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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20240322BHJP
   H02P 29/028 20160101ALI20240322BHJP
   B60T 8/175 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B60L15/20 Y
H02P29/028
B60T8/175
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020052970
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021153363
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】執行 正勝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】藤田 好隆
(72)【発明者】
【氏名】山下 智弘
(72)【発明者】
【氏名】長坂 学
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正雄
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 壮太
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-065733(JP,A)
【文献】特開2017-158337(JP,A)
【文献】特開2012-086709(JP,A)
【文献】特開2008-162395(JP,A)
【文献】特開2004-272741(JP,A)
【文献】特開2014-183651(JP,A)
【文献】特開2007-232069(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/088501(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
H02P 29/028
B60T 8/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)の駆動輪(11,12)に駆動力又は制動力を付与する電動モータ(20)を備え、前記駆動輪がスリップした際に前記電動モータの出力トルクを制御することにより前記駆動輪のスリップを抑制する車両の制御装置であって、
前記駆動輪のスリップを検出するスリップ検出部(510)と、
前記電動モータの回転速度を検出する回転速度検出部(200)と、
前記電動モータを制御するものであって、前記駆動輪がスリップしていることを検知した際に、前記電動モータの回転速度を目標回転速度に追従させる回転速度フィードバック制御の実行により前記電動モータのトルク指令値を演算するとともに、前記トルク指令値に基づいて前記電動モータの出力トルクを制御するモータ制御部(520)と、
前記回転速度フィードバック制御の実行の際に、前記電動モータから前記駆動輪までの動力伝達要素の共振に基づく前記電動モータのハンチングを抑制するためのハンチング抑制制御を実行するハンチング抑制部(527)と、
前記電動モータがハンチングしているか否かを検出するハンチング検出部(526)と、を備え
前記ハンチング抑制部は、
前記ハンチング検出部により前記電動モータのハンチングが検出されることに基づいて前記ハンチング抑制制御を実行し、
前記ハンチング検出部は、
前記電動モータの回転速度又は出力トルクに対してバンドパスフィルタに基づくフィルタリング処理を施すバンドパスフィルタ部(526a)と、
前記バンドパスフィルタ部を通じてフィルタリング処理が施された演算値の微分値の絶対値を演算する微分演算処理部(526b)と、
前記微分値の絶対値の区間積分値又は移動平均値をハンチング変数として演算するハンチング変数演算部(526c)と、を有し、
前記ハンチング変数が、予め定められた所定の判定値以上であることに基づいて前記電動モータのハンチングを検出する
車両の制御装置。
【請求項2】
車両(10)の駆動輪(11,12)に駆動力又は制動力を付与する電動モータ(20)を備え、前記駆動輪がスリップした際に前記電動モータの出力トルクを制御することにより前記駆動輪のスリップを抑制する車両の制御装置であって、
前記駆動輪のスリップを検出するスリップ検出部(510)と、
前記電動モータの回転速度を検出する回転速度検出部(200)と、
前記電動モータを制御するものであって、前記駆動輪がスリップしていることを検知した際に、前記電動モータの回転速度を目標回転速度に追従させる回転速度フィードバック制御の実行により前記電動モータのトルク指令値を演算するとともに、前記トルク指令値に基づいて前記電動モータの出力トルクを制御するモータ制御部(520)と、
前記回転速度フィードバック制御の実行の際に、前記電動モータから前記駆動輪までの動力伝達要素の共振に基づく前記電動モータのハンチングを抑制するためのハンチング抑制制御を実行するハンチング抑制部(527)と、
前記電動モータがハンチングしているか否かを検出するハンチング検出部(526)と、を備え、
前記ハンチング抑制部は、
