(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
F16J15/10 L
(21)【出願番号】P 2020032157
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】土屋 幸司
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 利和
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195275(JP,A)
【文献】特開2005-180614(JP,A)
【文献】特表2011-503488(JP,A)
【文献】実開平07-010625(JP,U)
【文献】国際公開第2014/080511(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するとともに凹部を有する第一部材と、
前記第一部材よりも硬いとともに全体が前記凹部に内包される第二部材と、を有
するシール部材であって、
前記凹部は前記シール部材の中心軸に沿う方向に開口しており、
前記中心軸に沿う方向に押圧される前には、前記中心軸に沿う方向において、前記凹部の開口と前記開口側の前記第二部材の端部との間に空間が存在し、
前記中心軸に沿う方向に前記シール部材が押圧されたときに、前記中心軸に沿う方向において、前記凹部の開口が前記開口側の前記第二部材の端部に到達する、
シール部材。
【請求項2】
前記第一部材の平面形状が環状であり、前記凹部は前記第一部材の環状の平面形状の部分に開口するよう形成される環状の凹条である、請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記第一部材は、底面部と前記底面部の周囲から起立する壁部とによって構成され、
前記凹部は、前記底面部および前記壁部の内表面で形成されている、
請求項1に記載のシール部材。
【請求項4】
前記凹部の開口端部における内周面に形成される凸部であって、前記凹部に内包されている前記第二部材に係合する係合部をさらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
シール部材は、様々な機械要素において使用され、気密性または液密性などの所期の機能を発現する。シール部材は、シールすべき部位で正しく装着されることにより、所期の機能を十分に発現する。当該シール部材には、例えば、
図15に示されるように、第一の材料701よりも全体的に硬質の第二の材料702を含むシール部材700が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
シール部材700は、第二の材料702が、シール胴部703を断面方向から見た場合に、シール胴部703の横方向の側部704の少なくとも一部分に沿って、第二の材料702が全体的に配置されて、シールド705を形成する。シールド705の形成により、シール部材700がシールすべき部位でその流通を遮断すべき流体が第一の材料701に接触することが防止される。したがって、シール部材700の使用期間を延ばすことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、シール部材は、ねじによる締めつけによってシールすべき部位に装着されることがある。この場合では、ねじを締め過ぎると、シールすべき部位において、シール部材が破損し、あるいは正しく装着されないことがある。
【0006】
シール部材700は、ねじによる締めつけによって装着される場合には、硬質な第二の材料702のみがシールすべき部位に押圧されるため、ねじによる締めつけの強度が必要かつ十分であるか否かを判断することが難しい。このため、ねじによる締めつけによって、シール部材700がシールすべき部位に正しく装着されないことがある。このように、従来のシール部材では、ねじの締めつけによってシール部材をシールすべき部位に適切に装着する観点から、検討の余地が残されている。
【0007】
本発明の一態様は、ねじの締めつけによってシール部材をシールすべき部位に適切に装着可能なシール部材を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシール部材は、弾性を有するとともに凹部を有する第一部材と、前記第一部材よりも硬いとともに全体が前記凹部に内包される第二部材とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ねじの締めつけによってシール部材をシールすべき部位に適切に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係るシール部材をねじで締めつける前の状態を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係るシール部材をねじで締めつけた後の状態を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係るシール部材の構成における第一の例を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係るシール部材の構成における第二の例を模式的に示す断面図である。
【
