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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】オキサゾリン変性分散剤
(51)【国際特許分類】
   C10M 159/12 20060101AFI20240322BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20240322BHJP
   C10M 133/48 20060101ALN20240322BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20240322BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20240322BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20240322BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20240322BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240322BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20240322BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20240322BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20240322BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20240322BHJP
【FI】
C10M159/12
C10M133/16
C10M133/48
C10N20:04
C10N30:04
C10N30:06
C10N30:02
C10N40:04
C10N40:08
C10N40:20 Z
C10N40:30
C10N40:02
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020000309
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2020111733
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】16/246,030
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥーロ・カランサ
(72)【発明者】
【氏名】シェン・ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ローパー
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01547980(GB,A)
【文献】特開昭53-060905(JP,A)
【文献】特開昭50-129608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
C08G73/00-73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤分散剤であって、
1つ以上のペンダントヒドロカルビルアミド基を有する前記潤滑剤分散剤を形成するための、ヒドロカルビル置換スクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤とオキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体との反応生成物を含み、
前記ヒドロカルビル置換スクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤が、ポリアルキレンポリアミンと反応したヒドロカルビル置換アシル化剤から誘導され、
前記スクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤のヒドロカルビル置換基が、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定される際に250~5,000の数平均分子量を有する直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基である、潤滑剤分散剤。
【請求項2】
前記オキサゾリンまたは前記オキサゾリン誘導体が、オキサゾリン環の2位、4位、5位、もしくはそれらの組み合わせのうちの1つにおいてヒドロカルビルペンダント基を含むか、または前記オキサゾリンもしくはオキサゾリン誘導体が、2-エチル-2-オキサゾリン;2-メチル-2-オキサゾリン;2-ベンジル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-エチル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2,4,4-トリメチル-2-オキサゾリン;4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-(2,6-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-フェニル-2-オキサゾリン;2-[1-(ヒドロキシメチル)エチル]オキサゾリン;それらの混合物、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の潤滑剤分散剤。
【請求項3】
前記1つ以上のペンダントヒドロカルビルアミド基が、前記ポリアルキレンポリアミンによって提供されるアミン部分から伸びる、請求項1に記載の潤滑剤分散剤。
【請求項4】
前記ヒドロカルビル置換基が、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、オクタン、ヘキサン、デセン、ペンチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、もしくはそれらの組み合わせのうちの1つ以上から誘導されるか、または前記ヒドロカルビル置換基が、オレフィンコポリマーから誘導されるか、または前記スクシンアミドもしくは前記スクシンイミドの前記ヒドロカルビル置換基が、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定される際に250~3,000の数平均分子量を有する前記直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基である、請求項1に記載の潤滑剤分散剤。
【請求項5】
前記ポリアルキレンポリアミンが、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるか、または前記反応生成物が、前記ヒドロカルビル置換スクシンイミドであり、0.5:1~5:1のペンダントアミド基対イミド基の比を有する、請求項1に記載の潤滑剤分散剤。
【請求項6】
前記ヒドロカルビルペンダント基が、C1~C32ヒドロカルビル、置換または非置換芳香族、置換または非置換複素環芳香族、ヒドロキシアルキル、およびそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の潤滑剤分散剤。
【請求項7】
前記アミン部分が、一級アミン部分、二級アミン部分、もしくはそれらの組み合わせであるか、または0.33:1~6:1モル当量の、前記オキサゾリンもしくは前記オキサゾリン誘導体対前記ポリアルキレンポリアミン反応物から提供されるアミン部分のモ
ル比をさらに含む、請求項3に記載の潤滑剤分散剤。
【請求項8】
前記オレフィンコポリマーが、エチレンと、1つ以上のC3~C10アルファオレフィンと、から得られる、請求項2に記載の潤滑剤分散剤。
【請求項9】
前記ポリアルキレンポリアミンが、下式を有し、
【化1】
式中、
各RおよびR'は独立して、二価のC1~C6アルキレンリンカーであり、
各R1およびR2は独立して、水素、C1~C6アルキル基であるか、またはそれらが結合される窒素原子と一緒になって、1つ以上の芳香環もしくは非芳香環と任意選択的に融合された5員環もしくは6員環を形成し、
nは、0~8の整数である、請求項2に記載の潤滑剤分散剤。
【請求項10】
潤滑剤組成物であって、
潤滑粘度の基油と、
オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体と反応したヒドロカルビル置換スクシンアミドまたはスクシンイミドから誘導された分散剤であって、前記分散剤が、そのアミン部分から伸びている1つ以上のペンダントヒドロカルビルアミド基を有する、分散剤と、を含み、
前記ヒドロカルビル置換スクシンアミドまたはスクシンイミドは、前記1つ以上のアミン部分を提供するポリアルキレンポリアミンと反応したヒドロカルビル置換無水コハク酸またはコハク酸から誘導され、
前記スクシンアミドまたはスクシンイミドの前記ヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定される際に250~5,000の数平均分子量を有する直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基である、潤滑剤組成物。
【請求項11】
前記オキサゾリンまたは前記オキサゾリン誘導体が、オキサゾリン環の2位、4位、5位、もしくはそれらの組み合わせのうちの1つにおいてヒドロカルビルペンダント基を含むか、または前記オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体が、2-エチル-2-オキサゾリン;2-メチル-2-オキサゾリン;2-ベンジル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-エチル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2,4,4-トリメチル-2-オキサゾリン;4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-(2,6-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-フェニル-2-オキサゾリン;2-[1-(ヒドロキシメチル)エチル]オキサゾリン;それらの混合物、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項10に記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
前記ポリアルキレンポリアミンによって提供される前記アミン部分が、一級アミン、二級アミン、もしくはそれらの組み合わせのうちの1つから選択されるか、または前記ヒドロカルビル置換基が、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定される際に250~3,000の数平均分子量を有する直鎖もしくは分岐鎖ヒドロカルビル基であるか、または前記ポリアルキレンポリアミンが、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるか、または前記分散剤が、前記ヒドロカルビル置換スクシンイミドであり、0.5:1~5:1のペンダントアミド基対イミド基の比を有するか、または前記分散剤の前記ヒドロカルビル置換基が、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、オクタン、ヘキサン、デセン、ペンチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、もしくはそれらの組み合わせのうちの1つ以上から誘導されるか、または前記分散剤の前記ヒドロカルビル置換基が、オレフィンコポリマーである、請求項10に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
前記ヒドロカルビルペンダント基が、C1~C32ヒドロカルビル、置換もしくは非置換芳香族、置換もしくは非置換複素環芳香族、ヒドロキシアルキル、およびそれらの混合物から選択されるか、または前記オレフィンコポリマーが、エチレンと1つ以上のC3~C10アルファオレフィンとから得られる、請求項12に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
0.33:1~6:1モル当量の、前記オキサゾリンまたは前記オキサゾリン誘導体対前記ポリアルキレンポリアミン反応物により提供される前記アミン部分のモル比を、さらに含む、請求項12に記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
前記ポリアルキレンポリアミンが、下式を有し、
【化2】
式中、
各RおよびR'は独立して、二価のC1~C6アルキレンリンカーであり、
各R1およびR2は独立して、水素、C1~C6アルキル基であるか、またはそれらが結合される窒素原子と一緒になって、1つ以上の芳香環もしくは非芳香環と任意選択的に融合された5員環もしくは6員環を形成し、
nは、0~8の整数である、請求項12に記載の潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オキサゾリン変性潤滑剤添加剤、例えば、分散剤および/または分散剤粘度調整剤、ならびにかかる添加剤を含む潤滑油組成物に関する。本開示はまた、潤滑剤の摩擦性能も改善しながら分散性を提供するための本発明の添加剤を含む潤滑剤組成物の方法または使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンオイルは、潤滑剤に様々な機能を提供する多くの添加剤を含む。分散剤または分散剤粘度調整剤は、潤滑剤の性能を経時的に低下させ得る堆積物前駆体、煤、スラッジ、または他の汚染物質を懸濁するのに役立つ配合潤滑剤の1つの添加剤である。多くの場合、分散剤または分散剤粘度調整剤は、分散性を促進し、かつ/または耐摩耗性または粘度調整などの他の機能を提供する窒素部分を含有する。例えば、典型的な分散剤は、ポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)を形成する、ポリイソブチレンと無水マレイン酸との反応生成物を含む。次いで、PIBSAは、様々な窒素含有化合物と反応して、分散剤または分散剤粘度調整剤を形成する。他の一般的な分散剤は、オレフィンコポリマーを無水マレイン酸と反応させて、オレフィンコポリマー無水コハク酸(例えば、エチレン/プロピレン無水コハク酸またはEPSA)を形成することにより形成される。このコポリマーはまた、様々な窒素化合物と反応させて、官能化された分散剤または分散剤粘度調整剤を形成させることもできる。しかしながら、分散剤の官能化において一般的に使用される一級および/または二級アミンは、場合によっては、エンジンエラストマーシールと互換性がなく、かつ/または潤滑剤の摩擦性能に影響を及ぼす傾向がある。過去には、様々なボレート、無水物、およびカルボン酸が、保護されていないアミンの効果を弱めるために使用されてきたが、かかる追加の潤滑剤成分の使用は潤滑剤の配合を複雑にする傾向があり、望ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】潤滑油における約0.665重量パーセントの例示的な分散剤の分散剤性能を示しているグラフである。
図2】異なるタイプの窒素キャッピング剤を有する分散剤を含む潤滑剤の境界摩擦を比較しているグラフである。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本開示は、1つ以上のペンダントヒドロカルビルアミド基を有する潤滑剤分散剤を形成するための、ヒドロカルビル置換スクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤とオキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体との反応生成物を含む潤滑剤分散剤に関する。ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応したヒドロカルビル置換アシル化剤から誘導される。スクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤のヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定される際に約250~約5,000の数平均分子量を有する直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基である。
【0005】
前述の実施形態では、オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体は、オキサゾリン環の2位、4位、5位、またはそれらの組み合わせのうちの1つにおいてヒドロカルビルペンダント基を含み得る。前述の実施形態のいずれかでは、ヒドロカルビルペンダント基は、C1~C32ヒドロカルビル、置換または非置換芳香族、置換または非置換複素環芳香族、ヒドロキシアルキル、およびそれらの混合物から選択され得る。前述の実施形態のいずれかでは、オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体は、2-エチル-2-オキサゾリン;2-メチル-2-オキサゾリン;2-ベンジル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-エチル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2,4,4-トリメチル-2-オキサゾリン;4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-(2,6-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-フェニル-2-オキサゾリン;2-[1-(ヒドロキシメチル)エチル]オキサゾリン;それらの混合物、およびそれらの誘導体からなる群から選択され得る。
【0006】
前述の実施形態のいずれかでは、アシル化剤は、無水マレイン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、無水エチルマレイン酸、無水ジメチルマレイン酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0007】
前述の実施形態のいずれかでは、1つ以上のペンダントヒドロカルビルアミド基は、ポリアルキレンポリアミンによって提供されるアミン部分から伸びている。前述の実施形態のいずれかでは、アミン部分は、一級アミン部分、二級アミン部分、またはそれらの組み合わせであり得る。前述の実施形態のいずれかでは、分散剤は、約0.33:1~約6:1モル当量の、オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体対ポリアルキレンポリアミン反応物から提供されるアミン部分のモル比を含み得る。
【0008】
前述の実施形態のいずれかでは、ヒドロカルビル置換基は、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、オクタン、ヘキサン、デセン、ペンチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上から誘導され得る。前述の実施形態のいずれかでは、ヒドロカルビル置換基は、オレフィンコポリマーから誘導され得る。前述の実施形態のいずれかでは、オレフィンコポリマーは、エチレンおよび1つ以上のC3~C10アルファオレフィンから得ることができる。前述の実施形態のいずれかでは、スクシンアミドまたはスクシンイミドのヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定される際に約250~約3,000の数平均分子量を有する直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基であり得る。前述の実施形態のいずれかでは、ポリアルキレンポリアミンは、下式を有し得る。
【0009】
【化1】
【0010】
式中、各RおよびR’は独立して、二価のC1~C6アルキレンリンカーであり、各RおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基であるか、またはそれらが結合される窒素原子と一緒になって、1つ以上の芳香環もしくは非芳香環と任意選択的に融合される5員環もしくは6員環を形成し、nは、0~8の整数である。前述の実施形態のいずれかでは、ポリアルキレンポリアミンは、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。前述の実施形態のいずれかでは、反応生成物は、ヒドロカルビル置換スクシンイミドであってもよく、約0.5:1~約5:1のペンダントアミド基対イミド基の比を有し得る。
【0011】
別の態様では、本開示は、潤滑粘度の基油と、オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体と反応したヒドロカルビル置換スクシンアミドまたはスクシンイミドから誘導される分散剤と、を含む潤滑剤組成物に関し、その分散剤は、そのアミン部分から伸びている1つ以上のペンダントヒドロカルビルアミド基を有する。ヒドロカルビル置換スクシンアミドまたはスクシンイミドは、1つ以上のアミン部分を提供するポリアルキレンポリアミンと反応した、ヒドロカルビル置換無水コハク酸またはコハク酸から誘導される。スクシンアミドまたはスクシンイミドのヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定される際に約250~約5,000の数平均分子量を有する直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基である。
