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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/362 20060101AFI20240322BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20240322BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240322BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20240322BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A61K8/362
A61K8/365
A61K8/46
A61Q5/06
A61Q5/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020033808
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2020186222
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019090210
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庭野 悠
(72)【発明者】
【氏名】板谷 美季
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/018668(WO,A1)
【文献】特開2007-176826(JP,A)
【文献】特表2009-537620(JP,A)
【文献】特表2016-530305(JP,A)
【文献】特開2023-022363(JP,A)
【文献】国際公開第2020/022131(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程[A-1]、[B]及び[C]を含み、工程[A-1]→工程[B]→工程[C]の順で実施される毛髪処理方法。
工程[A-1]:毛髪に成分(A1)として20℃の水100mLに対する溶解度が25g以下である有機カルボン酸、又は当該有機カルボン酸の塩を0.5質量%以上12質量%以下含有し、かつ25℃におけるpHが3以上4.5以下である第一の毛髪処理剤を適用し、毛髪をすすぎ流す工程
工程[B]:毛髪に成分(B)として無機性値が250以上400以下かつ有機性値が50以上180以下であるカルボン酸、又は当該カルボン酸の塩を2.5質量%以上15質量%以下含有し、かつ25℃におけるpHが3以上7以下である第二の毛髪処理剤を適用する工程
工程[C]:毛髪に成分(C)として分子量が300以下であり、かつ下記の一般式(3)で表されるナフタレンスルホン酸類、及び一般式(5)で表されるベンゼンスルホン酸類から選ばれる少なくとも1種の化合物を5質量%以上15質量%以下含有し、かつ25℃におけるpHが5以上8以下である第三の毛髪処理剤を適用する工程
【化1】
〔式中、A1~A8のうち1以上はスルホ基又はその塩を示し、残余は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルケニル基、低級アルコキシ基、ホルミル基又はアシル基を示す。〕
【化2】
〔式中、A21 ~A26 のうち1以上はスルホ基又はその塩を示し、残余は水素原子又は低級アルキル基を示す。〕
【請求項2】
更に、工程[B]に続き、第二の毛髪処理剤を適用した毛髪を15℃以上100℃以下で15秒以上60分以下放置する工程[b1]を行う、請求項1に記載の毛髪処理方法。
【請求項3】
成分(A1)又は成分(A2)が、コハク酸及び酒石酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の毛髪処理方法。
【請求項4】
第二の毛髪処理剤中に、更に成分(D)として、一般式(1)で表されるグリシルグリシン誘導体又はその塩、平均重合度2以上6以下のポリグリセリン、及びアルキル基の炭素数が6以上40以下であるアルキルグリセリルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【化3】
〔式中、Xは水酸基が置換していてもよい炭素数1~4の二価の炭化水素基、又はアミノ酸残基を示し、
Yはアミノ酸残基、又は式(2)
【化4】
(式中、-*は隣接するカルボニル基又は酸素原子と結合する結合手を示す。)
で表される二価の基を示し、
Rは水素原子又は水酸基が置換していてもよい炭素数1~4の一価の炭化水素基を示し、
a及びbは0又は1を示す。ただし、a及びbが同時に1となる場合、Xはアミノ酸残基となることはない。〕
【請求項5】
工程[C]の後、毛髪をすすぎ流す工程を含み、工程[C]と毛髪をすすぎ流す工程の間に、更に工程[c1]を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
工程[c1]:第三の毛髪処理剤を塗布した毛髪を15℃以上100℃以下で1分以上60分以下放置する工程
【請求項6】
第二の毛髪処理剤中における(E)芳香族アルコールの含有量が0.5質量%以上15質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【請求項7】
第二の毛髪処理剤中に、更に成分(F)として増粘剤を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【請求項8】
第三の毛髪処理剤が、更に成分(F)として増粘剤、及び成分(E)として芳香族アルコールを含有し、成分(F)の含有量が0.1質量%から5質量%である、請求項1~のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【請求項9】
工程[c1]において毛髪を放置する際の温度が15℃以上30℃未満である、請求項5~8のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【請求項10】
工程[c1]において毛髪を放置する際の温度が30℃以上100℃以下であり、かつ放置時間が1分以上30分以下である、請求項5~9のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【請求項11】
還元剤を含む毛髪処理剤及びpH12~14の毛髪処理剤のいずれを髪に塗布する工程も含まない、請求項1~10のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【請求項12】
以下の工程[A-1]、[B]及び[C]を含み、工程[A-1]→工程[B]→工程[C]の順で実施される毛髪処理方法。
工程[A-1]:毛髪に成分(A1)としてコハク酸及び酒石酸から選ばれる少なくとも1種の有機カルボン酸、又は当該有機カルボン酸の塩を0.5質量%以上12質量%以下含有し、かつ25℃におけるpHが3以上4.5以下である第一の毛髪処理剤を適用し、毛髪をすすぎ流す工程
工程[B]:毛髪に成分(B)としてリンゴ酸、乳酸又はそれらの塩を2.5質量%以上15質量%以下、並びに成分(D)としてグリシルグリシン又はその塩、及びイソステアリルグリセリルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物を0.5質量%以上6質量%以下含有し、かつ25℃におけるpHが3以上7以下である第二の毛髪処理剤を適用する工程
工程[C]:毛髪に成分(C)としてナフタレンスルホン酸、キシレンスルホン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を5質量%以上15質量%以下含有し、かつ25℃におけるpHが5以上8以下である第三の毛髪処理剤を適用する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーマネント処理などの技術によって毛髪に人工的に付与されたカールは、その後日を経るに従って、カールの方向が部分的に反転してしまい、外観の美しさが損なわれるのみならず、指に絡まりやすくなるなどの問題があった。しかし、従来、この問題を解消することを目的とした先行技術は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、生来の縮れ毛やパーマネント処理などで毛髪に付与されたカールの方向を均一に揃え、美しい外観を復活させるとともに、毛髪を絡まりにくくすることができカールの扱いやすさが向上する毛髪処理方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、パーマネント処理などの技術によって人工的に付与されたカールのみならず、生来の縮れ毛においても、日々繰り返される洗髪の際に水中のカルシウムイオンが毛髪内に蓄積されることによって、そのカールの方向が部分的に反転して乱雑な形状となり、美しさが損なわれるのみならず、絡まりやすくなることを初めて見出した。
【0005】
本発明者らは、更に鋭意検討した結果、疎水性の有機酸、特定のカルボン酸及び芳香族スルホン酸によって毛髪を所定の順番で処理することで、毛髪内に蓄積されたカルシウムイオンが流出すると共に前記カルボン酸及び芳香族スルホン酸により毛髪内部が改質され、処理後の毛髪がカールの位相が均一に揃った美しいカール形状となり、かつ、絡まりにくくなることを見いだし、発明を完成した。
【0006】
本発明は、第一の態様として、以下の工程[A-1]、[B]及び[C]を含み、工程[A-1]→工程[B]→工程[C]の順で、又は工程[B]→工程[A-1]→工程[C]の順で実施される毛髪処理方法を提供するものである。
工程[A-1]:毛髪に成分(A1)として20℃の水100mLに対する溶解度が50g以下である有機酸、又は当該有機酸の塩を含有する第一の毛髪処理剤を適用し、毛髪をすすぎ流す工程
工程[B]:毛髪に成分(B)として無機性値が250以上450以下かつ有機性値が50以上250以下であるカルボン酸、又は当該カルボン酸の塩を含有する第二の毛髪処理剤を適用する工程
工程[C]:毛髪に成分(C)として分子量が300以下の芳香族スルホン酸又はその塩を含有する第三の毛髪処理剤を適用する工程
【0007】
また、本発明は、第二の態様として、以下の工程[A-2]、[B]及び[C]を含み、工程[A-2]→工程[B]→工程[C]の順で、又は工程[B]→工程[A-2]→工程[C]の順で実施される毛髪処理方法を提供するものである。
