(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】セメント用添加剤、セメント用強度向上剤、セメント組成物、およびセメント組成物の強度向上方法
(51)【国際特許分類】
C04B 24/02 20060101AFI20240322BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240322BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20240322BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20240322BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C04B24/02
C04B28/02
C04B24/32 A
C04B24/26 B
C04B24/26 F
C08F220/28
(21)【出願番号】P 2020026894
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019077611
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】大澤 雅美
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-016223(JP,A)
【文献】特開2017-160077(JP,A)
【文献】特開2016-216337(JP,A)
【文献】特開2015-174772(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006995(WO,A1)
【文献】特開2018-188349(JP,A)
【文献】特開2017-178704(JP,A)
【文献】特開2019-043816(JP,A)
【文献】特開平08-053669(JP,A)
【文献】特開2018-035012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
C08F 220/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分およびB成分を含む、セメント用添加剤:
A成分:下記一般式(1)で表される化合物;
B成分:重量平均分子量が3000より大きく多価アルコール1モルにアルキレンオキシドが5モル以上付加された構造を有する化合物であり、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する重合体;ソルビトールのアルキレンオキシド付加体、ネオペンチルグリコールのアルキレンオキシド付加体、ペンタンジオールのアルキレンオキシド付加体、ブタンジオールのアルキレンオキシド付加体、グリセリンのアルキレンオキシド付加体、ビニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;メタアリルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;3-メチル-2-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;2-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;ならびに、ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体からなる群から選ばれる少なくとも1種である化合物;
【化1】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。
【請求項2】
前記A成分の化合物が、前記一般式(1)において、R
1が水素原子、R
2が水素原子、R
3が水素原子またはメチル基、R
4が水素原子である化合物である、請求項1に記載のセメント用添加剤。
【請求項3】
前記B成分の化合物における前記アルキレンオキシドの付加モル数が10~100000である、請求項1または2に記載のセメント用添加剤。
【請求項4】
前記付加モル数が30~5000である、請求項3に記載のセメント用添加剤。
【請求項5】
下記のA成分
、B成分、およびC成分を含む、セメント
混和剤であり、
前記A成分の含有量が、セメント100質量部に対して0.0001質量部~0.2質量部となるように使用される、セメント
混和剤:
A成分:下記一般式(1)で表される化合物;
【化2】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。
B成分:重量平均分子量が3000より大きく多価アルコール1モルにアルキレンオキシドが5モル以上付加された構造を有する化合物;
C成分:下記のC1成分、C2成分、C3成分およびC4成分からなる群から選ばれる少なくとも1種である化合物;
C1成分:ポリカルボン酸系分散剤。前記ポリカルボン酸系分散剤は、下記式で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位(I)と、下記式で表される不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)と、を有するポリカルボン酸系重合体である。
【化3】
構造単位(I)中、R
5およびR
6は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R
7は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、A
1Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは、A
1Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、mは2~300の数であり、xは0~2の整数である。
【化4】
構造単位(III)中、R
11~R
12は、水素原子、またはメチル基を表す。R
13は、水素原子、メチル基、または-(CH
2)
zCOOM基を表す。R
11~R
13は、同一または異なってよい。-(CH
2)
zCOOM基は-COOX基または他の-(CH
2)
zCOOM基と無水物を形成していてもよい。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
C2成分:ポリカルボン酸系分散剤。前記ポリカルボン酸系分散剤は、下記式で表される不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体由来の構造単位(II)と、下記式で表される不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)と、を有するポリカルボン酸系重合体である。
【化5】
構造単位(II)中、R
8およびR
9は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R
10は、炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、A
2Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、nは、A
2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは2~300である。
【化6】
構造単位(III)中、R
11~R
13は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CH
2)
zCOOM基を表す。-(CH
2)
zCOOM基は-COOX基または他の-(CH
2)
zCOOM基と無水物を形成していてもよい。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
C3成分:スルホン酸系分散剤。
C4成分:リン酸系分散剤。
【請求項6】
下記のA成分
、B成分、およびC成分とセメントとを含む、セメント組成物であり、
前記A成分の含有量が、セメント100質量部に対して0.0001質量部~0.2質量部である、セメント組成物:
A成分:下記一般式(1)で表される化合物;
【化7】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。
B成分:重量平均分子量が3000より大きく多価アルコール1モルにアルキレンオキシドが5モル以上付加された構造を有する化合物;
C成分:下記のC1成分、C2成分、C3成分およびC4成分からなる群から選ばれる少なくとも1種である化合物;
C1成分:ポリカルボン酸系分散剤。前記ポリカルボン酸系分散剤は、下記式で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位(I)と、下記式で表される不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)と、を有するポリカルボン酸系重合体である。
【化8】
構造単位(I)中、R
5およびR
6は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R
7は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、A
1Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは、A
1Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、mは2~300の数であり、xは0~2の整数である。
【化9】
構造単位(III)中、R
11~R
12は、水素原子、またはメチル基を表す。R
13は、水素原子、メチル基、または-(CH
2)
zCOOM基を表す。R
11~R
13は、同一または異なってよい。-(CH
2)
zCOOM基は-COOX基または他の-(CH
2)
zCOOM基と無水物を形成していてもよい。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
C2成分:ポリカルボン酸系分散剤。前記ポリカルボン酸系分散剤は、下記式で表される不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体由来の構造単位(II)と、下記式で表される不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)と、を有するポリカルボン酸系重合体である。
【化10】
構造単位(II)中、R
8およびR
9は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R
10は、炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、A
2Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、nは、A