【0012】
前述の実施形態のいずれかでは、オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体は、オキサゾリン環の2位、4位、5位、またはそれらの組み合わせのうちの1つにおいてヒドロカルビルペンダント基を含み得る。前述の実施形態のいずれかでは、ヒドロカルビルペンダント基は、C1~C32ヒドロカルビル、置換または非置換芳香族、置換または非置換複素環芳香族、ヒドロキシアルキル、およびそれらの混合物から選択され得る。前述の実施形態のいずれかでは、オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体は、2-エチル-2-オキサゾリン;2-メチル-2-オキサゾリン;2-ベンジル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-エチル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2,4,4-トリメチル-2-オキサゾリン;4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-(2,6-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-フェニル-2-オキサゾリン;2-[1-(ヒドロキシメチル)エチル]オキサゾリン;それらの混合物、およびそれらの誘導体からなる群から選択され得る。
【0013】
前述の実施形態のいずれかでは、ヒドロカルビル置換無水コハク酸またはコハク酸は、無水マレイン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、無水エチルマレイン酸、無水ジメチルマレイン酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸、またはそれらの組み合わせであり得る。前述の実施形態のいずれかでは、ポリアルキレンポリアミンによって提供されるアミン部分は、一級アミン、二級アミン、またはそれらの組み合わせのうちの1つから選択され得る。前述の実施形態のいずれかでは、分散剤は、約0.33:1~約6:1モル当量の、オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体対ポリアルキレンポリアミン反応物により提供されるアミン部分のモル比を、さらに含み得る。
【0014】
前述の実施形態のいずれかでは、ヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定される際に約250~約3,000の数平均分子量を有する直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基であり得る。前述の実施形態のいずれかでは、ポリアルキレンポリアミンは、下式を有し得る。
【0015】
【化2】
【0016】
式中、各RおよびR’は独立して、二価のC1~C6アルキレンリンカーであり、各RおよびRは独立して、水素、C1~C6アルキル基であるか、またはそれらが結合される窒素原子と一緒になって、1つ以上の芳香環もしくは非芳香環と任意選択的に融合される5員環もしくは6員環を形成し、nは、0~8の整数である。前述の実施形態のいずれかでは、ポリアルキレンポリアミンは、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。前述の実施形態のいずれかでは、分散剤は、ヒドロカルビル置換スクシンイミドであってもよく、0.5:1~5:1のペンダントアミド基対イミド基の比を有し得る。前述の実施形態のいずれかでは、分散剤のヒドロカルビル置換基は、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、オクタン、ヘキサン、デセン、ペンチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上から誘導され得る。前述の実施形態のいずれかでは、分散剤のヒドロカルビル置換基は、オレフィンコポリマーから誘導され得る。前述の実施形態のいずれかでは、オレフィンコポリマーは、エチレンおよび1つ以上のC3~C10アルファオレフィンから得ることができる。
【0017】
別の態様では、本開示は、分散性を提供し、かつ堅牢で一貫した境界摩擦を提供するための上記潤滑剤添加剤または潤滑剤組成物の任意の実施形態の使用方法または使用に関する。いずれかの実施形態では、方法または使用は、添加剤処理量、オキサゾリンキャッピング剤、および/またはオザゾリン部分のアミン部分に対するモル当量に依存しない、堅牢で一貫した境界摩擦を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
潤滑剤添加剤およびかかる添加剤を含む潤滑油組成物を本明細書で説明する。1つのアプローチでは、潤滑剤添加剤は、良好な分散性を提供すると同時に、改善された一貫した摩擦性能を提供するために、オキサゾリン部分で後処理される分散剤または分散剤粘度調整剤を含み得る。1つのアプローチまたは実施形態では、本明細書の分散剤または分散剤粘度調整剤は、1つ以上のペンダントまたは側鎖ヒドロカルビルアミド基を含む本発明の潤滑剤添加剤を形成するために、オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体と反応させたまたは後処理された、スクシンアミドまたはスクシンイミド化合物またはポリマーであり得る。この後処理は、所望の適用または使用に応じて、分散剤添加剤、分散剤粘度調整剤添加剤などに適用可能であり得る。考察を容易にするために、この開示全体を通して、単純に分散添加剤を使用するが、かかる考察はまた、分散剤粘度調整剤添加剤、分散剤粘度指数向上剤、または添加剤の分散剤機能と共により堅牢な摩擦性能を必要とすることがある他の窒素またはアミン官能化添加剤にも当てはまる。
【0019】
背景技術で述べたように、潤滑剤またはエンジンオイルは、一般に多くの添加剤を含む。分散剤は、スラッジ、カーボン、煤、酸化生成物、およびその他の堆積物前駆体を分散させるためのエンジンオイルにおける一般的な添加剤である。かかる添加剤は、エンジン部品を清浄に保ち、エンジンの寿命を延ばし、適切な排出と良好な燃費を維持するのに役立つ。いくつかのアプローチでは、分散剤は、粒子間凝集を抑制することによってこのタスクを達成する。したがって、潤滑剤の煤およびスラッジの取り扱い特性は、潤滑剤組成物中の分散剤の量が増加するにつれてしばしば改善されるが、これらの添加剤の量の増加は、場合によっては、流体の他の特性に悪影響を及ぼす可能性がある。一方、本明細書には、分散剤の特性を備えた潤滑剤添加剤、および以下の1つ以上、すなわち、同等(またはより良い)分散剤特性、改善された摩擦特性、同時に、処理量、アミン後処理部分のタイプ、および/またはアミン後処理部分と、分散剤の一級/二級アミンとの間のモル当量に依存しない、より堅牢または一貫した摩擦性能を有するかかる添加剤を含む潤滑油を記載する。
【0020】
分散性(および/または分散剤粘度調整)を提供し、また堅牢かつ/または一貫した摩擦性能も提供する、分散剤または多機能分散剤粘度調整剤などの潤滑剤添加剤を記載する。一態様において、潤滑剤添加剤は、ヒドロカルビル置換スクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤とオキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体との反応生成物であり、分散剤分子上の第一級および/または第二級アミンをキャッピングする1つ以上のペンダントヒドロカルビルアミド基を有する潤滑剤分散剤を形成する。ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応したヒドロカルビル置換アシル化剤から誘導される。スクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤のヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定される際に約250~約5,000(他のアプローチでは、約250~約3,000)の数平均分子量を有する直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基である。いくつかの実施形態では、直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基は、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、オクタン、ヘキサン、デセン、ペンチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上から誘導されるか、または、他の実施形態では、直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基は、オレフィンエチレンおよび1つ以上のC3~C10アルファオレフィンから得られるオレフィンコポリマーである。オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体は、スクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤の一級および/もしくは二級の窒素またはアミン基をキャップ(または、と結合)する。本明細書のオキサゾリンでキャップされた分散剤または分散剤粘度調整剤は、堅牢かつ一貫した摩擦性能を提供する。
【0021】
本明細書では、添加剤の分散剤性能と共により強固な摩擦性能を予想外に提供する潤滑剤添加剤に対する化学変性としてのオキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体の方法または使用も開示する。本開示は、オキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体との後処理反応により、露出した一級および/または二級のアミンをキャッピングする方法を提供する。また、特定のオキサゾリンでアミンをキャッピングする一方で、予想外の分散性の向上および低処理量性能での摩擦性能の改善も、いくつかの用途で達成可能であることも実証されている。下記のように、多種多様なオキサゾリン誘導体が本開示と適合する。各成分について、オキサゾリン後処理成分から始めて、次いで分散剤分子、最後にアミン官能化成分についてさらに下に記載する。
【0022】
オキサゾリン後処理:
一態様において、本明細書の潤滑剤添加剤は、オキサゾリンまたは式Iのその誘導体などのオキサゾリン由来キャッピング剤で後処理されるか、またはオキサゾリン由来キャッピング剤と反応させる。
【0023】
【化3】
【0024】
式中、R~Rは各々独立して、水素、ハロ、ニトロ、シアノ、C~C32脂肪族基、フェニル、ナフチル、3~7員の複素環基、5~6員のヘテロアリール基からなる群より選択され、該C~C32脂肪族基の最大5個の炭素は、-O-、-NH-、-N(C1-4アルキル)-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)NH-、または-C(O)N(C14アルキル)-から選択される二価基で、独立してかつ任意選択的に置換され得る。いくつかの実施形態またはアプローチでは、各R~Rは、C~Cアルキル、フェニル、ナフチル、3~7員の複素環基、5~6員のヘテロアリール基、ハロ、ニトロ、およびシアノから選択される最大3つの置換基で、独立してかつ任意選択的に置換され得る。他の態様では、Rは、水素、ハロ、またはC1-4アルキルである。
【0025】
別の実施形態では、Rは、ハロ、ニトロ、シアノ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、2-エチルヘキシル、フェニル、フリル、チオフェニル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、タゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-プラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジルおよび1,3,5-トリアジルからなる群から選択され、任意選択的にC~Cアルキル、フェニル、ハロ、ニトロおよびシアノから選択される最大3つの置換基で置換されている。
【0026】
いくつかのアプローチでは、Rはエチルまたはフェニルであり、またはRは水素であってもよい。他のアプローチでは、Rは水素である。いくつかの他の実施形態では、Rは水素である。いくつかのさらなる実施形態では、RおよびRは両方とも水素である。さらなる一実施形態では、Rはエチルまたはフェニルであり、RおよびRは両方とも水素である。
【0027】
他のアプローチまたは実施形態では、本明細書のキャッピング剤に好適なオキサゾリンまたはその誘導体は、2-フェニル-2-オキサゾリン;2-エチル-2オキサゾリン;2-メチル-2-オキサゾリン;2-ベンジル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-エチル-4,4-ジメチル-2オキサゾリン;2,4,4-トリメチル-2-オキサゾリン;4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-(2,6-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン;2-[1-(ヒドロキシメチル)エチル]オキサゾリン;それらの混合物、およびそれらの誘導体からなる群から選択され得る。さらに他のアプローチまたは実施形態では、オキサゾリンまたはその誘導体は、2位、4位、または5位(またはその任意の組み合わせ)にペンダント基を含み、そのペンダント基は、複素環、芳香族、C~C32のヒドロカルビル基、およびそれらの混合物から選択される。
【0028】
いくつかの任意選択的なアプローチでは、本明細書の潤滑剤添加剤は、一級および/または二級アミンの約5~約100パーセントのキャッピング率を有することができ、他のアプローチでは、約5~約70パーセント、約5~約50パーセント、なおさらなるアプローチでは、約7~約35パーセントのキャッピング率を有することができる。これらの任意選択的なアプローチでは、キャッピング率は、少なくとも約5パーセント、少なくとも約10パーセント、少なくとも約20パーセント、少なくとも約30パーセント、少なくとも約40パーセント、または少なくとも約50パーセントから、約100パーセント以下、約90パーセント以下、約80パーセント以下、約70パーセント以下、または約60パーセント以下の範囲であり得る。本明細書で使用されるとき、任意選択的なキャッピング率は、少なくともオキサゾリンまたはその誘導体でキャップまたは後処理された一級または二級アミンのパーセントである。いくつかのアプローチでは、オキサゾリンまたはその誘導体対活性アミン(すなわち、一級および/または二級アミン)のモル比は、約9:1~約0.33:1であり、他のアプローチでは約0.33:1~約6:1であり、他のアプローチでは約3:1~約1:1であり、なおさらなるアプローチでは約3:1~約1.5:1である。さらなるアプローチでは、オキサゾリンまたはその誘導体対活性アミンのモル比は約1:1である。任意選択的なアプローチにおけるキャッピングパーセントは、既知の窒素測定技術を使用して、キャッピング反応の前後に、添加剤の窒素濃度(一級または二級アミン)を測定することにより決定される。
【0029】
いくつかのアプローチでは、本明細書に記載の反応生成物は、ヒドロカルビル置換スクシンイミドであり、上記の式Iのオキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体でキャップされたとき、約0.5:1~約5:1のアミド基対イミド基の比を有する。
【0030】
ヒドロカルビル置換スクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤:
本開示のヒドロカルビル置換スクシンアミドまたはスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応したヒドロカルビル置換アシル化剤から誘導される。スクシンイミドまたはスクシンアミドのヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定される際に約250~約10,000の数平均分子量を有する直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基である。以下でより詳細に議論するように、直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基は、例えば、ポリイソブチレン(または他のオレフィン)、またはオレフィンエチレンと1つ以上のC3~C10アルファオレフィンとから得られるオレフィンコポリマーから誘導され得る。1つのアプローチでは、ヒドロカルビル置換ポリカルボン酸化合物は、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸またはその無水物、例えば、コハク酸または無水コハク酸である。他のアプローチまたは実施形態では、分散剤は、ヒドロカルビル置換スクシンイミド、ヒドロカルビル置換スクシンアミド、またはそれらの組み合わせである。本明細書で使用されるとき、「スクシンイミド」または「スクシンアミド」という用語は、ポリアルキレンポリアミンと、ポリカルボン酸、例えばヒドロカルビル置換コハク酸または無水物(またはコハク酸アシル化剤)との反応生成物を包含することを意味しており、また、その反応生成物が、ポリアミン、および酸または無水物部分の反応から生じるか、または接触から生じるタイプのイミド結合に加えて、アミドおよび/または塩結合を有し得る化合物を含む。
【0031】
一実施形態では、ヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物は、最初に、熱エン反応および/またはハロゲン化縮合により、ヒドロカルビル基の末端基上の二重結合をアシル化剤(例えば、マレイン酸または無水マレイン酸)と反応させて、ヒドロカルビル置換コハク酸または無水物を形成することによって、作製することができ、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,897,696号、同第3,361,673号、および同第3,676,089号を参照されたい。代替的に、ヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物(例えば、ヒドロカルビル置換無水コハク酸)は、例えば、その開示もまた参照により本明細書に組み込まれるUS3,172,892に記載されているように、塩素化ポリオレフィンと無水マレイン酸との反応によって調製することができる。ヒドロカルビル置換無水コハク酸のさらなる考察は、例えば、これらの開示が参照により組み込まれる、US4,234,435、US5,620,486、およびUS5,393,309に見ることができる。ヒドロカルビル置換コハク酸または無水物を形成するために使用された反応温度は、約100℃~約250℃の範囲である。この反応は、多くの場合塩素の添加によって促進される。コハク酸基が少なくとも4個の炭素原子を含有するヒドロカルビル置換基を含有するアルケニルコハク酸イミドまたはコハク酸アミドは、本開示において有用であり得、例えば、これらのすべての開示が参照により本明細書に組み込まれる、US3,172,892、US3,202,678、US3,216,936、US3,219,666、US3,254,025、US3,272,746、US4,234,435、US4,613,341、およびUS5,575,823に記載されている。
【0032】
アルケニルコハク酸または無水物などのヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物では、コハク酸部分対ヒドロカルビル主鎖の比は、約0.8:1~約2:1、または約1:1~約1.8:1、または約1.2:1~約1.5:1である。
【0033】
上記プロセスのアシル化剤は、不飽和置換もしくは非置換有機酸または無水物、例えば、以下の一般式のマレイン酸またはフマル酸反応物である。
【0034】
【化4】
【0035】
式中、XおよびX’が同じかまたは異なるが、ただし、XおよびX’のうちの少なくとも1つが、反応してアルコールをエステル化して、アンモニアまたはアミンとアミドまたはアミン塩を形成するか、反応性金属と金属塩を形成するか、または金属化合物を塩基反応させるか、あるいはアシル化剤として機能することができる基である。典型的には、Xおよび/またはX’は、-OH、-O-ヒドロカルビル、-NHであり、XおよびX’は一緒になって、無水物を形成するように-O-であってもよい。いくつかの実施形態では、XおよびX’は、両方のカルボキシル官能基がアシル化反応を開始できるようなものである。
【0036】
無水マレイン酸は好適なアシル化剤である。他の好適なアシル化剤としては、電子不足オレフィン、例えば、モノフェニル無水マレイン酸;モノメチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、および他の置換マレイミド;イソマレイミド;フマル酸、マレイン酸、アルキル水素マレエートおよびフマレート、ジアルキルフマレートおよびマレエート、フマロニル酸およびマレイン酸;およびマレオニトリルおよびフマロニトリルが挙げられる。
【0037】