図8】本発明の実施形態2に係るシール部材の構成における第三の例を模式的に示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係るシール部材の構成における第四の例を模式的に示す断面図である。
【
図10】本発明の実施形態2に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図11】本発明の実施形態2に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す平面図である。
【
図12】本発明の実施形態2に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。
【
図13】本発明の実施形態2に係るシール部材をねじで締めつける前の状態を模式的に示す図である。
【
図14】本発明の実施形態2に係るシール部材をねじで締めつけた後の状態を模式的に示す図である。
【
図15】従来のシール部材の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。なお、以下の説明において、「~」はその両端の数字を含む範囲を意味する。
図1は、本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図2は、本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す平面図である。
図3は、本発明の実施形態1に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。なお、
図1の断面図は、
図2に示されるシール部材を
図2中のA-A線で切断した断面を示している。
図1~
図3に示されるように、シール部材10は、第一部材11と第二部材12とを有する。
【0012】
[第一部材]
第一部材11は、例えばゴム製であり、弾性を有している。第一部材11の材料の例には、フッ素ゴムおよび水素化ニトリルゴム(HNBR)が含まれる。第一部材11の材料は、第一部材11に求められる弾性に応じて適宜に決めることができ、第一部材11の弾性は、シール部材10に求められるシール性に応じて適宜に決めることが可能である。
【0013】
第一部材11の材料は、通常のゴム材料であってよい。第一部材11の弾性は、シール部材10の用途に応じて適宜に決めることが可能である。また、第一部材11の硬さは、例えば、20~90の範囲から適宜に決めてもよい。当該硬さは、ゴム弾性を有する加硫ゴムについて、外力に対する抵抗の大きさを0から100の数値で表すものである。数値が低いほど軟らかく、数値が高いほど硬い。当該硬さは、例えばJIS K6253における記載に基づいて測定することが可能である。
【0014】
第一部材11の平面形状は、円環状であり、第一部材11をその中心軸CAを含む平面で切断した断面の形状は、略U字形状である。第一部材11における略U字形状の内側の空間は、
図1の紙面に対して下向きに開口する凹部111となっている。このように、第一部材11は、凹部111を有している。また、第一部材11の平面形状は環状であり、凹部111は、第一部材11の平面形状の部分に開口するように形成された環状の凹条となっている。
【0015】
[第二部材]
第二部材12は、その全体が凹部111に内包されている。なお、本実施形態において、第一部材11が第二部材12を「内包」するとは、「シール部材10における凹部111の側壁が対向する方向に沿う断面において、第一部材11が第二部材12を、直交する四方向のうちの三方から覆っていること」を意味する。あるいは、第一部材11が第二部材12を「内包」するとは、「第一部材の凹部に収容されている第二部材が、凹部の開口部よりも内側に位置していること」とも言うことができる。当該断面は、中心軸CAを含む平面でシール部材10を切断したときの断面であってもよい。第二部材12は、第一部材11の凹部111の底に収容されており、中心軸CAに沿う方向において、凹部111の開口との間に、わずかに隙間を有している。
【0016】
第二部材12は、第一部材11よりも硬い。第二部材12は、後述するねじによる締めつけによってシール部材10をシールすべき部位に装着する際に、ねじを締めつける強さが十分に増すほどに、第一部材11よりも硬ければよい。ねじによる締めつけによってシール部材10を装着させる場合では、作業者は、より軽い第一の手応えと、より重たい第二の手応えとを検知することができる。たとえば、第一の手応えとは、ねじによる締めつけの影響が第一部材11の弾性によって第一部材11に実質的に吸収される手応えであり、第二の手応えとは、その後の第二部材12の硬さに応じた手応えである。
【0017】
上記のようなねじの締めつけ強さの変化をもたらす観点から、第二部材12は、第一部材11に対して十分に硬ければよく、このような第二部材の硬さは、第二部材の材料によって適宜に決めることが可能である。たとえば、第二部材の材料がゴムである場合には、第二部材の前述の硬さは、第一部材の硬さよりも10以上高い硬さであることが好ましい。
【0018】
第二部材12の硬さは、第一部材11の硬さと同じ方法で測定されてもよいし、第一部材11の硬さと比較可能な他の硬さの測定方法で測定された値の換算値であってもよい。あるいは、硬さの対比が可能な範囲において、第一部材11の硬さの値および第二部材12の硬さの値は、それらの求め方の異同に関わらず、カタログ値であってもよい。
【0019】
