1を発現する検査用組織試料中の細胞の割合を評価することを含む。
【0217】
しかしながら、検査用組織試料中のPD-L1発現の測定を含む任意の方法において、患者から得た検査用組織試料の提供を含む工程は任意の工程であることが理解されるはずである。ある実施態様において、細胞表面上にPD-L1を発現する検査用組織試料中の細胞を同定するか、または該細胞の数もしくは割合を決定するために「測定する」または「評価する」工程は、PD-L1発現をアッセイする形質転換による方法(transformative method)により(例えば、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイまたはIHCアッセイを実施することにより)実施されることが理解されるはずである。ある他の実施態様において、形質転換による工程は含まれず、PD-L1発現は、例えば実験室からの検査結果の報告を検討することにより評価される。ある実施態様において、PD-L1発現の評価までの方法およびPD-L1発現の評価を含む方法の工程は、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の治療に適した候補を選択するのに使用するために医師または他の医療提供者に提供され得る中間結果を提供する。ある実施態様において、中間結果を提供する工程は、医師または医師の指示下で行動する人によって実施される。他の実施態様において、これらの工程は、独立研究所または独立している人(検査技師など)により実施される。
【0218】
本方法のいずれかのある実施態様において、PD-L1を発現する細胞の割合は、PD-L1 RNAの存在を決定するアッセイを実施することにより評価される。さらなる実施態様において、PD-L1 RNAの存在は、RT-PCR、インサイチュハイブリダイゼーションまたはRNaseプロテクションにより決定される。他の実施態様において、PD-L1を発現する細胞の割合は、PD-L1ポリペプチドの存在を決定するアッセイを実施することにより評価される。さらなる実施態様において、PD-L1ポリペプチドの存在は、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、インビボイメージングまたはフローサイトメトリーにより決定される。いくつかの実施態様において、PD-L1発現はIHCによりアッセイされる。これらのあらゆる方法の他の実施態様において、PD-L1の細胞表面発現は、例えばIHCまたはインビボイメージングを用いてアッセイされる。
【0219】
イメージング技術は、がんの研究および処置に重要な手段を提供している。分子イメージングシステムの最近の発展(ポジトロン放出断層撮影(PET)、単光子放出コンピューター断層撮影(SPECT)、蛍光反射イメージング(fluorescence reflectance imaging;FRI)、蛍光媒介断層撮影(fluorescence-mediated tomography;FMT)、生物発光イメージング(BLI)、レーザー走査型共焦点顕微鏡(LSCM)および多光子顕微鏡(MPM)を含む)により、がん研究におけるこれらの技術のさらに多くの使用が想定される。これらの分子イメージングシステムのいくつかにより、臨床医は腫瘍が体内のどこに位置しているかを見るだけでなく、腫瘍の挙動および/または治療薬に対する応答性に影響を与える特定の分子、細胞および生物学的プロセスの発現および活性を可視化することが可能になる(Condeelis and Weissleder, "In vivo imaging in cancer," Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 2(12):a003848 (2010))。抗体の特異性は、PETの感度および分解能と併用して、組織試料中の抗原の発現をモニタリングおよびアッセイするのに特に魅力的なimmunoPETイメージングを構成する(McCabe and Wu, "Positive progress in immunoPET-not just a coincidence," Cancer Biother. Radiopharm. 25(3):253-61 (2010); Olafsen et al., "ImmunoPET imaging of B-cell lymphoma using 124I-anti-CD20 scFv dimers (diabodies)," Protein Eng. Des. Sel. 23(4):243-9 (2010))。本方法のいずれかのある実施態様において、PD-L1発現は、immunoPETイメージングによりアッセイされる。本方法のいずれかのある実施態様において、PD-L1を発現する検査用組織試料中の細胞の割合は、検査用組織試料中の細胞の表面上のPD-L1ポリペプチドの存在を決定するアッセイを実施することにより評価される。ある実施態様において、検査用組織試料はFFPE組織試料である。他の実施態様において、PD-L1ポリペプチドの存在はIHCアッセイにより決定される。さらなる実施態様において、IHCアッセイは自動化されたプロセスを用いて実施される。いくつかの実施態様において、IHCアッセイは、PD-L1ポリペプチドに結合する抗PD-L1モノクローナル抗体を用いて実施される。ある実施態様において、抗PD-L1モノクローナル抗体は、28-8、28-1、28-12、29-8、5H1およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。WO/2013/173223を参照、これは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0220】
本方法のある実施態様において、自動化されたIHC法を用いてFFPE組織標本中の細胞表面上のPD-L1発現をアッセイする。ヒトPD-L1抗原の存在は、抗体またはその部分とヒトPD-L1との複合体の形成を可能にする条件下において検査用試料および陰性対照試料(例えば正常組織)をヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体に接触させることにより検査用組織試料において測定され得る。ある実施態様において、検査用組織試料および対照組織試料はFFPE試料である。次に、複合体の形成が検出され、検査用試料と陰性対照試料との間の複合体形成の差異は試料中のヒトPD-L1抗原の存在を示す。様々な方法がPD-L1発現を定量化するために使用される。
【0221】
特定の実施態様において、自動化されたIHC法は以下を含む:(a)オートステイナー中にマウントされた組織切片を脱パラフィンおよび再水和する;(b)110℃まで10分間加熱されたデクローキングチャンバー(decloaking chamber)およびpH6緩衝液を用いて抗原を回収する;(c)オートステイナー上に試薬をセットする;および(d)組織標本中の内在性ペルオキシダーゼを中和する工程;スライド上の非特異的なタンパク質結合部位をブロックする工程;スライドを一次抗体とともにインキュベートする工程;一次後のブロッキング物質(post primary blocking agent)とともにインキュベートする工程;NovoLink Polymerとともにインキュベートする工程;発色物質を添加し、展開する工程;および、ヘマトキシリンを用いて対比染色する工程を含むようにオートステイナーを実行する。
【0222】
腫瘍組織試料中のPD-L1発現を評価するために、病理学者は顕微鏡下で各視野における膜PD-L1+腫瘍細胞の数を調べ、陽性の細胞の割合を胸算用し、それらを平均して最終的な割合とする。種々の染色強度は、0/陰性、l+/弱い、2+/中程度、および3+/強いと定義される。通常、割合の値は最初に0および3+のバケット(bucket)に割り当てられ、次に中間の1+および2+の強度が考慮される。非常に不均一な組織の場合、標本はゾーンに分割され、各ゾーンは別々にスコア化され、割合の値の単一のセットに統合される。種々の染色強度の陰性細胞および陽性細胞の割合を各領域から決定し、中央値を各ゾーンに与える。最終的な割合の値が、各染色強度のカテゴリー(陰性、1+、2+および3+)のために組織に与えられる。全ての染色強度の合計は100%となる必要がある。ある実施態様において、PD-L1陽性である必要がある細胞数の閾値は、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175、または少なくとも約200細胞である。ある実施態様において、PD-L1陽性である必要がある細胞数の閾値は、少なくとも約100細胞である。
【0223】
染色はまた、腫瘍浸潤炎症細胞(マクロファージおよびリンパ球など)においても評価される。ほとんどの場合、大部分のマクロファージにおいて染色が観察されるため、マクロファージは内部陽性対照として役立つ。3+の強度で染色する必要はないが、マクロファージが染色しないことはあらゆる技術的失敗を除外するために考慮されるべきである。マクロファージおよびリンパ球は細胞膜染色について評価され、各細胞のカテゴリーの陽性または陰性としてのみ全ての試料について記録される。染色はまた、外部/内部腫瘍免疫細胞の指定に従って特徴付けられる。「内部」とは、免疫細胞が腫瘍組織内および/または腫瘍細胞の間に物理的にインターカレートされることなく腫瘍領域の境界上にあることを意味する。「外部」とは、腫瘍との物理的な関連がないことを意味し、免疫細胞は結合組織または関連する任意の隣接組織に関連する末梢において見出される。
【0224】
これらのスコア化法のある実施態様において、試料は独立して実施している2人の病理学者によってスコア化され、次いでスコアが統合される。ある他の実施態様において、陽性細胞および陰性細胞の同定は適切なソフトウェアを用いてスコア化される。
【0225】
ヒストスコア(histoscore)は、IHCデータのより定量的な尺度として使用される。ヒストスコアは以下のように計算される:
ヒストスコア=[(%腫瘍x1(低い強度))+(%腫瘍x2(中程度の強度))+(%腫瘍x3(高い強度))]
【0226】
ヒストスコアを決定するために、病理学者は標本内の各強度カテゴリーにおける染色細胞の割合を概算する。ほとんどのバイオマーカーの発現は不均一であるため、ヒストスコアは発現全体をより正確に表す。最終的なヒストスコアの範囲は0(発現なし)~300(最大の発現)である。
【0227】
検査用組織試料IHC中のPD-L1発現を定量化する代替手段は、炎症の密度に腫瘍浸潤炎症細胞によるPD-L1発現の割合を乗じたものとして定義される修正炎症スコア(adjusted inflammation score;AIS)を決定することである(Taube et al., "Colocalization of inflammatory response with B7-h1 expression in human melanocytic lesions supports an adaptive resistance mechanism of immune escape," Sci. Transl. Med. 4(127):127ra37 (2012))。
【0228】
ある実施態様において、腫瘍のPD-L1発現レベルは、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%である。別の実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は少なくとも約1%である。他の実施態様において、対象のPD-L1状態は少なくとも約5%である。ある実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は少なくとも約10%である。ある実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は少なくとも約25%である。特定の実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は少なくとも約50%である。
【0229】
本明細書における「PD-L1陽性」は、「少なくとも約1%のPD-L1発現」と互換的に使用され得る。したがって、ある実施態様において、PD-L1陽性腫瘍は、自動化されたIHCによって測定される、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%のPD-L1を発現する腫瘍細胞を有し得る。ある実施態様において、「PD-L1陽性」は、細胞表面上にPD-L1を発現する少なくとも100個の細胞が存在することを意味する。
【0230】
ある実施態様において、高いTMBを有するPD-L1陽性腫瘍は、高いTMBのみを有する腫瘍、PD-L1陽性発現のみを有する腫瘍、またはいずれも有しない腫瘍よりも抗PD-1抗体での治療に対する応答の可能性が高い。ある実施態様において、腫瘍は、少なくとも約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%のPD-L1発現を有する。特定の実施態様において、50%以上のPD-L1発現および高いTMB状態を有する腫瘍は、高いTMBのみを有する腫瘍、50%以上のPD-L1発現のみを有する腫瘍、またはいずれも有しない腫瘍よりも抗PD-1抗体での治療に応答する可能性が高い。
【0231】
ある実施態様において、本開示における免疫療法(例えば抗PD-1抗体処置)に適した対象の腫瘍は、PD-L1を発現しない(1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、または5%未満の膜性PD-L1)。いくつかの実施態様において、本開示の方法はPD-L1発現とは無関係である。
【0232】
MSI状態
TMB状態は、治療(特に抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などの免疫腫瘍物質での処置)に対する腫瘍応答を予測する手段として、単独または他の因子(例えばMSI状態)と組み合わせて使用され得る。ある実施態様において、MSI状態はTMB状態の一部である。他の実施態様において、MSI状態はTMB状態とは別に測定される。
【0233】
マイクロサテライト不安定性は、DNAミスマッチ修復(MMR)の障害に起因する遺伝子高変異性の状態である。MSIの存在は、MMRが正常に機能していないという表現型の証拠である。ほとんどの場合、MSI腫瘍の不安定性の遺伝的基盤は、5つのヒトMMR遺伝子(MSH2、MLH1、MSH6、PMS2およびPMS1)のいずれか1つの遺伝性生殖細胞変化である。ある実施態様において、腫瘍(例えば結腸腫瘍)処置を受ける対象は、高度のマイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有し、遺伝子MSH2、MLH1、MSH6、PMS2またはPMS1において少なくとも1つの変異を有する。他の実施態様において、対照群において腫瘍処置を受ける対象は、マイクロサテライト不安定性を有さず(MSSまたはMSI安定)、遺伝子MSH2、MLH1、MSH6、PMS2およびPMS1に変異を有さない。
【0234】
ある実施態様において、免疫療法に適した対象は高いTMB状態およびMSI-H腫瘍を有する。本明細書において、MSI-H腫瘍は、少なくとも約30%よりも高い不安定なMSIバイオマーカーを有する腫瘍を意味する。いくつかの実施態様において、腫瘍は大腸がんに由来する。いくつかの実施態様において、腫瘍は、生殖細胞変化が少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つのMMR遺伝子で検出されている場合、MSI-Hを有する大腸がんである。他の実施態様において、腫瘍は、生殖細胞変化が5つ以上のMMR遺伝子の少なくとも30%で検出されている場合、MSI-Hを有する大腸がんである。いくつかの実施態様において、MMR遺伝子の生殖細胞変化はポリメラーゼ連鎖反応により測定される。他の実施態様において、腫瘍は、DNA MMR遺伝子によりコードされた少なくとも1つのタンパク質が腫瘍において検出されない場合、MSI-Hを有する大腸がんである。いくつかの実施態様において、DNA MMR遺伝子によりコードされた少なくとも1つのタンパク質は免疫組織化学により検出される。
【0235】
本開示の処置方法
本開示は、対象に免疫療法を施すことを含む、高い腫瘍変異量(TMB)状態を有する腫瘍に罹患している対象を処置する方法に関する。いくつかの実施態様において、免疫療法は、抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、TIGIT、TIM3、NKG2a、OX40、ICOS、MICA、CD137、KIR、TGFβ、IL-10、IL-8、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CD27、GITRおよびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択されるタンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを対象に投与することを含む、高いTMB状態を有する腫瘍に罹患している対象を処置することを含む。ある実施態様において、本方法は、PD-1またはPD-L1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを対象に投与することを含む、高いTMB状態を有する腫瘍に罹患している対象を処置することを含む。
【0236】
特定の種類のがんは変異の頻度が高いため、高いTMBを有する(Alexandrov et al., Nature (2013) 500:415-421)。高いTMBを有するがんの限定されない例には、黒色腫、肺がん、膀胱がんおよび消化管がんが含まれる。いくつかの実施態様において、腫瘍は肺がんである。ある実施態様において、肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)である。ある実施態様において、NSCLCは扁平上皮組織構造を有する。別の実施態様において、NSCLCは非扁平上皮組織構造を有する。他の実施態様において、腫瘍は、腎細胞がん、卵巣がん、大腸がん、消化管がん、食道がん、膀胱がん、肺がんおよび黒色腫から選択される。本明細書に開示される方法は固形腫瘍および血液がんを包含することが理解されるはずである。
【0237】
本明細書に開示される処置方法は、腫瘍に罹患している対象(特に、高いTMBを有する腫瘍を有する対象)に臨床応答の改善および/または臨床的有効性を与え得る。高いTMBはネオアンチゲン量(すなわちネオアンチゲンの数)およびT細胞反応性に関連し得、したがって免疫介在性抗腫瘍応答に関連し得る。したがって、高いTMBは、(例えば現在の標準的な治療法と比較して)抗PD-1抗体および/または抗PD-L1抗体での治療から恩恵を受ける可能性が高い腫瘍(およびそのような腫瘍を有する患者)を同定するために、単独または他の因子と組み合わせて使用され得る因子である。
【0238】
ある実施態様において、対象は、投与後少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、または少なくとも約5年の無憎悪生存期間を示す。別の実施態様において、対象は、投与後少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、または少なくとも約5年の全生存期間を示す。さらに別の実施態様において、対象は、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の奏効率を示す。
【0239】
抗PD-1/抗PD-L1処置
本開示のある態様は、対象に免疫療法を施すことを含む、高い腫瘍変異量(TMB)状態を有する腫瘍に罹患している対象を処置する方法に関し、ここで免疫療法は抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を含む。本方法は、対象から得られた生体試料のTMB状態を測定することをさらに含み得る。さらに、本開示は、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を、(例えば高いTMBの測定値に基づいて)そのような治療に適していると同定された対象に投与することを想定する。
【0240】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1との結合についてニボルマブと交差競合する。別の実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブと同一のエピトープに結合する。特定の実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。別の実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。さらなる抗PD-1抗体が本明細書の他の箇所に記載されている。他の実施態様において、本開示に有用な抗PD-1抗体は本明細書の他の箇所に開示されている。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体は抗PD-1抗体に取って代わり得る。本開示の方法に有用な例示的な抗PD-L1抗体は本明細書の他の箇所に記載されている。
【0241】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはそれらの抗原結合部分である。他の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、ヒトIgG1アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む。
【0242】
本開示に有用な抗PD-1抗体
当分野で公知の抗PD-1抗体が、本明細書に記載の組成物および方法に使用され得る。PD-1に高い親和性で特異的に結合する様々なヒトモノクローナル抗体が米国特許第8,008,449号に開示されている。米国特許第8,008,449号に開示されている抗PD-1ヒト抗体は、以下の特徴のうち1つ以上を示すことが実証されている:(a)ビアコアバイオセンサーシステムを用いて表面プラズモン共鳴により決定される1x10-7M以下のKDでヒトPD-1に結合する;(b)ヒトCD28、CTLA-4またはICOSに実質的に結合しない;(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてインターフェロンγ産生を増加させる;(e)MLRアッセイにおいてIL-2分泌を増加させる;(f)ヒトPD-1およびカニクイザルPD-1に結合する;(g)PD-L1および/またはPD-L2のPD-1への結合を阻害する;(h)抗原特異的メモリー応答を刺激する;(i)抗体応答を刺激する;および(j)インビボでの腫瘍細胞増殖を阻害する。本開示に使用可能な抗PD-1抗体はヒトPD-1に特異的に結合するモノクローナル抗体を含み、上記の特徴のうち少なくとも1つ(いくつかの実施態様において、少なくとも5つ)を示す。
【0243】