いくつかのアプローチでは、無水マレイン酸(または他のアシル化剤)対オレフィン性不飽和炭化水素またはポリオレフィンのモル比は極めて広範に変化することができる。例えば、いくつかのアプローチでは、約6:1~約1:6、または約5:1~約1:5、または約3:1~約1:3で変化することができ、さらに他のアプローチでは、無水マレイン酸は、反応を強制的に完了させるために化学量論的に過剰に使用することができる。必要に応じて、未反応の無水マレイン酸は、真空蒸留によって除去することができる。
【0038】
ヒドロカルビル置換基としては、オレフィン、例えば、線状アルファオレフィン、分岐鎖アルファオレフィン、低級オレフィンのポリマーおよびコポリマーを挙げることができるが、それらに限定されない。オレフィンは、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、例えばイソブチレン、1-オクテン、1-ヘキセン、1-デセン、n-ペンチレン、イソペンチレン、および/またはネオペンチレンなどから選択することができる。低級オレフィンのいくつかの有用なポリマーおよび/またはコポリマーとしては、限定されないが、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-イソブチレンコポリマー、プロピレン-イソブチレンコポリマー、エチレン-1-デセンコポリマーなどが挙げられる。
【0039】
ヒドロカルビル置換基もまた、オレフィンターポリマーから作製されてきた。有用な生成物は、エチレン-プロピレン-1,4-ヘキサジエンターポリマー、エチレンプロピレン-1,5-シクロオクタジエンターポリマー、エチレン-プロピレンノルボルネンターポリマーなどのエチレン-C12アルファオレフィン-C12の非共役ジエンターポリマーから作製することができる。
【0040】
1つのアプローチまたは実施形態では、ヒドロカルビル置換基は、ブテンポリマー、例えばイソブチレンのポリマーから誘導されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示のポリカルボン酸または無水物の調製に使用するのに好適なポリイソブテンとしては、少なくとも約20%、例えば少なくとも50%、さらなる例としては少なくとも70%のより反応性のメチルビニリデン異性体を含む、これらのポリイソブテンを挙げることができる。好適なポリイソブテンとしては、BF3触媒を使用して調製されたものが挙げられる。メチルビニリデン異性体が全組成物の高い百分率を占めるかかるポリイソブテンの調製は、これらの開示が参照により本明細書に組み込まれる、US4,152,499およびUS4,605,808に記載されている。
【0041】
別の実施形態では、ヒドロカルビル置換基は、エチレンおよび1つ以上のC~C10アルファオレフィンから誘導されたオレフィンコポリマーから誘導される。1つ以上のC~C10アルファオレフィンは、例えば、CまたはC炭素原子であり得る。エチレンとプロピレンまたはエチレンとブチレンのコポリマーが可能である。
【0042】
しばしばインターポリマーと称されるより複雑なポリマー基材が、少なくとも3つのモノマーを使用して調製され得る。例えば、モノマーは、エチレン、プロピレンであってもよく、インターポリマー基質を調製するために一般的に使用される第3のモノマーは、非共役ジエンおよびトリエンから選択されるポリエンモノマーである。非共役ジエン成分は、鎖中に5~14個の炭素原子を有するものである。好ましくは、ジエンモノマーは、その構造内のビニル基の存在を特徴とし、環状およびビシクロ化合物を含むことができる。代表的なジエンには、1,4-ヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、1,5-ヘプタジエン、および1,6-オクタジエンが含まれる。インターポリマーの調製には、2つ以上のジエンの混合物を使用することができる。ターポリマーまたはインターポリマー基質を調製するための好ましい非共役ジエンは、1,4-ヘキサジエンである。
【0043】
トリエン成分は、少なくとも2つの非共役二重結合を有し、鎖中に約30個までの炭素原子を有する。本開示のインターポリマーを調製するのに有用な典型的なトリエンは、1-イソプロピリデン-3a、4,7,7a-テトラヒドロインデン、1-イソプロピリデンジシクロペンタジエン、ジヒドローイソジシクロペンタジエン、および2-(2-メチレン-4-メチル-3-ペンテニル)[2.2.1]ビシクロ-5-ヘプテンである。
【0044】
エチレン-プロピレンまたはより高級なアルファ-オレフィンコポリマーは、約15~80モルパーセントのエチレンおよび約85~20モルパーセントのC~C10アルファ-オレフィンからなってもよく、好ましいモル比は、約35~75モルパーセントのエチレンおよび約65~25モルパーセントのC~C10アルファ-オレフィンであり、より好ましい割合は、50~70モルパーセントのエチレンおよび50~30モルパーセントのC~C10アルファ-オレフィンであり、最も好ましい割合は、55~65モルパーセントのエチレンおよび45~35モルパーセントのC~C10アルファ-オレフィンである。
【0045】
前述のポリマーのターポリマーの変形は、約0.1~10モルパーセントの非共役ジエンまたはトリエンを含有することができる。
【0046】
いくつかのアプローチでは、ポリマーおよびコポリマーという用語は、エチレンコポリマー、ターポリマー、またはインターポリマーを包含するために一般的に使用される。これらの材料は、エチレンコポリマー類の基本特性が実質的に変化しない限り、少量の他のオレフィンモノマー類を含有してもよい。
【0047】
いくつかのアプローチまたは実施形態では、ポリスチレンを較正基準として使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定すると、ヒドロカルビル置換基の数平均分子量は、約250~約10,000であり得、他のアプローチでは約250~約5,000、他のアプローチでは約300~約5,000、他のアプローチでは約300~約3,000、他のアプローチでは約300~約2,500、他のアプローチでは約750~約2,500、他のアプローチでは約600~約1,500、さらなるアプローチでは約600~約1,300、または約1,300~約2,700であり得る。さらに他のアプローチでは、ヒドロカルビル置換基の数平均分子量は、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約600、少なくとも約900、または少なくとも約1,000~5,000以下、4,000以下、約3,000以下、約2,500以下、約1,500以下、または約1,000以下の範囲であり得る。
【0048】
本明細書の任意の実施形態の数平均分子量(Mn)は、Watersから得られるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器などの機器、およびWaters Empower Softwareなどのソフトウェアで処理されたデータを用いて決定され得る。GPC機器は、Waters Separations ModuleおよびWaters屈折率検出器(または同様の任意選択的な機器)を装備してもよい。GPCの運転条件には、カラム温度が約40℃のガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒径5μ、孔径100~10000Å)を含み得る。安定化されていないHPLCグレードのテトラヒドロフラン(THF)を、1.0mL/分の流速で溶媒として使用してもよい。GPC機器は、500~380,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリスチレン(PS)基準物質を用いて較正してもよい。500g/モル未満の質量を有する試料の較正曲線を、外挿してもよい。試料およびPS基準物質を、THFに溶解し、0.1~0.5重量%の濃度で調製し、濾過せずに使用することができる。GPC測定はまた、参照により本明細書に組み込まれるUS5,266,223に記載されている。加えて、GPC方法は、分子量分布情報を提供する(例えばまた、参照により本明細書に組み込まれる、W.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,“Modern Size Exclusion Liquid Chromatography”,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい)。
【0049】
窒素またはアミン官能化:
上記のヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物は、窒素またはアミン官能化される(次いで、また上記のようにオキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体で後処理される)。1つのアプローチまたは実施形態では、潤滑材添加剤は、アミン官能化ヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物(例えば、ヒドロカルビル置換スクシンイミドまたはヒドロカルビルスクシンイミド)などの分散剤または分散剤粘度調整剤であり得る。
【0050】
1つのアプローチまたは実施形態では、ヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物は、以下の式IIIのアミン含有ポリアルキレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミンで官能化される。
【0051】
【化5】
【0052】
式中、各RおよびR’は独立して、二価のC~Cアルキレンリンカーであり、各RおよびRは独立して、水素、C~Cアルキル基であるか、またはそれらが結合される窒素原子と一緒になって、1つ以上の芳香環もしくは非芳香環と任意選択的に融合される5員環もしくは6員環を形成し、nは、0~8の整数である。
【0053】
ヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物のアミン官能化は、当該技術分野では既知であり、ヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物を、少なくとも1個の塩基性窒素を有するポリアミンなどの窒素源と反応させることにより達成され得る。アルケニルコハク酸または無水物のスクシンイミドへの変換は、米国特許第3,215,707号および同第4,234,435号に記載されており、両方とも参照により本明細書に組み込まれる。好適な窒素源としては、ポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、およびそれらの混合物が挙げられる。ポリアルキレンポリアミンは、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0054】
他のアプローチでは、非限定的な例示のポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、アミノエチルピペラジン、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、アミノグアニジンバイカーボネート(AGBC)、および重質ポリアミン、例えばE100重質アミンボトムス(E100 heavy amine bottoms)を挙げることができる。重質ポリアミンは、少量の低級ポリアミンオリゴマー、例えばTEPAおよびPEHAを有するが、主として平均5個以上の窒素原子を有するオリゴマー、他のアプローチでは平均7個以上の窒素原子(さらに他のアプローチでは平均5~7個の窒素原子)、1分子あたり2つ以上の一級アミン、および従来のポリアミン混合物よりもさらに広範囲の分鎖を有する、ポリアルキレンポリアミンの混合物を含み得る。ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤を調製するために使用され得る追加の非限定的なポリアミンは、米国特許第6,548,458号に開示されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかのアプローチでは、分散剤を形成する反応で使用されるポリアミンは、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、E100重質アミンボトムス、およびそれらの組み合わせの群から選択される。一実施形態では、ポリアミンはテトラエチレンペンタミン(TEPA)であり得る。
【0055】
分散剤を形成するための、ヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物とアルキレンポリアミンとの反応は、一実施形態では、成分を混合し、その混合物を、反応を引き起こすには十分に高い温度ではあるが、反応物もしくは生成物の分解を引き起こすほど高くはない温度まで加熱することによって、行うことができるか、または、無水物を反応温度まで加熱し、ポリアミンを長時間にわたって加えてもよい。有用な温度は約100℃~約250℃である。例示的な結果は、反応中に形成された水を留去するのに十分に高い温度で反応を行うことによって得ることができる。
【0056】
一実施形態では、アミンは、1つ以上の一級または二級アミノ基を含有する。場合によっては、ポリアルキレンポリアミンは、少なくとも3個の窒素原子および約4~20個の炭素原子を有し得る。1つ以上の酸素原子もまた、ポリアミン中に存在し得る。分散剤の調製には、いくつかのポリアミンを使用することができる。上記の窒素源に加えて、非限定的な例示のポリアミンには、アミノグアニジンバイカーボネート(AGBC)、エチレンジアミン(EDA)、N-メチルプロピレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、または他の重質ポリアミンが含まれ得る。いくつかの重質ポリアミンは、少量の低級ポリアミンオリゴマー、例えばΤΕΡΑおよびPEHAを有するが、主として平均7個以上の窒素原子を有するポリアミンオリゴマー、1分子あたり2つ以上の一級アミン、および従来のポリアミン混合物よりもさらに広範囲の分鎖を有する、ポリアルキレンポリアミンの混合物を含み得る。分散剤を調製するために使用され得る追加の非限定的なポリアミンは、米国特許第6,548,458号に開示されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
好適なポリアルキレンポリアミンの他の例としては、プロピレンジアミン、イソプロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ジプロピレントリアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジイソプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、ジ-sec-ブチレントリアミン、トリプロピレンテトラアミン、トリイソブチレンテトラアミン、ペンタエチレンヘキサミン、およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0058】
ポリアルキレンポリアミンの特に好適な群は、約2~約12個の窒素原子および約2~約24個の炭素原子を含有し得る。かかるポリアルキレンポリアミンのアルキレン基は、約2~約6個の炭素原子、より好ましくは約2~約4個の炭素原子を含有し得る。本開示での使用に好適なポリアミンの多くは市販されており、他のものは当該技術分野で周知の方法によって調製されてもよい。例えば、アミンを調製するための方法およびそれらの反応は、Sidgewick’s“The Organic Chemistry of Nitrogen”,Clarendon Press,Oxford,1966;Noller’s“Chemistry of Organic Compounds”,Saunders,Philadelphia,2nd Ed.,1957;およびKirk-Othmer’s“Encyclopedia of Chemical Technology”,2nd Ed.,特に、Volume 2,pp.99-116において詳述されており、それらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
分散剤を形成する際に使用することができる追加のアミンとしては、1つ以上のヒドロキシ基を含有するアルカノールアミン、例えば2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、アミノアルキル置換複素環化合物、例えば1-(3-アミノプロピル)イミダゾールおよび4-(3-アミノプロピル)モルホリン、ポリアミンとポリヒドロキシ化合物の縮合物、例えば米国特許第5,653,152号に記載されているポリエチレンポリアミンとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの縮合物、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0060】
ポリアミンなどの窒素源と、ヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物と、の反応は、窒素源と、ヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物と、の電荷比に応じて、モノスクシンイミド、ビススクシンイミド、トリススクシンイミド、または他のスクシンイミドをもたらす。ヒドロカルビル置換ポリカルボン酸または無水物と窒素源との間の電荷比は、約1:1~約3.2:1、または約2.5:1~約3:1、または約2.9:1~約3:1、または約1.6:1~約2.5:1、または約1.6:1~約2:1、または約1.6:1~約1.8:1、約1.3:1~約1.8:1、約1.4:1~約1.8:1、または約1:6~約1.8:1である。
【0061】
定義
本開示の目的のために、化学元素は、the Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.に準拠して同定される。さらに、有機化学の一般原理は、”Organic Chemistry”、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausolito:1999、および”March’s Advanced Organic Chemistry”、5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley&Sons,New York:2001に記載され、その全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
本明細書で使用されるとき、「有効濃度」という用語は、煤入り基油がニュートン挙動を示すのに必要な分散剤の濃度を指しており、それは基油中の煤粒子が十分に分散されることを示している。
【0063】
本明細書で使用されるとき、「オレフィンコポリマー」という用語は、すべてのモノマーが少なくとも1つのオレフィン(炭素-炭素二重結合)を含む、2つ以上の異なるタイプのモノマーからなるランダムおよび/またはブロックポリマーを指す。
【0064】
本明細書に記載されるように、化合物は、上で一般的に例示されるように、または特定のクラス、サブクラス、および本開示の種によって例示されるように、1つ以上の置換基で任意選択的に置換されてもよい。
【0065】
本明細書で使用されるとき、「過半量」という用語は、組成物の総重量に対して、50重量パーセント以上、例えば約80~約98重量パーセントの量を意味すると理解される。また、本明細書で使用されるとき、「少量」という用語は、組成物の総重量に対して50重量パーセント未満の量を意味すると理解される。
【0066】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロカルビル基」または「ヒドロカルビル」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、主として炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、および芳香族-、脂肪族-、および脂環式-置換芳香族置換基、および環が分子の別の部分によって完成する(例えば、2つの置換基が一緒に脂環式ラジカルを形成する)環式置換基、(2)置換炭化水素置換基、すなわち、本明細書における説明の文脈において、主に炭化水素置換基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシル、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、アミノ、アルキルアミノ、およびスルホキシ)を変更しない、非炭化水素基を含有する置換基、(3)ヘテロ置換基、すなわち、本説明の文脈において、主に炭化水素の特徴を有しながら炭素原子で構成される環または鎖中に炭素以外を含有する置換基、が挙げられる。ヘテロ原子は、硫黄、酸素、および窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニル、およびイミダゾリルなどの置換基を包含する。一般に、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個毎に2個以下、またはさらなる例として1個以下の非炭化水素置換基が存在し、いくつかの実施形態では、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しないであろう。
【0067】
本明細書で使用されるとき、「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニルという用語を包含し、それらの各々は、以下に記載されるように任意選択的に置換されている。
