(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】光ファイバ及びレーザ加工機
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
G02B6/02 401
(21)【出願番号】P 2020030597
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮平
(72)【発明者】
【氏名】石黒 宏明
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
(72)【発明者】
【氏名】石田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】金 成珍
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/138747(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0301278(US,A1)
【文献】特開2001-013346(JP,A)
【文献】特開2011-189389(JP,A)
【文献】特開平10-010349(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003574(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02 - 6/036
G02B 6/10
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/42 - 6/44
H01S 3/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延在するコアと、前記コアの周囲を覆うクラッドと、を有する光ファイバにおいて、
前記コアの中心軸に対して前記コアを垂直に切断したコア断面の外縁を構成する外縁部を備え、
前記外縁部は、
複数の辺と、
前記複数の辺が一続きとなるように、隣り合う辺同士を繋ぐ複数の角部と、を含
む正奇数角形であり、
前記複数の角部のうち少なくとも1つの角部は、前記外縁部に外接する外接円に沿ったR形状を備え、
前記外接円の直径をOとし、前記外縁部に内接する内接円の直径をIとし、前記複数の角部
の数をn(n=奇数)とすると、前記外接円の直径Oと前記内接円の直径Iとの比である直径比α(α=O/I)は、以下の数式を満たす
【数1】
ことを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
中心軸に沿って延在するコアと、前記コアの周囲を覆うクラッドと、を有する光ファイバにおいて、
前記コアの中心軸に対して前記コアを垂直に切断したコア断面の外縁を構成する外縁部を備え、
前記外縁部は、
複数の辺と、
前記複数の辺が一続きとなるように、隣り合う辺同士を繋ぐ複数の角部と、を含
む正奇数角形であり、
前記複数の角部のうち少なくとも1つの角部は、前記外縁部に外接する外接円に沿ったR形状を備え、
前記コアが、前記コアの中心軸の軸方向にかけて中心軸周りにねじられたねじり形状を有する場合であって、前記外接円の直径をOとし、前記外縁部に内接する内接円の直径をIとし、前記複数の角部の数をn(n=奇数)とし、定数kを1より小さい正の数とすると、前記外接円の直径Oと前記内接円の直径Iとの比である直径比α(α=O/I)は、以下の数式を満たす
【数2】
ことを特徴とする光ファイバ。
【請求項3】
レーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器より出力されたレーザ光を用いてレーザ加工を行うレーザ加工機本体と、
前記レーザ発振器より射出されたレーザ光を前記レーザ加工機本体へと伝送する、請求項1又は2記載の光ファイバと、
を有するレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ及びレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機本体のレーザ加工ヘッドからワークへレーザ光を照射してレーザ溶接などのレーザ加工を行うレーザ加工機が知られている。レーザ加工機は、レーザ発振器を備え、レーザ発振器から出力されたレーザ光は、プロセスファイバによってレーザ加工ヘッドへと伝送される。
【0003】
