(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】インク組成物及び当該インク組成物の印刷方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20240322BHJP
C09D 11/023 20140101ALI20240322BHJP
B41M 1/06 20060101ALI20240322BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/023
B41M1/06
B41M1/30 D
(21)【出願番号】P 2020041650
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-03-03
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・クラリッジ
(72)【発明者】
【氏名】ナヴィーン・チョプラ
(72)【発明者】
【氏名】ビビー・エスター・エイブラハム
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-120905(JP,A)
【文献】特開2015-120902(JP,A)
【文献】特開昭57-010663(JP,A)
【文献】特開2013-064082(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03336150(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
B41M 1/06
B41M 1/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク組成物であって、
少なくとも1つのスルホン化ポリエステルと、
少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーと、
少なくとも2つの2000~5000の範囲の重量平均分子量を有するウレタンアクリレートオリゴマーと、
少なくとも1つの光開始剤と、
少なくとも1つの着色剤と、
水と、を含む、インク組成物。
【請求項2】
前記スルホン化ポリエステルが、3モルパーセント~15モルパーセントのスルホン化度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記スルホン化ポリエステルが、以下の構造を有する式Iのポリマー単位、式IIのポリマー単位、及び架橋剤単位を含み、
【化1】
式I
【化2】
式II
【化3】
式中、
各R
1及び各R
2は、独立して、2~25個の炭素原子のアルキレンであり、
各R
3は、独立して、1~15個の炭素原子の分枝又は非分枝アルキル基であり、
各R’は、独立して、6~36個の炭素原子のアリーレンであり、
各X
+は、独立して、Na
+、Li+、又はK+であり、
nは、80~95モルパーセントであり、
pは、5~15モルパーセントであり、
qは、0.1~4モルパーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記スルホン化ポリエステルが、前記インク組成物の総重量に基づいて、10~60重量パーセントの量で前記インク組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーが、UV硬化性であり、二官能性(メタ)アクリレート及び多官能性(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーが、アルキルアクリレート及びアルコキシアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーが、エトキシル化アクリレート、プロポキシル化アクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチルプロパントリアクリレート、及びプロポキシル化トリメチルプロパントリアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも2つのウレタンアクリレートオリゴマーが、三官能性ウレタンアクリレートオリゴマー、及び4~8の官能性を有する多官能性ウレタンアクリレートオリゴマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも2つのウレタンアクリレートオリゴマーが、第1のウレタンアクリレートオリゴマー及び第2のウレタンアクリレートオリゴマーを含み、前記第1のウレタンアクリレートオリゴマーは60℃で第1の粘度を有し、前記第2のウレタンアクリレートオリゴマーは60℃で第2の粘度を有し、前記第1の粘度は前記第2の粘度よりも低い、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の粘度が、60℃で1000cP~5500cPの範囲であり、前記第2の粘度が、60℃で6000cP~20,000cPの範囲である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記
少なくとも2つのウレタンアクリレートオリゴマーが、3000~5000の範囲の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの光開始剤が、ホスフィンオキシド光開始剤類からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの着色剤が顔料である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
ラテックスを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ラテックスが、前記インク組成物の総重量に基づいて、2~40重量パーセントの量で前記インク組成物中に存在するポリウレタン分散体である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
水が、前記インク組成物の総重量に基づいて、10~30重量パーセントの量で前記インク組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記インク組成物が、25℃の温度及び1rad/sの角周波数で、100,000センチポアズ~2,000,000センチポアズの範囲の複素粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
可変平版印刷のための方法であって、
湿し液を画像形成部材表面に塗布することと、
疎水性無画像領域及び親水性画像領域を形成するために、前記画像形成部材表面上の選択的な場所から前記湿し液を除去することによって潜像を形成することと、
インク組成物を前記親水性画像領域に塗布することによって、前記潜像を現像し、それによってインク画像を形成することと、
前記インク画像を印刷可能基材に転写することと、を含み、
前記インク組成物は、
少なくとも1つのスルホン化ポリエステルと、
少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーと、
少なくとも2つの2000~5000の範囲の重量平均分子量を有するウレタンアクリレートオリゴマーと、
少なくとも1つの光開始剤と、
少なくとも1つの着色剤と、
水と、を含む、方法。
【請求項19】
前記転写の後に前記インク画像を硬化させるために、前記インク画像を紫外線に曝露することであって、前記インク画像は、前記転写と前記曝露との間に、60℃を超えては加熱されない、曝露することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記印刷可能基材が、食品ラベルである、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インク組成物と、平版印刷技術により当該インクを印刷する方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット平版印刷は、デジタルラベルプレス及びパッケージ印刷で使用するのに一般的である。オフセット平版印刷(時折、オフセット印刷と呼ばれる)では、画像は、中間体転写方式又はブランケット胴を通じて、紙又は他の材料などの媒体に間接的に塗布されてもよく、それによって、プレートからの画像はブランケット胴に最初に塗布され、次にブランケット胴から媒体へとオフセット印刷又は転写される。典型的な平版印刷技術は、永続的にパターニングされたプレートを利用するため、雑誌、新聞などの同じ画像の多数のコピーを印刷するときにのみ有用である。