2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは2~300である。
【化11】
構造単位(III)中、R
11~R
13は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CH
2)
zCOOM基を表す。-(CH
2)
zCOOM基は-COOX基または他の-(CH
2)
zCOOM基と無水物を形成していてもよい。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
C3成分:スルホン酸系分散剤。
C4成分:リン酸系分散剤。
【請求項7】
セメント組成物の強度向上方法であって、
下記のA成分をセメント100質量部に対して0.0001質量部~1.5質量部の割合で添加すること、およびC成分をセメントに対して添加することを含む、方法:
A成分:下記一般式(1)で表される化合物;
【化12】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素
原子数1~18のアルキル基である。
C成分:下記のC1成分、C2成分、C3成分およびC4成分からなる群から選ばれる少なくとも1種である化合物;
C1成分:ポリカルボン酸系分散剤。前記ポリカルボン酸系分散剤は、下記式で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位(I)と、下記式で表される不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)と、を有するポリカルボン酸系重合体である。
【化13】
構造単位(I)中、R
5およびR
6は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R
7は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、A
1Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは、A
1Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、mは2~300の数であり、xは0~2の整数である。
【化14】
構造単位(III)中、R
11~R
12は、水素原子、またはメチル基を表す。R
13は、水素原子、メチル基、または-(CH
2)
zCOOM基を表す。R
11~R
13は、同一または異なってよい。-(CH
2)
zCOOM基は-COOX基または他の-(CH
2)
zCOOM基と無水物を形成していてもよい。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
C2成分:ポリカルボン酸系分散剤。前記ポリカルボン酸系分散剤は、下記式で表される不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体由来の構造単位(II)と、下記式で表される不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)と、を有するポリカルボン酸系重合体である。
【化15】
構造単位(II)中、R
8およびR
9は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R
10は、炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、A
2Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、nは、A
2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは2~300である。
【化16】
構造単位(III)中、R
11~R
13は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CH
2)
zCOOM基を表す。-(CH
2)
zCOOM基は-COOX基または他の-(CH
2)
zCOOM基と無水物を形成していてもよい。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
C3成分:スルホン酸系分散剤。
C4成分:リン酸系分散剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント用添加剤、セメント用強度向上剤、セメント組成物、およびセメント組成物の強度向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント組成物は、一般に、セメントと骨材と水を含んでおり、通常、流動性を高めて減水させることが求められる。
【0003】
近年、セメント組成物に対し、セメント組成物の硬化物の強度性能の向上の要求が多くなってきている。
【0004】
セメント組成物の硬化物の強度性能の代表的なものとしては、一般に、早期強度向上性能と長期強度向上性能とが知られている。
【0005】
早期強度向上性能が高いと、施工後の養生期間を短くできるので、工期の短縮化や工事の省力化に供することができる。このような早期強度向上性能は、例えば、1週間レベルでの強度向上効果(代表的には、7日後圧縮強度)によって評価することができる。このような早期強度向上性能を発現し得るセメント添加剤については、これまで、各種検討がなされている(例えば、特許文献1、2など)。
【0006】
他方、長期強度向上性能が高いと、セメント組成物の硬化物の耐久性が長期にわたって維持され、長年にわたっての高強度の維持が必要とされる構造物には欠かせない性能として着目されている性能である。このような長期強度向上性能は、例えば、4週間レベルでの強度向上効果(代表的には、28日後圧縮強度)によって評価することができる。
【0007】
最近、本出願人は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント添加剤として、重量平均分子量が3000より大きく多価アルコール1モルにアルキレンオキシドが5モル以上付加された構造を有する化合物とアルカノールアミン化合物とを含むセメント添加剤を報告している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-084459号公報
【文献】特開2016-222484号公報
【文献】再表2017-006995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主たる目的は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用添加剤およびセメント用強度向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、以下に説明する多価アルコールが安価でかつ少量でセメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって向上させ得ること、および、当該多価アルコールと所定値以上の重量平均分子量を有する多価アルコールにアルキレンオキシドが所定量以上付加された構造を有する化合物とを組み合わせることにより上記効果が顕著となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明のセメント用添加剤は、下記のA成分およびB成分を含む:
A成分:下記一般式(1)で表される化合物;
B成分:重量平均分子量が3000より大きく多価アルコール1モルにアルキレンオキシドが5モル以上付加された構造を有する化合物;
【化1】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。
1つの実施形態においては、上記A成分の化合物は、上記一般式(1)において、R
1が水素原子、R
2が水素原子、R
3が水素原子またはメチル基、R
4が水素原子である化合物である。
1つの実施形態においては、上記B成分の化合物における上記アルキレンオキシドの付加モル数は10~100000である。1つの実施形態においては、上記付加モル数は30~5000である。
1つの実施形態においては、上記B成分の化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する重合体;ソルビトールのアルキレンオキシド付加体、ネオペンチルグリコールのアルキレンオキシド付加体、ペンタンジオールのアルキレンオキシド付加体、ブタンジオールのアルキレンオキシド付加体、グリセリンのアルキレンオキシド付加体、ビニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;アリルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;メタアリルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;3-メチル-2-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;2-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;ならびに、ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明の別の局面によれば、セメント用強度向上剤が提供される。このセメント用強度向上剤は、上記一般式(1)で表される化合物であるA成分を含む。
本発明のさらに別の局面によれば、セメント組成物が提供される。このセメント組成物は、上記一般式(1)で表される化合物であるA成分とセメントとを含む。
1つの実施形態においては、上記セメント組成物は、B成分をさらに含み、該B成分は、重量平均分子量が3000より大きく多価アルコール1モルにアルキレンオキシドが5モル以上付加された構造を有する化合物である。
1つの実施形態においては、上記A成分の含有量は、セメント100質量部に対して0.0001質量部~1.5質量部である。
本発明のさらに別の局面によれば、セメント組成物の強度向上方法が提供される。この方法は、上記一般式(1)で表される化合物であるA成分をセメント100質量部に対して0.0001質量部~1.5質量部の割合で添加することを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、上記のA成分を用いることにより、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用強度向上剤を提供することができる。さらに、上記のA成分と上記のB成分とを組み合わせて用いることにより、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るセメント用添加剤を提供することができる。結果として、本発明の実施形態によれば、硬化物の強度が長期にわたって顕著に向上し得るセメント組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