特許文献1には、レーザ光伝送用の光ファイバを含む光ファイバデバイスが開示されている。特許文献1には、光ファイバのコアの横断面形状を非円形とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光ファイバにおけるモードミキシングが不十分な場合には、強度分布が不均一となってしまうことがある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、その目的は、モードミキシングを促進させ、ビームプロファイルの強度分布を均一化することができる光ファイバ及びレーザ加工機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため、本発明は、中心軸に沿って延在するコアと、前記コアの周囲を覆うクラッドと、を有する光ファイバにおいて、前記コアの中心軸に対して前記コアを垂直に切断したコア断面の外縁を構成する外縁部を備えている。外縁部は、複数の辺と、前記複数の辺が一続きとなるように、隣り合う辺同士を繋ぐ複数の角部と、を含み、前記複数の角部のうち少なくとも1つの角部は、前記外縁部に外接する外接円に沿ったR形状を備えている。外接円の直径をOとし、前記外縁部に内接する内接円の直径をIとし、前記複数の角部の数をn(n=奇数)とすると、前記外接円の直径Oと前記内接円の直径Iとの比である直径比α(α=O/I)は、所定の条件式(数式11)を満たす。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モードミキシングを促進させ、ビームプロファイルの強度分布を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るレーザ加工機の全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る光ファイバの構成を説明する図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すコアのAA断面を説明する図である。
【
図4】
図4は、円形コアにおける法線ベクトルを示す図である。
【
図5】
図5は、六角形コアにおける法線ベクトルを示す図である。
【
図6】
図6は、七角形コアにおける法線ベクトルを示す図である。
【
図7】
図7は、角部にR形状が付与された七角形コアにおける法線ベクトルを示す図である。
【
図8】
図8は、七角形コアの外縁部と、外縁部に外接する外接円及び外縁部に内接する内接円との関係を示す図である。
【
図9】
図9は、外接円と内接円との比に対するビームプロファイルを示す図である。
【
図10】
図10は、角部のR形状を規定するためのパラメータを説明する図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係る光ファイバの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図面を参照して、本実施形態に係る光ファイバ及びレーザ加工機を説明する。以下、レーザ加工機として、レーザ光によってワークを溶接するレーザ溶接機を例示するが、レーザ加工機は、レーザ光によってワークを切断するレーザ切断機であってもよい。
【0011】
図1を用いて、レーザ溶接機1の全体構成について説明する。レーザ溶接機1は、NC装置10と、溶接ロボット20とを主体に構成されている。
【0012】
NC装置10は、CPU、ROM、RAMなどを備えるコンピュータを主体に構成されている。NC装置10は、CPUがROMから各種プログラムを読み出し、RAMに展開し、展開したプログラムを実行することにより、各種の機能を実現する。
【0013】
NC装置10は、加工プログラムを記憶している。また、NC装置10は、必要に応じて、加工プログラムを補正することができる。NC装置10は、記憶部に記憶されている加工プログラムを、溶接ロボット20に転送する。加工プログラムとは、製品を、ある溶接点から他の溶接点まで溶接する1または複数の加工命令を実行させるNCデータ(機械制御コード)である。
【0014】
溶接ロボット20は、ロボット本体21と、レーザ発振器23と、プロセスファイバ50と、ロボット制御装置28とを主体に構成されている。
【0015】
ロボット本体21は、多関節のロボットである。ロボット本体21は、ガイドレール26に対して移動可能に支持されており、ガイドレール26に沿って走行自在に構成されている。ガイドレール26の近傍には、溶接対象のワークを配置する定盤27が設置されている。
【0016】
ロボット本体21は、その先端部に溶接ヘッド22を備えている。溶接ヘッド22は、プロセスファイバ50を介してレーザ発振器23に接続されている。レーザ発振器23は、ファイバレーザ発振器又はYAGレーザ発振器などであり、レーザ光を発振する。レーザ発振器23より出力されるレーザ光は、プロセスファイバ50を経由して溶接ヘッド22に導入され、溶接ヘッド22の先端部からワークに向けてレーザ光が照射される。
【0017】