工程[A-2]:毛髪に成分(A2)として成分(B)におけるカルボン酸よりも疎水的である有機酸、又は当該有機酸の塩を含有する第一の毛髪処理剤を適用する工程
工程[B]:毛髪に成分(B)として無機性値が250以上450以下かつ有機性値が50以上250以下であるカルボン酸、又は当該カルボン酸の塩を含有する第二の毛髪処理剤を適用する工程
工程[C]:毛髪に成分(C)として分子量が300以下の芳香族スルホン酸又はその塩を含有する第三の毛髪処理剤を適用する工程
【発明の効果】
【0008】
本発明の毛髪処理方法は、生来の縮れ毛やパーマネント処理などで毛髪に付与されたカールの方向を均一に揃え、美しい外観を復活させるとともに、毛髪を絡まりにくくしてカールの扱いやすさを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
●第一の毛髪処理剤(工程[A-1]及び工程[A-2]で使用)
〔成分(A1)〕
工程[A-1]において用いられる第一の毛髪処理剤は、成分(A1)として20℃の水100mLに対する溶解度が50g以下である有機酸、又は当該有機酸の塩を含有する。なお、成分(A1)における溶解度とは、有機酸についての溶解度をいう。すなわち、成分(A1)が有機酸塩である場合にも、その遊離酸についての溶解度を意味する。成分(A1)の20℃の水100mLに対する溶解度は、毛髪内からカルシウムを流出させると共に成分(A1)自体は毛髪内に留まり毛髪を改質する観点から、50g以下であって、好ましくは40g以下、より好ましくは30g以下、更に好ましくは25g以下、更に好ましくは15g以下、更に好ましくは10g以下である。成分(A1)の有機酸の具体例としては、コハク酸(前記溶解度は5.8g)、酒石酸(前記溶解度は20.6g)、マンデル酸(前記溶解度は15.5g)、フェニル乳酸(前記溶解度は5.3g)が挙げられる。毛髪内からのカルシウム流出効果の観点から、コハク酸及び酒石酸が好ましく、コハク酸がより好ましい。
【0010】
〔成分(A2)〕
工程[A-2]において用いられる第一の毛髪処理剤は、成分(A2)として成分(B)におけるカルボン酸よりも疎水的である有機酸、又は当該有機酸の塩を含有する。本明細書において、成分(B)におけるカルボン酸よりも疎水的であるとは、20℃の水100mLに対する溶解度が成分(B)におけるカルボン酸よりも低いことを意味する。ここで、比較すべき溶解度は、成分(A2)が有機酸塩である場合にも有機酸の溶解度であり、成分(B)がカルボン酸塩である場合にもカルボン酸の溶解度である。成分(A2)の具体例としては、成分(B)がリンゴ酸(前記溶解度は55.8g)、又は乳酸(前記溶解度は876g)である場合、コハク酸(前記溶解度は5.8g)、酒石酸(前記溶解度は20.6g)等が挙げられ、毛髪内からのカルシウム流出効果の観点から、好ましくはコハク酸である。
【0011】
第一の毛髪処理剤中における成分(A1)又は(A2)の含有量は、処方安定性を向上する観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下であり、また、処理後の毛髪の螺旋率、カールの均一性、カールの絡まりにくさを向上する観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは3.5質量%以上、更に好ましくは4.5質量%以上である。
【0012】
〔水〕
第一の毛髪処理剤は、配合の容易性及び毛髪への浸透性の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。
【0013】
第一の毛髪処理剤の25℃におけるpHは、成分(A1)又は成分(A2)の毛髪への浸透性を向上する観点から、好ましくは6.5以下、より好ましくは4.5以下であり、また、皮膚や頭皮への刺激性を緩和させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。
【0014】
第一の毛髪処理剤には、成分(A1)及び成分(A2)以外に、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両イオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、溶剤等のその他の成分を適宜含有することができる。
【0015】
第一の毛髪処理剤の形態としては、シャンプー、クレンジングコンディショナー、プレシャワートリートメント等が挙げられる。
【0016】
●第二の毛髪処理剤(工程[B]で使用)
第二の毛髪処理剤は、成分(B)として無機性値が250以上450以下かつ有機性値が50以上250以下であるカルボン酸、又は当該カルボン酸の塩を含有するものであり、工程[B]において用いられる。なお、第二の毛髪処理剤は、前記第一の毛髪処理剤が工程[A-1]で用いられるものである場合には、この第一の毛髪処理剤と同一の組成物である態様が含まれるが、カルシウムイオンの流出及び芳香族スルホン酸の浸透性を向上させる観点から、第一の毛髪処理剤とは異なる組成物であることが好ましい。
【0017】
〔成分(B)〕
成分(B)は、無機性値が250以上450以下でかつ有機性値が50以上250以下のカルボン酸、又は当該カルボン酸の塩である。なお、成分(B)における無機性値及び有機性値とは、カルボン酸についての無機性値及び有機性値をいう。すなわち、カルボン酸塩の場合には、その遊離酸についての無機性値及び有機性値を意味する。成分(B)自体が毛髪に効率的に浸透すると共に、他の成分の浸透量や浸透速度を向上させる観点から、無機性値は、好ましくは260以上、より好ましくは265以上であり、かつ、好ましくは420以下、より好ましくは400以下である。また、同様の観点から、有機性値は、好ましくは60以上、より好ましくは80以上であり、かつ、好ましくは200以下、より好ましくは180以下である。
【0018】
なお、無機性値、有機性値は、有機概念図に基づく考え方であり、「有機概念図による乳化処方設計」(矢守;フレグランスジャーナル, 1989(4), P29~38)に基づき、算出した値を用いる。
【0019】
このようなカルボン酸としては、以下の一般式(B-1)で表されるカルボン酸、リンゴ酸、コハク酸及び乳酸から選ばれるカルボン酸が挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
〔式中、R1は水素原子、酸素原子又は水酸基を示し、破線はR1が酸素原子である場合に二重結合となることを示し、nは0以上3以下の整数を示す。また、フェニル基及びメチレン鎖の一部が水酸基で置換されていてもよい。〕
【0022】
一般式(B-1)で表されるカルボン酸としては、マンデル酸、フェニル乳酸等が挙げられる。
【0023】
これらのカルボン酸の具体的な無機性値及び有機性値を示せば、マンデル酸(265、160)、フェニル乳酸(265、180)、リンゴ酸(400、80)、コハク酸(300、80)、乳酸(250、60)である。なお、カッコ内の数値はそれぞれ無機性値及び有機性値を示す。
【0024】
成分(B)としては、成分(B)自体が毛髪内部に効率的に浸透すると共に、成分(C)の毛髪内部への浸透性を向上させる観点からは、マンデル酸、フェニル乳酸、リンゴ酸、コハク酸及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種が好ましい。なかでも、リンゴ酸、マンデル酸、フェニル乳酸及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、リンゴ酸、フェニル乳酸及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。また、短時間で効果を発現させる観点からは、リンゴ酸及びその塩が好ましく、更に配合の容易性の観点からは、リンゴ酸が好ましい。
【0025】
以上のカルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩(NH4+)、有機四級アンモニウム塩、アルギニン塩等が挙げられる。
【0026】
これらのカルボン酸又はその塩は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。第二の毛髪処理剤中における成分(B)の含有量は、成分(C)の浸透性を向上させるという観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7.5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、かつ、肌に対する刺激性を緩和する観点からは、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0027】
〔成分(D)〕
第二の毛髪処理剤は、更に成分(D)として、(d1)一般式(1)で表されるグリシルグリシン誘導体又はその塩、(d2)平均重合度2以上6以下のポリグリセリン、及び(d3)アルキル基の炭素数が6以上40以下であるアルキルグリセリルエーテルから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することができる。
【0028】
成分(d1)は、一般式(1)で表されるグリシルグリシン誘導体又はその塩である。
【0029】
【化2】
【0030】
〔式中、Xは水酸基が置換していてもよい炭素数1~4の二価の炭化水素基、又はアミノ酸残基を示し、
【0031】
Yはアミノ酸残基、又は式(2)
【0032】
【化3】
【0033】
(式中、-*は隣接するカルボニル基又は酸素原子と結合する結合手を示す。)
で表される二価の基を示し、
【0034】
Rは水素原子又は水酸基が置換していてもよい炭素数1~4の一価の炭化水素基を示し、
【0035】
a及びbは0又は1を示す。ただし、a及びbが同時に1となる場合、Xはアミノ酸残基となることはない。〕
【0036】
前記一般式(1)で表されるグリシルグリシン誘導体又はその塩は、遊離形態であっても、両性イオンであってもよい。
【0037】
グリシルグリシン誘導体の塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;乳酸塩等の有機酸塩;アンモニウム塩(NH4+);アルキルアンモニウム塩等の有機アンモニウム塩;ナトリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0038】
一般式(1)中、Xで示される、水酸基が置換していてもよい炭素数1~4の二価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和でも、直鎖状又は分岐鎖状でもよく、効果の耐洗髪性を向上させる観点から、このうち水酸基が置換した二価の飽和炭化水素基又は二価の飽和炭化水素基が好ましい。