【0068】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」基は、1~12個(例えば、1~8個、1~6個、または1~4個)の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、または2-エチルヘキシルが挙げられる。アルキル基は、1つ以上の置換基で、例えば、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、ヘテロ脂環式[例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、または(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、またはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、またはヘテロ脂環式アミノ]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロシクロ脂肪族オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはヒドロキシで、置換される(すなわち、任意選択的に置換される)ことができる。限定するものではないが、置換アルキルのいくつかの例としては、カルボキシアルキル(例えば、HOOC-アルキル、アルコキシカルボニルアルキル、およびアルキルカルボニルオキシアルキル)、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルアルキル、アラルキル、(アルコキシアリール)アルキル、(スルホニルアミノ)アルキル(例えば、(アルキル-SO-アミノ)アルキル)、アミノアルキル、アミドアルキル、(脂環式)アルキル、またはハロアルキルが挙げられる。
【0069】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」基とは、2~8個(例えば、2~12、2~6、または2~4個)の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族炭素基を指す。アルキル基のように、アルケニル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。アルケニル基の例には、これらに限定されないが、アリル、イソプレニル、2-ブテニル、および2-ヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は、1つ以上の置換基で、例えば、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、ヘテロ脂環式[例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、または(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、またはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、ヘテロ脂環式アミノ、または脂肪族スルホニルアミノ]、スルホニル[例えば、アルキル-SO-、脂環式-SO-、またはアリール-SO-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロ脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはヒドロキシで、任意選択的に置換されることができる。限定するものではないが、置換アルケニルのいくつかの例としては、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル(例えば、(アルキル-SO-アミノ)アルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(脂環式)アルケニル、またはハロアルケニルが挙げられる。
【0070】
本明細書で使用されるとき、「アルキニル」基は、2~8個(例えば、2~12、2~6、または2~4)の炭素原子を含有し、少なくとも1つの三重結合を有する脂肪族炭素基をいう。アルキニル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。アルキニル基の例としては、これらに限定されないプロパルギルおよびブチニルが挙げられる。アルキニル基は、1つ以上置換基で、例えば、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、スルファニル[例えば、脂肪族スルファニルまたは脂環式スルファニル]、スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニルまたは脂環式フィニル]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO-、脂肪族アミノ-SO-、または脂環式-SO-]、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、またはヘテロアリールアミノカルボニル]、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アシル[例えば、(脂環式)カルボニルまたは(ヘテロ脂環式)カルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ]、スルホキシ、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、(脂環式)オキシ、(ヘテロ脂環式)オキシ、または(ヘテロアリール)アルコキシで、任意選択的に置換されることができる。
【0071】
本明細書で使用されるとき、「アミノ」基とは、-NRを指し、式中、RおよびRの各々は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、ヘテロアリール、カルボキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(アルキル)カルボニル、(シクロアルキル)カルボニル、((シクロアルキル)アルキル)カルボニル、アリールカルボニル、(アラルキル)カルボニル、(ヘテロシクロアルキル)カルボニル、((ヘテロシクロアルキル)アルキル)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニル、または(ヘテロアラルキル)カルボニルであり、それらの各々は、本明細書に定義されており、任意選択的に置換されている。アミノ基の例には、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、またはアリールアミノが挙げられる。「アミノ」という用語が末端基(例えば、アルキルカルボニルアミノ)ではない場合、それはーNRーによって表される。Rは、上記で定義されたものと同義である。
【0072】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」基は、3~10個(例えば、5~10個)の炭素原子の飽和炭素環式単環式または二環式(融合または架橋)環を指す。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、キュービル、オクタヒドロインデニル、デカヒドロナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2.]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、または((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルが挙げられる。
【0073】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルキル」基は、3~10員の単環式または二環式(融合または架橋)(例えば、5~10員の単環式または二環式)飽和環構造を指し、環原子の1つ以上は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはそれらの組み合わせ)である。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4-ジオキソラニル、1,4-ジチアニル、1,3-ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリンジニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェニル、2-オキサ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクチル、および2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.0]ノニルが挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル基は、ヘテロアリール類として分類されるであろうテトラヒドロイソキノリンのような構造を形成するためにフェニル部分と融合させることができる。
【0074】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」基は、単環式、二環式または4~15個の環原子を有する三環式環系を指し、1個以上の環原子がヘテロ原子であり(例えば、N、O、S、またはそれらの組み合わせ)、単環式環系は、香族であるか、または二環式または三環式環系中の環の少なくとも1つは芳香族である。ヘテロアリール基は、2~3の環を有するベンゾ融合環系を含む。例えば、ベンゾ融合基は、1または2つの4~8員複素環式脂肪族部分(例えば、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、またはイソキノリニル)と融合したベンゾを含む。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、1H-インダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリル、シンノリル、キノリル、キナゾリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H-キノリジル、ベンゾ-1,2,5-チアジアゾール、または1,8-ナフチリジルである。
【0075】
限定されないが、単環式ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、タゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-プラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジル、または1,3,5-トリアジルが挙げられる。単環式ヘテロアリール類は、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0076】
限定されないが、二環式ヘテロアリール類としては、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベキソ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダジル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H-キノリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8-ナフチリジル、またはプテリジルが挙げられる。二環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0077】
潤滑油組成物
新規の潤滑剤添加剤、例えば、新規の分散剤、分散剤粘度指数向上剤、分散剤粘度調整剤、または本明細書に記載の他の潤滑剤分散剤は、1つ以上のさらなる添加剤と組み合わせて過半量の基油にブレンドされて、堅牢で低下した境界摩擦係数を有する潤滑油組成物を生成し得る。本明細書の潤滑油組成物は、潤滑剤組成物の重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%、または約1重量%~約8重量%、または約3重量%~約10重量%、または約1重量%~約6重量%、または約2重量%~約4重量%の本発明の分散剤を含み得る。いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、1つ以上のさらなる添加剤と組み合わせて、混合分散剤系を利用する。他のアプローチでは、潤滑油配合物は、少なくとも約0.1重量パーセント、少なくとも約0.5重量パーセント、少なくとも約1重量パーセント、少なくとも約2重量パーセント、または少なくとも約4重量パーセントから、最大10重量パーセント、最大8重量パーセント、最大6重量パーセント、または最大5重量パーセントの範囲の量で本明細書の分散剤を含み得る。
【0078】
基油
基油、または本明細書の潤滑油組成物に使用される潤滑粘度の基油は、任意の好適な基油から選択され得る。例として、米国石油協会(American Petroleum Institute(API))Base Oil Interchangeability Guidelinesに指定される、I~V群の基油が挙げられる。これらの5つの基油の群は、以下の通りである。
【0079】
【表1】
【0080】
I群、II群、およびIII群は、鉱物油プロセスストックである。IV群基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される、真の合成分子種を含有する。多くのV群基油も真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、および/またはポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油のような天然に存在する油でもあり得る。III群基油は鉱油から誘導されるが、これらの流体が受ける厳密な処理はそれらの物理的特性をPAOなどの特定の真の合成と非常に類似したものにする一因となることに留意すべきである。したがって、III群基油から誘導される油は、業界では合成流体と称されることがある。
【0081】
開示される潤滑油組成物に使用される基油は、鉱物油、動物油、植物油、合成油、またはそれらの混合物であり得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製、精製および再精製油、ならびにそれらの混合物から誘導することができる。
【0082】
未精製油は、それ以上の精製処理を行わないか、ほとんど行わない天然油、鉱物油、または合成源から誘導されたものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る、1つ以上の精製ステップで処理されることを除き、未精製油と類似である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸透などである。食用レベルに精製された油は有用であるかまたは有用でない可能性がある。食用油はホワイトオイルとも呼ばれる。いくつかの実施形態において、潤滑油組成物は食用油またはホワイトオイルを含まない。
【0083】
再精製油は、再生または再加工油としても知られている。これらの油は同一のまたは類似の処理を用いて得られる精製油と類似する。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤および油分解生成物の除去に関する技法によってさらに加工される。
【0084】
鉱油は、掘削によってまたは植物および動物またはそれらの混合物から得られた油を含んでもよい。例えば、かかる油には、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、および亜麻仁油、ならびに液体石油、パラフィン系、ナフテン系、もしくはパラフィン-ナフテン混合系タイプの溶媒処理または酸処理鉱物潤滑油などの鉱物潤滑油が挙げられるが、これらに限定されない。必要があれば、かかる油は部分的または完全に水素化されてもよい。石炭または頁岩から誘導された油も有用であり得る。
【0085】
有用な合成潤滑油としては、重合、オリゴマー化、もしくは内部重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー)などの炭化水素油;ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマーもしくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(かかる材料は多くの場合アルファ-オレフィンと称される)、およびそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル、およびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類似体、および相同体、またはそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には、水素化材料である。
【0086】
他の合成潤滑油には、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、またはポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって製造されてもよく、通常、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスであってもよい。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュガス液化合成手順および他のガス液化油によって調製されてもよい。
【0087】
潤滑組成物に含まれる主要量の基油は、I群、II群、III群、IV群、V群、および前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることができ、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分または粘度指数向上剤の提供に起因する基油以外である。別の実施形態では、潤滑組成物に含まれる主要量の基油は、II群、III群、IV群、V群、および前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることができ、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分または粘度指数向上剤の提供に起因する基油以外である。
【0088】
本明細書の組成物における潤滑粘度の油の量は、性能添加剤の量の合計を100重量%から差し引いた後に残る残部であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、「過半量」、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、約90重量%超、または95重量%超であり得る。
【0089】
いくつかのアプローチでは、好ましい基油または潤滑粘度の基油は、約25ppm未満の硫黄、約120を超える粘度指数、および約2~約8cStの約100℃における動粘度を有する。他のアプローチでは、潤滑粘度の基油は、約25ppm未満の硫黄、約120を超える粘度指数、および約4cStの約100℃における動粘度を有する。基油は、40%超、45%超、50%超、55%超、または90%超のC(パラフィン系炭素含有量)を有し得る。基油は、5%未満、3%未満、または1%未満のC(芳香族炭素含有量)を有し得る。基油は、60%未満、55%未満、50%未満、または50%未満、および30%超のCN(ナフテン系炭素含有量)を有し得る。基油は、2未満または1.5未満または1未満の、1環ナフテン対2~6環ナフテンの割合を有し得る。
【0090】
潤滑油の他の任意の添加剤を以下に記載する。
【0091】
洗浄剤
本潤滑剤組成物は、任意選択的に、1つ以上の中性、低塩基性、または過塩基性洗浄剤、およびそれらの混合物をさらに含み得る。
【0092】
好適な洗浄剤基材としては、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリクサレート、サリキサレート、サリシレート、カルボン酸、リン酸、モノおよび/もしくはジチオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはメチレン架橋フェノールが挙げられる。好適な洗浄剤およびその調製方法は、米国特許第7,732,390号およびそこに引用されている参考文献を含む多数の特許公報に、より詳細に記載されている。洗浄剤基材は、限定するものではないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、亜鉛、またはそれらの混合物などのアルカリまたはアルカリ土類金属によって塩化され得る。
【0093】
好適な洗浄剤は、石油スルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩またはマグネシウム塩、および長鎖モノまたはジアルキルアリールスルホン酸を含むことができ、そのアリール基はベンジル、トリル、およびキシリルである。他の好適な洗浄剤の例としては、以下の洗浄剤:すなわち、カルシウムフェネート、カルシウム硫黄含有フェネート、カルシウムスルホネート、カルシウムカリキサレート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリシレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ-および/もしくはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、マグネシウムフェネート、マグネシウム硫黄含有フェネート、マグネシウムスルホネート、マグネシウムカリキサレート、マグネシウムサリキサレート、マグネシウムサリシレート、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ-および/もしくはジ-チオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、ナトリウムフェネート、ナトリウム硫黄含有フェネート、ナトリウムスルホネート、ナトリウムカリキサレート、ナトリウムサリキサレート、ナトリウムサリシレート、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ-および/もしくはジ-チオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはナトリウムメチレン架橋フェノールの低塩基性/中性および過塩基性のバリエーションが挙げられるが、それらに限定されない。