【0003】
デジタルオフセット平版印刷は、最初は湿し液層で均一にコーティングされた、パターニングされていない再画像形成可能な表面を使用するシステムとして開発された。湿し液の領域は、ポケットを形成するために、集束された放射線源(例えば、レーザー光源)への曝露により除去される。これにより、湿し液中の一時的なパターンが、パターニングされていない再画像形成可能な表面の上に形成される。その上に塗布されたデジタルオフセットタイプのインクが、湿し液の除去によって形成されたポケット内に保持される。次に、インクが塗られた表面は、紙、プラスチック、金属、又は他の材料などの基材と接触させられ、インクは湿し液層内のポケットから基材に転写される。次いで、湿し液を除去して、湿し液の新たな均一な層を再画像形成可能な表面に塗布してもよく、このプロセスは繰り返した。インカーサブシステムを使用して、湿し液層の上にデジタルオフセットタイプのインクの均一な層を塗布してもよい。インカーサブシステムは、アニロックスローラを使用して、再画像形成可能な表面と接触する1つ以上のインク形成ローラ上にインクをメーターを介して供給してもよい。
【0004】
デジタルオフセット平版印刷システムは、再画像形成可能な表面及び湿し水を含む、インクが接触する材料、並びに高速で高品質なデジタル印刷を可能にするための、印刷プロセス中に使用される様々なサブシステムと適合するように特別に設計及び最適化されたオフセットタイプのインクを使用する。デジタルオフセット印刷のインクは、システム構成部品の材料に適合し、湿潤及び転写を含むサブシステム構成部品の機能要件を満たしながら、平版印刷プロセスによって課される過酷な平版要件を満たす必要があるため、他のタイプの従来のインクとは異なる。したがって、デジタルオフセットインクは、十分かつ予測可能なインク凝集力を得て、様々なサブシステム内及びサブシステム間で良好な転写特性を可能にするために、特定の範囲の粘度、粘着度、及び粘着度の安定性を必要とする。更に、食品パッケージなどの一部の用途では、食品に安全なインクを提供するために、UVインク成分が限定され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水性製剤などの「食品に安全な」組成物を含む、食品グレードの印刷に好適なインクのデジタルの高度な平版画像形成が依然として必要とされている。非常に水堅牢なフィルムを実現する水性のDALIインク組成物は、高温での焼成なしでは、これまで実証されていない。焼成の必要条件は、最終製品の基材の自由度を制限する。したがって、低い硬化温度での良好な転写特性を維持しながら、水性DALIインクの水及び化学的堅牢性を向上させることは、当該技術分野において一歩前進となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、インク組成物に関する。インク組成物は、少なくとも1つのスルホン化ポリエステルと、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1つのウレタンアクリレートオリゴマーと、少なくとも1つの光開始剤と、少なくとも1つの着色剤と、水と、を含む。
【0007】
本開示の別の実施形態は、可変平版印刷のための方法に関する。この方法は、湿し液を画像形成部材表面に塗布することを含む。潜像は、疎水性無画像領域及び親水性画像領域を形成するために、画像形成部材表面上の選択的な場所から湿し液を除去することによって形成される。潜像は、インク組成物を親水性画像領域に塗布することにより現像され、それによってインク画像が形成される。インク画像は、印刷可能な基材に転写される。インク組成物は、少なくとも1つのスルホン化ポリエステルと、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1つのウレタンアクリレートオリゴマーと、少なくとも1つの光開始剤と、少なくとも1つの着色剤と、水と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態による、本明細書に記載のインク組成物を用いる可変平版印刷のシステムの概略図を示す。
【
図2】本開示の実施例による、インクサンプルの複素粘度の両対数グラフを示す。
【
図3】本開示のオフセット印刷用インク例のインク転写試験結果を示す。
【
図4】本開示のオフセット印刷用インク例のインク転写試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本教示の実施形態を詳細に参照し、それらの実施例は、添付の図面に示される。図中、同様の参照番号は、全体を通して、同一の要素を指定するために使用される。以下の説明では、その一部をなし、本教示を実践することができる特定の例示的な実施形態を示す添付の図面を参照する。したがって、以下の説明は、単なる例示に過ぎない。
【0010】
インク組成物
本開示は、ポリマーマトリックスのために、水消散性スルホポリエステルポリマー及びウレタンアクリレートを含む水性UV硬化性アクリレートを用いるインク組成物に関する。この成分の組み合わせは、中央の画像形成胴からの良好なインク転写及び最終的な印刷画像の堅牢性など、1つ以上の有益性を有することができる。高分子量(例えば、>1000kDa)を有するウレタンアクリレート材料を使用する際、UV硬化性成分のマイグレーションを許容レベルまで低減することができ、それによって、インク組成物を食品製品のラベル及びパッケージとして安全なものにする。
【0011】
本開示のインク組成物は、紫外線(ultraviolet、「UV」)照射を使用して硬化させることができる。UV照射は、例えば、発光ダイオード(light emitting diode、「LED」)を使用して、所望の波長範囲で生成することができる。好適な波長の例としては、300nm~400nm、又は350nm~400nmの範囲が挙げられるが、インクを効果的に硬化させることができる任意の波長を用いることができる。当技術分野で良く知られているように、UV硬化は、架橋ポリマーの3Dネットワークを作成する光化学反応を開始するために、コーティング/インクにUV光を照射するプロセスである。このプロセスは、高い硬化速度、長い乾燥時間による欠陥の低減、及び/又は硬化インクの堅牢性の向上などの有益性を有することができる。
【0012】
本開示の一実施形態は、UV硬化性インク組成物に関する。インク組成物は、少なくとも1つのスルホン化ポリエステルと、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1つのウレタンアクリレートオリゴマーと、少なくとも1つの光開始剤と、少なくとも1つの着色剤と、水と、を含む。
【0013】
スルホポリエステル
実施形態では、本開示のスルホン化ポリエステルは、少なくとも1つの二塩基酸モノマー又は少なくとも1つのジエステルモノマーと、少なくとも1つのアルカリスルホン化二官能性モノマーとの重合反応から調製することができる。実施形態では、本開示のスルホン化ポリエステルは、少なくとも1つの二塩基酸モノマー又は少なくとも1つのジエステルモノマーと、少なくとも1つのアルカリスルホン化二官能性モノマーと、少なくとも1つのジオールモノマーとの反応から調製することができる。
【0014】
