(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】複合管及び複合管接続構造
(51)【国際特許分類】
F16L 11/11 20060101AFI20240322BHJP
F16L 33/24 20060101ALI20240322BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20240322BHJP
B32B 3/28 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F16L11/11
F16L33/24
B32B1/08 Z
B32B3/28 Z
(21)【出願番号】P 2020010719
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三觜 浩平
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105326(JP,A)
【文献】特開2019-215060(JP,A)
【文献】実開昭62-066083(JP,U)
【文献】特開2017-008995(JP,A)
【文献】特開2002-106759(JP,A)
【文献】特開2008-164090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/11
F16L 33/24
B32B 1/08
B32B 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状とされ、径方向外側へ凸となる環状の山部と、径方向外側が凹となる環状の谷部とが軸方向に交互に形成されて蛇腹状とされ、前記山部と前記谷部で前記軸方向に短縮可能なコルゲート管と、
前記コルゲート管の内側に配置された中間層と、
前記中間層の内側に配置され、外周面が前記中間層と付着し難い素材で構成され
、前記外周面に軸方向に延びるスクラッチ状の筋が形成された内管と、
を有する複合管。
【請求項2】
前記内管は、少なくとも2層構造となっている請求項1に記載の複合管。
【請求項3】
前記内管の前記外周面が、金属で構成されている請求項1又は請求項2に記載の複合管。
【請求項4】
前記内管の前記外周面が、フッ素樹脂で構成されている請求項1又は請求項2に記載の複合管。
【請求項5】
前記中間層は、前記内管の前記外周面の素材より融点の低い材料で構成されている請求項1~請求項4の何れか1項に記載の複合管。
【請求項6】
請求項3に記載の複合管と、
前記複合管の前記内管に挿入される筒状の芯材と、前記芯材の外周部に配置されたロック爪と、を有する管継手と、
を備えた複合管接続構造。
【請求項7】
前記ロック爪は、樹脂材料で形成されて前記外周部に接触する環状部と、前記環状部に設けられて前記内管の内周部に接触する金属製の爪と含んで構成される請求項6に記載の複合管接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合管及び複合管接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
外側がコルゲート管であり、中間層が発泡樹脂で構成され、内側層がポリオレフィン系樹脂で構成された複合管を、一つのライン(同時押出)で成形する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来例では、中間層が発泡樹脂で構成され、内側層も樹脂で構成されているので、押出成形により内管の外側で樹脂を溶融及び発泡させて中間層を形成する際に、その熱により内側層の外周面が溶融し、冷却後に中間層が内側層の外周面に付着し易い。
【0005】
一方、複合管を管継手に接続する場合、コルゲート管及び中間層を内側層の軸方向に縮めて内管から剥がし、内側層を露出させることが一般に行われる。このとき、中間層が内側層の外周面に付着していると、コルゲート管及び中間層を容易に剥がすことができず、内側層を管継手に接続する作業を容易に行うことができないと考えられる。
【0006】
また、中間層と内側層との付着を抑制するために、発泡成形された中間層を冷却してから、該中間層に内側層を挿入することも考えられるが、工程が増加するため一つのラインで製造することが難しくなる。
【0007】
本発明は、内管からコルゲート管及び中間層を剥がし易い複合管を、一つのラインで製造可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る複合管は、管状とされ、径方向外側へ凸となる環状の山部と、径方向外側が凹となる環状の谷部とが軸方向に交互に形成されて蛇腹状とされ、前記山部と前記谷部で前記軸方向に短縮可能なコルゲート管と、前記コルゲート管の内側に配置された中間層と、前記中間層の内側に配置され、外周面が前記中間層と付着し難い素材で構成された内管と、を有する。
【0009】