前記ハンチング検出部により前記電動モータのハンチングが検出された場合、前記ハンチング抑制制御として、ハンチングが検出されていない場合よりも前記回転速度フィードバック制御のトルク指令値のゲインを小さくすることにより前記電動モータのハンチングを抑制する
両の制御装置。
【請求項3】
車両(10)の駆動輪(11,12)に駆動力又は制動力を付与する電動モータ(20)を備え、前記駆動輪がスリップした際に前記電動モータの出力トルクを制御することにより前記駆動輪のスリップを抑制する車両の制御装置であって、
前記駆動輪のスリップを検出するスリップ検出部(510)と、
前記電動モータの回転速度を検出する回転速度検出部(200)と、
前記電動モータを制御するものであって、前記駆動輪がスリップしていることを検知した際に、前記電動モータの回転速度を目標回転速度に追従させる回転速度フィードバック制御の実行により前記電動モータのトルク指令値を演算するとともに、前記トルク指令値に基づいて前記電動モータの出力トルクを制御するモータ制御部(520)と、
前記回転速度フィードバック制御の実行の際に、前記電動モータから前記駆動輪までの動力伝達要素の共振に基づく前記電動モータのハンチングを抑制するためのハンチング抑制制御を実行するハンチング抑制部(525)と、
前記電動モータがハンチングしているか否かを検出するハンチング検出部(526)と、を備え、
前記モータ制御部は、
前記駆動輪がスリップしていることを検出していない場合、前記電動モータの出力トルクをフィードフォワード制御するトルク制御を実行するものであって、
前記ハンチング抑制部は
前記ハンチング検出部により前記電動モータのハンチングが検出された場合、前記ハンチング抑制制御として、前記電動モータの制御を前記回転速度フィードバック制御から前記トルク制御に切り替えることにより前記電動モータのハンチングを抑制する
両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の駆動輪のスリップを抑制する制御装置としては、下記の特許文献1に記載の装置がある。特許文献1に記載の制御装置は、車両の駆動輪に駆動力を伝達する電動モータと、電動モータを制御する制御装置とを備えている。制御装置は、駆動輪がスリップしていることが検知されたときに、駆動輪のスリップを小さくさせることが可能な目標駆動輪速度を設定するとともに、実際の駆動輪の回転速度と目標駆動輪速度との偏差に基づくフィードバック制御の実行により電動モータの出力トルクを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-6681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような車両では駆動輪の回転速度と電動モータの回転速度との間に相関関係がある。したがって、駆動輪がスリップしていることを検知した際に電動モータの回転速度のフィードバック制御を実行することで駆動輪のスリップを抑制することも可能である。発明者らは、電動モータの回転速度のフィードバック制御を用いた制御装置を検討している。具体的には、駆動輪がスリップしていることが検知された際に、予め定められた目標スリップ率に対応した目標回転速度を設定するとともに、電動モータの回転速度を目標回転速度に追従させる回転速度フィードバック制御の実行により電動モータの出力トルクを制御する。
【0005】
ところで、フィードバック制御では、応答遅れ等により、制御値である電動モータの回転速度が特定の周波数で共振し易い特性がある。また、電動モータの出力トルクを駆動輪まで伝達する動力伝達要素には複数の共振系が存在する。そのため、外乱により、あるいは制御切替等のトルクの急変により、電動モータの回転速度や出力トルク等がハンチングするおそれがある。
【0006】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動モータのハンチングを抑制することが可能な車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する制御装置は、車両の駆動輪(11,12)に駆動力又は制動力を付与する電動モータ(20)を備え、駆動輪がスリップした際に電動モータの出力トルクを制御することにより駆動輪のスリップを抑制する車両の制御装置である。制御装置は、スリップ検出部(510)と、回転速度検出部(200)と、モータ制御部(520)と、ハンチング抑制部(525,527)と、ハンチング検出部(526)と、を備える。スリップ検出部は、駆動輪のスリップを検出する。回転速度検出部は、電動モータの回転速度を検出する。モータ制御部は、電動モータを制御するものであって、駆動輪がスリップしていることを検知した際に、電動モータの回転速度を目標回転速度に追従させる回転速度フィードバック制御の実行により電動モータのトルク指令値を演算するとともに、トルク指令値に基づいて電動モータの出力トルクを制御する。ハンチング抑制部は、回転速度フィードバック制御の実行の際に、電動モータから駆動輪までの動力伝達要素の共振に基づく電動モータのハンチングを抑制するためのハンチング抑制制御を実行する。ハンチング検出部は、電動モータがハンチングしているか否かを検出する。ハンチング抑制部は、ハンチング検出部により電動モータのハンチングが検出されることに基づいてハンチング抑制制御を実行する。ハンチング検出部は、電動モータの回転速度又は出力トルクに対してバンドパスフィルタに基づくフィルタリング処理を施すバンドパスフィルタ部(526a)と、バンドパスフィルタ部を通じてフィルタリング処理が施された演算値の微分値の絶対値を演算する微分演算処理部(526b)と、微分値の絶対値の区間積分値又は移動平均値をハンチング変数として演算するハンチング変数演算部(526c)と、を有する。ハンチング変数が、予め定められた所定の判定値以上であることに基づいて電動モータのハンチングを検出する。