【0014】
<1.セメント用添加剤>
本発明の実施形態によるセメント用添加剤は、下記のA成分およびB成分を含む:
A成分:下記一般式(1)で表される化合物;
B成分:重量平均分子量が3000より大きく多価アルコール1モルにアルキレンオキシドが5モル以上付加された構造を有する化合物;
【化2】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。
【0015】
A成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。B成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0016】
セメント用添加剤は、A成分とB成分とを含むことにより、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るという効果(以下、長期強度向上効果と称する場合がある)を発現する。A成分とB成分との組み合わせによる長期強度向上効果は、A成分のみに起因する長期強度向上効果とB成分のみに起因する長期強度向上効果との和から予想される効果に比べて、顕著に高い相乗効果を示し得る。
【0017】
セメント用添加剤中の、A成分とB成分との合計量の含有割合は、好ましくは30質量%~100質量%であり、より好ましくは50質量%~100質量%であり、さらに好ましくは70質量%~100質量%であり、特に好ましくは80質量%~100質量%であり、最も好ましくは85質量%~100質量%である。セメント用添加剤中のA成分とB成分との合計量の含有割合を上記範囲内に調整することによって、長期強度向上効果を有するセメント用添加剤が得られ得る。
【0018】
1つの実施形態においては、セメント用添加剤はA成分とB成分とからなる。すなわち、セメント用添加剤中のA成分とB成分との合計量の含有割合は、100質量%である。
【0019】
別の実施形態においては、セメント用添加剤は、A成分およびB成分に加えて、他の成分をさらに含み得る。他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。この場合、セメント用添加剤中のA成分とB成分との合計量の含有割合は、好ましくは30質量%~99.9質量%であり、より好ましくは50質量%~97質量%であり、さらに好ましくは70質量%~95質量%であり、特に好ましくは80質量%~90質量%であり、最も好ましくは85質量%~90質量%である。
【0020】
セメント用添加剤中の、A成分に対するB成分の質量の割合((B成分の質量/A成分の質量)×100%)は、好ましくは1%~10000%であり、より好ましくは10%~5000%であり、さらに好ましくは25%~250%であり、特に好ましくは50%~100%である。セメント用添加剤中のA成分に対するB成分の質量の割合を上記範囲内に調整することによって、長期強度向上効果を有するセメント用添加剤が得られ得る。
【0021】
セメント用添加剤中のA成分の含有割合は、好ましくは10質量%~85質量%であり、より好ましくは20質量%~80質量%であり、さらに好ましくは30質量%~75質量%であり、特に好ましくは40質量%~70質量%である。セメント用添加剤中のA成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、長期強度向上効果を有するセメント用添加剤が得られ得る。
【0022】
セメント用添加剤中のB成分の含有割合は、好ましくは5質量%~90質量%であり、より好ましくは10質量%~80質量%であり、さらに好ましくは15質量%~70質量%であり、特に好ましくは20質量%~60質量%である。セメント用添加剤中のB成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、長期強度向上効果を有するセメント用添加剤が得られ得る。
【0023】
<1-1.A成分>
A成分は、上記のとおり、上記一般式(1)で表される化合物(以下、化合物(A)と称する場合がある)である。一般式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基である。
【0024】
一般式(1)中、R1は、好ましくは、水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。R1がこのような構成であれば、化合物(A)は、長期強度向上効果を維持しつつ、低コストかつ入手容易なものとなる。
【0025】
一般式(1)中、R2は、好ましくは、水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基であり、特に好ましくは、水素原子である。R2がこのような構成であれば、R1の場合と同様に、化合物(A)は、長期強度向上効果を維持しつつ、低コストかつ入手容易なものとなる。
【0026】
一般式(1)中、R3は、好ましくは、水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子またはメチル基であり、最も好ましくは水素原子である。R3がこのような構成であれば、R1の場合と同様に、化合物(A)は、長期強度向上効果を維持しつつ、低コストかつ入手容易なものとなる。
【0027】
一般式(1)中、R4は、好ましくは、水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1~2のアルキル基であり、特に好ましくは、水素原子である。R4がこのような構成であれば、R1の場合と同様に、化合物(A)は、長期強度向上効果を維持しつつ、低コストかつ入手容易なものとなる。
【0028】
化合物(A)は、特に好ましくは、プロピレングリコール(一般式(1)において、R1が水素原子、R2が水素原子、R3が水素原子、R4が水素原子)、あるいは、2,3-ブチレングリコール(一般式(1)において、R1が水素原子、R2が水素原子、R3がメチル基、R4が水素原子)であり得る。
【0029】
<1-2.B成分>
B成分の化合物(以下、化合物(B)と称する場合がある)は、上記のとおり、重量平均分子量が3000より大きく多価アルコール1モルにアルキレンオキシドが5モル以上付加された構造を有する。
【0030】
アルキレンオキシドは、好ましくは炭素数2~10のアルキレンオキシドであり、さらに好ましくは炭素数2~8のアルキレンオキシドであり、より好ましくは炭素数2~6のアルキレンオキシドであり、特に好ましくは炭素数2~4のアルキレンオキシドであり、最も好ましくは炭素数2~3のアルキレンオキシド(すなわち、エチレンオキシド、プロピレンオキシド)である。アルキレンオキシドがこのような構成であれば、長期強度向上効果を有するセメント用添加剤が得られ得る。また、アルキレンオキシドは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0031】
多価アルコール1モルに対するアルキレンオキシドの付加モル数は、下限値として、好ましくは10モル以上であり、より好ましくは20モル以上であり、さらに好ましくは30モル以上であり、さらに好ましくは40モル以上であり、さらに好ましくは50モル以上であり、さらに好ましくは100モル以上であり、特に好ましくは500モル以上であり、最も好ましくは1000モル以上であり、上限値として、好ましくは100000モル以下であり、より好ましくは50000モル以下であり、さらに好ましくは40000モル以下であり、さらに好ましくは30000モル以下であり、さらに好ましくは20000モル以下であり、さらに好ましくは10000モル以下であり、特に好ましくは7000モル以下であり、最も好ましくは5000モル以下である。多価アルコール1モルに対するアルキレンオキシドの付加モル数を上記範囲内に調整することによって、長期強度向上効果を有するセメント用添加剤が得られ得る。
【0032】
化合物(B)の重量平均分子量は、下限値として、好ましくは4000以上であり、より好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは10000以上であり、特に好ましくは20000以上であり、最も好ましくは100000以上であり、上限値として、好ましくは10000000以下であり、より好ましくは5000000以下であり、さらに好ましくは3000000以下であり、特に好ましくは700000以下であり、最も好ましくは300000以下である。化合物(B)の重量平均分子量を上記範囲内に調整することによって、長期強度向上効果を有するセメント用添加剤が得られ得る。重量平均分子量の測定方法は後述する。
【0033】
多価アルコールとしては、任意の適切な多価アルコール(2個以上のヒドロキシル基を有する化合物)を採用し得る。多価アルコールは、低分子化合物であってもよく、オリゴマーであってもよく、ポリマーであってもよい。多価アルコールは、好ましくは2価~500価のアルコールであり、より好ましくは2価~100価のアルコールであり、さらに好ましくは3価~50価のアルコールである。このような多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ブタンジオール、グリセリン、ソルビトールなどが挙げられる。
【0034】
多価アルコールとしては、水酸基を有するモノマーを重合して得られるものも挙げられる。水酸基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール、メタアリルアルコール、ブテニルアルコール、3-メチル-3-ブテニルアルコール、3-メチル-2-ブテニルアルコール、2-メチル-3-ブテニルアルコールなどが挙げられる。これらは、単独で重合させてもよく、他の重合可能なモノマーと共重合させてもよい。
【0035】
化合物(B)は、目的に応じて任意の適切な官能基を有していてもよい。一方で、化合物(B)は、カルボキシル基を有さないことが好ましい。化合物(B)がこのような構成であれば、長期強度向上効果が適切に発揮され得る。
【0036】
化合物(B)を合成する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。このような方法としては、例えば、水酸基を有するモノマーを重合した後、アルキレンオキシドを付加する方法;水酸基を有するモノマーに先にアルキレンオキシドを付加してから、重合する方法;などが挙げられる。
【0037】