他の抗PD-1モノクローナル抗体は、例えば米国特許第6,808,710号、第7,488,802号、第8,168,757号および第8,354,509号、米国特許出願公開第2016/0272708号、ならびにPCT出願WO2012/145493、WO2008/156712、WO2015/112900、WO2012/145493、WO2015/112800、WO2014/206107、WO2015/35606、WO2015/085847、WO2014/179664、WO2017/020291、WO2017/020858、WO2016/197367、WO2017/024515、WO2017/025051、WO2017/123557、WO2016/106159、WO2014/194302、WO2017/040790、WO2017/133540、WO2017/132827、WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/106061、WO2017/19846、WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/132825およびWO2017/133540に記載されており、これらはそれぞれが参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0244】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(オプジーボ(登録商標)、5C4、BMS-936558、MDX-1106およびONO-4538としても知られている)、ペンブロリズマブ(Merck;キイトルーダ(登録商標)、ランブロリズマブおよびMK-3475としても知られている;WO2008/156712参照)、PDR001(Novartis;WO2015/112900参照)、MEDI-0680(AstraZeneca;AMP-514としても知られている;WO2012/145493参照)、セミプリマブ(Regeneron;REGN-2810としても知られている;WO2015/112800参照)、JS001(TAIZHOU JUNSHI PHARMA;Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)参照)、BGB-A317(Beigene;WO2015/35606およびUS2015/0079109参照)、INCSHR1210(Jiangsu Hengrui Medicine;SHR-1210としても知られている;WO2015/085847参照;Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017))、TSR-042(Tesaro Biopharmaceutical;ANB011としても知られている;WO2014/179664参照)、GLS-010(Wuxi/Harbin Gloria Pharmaceuticals;WBP3055としても知られている;Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)参照)、AM-0001(Armo)、STI-1110(Sorrento Therapeutics;WO2014/194302参照)、AGEN2034(Agenus;WO2017/040790参照)、MGA012(Macrogenics、WO2017/19846参照)、およびIBI308(Innovent;WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/132825、およびWO2017/133540参照)からなる群から選択される。
【0245】
ある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。ニボルマブは、PD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との相互作用を選択的に妨げ、それにより抗腫瘍T細胞機能の下方制御を遮断する完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害抗体である(米国特許第8,008,449号;Wang et al., 2014 Cancer Immunol Res. 2(9):846-56)。
【0246】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、配列番号11に記載の配列を有する(および/または配列番号11の31~35位のアミノ酸、配列番号11の55~66位のアミノ酸、および配列番号11の99~102位のアミノ酸を含む3つのCDRを有する)アミノ酸と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号12と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列に記載の配列を有する(および/または配列番号12の24~34位のアミノ酸、配列番号12の50~56位のアミノ酸、および配列番号12の89~97位のアミノ酸を含む3つのCDRを有する)アミノ酸を含む軽鎖可変領域を含む。
【0247】
重鎖:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSS(配列番号11)。CDRに下線を引いた。
【0248】
軽鎖:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIK(配列番号12)。CDRに下線を引いた。
【0249】
別の実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。ペンブロリズマブは、ヒト細胞表面受容体PD-1(プログラム死-1またはプログラム細胞死-1)に対するヒト化モノクローナルIgG4(S228P)抗体である。ペンブロリズマブは、例えば米国特許第8,354,509号および第8,900,587号に記載されている。
【0250】
本開示の組成物および方法に使用可能な抗PD-1抗体には、ヒトPD-1に特異的に結合し、ヒトPD-1との結合について本明細書に開示される任意の抗PD-1抗体(例えばニボルマブ、例えば米国特許第8,008,449号および第8,779,105号;WO2013/173223参照)と交差競合する単離抗体が含まれる。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は、本明細書に記載の抗PD-1抗体のいずれか(例えばニボルマブ)と同一のエピトープに結合する。抗体が抗原との結合について交差競合する能力は、これらのモノクローナル抗体が抗原の同一のエピトープ領域に結合し、他の交差競合する抗体とその特定のエピトープ領域との結合を立体的に妨げることを示す。これらの交差競合する抗体はPD-1の同一のエピトープ領域に結合するため、基準抗体(例えばニボルマブ)と非常に類似した機能的性質を有することが予想される。交差競合する抗体は、標準的なPD-1結合アッセイ(ビアコア分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーなど)においてニボルマブと交差競合する能力に基づいて容易に同定され得る(例えば、WO2013/173223参照)。
【0251】
ある実施態様において、ヒトPD-1との結合についてヒトPD-1抗体(ニボルマブ)と交差競合する抗体、またはヒトPD-1抗体(ニボルマブ)と同一のエピトープ領域に結合する抗体はモノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合する抗体は、キメラ抗体、改変抗体、またはヒト化もしくはヒト抗体である。そのようなキメラ、改変、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当分野で周知の方法により調製および単離され得る。
【0252】
本開示の組成物および方法に使用可能な抗PD-1抗体には、上記抗体の抗原結合部分が含まれる。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントにより発揮され得ることが十分に実証されている。
【0253】
本開示の組成物および方法における使用に適した抗PD-1抗体は、高い特異性および親和性でPD-1に結合し、PD-L1および/またはPD-L2の結合を遮断し、PD-1のシグナル伝達経路の免疫抑制効果を阻害する抗体である。本明細書に開示される組成物または方法のいずれかにおいて、抗PD-1「抗体」には、PD-1受容体に結合し、リガンド結合の阻害および免疫系の上方制御において抗体全体と類似の機能的性質を示す抗原結合部分またはフラグメントが含まれる。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD-1との結合についてニボルマブと交差競合する。
【0254】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は、2、3、4、5、6、7または8週間毎に1回、0.1mg/kg~20.0mg/kg体重(例えば、2、3または4週間毎に1回、0.1mg/kg~10.0mg/kg体重)の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、2週間毎に1回、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、または10mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、3週間毎に1回、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、または10mg/kg体重の用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、3週間毎に約1回、約5mg/kg体重の用量で投与される。別の実施態様において、抗PD-1抗体(例えばニボルマブ)は、2週間毎に約1回、約3mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体(例えばペンブロリズマブ)は、3週間毎に約1回、約2mg/kg体重の用量で投与される。
【0255】
本開示に有用な抗PD-1抗体は、一定用量で投与され得る。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10週間の投与間隔で、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mg、または少なくとも約550mgの一定用量で投与される。別の実施態様において、抗PD-1抗体は、約1、2、3または4週間の投与間隔で、約200mg~約800mg、約200mg~約700mg、約200mg~約600mg、約200mg~約500mgの一定用量で投与される。
【0256】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は、3週間毎に約1回、約200mgの一定用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、2週間毎に約1回、約240mgの一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、4週間毎に約1回、約480mgの一定用量で投与される。
【0257】
本開示に有用な抗PD-L1抗体
当分野で公知の抗PD-L1抗体が、本開示の組成物および方法に使用され得る。本開示の組成物および方法に有用な抗PD-L1抗体の例には、米国特許第9,580,507号に開示される抗体が含まれる。米国特許第9,580,507号に開示されている抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体は、以下の特徴のうち1つ以上を示すことが実証されている:(a)ビアコアバイオセンサーシステムを用いて表面プラズモン共鳴により決定される1x10-7M以下のKDでヒトPD-L1に結合する;(b)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を増加させる;(c)MLRアッセイにおいてインターフェロンγ産生を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてIL-2分泌を増加させる;(e)抗体応答を刺激する;および(f)T細胞エフェクター細胞および/または樹状細胞に対する制御性T細胞の効果を逆転させる。本開示に使用可能な抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体を含み、上記の特徴のうち少なくとも1つ(いくつかの実施態様において、少なくとも5つ)を示す。
【0258】
ある実施態様において、抗PD-L1抗体は、BMS-936559(12A4、MDX-1105としても知られている;例えば、米国特許第7,943,743号およびWO2013/173223参照)、アテゾリズマブ(Roche;テセントリク(登録商標);MPDL3280A、RG7446としても知られている;US8,217,149参照;Herbst et al. (2013) J Clin Oncol 31(suppl):3000も参照)、デュルバルマブ(AstraZeneca;イミフィンジ(商標)、MEDI-4736としても知られている;WO2011/066389参照)、アベルマブ(Pfizer;バベンチオ(登録商標)、MSB-0010718Cとしても知られている;WO2013/079174参照)、STI-1014(Sorrento;WO2013/181634参照)、CX-072(Cytomx;WO2016/149201参照)、KN035(3D Med/Alphamab;Zhang et al., Cell Discov. 7:3 (March 2017)参照)、LY3300054(Eli Lilly Co;例えばWO2017/034916参照)、およびCK-301(Checkpoint Therapeutics;Gorelik et al., AACR:Abstract 4606 (Apr 2016)参照)からなる群から選択される。
【0259】
ある実施態様において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ(テセントリク(登録商標))である。アテゾリズマブは、完全ヒト化IgG1モノクローナル抗PD-L1抗体である。
【0260】
ある実施態様において、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ(イミフィンジ(商標))である。デュルバルマブは、ヒトIgG1カッパモノクローナル抗PD-L1抗体である。
【0261】
ある実施態様において、抗PD-L1抗体は、アベルマブ(バベンチオ(登録商標))である。アベルマブは、ヒトIgG1ラムダモノクローナル抗PD-L1抗体である。
【0262】
本開示の組成物および方法に使用可能な抗PD-L1抗体には、ヒトPD-L1に特異的に結合し、ヒトPD-L1との結合について本明細書に開示される任意の抗PD-L1抗体(例えばアテゾリズマブ、デュルバルマブおよび/またはアベルマブ)と交差競合する単離抗体が含まれる。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に開示される抗PD-L1抗体のいずれか(例えばアテゾリズマブ、デュルバルマブおよび/またはアベルマブ)と同一のエピトープに結合する。抗体が抗原との結合について交差競合する能力は、これらの抗体が抗原の同一のエピトープ領域に結合し、他の交差競合する抗体とその特定のエピトープ領域との結合を立体的に妨げることを示す。これらの交差競合する抗体はPD-L1の同一のエピトープ領域に結合するため、基準抗体(例えばアテゾリズマブおよび/またはアベルマブ)と非常に類似した機能的性質を有することが予想される。交差競合する抗体は、標準的なPD-L1結合アッセイ(ビアコア分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーなど)においてアテゾリズマブおよび/またはアベルマブと交差競合する能力に基づいて容易に同定され得る(例えば、WO2013/173223参照)。
【0263】
ある実施態様において、ヒトPD-L1との結合についてヒトPD-L1抗体(アテゾリズマブ、デュルバルマブおよび/またはアベルマブなど)と交差競合する抗体、またはヒトPD-L1抗体(アテゾリズマブ、デュルバルマブおよび/またはアベルマブなど)と同一のエピトープ領域に結合する抗体はモノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合する抗体は、キメラ抗体、改変抗体、またはヒト化もしくはヒト抗体である。そのようなキメラ、改変、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当分野で周知の方法により調製および単離され得る。
【0264】
本開示の組成物および方法に使用可能な抗PD-L1抗体には、上記の抗体の抗原結合部分が含まれる。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントにより発揮され得ることが十分に実証されている。
【0265】
本開示の組成物および方法における使用に適した抗PD-L1抗体は、高い特異性および親和性でPD-L1に結合し、PD-1の結合を遮断し、PD-1のシグナル伝達経路の免疫抑制効果を阻害する抗体である。本明細書に開示される組成物または方法のいずれかにおいて、抗PD-L1「抗体」には、PD-L1に結合し、リガンド結合の阻害および免疫系の上方制御において抗体全体と類似の機能的性質を示す抗原結合部分またはフラグメントが含まれる。ある実施態様において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD-L1との結合についてアテゾリズマブ、デュルバルマブおよび/またはアベルマブと交差競合する。
【0266】
本開示に有用な抗PD-L1抗体は、PD-L1に特異的に結合するあらゆる抗PD-L1抗体(例えばヒトPD-1との結合についてデュルバルマブ、アベルマブまたはアテゾリズマブと交差競合する抗体、例えばデュルバルマブ、アベルマブまたはアテゾリズマブと同一のエピトープに結合する抗体)であり得る。特定の実施態様において、抗PD-L1抗体はデュルバルマブである。他の実施態様において、抗PD-L1抗体はアベルマブである。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。
【0267】
いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体は、2、3、4、5、6、7または8週間毎に約1回、約0.1mg/kg~約20.0mg/kg体重、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約16mg/kg、約17mg/kg、約18mg/kg、約19mg/kg、または約20mg/kgの用量で投与される。
【0268】
いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体は、3週間毎に約1回、約15mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-L1抗体は、2週間毎に約1回、約10mg/kg体重の用量で投与される。
【0269】
他の実施態様において、本開示に有用な抗PD-L1抗体は一定用量である。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体は、約1、2、3または4週間の投与間隔で、少なくとも約240mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約400mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mg、少なくとも約560mg、少なくとも約600mg、少なくとも約640mg、少なくとも約700mg、少なくとも720mg、少なくとも約800mg、少なくとも約880mg、少なくとも約900mg、少なくとも960mg、少なくとも約1000mg、少なくとも約1040mg、少なくとも約1100mg、少なくとも約1120mg、少なくとも約1200mg、少なくとも約1280mg、少なくとも約1300mg、少なくとも約1360mg、または少なくとも約1400mgの一定用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体は、3週間毎に約1回、約1200mgの一定用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-L1抗体は、2週間毎に約1回、約800mgの一定用量で投与される。
【0270】
抗CTLA-4抗体
本開示のある態様は、対象に免疫療法を施すことを含む、高い腫瘍変異量(TMB)状態を有する腫瘍に罹患している対象を処置する方法に関し、ここで免疫療法は抗CTLA-4抗体を含む。本方法は、対象から得られた生体試料のTMB状態を測定することをさらに含み得る。さらに、本開示は、抗CTLA-4抗体を(例えば高いTMBの測定値に基づいて)そのような治療に適していると同定された対象に投与することを想定する。
【0271】
当分野で公知の抗CTLA-4抗体が、本開示の組成物および方法に使用され得る。本開示の抗CTLA-4抗体は、CTLA-4とヒトB7受容体との相互作用を破壊するようにヒトCTLA-4に結合する。CTLA-4とB7の相互作用はCTLA-4受容体を持つT細胞の不活性化をもたらすシグナルを伝達するため、この相互作用の破壊はこのようなT細胞の活性化を効果的に誘導、強化または延長し、それにより免疫応答を誘導、増強または延長する。
【0272】
高い親和性でCTLA-4に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体が、米国特許第6,984,720号に開示されている。他の抗CTLA-4モノクローナル抗体が、例えば米国特許第5,977,318号、第6,051,227号、第6,682,736号および第7,034,121号ならびに国際出願公開WO2012/122444、WO2007/113648、WO2016/196237およびWO2000/037504に記載されており、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。米国特許第6,984,720号に開示されている抗CTLA-4ヒトモノクローナル抗体は、以下の特徴のうち1つ以上を示すことが実証されている:(a)ビアコア分析により決定される少なくとも約107M-1、または約109M-1、または約1010M-1~1011M-1またはそれ以上の平衡結合定数(Ka)により反映される結合親和性でヒトCTLA-4に特異的に結合する;(b)少なくとも約103、約104または約105m-1s-1の結合速度定数(ka);(c)少なくとも約103、約104または約105m-1s-1の解離速度定数(kd);および(d)CTLA-4とB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)との結合を阻害する。本開示に有用な抗CTLA-4抗体はヒトCTLA-4に特異的に結合するモノクローナル抗体を含み、上記の特徴のうち少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つを示す。
【0273】
ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標)、MDX-010、10D1としても知られている;米国特許第6,984,720号参照)、MK-1308(Merck)、AGEN-1884(Agenus Inc;WO2016/196237参照)、およびトレメリムマブ(AstraZeneca;チシリムマブ、CP-675,206としても知られている;WO2000/037504およびRibas, Update Cancer Ther. 2(3): 133-39 (2007)参照)からなる群から選択される。特定の実施態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。
【0274】
特定の実施態様において、抗CTLA-4抗体は、本明細書に開示される組成物および方法における使用のためのイピリムマブである。イピリムマブは、CTLA-4とそのB7リガンドとの結合を遮断し、それによりT細胞活性化を刺激し、進行性黒色腫を有する患者の全生存期間(OS)を改善する完全ヒトIgG1モノクローナル抗体である。
【0275】
特定の実施態様において、抗CTLA-4抗体はトレメリムマブである。
【0276】
特定の実施態様において、抗CTLA-4抗体はMK-1308である。
【0277】