この複合管では、内管の外周面が中間層と付着し難い素材で構成されているので、押出成形により樹脂を内管の外側で溶融及び発泡させて中間層を形成しても、中間層が内管の外周面に付着し難い。したがって、複合管を管継手に接続する際に、コルゲート管及び中間層を内管の軸方向に縮めて内管から剥がすことが容易となる。また、複合管の製造時に、発泡成形された中間層を冷却してから該中間層に内側層を挿入する工程が不要となる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る複合管において、前記内管が、少なくとも2層構造となっている。
【0011】
この複合管では、内管が少なくとも2層構造となっているので、内管の外周面を構成しない内側の層の材料をある程度自由に選定しつつ、中間層と内管の外周面との付着を抑制できる。
【0012】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る複合管において、前記内管の前記外周面が、金属で構成されている。
【0013】
この複合管では、内管の外周面が金属で構成されているので、該外周面の融点が、押出成形により樹脂を内管の外側で溶融及び発泡させて中間層を形成する際の温度よりも高い。したがって、中間層と内管の外周面との付着を抑制できる。
【0014】
第4の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る複合管において、前記内管の前記外周面が、フッ素樹脂で構成されている。
【0015】
この複合管では、内管の外周面がフッ素樹脂で構成されており、滑り易いので、中間層と内管の外周面との付着を抑制できる。また、複合管を管継手に接続する際に、コルゲート管及び中間層を内管から剥がして内管を露出させ易い。
【0016】
第5の態様は、第1~第4の態様の何れか1態様に係る複合管において、前記中間層が、前記内管の前記外周面の素材より融点の低い材料で構成されている。
【0017】
この複合管では、中間層が、内管の外周面の素材より融点の低い材料で構成されているので、押出成形により樹脂を内管の外側で溶融及び発泡させて中間層を形成する際に、内管の外周面が溶融しない。したがって、中間層と内管の外周面との付着を抑制できる。
【0018】
第6の態様に係る複合管接続構造は、第3の態様に係る複合管と、前記複合管の前記内管に挿入される筒状の芯材と、前記芯材の外周部に配置されたロック爪と、を有する管継手と、を備えている。
【0019】
この複合管接続構造では、芯材を内管に挿入することで、ロック爪の内管の内周部に接触するため、内管が抜けようとした場合には、爪が内管の内周部に引っ掛かり、内管の抜けを抑制することができる。また、内管の外周面が、金属で構成されているので、ロック爪が内管の内周部に引っ掛かったときの内管の拡径が抑制される。このため、内管をロック爪によってより確実に保持できる。
【0020】
第7の態様は、第6の態様に係る複合管接続構造において、前記ロック爪が、樹脂材料で形成されて前記外周部に接触する環状部と、前記環状部に設けられて前記内管の内周部に接触する金属製の爪と含んで構成される。
【0021】
この複合管接続構造では、金属よりも変形し易い樹脂材料で環状部が形成されているため、環状部が金属で形成されている場合に比較して拡径し易くなり、金属製の爪が複合管の内周に食い込み易くなり、複合管の抜け止め抑制効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、内管からコルゲート管及び中間層を剥がし易い複合管を、一つの製造ラインで製造可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係る複合管接続構造を示す断面図である。
【
図3】管継手のロック爪を示す一部を断面にした斜視図である。
【
図5】変形例に係る複合管の一部を示す断面図である。
【
図6】本実施形態に係る複合管を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態に係る複合管を示す半断面図である。
【
図8】本実施形態に係る複合管の内管の端部が露出した状態を示す半断面図である。
【
図9】本実施形態に係る複合管の内管の端部が露出した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0025】
(複合管接続構造)
図1から
図3において、本実施形態に係る複合管14を備えた複合管接続構造12について説明する。
【0026】
図1に示されるように、複合管接続構造12は、管継手10と、複合管14とを含んで構成されている。管継手10及び複合管14は、一例として、給水や給湯の用途に好適に使用し得るものであるが、水以外の液体、あるいは気体を含む、あらゆる流体の用途にも使用し得るものである。
【0027】
管継手10は、芯材28と、ロック爪20とを含んで構成されている。具体的には、管継手10は、芯材28が形成された継手本体16と、止水部材18、及びロック爪20を含んで構成されている。管継手10は、直線状に形成され、長手方向中央部を挟んで左右対称形状である。なお、管継手10は、左右対非称形状であってもよく、例えば略L字型、略T字型、略十字型等、任意の形状に構成されていてもよい。
【0028】