化合物(B)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する重合体;ソルビトールのアルキレンオキシド付加体、ネオペンチルグリコールのアルキレンオキシド付加体、ペンタンジオールのアルキレンオキシド付加体、ブタンジオールのアルキレンオキシド付加体、グリセリンのアルキレンオキシド付加体、ビニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;アリルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;メタアリルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;3-メチル-2-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;2-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体;ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
化合物(B)がポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体である場合には、該ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体の重量平均分子量は、好ましくは10000以上である。なお、本明細書において「ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体」とは、ポリエチレンイミンが有するアミノ基に結合している活性水素にアルキレンオキシド(エチレンオキシドなど)が任意の適切な付加モル数で付加した付加体をいう。
【0039】
化合物(B)が3-メチル-3-ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体である場合、該共重合体がカルボキシル基またはその塩(例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)を含まないことが好ましい。
【0040】
<1-3.その他の成分>
セメント用添加剤は、上記のとおり、その他の成分をさらに含んでいてもよい。その他の成分の種類、数、量、組み合わせ等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0041】
その他の成分としては、例えば、アルカノールアミン化合物が挙げられる。アルカノールアミン化合物は、例えば、特許第6359772号に化合物(B)として記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0042】
<2.セメント混和剤>
セメント用添加剤は、実用的には、分散剤(減水剤と称される場合もある)として以下のC成分をさらに含有するセメント混和剤として提供されてもよい。
C成分:下記のC1成分、C2成分、C3成分およびC4成分からなる群より選ばれる少なくとも1種。
【0043】
C1成分:ポリカルボン酸系分散剤。このポリカルボン酸系分散剤は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位(I)と不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である。
【化3】
構造単位(I)中、R
5およびR
6は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R
7は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、A
1Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、mは、A
1Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、mは2~300の数であり、xは0~2の整数である。
【化4】
構造単位(III)中、R
11~R
13は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CH
2)
zCOOM基を表す。-(CH
2)
zCOOM基は-COOX基または他の-(CH
2)
zCOOM基と無水物を形成していてもよい。zは0~2の整数である。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
【0044】
C2成分:ポリカルボン酸系分散剤。このポリカルボン酸系分散剤は、不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体由来の構造単位(II)と不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である。
【化5】
構造単位(II)中、R
8およびR
9は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R
10は、炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、A
2Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、nは、A
2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは2~300である。
構造単位(III)については、C1成分について上記で説明したとおりである。
【0045】
C3成分:スルホン酸系分散剤。
【0046】
C4成分:リン酸系分散剤。
【0047】
セメント混和剤中の、A成分とB成分とC成分との合計量の含有割合は、好ましくは30質量%~100質量%であり、より好ましくは50質量%~100質量%であり、さらに好ましくは70質量%~100質量%であり、特に好ましくは80質量%~100質量%であり、最も好ましくは85質量%~100質量%である。セメント混和剤中の、A成分とB成分とC成分との合計量の含有割合を上記範囲内に調整することによって、長期強度向上効果を有するセメント組成物が得られ得る。
【0048】
1つの実施形態においては、セメント混和剤はA成分とB成分とC成分からなる。この場合、セメント混和剤中の、A成分とB成分とC成分との合計量の含有割合は、100質量%となる。
【0049】
別の実施形態においては、セメント混和剤は、A成分、B成分およびC成分に加えて、他の成分をさらに含み得る。他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。この場合、セメント混和剤中の、A成分とB成分とC成分の合計量の含有割合は、好ましくは30質量%~99.9質量%であり、より好ましくは50質量%~97質量%であり、さらに好ましくは70質量%~95質量%であり、さらに好ましくは80質量%~90質量%であり、特に好ましくは85質量%~90質量%である。
【0050】
セメント混和剤中のA成分の含有割合は、好ましくは0.1質量%~50質量%であり、より好ましくは1質量%~40質量%であり、さらに好ましくは2質量%~30質量%であり、特に好ましくは3質量%~20質量%である。セメント混和剤中のA成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、長期強度向上効果を有するセメント組成物が得られ得る。
【0051】
セメント混和剤中のB成分の含有割合は、好ましくは0.1質量%~50質量%であり、より好ましくは1質量%~40質量%であり、さらに好ましくは2質量%~30質量%であり、特に好ましくは3質量%~20質量%である。セメント混和剤中のB成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、長期強度向上効果を有するセメント組成物が得られ得る。
【0052】
セメント混和剤中のC成分の含有割合は、好ましくは35質量%~99質量%であり、より好ましくは40質量%~97質量%であり、さらに好ましくは45質量%~93質量%であり、特に好ましくは50質量%~90質量%である。セメント混和剤中のC成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、長期強度向上効果を有するセメント組成物が得られ得る。
【0053】
<2-1.C1成分>
C1成分は、上記のとおり、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の上記構造単位(I)と不飽和カルボン酸系単量体由来の上記構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である。C1成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0054】
構造単位(I)を供する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は一般式(Ia)で表され、構造単位(III)を供する不飽和カルボン酸系単量体は一般式(IIIa)で表される。
【化6】
【化7】
【0055】
構造単位(I)および一般式(Ia)中、R5およびR6は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
【0056】
構造単位(I)および一般式(Ia)中、R7は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。炭素原子数1~30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1~30のアルケニル基、炭素原子数1~30のアルキニル基、炭素原子数6~30の芳香族基などが挙げられる。R7は、好ましくは、水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1~12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1~6の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基である。R7がこのような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0057】
構造単位(I)および一般式(Ia)中、A1Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2~8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基である。また、AOが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、A1Oの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、オキシアルキレン基全体の100モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。
【0058】
構造単位(I)および一般式(Ia)中、mは、A1Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2~300の数であり、好ましくは2~200の数であり、より好ましくは5~200の数であり、さらに好ましくは8~100の数であり、特に好ましくは20~70の数であり、最も好ましくは40~60の数である。mが上記範囲内にあることにより、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0059】