【0039】
二価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、ビニレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、1-プロペニレン基、テトラメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1-メチルトリメチレン基、1-ブテニレン基等が挙げられる。
【0040】
水酸基が置換した二価の炭化水素基としては、例えば、1-ヒドロキシエチレン基、1-ヒドロキシトリメチレン基、1,2-ジヒドロキシトリメチレン基、1-ヒドロキシテトラメチレン基、1,2-ジヒドロキシテトラメチレン基、1,3-ジヒドロキシテトラメチレン基、1,2,3-トリヒドロキシテトラメチレン基等が挙げられる。
【0041】
一般式(1)中、Xで示される「アミノ酸残基」とは、合成により得られるか、又は生体中に存在する全てのアミノ酸に由来の、オリゴペプチドを形成すべき単位アミノ酸部分を意味し、D体でもL体でもよい。
【0042】
Xで示されるアミノ酸残基としては、アルギニン残基、リジン残基、ヒスチジン残基等の塩基性アミノ酸残基;アラニン残基、グリシン残基等の脂肪族アミノ酸残基;フェニルアラニン残基、チロシン残基、トリプトファン残基等の芳香族アミノ酸残基;グルタミン残基、アスパラギン残基等の酸アミドアミノ酸残基;グルタミン酸残基、アスパラギン酸残基、システイン酸残基等の酸性アミノ酸残基;セリン残基、スレオニン残基等のヒドロキシアミノ酸残基;プロリン残基、N-メチルプロリン残基、4-ヒドロキシプロリン残基等の環状アミノ酸残基等が挙げられる。中でも、毛髪内部組織への親和性の高さの観点から、アルギニン残基、アラニン残基、フェニルアラニン残基、グリシン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、セリン残基、プロリン残基、N-メチルプロリン残基、4-ヒドロキシプロリン残基から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0043】
一般式(1)中、Yで示されるアミノ酸残基としては上記Xと同様のものが例示されるが、Yとしては、毛髪内部組織への親和性の高さの観点から、アルギニン残基、アラニン残基、グリシン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、セリン残基、プロリン残基、4-ヒドロキシプロリン残基、及び前記化学式(2)で示される二価の基から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0044】
一般式(1)中、Rで示される、水酸基が置換していてもよい炭素数1~4の一価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和でも、直鎖状又は分岐鎖状でもよい。一価の炭化水素基としてはアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0045】
水酸基が置換した一価の炭化水素基としては、ヒドロキシアルキル基が好ましく、例えば、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、2,3-ジヒドロキシエチル基、2,3,4-トリヒドロキシブチル基、2,4-ジヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0046】
本発明において好適なグリシルグリシン誘導体の例としては、式(G1)~(G10)のいずれかで表される化合物を挙げることができ、毛髪内部組織への親和性、毛髪内部への浸透性及び効果の持続性の向上の観点から、式(G3)~(G10)のいずれかで表される化合物がより好ましく、式(G9)、(G10)のいずれかで表される化合物(グリシルグリシルグリシン、グリシルグリシン)が更に好ましい。これらグリシルグリシン誘導体は遊離形態であっても、両性イオンであってもよく、塩を形成していてもよい。また、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
【化4】
【0048】
成分(d2)の平均重合度2以上6以下のポリグリセリンとしては、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン等が挙げられ、成分を十分に毛髪内部に浸透させる観点から、平均重合度が2以上4以下のものが好ましく、平均重合度が2.5以上3.5以下のものがより好ましい。
【0049】
成分(d3)のアルキル基の炭素数が6以上40以下であるアルキルグリセリルエーテルとしては、水への溶解性及び毛髪内部への浸透性の向上の観点から、アルキル基の炭素数が8以上、更には14以上であるものが好ましく、また、20以下、更には18以下のものが好ましい。また、このアルキル基が分岐鎖アルキル基であるものが好ましい。具体例としては、イソステアリルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテル、エチルへキシルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0050】
成分(D)としては、成分(d1)、(d2)、(d3)のいずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、効果の持続性を効率的に向上させる観点から、成分(D)として成分(d1)を含むことが好ましい。
【0051】
なお、第二の毛髪処理剤が成分(B)及び(D)を含有する場合には、第二の毛髪処理剤の態様は、一剤式毛髪処理剤であってもよいし、成分(B)及び(D)のうち一方を含有する第1剤と他方を含有する第2剤を混合して、又は順次毛髪に適用する、二剤式毛髪処理剤であってもよい。本明細書において、第二の毛髪処理剤が二剤式毛髪処理剤である場合における各成分の含有量は、前記第1剤と第2剤とを合わせた第二の毛髪処理剤の総量中における含有量を示す。
【0052】
第二の毛髪処理剤中における成分(D)の含有量は、効果の持続性を向上させる観点より、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、処方安定性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。
【0053】
〔成分(E):芳香族アルコール〕
第二の毛髪処理剤は、成分(B)、又は成分(B)及び(D)の毛髪への浸透を促進させる観点から、更に成分(E)として芳香族アルコールを含有することができる。このような芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、フェネチルアルコール、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール等が挙げられる。これらのうち、成分(B)との相溶性の観点から、ベンジルアルコール及び2-ベンジルオキシエタノールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ベンジルアルコールがより好ましい。
【0054】
これらの芳香族アルコールは、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。第二の毛髪処理剤中における成分(E)の含有量は、成分(B)、又は成分(B)及び(D)の毛髪への浸透を促進させる観点から、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更により好ましくは3質量%以上であり、かつ、同様の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更により好ましくは6質量%以下である。
【0055】
第二の毛髪処理剤において、成分(E)に対する成分(B)の質量比(B)/(E)は、処方安定性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.75以上、更に好ましくは1.0以上、更により好ましくは1.2以上であり、かつ、同様の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、更により好ましくは5以下、更により好ましくは2.5以下である。
【0056】
〔成分(G):有機溶剤〕
第二の毛髪処理剤には、成分(B)、又は成分(B)及び(D)の毛髪への浸透を促進させる観点から、更に成分(G)として、以下の一般式(G-1)で表される有機溶剤を含有してもよい。
2-(OCH2CH2)q-R3 (G-1)
〔式中、R2は水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、R3は水素原子又は水酸基を示し、qは0以上5以下の整数を示す。ただし、qが0である場合にはR2及びR3は水素原子ではない。〕
【0057】
このような成分(G)としては、炭素数1以上4以下の1価のアルコール、R2が炭素数1以上5以下の直鎖又は分岐のアルキルでqが1以上5以下の整数であるエチレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。具体的にはエタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。これらのうち、成分(B)の毛髪への浸透を促進する観点から、エタノールがより好ましい。
【0058】
第二の毛髪処理剤中における成分(G)の含有量は、成分(B)、又は成分(B)及び(D)の毛髪への浸透を促進させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更により好ましくは12.5質量%以上であり、かつ、同様の観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、更により好ましくは22質量%以下である。
【0059】
〔成分(F):増粘剤〕
工程[B]で用いる第二の毛髪処理剤は、塗布後の水分揮散速度を抑制し、毛髪内への成分(B)、又は成分(B)及び(D)の浸透を促進させる観点から、更に成分(F)として増粘剤を含有することが好ましい。増粘剤としては、アニオン性増粘剤、カチオン性増粘剤、ノニオン性増粘剤等が挙げられる。
【0060】