【0094】
洗浄剤は、約0重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約8重量%、または約1重量%~約4重量%、または約4重量%超~約8重量%で存在してもよい。他のアプローチでは、洗浄剤は、約450~約2200ppmの金属を潤滑剤組成物に提供し、かつ、約0.4~約1.5重量パーセントの石鹸含有量を潤滑剤組成物に送達する量で、潤滑油組成物において提供することができる。他のアプローチでは、洗浄剤は、約450~約2200ppmの金属を潤滑剤組成物に提供し、かつ、潤滑剤組成物に約0.4~約0.7重量パーセントの石鹸含有量を送達する量である。
【0095】
過塩基性洗浄剤添加剤は、当該技術分野において既知であり、アルカリ金属またはアルカリ土類金属過塩基性洗浄剤添加剤であり得る。かかる洗浄剤添加剤は、金属酸化物または金属水酸化物を基質および二酸化炭素ガスと反応させることによって調製され得る。基質は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、または脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0096】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論量を超えている、金属塩、例えば、スルホネート、カルボキシレート、サリシレート、および/またはフェネートの金属塩に関する。かかる塩は、100%超の変換レベルを有してもよい(すなわち、これらは、酸をその「標準」「中性」の塩に変換するのに必要な理論的量の金属の100%より多くを含んでもよい)。しばしばMRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性および化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために使用される。標準塩または中性塩では、MRは1であり、過塩基性塩では、MRは1より大きい。これらは一般に、過塩基性、高塩基性、または超塩基性の塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であってもよい。
【0097】
本明細書で使用されるとき、「TBN」という用語は、ASTM D2896の方法によって測定される単位mg KOH/gの全アルカリ価を表すために使用される。潤滑油組成物の過塩基性洗浄剤は、約200mgKOH/グラム以上、または約250mgKOH/グラム以上、または約350mgKOH/グラム以上、または約375mgKOH/グラム以上、または約400mgKOH/グラム以上の全アルカリ価(TBN)を有し得る。過塩基性洗浄剤は、1.1:1から、または2:1から、または4:1から、または5:1から、または7:1から、または10:1からの金属対基質比を有してもよい。
【0098】
好適な過塩基性洗浄剤の例には、限定されないが、過塩基性カルシウムフェネート、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸カルシウム、過塩基性カルボン酸カルシウム、過塩基性リン酸カルシウム、過塩基性カルシウムモノおよび/またはジチオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノおよび/またはジチオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられる。
【0099】
過塩基性洗浄剤は、潤滑油組成物中の総洗浄剤の少なくとも97.5重量%を占め得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物中の総洗浄剤の少なくとも96重量%、または少なくとも94重量%、または少なくとも92重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも88重量%、または少なくとも80重量%は、過塩基性洗浄剤である。
【0100】
低塩基性/中性洗浄剤は、最大で175mgKOH/g、または最大で150mgKOH/gのTBNを有する。低塩基性/中性洗浄剤は、カルシウムまたはマグネシウム含有洗浄剤を含み得る。好適な低塩基性/中性洗浄剤の例としては、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、カルシウムサリシレート、マグネシウムスルホネート、マグネシウムフェネート、およびマグネシウムサリシレートが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、低塩基性/中性洗浄剤は、カルシウム含有洗浄剤および/またはカルシウム含有洗浄剤の混合物である。
【0101】
低塩基性/中性洗浄剤は、潤滑油組成物中の総洗浄剤の少なくとも2.5重量%を占め得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物中の総洗浄剤の少なくとも4重量%、または少なくとも6重量%、または少なくとも8重量%、または少なくとも10重量%、または少なくとも12重量%、または少なくとも20重量%は、任意選択的に低塩基性/中性カルシウム含有洗浄剤であり得る低塩基性/中性洗浄剤である。ある特定の実施形態では、1つ以上の低塩基性/中性洗浄剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約50~約1000重量ppmのカルシウムまたはマグネシウムを潤滑油組成物に提供する。いくつかの実施形態では、1つ以上の低塩基性/中性カルシウム含有洗浄剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、75~800重量ppm未満、または100~600重量ppm、または125~500重量ppmのカルシウムまたはマグネシウムを潤滑剤組成物に提供する。
【0102】
リン含有化合物
本明細書の潤滑剤組成物は、流体に耐摩耗性の利点を付与し得る1つ以上のリン含有化合物を含み得る。1つ以上のリン含有化合物は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、または約0.01重量%~約10重量%、または約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%の範囲の量で、潤滑油組成物中に存在し得る。リン含有化合物は、最大5000ppmのリン、または約50~約5000ppmのリン、または約300~約1500ppmのリン、または最大600ppmのリン、または最大900ppmのリンを潤滑剤組成物に付与することができる。1つ以上のリン含有化合物としては、金属含有リン含有化合物および/または無灰リン含有化合物が挙げられる。好適なリン含有化合物の例としては、チオホスフェート、ジチオホスフェート、金属ホスフェート、金属チオホスフェート、金属ジチオホスフェート、ホスフェート、リン酸エステル、ホスフェートエステル、ホスファイト、ホスホネート、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、またはそれらのアミド塩、およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第0612839号でより詳細に説明されている。ホスホネートおよびホスファイトという用語は、潤滑剤業界ではしばしば互換的に使用されることに注意すべきである。例えば、ジブチル水素ホスホネートは、ジブチル水素ホスファイトと称されることがある。本発明の潤滑剤組成物が、ホスファイトまたはホスホネートのいずれかと称されることがあるリン含有化合物を含むことは、本発明の範囲内である。
【0103】
上記のリン含有化合物のいずれかにおいて、化合物は、約5~約20重量パーセントのリン、または約5~約15重量パーセントのリン、または約8~約16重量パーセントのリン、または約6~約9重量パーセントのリンを有し得る。
【0104】
上記の分散剤と組み合わせてリン含有化合物を潤滑剤組成物に含めると、予想外に、低い摩擦係数などの正の摩擦特性が潤滑剤組成物に付与される。本発明の効果は、リン含有化合物が単独で流体に負の摩擦特性を付与するいくつかの場合においてよりさらに顕著である。これらの摩擦低減が比較的不良なリン含有化合物を本明細書に記載のオレフィンコポリマー分散剤と組み合わせられると、潤滑剤組成物は、改善された、すなわち、より低い摩擦係数を有する。すなわち、本明細書の分散剤は、比較的不良な摩擦係数を有するリン含有化合物を含有する流体を、改善された摩擦特性を有する流体に変換する傾向がある。
【0105】
リン含有化合物と、本明細書に記載のオレフィンコポリマー分散剤と、を含む潤滑組成物の摩擦特性のこの改善は、驚くべきことである。なぜならば、流体の摩擦特性が、リン含有化合物と、上記のコポリマーの指定の特性を有していない、ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤およびオレフィンコポリマースクシンイミド分散剤を含む他のタイプの分散剤と、の組み合わせよりも改善されているからである。
【0106】
本明細書の分散剤と組み合わせると潤滑組成物に改善された摩擦特性を付与するリン含有化合物の1つのタイプは、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物、例えば亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物(ZDDP)であるがこれに限定されない。リン含有化合物が、金属チオホスフェートまたは金属ジチオホスフェート、例えばZDDPであるとき、それは、5~約10重量パーセントの金属、約6~約9重量パーセントの金属、約8~18重量パーセントの硫黄、約12~約18重量パーセントの硫黄、または約8~約15重量パーセントの硫黄を含み得る。好適な金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩を含むことができ、その金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、亜鉛、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0107】
リン含有化合物がZDDPであるとき、ZDDP上のアルキル基は、一級アルコール、二級アルコール、フェノール、および/またはそれらの混合物から誘導され得る。例えば、ZDDPのすべてのアルキル基は、メチルイソブチルカルビノールなどの二級アルコールから、またはメチルイソブチルカルビノールとイソプロピルアルコールなどの二級アルコールの混合物から誘導され得る。場合によっては、ZDDPのアルキル基は、2-エチルヘキサノール、イソブタノール、およびイソプロパノールなどの一級アルコールと二級アルコールとの混合物から誘導され得る。例えば、一実施形態では、アルキル基の約20%は2-エチルヘキサノールから誘導され、アルキル基の約40%はイソブタノールから誘導され、アルキル基の約40%はイソプロパノールから誘導される。他の実施形態では、ZDDP上のすべてのアルキル基は、2-エチルヘキサノールなどの一級アルコールから誘導され得る。ZDDPは、約6~約10重量パーセントのリン、約6~約9重量パーセントの亜鉛、および約12~約18重量パーセントの硫黄を含み得る。
【0108】
かかるZDDPの例としては、亜鉛O,O-ジ(C1~14-アルキル)ジチオホスフェート;亜鉛(混合O,O-ビス(sec-ブチルおよびイソオクチル))ジチオホスフェート;亜鉛-O,O-ビス(分岐鎖および直鎖C3~8-アルキル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(2-エチルヘキシル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(混合イソブチルおよびペンチル)ジチオホスフェート;亜鉛混合O,O-ビス(1,3-ジメチルブチルおよびイソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジイソオクチルジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジブチルジチオホスフェート;亜鉛混合O,O-ビス(2-エチルヘキシルおよびイソブチルおよびイソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(ドデシルフェニル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジイソデシルジチオホスフェート;亜鉛O-(6-メチルヘプチル)-O-(1-メチルプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O-(2-エチルヘキシル)-O-(イソブチル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジイソプロピルジチオホスフェート;亜鉛(混合ヘキシルおよびイソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛(混合O-(2-エチルヘキシル)とO-イソプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジオクチルジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジペンチルジチオホスフェート;亜鉛O-(2-メチルブチル)-O-(2-メチルプロピル)ジチオホスフェート;および亜鉛O-(3-メチルブチル)-O-(2-メチルプロピル)ジチオホスフェートが挙げられるが、それらに限定されない。
【0109】
リン含有化合物は、下式を有する。
【0110】
【化6】
【0111】
式IVのRは独立して、1~18個の炭素原子、または2~12個の炭素原子、または約3~8個の炭素原子を含有する。例えば、Rは、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであり得る。上記式における各R基の炭素原子の数は、一般に約3以上、約4以上、約6以上、または約8以上である。各R基の平均炭素数は3~8であり得る。R基の炭素原子の総数は、5~約72、または12~約32であり得る。式IVにおいて、Aは、金属、例えば、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、亜鉛、またはそれらの組み合わせである。リン含有化合物が式IVに示した構造を有するとき、化合物は約6~約9重量パーセントのリンを有し得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、本発明のリン含有化合物は、式IVの構造を有し、式中、Aは亜鉛であり、化合物は、70~800ppmのリンを潤滑剤組成物に付与する。
【0113】
当該技術分野では、硫黄-亜鉛配位配列のより正確な表現は、以下に示した対称配列によって表すことができ、本明細書で使用される式IVの化学構造は、以下に示した式IV’と交換可能であることが理解される。式IVおよびIV’に示した構造は、、二量体、三量体、またはオリゴマー(例えば、四量体)として存在し得ることも理解される。
【0114】
【化7】
【0115】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、通常は、1つ以上のアルコールまたはフェノールとPとを反応させて、ジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を最初に形成し、次いで形成されたDDPAを酸化亜鉛などの金属化合物で中和することによって、既知の技術に従って調製することができる。例えば、DDPAは、一級アルコールと第二級アルコールとの混合物を、Pと反応させることによって、作製することができる。この場合、DDPAは、一級アルコールおよび二級アルコールの両方から誘導されたアルキル基を含む。代替的に、1つのDDPA上のアルキル基は二級アルコールから完全に誘導され、別のDDPA上のアルキル基は一級アルコールから完全に誘導される、複数のDDPAを調製することができる。次いで、DDPAを一緒にブレンドして、一級アルコールおよび二級アルコールの両方から誘導されたアルキル基を有するDDPAの混合物を形成する。
【0116】
金属塩を作製するために、任意の塩基性または中性金属化合物を使用することができるが、酸化物、水酸化物および炭酸塩が最も一般的に使用される。市販の添加剤は、中和反応において過剰の塩基性金属化合物を使用するためにしばしば過剰の金属を含有する。
【0117】
本明細書のオレフィンコポリマー分散剤と組み合わせたときに、改善された摩擦特性を潤滑組成物に対して付与する別のタイプのリン含有化合物は、無灰(金属を含まない)リン含有化合物である。
【0118】
いくつかの実施形態では、無灰リン含有化合物は、ジアルキルジチオホスフェートエステル、アミル酸ホスフェート、ジアミル酸ホスフェート、ジブチル水素ホスフェート、ジメチルオクタデシルホスフェート、それらの塩、およびそれらの混合物であり得る。
【0119】
無灰リン含有化合物は、下式を有し得る:
【0120】
【化8】
【0121】
式Vにおいて、Rは、SまたはOであり、Rは、-OR”、-OH、または-R”であり、Rは、-OR”、-OH、またはSR’’’C(O)OHであり、Rは、-OR”であり、R’’’は、C~Cの分岐鎖または直鎖アルキル鎖であり、R’’は、C1~18のヒドロカルビル鎖である。リン含有化合物が式Vに示した構造を有するとき、化合物は約8~約16重量パーセントのリンを有し得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、式Vのリン含有化合物を含み、式中、Rは、Sであり、Rは、-OR”であり、Rは、SR’’’COOHであり、Rは、-OR”であり、R’’’は、C分岐アルキル鎖であり、R”は、Cであり、リン含有化合物は、80~900ppmのリンを潤滑剤組成物に送達する量で存在する。
【0123】
別の実施形態では、潤滑剤組成物は、式Vのリン含有化合物を含み、式中、Rは、Oであり、Rは、-OHであり、Rは、-OR”または-OHであり、Rは、-OR”であり、R”は、Cであり、リン含有化合物は、80~1500ppmのリンを潤滑剤組成物に送達する量で存在する。
【0124】
さらに別の実施形態では、潤滑剤組成物は、式Vのリン含有化合物を含み、式中、Rは、Oであり、Rは、OR”であり、Rは、Hであり、Rは、-OR”であり、R”は、Cであり、1つ以上のリン含有化合物(複数可)は、80~1550ppmのリンを潤滑剤組成物に送達する量で存在する。
【0125】
他の実施形態では、潤滑剤組成物は、式Vのリン含有化合物を含み、式中、Rは、Oであり、Rは、-R”であり、Rは、-OCHまたは-OHであり、Rは、-OCHであり、R”は、C18であり、1つ以上のリン含有化合物(複数可)は、80~850ppmのリンを潤滑剤組成物に送達する量で存在する。
【0126】
追加の耐摩耗剤
潤滑剤組成物は、リン不含化合物である追加の耐摩耗剤も含むことができる。かかる耐摩耗剤の例としては、ホウ酸エステル、ホウ酸エポキシド、チオカルバメート化合物(例えば、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、およびそれらの混合物)、硫化オレフィン、アジピン酸トリデシル、チタン化合物、およびヒドロキシルカルボン酸の長鎖誘導体、例えばタルトレート誘導体、タルトラミド、タルトリミド、シトレート、およびそれらの混合物が挙げられる。好適なチオカルバメート化合物は、モリブデンジチオカルバメートである。好適なタルトレート誘導体またはタルトリミドは、アルキル基上の炭素原子の合計が少なくとも8個であり得るアルキル-エステル基を含有し得る。タルトレート誘導体またはタルトリミドは、アルキル基上の炭素原子の合計が少なくとも8個であり得るアルキル-エステル基を含み得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、クエン酸塩を含んでもよい。追加の耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、または約0.01重量%~約10重量%、または約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%を含む範囲において存在し得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、リン含有化合物は、式Vに示した構造を有し、約80~約4500ppmのリンを潤滑剤組成物に送達する。他の実施形態では、リン含有化合物は、約150~約1500ppmのリン、または約300~約900ppmのリン、または約800~1600ppmのリン、または約900~約1800ppmのリンを、潤滑剤組成物に送達する量で存在する。
【0128】