第二部材12の材料は、第二部材12を第一部材11よりも硬くするものであればよい。第二部材12の材料は、第一部材11に応じて適宜に決めることができる。第二部材12の材料の例には、硬質なプラスチックス、鉄などの金属、および、金属酸化物の焼結体、が含まれる。プラスチックスの例には、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリエチルエチルケトンおよびポリアミドが含まれる。
【0020】
なお、第一部材11の材料および第二部材12の材料は、シール部材10に求められる性能、あるいはシール部材10が使用される環境などの様々な理由によっても決められ得る。
【0021】
たとえば、第一部材11の材料の具体的な例には、ゴムあるいは熱可塑性エラストマー(TPE)などの、Oリングの材料として従来から知られている弾性材料が含まれる。当該ゴムの例には、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(NBM/HNBR)、フッ素ゴム(FKM)、パーフロロポリエーテル系ゴム(FO)、フロロシリコーンゴム(FVMQ)、シリコーンゴム(Q)、エピクロルヒドリンゴム(CO)、アクリルゴム(ACM)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)およびウレタンゴム(U)が含まれる。
【0022】
また、上記の熱可塑性エラストマー(TPE)の例には、スチレン系TPE(SBC、TPS)、オレフィン系TPE(TPO)、ポリ塩化ビニル系TPE(TPVC)、ポリウレタン系TPE(TPU)、ポリエステル系TPE(TPEE、TPC)、ポリアミド系TPE(TPA、TPAE)およびポリブタジエン系TPEが含まれる。
【0023】
第二部材12の材料は、第一部材11よりも硬い材料であることが好ましく、前述のゴム材料であってもよいし、金属または樹脂であってもよい。第一部材11の材料および第二部材12の材料は、それぞれ、シール部材10が封止すべき流体の種類(酸、アルカリ、水、油など)に応じて適宜に決めることが可能である。
【0024】
第二部材12の形状は、円環状であり、第二部材12は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン製の円環である。第二部材12は、シール部材10の周方向において連続して存在しているが、第二部材12の形状および配置は、前述のねじによる締めつけ強さの変化を検出可能な範囲において、適宜に決めることが可能である。たとえば、中心軸CAに沿って押圧されることでシール部材10がシールすべき部位に装着される場合には、第二部材12は、周方向における凹部111の一部分にのみに内包される形態であってもよい。あるいは、第二部材12は、複数の第二部材12が凹部111において周方向に沿って断続的に配置される形態であってもよい。
【0025】
また、中心軸CAを含む平面で第二部材12を切断したときの第二部材12の断面形状は、円形であるが、前述したねじの締めつけ強さの変化をもたらす観点から、円形に限定されない。第二部材12の断面形状は、矩形であってもよいし、三角形などの、四角形以外の多角形であってもよいし、楕円形などの非円形であってもよい。第二部材12の断面形状は、第一部材11への押圧力が局所的に集中することを避ける観点から、円形が好ましいが、シール部材10の用途あるいは第一部材11の形状に応じて適宜に決めることが可能である。
【0026】
[シール部材の設置]
図4は、本発明の実施形態1に係るシール部材をねじで締めつける前の状態を模式的に示す図である。シール部材10は、継手101、ソケット102および管103からなる管継手構造100において、継手101と管103との隙間を密閉するために使用することができる。
【0027】
図4に示されるように、管継手構造100において、継手101はその外周面に雄ねじが形成されている管状の継手である。ソケット102は、その断面形状がカップ状であり、その内周面には雄ねじに螺合する雌ねじが形成されている。また、ソケット102の底面には、孔121が形成されている。管103は、端部にフランジ部131を有しており、ソケット102の孔121に、ソケット102の内側から挿入されている。フランジ部131は、ソケット102に収容され、ソケット102の底面に接している。
【0028】
シール部材10は、ソケット102内のフランジ部131上に、凹部111の開口部をフランジ部131に向けて載せられる。次いで、継手101をソケット102に螺合させていく。継手101をソケット102に螺合させるに連れて、継手101は、ソケット102の底面に向けてソケット102内に進入し、やがてシール部材10の第一部材11に接触する。シール部材10に接触した時に、継手101をソケット102に螺合させていた作業者は、第一部材11の弾性に応じた第一の手応えを感じる。
【0029】
図5は、本発明の実施形態1に係るシール部材をねじで締めつけた後の状態を模式的に示す図である。作業者がさらに継手101をソケット102に螺合させると、第一部材11は、
図5に示されるように、継手101に押圧されて十分に変形する。たとえば、シール部材10は、中心軸CAに沿う方向に押圧されて、第一部材11の凹部111の開口が第二部材12の位置に到達するように変形する。こうして、シール部材10は、例えば、第二部材12がフランジ部131に接するように変形する。
【0030】