ロボット本体21は、ワークの材質又は板厚に応じて、溶接ヘッド22から照射されるレーザ光のビームプロファイルを、ガウシアン型、トップハット型又はリング型などに調整することができる。ガウシアン型は、周辺部から中央部に向かって強度が急峻に大きくなるビームプロファイルであり、トップハット型は、中央部が平坦状のビームプロファイルである。また、リング型は、中央部の強度が低く周辺部の強度が強いビームプロファイルである。レーザ溶接において、リング型のビームプロファイルは、ギャップ溶接などに優位性がある。ビームプロファイルを調整する方法としては、例えば、プロセスファイバ50に入射するレーザ光の角度を連続的に変化させる方法が挙げられる。
【0018】
ロボット制御装置28は、NC装置10から転送された加工プログラムに基づいて、レーザ光によってワークを溶接するようにロボット本体21及びレーザ発振器23を制御する。
【0019】
つぎに、
図2及び
図3を用いて、プロセスファイバ50の構成を説明する。プロセスファイバ50は、レーザ光を伝送する伝送用の光ファイバである。プロセスファイバ50の一方の端部がレーザ光の入射端50a、その他方の端部がレーザ光の出射端50bとして機能する。
【0020】
プロセスファイバ50は、中心軸に沿って延在するコア51と、コア51の周囲を覆うクラッド55と、を主体に構成されている。コア51は、クラッド55と比べて高屈折率の材料より形成されている。入射端50aから入射したレーザ光は、コア51とクラッド55との境界面を全反射しながら伝搬し、出射端50bから出射する。
【0021】
図3に示すように、中心軸に対してコア51を垂直に切断したコア断面は、七角形である。コア断面の外縁を構成する外縁部52は、7つの辺53と、7つの角部54とで構成されている。辺53のそれぞれは、直線から構成されており、角部54のそれぞれは、7つの辺53が一続きとなるように、隣り合う辺53同士を繋いでいる。本実施形態に係るコア断面は、それぞれの辺53の長さが等しく、それぞれの角部54の角度が等しい正七角形である。
【0022】
個々の角部54には、R形状が設定されている。角部54に設定されるR形状は、予め定められた条件を満たしている。以下、角部54に設定されるR形状の説明に先立ち、コア断面の形状とビームプロファイルの強度分布との関係について説明する。
【0023】
図4には、コア断面が円となる円形コア60が示されている。円形コア60の外縁部61は、円周形状となる。外縁部61から円形コア60の内側に向かう法線ベクトルNVは、光ファイバ内を伝搬する光線の反射条件を決定する。円形コア60の場合、外縁部61における任意の点の法線ベクトルNVは、中心軸に対して対称となる点の法線ベクトルNVと逆向きとなる。すなわち、両法線ベクトルNVのなす角が180°となる。互いに正対する法線ベクトルNVが存在する場合、プロセスファイバ50内を伝搬する光線の中には、単純な往復運動となってしまう光線が存在する。そのため、伝搬中のモードミキシングが不十分となり、ビームプロファイルの強度分布が不均一となってしまう。
【0024】
図5には、コア断面がm角形(m:偶数)となるm角形コアの一例として、コア断面が正六角形となる六角形コア70が示されている。六角形コア70の外縁部71は、それぞれが直線からなる6個の辺72と、隣り合う辺72同士を繋ぐ6個の角部73とで構成されている。六角形コア70においても、対向する辺72同士の各法線ベクトルNVは、互いに正対する。そのため、伝搬中のモードミキシングが不十分となり、ビームプロファイルにおける強度分布が不均一となってしまう。
【0025】
なお、
図5に示す六角形コア70以外にも、他のm角形コアでも、互いに正対する法線ベクトルNVが存在する。そのため、伝搬中のモードミキシングが不十分となり、ビームプロファイルにおける強度分布が不均一となってしまう。
【0026】
図6には、コア断面がn角形(n:奇数)となるn角形コアの一例として、コア断面が正七角形となる七角形コア80が示されている。七角形コア80の外縁部81は、それぞれが直線からなる7個の辺82と、隣り合う辺82同士を繋ぐ7個の角部83とで構成されている。七角形コア80の場合、ある辺82の法線ベクトルNVに対して、対角には逆向きの関係と
なる法線ベクトルNVが存在しない。互いに正対する法線ベクトルNVが存在しない場合、プロセスファイバ50内を伝搬する際に、光線が単純な往復運動となることを抑制することができる。そのため、伝搬中のモードミキシングが促進され、ビームプロファイルにおける強度分布の均一化を図ることができる。
【0027】
なお、
図6に示す七角形コア80以外にも、他のn角形コアであっても、互いに正対する法線ベクトルNVが存在しない。そのため、伝搬中のモードミキシングが促進され、ビームプロファイルにおける強度分布の均一化を図ることができると考えられる。
【0028】
ところで、角部83が尖った角形状となる七角形コア80は理想的な形状である。実際に製造される七角形コア80にあっては、応力集中による光ファイバ母材及び光ファイバの割れなどを抑制するため、