アニオン性増粘剤の具体例としては、ポリアクリル酸(例えば、Noveon社:カーボポール941、同981)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(例えば、Noveon社:カーボポールETD2020)、低級アルキルビニルエ―テル/無水マレイン酸共重合体の末端不飽和ジエン化合物による部分架橋ポリマーの加水分解物又はそのモノアルキルエステル(ASHLAND社:スタビリーゼ06、同QM)、カラギーナン(例えば、三菱レーヨン社:ソアギーナLX22、同ML210)、キサンタンガム(例えば、大日本住友製薬社:エコーガムT)、ウェランガム(例えば、三晶株式会社:K1C376、K1A96)、ヒドロキシプロピルキサンタンガム(例えば、大日本住友製薬社:ラボールガムEX)、テアロキシPGヒドロキシエチルセルローススルホン酸ナトリウム、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー(例えば、セピック社:シマルゲルNS,セピノブEMT10)等が挙げられる。
【0061】
カチオン性増粘剤としては、天然又は半合成のカチオン性多糖類、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基若しくはアンモニウム基を含むか、又はジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む合成系ポリマー等が挙げられる。
【0062】
カチオン性多糖類の具体例としては、カチオン化セルロース誘導体(例えば、ライオン社:レオガードG、同GP,ダウケミカル社:ユーケア ポリマーJR-125、同JR-400、同JR-30M、同LR-400、同LR-30M,アクゾノーベル社:セルコートH-100、同L-200)、カチオン化グアーガム誘導体(例えば、ソルベイ社:ジャガーC-13S、同C-17,DSP五協フード&ケミカル社:ラボールガムCG-M、同CG-M7、同CG-M8M)、ヒドロキシプロピルキトサン(例えば、一丸ファルコス社:キトフィルマーHV-10)、キトサン・dl-ピロリドンカルボン酸塩(例えば、ユニオン・カーバイド社:カイトマーPC)等が挙げられる。
【0063】
ポリマー鎖の側鎖にアミノ基又はアンモニウム基を含む合成系カチオン性ポリマーとしては、トリアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、トリアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ビニルアミン等を構成単位として含む合成系カチオン性ポリマーが挙げられ、具体例としては、メタクリロイルオキシエチレントリモニウムクロリドの重合体(INCI名:ポリクオタニウム-37、例えばBASF社:コスメディア ウルトラジェル300、SALCARE SC95、Sigma 3V社:synthalen CR)、(アクリル酸/アクリル酸メチル/3-メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)コポリマー(INCI名:ポリクオタニウム-47、例えばルーブリゾール社:マーコート2201)、(アクリル酸/アクリルアミド/メチルメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)コポリマー(INCI名:ポリクオタニウム-53、例えばルーブリゾール社:マーコート2003)、(ジメチルアクリルアミド/メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド)コポリマー(例えば、BASF社:Tinobis CD)、(ビニルアミン/ビニルアルコール)コポリマー(例えば、積水スペシャリティケミカル社:SEVOL ULTALUX AD、三菱化学社:Diafix C-601)等が挙げられる。
【0064】
ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む合成系カチオン性ポリマーの具体例としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドの重合体(INCI名:ポリクオタニウム-6、例えばルーブリゾール社:マーコート100)、(ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリルアミド)コポリマー(INCIポリクオタニウム-7、例えばルーブリゾール社:マーコート550、同740)、(アクリル酸/ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)コポリマー(INCI名:ポリクオタニウム-22、例えばルーブリゾール社:マーコート280、同295)、(アクリルアミド/アクリル酸/ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)コポリマー(INCI名:ポリクオタニウム-39、例えばルーブリゾール社:マーコートプラス3330、同3331)等が挙げられる。
【0065】
ノニオン性の増粘ポリマーとしては、天然又は半合成のノニオン性多糖類、ビニルアルコール又はオキシアルキレンを構成単位として含む合成系ノニオン性ポリマー等が挙げられる。
【0066】
天然又は半合成のノニオン性多糖類の具体例としては、デンプン、グアーガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン等の水溶性天然多糖類、及びセルロース、デンプン、グアーガム、ローカストビーンガム等にアルキレンオキサイドを反応させてなる水溶性ヒドロキシアルキル化多糖類等が挙げられる。具体例としては、グアーガム(例えば、DSP五協フード&ケミカル:ファイバロンS)、プルラン(例えば、林原社:プルランPI-20)等が挙げられる。ヒドロキシエチルセルロース(例えば、ダイセルファインケム社:SE-850,ダウケミカル社:セロサイズHEC QP-52000-H)、メチルヒドロキシエチルセルロース(アクゾノーベル社:STRUCTURE CELL 12000M)、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、日本曹達社:HPC-H、同HPC-M、同HPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、信越化学工業社:メトローズ60SH-10000)等が挙げられる。
【0067】
ビニルアルコール又はオキシアルキレンを構成単位として含む合成系ノニオン性増粘ポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール(例えば、日本合成化学社:ゴーセノールEG-40、同GH-05、同KH-20、同NH-26)、高重合度ポリエチレングリコール(例えばダウケミカル社:ポリオックスWSR N-60K、同WSR301、WSR303)、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー(例えば、ADEKA社:アデカノールGT-700)等が挙げられる。
【0068】
これらの増粘剤のうち、塗布後の水分揮散速度を抑制し、毛髪内への成分(B)、又は成分(B)及び(D)の浸透を促進させる観点から、天然又は半合成の多糖類が好ましく、キサンタンガム、ヒドロキシキサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、キサンタンガム、ヒドロキシキサンタンガムから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0069】
増粘剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。第二の毛髪処理剤中における成分(F)の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、かつ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0070】
〔水〕
第二の毛髪処理剤は、配合の容易性及び毛髪への浸透性の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。
【0071】
〔成分(C):芳香族スルホン酸又はその塩〕
第二の毛髪処理剤には、後述の工程[C]で用いる第三の毛髪処理剤に含まれる成分(C)である芳香族スルホン酸又はその塩を含まないこと、すなわち含有量が0質量%であることが好ましい。また第二の毛髪処理剤に成分(C)を含む場合(例えば組成物中の0.0001質量%以上)であっても、その含有量は、好ましくは3質量%未満、より好ましくは1質量%未満、更に好ましくは0.5質量%未満である。
【0072】
また、第二の毛髪処理剤には、更に界面活性剤を含有させることもできる。しかし、処方としての自然な塗布性と第二の毛髪処理剤が均一な製剤であることを両立する観点から、第二の毛髪処理剤中における界面活性剤の含有量は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下であり、更に好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
【0073】
〔pH〕
第二の毛髪処理剤のpHは、工程[C]における成分(C)の芳香族スルホン酸又はその塩の毛髪内への浸透を促進する観点から、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは2.8以上であり、また好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。成分(B)及び成分(C)が一定量毛髪に浸透しつつ、毛髪や頭皮へのダメージをより一層低減する観点、及び第二の毛髪処理剤を毛髪に塗布する際の感触を良好にし、毛髪に塗りやすくする観点からは、第二の毛髪処理剤のpHは前記範囲の中でも、5超がより好ましく、6以上が更に好ましい。一方、成分(B)及び成分(C)の浸透性の向上という観点からは、第二の毛髪処理剤は酸性であることが好ましい。この両方の観点を考慮した場合には、第二の毛髪処理剤のpHは、好ましくは7.5以下、より好ましくは7.0以下、更に好ましくは6.5以下、更に好ましくは6.0以下であり、また、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。なお、上記組成物のpHは、25℃の温度条件下においてpHメーターで測定した値とする。
【0074】