摩擦調整剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、1つ以上の摩擦調整剤、例えば、有機無灰窒素フリー摩擦調整剤、有機無灰アミン系摩擦調整剤、無機摩擦調整剤、およびそれらの混合物から選択される摩擦調整剤を任意選択的に含むこともできる。好適な摩擦調整剤としては、金属含有摩擦調整剤および金属フリー摩擦調整剤も挙げることができ、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、ホウ酸化グリセロールエステル、グリセロールの部分エステル、例えば、グリセロールモノオレエート、脂肪ホスファイト、脂肪エポキシド、硫化脂肪化合物およびオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に存在する植物油または動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールのエステルまたは部分エステル、1つ以上の脂肪族または芳香族カルボン酸などを挙げることができるが、それらに限定されない。摩擦調整剤は、約0重量%~約10重量%、または約0.01重量%~約8重量%、または約0.1重量%~約4重量%の範囲で、本明細書の潤滑油組成物中に任意選択的に含まれていてもよい。
【0129】
好適な摩擦調整剤は、直鎖状、分岐鎖状、もしくは芳香族ヒドロカルビル基、またはそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含んでもよく、かつ飽和であっても不飽和であってもよい。ヒドロカルビル基は、炭素および水素または硫黄もしくは酸素のようなヘテロ原子で構成されてもよい。ヒドロカルビル基は約12~約25個の炭素原子の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は長鎖脂肪酸エステルであってもよい。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルはモノエステル、またはジエステル、または(トリ)グリセリドであってもよい。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪アミン、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、または長鎖イミダゾリンであり得る。
【0130】
他の好適な摩擦調整剤は、有機、無灰(金属不含)、窒素非含有有機摩擦調整剤を含んでもよい。かかる摩擦調整剤は、カルボン酸および無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み得、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシル)を含む。有機無灰窒素非含有摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-およびトリ-エステルを含み得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0131】
アミン系摩擦調整剤はアミンまたはポリアミンを含んでもよい。かかる化合物は、直鎖、飽和もしくは不飽和のいずれか、またはそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有してもよい。好適な摩擦調整剤のさらなる例には、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが含まれる。かかる化合物は、直鎖、飽和もしくは不飽和のいずれか、またはそれらの混合物のヒドロカルビル基を有することができる。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有してもよい。例として、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0132】
アミンおよびアミドは、それ自体として、または酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸またはホウ酸モノ-、ジ-またはトリ-アルキルなどのホウ素化合物との付加物もしくは反応生成物の形態で使用することができる。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0133】
好適な摩擦調整剤としては、グリセリド、脂肪酸、グリセロールモノオレエート、脂肪アルキルタルトレート誘導体、イミダゾリン、アルコキシアミン、アルキル脂肪アミン、アシルグリシン、セリウムナノ粒子、チタン含有化合物、モリブデン含有化合物、およびそれらの混合物が挙げられる。チタン含有化合物は、チタンアルコキシドとネオデカン酸との反応生成物であってもよい。セリウムナノ粒子は、約150℃~約250℃の温度で、水および有機溶媒の実質的な不在下における、有機セリウム塩、脂肪酸、およびアミンの反応生成物から得ることができる。セリウムナノ粒子は、約10ナノメートル未満の粒径を有し得る。好適な脂肪酸は、C10~C30飽和、一価不飽和、または多価不飽和カルボン酸を含む脂肪酸であり得るが、アミンは、C~C30飽和または不飽和アミンから選択される脂肪族アミンである。
【0134】
いくつかのアプローチでは、摩擦調整剤は、下式を有するグリセリドであり得る。
【0135】
【化9】
【0136】
式中、各R20は独立して、Hおよび-C(O)R’’’からなる群から選択され、式中、R’’’は、3~23個の炭素原子を有する飽和または不飽和アルキル基であってもよい。
【0137】
摩擦調整剤はまた、下式も有し得る。
【0138】
【化10】
【0139】
式中、R21は、約10~約30個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基であり、R22は、約2~約4個の炭素原子を含有するヒドロキシアルキル基である。
【0140】
摩擦調整剤はまた、N-脂肪族ヒドロカルビル置換ジエタノールアミンを含むアルコキシアミンであってもよく、N-脂肪族ヒドロカルビル置換基は、アセチレン性不飽和を含まず、かつ14~20個の炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖脂肪族ヒドロカルビル基である。
【0141】
摩擦調整剤は、さらに、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、およびそれらの混合物から選択される脂肪族一級脂肪族アミンを含むアルキル脂肪族アミンであり得る。
【0142】
摩擦調整剤は、アシルグリシンであり、下式を有し得る。
【0143】
【化11】
【0144】
式中、R23は、約8~約22個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖、飽和、不飽和もしくは部分飽和ヒドロカルビルであり、R24は、水素、1~8個の炭素原子を有するヒドロカルビル、または1個以上のヘテロ原子を含有するC~Cヒドロカルビル基である。
【0145】
極圧剤
本開示の潤滑剤組成物はまた、少なくとも1つの極圧剤も含有し得る。極圧剤は、硫黄を含有していてもよく、少なくとも12重量パーセントの硫黄を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、潤滑油に添加される極圧剤は、少なくとも350ppmの硫黄、500ppmの硫黄、760ppmの硫黄、約350~約2,000ppmの硫黄、約2,000~約30,000ppmの硫黄、または約2,000~約4,800ppmの硫黄、または約4,000~約25,000ppmの硫黄を、潤滑剤組成物に対して提供するのに十分である。
【0146】
多種多様な硫黄含有極圧剤が、好適であり、硫化動物または植物の脂肪または油、硫化動物または植物の脂肪酸エステル、リンの三価または五価酸の完全または部分的にエステル化されたエステル(例えば、米国特許番第2,995,569号、同第3,673,090号、同第3,703,504号、同第3,703,505号、同第3,796,661号、同第3,873,454号、同第4,119,549号、同第4,119,550号、同第4,147,640号、同第4,191,659号、同第4,240,958号、同第4,344,854号、同第4,472,306号、および同第4,711,736号を参照されたい)、ジヒドロカルビルポリスルフィド(例えば、米国特許第2,237,625号、同第2,237,627号、同第2,527,948号、同第2,695,316号、同第3,022,351号、同第3,308,166号、同第3,392,201号、同第4,564,709号、および英国特許第1,162,334号を参照されたい)、官能基置換されたジヒドロカルビルポリスルフィド(例えば、米国特許第4,218,332号を参照されたい)、およびポリスルフィドオレフィン生成物(例えば、米国特許第4,795,576号を参照されたい)。他の好適な例としては、硫化オレフィン、硫黄含有アミノ複素環化合物、5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、SおよびSスルフィドの大部分を有するポリスルフィド、硫化脂肪酸、硫化分岐鎖オレフィン、有機ポリスルフィド、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0147】
いくつかの実施形態では、極圧剤は、潤滑組成物において、最大約3.0重量%または最大約5.0重量%の量で存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%~約0.5重量%存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約3.0重量%存在する。他の実施形態では、極圧剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.6重量%~約1重量%の量で存在する。さらに他の実施形態では、洗浄剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約1.0重量%の量で存在する。
【0148】
極圧剤の1つの好適なクラスは、式R-S-Rによって表される1つ以上の化合物で構成されるポリスルフィドであり、式中、RおよびRは、ヒドロカルビル基であり、その各々は、1~18個の炭素原子を含有してもよく、他のアプローチでは、3~18個の炭素原子を含有してもよく、xは、2~8の範囲であってもよく、典型的には2~5の範囲であってもよく、特に3であってもよい。いくつかのアプローチでは、xは、3~5の整数であり、xの約30~約60パーセントは、3または4の整数である。ヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアラルキルなどの多種多様なタイプであり得る。ジ-tert-ブチルトリスルフィドなどの三級アルキルポリスルフィド、およびジ-tert-ブチルトリスルフィドを含む混合物(例えば、主にまたは完全にトリ-、テトラ-、およびペンタスルフィドから構成された混合物)を使用することができる。他の有用なジヒドロカルビルポリスルフィドの例としては、ジアミルポリスルフィド、ジノニルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、およびジベンジルポリスルフィドが挙げられる。
【0149】
極圧剤の別の好適なクラスは、イソブテンなどのオレフィンを硫黄と反応させることによって作製された硫化イソブテンである。硫化イソブテン(SIB)、特に硫化されたポリイソブチレンは、典型的には、約10~約55重量%、望ましくは約30~約50重量%の硫黄含有量を有する。多種多様な他のオレフィンまたは不飽和炭化水素、例えばイソブテン二量体または三量体を使用して、硫化オレフィン極圧剤を形成することができる。硫化オレフィンを調製するための様々な方法が先行技術において開示されてきた。例えば、Myersに与えられた米国特許第3,471,404号、Papayらに与えられた米国特許第4,204,969号、Zaweskiらに与えられた米国特許第4,954,274号、DeGoniaらに与えられた米国特許第4,966,720号、Horodyskyらに与えられた米国特許第3,703,504号を参照されたい。これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0150】
前述の特許に開示されている方法を含む硫化オレフィンの調製するための方法は、「付加物」と典型的には称される材料の形成を含み、オレフィンをハロゲン化硫黄と、例えば一塩化硫黄と、反応させる。次いで、その付加物を硫黄源と反応させて、硫化オレフィンを提供する。硫化オレフィンの品質は、一般に、例えば、粘度、硫黄含有量、ハロゲン含有量、銅腐食試験重量損失などの様々な物理的特性によって測定される。米国特許第4,966,720号は、潤滑油における極圧添加剤として有用な硫化オレフィンと、それらの調製のための2段階反応と、に関する。
【0151】
酸化防止剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤化合物は既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、またはそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は単独または組み合わせて使用されてもよい。
【0152】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、第二級ブチル基および/または第三級ブチル基を含んでいてもよい。フェノール基は、ヒドロカルビル基および/または第2の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されていてもよい。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールまたは4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、または4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールを含む。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、例えばBASFから入手可能なIrganox(登録商標)L-135または2,6-ジ-tert-ブチルフェノールおよびアルキルアクリレートから誘導された付加生成物を含んでいてもよく、アルキル基は、約1~約18個、または約2~約12個、または約2~約8個、または約2~約6個、または約4個の炭素原子を含有し得る。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(登録商標)4716を含み得る。
【0153】
有用な酸化防止剤としては、ジアリールアミンおよびフェノールが挙げられ得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有してもよく、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。一実施形態では、酸化防止剤は、潤滑剤組成物に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%のフェノールとの混合物であってもよい。
【0154】
硫化されて硫化オレフィンを形成することができる好適なオレフィンの例は、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセンまたはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセンまたはこれらの混合物、ならびにこれらの二量体、三量体、および四量体は特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物およびブチルアクリレートなどの不飽和エステルであってもよい。
【0155】
別のクラスの硫化オレフィンには、硫化脂肪酸およびそのエステルが含まれる。脂肪酸は、しばしば、植物油または動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸およびこれらのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、またはこれらの混合物が挙げられる。しばしば、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、またはこれらの混合物から得られる。脂肪酸および/またはエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合してもよい。
【0156】
1つ以上の酸化防止剤(複数可)は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、または約0.1重量%~約10重量%、または約1重量%~約5重量%を含む範囲で存在してもよい。
【0157】
ホウ素含有化合物
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上のホウ素含有化合物を含有し得る。ホウ素含有化合物の例としては、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ホウ酸エステル、ホウ酸脂肪アミン、ホウ酸エポキシド、ホウ酸化洗浄剤、およびホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤が挙げられる。ホウ素含有化合物は、存在する場合、潤滑剤組成物に、最大約3000ppm、約5ppm~約2000ppm、約15ppm~約600ppm、約20ppm~約400ppm、約70ppm~約300ppmのホウ素レベルを提供するのに十分な量で使用することができる。
【0158】
追加の分散剤
潤滑剤組成物中に含有される追加の分散剤としては、分散させる粒子と会合することができる官能基を有する油溶性ポリマー炭化水素主鎖が挙げられ得るが、これに限定されない。典型的には、分散剤は、多くの場合架橋基を介してポリマー主鎖に結合しているアミン、アルコール、アミド、またはエステル極性部分を含む。分散剤は、米国特許第3,634,515号、同第3,697,574号、および同第3,736,357号に記載のマンニッヒ分散剤、米国特許第4,234,435号および同第4,636,322号に記載の無灰スクシンイミド分散剤、米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号、および同第5,633,326号に記載のアミン分散剤、米国特許第5,936,041号、同第5,643,859号、および同第5,627,259号に記載のコッホ分散剤、ならびに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号、および同第5,792,729号に記載のポリアルキレンスクシンイミド分散剤から選択され得る。
【0159】
いくつかの実施形態では、追加の分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導され得る。一例として、追加の分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載され得る。別の実施形態において、追加の分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフトされる無水物から誘導され得る。別の追加の分散剤は、高分子量エステルまたは半エステルアミドであり得る。
【0160】
存在する場合、追加の分散剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約10重量%を提供するのに十分な量で使用することができる。使用することができる分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約10重量%、または約3重量%~約8重量%、または約1重量%~約6重量%であり得る。
【0161】
モリブデン含有化合物
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1種以上のモリブデン含有化合物を含有してもよい。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、またはそれらの混合物の機能的性能を有してもよい。
【0162】
モリブデン含有成分の例としては、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントゲン酸モリブデン、硫化モリブデン、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、および/またはそれらの混合物が挙げられる。代替的に、油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントンモリブデン、モリブデン硫化物、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、および/またはこれらの混合物を含んでもよい。モリブデン硫化物は二硫化モリブデンを含む。二硫化モリブデンは安定な分散液の形態であり得る。一実施形態において、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、およびこれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメートであってもよい。
【0163】