図7に示すように角部83にR形状を設定する必要がある。しかしながら、R形状が設定された角部83の法線ベクトルNVは、角部83と対向する辺82の法線ベクトルNVと逆向きの関係となる場合がある。そのため、角部83に設定するR形状の範囲によっては、プロセスファイバ50内を光線が伝搬する際に、単純な往復運動となる光線の割合が増加し、伝搬中のモードミキシングが不十分となる可能性がある。
【0029】
そこで、伝搬中のモードミキシングを促進することができるR形状の最適範囲を考える。
図8に示すように、七角形コア80の外縁部81に外接する外接円Coを考え、各角部83のR形状を外接円Coに沿って定義する。外接円Coの径が大きい程、辺82の範囲が大きくなり、角部83(R形状)の範囲が小さくなる。
【0030】
各種の径からなる複数の外接円Coを相対的に評価するため、外縁部81に内接する内接円Ciを考える。この内接円Ciは、外縁部81を構成する各辺82にそれぞれ内接している。外接円Coの直径を内接円Ciの直径で除算した値、すなわち、外接円Coと内接円Ciとの直径比により、角部83のR形状の最適解を考える。
【0031】
外接円Coと内接円Ciとの直径比を変化させ、ビームプロファイルを計測した。計測したビームプロファイルはリング型に対応している。
図9には、外接円Coと内接円Ciとの直径比が、1.042、1.055、1.09及び1.1からなる4種類のビームプロファイルの計測結果がそれぞれ示されている。
図9から分かるように、外接円Coと内接円Ciとの直径比を大きくすると、すなわち、R形状の範囲を小さくすると、ビームプロファイルの強度分布にむらがなくなり、モードミキシングが促進されていく傾向がある。外接円Coと内接円Ciとの直径比が1.09以上であれば、ビームプロファイルの強度分布にむらがなく、伝搬中のモードミキシングを促進することができると考えられる。
【0032】
つぎに、
図10に示すように、x軸及びy軸を含む二次元直交座標系において、七角形コア80のコア断面を規定する。コア断面の重心は、座標系の原点位置と対応しており、コア断面は、7個の辺82のうちの1つの辺82がy軸と直交するように規定されている。コア断面(外縁部81)の各辺82に内接する内接円Ciの直径を「I」、角部83のR形状を規定する外接円Coの直径を「O」とする。また、y軸と直交する辺82の端部に位置する角部83と、y軸との間の距離を「L」、y軸と直交する辺82と外接円Coとの交点と、y軸との間の距離を「L’」とする。
【0033】
n角形コアへの一般化を踏まえ、角部83の数をnとした場合、y軸と直交する辺82の端部に位置する角部83とy軸とのなす角θは、以下の数式1で示される。
【数1】
【0034】
【0035】
y軸と直交する辺82は、以下の数式3で示される。
【数3】
【0036】
外接円Coの方程式は、以下の数式4で示される。
【数4】
【0037】
数式4を用いると、y軸と直交する辺82と外接円Coとの交点は、以下の数式5で表される。
【数5】
【0038】
数式5より、距離L’は、以下の数式6で示される。
【数6】
【0039】
ここで、
図9に示す計測結果は、七角形コア80に関するデータであるが、ビームプロファイルの傾向は、他のn角形コアにおいても同様である。そこで、n角形コアにおいて、モードミキシングが十分に促進される外接円Coと内接円Ciとの直径比を1.09以上とする。例えば、外接円Coの直径Oを1.09、内接円Ciの直径Iを1とする。この場合、式6より、距離L’は、0.21685となる。この時、距離Lは、数式2より、0.2407となる。これより、距離Lと距離L’との間には、以下の数式7の関係が成り立つ。
【数7】
【0040】
つまり、n角形コアにおいては、直線となる辺82の長さ(距離L’)が距離Lに対して90%以上であれば、モードミキシングが促進されることとなる。
【0041】
数式3、5、7より、以下の数式8の関係が成り立つ。
【数8】
【0042】
数式8を、数式1を用いて整理すると、外接円Coと内接円Ciとの直径比は、以下の数式9で示される。
【数9】
【0043】
また、同様に数式を整理すると、距離Lと距離L’とが等しい場合は、外接円Coと内接円Ciとの直径比は、以下の数式10で示される。
【数10】
【0044】
数式9、10より、n角形コアにおいては、モードミキシングが有効に作用するR形状の最適範囲を、外接円Coと内接円Ciとの直径比αによって定義すると、以下の数式11となる。ここで、外接円Coと内接円Ciとの直径比αは、外接円Coの直径Oを内接円Ciの直径Iで除算した値(O/I)である。
【数11】
【0045】