本実施形態の継手本体16は、一直線状に形成された管形状であり、軸心部には、流路22が貫通している。継手本体16の長手方向中央部には、径方向外側(矢印R方向)へ突出するフランジ24が形成されている。継手本体16におけるフランジ24の両側には、複合管14に挿入される芯材28が形成されている。
【0029】
芯材28の外周の先端側には、第1の溝30が形成されている。第1の溝30には、止水部材18が収容される。止水部材18は、弾性体からなるOリング等の部材である。第1の溝30は、溝底が軸方向に渡って一定の径に形成されている。
【0030】
また、芯材28の外周における第1の溝30のフランジ24側には、第2の溝32が形成されている。第2の溝32には、後述するロック爪20が収容される。第2の溝32は、ロック爪20の環状部36よりも軸方向の長さが長く形成されている。第2の溝32の溝底のフランジ24側には、一定径とされた一定径部32Aが形成されている。第2の溝32の溝底における芯材28の先端側(フランジ24とは反対側)には、芯材28の先端側に向けて溝底の径が拡大するテーパー状の傾斜面32Bが形成されている。継手本体16における芯材28とフランジ24との間には、ストッパ34が設けられている。このストッパ34は、複合管14の端部を突き当てる部位であり、芯材28よりも大径に形成されている。
【0031】
(ロック爪)
図2(A)、(B)に示すように、本実施形態のロック爪20は、芯材28の外周部、具体的には第2の溝32に配置される。このロック爪20の全体形状は略C字状である。言い換えれば、ロック爪20は、周方向に連続していない、一例として、一部が離れた環状に形成されている。ロック爪20は、全体形状を略C字状とすることで、径方向に弾性変形(拡径、及び縮径)が容易になっている。このため、芯材28の第2の溝32に収容する場合に、芯材28の径よりも内径が大きくなるようにロック爪20を拡径させることができ、これによって、ロック爪20を第2の溝32に容易に収容することができる。
【0032】
ロック爪20は、樹脂材料で形成されて外周部に接触する環状部36と、環状部36に設けられて複合管14における内管42の内周部に接触する金属製の爪40と含んで構成されている。環状部36は、略C字状に形成されている。この環状部36には、ロック爪20を芯材28に装着した際の芯材先端側(図面矢印F方向)の端部に、反対側の端部に向けて軸線に沿って延びるスリット38が周方向に間隔を開けて複数形成されている。本実施形態では、スリット38が5箇所形成されている。
【0033】
環状部36の外周部には、スリット38とスリット38との間、及びスリット38と環状部36の周方向端部36Eとの間に、金属製の爪40が突出している。この爪40は、各々独立して環状部36の樹脂中に一体的に埋設されており、一部分が環状部36の外周部から突出している。爪40は、一例として、金属板等をプレス成型することで形成できる。また、爪40は、環状部36を樹脂材料を用いて成型する際に、樹脂材料と一体化することができる。
【0034】
以後、本明細書において、爪40のうちで、環状部36の外周部から突出している部分を食い込み部40Aと呼ぶ。
【0035】
食い込み部40Aは、環状部36の径方向に対して、芯材28の先端側とは反対側、言い換えれば、芯材28に対して複合管14を嵌め込む方向に傾斜している。
【0036】
一例として、環状部36の外径は、ロック爪20を芯材28の第2の溝32に収容した場合に、環状部36が芯材28の外面よりも突出しないように決められている。なお、ロック爪20を第2の溝32に収容した場合に、環状部36は、第2の溝32の底面(芯材28の外周部)に接触する。
【0037】
一方、
図3に示されるように、第2の溝32にロック爪20が収容された状態で計測して、各々の食い込み部40Aの先端を通る仮想円FCの径φは、芯材28の外径D(
図1参照)よりも大で、かつ複合管14における内管42の内周部に接触する外径に設定されている。
【0038】
(複合管)
図6から
図9において、本実施形態に係る複合管14は、多層構造とされた複合管であり、被覆層としてのコルゲート管44と、中間層46と、内管42とを有している。
【0039】
コルゲート管44は、管状とされ、径方向外側へ凸となる環状の山部44Aと、径方向外側が凹となる環状の谷部44Bとが軸方向(軸Sの方向)に交互に、例えば連続して形成されて蛇腹状とされ、山部44Aと谷部44Bで軸方向に短縮可能とされている。このコルゲート管44は、内管42の外径よりも一回り大きい円筒形の管状とされ、内管42に中間層46を介在させて配設されている。コルゲート管44は、樹脂材料を用いて形成された樹脂管である。樹脂材料としての樹脂には、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び架橋ポリエチレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられる。樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