本明細書で使用される用語「二塩基酸」は、ジカルボン酸又はジカルボン酸の原料化合物(すなわち、酸無水物又は二塩基酸のエステル)を含有する化合物を指す。二塩基酸の例としては、テレフタル酸のジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、コハク酸、無水コハク酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸無水物(dodecenylsuccinic anhydride、DDSA)、グルタル酸、無水グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、無水フタル酸、フタル酸ジエチル、コハク酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ドデシルコハク酸ジメチル、及びこれらの混合物が挙げられる。本明細書で使用する用語「ジエステル」は、本明細書で使用される二塩基酸のエステルを指し、ジエステルのアルキル基(ジオールモノマーの炭素基)は、2~約10個の炭素原子を含有してもよく、分枝状又は非分枝状であってもよい。
【0015】
スルホン化ポリエステルの調製に使用される二塩基酸又はジエステルは、約40~約48モルパーセント、約42~約47モルパーセント、又は約43~約45モルパーセントの量で含まれてもよい。別段の記載がない限り、本明細書で使用するとき、モル(又はモル)パーセントは、最終的なスルホン化ポリエステル樹脂中に存在するスルホン化モノマーのモルの割合を指し、例えば、帯電した(モルDMSIP(ジメチル-5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩)/(過剰モルのグリコール又は他の超過したジオールよりも少ない合計モル)X100パーセント)として計算することができる。
【0016】
アルカリスルホン化二官能性モノマーの例であって、アルカリは、リチウム、ナトリウム、又はカリウムであり、アルカリがナトリウムである特定の実施形態では、ジメチル-5-スルホ-イソフタル酸、ジアルキル-5-スルホ-イソフタル酸-4-スルホ-1,8-ナフタール酸無水物、4-スルホ-フタル酸、4-スルホフェニル-3,5-ジカルボメトキシベンゼン、6-スルホ-2-ナフチル-3,5-ジカルボメトキシベンゼン、スルホ-テレフタル酸、ジメチル-スルホ-テレフタル酸、ジアルキル-スルホ-テレフタル酸、スルホ-エタンジオール、2-スルホ-プロパンジオール、2-スルホ-ブタンジオール、3-スルホ-ペンタンジオール、2-スルホ-ヘキサンジオール、3-スルホ-2-メチルペンタンジオール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、2-スルホ-3,3-ジメチルペンタンジオール、スルホ-p-ヒドロキシ安息香酸、これらの混合物などが挙げられる。実施形態では、スルホン化ポリエステルの調製に使用されるアルカリスルホン化二官能性モノマーは、約3.0~約15モルパーセント、約4~約10モルパーセント、約5~約9モルパーセント、又は約6~約8モルパーセント、又は約7.5モルパーセントの量で含まれてもよい。
【0017】
3.5重量%のスルホン化を有するスルホン化ポリエステルを使用して、先行技術で以前の実験が実施された。このレベルのスルホン化で、ある濃度を超えると溶解限度があり、粒子ドメインは100nmのレジームに存在し、これは粘度が低下する可能性がある。本開示では、より低いスルホン化レベルが可能である一方で、より高い%のスルホン化(7.5%以上など)を有するスルホポリエステルは、より高い固体負荷、及び例えば50nm以下などのより小さな粒子ドメインを可能にすることが想到され、これにより、完成したインクの粘度が増加する。
【0018】
スルホン化ポリエステルの生成に利用されるジオールの例としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2,2-ジメチルプロパンジオール、2,2,3-トリメチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ドデカンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)-ビスフェノールA、ビス(2-ヒドロキシプロピル)-ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、キシレンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ビス(2-ヒドロキシエチル)オキシド、ジプロピレングリコール、ジブチレン、及びこれらの混合物が挙げられるが、その限りではない。スルホン化ポリエステルの調製に使用されるジオールは、約40~約48モルパーセント、約42~約47モルパーセント、又は約43~約45モルパーセントの量で用いられてもよい。実施形態では、追加量の(又は超過量の)ジオールを使用して反応を完了させ、超過量のジオールを留去又は除去してもよい。
【0019】
実施形態では、重合後、得られるスルホン化ポリエステルは、以下の式を有するアリール単位、スルホン化単位、及び脂肪族単位を含んでもよく、
【0020】
【0021】
式中、各R1及び各R2は、独立して、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、オキシアルキレンジエチレンオキシドなどの、2~約25個の炭素原子のアルキレンであってもよく、各R3は、独立して、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなどの、分枝又は非分枝の1~15個の炭素原子のアルキル基であってもよく、各R’は、独立して、例えば、ベンジレン、ビスフェニレン、ビス(アルキルオキシ)ビスフェノレンなどの、約6~約36個の炭素原子のアリーレンであってもよく、各X+は、独立して、Na+、Li+、K+などであってもよく、各n、各p及び各qは、ランダムに繰り返されるセグメントの数を表し、各セグメントは、独立して、約10~約100,000個であってもよい。実施形態では、nは、約80~約95モルパーセント、約84~約90モルパーセント、又は約86~約90モルパーセントである。実施形態では、pは、約5~約15モルパーセント、約6~約12モルパーセント、又は約7.5~約10モルパーセントである。実施形態では、qは、約0.1~約4モルパーセント、0.1~約2.5モルパーセント、約0.2~約1.5モルパーセントである。pはスルホン化ポリエステル中のスルホン化の量を表す。qはスルホン化ポリエステル中の架橋剤の量を表す。テレフタル酸ジオール単位、スルホン化テレフタル酸ジオール単位及び架橋剤ジオール単位が唯一のポリマー単位である一実施形態では、nは100-(p+q)である。以下に記載される分枝剤単位などの他の任意の単位も含まれてもよい。
【0022】
スルホン化ポリエステルは、少なくとも1つの任意に反復するアリール単位、少なくとも1つの任意に反復するスルホン化単位、少なくとも1つの任意に反復する脂肪族単位のランダムな組み合わせを含んでもよい。
【0023】
実施形態では、スルホン化ポリエステルは、以下の一般構造、又はnとpセグメントが別個であるそれらのランダムなコポリマーを有してもよく、
【0024】
【0025】
式中、R1、R2、R’、X、n及びpは、式I、II及びIIIについて本明細書の上記で定義したものと同じである。
【0026】
実施形態では、スルホン化ポリエステルは、以下の一般構造を有してもよく、
【0027】
【0028】
R1、R2、R3、R’、X、n、p、及びqは、式I、II、及びIIIについて本明細書の上記で定義したものと同じである。
【0029】