上記課題を解決する他の制御装置は、車両の駆動輪(11,12)に駆動力又は制動力を付与する電動モータ(20)を備え、駆動輪がスリップした際に電動モータの出力トルクを制御することにより駆動輪のスリップを抑制する車両の制御装置である。制御装置は、スリップ検出部(510)と、回転速度検出部(200)と、モータ制御部(520)と、ハンチング抑制部(525,527)と、ハンチング検出部(526)と、を備える。スリップ検出部は、駆動輪のスリップを検出する。回転速度検出部は、電動モータの回転速度を検出する。モータ制御部は、電動モータを制御するものであって、駆動輪がスリップしていることを検知した際に、電動モータの回転速度を目標回転速度に追従させる回転速度フィードバック制御の実行により電動モータのトルク指令値を演算するとともに、トルク指令値に基づいて電動モータの出力トルクを制御する。ハンチング抑制部は、回転速度フィードバック制御の実行の際に、電動モータから駆動輪までの動力伝達要素の共振に基づく電動モータのハンチングを抑制するためのハンチング抑制制御を実行する。ハンチング検出部は、電動モータがハンチングしているか否かを検出する。ハンチング抑制部は、ハンチング検出部により電動モータのハンチングが検出された場合、ハンチング抑制制御として、ハンチングが検出されていない場合よりも回転速度フィードバック制御のトルク指令値のゲインを小さくすることにより電動モータのハンチングを抑制する。
上記課題を解決する他の制御装置は、車両の駆動輪(11,12)に駆動力又は制動力を付与する電動モータ(20)を備え、駆動輪がスリップした際に電動モータの出力トルクを制御することにより駆動輪のスリップを抑制する車両の制御装置である。制御装置は、スリップ検出部(510)と、回転速度検出部(200)と、モータ制御部(520)と、ハンチング抑制部(525,527)と、ハンチング検出部(526)と、を備える。スリップ検出部は、駆動輪のスリップを検出する。回転速度検出部は、電動モータの回転速度を検出する。モータ制御部は、電動モータを制御するものであって、駆動輪がスリップしていることを検知した際に、電動モータの回転速度を目標回転速度に追従させる回転速度フィードバック制御の実行により電動モータのトルク指令値を演算するとともに、トルク指令値に基づいて電動モータの出力トルクを制御する。ハンチング抑制部は、回転速度フィードバック制御の実行の際に、電動モータから駆動輪までの動力伝達要素の共振に基づく電動モータのハンチングを抑制するためのハンチング抑制制御を実行する。ハンチング検出部は、電動モータがハンチングしているか否かを検出する。モータ制御部は、駆動輪がスリップしていることを検出していない場合、電動モータの出力トルクをフィードフォワード制御するトルク制御を実行するものである。ハンチング抑制部は、ハンチング検出部により電動モータのハンチングが検出された場合、ハンチング抑制制御として、電動モータの制御を回転速度フィードバック制御からトルク制御に切り替えることにより電動モータのハンチングを抑制する。
【0008】
この構成によれば、電動モータがハンチングした際に、ハンチング抑制部により電動モータのハンチングを抑制することができる。
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の車両の制御装置によれば、電動モータのハンチングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の車両の概略構成を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態の車両の電気的な構成を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態のモータ制御部によるトルク指令値の演算手順を示すブロック図である。
図4図4(A),(B)は、比較例の制御装置におけるモータジェネレータ20の出力トルクTm、運転者の要求トルクTd、基準回転速度ωmb、及び回転速度ωmの推移を示すタイミングチャートである。
図5図5は、第1実施形態のハンチング検出部及びハンチング抑制部の処理手順を示すフローチャートである。
図6図6は、第1実施形態のハンチング検出部の処理手順を示すフローチャートである。
図7図7(A)~(D)は、モータジェネレータの回転速度ωm、フィルタリング処理後の回転速度ωmf、微分値の絶対値|dωmf/dt|、及びハンチング変数Xhの推移を示すタイミングチャートである。
図8図8は、第1実施形態の制御装置におけるモータジェネレータ20の出力トルクTm、運転者の要求トルクTd、基準回転速度ωmb、及び回転速度ωmの推移を示すタイミングチャートである。
図9図9は、第1実施形態の制御装置におけるモータジェネレータ20の出力トルクTm、運転者の要求トルクTd、基準回転速度ωmb、及び回転速度ωmの推移を示すタイミングチャートである。
図10図10は、第2実施形態のモータ制御部によるトルク指令値の演算手順を示すブロック図である。
図11図11は、第3実施形態のモータ制御部によるトルク指令値の演算手順を示すブロック図である。