この時、継手101をねじ込んでいた作業者は、第二部材12の硬さに応じた第二の手応えを感じる。第二の手応えとは、例えば、継手101がまだ回動可能ではあるが、継手101の先端が何かに突き当たったかのような手応えである。このようにして、シール部材10を装着する際のねじによる締めつけ強さの変化が検知される。ここまでの継手101の締めつけ作業は、例えば作業者の手によって行われる。
【0031】
作業者は、管継手構造100における所期の密閉性に応じて、継手101をソケット102に螺合させる作業を完了する。たとえば、作業者は、第二の手応えを感じた時点で継手101をソケット102に螺合させる作業を完了し、それによりシール部材10の装着を完了してもよい。あるいは、作業者は、第二の手応えを感じた時点で、さらなる所定の締めつけ強さとなるように継手101をソケット102にさらに螺合させることにより、シール部材10の装着を完了してもよい。このようなさらなる螺合の作業は、所定の回転角度(例えば、さらに60°など)で継手101をソケット102にさらに螺合させる作業であってもよい。あるいは、当該作業は、所定のトルクに設定されているトルクレンチを用いて継手101をソケット102にさらに螺合させる作業であってもよい。
【0032】
[作用効果]
ねじによる締めつけによってシール部材10を装着させる作業者は、ねじによる締めつけによるねじの変位がシール部材10の弾性によって実質的に吸収される第一の手応えと、その後の第二部材12の硬さに応じた第二の手応えとを検知することが可能である。このため、シール部材10は、ねじによる適度な締めつけによって、シールすべき部位に装着される。したがって、シール部材10の装着において、ねじによる過度の締めつけによって第一部材11が破損することが防止される。
【0033】
また、シール部材10では、弾性を有する第一部材11が第二部材12を内包している。したがって、シールすべき部位では、弾性を有する第一部材11が、ねじによる締めつけによってシール部材10を押圧する方向(図では中心軸CAに沿う方向)の全長にわたって連続して存在する。このため、第一部材11は、継手101とフランジ部131との隙間において連続して存在するとともに、継手101およびフランジ部131の両方に対して十分に密着する。したがって、シール部材10は、シールすべき部位において、第一部材11の弾性に応じた所期の密閉性を発現する。
【0034】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0035】
本実施形態に係るシール部材は、いずれも、凹部の開口端部における内周面に形成される凸部であって、凹部に内包されている第二部材に係合する係合部をさらに有しており、その他の構成については前述の実施形態1と同様である。
【0036】
[第一の例]
図6は、本発明の実施形態2に係るシール部材の構成における第一の例を模式的に示す断面図である。
図6に示されるように、シール部材20は、第一部材21および第二部材12を有している。
【0037】
第一部材21は、例えばゴム製である。第一部材21は、凹部111の開口部において対向する壁部の内側に、それぞれの壁部から突出する一対の突条部211、211を有している。突条部211、211は、互いに対向して突出しているが、互いの間には隙間を有している。突条部211、211は、第一部材21に内包されている第二部材12に係合している。このように、突条部211は、前述の係合部となっている。
【0038】
シール部材20は、前述した実施形態1のシール部材10に比べて、第二部材12の凹部111からの脱落がより強く抑制される。したがって、第二部材12が凹部111から脱落しやすい状況においても、第二部材12が凹部111の開口から脱落することを防止することができる。第二部材12が凹部111から脱落しやすい状況とは、例えば、凹部111の開口を下向きにした場合、あるいは、凹部111の開口を下向きにした状態でさらに振動が加わる場合である。
【0039】
[第二の例]
図7は、本発明の実施形態2に係るシール部材の構成における第二の例を模式的に示す断面図である。
図7に示されるように、シール部材30は、第一部材31と第二部材12とを有する。第一部材31は、例えばゴム製である。第一部材31は、その断面形状が、図の紙面に対して上側に凸の略V字形状となっている以外は、前述の第一の例における第一部材21と同様に構成されている。シール部材30は、凸状の頂部に載置されてシールに供される場合により好適である。このような凸状の頂部とは、例えば、平面形状が円形であり、断面形状が山型の突条の部位である。
【0040】
[第三の例]
図8は、本発明の実施形態2に係るシール部材の構成における第三の例を模式的に示す断面図である。
図8に示されるように、シール部材40は、第一部材41と四つの第二部材421~424とを有する。第一部材41は、例えばゴム製である。第二部材421~424は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン製である。
【0041】
第一部材41は、その断面形状が略X字形状であり、四つの凹部411~414を有している。凹部411~414は、いずれも、第一部材41の断面形状において対向する二つの壁部の間に形成される、略V字型の溝である。
【0042】
凹部411および凹部412は、中心軸CAに沿う方向に開口している。凹部411は、