使用され得るモリブデン化合物の好適な例としては、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan(登録商標)822、Molyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)2000、およびMolyvan(登録商標)855など、ならびにAdeka Corporationから入手可能なSakura-Lube(商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、およびS-710などの商品名で販売されている市販の材料、およびそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,650,381号、米国特許第RE37,363E1号、米国特許第RE38,929E1号、および米国特許第RE40,595E1号に記載されている。
【0164】
さらに、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であってもよい。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、および他のモリブデン酸アルカリ金属および他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl、MoOBr、MoCl、三酸化モリブデン、または類似した酸性モリブデン化合物が含まれる。代替的に、その組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号、および同第4,259,194号、ならびにWO94/06897に記載されている塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によるモリブデンを用いて、提供することができ、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
好適な有機モリブデン化合物の別のクラスは、式Moのもの、およびそれらの混合物などの三核モリブデン化合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、化合物を油溶性または油分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する、独立して選択されるリガンドを表し、nは、1~4であり、kは、4~7まで変動し、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、およびエーテルなどの中性電子供与性化合物の群から選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。すべての配位子の有機基の中に、少なくとも25個、少なくとも30個、または少なくとも35個の炭素原子などの、少なくとも合計21個の炭素原子が存在してもよい。追加の好適なモリブデン化合物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0166】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppm~約2000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約550ppm、約5ppm~約300ppm、または約20ppm~約250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量のモリブデンを含む。
【0167】
遷移金属含有化合物
本明細書の潤滑剤組成物はまた、遷移金属含有化合物またはメタロイドを任意選択的に含有してもよい。遷移金属はチタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどを含み得るがこれらに限定されない。好適なメタロイドは、ホウ素、シリコン、アンチモン、テルルなどを含むが、これらに限定されない。
【0168】
一実施形態では、遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、堆積制御添加剤として機能することができるか、または複数の機能を有することができる。一実施形態では、遷移金属含有化合物は、チタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であってもよい。開示される技術において、油溶性物質に使用され得るまたは油溶性物質の調製に使用され得るチタンを含む化合物は、酸化チタン(IV)、硫化チタン(IV)、硝酸チタン(IV)などの様々なTi(IV)化合物、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシドなどのチタン(IV)アルコキシド、およびチタンフェネートを含むがこれに限定されない他のチタン化合物または錯体、チタン(IV)2-エチル-1-3-ヘキサンジオエートまたはクエン酸チタンまたはオレイン酸チタンなどのチタンカルボン酸塩、およびチタン(IV)(トリエタノールアミナート)イソプロポキシドである。開示された技術に包含される他の形態のチタンは、ジチオリン酸チタン(例えば、ジアルキルジチオチオリン酸)およびスルホン酸チタン(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸)などのリン酸チタン、または一般に、油溶性塩のような塩を形成するチタン化合物と様々な酸物質との反応生成物を含む。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコールおよびグリコールから誘導され得る。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含有する二量体またはオリゴマー形態で存在し得る。かかるチタン材料は、市販されているか、または当業者には明らかな適切な合成技術によって容易に調製することができる。これらは特定の化合物に応じて固体または液体として室温で存在し得る。これらはまた、適切な不活性溶媒中の溶液形態で提供されてもよい。
【0169】
一実施形態では、チタンは、スクシンイミド分散剤などのTi変性分散剤として供給することができる。かかる材料は、チタンアルコキシドと例えばアルケニル-(またはアルキル)無水コハク酸のようなヒドロカルビル置換無水コハク酸、との間にチタン混合無水物を形成することによって調製することができる。得られたチタン酸スクシネート中間体は、直接使用してもよいか、または、(a)遊離の縮合可能な-NH官能基を有するポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤、(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤の成分、すなわちアルケニル-(またはアルキル-)無水コハク酸およびポリアミン、(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミンとの反応によって調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤、またはそれらの混合物などの、多くの材料のいずれかと反応させてもよい。代替的に、チタン酸コハク酸塩中間体をアルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコールまたはポリオール、または脂肪酸などの他の薬剤と反応させてもよく、その生成物は潤滑剤にTiを付与するために直接使用されてもよく、または上記のようにコハク酸分散剤とさらに反応させてもよい。一例として、テトライソプロピルチタネートを、140~150℃において5~6時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸と反応して、チタン変性分散剤または中間物を提供することができる。その得られた材料を、ポリイソブテン置換無水コハク酸およびポリエチレンポリアミン由来のコハク酸イミド分散剤とさらに反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を生成させることができる。
【0170】
他のチタン含有化合物はチタンアルコキシドとC-C25カルボン酸の反応生成物であり得る。反応生成物は以下の式:
【0171】
【化12】
【0172】
(式中、p+q=4であり、qは、1~3の範囲であり、R19は、1~8個の範囲の炭素原子を有するアルキル部分であり、R16は、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R17およびR18は、同じかもしくは異なっていて、1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択される)によって表され得るか、または式:
【0173】
【化13】
【0174】
(式X中、xは、0~3の範囲であり、R16は、約6~約25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択される)によって表され得る。R17およびR18は、同じかもしくは異なり、約1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、ならびに/またはR19は、H、もしくはC~C25のカルボン酸部分のいずれかからなる群から選択される。好適なカルボン酸には、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0175】
一実施形態では、油溶性チタン化合物は、重量で約0~約3000ppmのチタン、または重量で約25~約1500ppmのチタン、または重量で約35ppm~約500ppmのチタン、または約50ppm~約300ppmを提供するための量で潤滑油組成物中に存在してもよい。
【0176】
粘度指数向上剤
本明細書の潤滑剤組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の他の粘度指数向上剤も含有し得る。好適な粘度指数向上剤としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、またはそれらの混合物を挙げることができる。他の粘度指数向上剤は、星型ポリマーを含んでいる場合があり、好適な例は、米国特許出願公開第2012/0101017A1号に記載されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0177】
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、粘度指数向上剤に加えて、または粘度指数向上剤の代わりに、1つ以上の他の分散剤粘度指数向上剤も含有してもよい。好適な粘度指数向上剤は、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されているエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されているポリメタクリレート、またはアミンと反応したエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーを含んでもよい。
【0178】
粘度指数向上剤および/または分散剤粘度指数向上剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、または約0.5重量%~約10重量%、約3重量%~約20重量%、約3重量%~約15重量%、約5重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%であり得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、他の粘度指数向上剤は、約10,000~約500,000、約50,000~約200,000、または約50,000~約150,000の数平均分子量を有するポリオレフィンまたはオレフィンコポリマーである。いくつかの実施形態では、他の粘度指数向上剤は、約40,000~約500,000、約50,000~約200,000、または約50,000~約150,000の数平均分子量を有する水素化スチレン/ブタジエンコポリマーである。いくつかの実施形態では、粘度指数向上剤は、約10,000~約500,000、約50,000~約200,000、または約50,000~約150,000の数平均分子量を有するポリメタクリレートである。
【0180】
その他の任意選択的な添加剤
他の添加剤は、潤滑剤組成物に要求される1つ以上の機能を実行するように選択することができる。さらに、1つ以上の上記添加剤は多官能性であってもよく、本明細書で記述される機能にさらなる機能を提供してもよく、またはそれ以外の機能を提供してもよい。他の添加剤は、本開示の特定の添加剤に加えてもよく、かつ/または、金属不活性剤、粘度指数向上剤、洗浄剤、無灰TBNブースター、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、錆抑制剤、分散剤、分散剤粘度指数向上剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を含んでもよい。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有する。
【0181】
好適な金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾール誘導体(通常トリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンズイミダゾール、または2-アルキルジチオベンゾチアゾール、エチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートならびに任意選択的に酢酸ビニルのコポリマーを含む泡抑制剤、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤、無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリアクリルアミドを含む流動点降下剤を含む。
【0182】
好適な泡抑制剤は、シロキサンなどのシリコン系化合物を含む。
【0183】
好適な流動点降下剤は、ポリメチルメタクリレートまたはそれらの混合物を含み得る。流動点降下剤は、本潤滑油組成物の最終重量を基準として、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、または約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0184】
好適な防錆剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一化合物、または化合物の混合物であってもよい。本明細書で有用な防錆剤の非限定的な例には、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、およびセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、ならびにトール油脂肪酸、オレイン酸およびリノール酸から生成された二量体および三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食防止剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、およびテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、およびヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含むアルケニルコハク酸が挙げられる。他の有用なタイプの酸性腐食防止剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。かかるアルケニルコハク酸の対応する半アミドも有用である。有用な防錆剤は高分子量の有機酸である。いくつかの実施形態において、エンジンオイルは防錆剤を含まない。
【0185】
存在する場合、錆抑制剤は、本潤滑油組成物の最終重量を基準として、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0186】
潤滑剤組成物は、腐食防止剤も含み得る(他の言及した成分のいくつかは銅腐食防止特性も有し得ることに留意すべきである)。好適な銅腐食防止剤としては、エーテルアミン、ポリエトキシル化化合物、例えば、エトキシル化アミンおよびエトキシル化アルコール、イミダゾリン、モノアルキル、およびジアルキルチアジアゾールなどが挙げられる。
【0187】
チアゾール、トリアゾール、およびチアジアゾールも、潤滑剤に使用され得る。例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、および2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。一実施形態では、潤滑剤組成物は、1,3,4-チアジアゾール、例えば、2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-ジチアジアゾールを含む。
【0188】
発泡防止剤/界面活性剤もまた、本発明による流体に含まれ得る。様々な薬剤が、かかる使用について知られている。エチルアクリレートとヘキシルエチルアクリレートとのコポリマー、例えば、Solutiaから入手可能なPC-1244を使用することができる。他の実施形態では、4%DCFなどのシリコーン流体が含まれ得る。消泡剤の混合物もまた潤滑剤組成物に存在してもよい。
【0189】
好適なエンジン潤滑剤は、広い範囲および狭い範囲を有する表2に列挙された範囲の添加剤成分を含み得る。基油は潤滑油の残部を補う。
【0190】
【表2】
【0191】
上記の各成分の百分率は、潤滑油組成物の合計最終重量に基づく、各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残部は、1つ以上の基油からなる。本明細書に記載された組成物を配合する際に使用される添加剤は、個別にまたは様々な副次的な組み合わせで基油にブレンドされてもよい。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒のような希釈剤)を使用して、成分のすべてを同時に混合することが好適であり得る。
【0192】
完全に配合された潤滑剤は、その配合物において必要とされる特性を供給する分散剤/抑制剤パッケージまたはDIパッケージと本明細書で称されることがある添加剤パッケージを従来通りに含有する。好適なDIパッケージは、例えば、米国特許第5,204,012号および同第6,034,040号に例えば記載されている。添加剤パッケージに含まれる添加剤のタイプの中には、分散剤、シール膨潤剤、酸化防止剤、泡抑制剤、潤滑剤、防錆剤、腐食防止剤、解乳化剤、粘度指数向上剤などがあり得る。これらの成分のいくつかは、当業者によく知られており、一般に、本明細書に記載の添加剤および組成物と共に従来の量で使用される。
【0193】
本明細書に記載された組成物を配合する際に使用される添加剤は、個別にまたは様々な副次的な組み合わせで基油にブレンドされてもよい。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒のような希釈剤)を使用して、成分のすべてを同時に混合することが好適であり得る。添加剤濃縮物の使用は、添加剤濃縮物の形態であるときに成分の組み合わせによってもたらされる相互適合性を利用することができる。また、濃縮物の使用はブレンド時間を短縮し、ブレンドエラーの可能性を少なくし得る。
【0194】
さらなる実施形態において、本発明は、前述の実施形態のうちのいずれかの潤滑剤組成物でエンジンを潤滑することによってエンジンを潤滑するための方法に関する。なおさらなる実施形態では、本発明は、エンジンを潤滑するための上記実施形態のいずれかによる潤滑剤組成物の使用および/または以下の表で実証しているように摩擦係数の低減ならびに/もしくは改善されたシール適合性を達成するための潤滑剤組成物の使用に関する。
【0195】
本説明の潤滑剤、成分の組み合わせ、または個々の成分は、様々なタイプの内燃エンジンにおいて潤滑剤としての使用に好適であり得る。好適なエンジンのタイプとしては、ヘビーデューティディーゼル、乗用車、ライトデューティディーゼル、中速ディーゼル、または船舶用エンジンが挙げられ得るが、それらに限定されない。内燃エンジンは、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、バイオ燃料エンジン、混合ディーゼル/バイオ燃料エンジン、混合ガソリン/バイオ燃料エンジン、アルコール燃料エンジン、混合ガソリン/アルコール燃料エンジン、圧縮天然ガス(CNG)燃料エンジン、またはこれらの混合物であり得る。ディーゼルエンジンは、圧縮点火エンジンであってもよい。ガソリンエンジンは、スパーク点火エンジンであってもよい。内燃エンジンはまた、電気またはバッテリ電源と組み合わせて使用してもよい。このように構成されたエンジンは一般的にはハイブリッドエンジンと呼ばれている。内燃エンジンは、2ストローク、4ストローク、またはロータリーエンジンであり得る。好適な内燃エンジンは、船舶用ディーゼルエンジン(例えば内陸船舶)、航空用ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、およびオートバイ、自動車、機関車、ならびにトラックエンジンを含む。
【0196】