図12図12は、第4実施形態のモータ制御部によるトルク指令値の演算手順を示すブロック図である。
図13図13(A),(B)は、第4実施形態の制御装置におけるモータジェネレータ20の出力トルクTm、運転者の要求トルクTd、基準回転速度ωmb、及び回転速度ωmの推移を示すタイミングチャートである。
図14図14(A),(B)は、第5実施形態の制御装置におけるモータジェネレータ20の出力トルクTm、運転者の要求トルクTd、基準回転速度ωmb、及び回転速度ωmの推移を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両の制御装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、第1実施形態の車両の制御装置について説明する。まず、本実施形態の制御装置が搭載される車両の概略構成について説明する。
【0012】
図1に示される本実施形態の車両10は、モータジェネレータ20と、インバータ装置21と、電池22と、差動装置23とを備えている。車両10は、モータジェネレータ20の動力に基づいて走行する、いわゆる電動車両である。
インバータ装置21は、電池22に蓄えられている直流電力を三相交流電力に変換するとともに、変換された三相交流電力をモータジェネレータ20に供給する。
【0013】
モータジェネレータ20は電動機及び発電機として動作する。モータジェネレータ20は、電動機として動作する場合、インバータ装置21から供給される三相交流電力に基づいて駆動する。そのモータジェネレータ20の駆動力が差動装置23及び駆動軸24を介して車両10の右前輪11及び左前輪12に伝達されることにより右前輪11及び左前輪12が回転して、車両10が走行する。車両10では、右前輪11及び左前輪12が駆動輪として機能し、右後輪13及び左後輪14が従動輪として機能する。したがって、本実施形態では、右前輪11が右駆動輪に相当し、左前輪12が左駆動輪に相当する。また、モータジェネレータ20が電動モータに相当する。
【0014】
モータジェネレータ20は、車両の制動時に発電機として動作する。具体的には、車両10の制動時、右前輪11及び左前輪12に加わる制動力が駆動軸24及び差動装置23を介してモータジェネレータ20に入力される。モータジェネレータ20は、この右前輪11及び左前輪12から逆入力される動力に基づいて発電する。モータジェネレータ20により発電される三相交流電力はインバータ装置21により直流電力に変換されて電池22に充電される。
【0015】
差動装置23は、複数の回転要素の組み合わせにより構成されるものであって、右前輪11及び左前輪12のそれぞれの回転速度に差が生じた際に、その回転速度差を吸収しつつ、モータジェネレータ20から伝達される駆動力を右前輪11及び左前輪12に振り分けて伝えるように構成されている。
【0016】
車両10の車輪11~14には摩擦ブレーキ装置31~34がそれぞれ設けられている。摩擦ブレーキ装置31~34は、各車輪11~14と一体となって回転する回転体に摩擦力を付与することにより各車輪11~14に制動力を付与する装置である。
次に、車両10の電気的な構成について説明する。
【0017】
図2に示されるように、車両10は、車輪速センサ41~44と、加速度センサ45と、ヨーレートセンサ46と、アクセル開度センサ47と、ESC-ECU(Electronic Stability Control-Electronic Control Unit)51と、EV-ECU(Electric Vehicle-Electronic Control Unit)52と、MG-ECU(Motor Generator-Electronic Control Unit)53とを備えている。各ECU51~53は、CPUやメモリ等を有するマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0018】
図1に示されるように、車輪速センサ41~44は車輪11~14にそれぞれ設けられている。車輪速センサ41~44は、車輪11~14のそれぞれの回転速度である車輪速ωw11~ωw14を検出するとともに、検出された車輪速ωw11~ωw14に応じた信号を図2に示されるESC-ECU51に出力する。
【0019】
加速度センサ45は車両10の横加速度を検出するとともに、検出された横加速度に応じた信号をESC-ECU51に出力する。
ヨーレートセンサ46は、車両10の垂直軸周りの角速度であるヨーレートを検出するとともに、検出されたヨーレートに応じた信号をESC-ECU51に出力する。
【0020】
アクセル開度センサ47は、車両10のアクセルペダルの踏み込み量に相当するアクセル開度を検出するとともに、検出されたアクセル開度に応じた信号をEV-ECU52に出力する。
ESC-ECU51は、そのメモリに予め記憶されたプログラムを実行することにより、車両10の姿勢を安定させるための車両挙動制御を実行する。車両挙動制御とは、例えば車両10の横滑りを抑制する横滑り防止制御である。具体的にはESC-ECU51はスリップ検出部510とブレーキ制御部511とを備えている。スリップ検出部510は、加速度センサ45により検出される車両10の横加速度、及びヨーレートセンサ46により検出される車両10のヨーレートに基づいて車両10にオーバーステアやアンダーステアが発生しているか否かを判定する。スリップ検出部510によりオーバーステアやアンダーステアが検知された場合、ブレーキ制御部511は、摩擦ブレーキ装置31~34により各車輪11~14に制動力を付与することにより、理想の走行状態に近づけるように車両10の姿勢を自動制御する。