実施形態では、スルホン化ポリエステルは非晶質である。実施形態では、非晶質スルホン化ポリエステルは、ポリ(1,2-プロピレン-5-スルホイソフタル酸)、ポリ(ネオペンチレン-5-スルホイソフタル酸)、ポリ(ジエチレン-5-スルホイソフタル酸)、コポリ(1,2-プロピレン-5-スルホイソフタル酸)-コポリ-(1,2-プロピレン-テレフタル酸フタル酸)、コポリ(1,2-プロピレン-ジエチレン-5-スルホイソフタル酸)-コポリ-(1,2-プロピレン-ジエチレンテレフタル酸フタル酸)、コポリ(エチレン-ネオペンチレン-5-スルホイソフタル酸)-コポリ-(エチレン-ネオペンチレン-テレフタル酸-フタル酸)、コポリ(プロポキシル化ビスフェノールA)-コポリ-(プロポキシル化ビスフェノールA-5-スルホイソフタル酸)、コポリ(エチレンテレフタル酸)-コポリ-(エチレン-5-スルホ-イソフタル酸)、コポリ(プロピレン-テレフタル酸)-コポリ-(プロピレン-5-スルホ-イソフタル酸)、コポリ(ジエチレン-テレフタル酸)-コポリ-(ジエチレン-5-スルホ-イソフタル酸)、コポリ(プロピレン-ジエチレン-テレフタル酸)-コポリ-(プロピレン-ジエチレン-5-スルホイソフタル酸)、コポリ(プロピレン-ブチレン-テレフタル酸)-コポリ(プロピレン-ブチレン-5-スルホ-イソフタル酸)、コポリ(プロポキシル化ビスフェノール-A-フマル酸)-コポリ(プロポキシル化ビスフェノールA-5-スルホ-イソフタル酸)、コポリ(エトキシ化ビスフェノール-A-フマル酸)-コポリ(エトキシ化ビスフェノール-A-5-スルホ-イソフタル酸)、コポリ(エトキシ化ビスフェノール-A-マレエート)-コポリ(エトキシ化ビスフェノール-A-マレイン酸)-コポリ(エトキシ化ビスフェノール-A-5-スルホ-イソフタル酸)、コポリ(プロピレン-ジエチレンテレフタル酸)-コポリ(プロピレン-5-スルホイソフタル酸)、コポリ(ネオペンチル-テレフタル酸)-コポリ-(ネオペンチル-5-スルホイソフタル酸)など、並びにこれらの混合物のランダムなスルホン化ポリエステルの酸又は塩であり得る。
【0030】
本実施形態のランダムな非晶質スルホン化ポリエステルの塩としては、ナトリウム、リチウム、及びカリウムなどのアルカリ金属の塩、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、及びバリウムなどのアルカリ土類金属の塩、バナジウム、鉄、コバルト、銅などの遷移金属の金属塩、アルミニウム塩などの金属塩など、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0031】
実施形態では、スルホン化ポリエステルマトリックスは分枝ポリマーである。実施形態では、スルホン化ポリエステルマトリックスは線状ポリマーである。分枝ポリマー又は線状ポリマーの選択は、とりわけ、複合製品の下流適用に依存してもよい。線状ポリマーは、繊維のストランドを作製するために、又は強いメッシュ様構造を形成するために使用することができる。分枝ポリマーは、得られる複合材料上の熱可塑性特性を付与するのに有用であり得る。
【0032】
線状スルホン化ポリエステルは、一般に、有機ジオールと二塩基酸又はジエステルとの重縮合によって調製され、そのうちの少なくとも1つは、スルホン化されているか、又は反応に含まれるスルホン化二官能性モノマー、及び重縮合触媒である。分枝スルホン化ポリエステルについては、多価ポリ酸又はポリオールなどの分枝剤を更に含有させて、同じ材料を使用してもよい。分枝スルホン化ポリエステルを形成する際に使用するための分枝剤としては、例えば、1,2,4-ベンゼン-トリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレン-カルボキシルプロパン、テトラ(メチレン-カルボキシル)メタン、及び1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、その酸無水物、及びその低級アルキルエステル、1~約6個の炭素原子などの多価ポリ酸、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、スクロース、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタトリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン、これらの混合物などの多価ポリオールが挙げられる。選択される分枝剤量は、例えば、スルホン化ポリエステルの約0.1~約5モルパーセントである。
【0033】
重縮合は酸性条件下で実施されてもよい。重縮合は触媒の存在下で実施されてもよい。実施形態では、ポリエステル化反応に用いられる触媒は、スズ系である。このような触媒は、スズ(II)又はスズ(IV)酸化状態に基づいてもよい。実施形態では、スズ系触媒は、モノ-、ジ-、又はテトラアルキルスズ系である。スズ系触媒の例としては、テトラアルキルチタネート、ジブチルスズオキシドなどのジアルキルスズオキシド、ジブチルスズジラウレートなどのテトラアルキルスズ、ブチルスズオキシド水酸化物などのジアルキルスズオキシド水酸化物、アルミニウムアルコキシド、アルキル亜鉛、ジアルキル亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一スズ、又はこれらの混合物が挙げられる。実施形態では、モノアルキルスズ化合物は、スズ原子に結合した酸化物及び/又は水酸化物基を更に含んでもよい。実施形態では、スズ系触媒は、FASCAT(登録商標)4100として市販されているモノブチルスズオキシド、モノブチルスズヒドロキシドオキシド、及びブチル亜スズ酸の混合物を含む。エステル交換化学に用いられる他のスズ系触媒は、当該技術分野においてよく知られており、本明細書のスルホン化ポリエステルを調製するためにも使用することができる。本明細書で使用される触媒の量は、スルホン化ポリエステルを生成するために使用される二塩基酸又はジエステルの開始量に基づいて、約0.01モルパーセント~約5モルパーセントであってもよい。
【0034】
本開示で使用するのに好適なスルホン化ポリエステルは、示差走査熱量計によって測定したとき、約45℃~約95℃、又は約52℃~約70℃のガラス転移(glass transition、Tg)温度を有し得る。スルホン化ポリエステルは、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定したとき、モル当たり約2,000g~モル当たり150,000g、モル当たり約3,000g~約50,000g、又はモル当たり約6,000g~モル当たり約15,000gの数平均分子量を有し得る。スルホン化ポリエステルは、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定したとき、モル当たり約3,000g~モル当たり300,000g、モル当たり約8,000g~約90,000g、又はモル当たり約10,000g~モル当たり約60,000gの重量平均分子量を有し得る。スルホン化ポリエステルは、重量平均と数平均分子量との比によって計算されたとき、約1.6~約100、約2.0~約50、又は約5.0~約30の多分散度を有し得る。
【0035】
実施形態では、スルホン化ポリエステルは、例えば、約1ナノメートル(nanometer、nm)~約55nm、約5~約45nm、又は約5~約30nmの範囲の粒径を有する。5nm未満の粒径は、コーティング材の透明性及び他の特性を乱すことなく、ポリマーマトリックスの強化に有用であり得る。
【0036】
実施形態では、スルホン化ポリエステルは、約5ナノメートル~約55ナノメートルの粒径を有する。更なる実施形態では、ポリエステルは、約10ナノメートル~約15ナノメートルの粒径を有する。本明細書で使用するとき、「粒径」への言及は、一般に、D50質量中央径(mass-median-diameter、MMD)又は正規対数型の分布質量中央径を指す。MMDは、質量による平均粒子径であると考えられる。
【0037】
実施形態では、スルホン化ポリエステル樹脂を水中で加熱することによって、スルホン化ポリエステルを含む複合粒子のエマルションを形成することを含む方法が提供される。実施形態では、加熱は、約65℃~約95℃の温度で行われる。
【0038】
特定の実施形態では、本明細書の方法は、スルホン化ポリエステル樹脂を水中で加熱することを含み、それにより、スルホン酸ナトリウムポリエステルは、約3.0重量パーセント~約15重量パーセント、約6~約12モルパーセント、又は約7.5~約10モルパーセントのスルホン化度を有し、スルホン化ポリエステルを含む粒子のエマルションを形成することを含む。実施形態では、本方法は、水性インク組成物を形成するために、ポリエステル粒子を水、任意の共溶媒、及びポリウレタン分散体と組み合わせることを更に含む。
【0039】
本開示のインクは、インクの総重量に基づいて、約10~約60重量パーセント、約15~約50重量パーセント、又は約20~約40重量パーセント、又は約25~約35重量パーセントのスルホン化ポリエステルを含有してもよい。