特定の実施態様において、抗CTLA-4抗体はAGEN-1884である。
【0278】
本開示の組成物および方法に使用可能な抗CTLA-4抗体には、ヒトCTLA-4に特異的に結合し、ヒトCTLA-4との結合について本明細書に開示される任意の抗CTLA-4抗体(例えばイピリムマブおよび/またはトレメリムマブ)と交差競合する単離抗体が含まれる。いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体は、本明細書に記載の抗CTLA-4抗体のいずれか(例えばイピリムマブおよび/またはトレメリムマブ)と同一のエピトープに結合する。抗体が抗原との結合について交差競合する能力は、これらの抗体が抗原の同一のエピトープ領域に結合し、他の交差競合する抗体とその特定のエピトープ領域との結合を立体的に妨げることを示す。これらの交差競合する抗体はCTLA-4の同一のエピトープ領域に結合するため、基準抗体(例えばイピリムマブおよび/またはトレメリムマブ)と非常に類似した機能的性質を有することが予想される。交差競合する抗体は、標準的なCTLA-4結合アッセイ(ビアコア分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーなど)においてイピリムマブおよび/またはトレメリムマブと交差競合する能力に基づいて容易に同定され得る(例えば、WO2013/173223参照)。
【0279】
ある実施態様において、ヒトCTLA-4との結合についてヒトCTLA-4抗体(イピリムマブおよび/またはトレメリムマブなど)と交差競合する抗体、またはヒトCTLA-4抗体(イピリムマブおよび/またはトレメリムマブなど)と同一のエピトープ領域に結合する抗体はモノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合する抗体は、キメラ抗体、改変抗体、またはヒト化もしくはヒト抗体である。そのようなキメラ、改変、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当分野で周知の方法により調製および単離され得る。
【0280】
本開示の組成物および方法に使用可能な抗CTLA-4抗体には、上記の抗体の抗原結合部分が含まれる。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントにより発揮され得ることが十分に実証されている。
【0281】
本開示の方法または組成物における使用に適した抗CTLA-4抗体は、高い特異性および親和性でCTLA-4に結合し、CTLA-4の活性を遮断し、CTLA-4とヒトB7受容体の相互作用を破壊する抗体である。本明細書に開示される組成物または方法のいずれかにおいて、抗CTLA-4「抗体」には、CTLA-4に結合し、CTLA-4とヒトB7受容体の相互作用の阻害および免疫系の上方制御において抗体全体と類似の機能的性質を示す抗原結合部分またはフラグメントが含まれる。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、ヒトCTLA-4との結合についてイピリムマブおよび/またはトレメリムマブと交差競合する。
【0282】
いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、2、3、4、5、6、7または8週間毎に1回、0.1mg/kg~10.0mg/kg体重の用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、3、4、5または6週間毎に1回、1mg/kgまたは3mg/kg体重の用量で投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、2週間毎に1回、3mg/kg体重の用量で投与される。別の実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、6週間毎に1回、1mg/kg体重の用量で投与される。
【0283】
いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、一定用量で投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mg、または少なくとも約550mgの一定用量で投与される。別の実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、1、2、3、4、5、6、7または8週間毎に約1回、一定用量で投与される。
【0284】
抗LAG-3抗体
本開示のある態様は、対象に免疫療法を施すことを含む、高いTMB状態を有する腫瘍に罹患している対象を処置する方法に関し、ここで免疫療法は抗LAG-3抗体またはその抗原結合部分を含む。本方法は、対象から得られた生体試料のTMB状態を測定することをさらに含み得る。さらに、本開示は、抗LAG-3抗体またはその抗原結合部分を、(例えば高いTMBの測定値に基づいて)そのような治療に適していると同定された対象に投与することを想定する。
【0285】
本開示の抗LAG-3抗体はヒトLAG-3に結合する。LAG-3に結合する抗体は、国際出願公開WO/2015/042246ならびに米国特許出願公開第2014/0093511号および第2011/0150892号に開示されている。本開示に有用な例示的なLAG-3抗体は、(米国特許出願公開第2011/0150892号に記載されている)25F7である。本開示に有用なさらなる例示的なLAG-3抗体は、BMS-986016である。ある実施態様において、本組成物に有用な抗LAG-3抗体は、25F7またはBMS-986016と交差競合する。別の実施態様において、本組成物に有用な抗LAG-3抗体は、25F7またはBMS-986016と同一のエピトープに結合する。他の実施態様において、抗LAG-3抗体は25F7またはBMS-986016の6つのCDRを含む。
【0286】
抗CD137抗体
本開示のある態様は、対象に免疫療法を施すことを含む、高いTMB状態を有する腫瘍に罹患している対象を処置する方法に関し、ここで免疫療法は抗CD137抗体またはその抗原結合部分を含む。本方法は、対象から得られた生体試料のTMB状態を測定することをさらに含み得る。さらに、本開示は、抗CD137抗体またはその抗原結合部分を、(例えば高いTMBの測定値に基づいて)そのような治療に適していると同定された対象に投与することを想定する。
【0287】
抗CD137抗体は、CD137発現免疫細胞に特異的に結合し、該細胞を活性化し、腫瘍細胞に対する免疫応答(特に細胞傷害性T細胞応答)を刺激する。CD137に結合する抗体は、米国特許出願公開第2005/0095244号、ならびに米国特許第7,288,638号、第6,887,673号、第7,214,493号、第6,303,121号、第6,569,997号、第6,905,685号、第6,355,476号、第6,362,325号、第6,974,863号、および第6,210,669号に開示されている。
【0288】
いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第7,288,638号(20H4.9-IgG4[10C7またはBMS-663513])に記載されているウレルマブ(BMS-663513)である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第7,288,638号に記載されているBMS-663031(20H4.9-IgG1)である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第6,887,673号に記載されている4E9またはBMS-554271である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第7,214,493号;第6,303,121号;第6,569,997号;第6,905,685号;または第6,355,476号に開示されている抗体である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第6,362,325号に記載されている1D8もしくはBMS-469492;3H3もしくはBMS-469497;または3E1である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、発行された米国特許第6,974,863号に開示されている抗体(53A2など)である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、発行された米国特許第6,210,669号に開示されている抗体(1D8、3B8または3E1など)である。いくつかの実施態様において、抗体はPfizerのPF-05082566(PF-2566)である。他の実施態様において、本開示に有用な抗CD137抗体は、本明細書に開示される抗CD137抗体と交差競合する。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、本明細書に開示される抗CD137抗体と同一のエピトープに結合する。他の実施態様において、本開示に有用な抗CD137抗体は、本明細書に開示される抗CD137抗体の6つのCDRを含む。
【0289】
抗KIR抗体
本開示のある態様は、対象に免疫療法を施すことを含む、高いTMB状態を有する腫瘍に罹患している対象を処置する方法に関し、ここで免疫療法は抗KIR抗体またはその抗原結合部分を含む。本方法は、対象から得られた生体試料のTMB状態を測定することをさらに含み得る。さらに、本開示は、抗KIR抗体またはその抗原結合部分を、(例えば高いTMBの測定値に基づいて)そのような治療に適していると同定された対象に投与することを想定する。
【0290】
KIRに特異的に結合する抗体は、NK細胞上のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)とそのリガンドとの間の相互作用を遮断する。これらの受容体の遮断はNK細胞の活性化を促進し、潜在的には後者による腫瘍細胞の破壊を促進する。抗KIR抗体の例は、国際出願公開WO/2014/055648、WO2005/003168、WO2005/009465、WO2006/072625、WO2006/072626、WO2007/042573、WO2008/084106、WO2010/065939、WO2012/071411、およびWO/2012/160448に開示されている。
【0291】
本開示に有用な抗KIR抗体の1つは、国際出願公開WO2008/084106に最初に記述されたリリルマブ(BMS-986015、IPH2102、または1-7F9のS241P変異体とも呼ばれる)である。本開示に有用なさらなる抗KIR抗体は、国際出願公開WO2006/003179に記述されている1-7F9(IPH2101とも呼ばれる)である。ある実施態様において、本組成物のための抗KIR抗体は、KIRとの結合についてリリルマブまたはI-7F9と交差競合する。別の実施態様において、抗KIR抗体は、リリルマブまたはI-7F9と同一のエピトープに結合する。他の実施態様において、抗KIR抗体はリリルマブまたはI-7F9の6つのCDRを含む。
【0292】
抗GITR抗体
本開示のある態様は、対象に免疫療法を施すことを含む、高いTMB状態を有する腫瘍に罹患している対象を処置する方法に関し、ここで免疫療法は抗GITR抗体またはその抗原結合部分を含む。本方法は、対象から得られた生体試料のTMB状態を測定することをさらに含み得る。さらに、本開示は、抗GITR抗体またはその抗原結合部分を、(例えば高いTMBの測定値に基づいて)そのような治療に適していると同定された対象に投与することを想定する。
【0293】
抗GITR抗体は、ヒトGITR標的に特異的に結合し、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)を活性化するあらゆる抗GITR抗体であり得る。GITRは、複数の種類の免疫細胞(制御性T細胞、エフェクターT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞および活性化樹状細胞を含む)の表面上に発現するTNF受容体スーパーファミリーのメンバーである(「抗GITRアゴニスト抗体」)。具体的には、GITRの活性化は、エフェクターT細胞の増殖および機能を向上させ、活性化制御性T細胞により誘導される抑制を抑止する。さらに、GITR刺激は、他の免疫細胞(NK細胞、抗原提示細胞およびB細胞など)の活性を向上させることにより抗腫瘍免疫を促進する。抗GITR抗体の例は、国際出願公開WO/2015/031667、WO2015/184,099、WO2015/026,684、WO11/028683およびWO/2006/105021、米国特許第7,812,135号および第8,388,967号、ならびに米国特許出願公開第2009/0136494号、第2014/0220002号、第2013/0183321号および第2014/0348841号に開示されている。
【0294】
ある実施態様において、本開示に有用な抗GITR抗体は、(例えばSchaer et al. Curr Opin Immunol. (2012) Apr; 24(2): 217-224およびWO/2006/105021に記載されている)TRX518である。別の実施態様において、抗GITR抗体は、MK4166、MK1248ならびにWO11/028683およびU.S.8,709,424に記載の(例えば、配列番号104を含むVH鎖および配列番号105を含むVL鎖を含む、ここで配列番号はWO11/028683またはU.S.8,709,424に由来する)抗体から選択される。ある実施態様において、抗GITR抗体は、WO/2015/031667に開示される抗GITR抗体(例えば、WO/2015/031667のそれぞれ配列番号31、71および63を含むVH CDR1~3、ならびにWO/2015/031667のそれぞれ配列番号5、14および30を含むVL CDR1~3を含む抗体)である。ある実施態様において、抗GITR抗体は、WO2015/184099に開示される抗GITR抗体(例えば、抗体Hum231#1もしくはHum231#2、またはそのCDR、またはその誘導体(例えば、pab1967、pab1975またはpab1979))である。ある実施態様において、抗GITR抗体は、JP2008278814、WO09/009116、WO2013/039954、US20140072566、US20140072565、US20140065152、もしくはWO2015/026684に開示される抗GITR抗体、またはINBRX-110(INHIBRx)、LKZ-145(Novartis)、もしくはMEDI-1873(MedImmune)である。ある実施態様において、抗GITR抗体は、PCT/US2015/033991に記載される抗GITR抗体(例えば、28F3、18E10または19D3の可変領域を含む抗体)である。例えば、抗GITR抗体は、以下のVH鎖およびVL鎖またはそれらのCDRを含む抗体であり得る:
【0295】
VH:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYEGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGSMVRGDYYYGMDVWGQGTTVTVS(配列番号1)、および
【0296】
VL:AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPYTFGQGTKLEIK(配列番号2);または
【0297】
VH:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGFHWVRQAPGKGLEWVAVIWYAGSNKFYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGQLDYYYYYVMDVWGQGTTVTVSS(配列番号3)、および
【0298】
VL:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNSYPYTFGQGTKLEIK(配列番号4);または
【0299】
VH:VQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYAGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGRIAVAFYYSMDVWGQGTTVTVSS(配列番号5)、および
【0300】
VL:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNSYPYTFGQGTKLEIK(配列番号6)。
【0301】
ある実施態様において、上記のVHおよびVL軽鎖の対、またはそれらのCDRを含む抗体は、野生型または(例えばエフェクターがない(effectorless)ように)変異型のいずれかのIgG1アイソタイプの重鎖定常領域を含む。ある実施態様において、抗GITR抗体は、以下の重鎖および軽鎖アミノ酸配列を含む:
【0302】
重鎖:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYEGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGSMVRGDYYYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号7)、および
【0303】
軽鎖:AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号8)、または
【0304】
重鎖:qvqlvesgggvvqpgrslrlscaasgftfssygmhwvrqapgkglewvaviwyegsnkyyadsvkgrftisrdnskntlylqmnslraedtavyycarggsmvrgdyyygmdvwgqgttvtvssastkgpsvfplapsskstsggtaalgclvkdyfpepvtvswnsgaltsgvhtfpavlqssglyslssvvtvpssslgtqtyicnvnhkpsntkvdkrvepkscdkthtcppcpapeaegapsvflfppkpkdtlmisrtpevtcvvvdvshedpevkfnwyvdgvevhnaktkpreeqynstyrvvsvltvlhqdwlngkeykckvsnkalpssiektiskakgqprepqvytlppsreemtknqvsltclvkgfypsdiavewesngqpennykttppvldsdgsfflyskltvdksrwqqgnvfscsvmhealhnhytqkslslspg(配列番号9)、および
【0305】
軽鎖:AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)。
【0306】
ある実施態様において、抗GITR抗体は、本明細書に記載の抗GITR抗体(例えば、TRX518、MK4166、または本明細書に記載のVHドメインおよびVLドメインアミノ酸配列を含む抗体)と交差競合する。いくつかの実施態様において、抗GITR抗体は、本明細書に記載の抗GITR抗体(例えば、TRX518、MK4166、または本明細書に記載のVHドメインおよびVLドメインアミノ酸配列を含む抗体)と同一のエピトープに結合する。ある実施態様において、抗GITR抗体は、TRX518、MK4166または本明細書に記載のVHドメインおよびVLドメインアミノ酸配列を含む抗体の6つのCDRを含む。
【0307】
さらなる抗体
いくつかの実施態様において、免疫療法は抗TGFβ抗体を含む。ある実施態様において、抗TGFβ抗体は、国際出願公開WO/2009/073533に開示されている抗TGFβ抗体である。
【0308】
いくつかの実施態様において、免疫療法は抗IL-10抗体を含む。ある実施態様において、抗IL-10抗体は、国際出願公開WO/2009/073533に開示されている抗IL-10抗体である。
【0309】
いくつかの実施態様において、免疫療法は抗B7-H4抗体を含む。ある実施態様において、抗B7-H4抗体は、国際出願公開WO/2009/073533に開示されている抗B7-H4抗体である。
【0310】
ある実施態様において、免疫療法は抗Fasリガンド抗体を含む。ある実施態様において、抗Fasリガンド抗体は、国際出願公開WO/2009/073533に開示されている抗Fasリガンド抗体である。
【0311】
いくつかの実施態様において、免疫療法は抗CXCR4抗体を含む。ある実施態様において、抗CXCR4抗体は、米国特許出願公開第2014/0322208号に開示されている抗CXCR4抗体(例えばウロクプルマブ(BMS-936564))である。
【0312】
いくつかの実施態様において、免疫療法は抗メソテリン抗体を含む。ある実施態様において、抗メソテリン抗体は、米国特許第8,399,623号に開示されている抗メソテリン抗体である。
【0313】
いくつかの実施態様において、免疫療法は抗HER-2抗体を含む。ある実施態様において、抗HER-2抗体は、ハーセプチン(米国特許第5,821,337号)、トラスツズマブまたはトラスツズマブエムタンシン(カドサイラ、例えばWO/2001/000244)である。
【0314】
ある実施態様において、免疫療法は抗CD27抗体を含む。ある実施態様において、抗CD27抗体は、(例えば米国特許第9,169,325号に開示される)ヒトCD27のアゴニストであるヒトIgG1抗体であるバルリルマブ(「CDX-1127」および「1F5」としても知られている)である。
【0315】
いくつかの実施態様において、免疫療法は抗CD73抗体を含む。ある実施態様において、抗CD73抗体はCD73.4.IgG2C219S.IgG1.1fである。
【0316】
いくつかの実施態様において、免疫療法は抗MICA抗体を含む。本明細書において、抗MICA抗体は、MHCクラスIポリペプチド関連配列Aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施態様において、抗MICA抗体はMICAに加えてMICBに結合する。いくつかの実施態様において、抗MICA抗体は、膜結合型MICAの切断および可溶性MICAの放出を阻害する。ある実施態様において、抗MICA抗体は、米国特許出願公開第2014/004112 A1号、米国特許出願公開第2016/046716 A1号、または米国特許出願公開第2017/022275 A1号に開示される抗MICA抗体である。
【0317】
いくつかの実施態様において、免疫療法は抗TIM3抗体を含む。本明細書において、抗TIM3抗体は、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有分子3(TIM3;A型肝炎ウイルス受容体2(HAVCR2)としても知られている)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施態様において、抗TIM3抗体は免疫応答(例えば抗原特異的T細胞応答)を刺激できる。いくつかの実施態様において、抗TIM3抗体は、可溶性または膜結合型ヒトまたはカニクイザルTIM3に結合する。ある実施態様において、抗TIM3抗体は、国際出願公開WO/2018/013818に開示される抗TIM3抗体であり、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0318】