【0021】
MG-ECU53は、そのメモリに予め記憶されたプログラムを実行することにより、モータジェネレータ20を統括的に制御する。例えば、MG-ECU53は、EV-ECU52からの要求に基づいてインバータ装置21を駆動させることによりモータジェネレータ20を制御する。MG-ECU53は、例えばモータジェネレータ20の出力トルクの指令値であるトルク指令値をEV-ECU52から受信すると、そのトルク指令値に応じた動力がモータジェネレータ20から出力されるようにインバータ装置21を駆動させる。また、MG-ECU53は、車両10の制動時には、モータジェネレータ20の回生発電により発電される電力が電池22に充電されるようにインバータ装置21を駆動させる。
【0022】
なお、モータジェネレータ20には、その回転速度を検出する回転センサ200が設けられている。回転センサ200は、モータジェネレータ20の回転速度ωmを検出するとともに、検出された回転速度ωmに応じた信号をMG-ECU53に出力する。MG-ECU53は回転センサ200の出力信号に基づいてモータジェネレータ20の回転速度ωmの情報を取得することが可能である。本実施形態では、回転センサ200が回転速度検出部に相当する。
【0023】
EV-ECU52は、そのメモリに予め記憶されたプログラムを実行することにより、車両10の走行を統括的に制御する。EV-ECU52はモータ制御部520を備えている。モータ制御部520は、例えばアクセル開度センサ47により検出されるアクセル開度等に基づいて、モータジェネレータ20の出力トルクの目標値であるトルク指令値を設定するとともに、設定されたトルク指令値をMG-ECU53に送信する。これによりMG-ECU53が、トルク指令値に対応したトルクがモータジェネレータ20から出力されるようにインバータ装置21を駆動させる。このようなモータジェネレータ20のトルク制御を通じて運転者の運転要求に応じた車両10の走行が実現される。以下では、モータ制御部520が、車両10の各種状態量に基づいてトルク指令値を設定した上で、このトルク指令値に基づいてモータジェネレータ20を駆動させる制御を「トルク制御」と称する。トルク制御は、基本的には、フィードフォワード制御である。
【0024】
ESC-ECU51のスリップ検出部510は、車両10の駆動輪11,12がスリップしているか否かを監視している。EV-ECU52のモータ制御部520は、車両10の発進時又は加速時又は減速時にスリップ検出部510により駆動輪11,12のスリップが検知された際に、それらのスリップを抑制するスリップ抑制制御をMG-ECU53を通じて実行する。このように、本実施形態では、車両10のスリップを抑制する制御装置50がECU51~53により構成されている。
【0025】
次に、スリップ検出部510により実行されるスリップの検知手順、及びモータ制御部520により実行されるスリップ抑制制御の手順について具体的に説明する。
スリップ検出部510は、駆動輪11,12がスリップしているか否かを所定の周期で判定している。スリップ判定は、例えばモータジェネレータ20の回転速度や駆動輪11,12のスリップ率を用いて行うことができる。
【0026】
モータジェネレータ20の回転速度を用いてスリップ判定を行う場合、スリップ検出部510は、車輪速センサ41~44のそれぞれの出力信号に基づいて各車輪11~14の車輪速ωw11~ωw14の情報を取得する。スリップ検出部510は、取得した各車輪11~14の車輪速ωw11~ωw14から演算式等を用いて、車両10の走行速度である車体速度Vbを推定する。スリップ検出部510は、推定された現在の車体速度Vbと、予め定められたスリップ判定値Sthとから、スリップ判定値Sthに対応した駆動輪11,12のスリップ判定回転速度を演算する。スリップ検出部510は、演算された駆動輪11,12のスリップ判定回転速度から、モータジェネレータ20から駆動輪11,12までの動力伝達系の減速比等を用いることによりモータジェネレータ20のスリップ判定回転速度ωmthsを演算する。スリップ検出部510は、モータジェネレータ20の実際の回転速度ωmの情報をMG-ECU53からEV-ECU52を介して取得するとともに、取得したモータジェネレータ20の実回転速度ωmがスリップ判定回転速度ωmthsを超えることに基づいて、駆動輪11,12がスリップしていると判定する。
【0027】
また、スリップ率を用いてスリップ判定を行う場合、スリップ検出部510は、駆動輪11,12のそれぞれの車輪速ωw11,ωw12の平均値を演算することにより駆動輪の車輪速Vωを求める。スリップ検出部510は、車体速度Vb及び駆動輪11,12の車輪速Vωから以下の式f1に基づいてスリップ率Sを演算する。
【0028】
S=(Vb-Vω)/MAX(Vb,Vω)×100 (f1)
スリップ検出部510は、式f1により演算されるスリップ率Sが、予め定められたスリップ判定値Sthを超えることに基づいて、駆動輪11,12がスリップしていると判定する。
【0029】
スリップ検出部510は、駆動輪11,12がスリップしていることを検知した場合、その旨をEV-ECU52に通知する。EV-ECU52のモータ制御部520は、スリップ検出部510により駆動輪11,12のスリップが検出されていない場合には、上述したトルク制御を実行する。一方、モータ制御部520は、スリップ検出部510により駆動輪11,12のスリップが検出されている場合には、モータジェネレータ20の回転速度を目標回転速度に追従させる回転速度フィードバック制御を実行する。