内燃エンジンのための潤滑油組成物は、硫黄、リン、または硫酸灰分(ASTM D-874)含有量とは無関係に、あらゆるエンジン潤滑剤に好適であり得る。エンジンオイル潤滑剤の硫黄含有量は、約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下、または約0.3重量%以下、または約0.2重量%以下であり得る。一実施形態では、硫黄含有量は、約0.001重量%~約0.5重量%、または約0.01重量%~約0.3重量%の範囲であってもよい。本明細書のエンジンオイル潤滑剤のリン含有量は、約0.2重量%以下、または約0.1重量%以下、または約0.085重量%以下、または約0.08重量%以下、またはさらには約0.06重量%以下、約0.055重量%以下、または約0.05重量%以下であり得る。一実施形態では、リン含有量は、約50ppm~約1000ppm、または約325ppm~約850ppm、または最大600ppmであり得る。本明細書のエンジンオイル潤滑剤の総硫酸灰分は、約2重量%以下、または約1.5重量%以下、または約1.1重量%以下、または約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下であり得る。一実施形態では、硫酸灰分含有量は、約0.05重量%~約0.9重量%、または0.1重量%もしくは約0.2重量%~約0.45重量%であってもよい。
【0197】
さらに、本説明の潤滑剤は、1つ以上の業界仕様要件、例えば、ILSAC GF-3、GF-4、GF-5、GF-6、CK-4、FA-4、CJ-4、CI-4 Plus、CI-4、ACEA A1/B1、A2/B2、A3/B3、A3/B4、A5/B5、C1、C2、C3、C4、C5、E4/E6/E7/E9、Euro 5/6、JASO DL-1、低SAPS、中SAPS、または相手先商標製品の製造会社の仕様、例えば、DexosTM 1、DexosTM 2、MB-Approval 229.51/229.31、VW 502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、506.00/506.01、507.00、508.00、509.00、BMW Longlife-04、Porsche C30、Peugeot Citroen Automobiles B71 2290、B71 2296、B71 2297、B71 2300、B71 2302、B71 2312、B71 2007、B71 2008、Ford WSS-M2C153-H、WSS-M2C930-A、WSS-M2C945-A、WSS-M2C913A、WSS-M2C913-B、WSS-M2C913-C、GM 6094-M、Chrysler MS-6395、または本明細書に記載されていない過去もしくは将来の乗用車用モーターオイル仕様またはヘビーデューティディーゼルオイル仕様を満たすのに好適であり得る。乗用車用モーターオイル用途のためのいくつかの実施形態では、完成した流体中のリンの量は、1000ppm以下、または900ppm以下、または800ppm以下、または600ppm以下である。ヘビーデューティディーゼル用途のためのいくつかの実施形態では、完成した流体中のリンの量は、1200ppm以下、または1000ppm以下、または900ppm以下、または800ppm以下である。
【0198】
特定の用途では、本開示の潤滑剤はまた、自動変速機用流体、無段変速機用流体、手動変速機用流体、ギアオイル、パワートレイン部品に関連する他の流体、オフロード用流体、パワーステアリング用流体、風力タービンで使用される流体、コンプレッサー、作動流体、スライドウェイ流体(slideway fluid)、および他の工業用流体にも好適であり得る。特定の用途では、これらの潤滑用途は、ギアボックス、パワーテイクオフおよびクラッチ(複数可)、リアアクスル、リダクションギア、湿式ブレーキ、および油圧アクセサリーの潤滑を含み得る。
【0199】
本開示およびその多くの利点のより良い理解は、以下の実施例を用いて明らかにされ得る。以下の実施例は例示的なものであり、範囲または趣旨のいずれにおいてもそれを限定するものではない。当業者であれば、これらの実施例に記載されている構成要素、方法、ステップ、およびデバイスの変形形態を使用できることを容易に理解するであろう。特に明記しない限り、または以下の実施例および本開示を通して考察の文脈から明らかでない限り、本開示に記載するすべての百分率、比、および部は、重量基準である。特に記載のない限り、本明細書および本開示を通して記載される例示的な反応は、一般に、オーバーヘッド撹拌、水分除去コンデンサー、温度プローブ、および窒素供給を備えた500mLフラスコで行った。必要に応じて、反応物を、イソマントル(isomantle)を用いて加熱した。
【実施例
【0200】
以下の実施例は、本開示の方法および組成物を例示するものであって、限定するものではない。当該技術分野において通常遭遇される種々の条件およびパラメータの他の好適な修正および適応は、当業者にとって明らかであり、本開示の趣旨および範囲内である。本開示の文脈で特に明記しない限り、すべての百分率、比、量、および部は、重量基準である。以下の表および本文全体で使用するとき、ppmリンおよびppm窒素などの元素濃度は、標準の誘導結合プラズマ(ICP)分光法を使用して測定される。
【0201】
比較および本発明の分散剤は、分散性および摩擦性能について以下の実施例で評価した:
・比較分散剤CE-1:数平均分子量2300のPIB置換基を有するポリイソブチレン(PIB)無水コハク酸(PIBSA)と、テトラエチレンペンタミン(TEPA)と、を反応させて得られたヒドロカルビル置換スクシンイミド。
・比較分散剤(CE-2):比較分散剤CE-2は、比較分散剤CE-1を1モル当量の無水マレイン酸で後処理することによって得た。
・比較分散剤(CE-3):比較分散剤CE-3は、比較分散剤CE-1を3モル当量の無水マレイン酸で後処理することによって得た。
・比較分散剤(CE-4):1300の数平均分子量を有するポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)を、アミンボトムス(amine bottoms)と反応させ、次いで1モル当量の無水マレイン酸で後処理して得られたヒドロカルビル置換スクシンイミド。
・比較分散剤(CE-5):1300の数平均分子量を有するポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)を、アミンボトムと反応させ、次いで3モル当量の無水マレイン酸で後処理して得られたヒドロカルビル置換スクシンイミド。
・本発明の分散剤I-1:本発明の分散剤I-1は、以下の手順を使用して、比較分散剤CE-1を2-エチル-2-オキサゾリンで後処理することによって、得られた:すなわち、約300rpmの一定の撹拌速度を使用して、活性窒素流下、約263.63gの分散剤CE-1を約95℃に加熱した。その温度に達したら、約36.37グラム(約0.36モル)の2-エチル-2-オキサゾリンを一度に数アリコート添加した。次いで、その反応混合物を、約130℃において、300rpmの一定の撹拌速度で、約6時間反応させた。その反応を濾過した。
・本発明の分散剤I-2:本発明の分散剤I-2は、以下の手順を使用して、比較分散剤CE-1を2-フェニル-2-オキサゾリンで後処理することによって、得られた:すなわち、300rpmの一定の撹拌速度を使用して、活性窒素流下、約246.03gの分散剤CE-1を約95℃に加熱した。その温度に達したら、約54グラム(約0.36モル)の2-フェニル-2-オキサゾリンを一度に数アリコート添加した。その反応混合物を、約95℃において、約300rpmの一定の撹拌速度で、約6時間反応させた。その反応を濾過した。
・本発明の分散剤I-3およびI-5:本発明の分散剤I-3およびI-5は、本発明の分散剤I-1を調製するために使用した手順と一致した手順を使用して、1モル当量(I-3)および3モル当量(I-5)の2-エチル-2-オキサゾリンで比較分散剤CE-1を後処理することにより得た。
・本発明の分散剤I-4およびI-6:本発明の分散剤I-4およびI-6は、本発明の分散剤I-2を調製するために使用した手順と一致した手順を使用して、1モル当量(I-4)および3モル当量(I-6)の2-フェニル-2-オキサゾリンで比較分散剤CE-1を後処理することにより得た。
・本発明の分散剤I-7およびI-9:本発明の分散剤I-7およびI-9は、分散剤CE-4を調製するために使用した手順と一致した手順を使用して、1モル当量(I-7)および3モル当量(I-9)のいずれかの2-エチル-2-オキサゾリンで比較分散剤CE-4を後処理することにより得た。
・本発明の分散剤I-8およびI-10:本発明の分散剤I-8およびI-10は、分散剤CE-4を調製するために使用した手順と一致した手順を使用して、1モル当量(I-8)および3モル当量(I-10)のいずれかの2-フェニル-2-オキサゾリンで比較分散剤CE-4を後処理することにより得た。
【0202】
PIB無水コハク酸(PIBSA)をテトラエチレンペンタミン(TEPA)と反応させてから2-エチル-2-オキサゾキソリンで後処理することにより得られるポリイソブチレン(PIB)分散剤の2つの後処理反応スキームの例を以下に示す:
【0203】
【化14】
【0204】
別の例では、PIB無水コハク酸(PIBSA)をテトラエチレンペンタミン(TEPA)と反応させ、次いで2-フェニル-2-オキサゾリンで後処理することで得られたポリイソブチレン(PIB)分散剤の第3の例示的な後処理反応スキームを以下に示す:
【0205】
【化15】
【0206】
他の分散剤、分散剤粘度調整剤、および本明細書のすべての考察と一致する他のオキサゾリンまたはオキサゾリン誘導体を使用して、本開示内で同様の反応スキームが企図されることが理解されよう。さらに、上記反応スキームにおけるPIBヒドロカルビル基は、本開示に記載の他のオレフィンまたはオレフィンコポリマーでもあり得る。
【実施例1】
【0207】
比較および本発明の分散剤は、Anton Parr Rheometerを使用して分散剤の性能を最初に評価して、レオロジープロファイルと、平坦であるかまたはニュートン性であるレオロジープロファイルによって証明された煤を完全に分散させる分散剤の最小量と、を決定した。この分散剤の最小量は、有効濃度(EC)として識別される。有効濃度が低いほど、分散剤が優れていることを示している。
【0208】
分散剤なしでは、煤粒子を含有する油は、典型的には剪断減粘(非ニュートン)挙動を有し、低剪断速度では、煤粒子が凝集することに起因して、剪断速度の増加と共に粘度は低下減少し、一方、より高い剪断速度では、煤粒子の凝集が破壊され、その結果、粘度が低下した。分散剤としての能力を有する添加剤が煤入り油に添加される場合、煤粒子は凝集することなく分散剤によって保護され、したがって、油は理想的には粘性またはニュートン流体挙動を示し、粘度は剪断速度と無関係である。(例えばThomas G.Mezger,The Rheology Handbook,3rd Revised Edition,2011を参照されたい、その部分は参照により本明細書に組み込まれる)。これに基づいて、比較および本発明の分散剤が煤粒子を分散させることの有効性を試験するために、Physica MCR 301レオメーター(Anton Parr)を使用して、分散性試験を設計した。この試験では、約4.6重量パーセントの煤を有する煤入り油が、分散剤を含有していない流体を使用している燃焼ディーゼルエンジンから発生した。次いで、煤入り油を、一定量の発明および比較分散剤で上面処理し、次いで平行プレートを有するレオメーターで剪断速度掃引することによって、ニュートン/非ニュートン挙動を調べた。試験温度は、約100℃で、試験トッププレートは、Anton Parr CP50-1プレートであった。粘度および剪断速度のプロファイルを記録し、その結果は、例えば、潤滑油中0.665重量パーセントの分散剤における分散剤性能を示している図1のグラフで見ることができる。
【0209】
有効濃度は、潤滑剤組成物についてニュートン流体挙動を得るのに十分な、潤滑油中の試験分散剤の濃度である。ニュートン流体は、粘度対剪断速度曲線の勾配がゼロに等しいときに得られる。勾配がゼロになる分散剤の濃度は、その分散剤の有効濃度(EC)である。
【0210】
以下の実施例で使用される潤滑剤組成物は、上で調製されたのと同じ煤入り油の試料を使用して調製された。次いで、単一の分散剤または添加剤組成物を、様々な濃度で煤入り油に加えた。この実施例で評価した各配合物に存在する追加成分は、抗酸化剤(複数可)、洗浄剤(複数可)、無灰TBNブースター(複数可)、腐食防止剤(複数可)、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート(複数可)、灰分不含リン化合物(複数可)、消泡剤(複数可)、耐摩耗剤(複数可)、流動点降下剤(複数可)、および摩擦調整剤(複数可)である。各潤滑剤組成物で使用された分散剤または添加剤組成物の量の変化を考慮し、煤入り油の量を変えて組成物の残部を提供した。潤滑剤組成物中の他のすべての添加剤の量は一定に保った。
【0211】
次いで、各潤滑剤組成物にプレート上のコーンを備えたレオメーターで剪断速度掃引を行い、ニュートン/非ニュートン挙動を決定し、ニュートン挙動が観察された分散剤または添加剤組成物の有効濃度を測定した。すべての試験は、100℃の同じ一定温度で実行された。各潤滑剤組成物について、いくつかの濃度の分散剤を試験した。各曲線の勾配を計算した。分散剤の有効濃度は、潤滑剤組成物がニュートン挙動を示したときの潤滑剤中の分散剤の濃度とみなした。したがって、有効濃度は、経時的な剪断速度による粘度の変化を示さない潤滑剤組成物を提供した分散剤の濃度であった。上記のように、これは、粘度対剪断速度の曲線の勾配がゼロになる分散剤の濃度を見つけることによって決定した。
【0212】
試験した分散剤の有効濃度またはECを、以下の表3に示す。潤滑剤に使用された実際の量は、潤滑剤に望まれる他の特性に応じてより高くなり得る。
【0213】
【表3】
【0214】
上記の表3に示すように、例えば、本発明の分散剤I-1は、CE-1のキャップされていないバージョンと比較して改善された分散性を示した。本発明の分散剤I-1の煤を分散させるための有効または最小濃度は、分散剤のキャップされていないバージョンよりも約11.8パーセント低かった。他の評価において、本発明の各分散剤は、比較無水マレイン酸キャッピング剤を利用している比較試料と同等またはより低いECを示した。
【0215】
図1には、分散剤I-1、I-2、およびCE-1の例示的なレオロジー曲線を、未処理煤入り油と比較して示す。「煤入り油」と標識された曲線は、(上で考察した)約4.6重量パーセントの煤を有する油および任意の分散剤を添加する前の油に関する粘度対剪断速度曲線を示した。煤入り油は、剪断減粘性挙動を示したが、これは煤粒子が一緒に凝集したためであると考えられた。次に、様々な量のキャップされたおよびキャップされていないPIB分散剤を使用して、同じ煤入り油を評価した。各レオロジー評価で使用されたPIB分散剤の量は、表3に示した有効濃度を決定するために、0.665~1.964重量パーセント(固形分)の範囲であった。図1は、はじめの0.665%の処理量でのレオロジー曲線を示している。本発明のPIB分散剤I-1は、キャップされていない比較例CE-1の2-エチル-2-オキサゾリンでキャップされたバージョンであり、図1に示したはじめの0.665重量パーセントの処理量において剪断速度に対して比較的低い粘度を示し、比較例CE-1よりも良好な分散能力を示している。図1に見られるように、低い剪断での本発明の分散剤I-1に関する粘度曲線は、比較例CE-1(同じ分散剤のキャップされていないバージョン)の曲線よりも低い。これらの結果は、本実施例で使用された処理量において煤粒子を分散させる際に、本発明の分散剤I-1が、最も効果的であったことを示している。
【実施例2】
【0216】
比較および本発明の分散剤CE-1、I-1、およびI-2については、高周波往復運動リグ(HFRR)試験により摩擦試験も行った。PCS InstrumentsのHFRR試験装置を使用して、境界潤滑領域の摩擦係数を測定した。この試験では、設定したストローク周波数において、前後に固定荷重下で、温度制御槽において、SAE 52100金属ボールとSAE 52100金属ディスク間の接触を浸漬することによって、試験試料を測定する。3重量パーセントの基油中の約0.1重量パーセントの分散剤の処理量での試験試料の摩擦係数を、約130℃で測定し、摩擦係数、温度、および電気接触抵抗を、試験を通じてモニターした。境界層摩擦を減少させる潤滑剤の能力は、測定された境界潤滑領域の摩擦係数によって反映される。値が小さいほど、摩擦が低いことを示している。キャップされていない分散剤と発明のキャップされた分散剤とを比較した結果を、以下の表4に示す。
【0217】
【表4】
【0218】
比較分散剤CE-2からCE-5および本発明の分散剤I-3からI-10に関しても、潤滑剤の境界摩擦領域を評価するために、高周波往復運動リグ(HFRR)試験を使用して、摩擦試験にかけた。これらの調査では、無水マレイン酸からの比較窒素キャッピング剤を、オキサゾリンから誘導された発明の窒素キャッピング剤と比較した。結果は、以下の表5および表6、ならびにキャッピング剤のタイプごとの境界摩擦係数を示している図2に示してある。
【0219】
【表5】
【0220】
【表6】
【0221】
図2に示すように、キャッピング剤と活性アミンと間の処理量またはモル当量比に関係なく、オキサゾリンでキャップされた本発明の分散剤は、比較無水マレイン酸でキャップされた同様のPIBSA-アミン分散剤よりも堅牢かつ一貫した境界摩擦係数を示した。したがって、本発明の分散剤は良好な分散性を提供するだけでなく、境界摩擦は、キャッピング剤のタイプ、処理量、または保護されていないアミンに対するキャッピング剤のモル当量の影響をあまり受けなかったため、本発明の分散剤は、驚くべきことに、他のキャップされた分散剤と比較してより堅牢かつ一貫した摩擦性能を有する。キャッピング剤のタイプが、その分散性能に加えて、かかる一貫したかつ堅牢な境界摩擦性能を示すことになるとは予想外であった。
【0222】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り複数の指示対象を含むことに留意する。したがって、例えば、「抗酸化剤」への言及は、2つ以上の異なる抗酸化剤を含む。本明細書で使用されるとき、「含む」という用語およびその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換または追加され得る他の同様の項目を除外しないように非限定的であることを意図する。
【0223】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的のために、他に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量、百分率または割合、および他の数値を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されると理解される。したがって、そうでないと示されない限り、次の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本開示によって得られることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点からおよび通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0224】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータは、単独で、または本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、もしくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0225】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることをさらに理解されたい。よって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、および4の値の、およびかかる値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0226】
本明細書に開示される各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限および各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることをさらに理解されたい。よって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、または各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、または各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって誘導されるすべての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまたさらに理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0227】
さらに、説明または実施例において開示される成分、化合物、置換基、またはパラメータの特定量/値は、範囲の下限または上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、よって、本出願の他の個所で開示される同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲または特定量/値の任意の他の下限または上限と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲を形成することができる。
【0228】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人らまたは他の当業者にとって現在予想されていない、または現在予想することができない代替、修正、変形、改善、および実質的な同等物が現れ得る。したがって、出願された、修正され得る添付の特許請求の範囲は、かかるすべての代替、修正、変形、改善、および実質的な同等物を包含することを意図している。
図1
図2