いくつかの実施態様において、本方法は、2以上の抗体を含む併用療法を施すことを含む。いくつかの実施態様において、2以上の抗体は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、TIGIT、TIM3、NKG2a、OX40、ICOS、MICA、CD137、KIR、TGFβ、IL-10、IL-8、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CD27、GITRからなる群から選択される。ある実施態様において、併用療法は、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の組合せを投与することを含む。いくつかの実施態様において、併用療法は、抗PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体の組合せを投与することを含む。いくつかの実施態様において、併用療法は、抗PD-L1抗体と抗LAG-3抗体の組合せを投与することを含む。いくつかの実施態様において、併用療法は、抗PD-L1抗体と抗TIM3抗体の組合せを投与することを含む。いくつかの実施態様において、併用療法は、抗PD-L1抗体と抗GITR抗体の組合せを投与することを含む。いくつかの実施態様において、併用療法は、抗PD-L1抗体と抗MICA抗体の組合せを投与することを含む。いくつかの実施態様において、併用療法は、抗PD-L1抗体と抗CD137抗体の組合せを投与することを含む。いくつかの実施態様において、併用療法は、抗PD-L1抗体と抗CD27抗体の組合せを投与することを含む。いくつかの実施態様において、併用療法は、抗PD-L1抗体と抗CXCR4抗体の組合せを投与することを含む。
【0319】
サイトカイン
いくつかの実施態様において、本方法は、抗体およびサイトカインを含む併用療法を施すことを含む。サイトカインは、当分野で公知のあらゆるサイトカインまたはその変異体であり得る。いくつかの実施態様において、サイトカインは、インターロイキン2(IL-2)、IL-1β、IL-6、TNF-α、ランテス、単球走化性タンパク質(MCP-1)、単球炎症性タンパク質(monocyte inflammatory protein)(MIP-1αおよびMIP-1β)、IL-8、リンホタクチン、フラクタルカイン、IL-1、IL-4、IL-10、IL-11、IL-13、LIF、インターフェロンアルファ、TGF-ベータ、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、サイトカインはCD122アゴニストである。ある実施態様において、サイトカインはIL-2またはその変異体を含む。
【0320】
いくつかの実施態様において、サイトカインは、野生型サイトカインアミノ酸配列と比較して1以上のアミノ酸置換、欠失または挿入を含む。いくつかの実施態様において、サイトカインは、野生型サイトカインのアミノ酸配列と比較して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個の置換されたアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む。
【0321】
いくつかの実施態様において、サイトカインは、例えば活性および/または半減期を増加させるように修飾される。ある実施態様において、サイトカインは、異種部分をサイトカインに融合させることにより修飾される。異種部分は、ポリペプチド、ポリマー、低分子、ヌクレオチドまたはそれらのフラグメントもしくは類似体を含むあらゆる構造物であり得る。ある実施態様において、異種部分はポリペプチドを含む。いくつかの実施態様において、異種部分は、アルブミンもしくはそのフラグメント、アルブミン結合ポリペプチド(ABP)、XTEN、Fc、PAS、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、またはそれらのあらゆる組合せを含む。
【0322】
ある実施態様において、サイトカインは、サイトカインをポリマーと融合させることにより修飾される。いくつかの実施態様において、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、またはそれらのあらゆる組合せを含む。本明細書において、「PEG」または「ポリエチレングリコール」は、あらゆる水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含することが意図される。他の指示がない限り、「PEGポリマー」またはポリエチレングリコールは、実質的に全て(好ましくは全て)の単量体サブユニットがエチレンオキシドサブユニットであるが、(例えば結合のために)異なるエンドキャッピング部分または官能基を含み得る。本開示における使用のためのPEGポリマーは、(例えば合成変換中に)末端酸素が置換されているか否かに依存して以下の2つの構造のうち1つを含む:「-(CH2CH20)n-n」または「-(CH2CH20)n-1CH2CH2-」。上述のように、PEGポリマーについて、変数(n)は約3~4000の範囲であり、末端基およびPEG全体の構造は様々であり得る。
【0323】
いくつかの実施態様において、本開示の方法は高いTMB状態を有する対象に免疫療法を施すことを含み、ここで免疫療法は抗体およびCD122アゴニストを含む。いくつかの実施態様において、免疫療法は、(1)抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、抗CTLA-4抗体またはそれらのあらゆる組合せ、および(2)CD122アゴニストを投与することを含む。いくつかの実施態様において、CD122アゴニストはIL-2またはその変異体を含む。いくつかの実施態様において、CD122アゴニストは、野生型IL-2と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を有するIL-2変異体を含む。いくつかの実施態様において、CD122アゴニストはPEGと融合したIL-2を含む。いくつかの実施態様において、CD122アゴニストは、野生型IL-2と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を有するIL-2変異体を含み、ここでIL-2変異体はPEGと融合している。
【0324】
がんの標準治療法
いくつかの実施態様において、本明細書に開示される方法は、標準治療法の代わりに使用される。ある実施態様において、標準治療法は、本明細書に開示されるあらゆる方法と組み合わせて使用される。様々な種類のがんに対する標準治療法が当業者に周知である。例えば、米国の21の主要ながんセンターの連合である全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)は、多種多様ながんに対する標準治療法の詳細な最新情報を提供するNCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology(NCCNガイドライン(登録商標))を公開している(NCCNガイドライン(登録商標)、2014参照)。
【0325】
大腸がん
いくつかの実施態様において、併用療法はがんを処置し、該がんは大腸がんである。ある実施態様において、大腸がんは結腸がんである。他の実施態様において、大腸がんは直腸がんである。ある実施態様において、大腸がんはマイクロサテライト不安定性(MSI)を有する。(Pawlik et al., Dis. Markers 20(4-5): 199-206 (2004)参照)。他の実施態様において、大腸がんは低いマイクロサテライト不安定性(MSI-L)を有する。
【0326】
大腸がんは、米国の男性および女性の両方において3番目に多い種類のがんである(2015年12月9日に最後に確認したhttp://www.cancer.gov/types/colorectal参照)。ほとんどの大腸がんは腺がんである。結腸がんには5つの段階が存在する:0期(上皮内がん)、I期、II期、III期およびIV期。結腸がんに対して6種類の標準処置が使用される:1)外科手術(局所切除、吻合を用いた結腸の切除、または結腸人工肛門造設術を用いた結腸の切除を含む);2)高周波アブレーション;3)凍結手術;4)化学療法;5)放射線療法;および6)標的療法(モノクローナル抗体および血管新生抑制剤を含む)。いくつかの実施態様において、本開示の併用療法は、標準治療法とともに結腸がんを処置する。
【0327】
直腸がんには5つの段階が存在する:0期(上皮内がん)、I期、II期、III期およびIV期。直腸がんに対して6種類の標準処置が使用される:1)外科手術(ポリープ切除術、局所切除、切除、高周波アブレーション、凍結手術および骨盤内臓全摘術を含む);2)放射線療法;3)化学療法;および4)標的療法(モノクローナル抗体療法を含む)。いくつかの実施態様において、本開示の方法は、標準治療法とともに直腸がんを処置する。
【0328】
肺がん
いくつかの実施態様において、本開示の併用療法はがんを処置し、該がんは肺がんである。ある実施態様において、がんはNSCLCである。ある実施態様において、NSCLCは扁平上皮組織構造を有する。他の実施態様において、NSCLCは非扁平上皮組織構造を有する。
【0329】
NSCLCは米国および世界中のがんによる死亡の主な原因であり、乳がん、結腸がんおよび前立腺がんの合計を上回っている。米国では、肺および気管支の推定228,190の新たな症例が診断されており、約159,480人の死亡がその疾患により生じる(Siegel et al. (2014) CA Cancer J Clin 64(1):9-29)。患者の大部分(約78%)は進行性/再発性または転移性疾患と診断される。肺がんから副腎への転移は一般的に起こり、約33%の患者がそのような転移を有する。NSCLC療法はOSを徐々に改善しているが、恩恵はプラトーに達している(後期段階の患者のOSの中央値はわずか1年である)。1L治療後の進行はこれらの対象のほぼ全てにおいて生じ、5年生存率は難治性の状況ではわずか3.6%である。2005年から2009年まで、米国の肺がんの全体の5年間の相対生存率は15.9%であった(2014年5月14日に最後に確認した、www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/nscl.pdfで入手可能なNCCNガイドライン(登録商標)、バージョン3.2014-非小細胞肺がん)。
【0330】
NSCLCには7つの段階がある:潜在性非小細胞肺がん、0期(上皮内がん)、I期、II期、IIIA期、IIIB期およびIV期。いくつかの実施態様において、本開示の併用療法は、標準治療法とともにNSCLCを処置する。
【0331】
さらに、本方法はまた、NSCLC患者を処置するのに一般的に使用される3つのモダリティである外科手術、放射線療法(RT)および化学療法と組み合わされ得る。分類として、NSCLCは小細胞がんと比較して化学療法およびRTに比較的非感受性である。一般に、I期またはII期の疾患を有する患者では外科的切除が治癒の可能性が最も高く、化学療法が手術前および手術後の両方でますます使用されている。RTはまた、切除可能なNSCLCを有する患者に対する補助療法、一次局所処置、または不治のNSCLCを有する患者に対する緩和療法として使用され得る。
【0332】
ある実施態様において、本開示の方法に適した対象はIV期の疾患を有する患者である。IV期の疾患を有する患者は、化学療法から良好な全身状態(PS)の恩恵を受ける。多くの薬物(白金物質(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、タキサン物質(例えば、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセルおよびドセタキセル)、ビノレルビン、ビンブラスチン、エトポシド、ペメトレキセドおよびゲムシタビンを含む)がIV期のNSCLCに有用である。これらの多くの薬物を用いた併用は30%~40%の1年生存率を生じ、単剤よりも優れている。具体的な標的療法が、進行性肺がんの処置のために開発されている。例えば、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))は、血管内皮増殖因子A(VEGF-A)を遮断するモノクローナル抗体である。エルロチニブ(タルセバ(登録商標))は、上皮増殖因子受容体(EGFR)の低分子TKIである。クリゾチニブ(ザーコリ(登録商標))はALKおよびMETを標的とする低分子TKIであり、変異ALK融合遺伝子を持つ患者のNSCLCを処置するのに使用される。セツキシマブ(アービタックス(登録商標))は、EGFRを標的とするモノクローナル抗体である。
【0333】
いくつかの実施態様において、本方法は、扁平上皮NSCLCを有する対象を処置するのに使用される。ある実施態様において、本方法は、標準治療法と組み合わせて使用される。扁平上皮細胞NSCLC(最大で全NSCLCの25%に相当する)を有する患者には第一選択(1L)治療後の処置の選択肢がほとんどないため、特に満たされていないニーズが存在する。単剤化学療法は、白金を用いた二重化学療法(doublet chemotherapy)(Pt-doublet)での進行後の標準治療であり、約7ヵ月のOSの中央値をもたらす。ドセタキセルはこの系統の治療における基準処置のままであるが、エルロチニブがより少ない頻度で使用され得る。ペメトレキセドは、進行性NSCLC患者の第二選択(2L)処置においてドセタキセルと比較して臨床的に同等の有効性の成果を生じ、有意に少ない副作用を生じることが示されている(Hanna et al., 2004 J Clin Oncol 22:1589-97)。現在、第三選択(3L)の設定を超える肺がんでの使用のために承認されている治療はない。ペメトレキセドおよびベバシズマブは扁平上皮NSCLCでは承認されておらず、分子標的療法の適用は制限されている。進行性肺がんにおける満たされていないニーズは、最近OncothyreonおよびMerck KgaAのSTIMUVAX(登録商標)が第3相試験においてOSを改善できなかったこと、ArQuleおよびDaiichi Sankyoのc-Metキナーゼ阻害薬チバンチニブが生存エンドポイントを満たすことができなかったこと、Rocheのアバスチン(登録商標)と組み合わせたEli Lillyのアリムタ(登録商標)が後期試験においてOSを改善できなかったこと、ならびにAmgenおよびTakeda Pharmaceuticalが後期試験において低分子VEGF-R拮抗薬モテサニブで臨床エンドポイントを満たせなかったことにより悪化している。
【0334】
併用療法
本開示のある態様は、治療有効量の(a)抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体、および(b)細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗CTLA-4抗体」)を対象に投与することを含む、腫瘍に罹患している対象を処置する方法に関し、ここで腫瘍は高い腫瘍変異量(TMB)状態を有する。ある実施態様において、腫瘍は非小細胞肺がん(NSCLC)に由来する。いくつかの実施態様において、高いTMBは、検査された遺伝子の1メガベースあたり少なくとも約10個の変異により特徴付けられる。特定の実施態様において、本方法は、投与前に対象から得られた生体試料のTMB状態を測定することをさらに含む。
【0335】
ある実施態様において、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体および/または抗CTLA-4抗体は治療有効量で投与される。いくつかの実施態様において、本方法は、治療有効量の抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体を投与することを含む。他の実施態様において、本方法は、治療有効量の抗PD-L1抗体および抗CTLA-4抗体を投与することを含む。本明細書に開示されるあらゆる抗PD-1、抗PD-L1または抗CTLA-4抗体が本方法に使用され得る。ある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブを含む。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブを含む。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブを含む。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体はデュルバルマブを含む。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体はアベルマブを含む。いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブを含む。いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブトレメリムマブを含む。
【0336】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体および抗CTLA-4抗体はそれぞれ、約2週間毎に1回、約3週間毎に1回、約4週間毎に1回、約5週間毎に1回、または約6週間毎に1回投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、約2週間毎に1回、約3週間毎に1回、または約4週間毎に1回投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回投与される。
【0337】
いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体は、約2、3、4、5、6、7または8週間毎に1回、約0.1mg/kg~約20.0mg/kg体重の用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体は、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約0.6mg/kg、約0.9mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約6mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約12mg/kg、約15mg/kg、約18mg/kg、または約20mg/kgの用量で投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は、約4週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体は、約6週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。
【0338】
いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体は一定用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体は、少なくとも約40mg~少なくとも約1600mgの一定用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体は、少なくとも約40mg、少なくとも約50mg、少なくとも約60mg、少なくとも約70mg、少なくとも約80mg、少なくとも約90mg、少なくとも約100mg、少なくとも約110mg、少なくとも約120mg、少なくとも約130mg、少なくとも約140mg、少なくとも約150mg、少なくとも約160mg、少なくとも約170mg、少なくとも約180mg、少なくとも約190mg、または少なくとも約200mgの一定用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体は、少なくとも約220mg、少なくとも約230mg、少なくとも約240mg、少なくとも約250mg、少なくとも約260mg、少なくとも約270mg、少なくとも約280mg、少なくとも約290mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約360mg、少なくとも約400mg、少なくとも約440mg、少なくとも約480mg、少なくとも約520mg、少なくとも約560mg、または少なくとも約600mgの一定用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体は、少なくとも約640mg、少なくとも約720mg、少なくとも約800mg、少なくとも約880mg、少なくとも約960mg、少なくとも約1040mg、少なくとも約1120mg、少なくとも約1200mg、少なくとも約1280mg、少なくとも約1360mg、少なくとも約1440mg、または少なくとも約1600mgの一定用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗CTLA-4抗体は、約2、3、4、5、6、7または8週間毎に少なくとも1回、一定用量で投与される。
【0339】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は約3週間毎に1回、約2mg/kgの用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は約2週間毎に1回、約3mg/kgの用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は約4週間毎に1回、約6mg/kgの用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。
【0340】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は約3週間毎に1回、約200mgの一定用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は約2週間毎に1回、約240mgの一定用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は約4週間毎に1回、約480mgの一定用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。
【0341】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は約3週間毎に1回、約200mgの一定用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約80mgの一定用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は約2週間毎に1回、約240mgの一定用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約80mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は約4週間毎に1回、約480mgの一定用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約80mgの用量で投与される。
【0342】
ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約2週間毎に1回、約10mg/kgの用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体は約3週間毎に1回、約15mg/kgの用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。
【0343】
ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約2週間毎に1回、約800mgの一定用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体は約3週間毎に1回、約1200mgの一定用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約1mg/kgの用量で投与される。
【0344】
ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約2週間毎に1回、約800mgの一定用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約80mgの一定用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体は約3週間毎に1回、約1200mgの一定用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約6週間毎に1回、約80mgの用量で投与される。
【0345】
黒色腫
いくつかの実施態様において、併用療法はがんを処置し、該がんは黒色腫である。黒色腫は最も致命的な形態の皮膚がんであり、男性では5番目に多いがん診断であり、女性では7番目に多いがん診断である。(2015年12月9日に最後に確認したhttp://www.cancer.gov/types/skin参照)。黒色腫には7つの段階が存在する:0期(表皮内黒色腫)、I期、II期、外科手術により除去できるIII期、外科手術により除去できないIII期、IV期および再発黒色腫。5種類の標準処置が使用される:1)外科手術;2)化学療法;3)放射線療法、および4)生物学的療法(インターフェロン、インターロイキン2(IL-2)、腫瘍壊死因子(TNF)療法、およびイピリムマブを含む)、ならびに5)標的療法(シグナル伝達阻害剤療法(例えば、ベムラフェニブ、ダブラフェニブおよびトラメチニブ)、腫瘍溶解性ウイルス療法、モノクローナル抗体療法(ペンブロリズマブおよびニボルマブを含む)、および血管新生抑制剤を含む)。いくつかの実施態様において、本開示の併用療法は、標準治療法とともに黒色腫を処置する。
【0346】
卵巣がん
ある実施態様において、併用療法はがんを処置し、該がんは卵巣がん、卵管がんおよび原発性腹膜がん(「卵巣がん」)である。ある実施態様において、がんは卵巣上皮がんである。他の実施態様において、がんは卵巣胚細胞腫瘍である。さらなる他の実施態様において、がんは卵巣低悪性度腫瘍である。ある実施態様において、卵巣がんは、卵巣、腹膜または卵管を包含する組織において発生する。(2015年12月9日に最後に確認したhttp://www.cancer.gov/types/ovarian/patient/ovarian-epithelial-treatment-pdq参照)。
【0347】
卵巣がんには4つの段階が存在する:I期、II期、III期およびIV期、これらは早期卵巣がん、進行性卵巣がん、再発性卵巣がんまたは持続性卵巣がんを包含する。卵巣がん、卵管がんおよび原発性腹膜がんを有する患者に使用される4種類の標準処置が存在する:1)外科手術(子宮摘出術、一側卵管卵巣摘出術、両側卵管卵巣摘出術、大網切除術およびリンパ節生検を含む);2)放射線療法;3)化学療法;および4)標的療法(モノクローナル抗体療法およびポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ阻害剤を含む)。生物学的療法も卵巣がんのためにテストされている。いくつかの実施態様において、本開示の併用療法は、標準治療法とともに卵巣がんを処置する。
【0348】
卵巣胚細胞腫瘍には4つの段階が存在する:I期、II期、III期およびIV期。4種類の標準処置が使用される:1)外科手術(一側卵管卵巣摘出術、子宮全摘出術、両側卵管卵巣摘出術および腫瘍減量術を含む);2)観察;3)化学療法、および4)放射線療法。検討中の新たな処置の選択肢には、骨髄移植を伴う大量化学療法が含まれる。いくつかの実施態様において、本開示の併用療法は、標準治療法とともに卵巣胚細胞腫瘍を処置する。
【0349】
卵巣低悪性度腫瘍には3つの段階が存在する:1)早期段階(I期およびII期)、2)後期段階(III期およびIB期)、および3)再発。2種類の標準処置が使用される:1)外科手術(一側卵管卵巣摘出術、両側卵管卵巣摘出術、子宮全摘出術、卵巣部分切除術および大網切除術を含む)、および2)化学療法。いくつかの実施態様において、本開示の併用療法は、標準治療法とともに卵巣低悪性度腫瘍を処置する。
【0350】
頭頸部がん
いくつかの実施態様において、併用療法はがんを処置し、該がんは頭頸部がんである。頭頸部がんには、口腔、咽頭、喉頭、副鼻腔および鼻腔ならびに唾液腺のがんが含まれる。頭頸部がんは通常、頭頸部の内側(例えば、口、鼻および喉の内側)の湿った粘膜表面を覆う扁平上皮細胞において発生する。これらの扁平上皮がんは、頭頸部の扁平上皮がんと呼ばれることが多い。頭頸部がんは唾液腺においても発生し得るが、唾液腺がんは比較的まれである。(2015年12月9日に最後に確認した、http://www.cancer.gov/types/head-and-neck/head-neck-fact-sheet参照)。個々の患者の処置計画は、多くの要素(腫瘍の正確な位置、がんの段階、ならびにその患者の年齢および総合的な健康状態を含む)に依存する。頭頸部がんの処置には、外科手術、放射線療法、化学療法、標的療法、または処置の組合せが含まれ得る。いくつかの実施態様において、本開示の併用療法は、標的治療法とともに頭頸部がんを処置する。
【0351】
肺がんの免疫療法
複数の系統の標的療法に対して進行している患者に有効な物質、および現在の標準処置よりも長い期間生存を延長する治療法が明らかに必要とされている。免疫療法(特に、CTLA-4、PD-1およびPD-L1阻害経路を含む免疫チェックポイントの遮断)を含む新たな手法が、最近有望である(Creelan et al., 2014)。したがって、化学療法との組合せにおけるイピリムマブは、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんにおいて有望な結果を示している。モノクローナル抗体であるニボルマブ、ペンブロリズマブ、BMS-936559、MEDI4736およびMPDL3280Aの臨床試験では、肺がんの20%~25%の範囲で耐久性のある全体的な放射線応答率が実証されている(Topalian et al, 2012a;Pardoll, 2012;WO2013/173223;Creelan et al., 2014)。この例外的な活性には扁平上皮肺がんが含まれ、これは歴史的に重要な治療の進歩が損なわれている集団である。
【0352】
医薬組成物および投与量
本開示の治療物質は組成物(例えば、抗体および/またはサイトカインならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物)で構成され得る。本明細書において、「薬学的に許容され得る担体」には、生理的に適合したあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌物質および抗真菌物質、ならびに等張物質および吸収遅延物質などが含まれる。好ましくは、抗体を含む組成物の担体は、(例えば、注射または注入による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与に適しているが、抗体および/またはサイトカインを含む組成物の担体は非経口でない投与(例えば経口投与)に適している。いくつかの実施態様において、皮下注射は、Halozyme TherapeuticsのENHANZE(登録商標)薬物送達技術に基づく(米国特許第7,767,429号参照、これは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)。ENHANZE(登録商標)はAbと組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素(rHuPH20)の共製剤(co-formulation)を使用し、これは細胞外マトリックスにより皮下に送達され得る生物製剤および薬物の量に対する従来の制限を取り除く(米国特許第7,767,429号参照)。本開示の医薬組成物は、1以上の薬学的に許容され得る塩、抗酸化剤、水性および非水性担体、および/またはアジュバント(保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤など)を含み得る。したがって、いくつかの実施態様において、本開示の医薬組成物は、組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素(例えばrHuPH20)をさらに含み得る。
【0353】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば最大の治療応答および/または最小の有害作用)を与えるように調整される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、重量に基づく用量で投与される。(特に別の抗がん物質と組み合わせた)抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の投与について、投与量は、対象の体重の約0.01~約20mg/kg、約0.1~約10mg/kg、約0.01~約5mg/kg、約1~約5mg/kg、約2~約5mg/kg、約1~約3mg/kg、約7.5~約12.5mg/kg、または約0.1~約30mg/kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、約0.1、約0.3、約1、約2、約3、約5または約10mg/kg体重であり得、より好ましくは、0.3、1、2、3または5mg/kg体重であり得る。ある実施態様において、抗PD-1抗体の投与量は3mg/kg体重である。
【0354】
ある実施態様において、本開示の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の投与計画は、静脈内投与による約0.3~1mg/kg体重、約5mg/kg体重、1~5mg/kg体重、または約1~約3mg/kg体重を含み、ここで抗体は、完全寛解または進行性疾患が確認されるまで最大で約6週間または約12週間のサイクルで約14~21日毎に投与される。いくつかの実施態様において、抗体処置、または本明細書に開示されるあらゆる併用処置は、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約18ヶ月間、少なくとも約24ヶ月間、少なくとも約3年間、少なくとも約5年間、または少なくとも約10年間継続される。
【0355】
投与計画は通常、抗体の典型的な薬物動態の特性に基づいて持続的な受容体占有率(RO)をもたらす曝露を達成するように設計される。例示的な処置計画は、週に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、月に1回、3~6ヶ月毎に1回、またはそれ以上の長さの投与を必要とする。ある好ましい実施態様において、抗PD-1抗体(ニボルマブなど)は2週間毎に1回、対象に投与される。他の好ましい実施態様において、抗体は3週間毎に1回投与される。抗PD-1抗体は少なくとも2回投与され得、各投与は2回の投与間の2週間毎の投与間隔で約0.01mg/kg~約5mg/kg(例えば3mg/kg)の量である。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は少なくとも3、4、5、6または7回投与(すなわち複数回投与)され、各投与は隣接する2回の所定投与間の2週間毎の投与間隔で約0.01mg/kg~約5mg/kg(例えば3mg/kg)の量である。投与量および計画は、処置の過程で変化し得る。例えば、抗PD-1単独療法の投与計画は、(i)6週間のサイクルにおいて2週間毎;(ii)6回の投与について4週間毎、その後3ヶ月毎;(iii)3週間毎;または(iv)3~10mg/kgで1回、その後2~3週間毎に1mg/kgで抗体を投与することを含み得る。IgG4抗体が通常2~3週間の半減期を有することを考慮すると、本開示の抗PD-1抗体の好ましい投与計画は、静脈内投与による0.3~10mg/kg体重、好ましくは1~5mg/kg体重、より好ましくは1~3mg/kg体重を含み、ここで抗体は、完全寛解または進行性疾患が確認されるまで最大で6週間または12週間のサイクルで14~21日毎に投与される。
【0356】
ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は単独療法として一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、本明細書に開示される他の任意の治療と組み合わせて一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の一定用量は、少なくとも約100~600mg(少なくとも約200~300mg、少なくとも約400~500mg、または少なくとも約240mg、または少なくとも約480mgなど(少なくとも約60mg、少なくとも約80mg、少なくとも約100mg、少なくとも約120mg、少なくとも約140mg、少なくとも約160mg、少なくとも約180mg、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約320mg、少なくとも約360mg、少なくとも約400mg、少なくとも約440mg、少なくとも約480mg、少なくとも約520mg、少なくとも約560mg、少なくとも約600mg、または少なくとも約660mg、または少なくとも約720mgなど))の用量である。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の一定用量は、少なくとも約600~1200mgの用量である。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の一定用量は、少なくとも約600mg、少なくとも約640mg、少なくとも約680mg、少なくとも約720mg、少なくとも約760mg、少なくとも約800mg、少なくとも約840mg、少なくとも約880mg、少なくとも約920mg、少なくとも約960mg、少なくとも約1000mg、少なくとも約1040mg、少なくとも約1080mg、少なくとも約1120mg、少なくとも約1160mg、または少なくとも約1200mgの用量である。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約2または4週間毎に1回、少なくとも約240mgまたは少なくとも約480mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分は、約2または4週間毎に1回、少なくとも約240mgまたは少なくとも約480mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、少なくとも約720mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、少なくとも約960mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、少なくとも約1200mgの用量で投与される。
【0357】
他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、240mgよりも高い用量(すなわち少なくとも約240mg)で投与される。他のがん物質と組み合わせて使用される場合、抗PD-1抗体の投与量は単独療法の用量と比較して低下し得る。例えば、通常の3週間毎の3mg/kgよりも著しく低いニボルマブの投与量(例えば、3または4週間毎の0.1mg/kg以下)が治療量以下の投与量とみなされる。0.3mg/kg~10mg/kgのニボルマブの投与を受けた15人の対象からの受容体占有率のデータにより、PD-1占有率はこの用量範囲では用量非依存的であると考えられることが示されている。全ての用量にわたって、平均占有率は85%(範囲、70%~97%)であり、平均プラトー占有率(plateau occupancy)は72%(範囲、59%~81%)であった(Brahmer et al., J Clin Oncol 28:3167-75 2010)。したがって、0.3mg/kgの投与は最大の生物活性をもたらすのに十分な曝露を可能にし得る。
【0358】
いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、第2の物質とともに固定用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体は、第2の免疫療法物質とともに固定用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と第2の物質(例えば第2の免疫療法物質)との比は、少なくとも約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:15、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、約1:100、約1:120、約1:140、約1:160、約1:180、約1:200、約200:1、約180:1、約160:1、約140:1、約120:1、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約15:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、または約2:1mgである。
【0359】
最大で2週間毎に10mg/kgのより高いニボルマブ単剤療法投与が最大耐用量(MTD)に達することなく達成されているが、チェックポイント阻害剤プラス抗血管新生療法の他の試験において報告された重篤な毒性は(例えば、Johnson et al., 2013; Rini et al., 2011参照)10mg/kg未満のニボルマブ用量の選択を支持する。
【0360】
ニボルマブと他の抗がん物質との組合せのために、これらの物質は好ましくは承認された投与量で投与される。臨床的有用性が観察される限り、または容認できない毒性もしくは疾患の進行が生じるまで処置は継続される。それにもかかわらず、ある実施態様において、投与されるこれらの抗がん物質の投与量は、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与される物質の承認された投与量よりも著しく低い(すなわち治療量以下の投与量)。抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、臨床試験において単独療法として最も高い効力を生じることが示されている投与量(例えば、3週間毎に1回投与される約3mg/kgのニボルマブ)(Topalian et al., 2012a; Topalian et al., 2012)またはそれよりも著しく低い用量(すなわち治療量以下の用量)で投与され得る。
【0361】
投与量および頻度は、対象内の抗体の半減期に依存して様々である。一般に、ヒト抗体は最も長い半減期を示し、次いでヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体である。投与の投与量および頻度は、処置が予防的であるかまたは治療的であるかに依存して様々であり得る。予防的適用では、相対的に低い投与量が、通常相対的に低頻度の間隔で長期間投与される。生涯にわたって処置を受け続ける患者もいる。治療的適用では、疾患の進行が減少または終わるまで(好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで)比較的高い投与量が比較的短い間隔で必要とされる場合がある。その後、予防計画が患者に施され得る。
【0362】
本開示の医薬組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して過度に有毒であることなく、特定の患者、組成物および投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るために様々であり得る。選択された投与量レベルは、多様な薬物動態的要因(使用される本開示の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出率、処置期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、総合的な健康状態および以前の病歴、ならびに医薬分野で周知の同様の要因を含む)に依存する。本開示の組成物は、当分野で周知の多様な方法のうち1つ以上を用いて1以上の投与経路により投与され得る。当業者に理解されるように、投与経路および/または投与様式は、所望の結果に依存して様々である。
【0363】
キット
免疫療法(例えば治療的使用のための抗PD-1抗体)を含むキットもまた、本開示の範囲内である。キットは通常、キットの内容物の使用目的および使用のための説明書を示すラベルを含む。ラベルという用語には、キット上またはキットとともに供給されるか、またはキットに付属しているあらゆる書面または記録物質が含まれます。したがって、本開示は腫瘍に罹患している対象を処置するためのキットを提供し、該キットは以下を含む:(a)0.1~10mg/kg体重の用量の、PD-1受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体」);および(b)本明細書に開示されている方法において抗PD-1抗体を使用するための説明書。ある実施態様において、腫瘍は肺がん(例えばNSCLC)である。ヒト患者を処置するためのある好ましい実施態様において、キットは、本明細書に開示されている抗ヒトPD-1抗体(例えばニボルマブまたはペンブロリズマブ)を含む。
【0364】
いくつかの実施態様において、キットは、本明細書に開示される網羅的なゲノムプロファイリングアッセイをさらに含む。いくつかの実施態様において、キットは、本明細書に開示される方法に従って高いTMB状態を有すると同定された対象に免疫療法(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体および/またはサイトカイン)を施すための説明書をさらに含む。
【0365】
上記で引用されるあらゆる参考文献および本明細書で引用されるあらゆる参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0366】
以下の実施例は説明の目的で提供されており、限定の目的ではない。
【実施例】
【0367】
実施例1。
IV期または再発非小細胞肺がんにおける第一選択のニボルマブの第3相試験。
概要
ニボルマブは、以前に処置された非小細胞肺がん(NSCLC)においてドセタキセルと比較して全生存期間(OS)を改善する。この非盲検第3相試験は、プログラム死リガンド1(PD-L1)陽性NSCLCにおいて第一選択のニボルマブと化学療法を比較した。
【0368】
未処置のIV期/再発NSCLCおよび1%以上のPD-L1腫瘍発現を有する患者を、2週間毎に1回のニボルマブ3mg/kgまたは白金を用いた化学療法に1:1に無作為に分けた。主要エンドポイントは、PD-L1発現が5%以上の患者における盲検独立中央判定による無増悪生存期間(PFS)であった。
【0369】
5%以上のPD-L1発現(n=423)を有する患者において、PFSの中央値はニボルマブで4.2ヶ月であり、化学療法で5.9ヶ月であった(ハザード比[HR]、1.15;95%信頼区間[CI]、0.91~1.45;P=0.2511);OSの中央値はニボルマブで14.4ヶ月であり、化学療法で13.2ヶ月であった(HR、1.02;95%CI、0.80~1.30);化学療法に無作為に分けられた128人(60%)の患者は、その後ニボルマブを受けた。高い腫瘍変異量(TMB;上位の三分位)を有する患者において、ニボルマブは化学療法と比較してPFS(HR、0.62;95%CI、0.38~1.00)および奏効率(ORR;46.8%対28.3%)を改善した。あらゆるグレードおよびグレード3/4の処置関連有害事象は、それぞれニボルマブ処置患者の71%および18%、ならびに化学療法処置患者の92%および51%において生じた。
【0370】
ニボルマブは、5%以上のPD-L1発現を有する以前に未処置のIV期/再発NSCLCでは化学療法に対して優れたPFSを示さなかった;OSは両群で類似していた。ニボルマブは化学療法と比較して有利な安全性プロファイルを有していた。TMBおよびPD-1/L1阻害剤による臨床的有益性の分析を組み込んだこの最初の第3相試験の知見により、ニボルマブが高いTMBを有する患者において化学療法と比較してORRおよびPFSを改善することが示唆されている。