【0030】
具体的には、図3に示されるように、モータ制御部520は、基本トルク指令値演算部521と、目標回転速度演算部522と、回転速度フィードバック制御部523と、切替判定部524と、切替部525とを有している。
基本トルク指令値演算部521は、上述したトルク制御に応じたトルク指令値である第1トルク指令値Tb*を演算する。すなわち、基本トルク指令値演算部521は、アクセル開度センサ47により検出されるアクセル開度等に基づいて第1トルク指令値Tb*を演算する。基本トルク指令値演算部521は、演算した第1トルク指令値Tb*を切替部525に出力する。第1トルク指令値Tb*は、車両10の運転者の要求に応じたトルク指令値である。本実施形態では、第1トルク指令値Tb*がトルク制御のトルク指令値に相当する。
【0031】
目標回転速度演算部522は、駆動輪11,12のスリップを抑制することが可能なモータジェネレータ20の目標回転速度ωm*を演算する。具体的には、目標回転速度演算部522は、現在の車体速度Vbと、予め定められた目標スリップ率Staとから、目標スリップ率に対応した駆動輪11,12の目標車輪速Vω*を演算する。目標回転速度演算部522は、演算された駆動輪11,12の目標車輪速Vω*から、モータジェネレータ20から駆動輪11,12までの動力伝達系の減速比等を用いることによりモータジェネレータ20の目標回転速度ωm*を演算する。目標回転速度演算部522は、演算した目標回転速度ωm*を回転速度フィードバック制御部523に出力する。
【0032】
回転速度フィードバック制御部523は、目標回転速度演算部522により演算される目標回転速度ωm*と、モータジェネレータ20の実回転速度ωmとに基づいて、回転速度ωmを目標回転速度ωm*に追従させるフィードバック制御の実行により第2トルク指令値Tω*を演算する。以下では、このフィードバック制御を「回転速度フィードバック制御」と称する。回転速度フィードバック制御は例えばPID制御として実行される。回転速度フィードバック制御部523は、演算した第2トルク指令値Tω*を切替部525に出力する。本実施形態では、第2トルク指令値Tω*が、回転速度フィードバック制御のトルク指令値に相当する。
【0033】
切替部525は、MG-ECU53に通知する最終トルク指令値T*として第1トルク指令値Tb*及び第2トルク指令値Tω*のいずれを用いるかを切り替える部分である。切替部525の切り替えは切替判定部524により実行される。切替判定部524は、スリップ検出部510の検出結果に基づいて駆動輪11,12がスリップしていないと判断した場合には、最終トルク指令値T*が第1トルク指令値Tb*に設定されるように切替部525を動作させる。一方、切替判定部524は、スリップ検出部510の検出結果に基づいて駆動輪11,12がスリップしていると判断した場合には、最終トルク指令値T*が第2トルク指令値Tω*に設定されるように切替部525を動作させる。
【0034】
EV-ECU52は、切替部525から出力される最終トルク指令値T*をMG-ECU53に送信することによりモータジェネレータ20を制御する。これにより、駆動輪11,12のスリップが検出されていない場合にはトルク制御によりモータジェネレータ20が制御され、駆動輪11,12のスリップが検出されている場合には回転速度フィードバック制御によりモータジェネレータ20が制御される。
【0035】
ところで、駆動輪11,12のスリップが検出されているときに回転速度フィードバック制御を実行する場合、外乱や制御切替時のトルクの急変によりモータジェネレータ20がハンチングするおそれがある。
例えば車両10が走行している路面が凍結路からドライ路に変化した場合を考える。車両10が凍結路を走行している場合、路面摩擦係数の低い低μ路に駆動輪11,12が接地しているため、駆動輪11,12がスリップする。そのため、最終トルク指令値T*は、回転速度フィードバック制御に基づいて設定される第2トルク指令値Tω*に設定される。したがって、モータジェネレータ20の出力トルクは第2トルク指令値Tω*となるように制御される。第2トルク指令値Tω*は、第1トルク指令値Tb*よりも小さい値、換言すれば運転者の要求に応じたトルクよりも小さい値である。そのため、図4(A)に実線及び一点鎖線で示されるように、モータジェネレータ20の出力トルクTmは、運転者の要求に応じたトルクTdよりも小さい値で推移する。このとき、モータジェネレータ20の回転速度ωmは、車体速度Vb及び目標スリップ率Staに基づいて定まる回転速度で制御される。そのため、スリップしていない駆動輪11,12の回転速度に対応したモータジェネレータ20の回転速度を基準回転速度ωmbとすると、図4(B)に示されるように、モータジェネレータ20の回転速度ωmは基準回転速度ωmbよりも若干大きい値で推移する。なお、駆動輪11,12がスリップしている状態であっても、従動輪13,14はスリップしていないため、基準回転速度ωmbは、従動輪13,14の回転速度に対応したモータジェネレータ20の回転速度に相当する。
【0036】