【0040】
(メタ)アクリレートモノマー
インク組成物の硬化性成分は、(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、及び少なくとも1つの光開始剤を含む。モノマー/オリゴマーは、インクの粘度、並びに硬化コーティングの硬度/軟度を制御するために用いられる。ウレタン(メタ)アリレートオリゴマーは、硬化インクの堅牢性を向上させる反応性樹脂を含む。UV光に曝露されたとき、光開始剤(複数可)は、モノマー/オリゴマーを3Dポリマーネットワークに架橋して、堅牢なインク画像をもたらすラジカル反応を開始する。
【0041】
少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーは、UV硬化性である。一実施形態では、(メタ)アクリレートモノマーは、二官能性(メタ)アクリレート及び多官能性(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む。一実施形態では、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーは、アルキルアクリレート及びアルコキシアクリレートからなる群から選択される。例えば、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーは、5~15個のエトキシ基を有するものなどのエトキシル化アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化アクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチルプロパントリアクリレート、及びプロポキシル化トリメチルプロパントリアクリレートからなる群から選択することができる。
【0042】
特定のアクリレートモノマー、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート(polyethylene glycol diacrylate、PEGDA)は、保湿剤として二重であり、スルホラン/ジエチレングリコールなどの他の保湿剤を置き換えることができる。あるいは、所望であれば、アクリレートモノマーに加えて、別個の保湿剤を用いることができる。保湿剤は、水性インクの作業時間を増加させ、インクがアニロックスロール上で乾燥しないようにする。
【0043】
ウレタンアクリレートオリゴマー
少なくとも1つのウレタンアクリレートオリゴマーは、例えば、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー又は芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーであり得る。本開示のウレタンアクリレートオリゴマーは、例えば、1~10又は2~8、あるいはは3~6の範囲の官能性など、任意の好適な官能性を有することができる。一実施形態では、ウレタンアクリレートオリゴマーは、3つ以上の官能性を有する多官能性オリゴマーである。
【0044】
所望であれば、2、3、4以上の異なるウレタンアクリレートオリゴマーを用いることができる。複数のウレタンアクリレートオリゴマーを使用することにより、インク組成物の粘度及び粘着度を調整するための更なる自由度を可能にすることができる。複数のウレタンアクリレートオリゴマーを使用する別の理由は、より堅牢なフィルムを製造することが可能であるが、より高い順序の官能性を有するアクリレートが、より硬い/より脆性のフィルムをもたらし得ることである。高官能性オリゴマーと組み合わせて、三官能性ウレタンアクリレートオリゴマーなどの低官能性の第2のオリゴマーを用いることにより、フィルムの所望の柔軟度を依然として提供しながら、堅牢なフィルムを可能にすることができる。したがって、異なる官能性を有する多官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることができる。例えば、少なくとも1つのウレタンアクリレートオリゴマーは、三官能性ウレタンアクリレートオリゴマーと、4~8、又は5~7又は6個など、4つ以上の官能性を有する別の多官能性ウレタンアクリレートオリゴマーとの両方を含むことができる。
【0045】
水性ウレタンアクリレートオリゴマーは、転写特性の保持を可能にする高粘度及び粘着度を保有する。一実施形態では、少なくとも1つのウレタンアクリレートオリゴマーは、第1の粘度を有する第1のウレタンアクリレートオリゴマーと、第2の粘度を有する第2のウレタンアクリレートオリゴマーと、を含み、第1の粘度は第2の粘度よりも低い。例えば、第1の粘度は、60℃で約2000cP~約4500cPなど、60℃で約1000cP~約5500cPの範囲であり得る。第2の粘度は、60℃で約7000cP~約12,000cPなど、60℃で約約6000cP~約20,000cPの範囲であり得る。60℃で6000cP以上、又は60℃で7000cP以上などの高粘度を有する少なくとも1つのウレタンアクリレートオリゴマーを用いることにより、印刷中のインクの転写を改善できることが見出された。
【0046】
ウレタンアクリレートオリゴマーは、残留オリゴマーのマイグレーションを低減するために、高分子量を有するように選択することができる。ウレタンアクリレートオリゴマーのうちの1つ以上は、約2500~約3500など、約2000~約5000の範囲の重量平均分子量を有する。これらの範囲外の分子量を有するオリゴマーも用いることができる。
【0047】
市販のウレタンアクリレートオリゴマーとしては、Soltech LTDから入手可能なSolmerアクリレート(SU 560及びSWA 8006 W20)が挙げられる。これらは、高粘度及び分子量(例えば、3000ダルトン以上)を有する多官能性脂肪族ウレタンアクリレートである。材料は、水性DALIインク配合物中で高度に混和性であり、水及び化学抵抗において新たなベンチマークを示し、乾燥インクフィルムに優れた付着特性を付与する。このインクに好適であり得る他の可能な等級のSOLMER(商標)脂肪族ウレタンアクリレートとしては、多官能性である及び/又はSU 550、SU 55A及びSW 5200などの高粘度及び分子量を保有するものが挙げられる。他の市販の選択肢としては、全てジョージア州アルファレッタのAllnex Inc.から入手可能なEbecryl(商標)4587、EBECRYL 4666及びEBECRYL 5129が挙げられる。
【0048】
光開始剤
UV硬化に好適な任意の光開始剤を本開示のインク組成物に用いることができる。例としては、ホスフィンオキシド光開始剤が挙げられる。ホスフィンオキシド光開始剤は、長波長UV吸収剤である。それらは特にLED光及び高度に着色されたコーティングに適しており、コーティングへの高度な浸透による深さ硬化にも適している。好適なホスフィンオキシド光開始剤の一例は、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドであり、Irgacure(商標)819又はIrgacure 819 DWとしてニュージャージー州フローラムパークのBASFから市販されている(Irgacure 819 DWは、本開示の水性系について好適な水中のIrgacure 819の安定したエマルションである)。他の好適なホスフィンオキシドとしては、ジフェニル-(2,4,6,トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(TPO-L)が挙げられる。市販のホスフィンオキシド光開始剤の例としては、BASF製のLucirin(商標)TPO及びLucirin TPO-L、スイス、チューリッヒのRahn AG製のGenocure(商標)TPO及びGenocure TPO-L、並びにノースカロライナ州シャーロットのIGM Resins製のOmnirad(商標)TPO、Omnirad TPO-L、及びOmnirad 819が挙げられる。上記のホスフィンオキシドのいずれかの組み合わせを用いることができる。
【0049】