【0371】
過去20年間、白金を用いた併用化学療法が、標的可能な変異を持たない進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の標準治療の第一選択処置であった1,2。しかしながら、化学療法はわずかな恩恵しか提供せず、制限された忍容性を有していた。第3相臨床試験では、白金を用いた化学療法による無増悪生存期間(PFS)の中央値は4~6ヶ月であり、全生存期間(OS)の中央値は10~13ヶ月であった3-8。
【0372】
2つの第3相試験では、プログラム死1(PD-1)免疫チェックポイント阻害抗体であるニボルマブは、白金を用いた化学療法中またはその後に疾患進行を経験した転移性NSCLC患者においてドセタキセルと比較してOSを著しく改善した9-11。恩恵はPD-1リガンド1(PD-L1)の発現に関係なく見られたが、非扁平上皮NSCLCにおいてPD-L1発現の増加とともに増強された9,10。
【0373】
NSCLCを有する以前に未処置の患者におけるマルチコホート第1相試験(CheckMate 012)12において、ニボルマブ単独療法コホートの予備データ(n=20)は持続的な応答および有利な安全性プロファイルを示した。5%以上のPD-L1発現を有する10人の患者のうち、奏効率(ORR)は50%であり、24週間でのPFS率は70%であり、PFSの中央値は10.6ヶ月であった13。PD-L1発現の増加は拡大コホートにおいてより大きな恩恵に関連していたが、臨床活性はPD-L1発現が低いか、またはない患者においても見られた12。免疫系の複雑さのために、PD-L1発現レベルを超える免疫腫瘍物質に対する応答のバイオマーカーが探索されている。初期のデータは、高い腫瘍変異量(TMB)がネオアンチゲン(これはT細胞によって非自己として認識される)の数を増加させることにより免疫原性を増強させ得、抗腫瘍免疫応答をもたらし得るため、高いTMBは免疫療法からの恩恵の可能性を増加させ得るという仮説を支持する14。
【0374】
1%以上または5%以上のPD-L1発現を有するIV期または再発NSCLC患者における第一選択治療としてのニボルマブおよび治験医師選択の白金を用いた化学療法の有効性および安全性を比較した無作為化非盲検国際第3相試験が実施された。さらに、処置成績に対するTMBの影響を評価するために予備分析を行った。
【0375】
方法
患者
適格な成人患者は、組織学的に確認された扁平上皮または非扁平上皮IV期/再発NSCLC、ECOG PS 0-1およびRECIST 1.1、15による測定可能な疾患を有し15、進行性疾患または転移性疾患の一次治療として以前に全身性の抗がん療法を受けていなかった。中枢神経系転移を有する患者は適切に処置され、無作為化の2週間以上前に神経学的にベースラインまで戻っていた場合に対象とした。適格な患者は、コルチコステロイドをやめなければならず、または安定もしくは減少性の用量の1日あたり10mg以下のプレドニゾン(または等価物)を服用しなければならなかった。無作為化の2週間以上前に完了した場合には事前の緩和放射線療法を許可し、登録の6ヶ月以上前の事前のアジュバントまたはネオアジュバント化学療法を許可した。利用可能な標的療法に感受性がある自己免疫疾患または既知のEGFR変異もしくはALK転座を有する患者を除外した。1%以上のPD-L1発現を有する患者のみを無作為化した。
【0376】
患者選択のためのPD-L1分析
登録前6ヶ月以内に収集された新鮮または保存された腫瘍生検標本を、28-8抗体を用いて中央研究所(centralized laboratory)によりPD-L1について検査した9,10。
【0377】
研究計画および処置
適格な患者を、2週間毎にニボルマブ3mg/kgまたは4~6サイクルで3週間毎に治験医師選択の白金二重化学療法を受けるように無作為化(1:1)した(
図2)。化学療法を、疾患の進行、容認できない毒性または許可されたサイクルの完了まで継続した。サイクル4後に安定した疾患または応答を有していた非扁平上皮NSCLC患者においてペメトレキセド維持療法を許可した。プロトコルで定義した基準が満たされていた場合、進行後(beyond progression)のニボルマブでの処置を許可した。非自己免疫状態(限定されないが、潜在的な免疫学的原因を有する処置関連有害事象(AE)を含む)について、同時の全身コルチコステロイド処置(3週間未満の治療)を許可した。
【0378】
無作為化は、PD-L1発現(5%未満対5%以上)および腫瘍組織学(扁平上皮対非扁平上皮)によって分類された。RECIST1.1による進行を伴う化学療法に無作為に分けられ、治験医師によって評価され、独立した放射線科医によって確認された患者は、適格性基準を満たしていた場合、ニボルマブに転向(crossover)され得た。化学療法について、毒性のために投与の遅延および2回以下の減少を許可した。ニボルマブについて、毒性のための投与の遅延を許可したが、投与の減少は許可しなかった。
【0379】
エンドポイントおよび評価
主要エンドポイントは、5%以上のPD-L1発現を有する患者における盲検独立中央判定(BICR)による評価に基づくPFSであった。二次エンドポイントは、無作為化された全ての患者(1%以上のPD-L1発現)におけるBICRによるPFS、5%以上のPD-L1発現を有する患者および無作為化された全ての患者におけるOS、ならびに5%以上のPD-L1発現を有する患者におけるBICRによるORRを含んでいた。
【0380】
腫瘍応答を、48週目まで6週間毎、その後12週間毎に評価した。安全性評価は、米国国立がん研究所の有害事象共通用語規準バージョン4.0に従って段階分けされたAEの記録を含んでいた。
【0381】
TMBのバイオマーカー予備分析
TMB(体細胞ミスセンス変異の総数)を、全エクソームシーケンシングに十分な腫瘍および血液試料を有する患者において決定した。
【0382】
DNAおよびRNAを、Allprep DNA/RNA FFPEキット(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて保存された腫瘍組織から共単離(co-isolate)した。全血由来のDNA(生殖系列DNA)を、QIAamp DNA Blood Midiキット(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて製造者の説明書に従って単離した。
【0383】
単離したDNAおよびRNAを、全エクソームキャプチャーおよびシーケンシングにかけた。ゲノムDNA(150ng)を、Fisher et al, 2011のビーズ上での修飾(on-bead modifications)を伴うAgilent SureSelectXT試薬キット(Agilent Technologies, Santa Clara, USA)を用いたライブラリー調製に使用した。(Fisher S, Barry A, Abreu J, et al. A scalable, fully automated process for construction of sequence-ready human exome targeted capture libraries. Genome Biol. 2011;12(1):R1)。合計500ngの濃縮ライブラリーをハイブリダイゼーションに用い、SureSelect All Exon v5(Agilent Technologies, Santa Clara, USA)のベイトで捕捉した。ハイブリダイゼーション後に、捕捉したライブラリーを製造者の推奨に従って精製し、ポリメラーゼ連鎖反応で増幅した(11サイクル)。正規化したライブラリーをプールし、2x100bpのペアードエンドの読み取りを用いてIllumina HiSeq 2500上で配列決定した;試料毎に4,500万回の読み取りデータ(およその平均標的カバー率の100倍)を配列決定した。
【0384】
腫瘍変異量の決定を以下のように実施した。全エクソームシーケンシングデータを用いて、各患者の腫瘍変異量(ミスセンス変異の総数)を生成した。ミスセンス変異を、2つの変異のコール(mutation caller)を用いて対の腫瘍-生殖系列全エクソームシーケンシングデータから同定した。(Weber JA et al. (2016) Sentieon DNA pipeline for variant detection - Software-only solution, over 20× faster than GATK 3.3 with identical results. PeerJ PrePrints 4:e1672v2; Saunders CT et al., Strelka: accurate somatic small-variant calling from sequenced tumor-normal sample pairs. Bioinformatics (2012) 28:1811-7)。2つのコールの和集合(union)を用いて、腫瘍変異量を計算した。
【0385】
有効性分析のために、患者をTMBの三分位の分布に従って分類した。三分位の境界は、低いTMB、中程度のTMB、および高いTMBについて、それぞれ0から100未満の変異、100から242の変異、および243以上の変異であった。
【0386】
研究の管理
個々の著者の参加とともに、スポンサー(Bristol-Myers Squibb)および運営委員会(D.P.C., M.A.S., L.P.A.,およびM.R.)により共同で研究が計画され、データが分析された。全ての研究者がデータを収集した。研究プロトコルは、各センターの施設内倫理委員会または独立した倫理委員会によって承認された。この研究は、良き臨床上の基準に関する医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議のガイドラインおよびヘルシンキ宣言に従って実施された。独立したデータおよび安全性のモニタリング委員会が安全性および有効性の管理を提供した。この報告は、最終データ分析に基づいている(2016年8月2日のデータベースロック)。
【0387】
統計的考察
主要な有効性分析集団(5%以上のPD-L1発現を有する患者)の試料サイズの概算は、化学療法群の7ヶ月の予想されるPFSの中央値およびニボルマブを有利とする0.71の全体のHRに基づいていた。約415人の患者の試料サイズを、疾患の進行または死亡のない患者における約18ヶ月の最小の追跡期間の後に5%の両側有意水準を含むログランク検定を用いて、主要エンドポイントに対する処置効果の差異を検出するために80%の検出力を提供すると推定した。
【0388】
処置群間のPFSおよびOSの比較を、PD-L1発現レベル(無作為化された全ての患者のエンドポイントについて;5%以上対5%未満)および腫瘍組織学によって分類された両側ログランク検定によって実施した。無作為化された処置群を単一の共変数として含む層別コックス比例ハザードモデルを用いて、HRおよびそれに関連する95%CIを概算した。カプランマイヤー法を用いて生存曲線を概算した。ORRを両側層別コクラン-マンテル-ヘンツェル検定を用いて処置群間で比較した。Clopper-Pearson法を用いてORRおよびその正確な95%CIを概算した。
【0389】
結果
患者および処置
本研究に登録された1325人の患者のうち541人(40.8%)を、271人がニボルマブを受け、270人が化学療法を受けるように無作為に分けた;784人(59%)の患者は、評価不能なPD-L1試料(6%)、1%未満のPD-L1(23%)または他の研究基準を満たしていなかったこと(30%)により無作為化されなかった。スクリーニング中において、評価可能なPD-L1結果を有する1047人の患者のうち746人(71.3%)が1%以上のPD-L1発現を有していた。全体で530人の患者(無作為化された全ての患者の98.0%)が処置を受けた(
図1および表18)。主要な有効性分析集団(5%以上のPD-L1発現を有する患者)は、無作為化された全ての患者の78.2%を構成していた。全ての患者の診断から無作為化までの期間の中央値は、ニボルマブ群および化学療法群においてそれぞれ1.9ヶ月(範囲、0.3~214.9)および2.0ヶ月(範囲、0.5~107.3)であり、患者の75.6%および71.9%が診断後3ヶ月以内に対応する処置群に割り当てられた。全体で38.6%の患者が事前に放射線療法を受けていた。
表18:処置終了の概要(処置された全ての患者)。
【表18】
【0390】
化学療法群がより高い割合の女性患者(45.2%対32.1%)および50%以上のPD-L1発現を有する患者(46.7%対32.5%)を有しており、ニボルマブ群がより高い割合の肝転移を有する患者(19.9%対13.3%)およびより高い腫瘍量(標的病変の直径の合計の中央値に基づく;表19)を有していたことを除き、ベースライン特性は一般に処置群間でバランスが取れていた。
表19:無作為化された全ての患者のベースライン特性。
【表19-1】
【表19-2】
ECOGは米国東海岸癌臨床試験グループを意味する。
【0391】
OSの追跡期間の最小値は13.7ヶ月であった。治療期間の中央値は、ニボルマブで3.7ヶ月(範囲、0.0~26.9+)であり、化学療法で3.4ヶ月(範囲、0.0~20.9+)であった(レジメンを表20に示す);処置された患者の38.0%がペメトレキセド維持療法を受けた。ニボルマブを処置した計77人(28.8%)の無作為化された患者は、治験医師が評価したRECIST1.1の進行後もニボルマブを受けた;26人が進行後も6回を超えるニボルマブ投与を受けた。
表20:化学療法試験の処置(処置された全ての患者)。
【表20】
【0392】
ニボルマブ群において5%以上のPD-L1発現を有する患者のうち、43.6%がその後の全身がん療法を受け、処置された患者の18.7%がデータベースロック時にニボルマブを継続していた。化学療法群では64.2%の患者がその後の全身療法を受け、これには試験中(57.5%)および/または試験後の臨床診療(3.3%)において転向処置としてニボルマブを受けた60.4%が含まれていた(表21)。
表21:5%以上のPD-L1発現を有する患者におけるその後の全身療法。
【表21】
【0393】
有効性
主要な有効性分析集団および無作為化された全ての患者
【0394】
主要な有効性分析集団(5%以上のPD-L1発現)では、処置群間でPFSに有意な差はなかった(
図3)。PFSの中央値は、ニボルマブで4.2ヶ月(95%CI、3.0~5.6)であり、化学療法で5.9ヶ月(95%CI、5.4~6.9)であった(HR、1.15;95%CI、0.91~1.45;P=0.2511)。無作為化された全ての患者で類似の結果が得られた(
図4)。
【0395】
主要な有効性分析集団のOSの中央値は、ニボルマブで14.4ヶ月(95%CI、11.7~17.4)であり、化学療法で13.2ヶ月(95%CI、10.7~17.1)であった(HR、1.02;95%CI、0.80~1.30)(
図5)。無作為化された全ての患者で類似の結果が得られた(
図6)。
【0396】
5%以上のPD-L1発現を有する患者のORRは、ニボルマブで26.1%であり、化学療法で33.5%であった;差は統計的に有意ではなかった(表22)。ニボルマブ群と比較すると、化学療法群では進行性疾患に対する最も良い応答を有した患者の割合がより低かった(9.9%対27.5%)。応答までの期間の中央値は2つの処置群で類似していたが、奏功期間の中央値はニボルマブが化学療法の2倍以上であった(12.1対5.7ヶ月;表22)。
表22:5%以上のPD-L1発現を有する患者におけるニボルマブ対化学療法の腫瘍応答*。
【表22】
*データは2016年8月2日のデータベースロックに基づく。PD-L1はプログラム死リガンド1を意味する。
†客観的応答を、固形がんの効果判定基準バージョン1.1に従って独立中央判定によって評価した。95%信頼区間(CI)はClopper-Pearson法に基づく。分析は腫瘍組織学により分類された。層を調整したオッズ比および両側P値をコクラン-マンテル-ヘンツェル法を用いて計算した。
‡応答を有していた全ての患者(ニボルマブ群では55人の患者、治験医師の選択した化学療法群では71人の患者)からのデータを用いて分析を行った。
§応答までの期間を、無作為化から最初に確認された完全寛解または部分応答の日付までの期間として定義した。
¶カプランマイヤー法を用いて結果を計算した。奏功期間を、最初の応答の日付とその後の治療の前に評価された進行、死亡または最後の腫瘍評価のうち最初に確認されたイベントの日付(データ打ち切り日)との間の期間として定義した。
【0397】
選択されたサブグループ
ほとんどの予め定義されたサブグループにわたって、PFSおよびOSは全体的な研究結果と一致していた(
図7~8)。予め定義および分類されたサブグループは組織学のみであった;扁平上皮組織構造を有する患者は、化学療法と比較してニボルマブでのPFSおよびOSを数値的に改善した(
図7~8)。50%以上のPD-L1発現を有する患者のサブグループ予備分析において、PFSおよびOSのHRはそれぞれ1.07(95%CI、0.77~1.49)および0.90(95%CI、0.63~1.29)であった。ORRは、ニボルマブで34.1%(95%CI、24.3%~45.0%)であり、化学療法で38.9%(95%CI、30.3%~48.0%)であった。このサブグループは分類されなかったため、ニボルマブ群は化学療法群よりも患者が少なく(88対126)、集団全体において認められる性別の不均衡がこのサブグループではさらに顕著であった(25.0%対43.7%女性)。
【0398】
312人の患者(結果に対するTMBの影響を評価するための無作為化された患者の57.7%)において予備分析を行った(表23~25;
図9~17)。高いTMB(上位の三分位、33%)を有する患者の割合は、処置群間で不均衡であった(ニボルマブ:29.7%対化学療法:39.0%、表25)。ベースライン特性、PFSおよびOS(表24~25および
図14~15)は一般に無作為化された全ての患者と一致していた。
表23:腫瘍変異量の決定中の試料の消耗。
【表23】
a全血由来の適合した生殖系列DNAを用いて、腫瘍DNAにおける生殖系列の単一ヌクレオチド多型を体細胞ミスセンス変異から区別した。
b試料は様々な理由(限定されないが、患者の遺伝薬理学の同意の欠如、PD-L1検査のために使い尽くされた試料、または不十分な組織サンプリングを含む)で利用できなかった。
c内部精度管理は要素の評価(限定されないが、腫瘍DNAと生殖系列DNAとの間の不一致、少なすぎる配列の読み取り、および多すぎる反復性アーティファクト配列(repetitive artifact sequence)の読み取りを含む)を含んでいた。
d利用可能な腫瘍DNA配列を有する8人の患者は生殖系列DNA配列に適合していなかった。
表24:無作為化された全ての患者および評価可能な腫瘍変異データを有する患者のベースライン特性。
【表24】
ECOG=米国東海岸癌臨床試験グループ。
表25:処置群による評価可能な腫瘍変異データを有する患者のベースライン特性。
【表25-1】
【表25-2】
ECOG=米国東海岸癌臨床試験グループ。
【0399】
高いTMBを有する患者において、ORRは化学療法群(28.3%)よりもニボルマブ群(46.8%)でより高かった(表26)。PFSは、高いTMBを有する患者において化学療法と比較してニボルマブ(中央値、9.7対5.8ヶ月)で改善された(HR、0.62;95%CI、0.38~1.00;
図9)。OSはTMBに関係なく群間で類似していた(
図11~12);しかしながら、化学療法群で高いTMBを有していた患者の65%が転向後にニボルマブを受けていた。TMBとPD-L1発現との間に有意な関連性はなかった(ピアソンの相関係数=0.059;
図18)。
表26:評価可能な患者における腫瘍変異量による応答。
【表26】
*PFSの中央値がいずれの処置群においても低い腫瘍変異量および中程度の腫瘍変異量で類似していたため、低い腫瘍変異量および中程度の腫瘍変異量を有する患者のデータをプールした。
【0400】
安全性
ニボルマブおよび化学療法で処置された患者のそれぞれ71.2%および92.4%に任意の段階の処置関連AEが生じた;処置に関連したグレード3/4のAEを有する患者の割合は、化学療法(50.6%)よりもニボルマブ(17.6%)でより低かった(表11~12)。処置に関連した重篤AEの割合はニボルマブと化学療法で類似していた;しかしながら、試験薬の中止を導く処置関連AEは、化学療法よりもニボルマブでより頻度が低かった(9.7%対13.3%;表27および表29~31)。
表27:ニボルマブまたは化学療法で処置された患者の少なくとも10%において報告された処置関連有害事象*。
【表27】
*データは2016年8月2日のデータベースロックに基づく。安全性分析は試験薬の少なくとも1回の投与を受けた全ての患者を含んでいた。試験薬の初回投与時から最後の投与の30日後またはニボルマブ転向の初回投与時のいずれか早い方までに報告された事象が含まれる。
表28:ニボルマブまたは化学療法で処置された患者の5%以上における処置関連有害事象。
【表28】
表29:ニボルマブまたは化学療法で処置された患者の2%以上における処置に関連した重篤有害事象。
【表29】
表30:ニボルマブの中止を導く処置関連有害事象
【表30】
表31:化学療法の中止を導く処置関連有害事象
【表31】
【0401】
最も一般的な選択された処置関連AE(潜在的な免疫学的原因を有するAE)はニボルマブ群において皮膚関連事象であり、化学療法群において消化管事象であった(表32)。
表32:ニボルマブまたは化学療法で処置された患者における選択された処置関連有害事象
a。
【表32】
a選択された有害事象は、頻繁なモニタリング/介入を必要とする潜在的な免疫学的病因を有する有害事象である;これには試験薬の初回投与時から最後の投与の30日後またはニボルマブ転向の初回投与時のいずれか早い方までに報告された事象が含まれる。
【0402】
5例の死亡(ニボルマブ群での2例の死亡(多臓器障害および肺臓炎から各1例)および化学療法群での3例の死亡(敗血症から1例および発熱性好中球減少症から2例)を含む)が試験の処置に起因した。
【0403】
考察
本研究は、IV期/再発NSCLCおよび5%以上のPD-L1発現を有する患者において化学療法と比較して第一選択のニボルマブ単独療法の優れたPFSの主要エンドポイントを満たさなかった。OSは2つの処置群で類似しており、白金を用いた第一選択化学療法の歴史的対照に匹敵していた3-8。ニボルマブ療法が以前に処置された進行性NSCLC患者の生存期間を延長することを考慮すると9,10、その後の高頻度のニボルマブ処置は化学療法群の良好なOSに寄与した可能性がある。ベースライン特性の不均衡は化学療法群を有利にした可能性があり、これはより良い予後の疾患特性(すなわち、より少ない肝転移、より少ない腫瘍量およびより高い女性の割合)を含む3,4,16。
【0404】
50%以上のPD-L1発現を有する患者において処置の有効性を比較する分析は本研究で事前に決められておらず、2つの群は患者数に大きな不均衡があり(88対126)、これによりこのサブグループにおいて導かれ得る結論は制限された。対照的に、KEYNOTE-024試験は、50%以上のPD-L1を発現する化学療法未処置の進行性NSCLC患者のみにおいて、ペンブロリズマブ対化学療法の活性を評価した17。試験間のその他の差異は最近の総説に概説されており18、例として、PD-L1腫瘍発現を評価する異なるアッセイ、事前の放射線療法および研究中のコルチコステロイドの使用に関連した基準、ならびに処置群間の患者の特性の不均衡(例えば、本試験の性別、および化学療法と比較したKEYNOTE-024の免疫療法群における喫煙未経験者のより低い割合[3.2%])が含まれる17,18。
【0405】