第二の毛髪処理剤が二剤式毛髪処理剤である場合において、第1剤及び第2剤のうち成分(B)を含有する組成物のpHは、毛髪処理剤として一般的に使用できる範囲であればどのような範囲でもよいが、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは3.5以上、更に好ましくは4以上、更に好ましくは5以上であり、かつ、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。成分(B)及び成分(C)が一定量毛髪に浸透しつつ、毛髪や頭皮へのダメージをより一層低減する観点、及び上記組成物を毛髪に塗布する際の感触を良好にし、組成物を毛髪に塗りやすくする観点からは、上記組成物のpHは前記範囲の中でも、5超がより好ましく、6以上が更に好ましい。一方、成分(B)及び成分(C)の浸透性の向上の観点からは、上記組成物は酸性が好ましい。前記両方の観点を考慮した場合には、上記組成物のpHは、好ましくは7以下、より好ましくは5以下であり、また、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。なお、上記組成物のpHは、25℃の温度条件下においてpHメーターで測定した値とする。
【0075】
第二の毛髪処理剤が二剤式毛髪処理剤である場合において、第1剤及び第2剤のうち成分(D)を含有する組成物のpHは、工程[C]における成分(C)の芳香族スルホン酸又はその塩の毛髪内への浸透を阻害しないという観点から、好ましくは7.5以下、より好ましくは7.0以下であり、工程[C]における成分(C)の毛髪内への浸透を促進する観点から、更に好ましくは6.5以下であり、更に好ましくは6.0以下である。また、上記組成物のpHは、工程[C]における成分(C)の芳香族スルホン酸又はその塩の毛髪内への浸透を促進する観点及び皮膚への刺激性を抑制する観点から、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは2.8以上である。なお、第二の毛髪処理剤のpHは、25℃の温度条件下においてpHメーターで測定した値とする。
【0076】
●第三の毛髪処理剤(工程[C]で使用)
〔成分(C):分子量300以下の芳香族スルホン酸又はその塩〕
第三の毛髪処理剤が含有する成分(C)の分子量が300以下の芳香族スルホン酸又はその塩としては、例えばナフタレンスルホン酸類、アズレンスルホン酸類、ベンゾフェノンスルホン酸類、ベンゼンスルホン酸類等が挙げられる。
【0077】
ナフタレンスルホン酸類としては、例えば下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0078】
【化5】
【0079】
〔式中、A1~A8のうち1以上はスルホ基又はその塩を示し、残余は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、カルボキシ基、低級アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルケニル基、低級アルコキシ基、ホルミル基、アシル基、置換基を有していてもよいフェニルアゾ基又は-N(R')(R'')(R'及びR''は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、フェニル基、ベンジル基又はアシル基)を示す。〕
【0080】
このナフタレンスルホン酸類の具体例としては、1-又は2-ナフタレンスルホン酸(α-又はβ-ナフタレンスルホン酸)、2,7-ナフタレンジスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、2,6-ナフタレンジスルホン酸、1-ナフトール-2-スルホン酸、1-ナフトール-4-スルホン酸、2-ナフトール-6-スルホン酸、2-ナフトール-7-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸、1,7-ジヒドロキシナフタレン-3-スルホン酸、クロモトロープ酸(4,5-ジヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸)、3,6-ジヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホン酸、S酸(1-アミノ-8-ナフトール-4-スルホン酸)、ガンマ酸(2-アミノ-8-ナフトール-6-スルホン酸)、J酸(2-アミノ-5-ナフトール-7-スルホン酸)、1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸、1-ナフチルアミン-4-スルホン酸、ブロエナーズ酸(2-ナフチルアミン-6-スルホン酸)、クレーブズ酸(1-ナフチルアミン-7-スルホン酸)、2-ナフチルアミン-1-スルホン酸、1-ナフチルアミン-6-スルホン酸、1-ナフチルアミン-8-スルホン酸、2,7-ジアミノ-1-ナフトール-3-スルホン酸、7,8-ジアミノ-1-ナフトール-3-スルホン酸、分子量300以下のナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、6-メチル-2-ナフタレンスルホン酸、4-エチル-1-ナフタレンスルホン酸、5-イソプロピル-1-ナフタレンスルホン酸、5-ブチル-2-ナフタレンスルホン酸及びそれらの塩等が挙げられる。
【0081】
アズレンスルホン酸類の具体例としては、例えばグアイアズレンスルホン酸、1-アズレンスルホン酸、3-アセチル-7-イソプロピル-1-アズレンスルホン酸、3-(2-ヒドロキシエチル)-7-イソプロピル-1-アズレンスルホン酸、3-メチル-7-イソプロピル-1-アズレンスルホン酸、7-イソプロピル-1-アズレンスルホン酸、3-フェニル-6-イソプロピル-1-アズレンスルホン酸、1,4-ジメチル-7-イソプロピル-2-アズレンスルホン酸、4-エトキシ-3-エチル-6-イソプロピル-1-アズレンスルホン酸、1,3-アズレンジスルホン酸、4,6,8-トリメチル-1,3-アズレンジスルホン酸、3-ホルミル-4,6,8-トリメチル-1-アズレンスルホン酸及びそれらの塩等が挙げられる。
【0082】
ベンゾフェノンスルホン酸類としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0083】
【化6】
【0084】
〔式中、A11~A20のうち1以上はスルホ基又はその塩を示し、残余は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルコキシ基又はアシル基を示す。〕
【0085】
このベンゾフェノンスルホン酸類の具体例としては、オキシベンゼンスルホン酸、o-クロロベンゾフェノンスルホン酸、p-クロロベンゾフェノンスルホン酸、2-ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、2-アミノベンゾフェノンスルホン酸、4-アミノベンゾフェノンスルホン酸、2-メチルベンゾフェノンスルホン酸、4-メトキシベンゾフェノンスルホン酸、4,4'-ジメチルベンゾフェノンスルホン酸、4,4'-ジメトキシベンゾフェノンスルホン酸、及びそれらの塩等が挙げられる。
【0086】
ベンゼンスルホン酸類としては、例えば下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0087】
【化7】
【0088】
〔式中、A21~A26のうち1以上はスルホ基又はその塩を示し、残余は水素原子、低級アルキル基を示す。〕
【0089】
ベンゼンスルホン酸類の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホン酸及びそれらの塩等が挙げられる。
【0090】
以上の芳香族スルホン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩(NH4+)、有機アンモニウム塩等が挙げられる。
【0091】
成分(C)の芳香族スルホン酸又はその塩としては、毛髪内部の弾性を向上させ、さらに毛髪径を均一化し、毛髪を絡まりにくくする観点から、一般式(3)で表されるナフタレンスルホン酸類、一般式(4)で表されるベンゾフェノンスルホン酸類、一般式(5)で表されるベンゼンスルホン酸類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、更には2-ナフタレンスルホン酸(β-ナフタレンスルホン酸)、1-ナフタレンスルホン酸(α-ナフタレンスルホン酸)、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸(オキシベンゾン-5)及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。なかでも、上記観点から、1-又は2-ナフタレンスルホン酸(α-又はβ-ナフタレンスルホン酸)又はその塩が更に好ましい。
【0092】
これらの芳香族スルホン酸又はその塩は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。第三の毛髪処理剤中における成分(C)の含有量は、成分(C)の毛髪への浸透を促進させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、かつ、毛髪処理後の手触りの軽さ及び毛髪の絡まりにくさを向上させる観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0093】
〔成分(F):増粘剤〕
第三の毛髪処理剤は、塗布後の水分揮散速度を抑制し、毛髪内への成分(C)の浸透を促進させるという観点から、更に前述の成分(F)の増粘剤を含有することが好ましい。増粘剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。第三の毛髪処理剤中における成分(F)の含有量は、毛髪内への成分(C)の浸透を促進して、自然な塗布性を付与する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、かつ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0094】
〔成分(E):芳香族アルコール〕
第三の毛髪処理剤は、成分(C)の毛髪への浸透を促進させる観点から、更に成分(E)として芳香族アルコールを含有することができる。このような芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、フェネチルアルコール、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール等が挙げられる。これらのうち、芳香族スルホン酸との相溶性の観点から、ベンジルアルコール、2-ベンジルオキシエタノールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ベンジルアルコールがより好ましい。