インク組成物に用いられる光開始剤の量は、適切な硬化を提供するように所望の重合を提供する任意の好適な量であり得る。一例として、光開始剤の量は、湿潤インク組成物の総重量に基づいて、約1.5重量%~約7.5重量%などの約0.5重量%~約10重量%の範囲、又は約3重量%~約6重量%の範囲であり得る。
【0050】
着色剤
一実施形態では、本開示のインクに用いられる着色剤は、1つ以上の顔料を含む。顔料は、CMYK着色インク、並びに特殊色を達成するように、任意の所望の色のインクを提供するように選択することができる。顔料は、インクキャリア中に分散することができ、他のインク成分に適合するように選択されてもよい。
【0051】
任意成分
デジタルオフセット印刷インクでの使用に好適な任意の他の成分も、本開示の組成物に任意に含めることができる。当業者であれば、使用可能な他の成分を容易に決定することができるであろう。
【0052】
任意成分の一例は、ポリウレタン分散体(polyurethane dispersion、PUD)、アクリロニトリルブタジエンスチレンラテックス、スチレンアクリル系ラテックス、ポリイソプレンラテックス、又は他の水分散性ポリマーなどの水分散性ポリマーである。水分散性添加剤は、硬化前の改善されたフィルム形成を達成するために使用することができる。
【0053】
本明細書で使用するとき、用語「PUD」は、上述のウレタンアクリレートオリゴマーとは異なるポリウレタン分散体を意味する。本明細書で使用するとき、用語「分散体」は、1つの相がバルク物質全体にわたって分散された微粒子(多くの場合、コロイドサイズの範囲)からなり、この粒子は分散相又は内相であり、バルク物質は連続相又は外相である、二相系を意味する。バルク系は、多くの場合、水性系である。
【0054】
本開示のポリウレタン分散体は、(a)ウレタンプレポリマーであって、ウレタンプレポリマーが、(i)ポリオール、(ii)ポリイソシアネート、及び(iii)内部界面活性剤の触媒反応生成物である、ウレタンプレポリマー、(b)中和剤、及び(c)鎖延長剤の反応生成物から調製することができる。
【0055】
ポリウレタン分散体(PUD)は、水性インクジェットインク中のキャリアとして用いられている。PUDの商用例には、例えば、Alberdingkから入手したU410及びU615、Bayhydrolから入手したU355、Covestroから入手したU2757、UH420、UH2558、UXP2698、UXP2755、UA2586 XP、UHXP2648及びUH2952/1、並びにImpranilから、又はCovestroから入手したDL1380及びDL1537を挙げることができる。
【0056】
本開示のインク組成物は、インクの総重量に基づいて、約2~約40重量パーセント、約5~約30重量パーセント、又は約10~約20重量パーセントなどの任意の好適な量の水分散性ポリマーを含んでもよい。
【0057】
ブランケット/基材の湿潤を助けることができる湿潤剤を含む、他の任意成分を用いることもできる。このような湿潤剤の商用例は、ドイツのヴェーゼルのBYK Additives & Instrumentsから入手可能なDynwet 800である。
【0058】
キャリア
本開示のインクは水性基剤である。水は、インク組成物の総重量に基づいて、約10%~約30%、又は約15%~約25%など、約10%~約50%の任意の好適な量でインク組成物中に存在する。
【0059】
本開示のインク組成物は、例えば、オフセット印刷に好適な任意の粘度を有する。実施形態では、約1rad/sなど、約0.5~約2rad/sの等価角周波数に対応する剪断速度で、約18~約30℃、約25℃など約18~約35℃の温度範囲内でインクが比較的高い粘度を有するように、アニロックスローラからブランケットへの高度のインク転写を確実にすることが有利である。実施形態では、インク組成物は、25℃の温度及び1rad/sの角周波数で、約100,000~約2,000,000センチポアズの複素粘度を有する。インクの複素粘度は、TA Instruments製のDHR-2レオメーターを使用して測定することができる。一実施形態では、インクは揺変性であり、ずり減粘を示す。
【0060】
組成物の作り方
インク組成物は、任意の所望の又は好適な方法によって調製することができる。例えば、本明細書に記載の成分は、任意の好適な混合技術を使用して、任意の好適な順序で一緒に混合することができる。インクを混合するための好適な技術は、当該技術分野において良く知られている。
【0061】
印刷方法
本開示はまた、印刷方法に関する。本方法は、本明細書に記載されるインク組成物を用いる可変平版印刷のためのシステム上で実施される。
【0062】
図1に示されるように、例示的なシステム100は、画像形成部材110を含んでもよい。
図1に示される実施形態における画像形成部材110はドラムであるが、この例示的な描写は、画像形成部材110がプレート、ベルト、又は他の既知の若しくは今後開発された構成を含む実施形態を除外するように解釈されるべきではない。画像形成部材は、インク画像を形成及び解放するための所望の特性を提供する材料で形成され得る、再画像形成可能な表面を有する。例示的な材料としては、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)、フルオロシリコーン、及び/又はVITON(登録商標)などのフルオロポリマーエラストマーなどのシリコーンが挙げられる。他の好適な材料も用いてもよい。一実施形態では、再画像形成可能な表面は、取り付け層の上に比較的薄い層で形成されてもよく、比較的薄い層の厚さは、印刷又はマーキング性能、耐久性、及び製造性のバランスをとるように選択される。
【0063】
画像形成部材110は、転写ニップ112で、画像受容印刷可能基材114にインク画像を塗布するために使用される。転写ニップ112は、画像転写機構160の一部として、画像形成部材110の方向に圧力を加えるインプレッションローラ118によって形成される。画像受容印刷可能基材114は、例えば、紙、プラスチック、金属、又は複合シートフィルムを含む、インク画像を転写することができる任意の好適な媒体であり得る。一実施形態では、印刷可能基材は、食品ラベル又は他の製品ラベルなどのラベルである。例示的なシステム100は、多種多様な画像受容印刷可能基材上で画像を生成するために使用され得る。50重量%を超える顔料の添加を有するマーキング材料を含む、使用され得る広範なマーキング(印刷)材料が存在する。本開示は、例示的なシステム100によって塗布されて、画像受容印刷可能基材114上に出力画像を生成することができるインク、顔料、及び他の材料であると一般に理解されるものを含む、広範囲な印刷又はマーキング材料を指すために、インクという用語を使用する。
【0064】
例示的なシステム100は、概して、画像形成部材110の再画像形成可能な表面を湿し液で均一に濡らすための、湿しローラ又は湿しユニットと見なされ得る一連のローラを含む湿し液システム120を含む。湿し液システム120の目的は、概して均一かつ制御された厚さを有する湿し液層を画像形成部材110の再画像形成可能な表面に送達することである。好適な湿し液は、当該技術分野において良く知られており、以下により詳細に記載されるように、主に水と、表面張力を低減するために、並びに後続のレーザーパターニングを支援するのに必要な蒸発エネルギーを低下させるために添加される少量のイソプロピルアルコール又はエタノールを任意に含んでもよい。少量の特定の界面活性剤も任意で湿し液に添加してもよい。あるいは、他の好適な湿し液を使用して、インクベースのデジタル平版印刷システムの性能を向上させてもよい。例示的な湿し液としては、水、NOVEC(登録商標)7600(1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-4-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタンが挙げられ、CAS#870778-34-0.)、及びD4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)を有する。
【0065】