KEYNOTE-024は、50%以上のPD-L1発現を有するNSCLC患者における第一選択処置としてのペンブロリズマブの役割を確立した(PFSの中央値、10.3ヶ月;ORR、45%);しかしながら、この設定では患者の大多数に満たされていないニーズが残り、免疫腫瘍療法の結果をより良く予測するために、腫瘍-免疫相互作用の複雑さにより、PD-L1に加えてバイオマーカーが研究され続けている。
【0406】
予備分析では、TMBを評価可能な患者のうち高いTMBのサブグループにおいて、ニボルマブが化学療法と比較してORRおよびPFSを改善した(ニボルマブORR、46.8%;PFSの中央値、9.7ヶ月)。高いTMBのサブグループでは処置群間のOSに差はなく、これは化学療法群におけるニボルマブへの高い転向(65%)により部分的に説明され得る。それにもかかわらず、高いTMBのサブグループは注目すべきOS(18ヶ月を超えるOSの中央値)を有していた。TMBレベルと腫瘍PD-L1発現は関連していないようであり、高いTMBおよび50%以上のPD-L1発現の両方を有する患者は、これらの要素のいずれかまたは両方を有さない患者よりもニボルマブに応答する可能性が高くなり得る。まとめると、この予備分析の知見は、免疫療法が高いTMBを有する患者において増強された活性を有するという仮説14を支持し、前向きな確認を必要とする。
【0407】
本試験の広範なPD-L1発現集団において、ニボルマブ単独療法は白金を用いた化学療法に匹敵し、将来の第一選択の併用戦略のための有望な基盤を与え、これは長期的な結果を改善し得、抗PD-1療法から恩恵を受ける患者集団を拡大し得る。ニボルマブとイピリムマブ(これは宿主免疫応答の抑制に関与する制御性T細胞を枯渇させる19,20)を組み合わせることは抗腫瘍活性を改善し得る21。CheckMate012からの知見は、この組合せが第一選択のNSCLC状況において臨床活性を増強し得ることを示唆する。1%以上のPD-L1発現を有する患者では、ORRはニボルマブ単独療法コホートと比較してニボルマブプラスイピリムマブのコホートで2倍となり(57%対28%)、1年間のOSの割合は87%であった12,22,23。第3相試験(CheckMate227;NCT02477826)では、IV期/再発NSCLCを有する化学療法未処置の患者においてニボルマブプラスイピリムマブまたは化学療法の有効性および安全性を評価している。さらに、いくつかの進行中の第3相試験では、NSCLCにおいて二重チェックポイント阻害剤の遮断またはPD-1阻害剤プラス化学療法を評価している(例えば、NCT02453282、NCT02367781、およびNCT02578680)。
【0408】
結論として、ニボルマブ単独療法は、5%以上のPD-L1発現を有する患者の広範な集団におけるIV期/再発NSCLCの第一選択処置として白金を用いた化学療法と比較してPFSを改善しなかった。単剤ニボルマブでのOSは頑強であり、白金二重化学療法に匹敵していた。さらに、これはPD-1阻害剤療法が高いTMBを有する患者の結果を改善することにより恩恵を増大させたか否かを評価するための予備エンドポイントを含む最初の第3相試験である。ニボルマブは化学療法と比較して安全性プロファイルを改善し、新たな安全性シグナルは観察されなかった。
【0409】
実施例2。
IV期または再発非小細胞肺がんにおける第一選択ニボルマブの第3相試験由来の試料を用いた、一致を評価するための標的遺伝子パネル(FOUNDATIONONE(登録商標))対全エクソームシーケンシングの検査。
TMBは、検査される腫瘍ゲノムの1メガベースあたりの体細胞変異の数として定義される。全エクソームシーケンシングと比較してより少ない遺伝子を配列決定することによりTMBを計算できると仮定した。FOUNDATIONONE(登録商標)を用いたシーケンシングは249のがん標本を用いて以前に検証されている。例えば、Frampton GM et al. Nat Biotechnol. 2013;31:1023-1031参照。
【0410】
TMB値が同等であるか否か、および全エクソームシーケンシング(WES)由来のデータとFOUNDATIONONE(登録商標)アッセイデータとの間に一致が存在するか否かを評価するために、本試験に登録されている(実施例1からの)患者からのTMBデータを2つのシーケンシングプラットフォーム(WESおよびFOUNDATIONONE(登録商標))を用いて生成した。
【0411】
方法
ホルマリン固定されたパラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織試料のDNAにおけるTMBを、2つのハイブリダイゼーションキャプチャー/NGS法を用いて評価した。WESでは、21,522遺伝子のコード領域を分析した。簡潔に述べると、腫瘍エクソームデータおよび生殖系列(血液)エクソームデータを収集し、体細胞ミスセンス変異を同定するために比較した(
図21)。次に、TMBを腫瘍エクソームのミスセンス変異の総数として定義した。
【0412】
FOUNDATIONONE
(登録商標)では、315個のがん関連遺伝子の標的遺伝子パネルを分析した。TMBを検査した腫瘍ゲノムの1メガベースあたりの体細胞変異の数として定義した。この分析の感度および精度は249のがん標本を用いて以前に検証されており、この方法は多くの種類の腫瘍(最近の102,292個の腫瘍の研究を含む;Chalmers et al., Genome Med. 9:34 (2017)参照)にわたってTMBを評価するために使用されている(Frampton et al., Nat. Biotechnol. 31:1023 (2013)参照)。
図21に実験計画を示す。
【0413】
結果
全エクソームシーケンシング(WES)によって決定されたTMBを、FOUNDATIONONE
(登録商標)シーケンシング(F1)によって決定されたTMBに対して線形にプロットした。
図22に示されるように、TMBは両技術間で高度に相関しており、全エクソームシーケンシングにより同定された多くのミスセンス変異およびFOUNDATIONONE
(登録商標)シーケンシングにより同定された多くの体細胞変異が、ブートストラップ(分位点)法を用いて計算した0.95の信頼限界内に含まれている(スピアマンのr=0.9)。
【0414】
FOUNDATIONONE
(登録商標)と全エクソームシーケンシングとの間のTMBの一致を決定するために、148個のミスセンス変異のTMB値を中央値として設定した(
図22、垂直方向の破線)。同じのデータ点において、FOUNDATIONONE
(登録商標)シーケンシングを用いて44個の試料において1メガベースあたり7.64個の体細胞変異があったことが計算された(
図22、水平方向の破線)。表33に示されるように、両シーケンシング法の間の相関はブリッジ(bridge)されている。したがって、FOUNDATIONONE
(登録商標)シーケンシングは、第一選択のニボルマブの第3相試験に登録されたIV期または再発非小細胞肺がんの患者の腫瘍変異量を同定するのに使用され得る。
表33.FOUNDATIONONE
(登録商標)シーケンシングおよび全エクソームシーケンシングによるTMBのブリッジ。
【表33】
【0415】
検量線を用いて、全エクソームシーケンシング由来のTMBデータをFOUNDATIONONE(登録商標)シーケンシングに基づくTMBデータに射影した。全体として、全エクソームシーケンシングとFOUNDATIONONE(登録商標)シーケンシングとの間で86%の一致(73~94;95%のウィルソンの信頼区間)があった。正の相関に関して、全エクソームシーケンシングとFOUNDATIONONE(登録商標)シーケンシングとの間で86%の一致(67~95;95%のウィルソンの信頼区間)があった。また負の相関に関して、全エクソームシーケンシングとFOUNDATIONONE(登録商標)シーケンシングとの間で86%の一致(67~95;95%のウィルソンの信頼区間)があった。これらのデータは、全エクソームシーケンシングおよびFOUNDATIONONE(登録商標)シーケンシングのブリッジが全エクソームシーケンシング由来のバイオマーカーデータのFOUNDATIONONE(登録商標)シーケンシングへの移行を促進することを示している。
【0416】
本試験は、TMBデータが試験プラットフォームを超えて調和し得るという仮説を最終的に支持する。TMBは精密な免疫腫瘍療法のための新たなバイオマーカーであるため、試験プラットフォームを超えてデータを調和させる能力は代替試験の選択肢の提供に役立つ。
【0417】
実施例3
再発小細胞肺がん(SCLC)を有する患者は処置の選択肢が制限されており、生存率が低い。SCLC患者の臨床試験の最初の結果は、ニボルマブ単独またはイピリムマブとの組合せによる持続的な応答および有望な生存率を示した。ニボルマブおよびイピリムマブの組合せを受けた患者の26%が、ニボルマブ単独療法を受けた患者の14%と比較して2年を超える全生存期間を有していた。これらのデータは、SCLC処置のためのNCCNガイドラインにイピリムマブを伴う、または伴わないニボルマブを包含することを支持した。
【0418】
腫瘍PD-L1発現はSCLCではまれであり、PD-L1状態に関係なく応答が観察されている。SCLCの免疫療法のためにバイオマーカーの改善が必要とされている。以前に、高いTMBを有する対象は、低いまたは中程度のTMBを有する対象と比較してニボルマブ単独療法での処置後の無増悪生存率(PFS)がより高いことが見出された。SCLCは喫煙歴のある患者にほぼ独占的に見出され、高いTMBを特徴とする。TMBと有効性との間の関連がNSCLCおよび膀胱がんにおいてニボルマブで見られており、黒色腫においてイピリムマブで見られている。高いTMBは、SCLCにおいてニボルマブ±イピリムマブの恩恵の増強と関連し得る。本研究は、SCLCにおけるイピリムマブを伴う、または伴わないニボルマブの予測バイオマーカーとしての腫瘍変異量(TMB)の使用を検討する。
【0419】
研究計画
【0420】
以前にSCLCと診断されており、以前に少なくとも1つの事前の白金を含むレジメンを受けていた対象を選択した(
図23)。無作為化されていない患者および無作為化された患者(3:2)は、(1)疾患進行または容認できない毒性まで2週間毎の3mg/kgニボルマブの静脈内投与を含むニボルマブ単独療法;または(2)4サイクルで3週間毎の1mg/kgニボルマブおよび3mg/kgイピリムマブの静脈内投与を含むニボルマブ/イピリムマブ併用療法ならびにその後の疾患進行または容認できない毒性まで2週間毎の3mg/kgニボルマブの静脈内投与のニボルマブ単独療法のいずれかを受けた。
【0421】
主な目的は、RECIST v1.1により奏効率(ORR)を測定することであった。副次的な目的には、安全性、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)および奏功期間(DOR)のモニタリングが含まれていた。事前に決められていた予備の目的には、バイオマーカー分析およびEQ-5D手法を用いた健康状態が含まれていた。
【0422】
TMBを、2×100bpのペアードエンドの読み取りを用いてIllumina HiSeq 2500を使用した全エクソームシーケンシングによって決定し、腫瘍中の非同義ミスセンス変異の総数として計算した。予備分析のために、患者をTMBの三分位に基づいて3つのサブグループに分けた。
【0423】
ベースライン
【0424】
ニボルマブ単独療法には合計245人の対象(ITT)が含まれ、そのうち133人がTMB評価可能であった(表34および
図24)。ニボルマブ/イピリムマブ併用療法には合計156人の対象(ITT)が含まれ、そのうち78人がTMB評価可能であった(表34および
図24)。
表34:ベースライン特性
【表34】
【0425】
結果
【0426】
無増悪生存期間(PFS;
図25Aおよび25C)および全生存期間(OS;
図25Bおよび25D)は、ニボルマブ単独療法(
図25Aおよび25B)とニボルマブ/イピリムマブ併用療法(
図25Cおよび25D)のITT患者間およびTMB評価可能なサブセット間において同等であった。ITTおよびTMB評価可能な患者のORRは、それぞれニボルマブ単独療法で11.4%および11.3%であり、ニボルマブ/イピリムマブ併用療法で21.8%および28.2%であった。ニボルマブ単独療法またはニボルマブ/イピリムマブ併用療法を受けた患者のTMB分布を
図26Aに示す。プールした場合(
図26B)、SCLCコホートの全体のミスセンス変異の分布は最近の非小細胞肺がん(NSCLC)研究の全体のミスセンス変異の分布と同等であった(
図26C)。
【0427】
奏効率(ORR)は、ニボルマブ単独療法を投与した対象(11.3%)よりもニボルマブ/イピリムマブ併用療法を投与したTMB評価可能な対象(28.2%)においてより高かった(
図27)。TMBによって分類した場合、高いTMBを有する対象において最も高い効果が観察された。ニボルマブ単独療法またはイピリムマブ単独療法で処置された低いTMBを有する対象は、それぞれ約4.8%および22.2%のORRを示した。ニボルマブ単独療法またはイピリムマブ単独療法で処置された中程度のTMBを有する対象は、それぞれ約6.8%および16.0%のORRを示した。ニボルマブ単独療法またはイピリムマブ単独療法で処置された高いTMBを有する対象は、それぞれ約21.3%および46.2%のORRを示した。
【0428】
一般に、より良い応答を経験した対象は、より多くのミスセンス腫瘍変異を有していた。完全寛解(CR)または部分応答(PR)を経験したニボルマブ単独療法を投与された対象は平均で325のミスセンス変異を有し、安定疾患を経験した該対象は平均で211.5のミスセンス変異を有し、安定疾患を経験した該対象は平均で185.5のミスセンス変異を有していた(
図28A)。完全寛解(CR)または部分応答(PR)を経験したニボルマブ/イピリムマブ併用療法を投与された対象は平均で266のミスセンス変異を有し、安定疾患を経験した該対象は平均で202のミスセンス変異を有し、安定疾患を経験した該対象は平均で156のミスセンス変異を有していた(
図28B)。
【0429】
さらに、高いTMBを有する対象は、低いまたは中程度のTMBを有する対象と比較してニボルマブ単独療法(
図29A)またはニボルマブ/イピリムマブ併用療法(
図29B)での処置後にPFSの増加を示した。ニボルマブ単独療法について、平均PFSは低いTMBおよび中程度のTMBの対象で約1.3%であり、高いTMB対象で約1.4%であり、1年間のPFSは中程度のTMBではわずか3.15であったのに対し、高いTMB対象では21.2%であった(
図29A)。ニボルマブ/イピリムマブ併用療法について、平均PFSは低いTMB対象で約1.5%であり、中程度のTMB対象で1.3%であり、高いTMB対象で約7.8%であり、1年間のPFSは中程度および低いTMB対象ではそれぞれ約8.0%および6.2%であったのに対し、高いTMB対象では約30%であった(
図29B)。
【0430】
同様に、高いTMBを有する対象は、低いまたは中程度のTMBを有する対象と比較してニボルマブ単独療法(
図30A)またはニボルマブ/イピリムマブ併用療法(
図30B)での処置後にOSの増加を示した。ニボルマブ単独療法について、OSの中央値は低いTMB対象で約3.1%であり、中程度のTMB対象で約3.9%であり、高いTMB対象で約5.4%であり、1年間のOSは中程度のTMBで約26.0%であり、低いTMB対象で22.1%であったのに対し、高いTMB対象では35.2%であった(
図30A)。ニボルマブ/イピリムマブ併用療法について、OSの中央値は低いTMB対象で約3.4%であり、中程度のTMB対象で3.6%であり、高いTMB対象で約22%であり、1年間のOSは、中程度および低いTMB対象ではそれぞれ約19.6%および23.4%であったのに対し、高いTMB対象では約62.4%であった(
図30B)。
【0431】
実施例4
プログラム死(PD)-1阻害剤であるニボルマブは、転移性または外科的に切除不能な尿路上皮がん(UC)を有する患者(pts)の単一群第II相試験において有効性を示した(CheckMate275;Sharma et al. 2017)。現在の分析は、処置前の腫瘍変異量(TMB)とニボルマブに対する応答との間の潜在的な関連を検証している。
【0432】
方法
【0433】
処置前の保存された腫瘍組織および適合した全血試料からの腫瘍DNAを全エクソームシーケンシングによってプロファイルした。TMBを腫瘍あたりのミスセンス体細胞変異の総数として定義し、連続変数として、および三分位によって評価した(ミスセンスの数:167が高い、85~166が中程度、85未満が低い)。コックスモデルを用いて、TMBと無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)との間の関連;ならびに奏効率(ORR)のロジスティック回帰を検討した。腫瘍PDリガンド1(PD-L1)の発現を、Dako PD-L1免疫組織化学28-8アッセイによって評価し、<1%として分類した。
【0434】
結果
【0435】
270人の患者のうち139人(51%)が評価可能なTMBを有していた。ベースライン特性、ORR、PFSおよびOSは、処置された全ての患者とTMBサブグループとの間で類似していた。全ての患者およびTMB/PD-L1サブグループのORR、PFSおよびOSを表35に示す。TMBは、ベースライン腫瘍PD-L1発現、肝転移状態および血清ヘモグロビンについて調整した場合でさえORR(P1/4 0.002)およびPFS(P1/4 0.005)と統計的に有意な正の関連を示し、OS(P1/4 0.067)との強い関連を示した。高いTMBは、1%未満のPD-L1発現を有する患者の生存期間に最も大きな影響をもたらした(表35)。
【0436】
これらの予備的な知見は、TMBがニボルマブに対する応答を強化し得、PD-L1を超える補完的な予後/予測情報を提供し得ることを示唆する。免疫療法で処置されたUC患者の他のバイオマーカーの観点からTMBの予後/予測値を定義するために、無作為化試験におけるさらなる分析が必要とされる。
表35:ORR、PFSおよびOS:全ての患者およびTMB/PD-L1サブグループ。
【表35】
【0437】
実施例5:非小細胞肺がんの高い腫瘍変異量におけるニボルマブプラスイピリムマブ
ニボルマブ+イピリムマブは第1相NSCLC試験において有望な有効性を示し、腫瘍変異量(TMB)は恩恵の潜在的なバイオマーカーとして現れた。この試験は、バイオマーカーにより選択されたNSCLC集団における第一選択のニボルマブおよびニボルマブを用いた組合せの非盲検マルチパートの第3相試験である。本発明者らは、高いTMB(10変異/Mb以上)を有する患者におけるニボルマブ+イピリムマブ対化学療法での無増悪生存期間(PFS)の共主要エンドポイントに関するパート1の結果を報告する。本研究は、PD-L1により選択された患者の全生存期間の主要エンドポイントについて継続している。
【0438】
患者は化学療法未処置のIV期または再発NSCLCを有していた。1%以上の腫瘍PD-L1発現を有する患者を、ニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブまたは化学療法に1:1:1で無作為に分けた;1%未満の腫瘍PD-L1発現を有する患者を、ニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ+化学療法または化学療法に1:1:1で無作為に分けた。TMBをFOUNDATIONONE(登録商標)CDX(商標)を用いて決定した。
【0439】
高いTMB(10変異/Mb以上)を有する患者のPFSは、化学療法と比較してニボルマブ+イピリムマブで有意に長かった(HR、0.58;97.5%CI、0.41~0.81;P=0.0002);1年間のPFS率はそれぞれ43%および13%であり、PFSの中央値(95%CI)はそれぞれ7.2(5.5~13.2)ヶ月および5.5(4.4~5.8)ヶ月であった。奏効率はそれぞれ45.3%および26.9%であった。化学療法に対するニボルマブ+イピリムマブの恩恵は、サブグループ(1%以上および1%未満のPD-L1発現を有するサブグループを含む)内で広く一貫していた。グレード3-4の処置に関連する有害事象の割合はそれぞれ31%および36%であった。
【0440】
PFSは、PD-L1発現とは無関係に10変異/Mb以上のTMBを有するNSCLCにおいて化学療法に対して第一選択のニボルマブ+イピリムマブで有意に改善した。この結果により、NSCLCにおけるニボルマブ+イピリムマブの恩恵および患者選択のバイオマーカーとしてのTMBの役割が確認される。
【0441】
患者の選択
【0442】
登録前6ヶ月以内に得られた(何らかの介入的(intervening)全身性抗がん療法を受けた患者を含まない)新鮮または保存された腫瘍生検標本を、抗PD-L1抗体(28-8抗体)を用いて中央研究所によりPD-L1について検査した。Hanna, N., et al. J Oncol Pract 13:832-7 (2017)。
【0443】
PD-L1が組織学的に確認された扁平上皮または非扁平上皮IV期/再発NSCLCを有し、0または1の米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)の全身状態(Oken M.M., et al. Am J Clin Oncol 5:649-55 (1982))を有し、進行性または転移性疾患の一次療法として以前に全身性抗がん療法を受けていない成人患者が本試験の対象となった。
図31参照。全ての患者が脳転移のためのスクリーニングのためにイメージングを受けた。標的療法に感受性がある既知のEGFR変異もしくはALK転座、自己免疫疾患または未処置の中枢神経系転移を有する患者を除外した。中枢神経系転移を有する患者は適切に処置され、無作為化の2週間以上前に神経学的にベースラインまで戻っていた場合に対象とした。
【0444】
さらなる包含および除外の基準として、局所進行疾患に対する事前のアジュバントもしくはネオアジュバント化学療法または事前の根治的化学放射線療法を、最大で登録の6ヶ月前まで許可した。非中枢神経系病変に対する事前の緩和的放射線療法は、無作為化の2週間以上前に完了されていなければならなかった。患者は無作為化の2週間以上前にグルココルチコイドをやめなければならず、または安定もしくは減少性の用量の1日あたり10mg以下のプレドニゾン(または等価物)を服用しなければならなかった。
【0445】
試験計画および処置
【0446】
本研究は、異なる患者集団において種々のニボルマブを用いたレジメン対化学療法を評価するために設計されたマルチパートの第3相試験であった。16ヶ月間にわたって、1%以上および1%未満の腫瘍PD-L1発現を有する患者が同じ施設に同時期に登録された(
図31)。1%以上のPD-L1発現を有する患者を、(i)2週間毎の3mg/kgのニボルマブプラス6週間毎の1mg/kgのイピリムマブ、(ii)最大で4サイクルの3週間毎の組織学に基づく白金二重化学療法、または(iii)2週間毎の240mgのニボルマブに無作為に分け(1:1:1)、腫瘍組織学によって分類した(扁平上皮NSCLC対非扁平上皮NSCLC)。1%未満のPD-L1発現を有する患者を、(i)2週間毎の3mg/kgのニボルマブプラス6週間毎の1mg/kgのイピリムマブ、(ii)最大で4サイクルの3週間毎の組織学に基づく白金二重化学療法、または(iii)最大で4サイクルの3週間毎の360mgのニボルマブプラス組織学に基づく白金二重化学療法に無作為に分け(1:1:1)、腫瘍組織学によって分類した。4サイクルの化学療法またはニボルマブを伴う化学療法後に安定した疾患または応答を有していた非扁平上皮NSCLC患者は、ペメトレキセド維持療法またはペメトレキセドプラスニボルマブを継続し得た。全ての処置を、疾患の進行、容認できない毒性またはプロトコル毎の完了(免疫療法では最大で2年)まで継続した。試験内の処置間の転向は許可しなかった。
【0447】