構造単位(I)および一般式(Ia)中、xは0~2の整数である。
【0060】
一般式(Ia)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体としては、例えば、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルのいずれかにアルキレンオキシドを平均1~500モル付加した化合物;が挙げられ、好ましくは、3-メチル-3-ブテン-1-オールにアルキレンオキシドを平均1~500モル付加した化合物、メタリルアルコールにアルキレンオキシドを平均1~500モル付加した化合物である。
【0061】
一般式(Ia)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0062】
構造単位(III)および一般式(IIIa)中、R11~R13は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または-(CH2)zCOOM基を表す。-(CH2)zCOOM基は-COOX基または他の-(CH2)zCOOM基と無水物を形成していてもよい。zは0~2の整数である。
【0063】
Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
【0064】
Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
【0065】
一般式(IIIa)で表される不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体の無水物またはこれらの塩;などが挙げられる。ここでいう塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。
【0066】
アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
【0067】
有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0068】
有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩、ジヒドロキシエチルイソプロパノールアミン塩、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン塩、ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン塩であり、より好ましくは、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩である。
【0069】
一般式(IIIa)で表される不飽和カルボン酸系単量体は、好ましくは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0070】
一般式(IIIa)で表される不飽和カルボン酸系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0071】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(I)の含有割合は、好ましくは5モル%~80モル%であり、より好ましくは5モル%~70モル%であり、さらに好ましくは10モル%~60モル%であり、特に好ましくは15モル%~50モル%であり、最も好ましくは20モル%~40モル%である。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0072】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(III)の含有割合は、好ましくは20モル%~95モル%であり、より好ましくは30モル%~95モル%であり、さらに好ましくは40モル%~90モル%であり、特に好ましくは50モル%~85モル%であり、最も好ましくは60モル%~80モル%である。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0073】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(I)と構造単位(III)の合計の含有割合は、好ましくは50モル%~100モル%であり、より好ましくは60モル%~100モル%であり、さらに好ましくは70モル%~100モル%であり、特に好ましくは80モル%~100モル%であり、最も好ましくは90モル%~100モル%である。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0074】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体中には、構造単位(I)と構造単位(III)以外に、他の単量体由来の構造単位(以下、便宜上、構造単位(IV)と称する)を含んでいてもよい。
【0075】
他の単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0076】
他の単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのエステル類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのハーフエステル類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのハーフアミド類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2~18のアルキレンオキシドを平均1~500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2~18のアルキレンオキシドを平均1~500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの平均付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの平均付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのジエステル類;マレアミド酸と炭素原子数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの平均付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのアミド類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等の(メタ)アリルエーテル類;などが挙げられる。
【0077】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体中における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(IV)の含有割合は、好ましくは0モル%~50モル%であり、より好ましくは0モル%~40モル%であり、さらに好ましくは0モル%~30モル%であり、特に好ましくは0モル%~20モル%であり、最も好ましくは0モル%~10モル%である。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0078】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体中における構造単位(I)~(IV)のそれぞれの含有割合、およびこれらの特定の組み合わせの合計の含有割合は、例えば、該ポリカルボン酸系重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、C1成分であるポリカルボン酸系重合体を製造する際に用いる不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和カルボン酸系単量体と他の単量体の使用量と重合率に基づいて算出される該不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と該不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位と該他の単量体由来の構造単位の含有割合に基づいて、上記の構造単位およびそれらの組み合わせの含有割合を算出してもよい。
【0079】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体中の構造単位の含有割合を求める場合には、構造単位がカルボキシル基の塩を有する場合には、カルボキシル基の酸部分を全てナトリウム塩に換算して計算を行う。
【0080】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは65000以上であり、より好ましくは65000~1000000であり、さらに好ましくは67000~800000であり、特に好ましくは70000~400000であり、最も好ましくは75000~200000である。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0081】
C1成分であるポリカルボン酸系重合体は、任意の適切な方法によって製造され得る。C1成分であるポリカルボン酸系重合体は、好ましくは、単量体成分の重合を重合開始剤の存在下で行って製造され得る。
【0082】
<2-2.C2成分>
C2成分は、上記のとおり、不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体由来の上記構造単位(II)と不飽和カルボン酸系単量体由来の上記構造単位(III)とを有するポリカルボン酸系重合体である。C2成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0083】
構造単位(II)を供する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は一般式(IIa)で表される。
【化8】
【0084】
構造単位(II)および一般式(IIa)中、R8およびR9は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
【0085】
構造単位(II)および一般式(IIa)中、R10は、炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。炭素原子数1~30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1~30のアルケニル基、炭素原子数1~30のアルキニル基、炭素原子数6~30の芳香族基などが挙げられる。R10は、好ましくは、炭素原子数1~20の炭化水素基であり、より好ましくは、炭素原子数1~12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素原子数1~6の炭化水素基であり、特に好ましくは、炭素原子数1~3のアルキル基である。R10がこのような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0086】