その後、時刻t10で車両10の走行路面が凍結路からドライ路に変化したとすると、駆動輪11,12がスリップ状態から急峻に回復するため、モータジェネレータ20の回転速度ωmは基準回転速度ωmbに近づくように変化する。このとき、モータジェネレータ20の回転速度ωmは、その直前の凍結路に対応した制御値から基準回転速度ωmbに近づくように変化するため、それらの回転速度の差に応じた捻れが、モータジェネレータ20から駆動輪11,12までの動力伝達要素に発生する。動力伝達要素には駆動軸24等が含まれる。このようにして駆動軸24等の動力伝達要素に捩りが発生することにより動力伝達要素が振動する結果、モータジェネレータ20の出力軸等が振動する。そのため、図4(B)に実線で示されるように、時刻t10以降、モータジェネレータ20の回転速度ωmが振動したり、図4(A)に実線で示されるようにモータジェネレータ20の出力トルクTmが振動したりする懸念がある。この時点では、最終トルク指令値T*が、回転速度フィードバック制御の第2トルク指令値Tω*に設定されたままである。すなわち、回転速度フィードバック制御が継続して実行されている。この回転速度フィードバック制御の共振周波数が駆動軸24等の動力伝達要素の共振周波数に一致すると、図4(A),(B)に実線で示されるように、モータジェネレータ20の回転速度ωmや出力トルクTmがハンチングに至るおそれがある。
【0037】
そこで、図2に示されるように、本実施形態のEV-ECU52は、モータジェネレータ20がハンチングしているか否かを検出するハンチング検出部526と、モータジェネレータ20のハンチングを抑制するハンチング抑制部527を更に備えている。
次に、図5を参照して、ハンチング検出部526及びハンチング抑制部527の処理手順について具体的に説明する。なお、ハンチング検出部526及びハンチング抑制部527は、スリップ検出部510により駆動輪11,12のスリップが検出されている際に、図5に示される処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0038】
図5に示されるように、ハンチング検出部526は、まず、ステップS10の処理として、モータジェネレータ20のハンチングの抑制が必要であるか否かを判断する。具体的には、ハンチング検出部526は、図6に示される手順でハンチング変数Xhを演算した上で、演算されたハンチング変数Xhを用いてモータジェネレータ20のハンチングの抑制が必要であるか否かを判断する。図6に示されるように、ハンチング検出部526は、バンドパスフィルタ部526aと、微分演算処理部526bと、ハンチング変数演算部526cとを備えている。
【0039】
バンドパスフィルタ部526aは、モータジェネレータ20の実際の回転速度ωmの情報をMG-ECU53から取得するとともに、取得した回転速度ωmにバンドパスフィルタに基づくフィルタリング処理を施す。これにより、例えば図7(A)に示されるようなモータジェネレータ20の回転速度ωmから、図7(B)に示されるようなフィルタリング処理後の回転速度ωmfを得ることができる。
【0040】
図6に示されるように、微分演算処理部526bは、バンドパスフィルタ部526aの演算値であるフィルタリング処理後の回転速度ωmfの微分値の絶対値|dωmf/dt|を演算する。これにより、図7(B)に示されるようなフィルタリング処理後の回転速度ωmfから、図7(C)に示されるような微分値の絶対値|dωmf/dt|を得ることができる。
【0041】
図6に示されるように、ハンチング変数演算部526cは、微分演算処理部526bにより演算される微分値の絶対値|dωmf/dt|からハンチング変数Xhを演算する。具体的には、ハンチング変数演算部526cは、以下の式f2に基づいて区間積分値Intを演算する。なお、式f2において「a」は予め定められた所定値である。
【0042】
【数1】

ハンチング変数演算部526cは、式f2に基づいて演算される区間積分値Intをハンチング変数Xhとして用いる。これにより、図7(C)に示されるような微分値の絶対値|dωmf/dt|から、図7(D)に示されるようなハンチング変数Xhを得ることができる。
【0043】
ハンチング検出部526は、図7(D)に示されるように、ハンチング変数Xhが時刻t20で判定値Xtha以上になることに基づいて、モータジェネレータ20のハンチングを抑制する必要があると判断する。また、ハンチング検出部526は、その後にハンチング変数Xhが時刻t21で判定値Xthb以下になることに基づいて、モータジェネレータ20がハンチングから復帰したと判断する。
【0044】
図5に示されるように、ハンチング検出部526は、ステップS10の処理で否定的な判断を行った場合には、すなわちモータジェネレータ20のハンチングを抑制する必要がないと判断した場合には、ステップS12の処理として通常制御を実行する。通常制御では、回転速度フィードバック制御部523により演算される第2トルク指令値Tω*をそのまま用いて回転速度フィードバック制御が実行される。
【0045】
一方、ハンチング検出部526は、ステップS10の処理で肯定的な判断を行った場合には、すなわちモータジェネレータ20のハンチングを抑制する必要があると判断した場合には、ステップS12の処理としてハンチング抑制制御を実行する。ハンチング抑制制御は、回転速度フィードバック制御部523により演算される第2トルク指令値Tω*に対してバンドストップフィルタに基づくフィルタリング処理を施すとともに、フィルタリング処理の施された第2トルク指令値Tω*に基づいて回転速度フィードバック制御が実行される。バンドストップフィルタに基づくフィルタリング処理は、第2トルク指令値Tω*に含まれる周波数成分のうち、共振周波数に対応した周波数成分を選択的に減衰させる処理である。