【0095】
これらの芳香族アルコールは、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。第三の毛髪処理剤中における成分(E)の含有量は、毛髪内部の弾性を向上させ、さらに毛髪径を均一化し、美しいカールを付与すると共に、毛髪の絡まりにくさを向上する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、かつ、同様の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0096】
第三の毛髪処理剤において、成分(E)に対する成分(C)の質量比(C)/(E)は、処方安定性の観点から、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.35以上、更に好ましくは0.5以上であり、かつ、同様の観点から、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.8以下、更に好ましくは1以下、更に好ましくは0.75、更に好ましくは0.7以下である。
【0097】
〔成分(G):有機溶剤〕
第三の毛髪処理剤には、更に成分(G)として、以下の一般式(G-1)で表される有機溶剤を含有してもよい。
【0098】
2-(OCH2CH2)q-R3 (G-1)
〔式中、R2は水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、R3は水素原子又は水酸基を示し、qは0以上5以下の整数を示す。ただし、qが0である場合にはR2及びR3は水素原子ではない。〕
【0099】
このような成分(G)としては、炭素数1以上4以下の1価のアルコール、R2が炭素数1以上5以下の直鎖又は分岐のアルキルでqが1以上5以下の整数であるエチレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。具体的にはエタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
【0100】
処理後の毛髪の螺旋率、カールの均一性、カールの絡まりにくさを向上する観点から、第三の毛髪処理剤中における成分(G)の含有量は少ない方が好ましく、成分(G)を含有しないこと、すなわち含有量が0質量%であることがより好ましい。具体的には、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
【0101】
〔成分(H):多価アルコール〕
第三の毛髪処理剤には、更に成分(H)として多価アルコールを含有させることができる。多価アルコールとしては、炭素数2~20のもの、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール類;グリセリン、成分(d2)以外のポリグリセリン等のグリセリン類;キシリット、マンニット、ガラクチット、ソルビット等の糖アルコール類;その他トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらの中でも、処理後の毛髪の螺旋率、カールの均一性、カールの絡まりにくさを向上する観点から、アルキレングリコール類が好ましく、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0102】
〔高分子界面活性剤〕
第三の毛髪処理剤は、処理後の毛髪の螺旋率、カールの均一性、カールの絡まりにくさを向上する観点から、更に高分子界面活性剤を含有することもできる。高分子界面活性剤としては、ポリシリコーン-9のようなオキサゾリン変性シリコーンや、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン型界面活性剤が好ましい。
【0103】
〔水〕
第三の毛髪処理剤も、成分(C)を毛髪内部に十分に浸透させる観点から、水を溶媒とすることが好ましい。
【0104】
〔pH〕
第三の毛髪処理剤のpHは、毛髪処理剤として一般的に使用できる範囲であればどのような範囲でもよいが、毛髪や頭皮へのダメージを与えない観点から、pH3以上10以下であることが好ましく、3.5以上8以下であることがより好ましい。処理後に高い螺旋率を有する毛髪に改質し、第三の毛髪処理剤を毛髪に塗布する際の感触を良好にし、組成物を毛髪に塗りやすくする観点からは、第三の毛髪処理剤のpHは5以上8以下がより好ましい。なお、第三の毛髪処理剤のpHは、イオン交換水で10倍希釈したものを、25℃の温度条件下においてpHメーターで測定した値とする。
【0105】
第一~第三の毛髪処理剤のいずれも、毛髪への化学的ダメージを抑制する観点から、更に毛髪還元剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明は、毛髪内の蛋白質のS-S結合の切断によらず毛髪の変形を可能とした点に特徴があり、還元剤を用いて毛髪内の蛋白質のS-S結合を切断することで毛髪を変形させるパーマ剤とは全く異なる技術である。毛髪還元剤としては、チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、システイン、アセチルシステイン等のチオール、亜硫酸水素及びその塩が挙げられる。
【0106】
なお、本発明において、「実質的に含有しない」とは、毛髪処理剤中における対象化合物の含有量が、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満であることをいい、更に好ましくは、毛髪処理剤中に対象化合物を含有しないことをいう。
【0107】
●毛髪処理方法
本発明の毛髪処理方法における第一の態様は、以下の[A-1]、[B]及び[C]を、工程[A-1]→工程[B]→工程[C]の順で、又は工程[B]→工程[A-1]→工程[C]の順で行うことによって実施される。
【0108】
工程[A-1]:毛髪に第一の毛髪処理剤を適用し、毛髪をすすぎ流す工程
工程[B]:毛髪に第二の毛髪処理剤を適用する工程
工程[C]:毛髪に第三の毛髪処理剤を適用する工程
【0109】
また、本発明の毛髪処理方法における第二の態様は、以下の工程[A-2]、[B]及び[C]を含み、工程[A-2]→工程[B]→工程[C]の順で、又は工程[B]→工程[A-2]→工程[C]の順で行うことによって実施される。
工程[A-2]:毛髪に第一の毛髪処理剤を適用する工程
工程[B]:毛髪に第二の毛髪処理剤を適用する工程
工程[C]:毛髪に第三の毛髪処理剤を適用する工程
【0110】
工程[A-1]、工程[A-2]及び工程[B]のうち最初に行う工程の前に、毛髪損傷を防止する観点から、手や、くし、ブラシ等の道具を用いて毛髪の絡まりを解くことが好ましい。また、前記最初の工程の前に、毛髪を洗浄しても、洗浄しなくてもよいが、毛髪を洗浄する工程を含む場合、洗浄には市販のシャンプー等を使用することができる。
【0111】
〔工程[A-1]:第一の毛髪処理剤を毛髪に適用した後、毛髪をすすぎ流す工程〕
第一の態様における工程[A-1]は、第一の毛髪処理剤を毛髪に適用した後、すすぎ流す工程であり、最初に行っても、工程[B]の後に行ってもよい。第一の毛髪処理剤が成分(A1)の有機酸を含有することにより、毛髪中に存在するカルシウムイオンを毛髪外に放出することができ、その結果、第二の毛髪処理剤、第三の毛髪処理剤による毛髪処理の効果をより発揮させることができる。
【0112】
〔工程[A-2]:第一の毛髪処理剤を毛髪に適用する工程〕
第二の工程における工程[A-2]は、第一の毛髪処理剤を毛髪に適用する工程であり、最初に行っても、工程[B]の後に行ってもよい。第一の毛髪処理剤が成分(A2)の有機酸を含有することにより、毛髪中に存在するカルシウムイオンを毛髪外に放出することができ、その結果、第二の毛髪処理剤、第三の毛髪処理剤による毛髪処理の効果をより発揮させることができる。
【0113】
工程[A-1]、及び工程[A-2]において毛髪に適用する第一の毛髪処理剤の量は、毛髪の質量に対する浴比(毛髪処理剤の質量/毛髪の質量)で、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、かつ、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0114】
第一の毛髪処理剤を毛髪に適用後、頭髪全体になじませるには、毛髪に組成物を揉み込む、毛髪に手グシを通す等の手を用いる方法、刷毛、くし、ブラシ等の道具を用いる方法、及びその両者の組み合わせ等によればよい。
【0115】
更に、第一の工程における工程[A-1]では、第一の毛髪処理剤を毛髪に適用した後、毛髪内部に蓄積されたカルシウムを毛髪外へと放出するため、すすぎ流すことが必要であり、すすぎ流した後の毛髪は乾燥させてもよく、乾燥させなくてもよい。
【0116】
一方、第二の工程における工程[A-2]では、第一の毛髪処理剤を毛髪に適用した後にすすぎ流してもよく、又はすすぎ流さなくてもよい。
【0117】
〔工程[B]:第二の毛髪処理剤を毛髪に適用する工程〕
工程[B]は第二の毛髪処理剤を毛髪に適用する工程であり、最初に行っても、工程[A-1]又は工程[A-2]の後に行ってもよい。第二の毛髪処理剤が成分(B)を含有することにより、第三の毛髪処理剤に含まれている成分(C)の毛髪内部への浸透を促進することができる。更に、第二の毛髪処理剤は、成分(B)に加え成分(D)を含有することが好ましく、これにより、処理後の毛髪の螺旋率、カールの均一性、カールの絡まりにくさを改善するといった効果の耐洗髪性を向上させることができる。
【0118】
工程[B]の具体的手順について、毛髪処理剤の形態別に示せば、以下のとおりである。以下の毛髪に対する処理方法の記載において、単に「毛髪処理剤」というときは、実際に毛髪に適用される組成物を指すものとし、一剤式毛髪処理剤、単回適用型の二剤式毛髪処理剤の第1剤と第2剤の混合物、逐次適用型の二剤式毛髪処理剤の第1剤及び第2剤のいずれをもいうものとする。
【0119】
・第二の毛髪処理剤が一剤式毛髪処理剤の場合
工程[B-a]:一剤式毛髪処理剤を毛髪に塗布する工程
【0120】
第二の毛髪処理剤が、成分(B)及び(D)を含有する場合のほか、成分(B)のみを含有し、成分(D)を含有しない場合もこのタイプとなる。
【0121】
・第二の毛髪処理剤が単回適用型の二剤式毛髪処理剤の場合
工程[B-b]:二剤式毛髪処理剤の第1剤と第2剤とを混合し、毛髪に塗布する工程