中間層46は、コルゲート管44の内側、具体的には内管42とコルゲート管44の間に配置され、例えば発泡樹脂で構成されている。中間層46の内周面は平坦状とされ、内管42の外周に全面的に接触しつつ、内管42の外周を覆っている。なお、ここでの「全面的に接触」とは、全ての部分がぴったりと密着している必要はなく、実質的に全面が接触していることを意味する。したがって、中間層46の一部が内管42から離れている場合を含んでいる。また、中間層46は、発泡樹脂で構成されていなくてもよい。
【0041】
中間層46は、内管42の後述する最外層48の素材より融点の低い材料で構成されている。最外層48は、内管42の外周面の一例である。この中間層46としての樹脂には、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンプロピレンジエンゴム、並びにこれらの樹脂の混合物が挙げられる。樹脂の中でも、ポリウレタンが好ましい。中間層46はポリウレタンを主成分として含む層(すなわち、多孔質ウレタン層)であることが好ましい。例えば、中間層46の構成成分中において、ポリウレタンを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。なお、中間層46としての多孔質樹脂層には、他の添加剤が含有されてもよい。
【0042】
内管42は、中間層46の内側に配置され、外周面が中間層46と付着し難い素材で構成されている。この内管42は、円筒形の管状とされると共に、少なくとも2層構造となっており、図示の例では最外層48と内側層50の2層構造となっている。最外層48は、内側層50の外側に密着して設けられている。内管42の外周面を構成する最外層48は、一例として、内管42を構成する樹脂よりも引張剛性の高い金属材料を含んだ層とすることができる。一例として、最外層48は、アルミニウム又は銅等の金属で構成されている。内管42の外側に最外層48を形成するために、例えば金属シートを内側層50の外周に巻き付けてもよいし、金属管の内側に内側層50を挿入してもよい。
【0043】
内側層50は、例えば樹脂材料を用いて形成されている。樹脂材料としての樹脂には、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられる。樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。樹脂の中でも、ポリブテンが好適に用いられ、ポリブテンを主成分として含むことが好ましい。
【0044】
なお、内管42の外周面、つまり最外層48が、フッ素樹脂で構成されていてもよい。内管42の外周面を構成する素材は、中間層46と付着し難い素材であればよいので、内側層50のすべてが最外層48に覆われておらず、内側層50の一部が内管42の外周面に露出していてもよい。また、内管42の外周面に、中間層46との付着を抑制可能な形状、例えば軸方向に延びるスクラッチ状の細い筋(図示せず)を形成しておいてもよい。つまり、内管42の外周面に樹脂素材が全面的に露出している場合と比較して、内管42の外周面と中間層46との付着が抑制できる構成であればよい。
【0045】
また、内側層50が、複数の層で構成されていてもよい。更に、内側層50の少なくとも一部の層が、銅等の金属で構造されていてもよい。つまり、内管42が、最外層48を含めて3層以上に構成されていてもよい。
【0046】
(作用、効果)
次に、本実施形態の作用、効果を説明する。本実施形態の管継手10は、一例として、
図1に示されるように、複合管14の中に芯材28を挿入することで、複合管14と接続される。
【0047】
複合管14に芯材28を挿入する前に、
図8、
図9に示されるように、複合管14の先端側の一部のコルゲート管44、及び中間層46を剥がして内管42を露出させることが好ましい。露出した内管42を把持することで、内管42を保持して内管42に管継手10の芯材28を挿入する作業が行い易くなる。
【0048】
ここで、本実施形態に係る複合管14では、内管42の外周面が中間層46と付着し難い素材で構成されている。具体的には、内管42が少なくとも2層構造とされ、内管42の外周面を構成する最外層48が金属で構成されている。また、中間層46が、内管42の外周面の素材より融点の低い材料で構成されている。したがって、外周面の融点が、押出成形により樹脂を内管42の外側で溶融及び発泡させて中間層46を形成する際の温度よりも高い。したがって、押出成形により樹脂を内管42の外側で溶融及び発泡させて中間層46を形成しても、内管42の外周面が溶融しないため、中間層46が内管42の外周面に付着し難い。これにより、複合管14の製造時における中間層46と内管42の外周面との付着を抑制できる。
【0049】
したがって、複合管14を管継手10に接続する際に、コルゲート管44及び中間層46を内管42の軸方向に縮めて内管42から剥がすことが容易となる。
【0050】
また、複合管14の製造時に、発泡成形された中間層46を冷却してから該中間層46に内側層を挿入する工程が不要となる。このため、内管42からコルゲート管44及び中間層46を剥がし易い複合管14を、一つの製造ラインで製造可能にすることができる。