構造単位(II)および一般式(IIa)中、A2Oは、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2~8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基である。また、A2Oが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、A2Oの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、オキシアルキレン基全体の100モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。オキシアルキレン基は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0087】
構造単位(II)および一般式(IIa)中、nは、A2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2~300であり、好ましくは5~150であり、より好ましくは10~100であり、さらに好ましくは15~75であり、特に好ましくは20~50である。nが上記範囲内にあることにより、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0088】
一般式(IIa)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体としては、例えば、炭素数1~20の飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2~18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3~20の不飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2~18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;シクロヘキサノールなどの炭素数3~20の脂環式アルコール類に、炭素数2~18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数6~20の芳香族アルコール類に、炭素数2~18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;などが挙げられる。
【0089】
一般式(IIa)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体は、好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルコキシポリアルキレングリコール類のエステルである。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0090】
一般式(IIa)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0091】
不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(III)、構造単位(III)を供する不飽和カルボン酸系単量体(IIIa)については、C1成分に関して上記<2-1.C1成分>で説明したとおりである。
【0092】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(II)の含有割合は、好ましくは5モル%~95モル%であり、より好ましくは10モル%~90モル%であり、さらに好ましくは20モル%~80モル%であり、特に好ましくは30モル%~70モル%であり、最も好ましくは40モル%~60モル%である。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0093】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(III)の含有割合は、好ましくは5モル%~95モル%であり、より好ましくは10モル%~90モル%であり、さらに好ましくは20モル%~80モル%であり、特に好ましくは30モル%~70モル%であり、最も好ましくは40モル%~60モル%である。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0094】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(II)と構造単位(III)の合計の含有割合は、好ましくは50モル%~100モル%であり、より好ましくは60モル%~100モル%であり、さらに好ましくは70モル%~100モル%であり、特に好ましくは80モル%~100モル%であり、最も好ましくは90モル%~100モル%である。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0095】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体中には、構造単位(II)と構造単位(III)以外に、他の単量体由来の構造単位(IV)を含んでいてもよい。
【0096】
他の単量体および他の単量体由来の構造単位(IV)については、C1成分に関して上記<2-1.C1成分>で説明したとおりである。
【0097】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体中における、該ポリカルボン酸系重合体を構成する全構造単位に対する構造単位(IV)の含有割合は、好ましくは0モル%~50モル%であり、より好ましくは0モル%~40モル%であり、さらに好ましくは0モル%~30モル%であり、特に好ましくは0モル%~20モル%であり、最も好ましくは0モル%~10モル%である。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0098】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体中における構造単位(I)~(IV)のそれぞれの含有割合、およびこれらの特定の組み合わせの合計の含有割合の導出については、C1成分に関して上記<2-1.C1成分>で説明したとおりである。
【0099】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3000以上であり、より好ましくは5000~1000000であり、さらに好ましくは10000~500000であり、特に好ましくは20000~300000であり、最も好ましくは30000~200000である。このような構成であれば、長期強度向上効果がさらに顕著なものとなり得る。
【0100】
C2成分であるポリカルボン酸系重合体は、任意の適切な方法によって製造され得る。C2成分であるポリカルボン酸系重合体は、好ましくは、単量体成分の重合を重合開始剤の存在下で行って製造され得る。
【0101】
<2-3.C3成分>
C3成分は、スルホン酸系分散剤である。C3成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0102】
スルホン酸系分散剤は、主にスルホン酸基によってもたらされる静電的反発によりセメントに対する分散性を発現する分散剤である。スルホン酸系分散剤としては、任意の適切なスルホン酸系分散剤を用いることができ、分子中に芳香族基を有する化合物であることが好ましい。スルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体および不飽和スルホン酸系単量体を含む単量体から得られる重合体またはその塩;などが挙げられる。
【0103】
<2-4.C4成分>
C4成分は、リン酸系分散剤である。C4成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0104】
リン酸系分散剤としては、分子中にリン酸基を有する任意の適切なリン酸系分散剤を用いることができる。リン酸系分散剤は、例えば、特開2006-52381号公報、特表2008-517080号公報に記載されている。これらの公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0105】
<3.セメント用強度向上剤>
本発明の実施形態によるセメント用強度向上剤は、上記一般式(1)で表される化合物であるA成分を含む。すなわち、本発明の1つの実施形態においては、A成分のみによって長期強度向上効果が実現され得る。A成分については、セメント用添加剤に関して上記<1-1.A成分>で説明したとおりである。言い換えれば、セメント用強度向上剤は、上記で説明したセメント用添加剤またはセメント混和剤からB成分を省略したものであり得る。
【0106】
<4.セメント組成物>
本発明の実施形態によるセメント組成物は、上記一般式(1)で表される化合物であるA成分とセメントとを含む。A成分については、セメント用添加剤に関して上記<1-1.A成分>で説明したとおりである。
【0107】
セメント組成物は、B成分をさらに含んでもよい。B成分については、セメント用添加剤に関して上記<1-2.B成分>で説明したとおりである。
【0108】
A成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。B成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0109】
セメント組成物は、A成分を含むことにより、長期強度向上効果を発現し得る。さらに、セメント組成物は、B成分をさらに含むことにより、より顕著な長期強度向上効果を発現し得る。A成分とB成分とを組み合わせて用いることによる長期強度向上効果は、A成分またはB成分単独による効果から予測され得る効果を超える予期せぬ優れたものである。
【0110】
セメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。セメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。このようなセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、およびそれぞれの低アルカリ型)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。
【0111】
セメント組成物は、骨材を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。言い換えれば、セメント組成物は、コンクリート組成物(骨材を含む)であってもよく、モルタル組成物(骨材を含まない)であってもよい。