【0122】
・第二の毛髪処理剤が逐次適用型の二剤式毛髪処理剤の場合
工程[B-c]:二剤式毛髪処理剤の第1剤を毛髪に塗布し、その後、二剤式毛髪処理剤の第2剤を毛髪の第1剤塗布部の上に重ねて塗布する工程
【0123】
工程[B-a]、工程[B-b]及び工程[B-c]に共通する事項
上記のいずれの場合も、第二の毛髪処理剤は乾燥した毛髪に対して適用しても、濡れた毛髪に対して適用してもよいが、乾燥した毛髪に適用することが好ましい。処理の対象となる毛髪は、頭髪の全部でも、その一部でも構わない。
【0124】
工程[B]において毛髪に適用する第二の毛髪処理剤の量は、毛髪の質量に対する浴比(毛髪処理剤の質量/毛髪の質量)で、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.25以上であり、かつ、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.25以下、更に好ましくは1.0以下である。
【0125】
第二の毛髪処理剤を毛髪に適用後、頭髪全体になじませるには、毛髪に組成物を揉み込む、毛髪に手グシを通す等の手を用いる方法、刷毛、くし、ブラシ等の道具を用いる方法、及びその両者の組み合わせ等によればよい。
【0126】
工程[B-a]及び工程[B-b]の場合
一剤式毛髪処理剤又は単回適用型の二剤式毛髪処理剤を用いる場合、すなわち前記工程[B-a]又は工程[B-b]の場合には、成分(B)と成分(D)とが毛髪に同時に適用され、両成分の適用間に放置時間を設ける必要がない。このため、これらの態様は施術時間の短縮の観点から好ましい。
【0127】
工程[B-c]の場合
逐次適用型の二剤式毛髪処理剤を用いる場合、前述の条件に従って第1剤を毛髪に適用した後、前述の条件に従って第2剤を毛髪に適用すればよいが、第1剤を適用した部分に第2剤を適用することが好ましい。この第1剤と第2剤のどちらが成分(B)を含有し他方が成分(D)を含有するものであっても、その逆でもよい。すなわち、成分(B)を含有する第1剤を毛髪に塗布し、その後、成分(D)を含有する第2剤を毛髪の第1剤塗布部の上に重ねて塗布してもよいし、成分(D)を含有する第1剤を毛髪に塗布し、その後、成分(B)を含有する第2剤を毛髪の第1剤塗布部の上に重ねて塗布してもよい。
【0128】
逐次適用型の二剤式毛髪処理剤を用いる場合、第1剤を毛髪に適用した後、第2剤を毛髪に適用する前に、更に下記工程[b2]を有することが好ましい。
工程[b2]:毛髪を15℃以上100℃以下で15秒以上60分以下放置する工程
【0129】
工程[b2]で放置する際の温度は、15℃以上であって、かつ、100℃以下であって、好ましくは60℃以下、より好ましくは30℃以下である。毛髪処理の際に特別な装置を必要とせず、簡便に処理する点からは、15℃以上30℃未満、すなわち室温であることが好ましい。一方、放置時間をより短くする観点からは、ヒーター等で加温しながら放置することもでき、この場合の温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上であり、かつ、100℃以下、より好ましくは60℃以下である。
【0130】
工程[b2]で放置する時間は、処理後の毛髪の螺旋率、カールの均一性、カールの絡まりにくさを向上する観点から、15秒以上であって、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、かつ、60分以下であって、好ましくは45分以下、より好ましくは30分以下である。前述のようにヒーター等で加熱しながら放置する場合には、放置時間をより一層短くすることができ、この場合の放置時間は、15秒以上であって、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、かつ、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下、更に好ましくは15分以下である。
【0131】
本発明において、工程[b2]における放置時間は、第1剤を毛髪に適用した後、次の工程、すなわち放置する工程以外の工程までの時間を意味する。
【0132】
一般的に、毛髪内への成分の浸透は加熱条件下で長時間放置した方が有利であるところ、本発明は室温下で短時間の放置であっても発明の効果が得られる点で優れている。
【0133】
工程[b2]は、水分の蒸発が抑制される環境下で行われることが好ましい。水分の蒸発を抑制する具体的手段としては、第1剤が適用された毛髪を、プラスチックフィルム、キャップ等で覆う方法、過熱水蒸気等の水蒸気を毛髪に継続的に噴霧する方法等が挙げられる。
【0134】
放置後、第2剤を適用する前に、毛髪から第1剤をすすぎ流してもよく、すすぎ流さなくてもよい。また、放置後、毛髪をすすぎ流す場合は、すすぎ流した後、第2剤を適用する前に毛髪を乾燥させてもよく、乾燥させなくてもよい。また、すすぎ流した後、他の組成物を適用する前に、手や、くし、ブラシ等の道具を用いて毛髪の絡まりを解いても、解かなくてもよい。
【0135】
工程[b2]で放置した後は、前記条件に従って第2剤を毛髪に適用すればよい。
【0136】
〔工程[b1]:工程[B]の後、毛髪を15℃以上100℃以下で15秒以上60分以下放置する工程〕
工程[B]の後には、工程[B]が最初の工程である場合は放置することなく工程[A-1]又は工程[A-2]を行ってもよく、また工程[B]が工程[A-1]又は工程[A-2]に次いで行われる工程である場合は放置することなく工程[C]を行ってもよいが、以下の工程[b1]を行ってもよい。
工程[b1]:工程[B]の後、毛髪を15℃以上100℃以下で15秒以上60分以下放置する工程
【0137】
工程[b1]で放置する際の温度は、15℃以上であって、かつ、100℃以下であって、好ましくは60℃以下、より好ましくは30℃以下である。毛髪処理の際に特別な装置を必要とせず、簡便に処理する点からは、15℃以上30℃未満、すなわち室温であることが好ましい。一方、放置時間をより短くする観点からは、ヒーター等で加温しながら放置することもでき、この場合の温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上であり、かつ、100℃以下、より好ましくは60℃以下である。
【0138】
工程[b1]で放置する時間は、処理後の毛髪の螺旋率、カールの均一性、カールの絡まりにくさを向上する観点から、15秒以上であって、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、かつ、60分以下であって、好ましくは45分以下、より好ましくは30分以下である。前述のようにヒーター等で加熱しながら放置する場合には、放置時間をより一層短くすることができ、この場合の放置時間は、15秒以上であって、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、かつ、好ましくは30分以下、より好ましくは15分以下、更に好ましくは10分以下である。
【0139】
本発明において、工程[b1]における放置時間は、第二の毛髪処理剤を毛髪に適用した後、次の工程、すなわち放置する工程以外の工程までの時間を意味する。
【0140】
一般的に、毛髪内への成分の浸透は加熱条件下で長時間放置した方が有利であるところ、本発明は室温下で短時間の放置であっても発明の効果が得られる点で優れている。
【0141】
工程[b1]は、水分の蒸発が抑制される環境下で行われることが好ましい。水分の蒸発を抑制する具体的手段としては、工程[B]で第二の毛髪処理剤が適用された毛髪を、プラスチックフィルム、キャップ等で覆う方法、過熱水蒸気等の水蒸気を毛髪に継続的に噴霧する方法等が挙げられる。
【0142】
工程[b1]の後、次の工程(すなわち、前述の工程[C]、工程[A-1]又は工程[A-2])の前に毛髪から第二の毛髪処理剤をすすぎ流してもよく、すすぎ流さなくてもよい。また、工程[b1]の後、次の工程の前に毛髪をすすぎ流す場合は、すすぎ流した後、次の工程を行う前に毛髪は乾燥させてもよく、乾燥させなくてもよい。また、すすぎ流した後、次の工程を行う前に、手や、くし、ブラシ等の道具を用いて毛髪の絡まりを解いても、解かなくてもよい。なお、工程[b1]の後、次の工程の前に、毛髪を洗浄する工程を有していてもよい。
【0143】
〔工程[C]:成分(C)を含有する第三の毛髪処理剤を毛髪に適用する工程〕
工程[C]において、毛髪に適用する第三の毛髪処理剤の量は、毛髪処理後の処理後の毛髪の螺旋率、カールの均一性、カールの絡まりにくさを向上する観点から、毛髪の質量に対する浴比(毛髪処理剤の質量/毛髪の質量)で、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、かつ、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.25以下、更に好ましくは1.0以下である。処理の対象となる毛髪は、頭髪の全部でも、その一部でも構わないが、工程[B]で第二の毛髪処理剤を適用した部分に、第三の毛髪処理剤を適用することが好ましい。
【0144】
第三の毛髪処理剤を毛髪に適用後、頭髪全体になじませるには、毛髪と剤をもみ込む、手グシを通す等の手を用いる方法、刷毛、くし、ブラシ等の道具を用いる方法、及びその両者の組み合わせ等によればよい。
【0145】
本発明の毛髪処理方法においては、前記工程[A-1]、工程[A-2]、工程[B]、工程[C]を、各工程同士が重複することなく、工程[A-1]又は工程[A-2]→工程[B]→工程[C]の順で、又は工程[B]→工程[A-1]又は工程[A-2]→工程[C]の順で行う方法のみならず、工程[A-1]、工程[B]、工程[C]の2つ又は3つの工程、或いは工程[A-2]、工程[B]、工程[C]の2つ又は3つの工程が、部分的に同時に行われる態様をも含むものである。
【0146】
すなわち、工程[A-1]→工程[B]→工程[C]の順で行う場合を例に挙げると、工程[A-1]を毛髪の一部に行い、この箇所に工程[B]を行いつつ、工程[A-1]を行っていない毛髪の箇所に工程[A-1]を行ってもよい。その後更に、工程[A-1]を行っていない毛髪の箇所に工程[A-1]を行う場合には、工程[B]を終えた毛髪の箇所には工程[C]が行われ、工程[A-1]を終えた毛髪の箇所には工程[B]が行われる。この場合は、工程[A-1]、工程[B]、工程[C]が同時に行われることになる。要は、各工程が、処理される毛髪の部位ごとに、工程[A-1]又は工程[A-2]→工程[B]→工程[C]の順で、又は工程[B]→工程[A-1]又は工程[A-2]→工程[C]の順で行われればよい。