【0051】
更に、内管42が少なくとも2層構造となっているので、内管42の外周面を構成しない内側の層の材料をある程度自由に選定しつつ、中間層46と内管42の外周面との付着を抑制できる。
【0052】
内管42の外周面がフッ素樹脂で構成されている場合、外周面が滑り易いので、中間層46と内管42の外周面との付着を抑制できる。また、複合管14を管継手10に接続する際に、コルゲート管44及び中間層46を内管42から剥がして内管42を露出させ易い。
【0053】
次に、本実施形態の管継手10は、複合管14の中に、複合管14の端部が芯材28のストッパ34に当たるまで芯材28を挿入することで、複合管14と管継手10との接続作業を簡単に終了させることができる。
【0054】
複合管14の中に芯材28が挿入された状態では、止水部材18が複合管14の内周部に密着して止水を行い、ロック爪20の環状部36の内周部が第2の溝32の底面に接触し、爪40の食い込み部40Aが複合管14における内管42の内周部に接触している。
【0055】
管継手10から複合管14が抜けようとした場合には、食い込み部40Aの先端が複合管14の内周に引っ掛かることで、複合管14の抜けを抑制することができる。なお、食い込み部40Aの先端が複合管14における内管42の内面に喰い込ませることで、複合管14の抜けの抑制効果を更に高めることができる。
【0056】
複合管14の抜けの抑制効果を高めるには、食い込み部40Aの先端を複合管14の内周に喰い込ませることが好ましいが、食い込み部40Aの先端を複合管14に食い込ませるには、ロック爪20を拡径させる必要がある。
【0057】
本実施形態の管継手10では、管継手10に接続した複合管14に対して、管継手10から抜ける方向に移動させようとする大きな力が作用すると、複合管14の内周面に爪40が引っ掛かったロック爪20も複合管14と共に第2の溝32内を芯材28の先端側に移動する。
【0058】
ロック爪20が複合管14と共に芯材28の先端側に移動し、第2の溝32の底面に形成された傾斜面32B上を摺動すると、ロック爪20は傾斜面32Bによって径方向外側へ押圧される、言い換えれば、ロック爪20には、傾斜面32Bによりロック爪20を拡径する力が作用して、ロック爪20は拡径される。
【0059】
ロック爪20が拡径されることで、爪40は内管42の内周部へより食い込み、複合管14の抜け止め抑制効果を更に高めることができる。
【0060】
本実施形態のロック爪20は、金属よりも変形し易い樹脂材料で環状部36が形成されているため、環状部36が金属で形成されている場合、言い換えれば、ロック爪全体が金属で形成されている場合に比較して拡径し易くなり、金属製の爪40の食い込み部40Aが複合管14の内周に食い込み易くなっている。このため、本実施形態のロック爪20は、複合管14の抜け止め抑制効果、言い換えれば、複合管14の保持性能が向上している。
【0061】
また、本実施形態のロック爪20は、環状部36の形状がC字状とされ、さらに軸方向に延びるスリット38が複数形成されているので、周方向に連続して環状に形成されている場合に比較して、拡径し易く構成されており、食い込み部40Aが複合管14の内周に更に食い込み易くなっている。
【0062】
ところで、複合管14が抜けようとした場合にロック爪20が拡径すると、ロック爪20によって複合管14が径方向外側に押され、ロック爪20に押されて複合管14が膨張側に変形する、言い換えれば、複合管14が拡径することが考えられる。
【0063】
本実施形態に係る複合管14において、内管42の外周面を構成する最外層48が金属で構成されている場合、ロック爪20が内管42の内周部に引っ掛かったときの内管42の拡径が抑制される。言い換えれば、内管42の膨張側への変形を抑制することができる。このため、内管42をロック爪20によってより確実に保持できる。
【0064】
このため、管継手10に接続される内管42の外周側に、金属製の円筒状のカバー(図示せず)を設けて内管42の膨張側の変形を抑制する必要がなくなり、カバーを設ける場合に比較して、よりスリムな複合管接続構造12が実現できる。また、複合管14を管継手10に接続する際に、カバーを取り付ける作業も必要とせず、接続作業が容易になる。
【0065】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0066】
上記実施形態のロック爪20は、C字状に形成されて周方向に連続して形成されていなかったが、
図4に示すように、円環状で、周方向に連続して繋がっている形状であってもよい。
図4に示すロック爪20は、軸方向の一端側から他端側に向けて形成されるスリット38Aと、軸方向の他端側から一端側に向けて形成されるスリット38Bとが周方向に交互に形成されており、周方向に連続しているが、ロック爪20と同様に、径方向の拡縮が容易になっている。
【符号の説明】
【0067】
10…管継手、12…複合管接続構造、14…複合管、16…芯材、20…ロック爪、36…環状部、40…爪、42…内管、44…コルゲート管、44A…山部、44B…谷部、46…中間層、48…最外層(外周面)