【0112】
セメント組成物がコンクリート組成物である場合、骨材は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。骨材としては、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材を採用し得る。このような骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材としては、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
【0113】
セメント組成物は、任意の適切な混和材を含んでいてもよい。混和材としては、例えば、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、膨張剤などが挙げられる。
【0114】
セメント組成物は、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、早強剤・促進剤、遅延剤、AE剤、消泡剤、ひび割れ低減剤、界面活性剤、防水材、防錆剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤などが挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、配合量等は、目的に応じて適切に設定され得る。また、添加剤は、上記のセメント用添加剤またはセメント混和剤に含まれることにより、結果として、セメント組成物に含まれてもよい。
【0115】
水溶性高分子物質としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β-1.3グルカン類等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類;ポリアクリルアミド;が挙げられる。
【0116】
高分子エマルジョンとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の重合物が挙げられる。
【0117】
早強剤・促進剤としては、例えば、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;が挙げられる。
【0118】
遅延剤としては、例えば、グルコン酸、酒石酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸もしくはその塩;ピルビン酸、オキソグルタル酸等のケト酸もしくはその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、リボース、異性化糖、マルトース、シュークロース、ラクトース、ラフィノース、デキストリン等の糖;グリセリン、キシリトール、D-アラビニトール、L-アラビニトール、リビトール、ボレミトール、ペルセイトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、D-トレイトール、L-トレイトール、D-イジトール、D-グリシドール、D-エリトローD-ガラクト-オクチトール等の糖アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸およびその誘導体;などが挙げられる。
【0119】
AE剤としては、例えば、樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α-オレフィンスルホネートが挙げられる。
【0120】
消泡剤としては、例えば、オキシアルキレン系消泡剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤が挙げられる。オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、ジエチレングリコールヘプチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1~20モル付加、エチレンオキシド1~20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1~20モル付加、エチレンオキシド1~20モル付加物等)等のポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;が挙げられる。
【0121】
ひび割れ低減剤としては、例えば、ポリオキシアルキルエーテルが挙げられる。
【0122】
界面活性剤としては、例えば、各種アニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤;が挙げられる。
【0123】
防水剤としては、例えば、脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックスが挙げられる。
【0124】
防錆剤としては、例えば、亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛が挙げられる。
【0125】
膨張材としては、例えば、エトリンガイト系膨張材、石炭系膨張材が挙げられる。
【0126】
セメント組成物中のA成分の含有割合(含有量)は、セメント100質量部に対して好ましくは0.0001質量部~1.5質量部であり、より好ましくは0.0003質量部~0.5質量部であり、さらに好ましくは0.001質量部~0.3質量部であり、特に好ましくは0.002質量部~0.2質量部である。本発明の実施形態によれば、上記の特定のA成分を用いることにより、セメント組成物中の含有量が小さいにもかかわらず、長期強度向上効果を実現することができる。言い換えれば、セメント組成物においてA成分を上記割合で添加することにより、セメント組成物の強度向上方法が提供され得る。したがって、セメント組成物の強度向上方法もまた、本発明の実施形態に包含され得る。なお、A成分の好適な化合物は安価で入手容易であるので、含有量を小さくできる効果との相乗的な効果により、きわめて低コストで長期強度向上効果を実現することができ、実用的および工業的な価値は非常に大きい。
【0127】
セメント組成物中のB成分(存在する場合)の含有割合は、セメント100質量部に対して好ましくは0.001質量部~0.5質量部であり、より好ましくは0.003質量部~0.3質量部であり、さらに好ましくは0.007質量部~0.1質量部であり、特に好ましくは0.01質量部~0.05質量部である。セメント組成物中のB成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、長期強度向上効果に関するA成分との相乗効果が顕著なものとなり得る。
【0128】
セメント組成物中のC成分(存在する場合)の含有割合は、セメント100質量部に対して好ましくは0.01質量部~5質量部であり、より好ましくは0.03質量部~1質量部であり、さらに好ましくは0.07質量部~0.5質量部であり、特に好ましくは0.1質量部~0.3質量部である。セメント組成物中のC成分の含有割合を上記範囲内に調整することによって、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされ得る。
【0129】
セメント組成物においては、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量、および水/セメント比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m3~250kg/m3であり、使用セメント量が200kg/m3~800kg/m3であり、水/セメント比(質量比)=0.1~0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m3~185kg/m3であり、使用セメント量が250kg/m3~800kg/m3であり、水/セメント比(質量比)=0.12~0.65である。このように、セメント組成物は、貧配合~富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0130】
セメント組成物がコンクリート組成物である場合、コンクリート組成物中のA成分の含有割合(含有量)は、好ましくは0.0001kg/m3~10kg/m3であり、より好ましくは0.001kg/m3~1.5kg/m3であり、さらに好ましくは0.005kg/m3~0.5kg/m3である。本発明の実施形態によれば、コンクリート組成物においても、セメント組成物の上記効果と同様の効果が得られ得る。すなわち、A成分の含有量が小さいにもかかわらず、コンクリート組成物の長期強度向上効果を実現することができる。
【0131】
セメント組成物は、上記の構成成分を任意の適切な方法で配合して調製すればよい。配合方法としては、例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法が挙げられる。
【0132】
セメント組成物は、例えば、A成分、B成分、C成分、セメント、および必要に応じてその他の成分が別個に配合されて調製されてもよく;A成分とB成分とを配合してセメント用添加剤を調製し、当該セメント用添加剤とセメントと必要に応じてC成分および/またはその他の成分とを配合して調製してもよく;A成分と必要に応じてC成分とを配合してセメント用強度向上剤を調製し、当該セメント用強度向上剤とセメントと必要に応じてB成分および/またはその他の成分とを配合して調製してもよく;A成分とB成分とC成分とを配合してセメント混和剤を調製し、当該セメント混和剤とセメントと必要に応じてその他の成分とを配合して調製してもよい。
【0133】
セメント組成物は、例えば、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。
【0134】
セメント組成物は、例えば、中流動コンクリート(スランプ値が22~25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50~70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
【実施例】
【0135】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、部とある場合は質量部を意味し、%とある場合は質量%を意味する。
【0136】
<重量平均分子量分析条件>
ポリエチレングリコールの重量平均分子量については、市販品でカタログおよび/またはホームページ上で公開されている場合は、実施例および比較例において特記(例えば、「実測値」などと記載)していない限り、その値を採用した(カタログやホームページ上での公開が「平均分子量」等の他の表現になっている場合はその値を採用した)。
・使用カラム:東ソー株式会社製、TSKguardcolumnα+TSKgelα-5000+TSKgelα-4000+TSKgelα-3000を各1本ずつ連結して使用した。