図2及び3に示す本実施形態に係るプロセスファイバ50のコア51によれば、上述した概念に示すように、個々の角部54に対して、数式11で示す範囲の直径比αに従ってR形状が設定されている。すなわち、コア断面の外縁部52は、7つの辺53と、これらの辺53が一続きとなるように、隣り合う辺同士を繋ぐ7つの角部54とを含んでいる。そして、7つの角部54は、外縁部52に外接する外接円に沿ったR形状を備えている。この場合、外縁部52に内接する内接円の直径をIとし、7つの角部54
の数をnとすると、外接円の直径と内接円の直径との比である直径比αは、数式11の関係を満たしている。
【0046】
この構成によれば、コア断面を7角形にすることで、伝搬中の光線が単純な往復運動となることを抑制することができる。加えて、角部54のR形状に数式11に示す制限を設けることで、角部54のR形状に起因して単純な往復運動となる光線の割合を減少させることができる。これにより、伝搬中のモードミキシングを促進することができ、ビームプロファイルにおける強度分布の均一化を図ることができる。
【0047】
なお、上述した実施形態では、プロセスファイバ50を構成するコア51として、コア断面が正七角形となる七角形コアを説明した。しかしながら、コア51のコア断面の形状は、七角形以外のn角形であってもよい。
【0048】
また、本実施形態では、コア51のコア断面を正七角形としている。しかしながら、
図11に示すように、コア51は、正七角形に沿った角部54に対して角度が異なる角部54aを備える七角形コアであってもよい。この場合、角度が異なる角部54aの数は一つ以上であってもよい。このようなコア51にあっては、正七角形の形状と対応する、少なくとも一つの角部54において、R形状が数式11の関係を満たしていればよい。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係るプロセスファイバ50について説明する。第1の実施形態と重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明を行う。
【0050】
図12から
図14に示すように、本実施形態に係るプロセスファイバ50のコア51は、コア51の中心軸方向にかけて中心軸周りにねじられたねじり形状を有している。
図12に示すBB断面におけるコア断面の外縁部52(
図13参照)は、
図12に示すAA断面におけるコア断面の外縁部52(
図14参照)に対いて、周方向にかけて所定量だけ回転した関係となっている。
【0051】
ここで、AA断面において、ある辺53の点Aで、法線ベクトルNVに沿って反射する光線LBを考える。AA断面において、点Aにおける法線ベクトルNVは、対角にある角部54の法線ベクトルNVと対向する関係にある。一方、
図12に示すように、光線LBは、軸方向に沿って伝搬されているので、点Aで反射した光線LBが、BB断面における外縁部52で反射する。このとき、光線LBは、コア51のねじりの影響により角部54からずれた位置に入射する。このため、ねじり形状を有するコア51の場合には、プロセスファイバ50を光線LBが伝搬する際に、単純な往復運動となる光線の割合を減少させることができる。したがって、ねじり形状を有するコア51にあっては、角部54のR形状の設定範囲をねじり形状のないコア51のそれよりも拡大したとしても、ねじり形状のないコア51と同等のモードミキシングの作用を得ることができる。
【0052】
このように、コア51がねじり形状を有する場合、外接円Coと内接円Ciとの直径比αは、以下の数式12を満たす。ここで、定数kは、1より小さい正の数である。
【数12】
【0053】
この構成によれば、コア断面をn角形にすることで、伝搬中の光線が単純な往復運動となることを抑制することができる。加えて、ねじり形状に応じて、角部54のR形状に数式11に示す制限を設けることで、角部54のR形状に起因する単純な往復運動となる光線の割合を減少させることができる。これにより、伝搬中のモードミキシングが促進され、ビームプロファイルにおける強度分布の均一化を図ることができる。
【0054】
なお、上述した実施形態では、プロセスファイバ50を構成するコア51として、コア断面が正七角形となる七角形コアを説明した。しかしながら、コア断面の形状は、七角形以外のn角形であってもよい。
【0055】
また、上述した各実施形態では、プロセスファイバ50として、シングルクラッドファイバを例示した。しかしながら、プロセスファイバ50は、マルチクラッドファイバであってもよい。
【0056】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 レーザ溶接機(レーザ加工機)
10 NC装置
20 溶接ロボット
21 ロボット本体(レーザ加工機本体)
22 溶接ヘッド
23 レーザ発振器
50 プロセスファイバ(光ファイバ)
51 コア
52 外縁部
53 辺
54 角部
55 クラッド