湿し液が画像形成部材110の再画像形成可能な表面上にメーターを介して供給されると、湿し液の厚さは、センサ125を使用して測定され得る。センサ125は、湿し液システム120によって、画像形成部材110の再画像形成可能な表面上への湿し液のメーターを介した供給を制御するために、フィードバックを提供してもよい。
【0066】
湿し液が画像形成部材110の再画像形成可能な表面に塗布された後、光学パターニングサブシステム130を使用して、均一な湿し液層内に潜像を選択的に形成してもよい。湿し液層を画像形成するのに好適な任意の好適なパターニング技術を用いてもよい。1つの好適な例示的なパターニングプロセスは、湿し液を画像形成するためにレーザーを用いる。例示的なシステム100の光学パターニングサブシステム130によって行われるパターニングプロセスに作用する機構は、当該技術分野において既知である。簡潔に述べると、光学パターニングサブシステム130からの光学パターニングエネルギーの適用により、湿し液層の一部分を選択的に除去して、疎水性無画像領域及び親水性画像領域を形成する。
【0067】
光学パターニングサブシステム130による画像部材110上の湿し液層のパターニングに続いて、パターニングされた層は、インカーサブシステム140に提示される。インカーサブシステム140を使用して、パターニングされた湿し液層の上に均一なインク層を塗布する。本明細書に記載されるインクのいずれもインカーサブシステム140によって塗布することができる。インカーサブシステム140は、アニロックスローラを使用して、本開示のオフセット平版印刷インクを画像形成部材110の再画像形成可能な表面層と接触する1つ以上のインク形成ローラ上にメーターを介して供給してもよい。別個に、インカーサブシステム140は、一連のメーター供給ローラなどの他の従来の要素を含み、再画像形成可能な表面へのインクの正確な供給速度を提供してもよい。インカーサブシステム140は、湿し水が除去された再画像形成可能な表面の親水性の画像形成された部分(本明細書では時折「ポケット」と呼ばれる)にインクを堆積させてもよく、一方、インクは、湿し液が残っている再画像形成可能な表面の部分には付着しない。
【0068】
任意の好適な手段を用いて、画像形成部材110の再画像形成可能な表面上に存在するインクの凝集性及び粘度を変更することができる。硬化機構は、例えば、光学硬化、光硬化、冷却硬化、熱硬化、乾燥硬化、又は様々な形態の化学硬化を含んでもよい。このような任意の機構の1つは、レオロジー(複素粘弾性係数)制御サブシステム150の使用を伴い得る。レオロジー制御システム150は、例えば、画像再形成可能な表面層に対するインク凝集力を高めるために、画像再形成可能な表面上にインクの部分架橋コアを形成してもよい。
【0069】
インクは、転写サブシステム160を使用して、画像形成部材110の再画像形成可能な表面から、画像受容印刷可能基材114に転写される。転写は、画像形成部材110の再画像形成可能な表面のポケット内のインクが印刷可能基材114と物理的に接触するように、印刷可能基材114が、画像形成部材110とインプレッションローラ118との間のニップ112を通過するときに生じる。インクの付着力は、レオロジー制御システム150を使用する部分的なUV硬化などによって、インクの粘度が変化するにつれて改質されてもよい。インクの改質された付着力は、インクを印刷可能基材114に付着させ、画像形成部材110の再画像形成可能な表面から分離させる。
【0070】
一実施形態では、転写ニップ112における温度及び圧力条件の制御は、インク画像の転写を支援することができる。一実施例として、画像形成部材110の再画像形成可能な表面から、印刷可能基材114へのインクの転写効率は、95重量%~約100重量%など、約90重量%~約100重量%であり得る。
【0071】
一実施形態では、インクの温度は、インクがアニロックスローラに取り込まれ、転写ニップでインクが転写される両方の間、ほぼ室温に維持される。これは、インク温度を上昇させることにより、処理中に水を蒸発させ、インクを望ましくなく乾燥/硬化させる可能性があるからである。したがって、一実施形態では、インクの取り込み及び転写温度は両方とも約25℃である。他の実施形態では、インクの温度は、印刷プロセスに好適な任意の方式で上昇又は低下させることができる。
【0072】
印刷可能基材114へのインク画像の転写の後に、任意の最終的な硬化を実行することができる。印刷可能基材114上のインク画像の最終的な硬化は、インク画像を紫外線及び/又は熱に曝露することなどによって、任意の好適な方法によって達成することができる。本開示の一実施形態では、転写の後にインク画像を硬化させるために、インク画像を紫外線に曝露し、乾燥のためにインク画像はほとんど又は全く加熱しない。本開示のインクは、効果的に硬化され、水を除去する必要なく堅牢なインク画像を提供することができることが見出されたため、乾燥を省略することができる。一実施例では、インク画像は、インク画像の紫外線への転写と曝露との間で60℃を超えては加熱されない。したがって、インクは、インク画像が印刷可能基材114に転写された時点から、UV硬化プロセスが完了するまで、約20℃~約60℃、又は約20℃~約40℃、あるいは約20℃~約30℃の温度にとどまり得る。
【0073】
特定のオフセット平版印刷システムでは、
図1に示されていないオフセットローラは、まず、間接転写方法に従って、インク画像パターンを画像形成部材110から受容し、次いで、インク画像パターンを印刷可能基材114に転写してもよい。このようなオフセットローラ及び間接転写技術は、当該技術分野において良く知られている。
【0074】
インクの大部分を印刷可能基材114に転写することに続いて、画像形成部材110の再画像形成可能な表面から、好ましくはその表面を擦り落とすか又は著しく擦り減らすことなく、任意の残留インク及び/又は残留湿し液を除去してもよい。残留湿し液を除去するために、エアナイフ(図示せず)を用いてもよい。ただし、ある程度のインク残留物が残っている可能性があることが予想される。このような残りのインク残留物の除去は、何らかの形態のクリーニングサブシステム170の使用を通じて達成されてもよい。一実施形態では、クリーニングサブシステム170は、画像形成部材110の再画像形成可能な表面と物理的に接触している粘度性又は粘着性部材などの少なくとも第1のクリーニング部材を含み、粘度性又は粘着性部材は、画像形成部材110の再画像形成可能な表面の湿し液から、残留インク及び残りの少量の界面活性剤化合物を除去する。次いで、粘着性又は粘着性部材は、粘度性又は粘着性部材から残留インクが転写され得る平滑なローラと接触させられてもよく、その後、インクは、例えば、ドクターブレードによって平滑なローラから剥離される。
【0075】
画像形成部材110の再画像形成可能な表面のクリーニングを容易にすることができる任意の他の好適な機構を用いることができる。画像形成部材110の再画像形成可能な表面からの残留インク及び湿し液のクリーニングにより、提案されているシステムにおけるゴースト像(「ゴースト」としても知られている)の形成を低減又は防止することができる。一旦クリーニングされると、画像形成部材110の再画像形成可能な表面は、再び湿し液システム120に提示され、これによって、湿し液の新鮮な層は画像形成部材110の再画像形成可能な表面に供給され、このプロセスは繰り返される。
【実施例】
【0076】
実施例1:高スルホン化ポリエステル合成(7.5重量%のスルホン化)
機械的撹拌機、蒸留装置、及び底部排液弁を装備した5ガロンのParr反応器に、テレフタル酸ジメチル(3.492Kg)、ジメチル-5-スルホ-イソフタル酸ナトリウム塩(940g)、1,2-プロパンジオール(2.9Kg)、ジエチレングリコール(449g)及びFASCAT 4100(7.2g)を投入した。混合物を窒素流(3 SCFH)で120℃まで加熱した後、50rpmで撹拌を開始した。次に、混合物を180℃の温度に達するまで2時間にわたって0.5℃/分で加熱し、その間にメタノール副生成物を蒸留物受器に回収した。次いで、混合物を210℃の温度に達するまで0.25℃の速度で加熱し、その間にメタノール及び超過した1,2-プロパンジオールの両方を蒸留受器に回収した。次いで、210℃で1時間かけて4.4mm-Hgに達するまで徐々に真空をかけた。次に、混合物を窒素で大気圧に再加圧し、内容物を底部排液口を通して容器内に排出した。次いで、この製品を室温まで一晩冷却し、続いて、フィッツミルを使用して造粒した。生成物は、約55.4℃の開始ガラス転移温度、約1,326g/モルの数平均分子量、約2,350g/モルの重量平均分子量、及び約135.9℃の軟化点を示した。