図8の紙面に対して上方に向けて開口しており、凹部412は、
図8の紙面に対して下方に向けて開口している。凹部413および凹部414は、中心軸CAに直交する方向に開口している。凹部413は、中心軸CAに向けて開口しており、凹部414は、中心軸CAとは反対側(外方)に向けて開口している。凹部411および凹部412は、いずれも、その開口部において対向する壁部の内側に、それぞれの壁部から突出する一対の突条部415、415を有している。
【0043】
第二部材421~424は、凹部411~414のそれぞれの底部に配置されている。このため、第二部材421~424は、いずれも、断面形状が略X字形状の第一部材41が形成する四つの略V字型の溝の底に配置され、当該溝を形成する一対の斜面に挟まれている。このように、第二部材421~424は、いずれも、第一部材41の断面において直交する四方向のうちの三方向から、第一部材41によって囲まれており、したがって、第一部材41に内包されている。
【0044】
第二部材421~424は、いずれも、その平面形状が円環状であり、その断面形状が円形である。第二部材421および第二部材422は、いずれも同じ寸法を有している。第二部材423は、第二部材421および第二部材422に比べて小さい径を有しており、第二部材424は、第二部材421および第二部材422に比べて大きい径を有している。
【0045】
第二部材421は、凹部411に配置されており、第二部材422は、凹部412に配置されている。第二部材421および第二部材422のいずれにも、突条部415が係合している。第二部材423は、凹部413に配置されており、第二部材422は、凹部414に配置されている。
【0046】
シール部材40は、中心軸CAに直交する方向において、二重に第二部材(423、424)を有している。したがって、シールに供されているシール部材40が中心軸CAに直交する方向において外力を受けた場合に、当該方向への変形を抑制する観点から有利である。
【0047】
[第四の例]
図9は、本発明の実施形態2に係るシール部材の構成における第四の例を模式的に示す断面図である。
図9に示されるように、シール部材50は、第一部材51と第二部材12とを有する。
【0048】
第一部材51は、例えばゴム製である。第一部材51は、その断面形状が略Y字形状であり、第一部材51の
図9の紙面における上方に、凹部511を有している。凹部511は、略Y字形状におけるY字の枝分かれしている線に対応する、対向する二つの壁部の間に形成されている略V字型の溝である。凹部511は、いずれも、その開口部において対向する壁部の内側に、それぞれの壁部から突出する一対の突条部512、512を有している。第二部材12は、凹部511に内包されており、また突条部512、512に係合されている。
【0049】
シール部材50は、略Y字形状の断面形状を有する。したがって、中心軸CAに沿う方向に圧縮してシールに供する場合に、当該方向おける第一部材51の変形量が大きい。したがって、シールすべき部位となる隙間において、当該隙間を構成する一方の面に対して、弾性を有する第一部材51がより強く押し当てられるため、シール時の密閉性を高める観点から好適である。
【0050】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図10は、本発明の実施形態2に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図11は、本発明の実施形態2に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す平面図である。
図12は、本発明の実施形態2に係るシール部材の構成の一例を模式的に示す底面図である。
図10~
図12に示されるように、シール部材60は、第一部材61と第二部材62とを有する。
【0051】
[構成]
第一部材61は、弾性を有しており、例えばゴム製である。また、第一部材61は、凹部611を有している。より具体的には、第一部材61は、底面部612と底面部612の周囲から起立する壁部613とによって構成されており、凹部611は、底面部612および壁部613の内表面で形成されている。第一部材61において、底面部612を平面視したときの平面形状は円形であり、壁部613の平面形状は円環状である。
【0052】
第二部材62は、第一部材61よりも硬く、例えば金属製の円板であり、その径は、第一部材61の内径と実質的に同じである。第二部材62は、例えば、凹部611の開口部から底面部612まで第二部材62を押し込むことにより、凹部611に嵌め込まれる。壁部613は弾性を有することから、硬質な第二部材62の周縁部は壁部613に食い込み、第二部材62が凹部611の底に固定される。また、第二部材62は、中心軸CAを含む断面において、対向する壁部613およびその間をつなぐ底面部612によって囲まれている。このように、第二部材62は、第一部材61のみによって凹部611内に保持されており、また、第一部材61に内包されている。
【0053】
[シール部材の設置および作用効果]
図13は、本発明の実施形態2に係るシール部材をねじで締めつける前の状態を模式的に示す図である。当該シール部材は、ハウジングの外壁に形成された貫通孔を密閉するために使用することができる。
【0054】