試験のパート1に登録された2877人の患者のうち、1739人が無作為化を受けた。無作為化されなかった1138人の患者のうち、909人の患者がすでに試験基準を満たしておらず(一般的な理由には、EGFR/ALK変異の同定、ECOG PSの低下、未処置の脳転移および評価不能なPD-L1発現が含まれる)、88人の患者が同意を撤回し、40人の患者が死亡し、33人の患者が(試験薬とは無関係の)有害事象を有し、6人の患者が追跡不能となり、62人の患者が他の理由で除外された。
【0448】
表36および37に示されるように、無作為化された全ての患者およびTMB評価可能な全ての患者のベースライン特性は処置群間で類似しており、バランスが取れていた。
表36:無作為化された全ての患者のベースライン特性。
【表36】
ECOG PS=米国東海岸癌臨床試験グループの全身状態;PD-L1=プログラム死リガンド1。
表37:TMB評価可能な全ての患者のベースライン特性
【表37】
ECOG PS=米国東海岸癌臨床試験グループの全身状態
【0449】
腫瘍変異量分析
【0450】
TMBを、有効なアッセイFOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標)(これは次世代シーケンシングを利用して324遺伝子の置換、挿入および欠失(インデル)ならびにコピー数変化を検出し、遺伝子再構成を選択する)を用いて新鮮または保存されたホルマリン固定されたパラフィン包埋腫瘍試料において評価した。Ettinger, D.S., et al. J Natl Compr Canc Netw, 15:504-35 (2017)。独立した報告は、全エクソームシーケンシング(WES)から概算されたTMBと標的次世代シーケンシング(NGS)から概算されたTMBとの間の一致を実証している。2018年米国癌学会年次総会において発表されたSzustakowski J., et al. Evaluation of tumor mutation burden as a biomarker for immune checkpoint inhibitor efficacy: A calibration study of whole exome sequencing with FoundationOne(登録商標); 2018; Chicago, Illinois; Zehir A, et al. Nat Med 2017;23:703-713; Rizvi H., et al., J Clin Oncol 2018;36:633-41参照。TMBを以前に規定された方法に従って計算した。Reck, M., et al., N Engl J Med, 375:1823-33 (2016)。簡潔に述べると、TMBを、検査したゲノムの1メガベースあたりの体細胞コーディング塩基の置換および短いインデルの数として定義した。標的遺伝子のコード領域における全ての塩基置換およびインデル(同義変異を含む)を、COSMICに従って発がん性ドライバーイベントについて、ならびにFoundation Medicineの臨床コホートにおいて収集された珍しい生殖系列イベントの私的データベースに加えてdbSNPおよびExACデータベースに従って生殖系列状態についてフィルター処理した。SGZ(体細胞系-生殖細胞系-接合性)ツールを用いた生殖系列状態の計算評価に基づいてさらなるフィルター処理を行った。Aguiar, P.N., et al., ESMO Open, 2:e000200 (2017)。
【0451】
表38に示されるように、無作為化された全ての患者(N=1739)のうち1649人(95%)がTMB評価のための腫瘍試料を有し、1004人(58%)がTMBに基づく有効性分析のための有効なTMBデータを有していた。
表38:TMB決定全体における試料サイズ
【表38】
a無作為化された患者にはパート1の全ての処置群(ニボルマブ+イピリムマブ群、ニボルマブ群、化学療法群、およびニボルマブ+化学療法群)からの患者が含まれる。
b全ての試料に対して分析前の品質管理チェックを行い、不正確性(これは限定されないが、不正確な要件、不十分な試料の受け取りおよび試料の重複から構成される)を通知(flag)した。FOUNDATIONONE
(登録商標) CDX
(商標)アッセイは、以下の重要な特徴を含む網羅的な品質管理基準を採用している:腫瘍の純度、DNA試料のサイズ、組織試料のサイズ、ライブラリー構築のサイズ、およびハイブリッドキャプチャーの収量。
【0452】
全ての処理群にわたってTMB評価可能な全ての患者のうち、444人(44%)が10変異/Mb以上のTMBを有し、これにはニボルマブプラスイピリムマブに無作為に分けられた139人の患者および化学療法に無作為に分けられた160人の患者が含まれる。表39に示されるように、2つの処置群間のベースライン特性(PD-L1発現の分布を含む)は、よくバランスが取れていた。TMB評価可能な集団において、TMBとPD-L1発現との間に相関はなかった。
図36Aおよび36B。
表39:10変異/Mb以上のTMBを有する患者のベースライン特性。
【表39】
【0453】
11.2ヶ月の最低限の追跡期間において、ニボルマブプラスイピリムマブおよび化学療法で処置された患者のそれぞれ17.7%および5.6%が処置を続けていた。表40参照。
表40:処置終了の概要。
【表40】
【0454】
化学療法に割り当てられた患者のうち、28.1%がその後の免疫療法を受けた。表41参照。
表41:10変異/Mb以上のTMBを有する患者におけるその後の全身療法
a。
【表41】
aデータベースロック時に、ニボルマブ+イピリムマブで処置された患者の24%および化学療法で処置された患者の3%が未だ処置中であった。
b5人の患者は全員、ニボルマブと組み合わせてイピリムマブを受けた。
【0455】
治療期間の中央値は、ニボルマブプラスイピリムマブで4.2ヶ月(範囲、0.03~24.0+)であり、化学療法で2.6ヶ月(範囲、0.03~22.1+)であった。併用療法として受けたニボルマブ(2週間毎)およびイピリムマブ(6週間毎)の投与回数の中央値は、それぞれ9回(範囲、1~53回)および3回(範囲、1~18回)であった。
【0456】
高いTMB(10変異/Mb以上)を有する患者のうち、ニボルマブプラスイピリムマブで処置された24.2%および化学療法で処置された3.1%がデータベースロック時に処置を継続していた;処置を中止した最も一般的な理由は、疾患の進行(それぞれ37.8%および47.2%)、試験薬の毒性(それぞれ25.9%および8.8%)および化学療法群の患者における必要な処置の完了(ニボルマブプラスイピリムマブで処置された患者に対して26.4%対0%)であった。
【0457】
エンドポイントおよび評価:
【0458】
本試験のパート1は、2つの共主要エンドポイントを有していた。共主要エンドポイントの1つは、TMBにより選択された患者集団におけるニボルマブプラスイピリムマブ対化学療法での(盲検独立中央判定によって評価された)無増悪生存期間(PFS)であった。以前の知見に基づいて(2018年米国癌学会年次総会において発表されたRamalingam SS, et al. Tumor mutation burden (TMB) as a biomarker for clinical benefit from dual immune checkpoint blockade with nivolumab (nivo) + ipilimumab (ipi) in first-line (1L) non-small cell lung cancer (NSCLC): identification of TMB cutoff from CheckMate 568.; 2018; Chicago, Illinois.)、10変異/Mb以上の予め定義されたTMBカットオフを共主要エンドポイントの予め計画された分析のために選択した。第2の共主要エンドポイントは、PD-L1により選択された患者集団におけるニボルマブプラスイピリムマブ対化学療法での全生存期間(OS)であった。
【0459】
表42に示されるように、TMBにより選択された患者集団における二次エンドポイントには、13変異/Mb以上のTMBおよび1%以上のPD-L1発現を有する患者におけるニボルマブ対化学療法でのPFS、ならびに10変異/Mb以上のTMBを有する患者におけるニボルマブプラスイピリムマブ対白金二重化学療法でのOSが含まれていた。
表42:TMBにより選択された患者における階層的な仮説検証。
【表42】
PFS=無憎悪生存期間;ORR=奏効率;OS=全生存期間
【0460】
ニボルマブ対化学療法でのPFSの二次エンドポイントのための13変異/Mb以上のTMBカットオフは、以前の研究(全エクソームシーケンシングデータをFOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標)データに変換するブリッジ研究を含む)からの分析に基づいていた。Carbone et al. N Engl J Med 2017;376:2415-26;2018年米国癌学会年次総会におけるSzustakowski et al.. Evaluation of tumor mutation burden as a biomarker for immune checkpoint inhibitor efficacy: A calibration study of whole exome sequencing with FoundationOne(登録商標). Chicago, Illinois; 2018参照。奏効率(ORR)、奏功期間および安定性が予備エンドポイントであった。有害事象を米国国立がん研究所の有害事象共通用語規準バージョン4.0に従って段階分けした。PD-L1を以前に記述されているように決定した。(2016年10月20日にアクセスしたaccessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf15/P150027c.pdfにおける)ラベリング:PD-L1 IHC 28-8 pharmDx. Dako North America, 2016参照。
【0461】
検査したゲノムの1メガベースあたりの体細胞コーディング塩基の置換ならびに短い挿入および欠失(インデル)の数として定義されたTMBを、FOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標)アッセイを用いて決定した。例えば、(2018年2月8日にアクセスしたfoundationmedicine.com/genomic-testing/foundation-one-cdxにおける)FOUNDATIONONE(登録商標) CDX(商標). Foundation Medicine, 2018; Chalmers et al., Analysis of 100,000 human cancer genomes reveals the landscape of tumor mutational burden. Genome Med 2017;9:34;およびSun JX, He Y, Sanford E, et al. The mutation count following application of various filters was divided by the region counted (0.8 Mb) to yield mutations/Mb参照。
【0462】
10変異/Mb以上のTMBを有する患者におけるニボルマブプラスイピリムマブ対化学療法でのPFSの共主要エンドポイントについて、死亡または疾患進行の約221のイベントを有する少なくとも265人の患者の試料サイズが、両側ログランク検定により0.025の両側第1種過誤を伴って、化学療法と比較してニボルマブプラスイピリムマブを支持する0.66のハザード比を検出するために80%の検出力を提供すると推定された。付随する両側信頼区間を伴うPFSのハザード比を、処置群を単一の共変数として用いる非層別コックス比例ハザードモデルを使用して概算した。多変量解析が10変異/Mb以上のTMBを有する患者において事前に決められており、PFSに対する既知の予後ベースライン因子の影響を評価した。対応する両側97.5%CIを含むハザード比の概算値を、TMBにより選択された患者における階層的な仮説検証で特定された一次比較および二次比較について計算した(上記の表42参照);他の全ての概算値について、処置効果の差異を推測するのに使用されるべきではない両側95%CIを計算した。生存曲線を、カプランマイヤー法を用いて推定した。
【0463】
結論として、本試験はその共主要エンドポイントを満たし、この結果は進行性NSCLCの2つの新たな標準治療を確立し得る。第1に、この結果により、重要な独立したバイオマーカーとしてTMBの役割が確認されたため、処置未経験のあらゆるNSCLC患者はTMBについて検査されるべきである。第2に、本試験は、10変異/Mb以上の高いTMBを有する患者の新たな第一選択処置の選択肢としてニボルマブプラスイピリムマブを導入する。これらの結果は、有効な第二選択の選択肢を維持しつつ、持続的な恩恵を受ける可能性が最も高い患者に有効な第一選択の化学療法を温存した併用免疫療法を提供することによって肺がんを処置するより個別化された手法を提供する。NSCLC患者のための予測バイオマーカーとしてのTMBの使用は精密医療の例を提供し、これは併用免疫療法から恩恵を受ける可能性が最も高い患者に合わせて処置を調整する。
【0464】
無作為化された全ての患者
【0465】
(PD-L1発現とは無関係に)無作為化された全ての患者において、PFSが化学療法に対してニボルマブプラスイピリムマブで改善し(ハザード比[HR]、0.83;95%、0.72~0.96)、1年間のPFS率は17%に対して31%であった。PFSの中央値はニボルマブプラスイピリムマブで4.9ヶ月(95%CI、4.1~5.6)であり、化学療法で5.5ヶ月(95%CI、4.6~5.6)であった。TMB評価可能な患者において、ニボルマブプラスイピリムマブ対化学療法で類似の恩恵が見られ(HR、0.82;95%CI、0.68~0.99)、1年間のPFS率は32%対15%であった;PFSの中央値はそれぞれ4.9ヶ月(95%CI、3.7~5.7)および5.5ヶ月(95%CI、4.6~5.6)であった。
図34Aおよび34B参照。
【0466】
高いTMB(10変異/Mb以上)を有する患者対低いTMBを有する患者
【0467】
高いTMB(10変異/Mb以上)を有する患者における共主要エンドポイントの分析は、化学療法と比較してニボルマブプラスイピリムマブでPFSの有意な改善を示し(HR、0.58;97.5%CI、0.41~0.81;P=0.0002)、1年間のPFS率はニボルマブプラスイピリムマブで43%対化学療法で13%であり、PFSの中央値はそれぞれ7.2ヶ月(95%CI、5.5~13.2)および5.5ヶ月(95%CI、4.4~5.8)であった。
図34A。10変異/Mb以上のTMBを有する患者におけるPFSの事前に決められた多変量解析では、ベースラインのPD-L1発現レベル(1%以上、1%未満)、性別、腫瘍組織学(扁平上皮、非扁平上皮)およびECOG PS(0、1以上)について調整したニボルマブプラスイピリムマブ対化学療法の処置効果が一次PFS分析と一致していた(HR、0.57;95%CI、0.40~0.80、多変量コックスモデルP=0.0002)。10変異/Mb未満のTMBを有する患者では、化学療法と比較してニボルマブプラスイピリムマブでPFSの改善は観察されなかった(HR、1.07;95%CI、0.84~1.35);PFSの中央値はニボルマブプラスイピリムマブで3.2ヶ月(95%CI、2.7~4.3)であり、化学療法で5.5ヶ月(95%CI、4.3~5.6)であった。
図35参照。
【0468】
奏効率はニボルマブプラスイピリムマブで45.3%であり、化学療法で26.9%であった(表43)。Eisenhauer, E.A., et al. Eur J Cancer, 45:228-47 (2009)。1年後もまだ応答を示していた進行中の応答者の割合は、ニボルマブプラスイピリムマブで68%であり、化学療法で25%であった(
図34B)。
表43:10変異/Mb以上のTMBを有する患者における腫瘍応答。
【表43】
*データは2018年1月24日のデータベースロックに基づく。
†客観的応答を、固形がんの効果判定基準バージョン1.1,27に従って盲検独立中央判定によって評価した。95%信頼区間(CI)はClopper-Pearson法に基づく。処置群間の奏効率の重み付けされていない差異をNewcombeの方法によって決定した。
‡応答を有していた全ての患者(ニボルマブ群の63人の患者および化学療法群の43人の患者)からのデータを用いて分析を行った。
§応答までの期間を、無作為化から最初に確認された完全寛解または部分応答の日付までの期間として定義した。
¶カプランマイヤー法を用いて結果を計算した。奏功期間を、最初の応答の日付とその後の治療の前に評価された進行、死亡または最後の腫瘍評価のうち最初に確認されたイベントの日付(データ打ち切り日)との間の期間として定義した。
NRは未到達を意味する。
【0469】
高いTMB(10変異/Mb以上)を有する患者における選択されたサブグループ
【0470】
PD-L1状態によるサブグループ分析は、1%以上のPD-L1発現を有する患者および1%未満のPD-L1発現を有する患者において、化学療法と比較してニボルマブプラスイピリムマブでPFSが改善されたことを示した。
図36Aおよび36B。化学療法と比較したニボルマブプラスイピリムマブでのPFSの改善は、扁平上皮腫瘍組織構造および非扁平上皮腫瘍組織構造を有する患者の両方で見られた。
図36Cおよび36D。10変異/Mb以上のTMBを有する患者の他のほとんどのサブグループにおいて、化学療法と比較してニボルマブプラスイピリムマブでPFSが改善された。
図36E。
【0471】
ニボルマブ単独療法
【0472】
本試験の二次エンドポイントは、13変異/Mb以上のTMBおよび1%以上のPD-L1発現を有する患者におけるニボルマブ(n=79)対化学療法(n=71)の有効性であった(1%未満のPD-L1発現を有する患者はニボルマブを受ける対象ではなかった);この患者群において、ニボルマブによるPFSの改善はなかった(HR、0.95;97.5%CI、0.61、1.48;P=0.7776)。PFSの中央値は、ニボルマブで4.2ヶ月(95%CI、2.7~8.3)であり、化学療法で5.6ヶ月(95%CI、4.5~7.0)であった。
図37。
【0473】
10変異/Mb以上のTMBおよび1%以上のPD-L1発現を有する患者において、PFSの中央値はニボルマブプラスイピリムマブで7.1ヶ月(95%CI、5.5~13.5)であり、ニボルマブ単独療法で4.2ヶ月(95%CI、2.6~8.3)であった(HR、0.75;95%CI、0.53~1.07)。
図38。
【0474】
本試験の結果は、進行性NSCLCおよび10変異/Mb以上のTMBを有する患者において、ニボルマブプラスイピリムマブでの第一選択処置が化学療法と比較して改善されたPFSに関連していることを実証する。併用免疫療法の恩恵は持続的であり、患者の43%は1年間無増悪であり(化学療法では13%)、応答者の68%は応答が1年間継続していた(化学療法では25%)。ニボルマブプラスイピリムマブの恩恵は、1%以上および1%未満のPD-L1発現の扁平上皮組織構造および非扁平上皮組織構造を有する患者において観察され、他のサブグループの大部分にわたって一貫していた。無作為化された全ての患者において化学療法と比較してニボルマブプラスイピリムマブでPFSの改善が見られたが、10変異/Mb以上のTMBは有効なバイオマーカーであった。ニボルマブプラスイピリムマブによる恩恵は高いTMBを有する患者において特に増強されたが、低いTMB(10変異/Mb未満)を有する患者では化学療法と比較した恩恵は見られなかった。さらに、ニボルマブプラスイピリムマブは10変異/Mb以上のTMBを有する患者においてニボルマブ単独療法と比較して有効性を改善し、これは10変異/Mb以上のTMBを有するNSCLCにおける二重免疫チェックポイント遮断の明確な重要性を強調した。本試験は、PD-L1により選択された患者におけるOSの共主要エンドポイントについて継続されている。
【0475】
本試験は、TMBおよびPD-L1発現が独立したバイオマーカーであることを示す。高いTMBを有する患者において、化学療法と比較したニボルマブプラスイピリムマブの恩恵は、1%以上および1%未満の腫瘍PD-L1発現を有する患者で類似していた。したがって、ニボルマブプラスイピリムマブはPD-L1発現に関係なく、10変異/Mb以上のTMBを有する患者のための新たな有効な処置レジメンとなる。
【0476】
ニボルマブプラスイピリムマブの安全性は、以前に報告された第一選択のNSCLCのデータと一致していた。以前の研究では、ニボルマブプラスイピリムマブの様々な投与レジメンを8コホートで評価し、2週間毎の3mg/kgのニボルマブプラス6週間毎の1mg/kgのイピリムマブのレジメンが良好な耐用性を示し、有効であることが見出された。Hellmann, M.D., et al. Lancet Oncol, 18:31-41 (2017)。これらの知見は本発明者らの大規模な国際的研究で確認され、併用による新たな安全性シグナルは観察されなかった。処置に関連した選択された有害事象および処置に関連した中止の割合は、低い割合の選択された有害事象を伴ってニボルマブ単独療法(これは良好な耐用性も示した)の割合よりもわずかに高かった。
【0477】
中止をもたらす処置関連有害事象の割合は化学療法よりもニボルマブプラスイピリムマブで高かったが、これはニボルマブプラスイピリムマブでのより長い処置期間およびより長いPFSに部分的に関連してい得る。
【0478】
免疫療法/免疫療法の組合せ対免疫療法/化学療法の組合せの役割、治療の最適な順序、TMBが免疫療法/化学療法の組合せから恩恵を得る可能性のある患者を同定できるか否か、およびPD-1/L1単独療法に最適なTMBカットオフが同定できるか否かに関する重要な問題が残っている。本発明者らの試験の結果が重要で独立したバイオマーカーとしてのTMBの臨床的有用性を確認することを考慮すると、検査のための十分な腫瘍組織の入手可能性および許容できる所要時間を確保するために集学的な協調努力が必要となる。本試験で報告されたTMBの結果の58%の割合は、主に十分な量または質の腫瘍試料の入手可能性が制限されていることによるものであり、本試験の一部としてのバイオマーカー分析に要求される組織の制限の結果であった。臨床診療では、TMBを検査する意図が事前に知られており、十分な量および質の腫瘍試料が収集および提出され得る場合、検査を受ける患者の80%~95%についてTMB決定の成功が想定され得る。進行性NSCLCおよび10変異/Mb以上のTMBを有する患者における第一選択のニボルマブプラスイピリムマブのためのTMB検査の実行可能性を将来を見越して評価する24CheckMate817(NCT02869789)は、TMB検査の実行可能性を最適化するための教育におけるギャップおよび機会を特定するのに役立ち得る。さらに、TMBは、複数の潜在的に治療的に使用可能ながん遺伝子の次世代シーケンシングを介して網羅的なゲノムプロファイリングを同時に提供する信頼性および再現性のあるバイオマーカーである。したがって、TMBの検査は既に日常的な技術を活用して、1回の検査で広範に適用可能な臨床的に重要な情報を提供し、第一選択のNSCLCの管理を導く。
【0479】
進行後(beyond progression)の処置および全生存期間の追跡
【0480】
患者が治験医師により評価される臨床的有用性を有し、処置に耐え続けた場合に、進行後のニボルマブまたはニボルマブプラスイピリムマブによる処置の継続を許可した。試験薬での処置の中止後、全生存期間のために対面または電話での接触により3ヶ月毎に患者を追跡した。
【0481】
本願は、2017年3月31日に出願された米国仮特許出願第62/479,817号、および2017年11月6日に出願された第62/582,146号の利益を主張し、これらは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0482】
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【配列表】