【0077】
実施例2~4:DALIインクへの配合
【0078】
【0079】
加熱ジャケット及びオーバーヘッドミキサを備えた150mLのビーカーに、水及びSR610を添加した。次いで、溶液を600rpmのコールズブレードで剪断し、ビーカーに乾燥XFast顔料を添加した。XFast顔料が完全に分散したら(約15分)、次に、剪断を続けながら、実施例1のスルホポリエステル(sulfopolyester、「SPE」)を分散体に徐々に添加した。スルホポリエステルの添加後、混合物を10~15分間又はポリマーが完全に分散するまで85~90℃にした。混合物を約60℃に冷却した後、Solmer U 560及びSolmer SWA8006W20を添加し、更に10分間撹拌した。熱及びミキサーをそれぞれ50℃未満及び300rpmに低下させた。最後に、Irgacure 819 DWを撹拌混合物に滴下し、これを更に10~15分間混合して、完成したインクを得た。実施例3~5の各インクについてこの手順に従った。インクサンプルの複素粘度は、TA InstrumentsからのDHR-2レオメーターを使用して25℃で測定し、データを
図2に示している。
【0080】
実施例5:平版印刷治具上にポリウレタンを含有するインクの転写効率試験
実施例2、3、及び4は、典型的な平版印刷状態下でブランケットからのインク転写の効率を評価するために、DALI代理印刷試験治具(ここでは「Mimico」と呼ぶ)で試験された。アニロックスロールにインクを充填し、ブランケットに転写し、次にSterling Gloss#80紙にオフセット押付し、続いて、ブランケット(「追跡シート」)上に残っている可能性のある残留インクを監視するために、新しい紙と以前にインクを塗ったブランケットとの間で第2及び第3のオフセットイベントを行った。次いで、395nm及び365nmのLED照明、又はそれらのLED照明の両方の組み合わせを使用して印刷物を硬化させた。印刷を0.1及び0.5m/sの速度で硬化させた。
【0081】
比較実施例Aは、インクをブランケット上に手で転がし、次いでブランケットの上部にあるSterling Gloss#80紙のシートに圧力を加えることにより試験された。試験の結果を
図3に示す。しかしながら、比較実施例Aのインクは、(低粘度及び粘着性に起因して)>90~95%の転写を有する代わりに、DALI治具及びインクスプリット上に適切に印刷するには薄すぎたことに留意されたい。したがって、ウレタンアクリレートオリゴマーを含まない比較実施例Aは、DALI技術の実行可能な選択肢ではなかったと判定され、
【0082】
図3は、4つのインクサンプルのオフセット印刷結果を示す。実施例2及び3は、「追跡」シート上で観察された残留インクが少ない良好なインク転写を示した。実施例3の追跡にはより多くの残留物が存在するが、これは初期の実験であり、インクの粘着度を増加させることによって、転写も増加するはずである。
【0083】
実施例6:堅牢性試験
実施例2、3及び4並びに比較実施例Aのインクの乾燥印刷物を紙にコーティングし、テープ試験、水綿棒試験、及びイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol、IPA)試験を含む予備堅牢性試験にかけた。結果を表2に要約し、以下に記載する。
・印刷物はテープ試験に対して堅牢であり、スコッチテープを印刷面に圧力をかけてきれいに除去した。
・印刷物は、綿棒を水に浸し、紙が見えるようになるまで綿棒を印刷表面にわたって圧力をかけて擦った(上下に1回ずつの二重摩擦)、水綿棒試験に対して堅牢だった。試験の結果を表2に示す。結果をT=0、並びにT=1(24時間)で記録した。
・印刷物は、綿棒をIPAに浸し、紙が見えるようになるまで印刷表面にわたって圧力をかけて擦った(上下に1回ずつの二重摩擦)、IPA綿棒試験に対して堅牢だった。試験の結果を表2に示す。結果をT=0、並びにT=1(24時間)で記録した。
・硬化前に水をフィルムから除去する必要があるかどうかを確認するために、UV照射に曝露する前に印刷物をヒートガンで乾燥させた。これは、堅牢性特性に対して非常に最小限の影響を与えたか、全く影響を与えなかった。水性インクは、典型的には、UV照射に曝露する前に、任意の残りの水を除去する必要がある。「湿潤硬化」水性UV硬化性インクの能力は、予想外の利点である。
【0084】
【0085】
実施例7~10:DALIインク製剤
【0086】
【0087】
実施例7~10の組成物を以下のように調製した。加熱ジャケット及びオーバーヘッドミキサを備えた150mLビーカーに、水、Dynwet 800及びSR9035を添加した。次いで、溶液を600rpmのコールズブレードで剪断し、ビーカーに乾燥XFast顔料を添加した。XFast顔料が完全に分散したら(約15分)、次に、剪断を続けながら、実施例1のスルホポリエステル(sulfopolyester、「SPE」)を分散体に徐々に添加した。スルホポリエステルの添加後、混合物を10~15分間又はポリマーが完全に分散するまで85~90℃にした。混合物を約60℃に冷却した後、Solmer U 560及びSolmer SWA8006W20を添加し、更に10分間撹拌した。熱及びミキサーをそれぞれ50℃未満及び300rpmに低下させた。最後に、Irgacure 819 DWを撹拌混合物に滴下し、これを更に10~15分間混合して、完成したインクを得た。実施例7~10の各インクについてこの手順に従った。
【0088】
実施例11:インク組成物8~11に対する堅牢性試験
実施例7、8、9及び10のインクの乾燥印刷物を紙にコーティングし、水綿棒試験及びイソプロピルアルコール(IPA)試験を含む予備堅牢性試験にかけた。結果を表4に要約し、以下に記載する。
・印刷物は、綿棒を水に浸し、紙が見えるようになるまで綿棒を印刷表面にわたって圧力をかけて擦った(上下に1回ずつの二重摩擦)、水綿棒試験に対して堅牢だった。試験の結果を表4に示す。結果をT=0、並びにT=1(24時間)で記録した。
・印刷物は、綿棒をIPAに浸し、紙が見えるようになるまで印刷表面にわたって圧力をかけて擦った(上下に1回ずつの二重摩擦)、IPA綿棒試験に対して堅牢だった。試験の結果を表4に示す。結果をT=0、並びにT=1(24時間)で記録した。
【0089】
【0090】
実施例12:平版印刷治具上にポリウレタンを含有するインクの転写効率試験
実施例7、8、9及び10は、典型的な平版印刷状態下でブランケットからのインク転写の効率を評価するために、DALI代理印刷試験治具(ここでは「Mimico」と呼ぶ)で試験された。アニロックスロールにインクを充填し、ブランケットに転写し、次にSterling Gloss#80紙にオフセット押付し、続いて、ブランケット(「追跡シート」)上に残っている可能性のある残留インクを監視するために、新しい紙と以前にインクを塗ったブランケットとの間で第2及び第3のオフセットイベントを行った。次いで、395nm又は365nmのLED照明、あるいはそれらのLED照明の両方の組み合わせを使用して印刷物を硬化させた。印刷を0.1及び0.5m/sの速度で硬化させた。
【0091】
試験の結果を
図4に示す。実施例7、8、9及び10は、「追跡」シート上で観察された残留インクが少ない良好なインク転写を示した。
【0092】
要約すると、高度にスルホン化されたポリエステル樹脂(7.5%)と水性UV硬化性脂肪族ウレタンアクリレートからなる例示的な水性DALIインク組成物は、UV硬化前にフィルム中の超過した水を除去する必要なく、高い化学的、水、及び耐擦傷性を含む良好な堅牢性を示した。インク製剤は、現在のDALI印刷装置を変更する必要なく、硬化性成分のマイグレーションが少ないため、食品ラベル及びパッケージなどの拡大した市場用途に好適であると考えられている。水を完全に乾燥させる必要なく、水性インクをUV光で硬化させる能力は、予想外である。