図13に示されるように、ハウジング300は、外壁301を有しており、外壁301は、有底のねじ穴302を有している。ねじ穴302は、その底に開口する孔303を有しており、孔303は、ハウジング300の内部空間に連通している。このように、ハウジング300の内部空間と外空間は、ねじ穴302および孔303を介して連通している。シール部材60は、孔303を密閉するために使用される。
【0055】
シール部材60は、ねじ穴302の底における孔303の開口端縁に、凹部611の開口部を上に向けて載せられる。次いで、ねじ304をねじ穴302に螺合させていく。ねじ304は、やがてシール部材60の第一部材61に接触する。ねじ304を締めていた作業者は、第一部材61の弾性に応じた第一の手応えを感じる。
【0056】
図14は、本発明の実施形態2に係るシール部材をねじで締めつけた後の状態を模式的に示す図である。作業者がさらにねじ304を締めると、第一部材61は、ねじ304に押されてさらに、そして十分に変形し、ねじ304は、中心軸CAに沿う方向において、第二部材62まで到達する。ねじを締めていた作業者は、第二部材62の硬さに応じた第二の手応えを感じる。当該作業者は、さらに必要に応じてねじ304を締める。こうして、シール部材60は、ねじ304の適度な締めつけによってシールすべき部位に適切に装着され、弾性を有する第一部材61によって孔303を十分に密閉する。また、シール部材60の装着において、ねじ304の過度の締めつけによって第一部材61が破損することが防止される。
【0057】
〔変形例〕
本発明は上述した各実施形態に限定されない。請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0058】
たとえば、実施形態1および実施形態2の第一、第二および第四の例において、第一部材の凹部は、中心軸CAを横断する向きに開口していてもよい。たとえば、凹部は、中心軸CAを直交する方向において、中心軸CAに向けて開口していてもよいし、中心軸CAとは反対側(外方)に向けて開口していてもよい。また、実施形態1および実施形態2の第一および第二の例において、シール部材は、凹部の開口を図の紙面に対して上に向けてフランジ部上に配置されてもよい。
【0059】
また、実施形態2の第三の例において、第二部材は、四つの凹部の一部にのみ配置されていてもよい。たとえば、シール部材は、第二部材として、第二部材423および424の一方または両方のみを有していてもよく、あるいは、第二部材423、424のうちの一つのみを有していてもよい。この場合であっても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、実施形態3において、第二部材の寸法が孔よりも大きい場合には、シール部材は、第二部材を孔に向けてねじ穴に配置されてもよい。さらに、シール部材は、実施形態1、2における突条部と同様に、凹部の開口端部における内周面に形成され、凹部に内包されている第二部材に係合する係合部をさらに有していてもよい。この構成は、凹部からの第二部材の脱落を防止する観点から好適である。
【0061】
〔まとめ〕
本発明の実施形態に係るシール部材(10、20、30、40、50、60)は、弾性を有するとともに凹部(111、411、412、413、414、511、611)を有する第一部材(11、21、31、41、51、61)と、第一部材よりも硬いとともに全体が凹部に内包される第二部材(12、62、421、422、423、424)とを有する。当該シール部材は、ねじの締めつけによってシールすべき部位に装着する際に、第一部材の弾性に応じた第一の手応えと、第二部材の硬さに応じた第二の手応えとを発現する。したがって、本発明の実施形態によれば、ねじの過度の締めつけによる第一部材の破損を防止することができ、その結果、ねじの締めつけによってシール部材をシールすべき部位に適切に装着することができる。
【0062】
本発明の実施形態において、第一部材の平面形状が環状であり、凹部は第一部材の環状の平面形状の部分に開口するよう形成される環状の凹条であってもよい。管の周囲または軸周りなどの環状のシールすべき部位に適用可能なシール部材を実現する観点からより一層効果的である。
【0063】
また、本発明の実施形態において、第一部材は、底面部(612)と底面部の周囲から起立する壁部(613)とによって構成され、凹部は、底面部および壁部の内表面で形成されていてもよい。この構成は、ハウジング(300)の貫通穴を塞ぐシール部材を実現する観点からより一層効果的である。
【0064】
また、本発明の実施形態に係るシール部材は、凹部の開口端部における内周面に形成される凸部であって、凹部に内包されている第二部材に係合する係合部(突条部211、415、512)をさらに有していてもよい。この構成は、第二部材が凹部から脱落することを防止する観点からより一層効果的である。
【符号の説明】
【0065】
10、20、30、40、50、60、700 シール部材
11、21、31、41、51、61 第一部材
12、62、421、422、423、424 第二部材
100 管継手構造
101 継手
102 ソケット
103 管
111、411、412、413、414、511、611 凹部
121、303 孔
131 フランジ部
211、415、512 突条部
300 ハウジング
301 外壁
302 ねじ穴
612 底面部
613 壁部
701 第一の材料
702 第二の材料
703 シール胴部
704 側部
705 シールド