【0147】
〔工程[c1]:工程[C]の後、毛髪を放置する工程〕
工程[C]の後に、毛髪をすすぎ流しても、すすぎ流さなくてもよいが、処理後の毛髪の手触りの軽さ、絡まりにくさを良好にする観点から、すすぎ流した方が好ましい。また、本発明は工程[C]の後に、毛髪を洗浄する工程を有していてもよい。
【0148】
工程[C]の後に、毛髪をすすぎ流す場合には、本発明の効果を十分に得る観点から工程[C]と、毛髪をすすぎ流す工程の間に、更に以下の工程[c1]を行うことが好ましい。
工程[c1]:工程[C]で第三の毛髪処理剤を適用した毛髪を15℃以上100℃以下で1分以上60分以下放置する工程
【0149】
工程[c1]で放置する際の温度は15℃以上であって、かつ、100℃以下であって、好ましくは60℃以下、より好ましくは30℃以下である。毛髪処理の際に特別な装置を必要とせず、簡便に処理する点からは、15℃以上30℃未満、すなわち室温であることが好ましい。一方、放置時間をより短くする観点からは、ヒーター等で加温しながら放置することもでき、この場合の温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上であり、かつ、100℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは45℃以下である。
【0150】
工程[C]で第三の毛髪処理剤を塗布した後、工程[c1]において放置する時間は、くせ毛を緩和しつつ毛髪に柔らかな感触を与え、毛髪の毛流れをそろえ、まとまりを与える観点から、1分以上であって、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、かつ、60分以下であって、好ましくは45分以下、より好ましくは30分以下である。前述のようにヒーター等で加熱しながら放置する場合には、放置時間をより一層短くすることができ、この場合の放置時間は、1分以上であって、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは10分以上であり、かつ、好ましくは30分以下、より好ましくは15分以下である。
【0151】
本発明において、工程[c1]における放置時間は、工程[C]で第三の毛髪処理剤を毛髪に塗布した後、次の工程、すなわち放置する工程以外の工程までの時間を意味する。
【0152】
一般的に、毛髪内への成分の浸透は加熱条件下で長時間放置した方が有利であるところ、本発明は室温下で短時間の放置であっても発明の効果が得られる点で優れている。本発明の毛髪処理方法では、工程[B]で第二の毛髪処理剤をあらかじめ毛髪に適用することで毛髪の特性が変化すること、及び成分(C)の毛髪内部への浸透が促進されることにより、このような効果が得られるものと推測する。
【0153】
工程[c1]は、水分の蒸発が抑制される環境下で行われることが好ましい。水分の蒸発を抑制する具体的手段としては、第三の毛髪処理剤が適用された毛髪を、プラスチックフィルム、キャップ等で覆う方法、過熱水蒸気等の水蒸気を毛髪に継続的に噴霧する方法等が挙げられる。
【0154】
また、工程[c1]の後に毛髪をすすぎ流す工程を行う場合、その後に毛髪を洗浄する工程を含むことができる。毛髪を洗浄する工程を含む場合、洗浄には市販のシャンプー等を使用することができる。また、毛髪の洗浄後には市販のコンディショナー、トリートメント等で処理する工程を含むことができる。
【0155】
毛髪をすすぎ流す工程の後に毛髪を乾燥させても、乾燥させなくてもどちらでもよいが、毛髪へのダメージを防ぐ観点から、乾燥させることがより好ましい。乾燥は、自然乾燥、ドライヤー等による加熱乾燥等により行うことができるが、施術時間の短縮の観点から、加熱乾燥が好ましい。また、まとまり性をより向上し、毛髪損傷を防止する観点から、乾燥工程前乾燥工程中及び/又は乾燥工程後に、適宜毛髪を手や、くし、ブラシ等の道具を用いて絡まりを解くことが好ましい。
【0156】
本発明の毛髪処理方法は、還元剤を用いたパーマ処理や、強アルカリ性の毛髪処理剤を用いたいわゆるリラクサー処理とは全く異なる原理によって毛髪のカールの位相を揃えることを可能とする技術であるので、還元剤を含む毛髪処理剤やpH12~14の毛髪処理剤を髪に適用するステップは含まない。このため、本発明の毛髪処理方法は、髪を傷めることなく毛髪を変形させることができる。
【0157】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
下記工程1~6を順に行う毛髪処理方法。
1.下記成分(A)を含有する第一の毛髪処理剤を毛髪に塗布した後、シャンプーを用いて洗髪し、水ですすぎ流す工程
(A):コハク酸 4.5~6質量%
2.タオルドライにより水分を除去する工程
3.下記成分(B)、(D)、(E)及び(G)を含有する第二の毛髪処理剤40~80gを毛髪に塗布してなじませる工程
(B):リンゴ酸及び/又は乳酸 1~15質量%
(D):グリシルグリシン及び/又はイソステアリルグリセリルエーテル 0.8~6質量%
(E):フェノキシエタノール及び/又はベンジルアルコール 0.4~6質量%
(G):エタノール 12.5~22質量%
4.第二の毛髪処理剤を塗布した上から、下記成分(C)及び(E)を含有する第三の毛髪処理剤40~80gを毛髪に塗布してなじませる工程
(C):ナフタレンスルホン酸ナトリウム及び/又はキシレンスルホン酸ナトリウム 2.5~10質量%
(E):ベンジルアルコール 2~10質量%
5.第三の毛髪処理剤を塗布した毛髪を40~45℃に加温して10~30分放置する工程
6.毛髪を水ですすぎ流す工程
【実施例1】
【0158】
実施例1~13、比較例1~5
表2~5に示す第一~第三の毛髪化粧料を用い、下記手順に従ってカーリー毛を処理し、下記方法に従って、処理前後における、カーリー毛の螺旋率、束幅及び絡まりにくさについて評価した。これらの結果を表2~5に併せて示す。
【0159】
(評価用毛束)
化学処理履歴の無いコーカシアン人のカーリー毛(Kerling Corp.より購入)を用いて、毛髪を引っ張ってまっすぐに伸ばした際の長さが15cm、重さが0.25gの毛束を作製した。
【0160】
(毛髪処理手順)
a-1.評価用毛束に工程[A-1]用毛髪処理剤(第一の毛髪処理剤)を0.5g塗布し、毛髪上に均一になじませた後に放置し、その後、40℃の水道水で30秒すすぎ流し、タオルドライした。
a-2.工程[B]用毛髪処理剤(第二の毛髪処理剤)を0.25g塗布し、毛髪上に均一になじませた後に、毛髪全体をラップで覆って密封し、40℃に加温しながら5分間静置した。
a-3.ラップを外し、毛束をすすがずに更に工程[C]用毛髪処理剤(第三の毛髪処理剤)を0.25g塗布しなじませた後に、再度毛束全体をラップで覆って密封し、室温で10分静置した。
a-4.ラップを外し、40℃の水道水で30秒すすぎ流した。
a-5.処理後の毛束(40℃の水道水で30秒すすぎ流した状態)を60gのエタノールに10秒間浸漬させた。
a-6.板羽を装着した攪拌機(IKA-Werka社製)に前記手順5の毛束を固定し、150rpmで18分間回転させ、乾燥させた。
【0161】
<カーリー毛の螺旋率>
(処理直後の螺旋率算出方法)
b-1.前記処理手順a-6の乾燥後の毛束において、固定部から毛先までカールしている部分の数を計測し、合計カール数とした。
b-2.毛束がタオルに対して垂直になるように、毛先からゆっくりと毛束を下ろしていき、カールの方向が揃い螺旋状になっているカールとカールの方向が反転し螺旋状になっていないカールとを判別した。
b-3.前記手順b-2の判別結果に基づき、螺旋状になっているカールの数を計測し、下記の式でカーリー毛の螺旋率を算出した。
【0162】
螺旋率(%)=螺旋状カールの数/合計カール数×100
【0163】
(耐洗髪性評価方法)
c-1.前記処理手順a-4の毛束を市販のシャンプーで30秒間泡立て、40℃の水道水で30秒すすぎ流した。
c-2.前記処理手順a-5~a-6と同様の工程で毛髪を乾燥させ、前記b-1~b-3と同様に螺旋率を算出した。
c-3.上記c-1及びc-2の工程を10回繰り返し、螺旋率を算出した。評価はそれぞれ3種の毛束を使用し、その平均値を算出し、カーリー毛の螺旋率に関する耐洗髪性とした。
【0164】
<カーリー毛の束幅>
(処理直後の束幅算出方法)
d-1.前記処理手順a-6の乾燥後の毛束において、隣接する二つのカール部の中間に位置する任意の3点の束幅を計測した。
d-2.同様にして、合計3つの毛束における任意の3点の束幅を計測し、合計9点の束幅の平均値を算出し、処理直後のカーリー毛の束幅とした。
【0165】
(耐洗髪性評価方法)
e-1.前記処理手順a-4の毛束を市販のシャンプーで30秒間泡立て、40℃の水道水で30秒すすぎ流した。
e-2.前記処理手順a-5~a-6と同様の工程で毛髪を乾燥させ、前記d-1~d-2と同様に毛髪の束幅を算出した。
e-3.上記e-1及びe-2の工程を10回繰り返し、その平均値をカーリー毛の束幅に関する耐洗髪性として評価した。
【0166】
<カーリー毛の絡まりにくさ>
(処理直後の絡まりにくさ評価方法)
f-1.前記処理手順a-6の乾燥後の毛束に関して、毛髪の絡まりにくさを、下記のとおり作製したモデルトリートメント処理毛を基準毛として、7名のパネラーに「基準毛より絡まりにくい」/「どちらともいえない」/「基準毛より絡まりやすい」のいずれであるのかを択一的に選択させた。
f-2.「基準毛より絡まりにくい」/「どちらともいえない」/「基準毛より絡まりやすい」と答えたパネラーの人数をそれぞれ計測し、処理直後のカーリー毛の絡まりにくさとして評価した。
【0167】
(耐洗髪性評価方法)
g-1.前記処理手順a-4の毛束を市販のシャンプーで30秒間泡立て、40℃の水道水で30秒すすぎ流した。
g-2.前記処理手順a-5~a-6と同様の工程で毛髪を乾燥させ、前記f-1~f-2と同様にカーリー毛の絡まりにくさを評価した。
g-3.上記g-1及びg-2の工程を10回繰り返し、その平均値をカーリー毛の絡まりにくさに関する耐洗髪性として評価した。
【0168】
(モデルトリートメント処理毛の作製方法)
h-1.前記処理手順a-6の乾燥後の毛束を市販シャンプーで洗浄した後、表1に示す処方のモデルトリートメントを1g塗布した。
h-2.30分静置後、40℃の水道水で30秒すすぎ流した後に、前記処理手順a-5~a-6と同様の手順で毛髪を乾燥させ、モデルトリートメント処理毛とした。
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
【表4】
【0173】
【表5】