・溶離液:リン酸二水素ナトリウム・2H2O:62.4g、リン酸水素二ナトリウム・12H2O:143.3gを、イオン交換水:7794.3gに溶解させた溶液に、アセトニトリル:2000gを混合した溶液を用いた。
・検出器:Viscotek社製のトリプル検出器「Model302光散乱検出器」、直角光散乱として90°散乱角度、低角度光散乱として7°散乱角度、セル容量として18μL、波長として670nm。
・標準試料:東ソー株式会社製、ポリエチレングリコールSE-8(Mw=l07000)を用い、そのdn/dCを0.135ml/g、溶離液の屈折率を1.333として装置定数を決定した。
・打ち込み量
標準試料:ポリマー濃度が0.2vol%になるように上記溶離液で溶解させた溶液を100μL注入した。
サンプル:ポリマー濃度が1.0vol%になるように上記溶離液で溶解させた溶液を100μL注入した。
・流速:0.8ml/min
・カラム温度:40℃
【0137】
<フロー値、空気量、28日圧縮強度の測定>
(フロー値と空気量の測定)
セメントとして普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)、細骨材として大井川水系産陸砂、粗骨材として青海産砕石、A成分および/またはB成分、減水剤(C成分)、混練水として水道水を用い、セメント:382kg/m3、水:172kg/m3、細骨材:796kg/m3、粗骨材:930kg/m3、細骨材率(細骨材/細粗骨材+粗骨材)(容積比):47%、水/セメント比(質量比)=0.45の配合にてセメント組成物を調製した。
なお、セメント組成物の温度が20℃の測定温度になるように、測定に使用する材料、強制練りミキサー、測定器具類を上記の測定温度雰囲気下で調温し、混練および各測定は上記の測定温度雰囲気下で行った。また、セメント組成物中の気泡がセメント組成物の流動性に及ぼす影響を避けるために、必要に応じてオキシアルキレン系消泡剤を用い、空気量が4.5±0.5%となるように調整した。
上記条件下に強制練りミキサーを用いて混練時間90秒間でコンクリートを製造し、フロー値と空気量を測定した。なお、フロー値と空気量の測定は、日本工業規格(JIS-A-1101、1128)に準拠して行った。また、A成分および/またはB成分、C成分の添加量は、フロー値が375mm~425mmになる添加量とした。
(28日圧縮強度)
フロー値と空気量を測定した後、圧縮強度試験用試料を作成し、以下の条件にて、28日後の圧縮強度を測定した。
供試体作成:100mm×200mm
供試体養生(28日):温度約20℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生を24時間行った後、27日間水中で養生
供試体研磨:供試体面研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
(28日圧縮強度比、28日圧縮強度相乗効果分)
表中における「28日圧縮強度比」とは、比較例1において測定された28日圧縮強度(p(N/mm2))を100としたときの、他の実施例、比較例における28日圧縮強度(q(N/mm2))の比、すなわち、100×(q/p)(%)を表す。
また、表中における「28日圧縮強度相乗効果分」とは、A成分とB成分を併用した実施例において、(用いたA成分のみを用いた場合の対応する比較例における28日圧縮強度比-100)%と(用いたB成分のみを用いた場合の対応する比較例における28日圧縮強度比-100)%との単純和をX%とし、(該A成分と該B成分を併用した実施例における28日圧縮強度比-100)%をY%としたときの、(Y-X)%のことであり、この値が大きいほど、A成分とB成分を併用したことによる単純和に対する、28日圧縮強度向上の相乗効果が大きいことを示している。
【0138】
〔製造例1〕:分散剤(C成分)としての重合体(1)の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水80.0部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら70℃まで加温した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数9個)133.4部、メタクリル酸26.6部、メルカプトプロピオン酸1.53部およびイオン交換水106.7部の混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に過硫酸アンモニウム1.19部とイオン交換水50.6部の混合溶液を5時間かけて滴下した。滴下完了後1時間、70℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量100000の重合体(1)の水溶液を得た。
【0139】
〔製造例2〕:B成分としての共重合体(2)の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水:103.7部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら70℃まで加温した。次に、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)の水酸基にエチレンオキシドを付加(エチレンオキシドの平均付加モル数50)させたもの(以下、IPN-50と称す)(80%水溶液)180部、ヒドロキシエチルアクリレート16.0部、イオン交換水44.0部からなる混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に、3-メルカプトプロピオン酸0.06部とイオン交換水40.2部からなる混合溶液と、過硫酸アンモニウム1.98部とイオン交換水64.05部からなる混合溶液をそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下完了後、1時間、70℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量350000の共重合体(2)の水溶液を得た。
【0140】
〔製造例3〕:分散剤(C成分)としての重合体(3)の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、IPN-50(80%水溶液)198.2部、アクリル酸0.32部、過酸化水素水(2%水溶液)12.47部、イオン交換水44.75部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら58℃まで加温した。次に、アクリル酸27.12部、イオン交換水108.5部からなる混合溶液を3時間かけ滴下し、それと同時にL-アスコルビン酸0.74部、3-メルカプトプロピオン酸1.61部、イオン交換水86.31部からなる混合溶液を3時間30分かけて滴下した。滴下完了後1時間、58℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量140000の重合体(3)の水溶液を得た。
【0141】
〔製造例4〕:分散剤(C成分)としての重合体(4)の製造
特表2008-517080号公報記載の方法に準じて縮合反応を行い、ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの平均付加モル数:20モル)モノフェニルエーテルとフェノキシエタノールホスフェートのホルムアルデヒドによる縮合によって、ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの平均付加モル数:20モル)モノフェニルエーテルとフェノキシエタノールホスフェートの比率が30/70(モル%)、質量平均分子量(Mw)が25000の重合体(4)の水溶液を得た。
【0142】
〔製造例5〕:分散剤(C成分)としての重合体(5)の製造
特表2004-519406号公報記載の方法に準じて共重合反応を行い、メタリルアルコールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテルとアクリル酸ナトリウムの共重合組成比が85/15(質量%)、19/81(モル%)、重量平均分子量(Mw)が32000の重合体(5)の水溶液を得た。
【0143】
〔実施例1~24および比較例1~4〕
表1に示す配合にてセメント組成物を調製し、フロー値および28日圧縮強度を測定した。結果を、セメント用強度向上剤に関する実施例19~24の結果と併せて表1に示す。なお、A成分、B成分およびC成分を別個に配合した場合;A成分とB成分をセメント用添加剤として配合し、C成分を別個に配合した場合;および、A成分とB成分とC成分とをセメント混和剤として配合した場合;のいずれの場合であっても、同様の結果が得られた。
表1中、「PEG6000」は、ポリエチレングリコール(和光純薬工業社製、重量平均分子量=6000)を示し;「ESP」は、ポリエチレンイミン(重量平均分子量=600)のアミノ基の活性水素1モルに対してエチレンオキシドを20モル付加したもの(重量平均分子量=23000)を示す。
【0144】
【0145】
〔実施例19~24および比較例5~6〕
表2に示す配合にてセメント用強度向上剤を調製し、フロー値および28日圧縮強度を測定した。結果を、比較例1の結果と併せて表2に示す。なお、A成分およびC成分を別個に配合した場合;および、A成分とC成分とをセメント用強度向上剤として配合した場合;のいずれの場合であっても、同様の結果が得られた。
【0146】
【0147】
〔実施例25~41〕
表3に示す配合にてセメント組成物を調製し、フロー値および28日圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。なお、28日圧縮強度の強度比は、比較例1を100%した時の比率である。また、表3中、「分散剤(1)」は花王社製「マイティ150」を示し;「分散剤(2)」はBASFジャパン社製「マスターポゾリスNo.8」を示す。
【0148】
【0149】
表1~表3から明らかなように、本発明の実施例によれば、A成分を用いることにより、B成分を単独で用いる場合に比べて、28日強度(長期強度)向上効果が顕著である。さらに、A成分とB成分とを併用することにより、A成分またはB成分を単独で用いる場合からは予測できない、相乗的な長期強度向上効果が得られることがわかる。例えば、実施例11では、10%もの相乗効果分が認められる。また、表2から明らかなように、A成分としては、一般式(1)に示すような多価アルコールでなければ、長期強度向上効果は得られないことがわかる。例えば、一般式(1)においてR1に隣接するメチレン基を有さないエチレングリコールおよびモノアルコールであるエタノールはいずれも、比較例1に比べて28日強度(長期強度)が低下してしまうことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明のセメント用添加剤は、モルタルやコンクリートなどのセメント組成物に好適に用いられる。