【0046】
次に、本実施形態の制御装置50の動作例について説明する。
本実施形態の制御装置50では、車両10の加速時においてモータジェネレータ20のハンチングを抑制する必要があるとハンチング検出部526が判断した場合、ハンチング抑制部527が第2トルク指令値Tω*にフィルタリング処理を施す。これにより第2トルク指令値Tω*の振動が抑制されるため、図8(A)に実線で示されるようにモータジェネレータ20の出力トルクTmの振動が抑制されるとともに、図8(B)に実線で示されるようにモータジェネレータ20の回転速度ωmの振動が抑制される。また、図9(A),(B)に示されるように、車両10の減速時においても同様にモータジェネレータ20の出力トルクTmの振動が抑制されるため、モータジェネレータ20の回転速度ωmの振動を抑制することができる。
【0047】
以上説明した本実施形態の制御装置50によれば、以下の(1)~(4)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)ハンチング抑制部527は、回転速度フィードバック制御の実行の際に、モータジェネレータ20から駆動輪11,12までの動力伝達要素の共振に基づくモータジェネレータ20のハンチングを抑制するためのハンチング抑制制御を実行する。この構成によれば、モータジェネレータ20のハンチングを抑制することができる。
【0048】
(2)仮にトルク制御の実行中にハンチング抑制制御を実行したとすると、第1トルク指令値Tb*に対してバンドストップフィルタに基づくフィルタリング処理が施されることとなる。この場合、第1トルク指令値Tb*に含まれる周波数成分のうち、共振周波数に対応した周波数成分が選択的に減衰することとなるため、例えばトルク制御の応答性が低下する等の懸念がある。この点、本実施形態のハンチング抑制部527は、回転速度フィードバック制御の実行時のみハンチング抑制制御を実行する。この構成によれば、第1トルク指令値Tb*に対してフィルタリング処理が施されることがないため、トルク制御の応答性に影響を与えることなく、モータジェネレータ20のハンチングを抑制することができる。
【0049】
(3)制御装置50は、モータジェネレータ20がハンチングしているか否かを検出するハンチング検出部526を備えている。ハンチング抑制部527は、ハンチング検出部526によりモータジェネレータ20のハンチングが検出されることに基づいてハンチング抑制制御を実行する。この構成によれば、モータジェネレータ20がハンチングした時にのみハンチング抑制制御が実行されるため、ハンチングが発生していない状況で実行されるトルク制御の応答性に影響を与えることがない。
【0050】
(4)ハンチング検出部526は、バンドパスフィルタ部526aと、微分演算処理部526bと、ハンチング変数演算部526cとを備えている。ハンチング検出部526は、ハンチング変数演算部526cにより演算されるハンチング変数Xhが、予め定められた所定の判定値Xtha以上であることに基づいてモータジェネレータ20のハンチングを検出する。この構成によれば、モータジェネレータ20のハンチングを容易に検出することができる。
【0051】
(第1変形例)
次に、第1実施形態の制御装置50の第1変形例について説明する。
本変形例のハンチング検出部526は、モータジェネレータ20の回転速度ωmの正負の反転周期ΔTωが所定範囲であることに基づいてモータジェネレータ20のハンチングを検出する。回転速度ωmの正負の反転周期ΔTωは、例えば図7(A)に示されるように、波状に変化する回転速度ωmにおける山の部分及び谷の部分のいずれか一方が検出された時点から他方が検出される時点までの期間として求めることができる。ハンチング検出部526は、第1所定値T1と、第1所定値よりも大きい第2所定値T2とを用いて、反転周期ΔTωが例えば「T1<ΔTω<T2」なる関係を満たすことをもって、モータジェネレータ20がハンチングしていると判断する。
【0052】
このような構成であっても、モータジェネレータ20のハンチングを容易に検出することができる。
なお、ハンチング検出部526は、モータジェネレータ20の回転速度ωmに代えて、モータジェネレータ20の出力トルクを用いてもよい。
【0053】
(第2変形例)
次に、第1実施形態の制御装置50の第2変形例について説明する。
本変形例のハンチング検出部526は、モータジェネレータ20の回転速度ωmの振幅Amが発散傾向を示していると判定することに基づいて、あるいはモータジェネレータ20の回転速度ωmが収束していないと判定することに基づいてモータジェネレータ20のハンチングを検出する。モータジェネレータ20の回転速度ωmの振幅Amは、例えば図7(A)に示されるように、波状に変化する回転速度ωmにおける山の部分の値と谷の部分の値との偏差として求めることができる。ハンチング検出部526は、モータジェネレータ20の回転速度ωmの振幅Amが徐々に大きくなっていることに基づいて、モータジェネレータ20の回転速度ωmの振幅Amが発散傾向を示している、あるいはモータジェネレータ20の回転速度ωmが収束していないと判定する。ハンチング検出部526は、モータジェネレータ20の回転速度ωmの振幅Amが発散傾向を示していると判定した場合、あるいはモータジェネレータ20の回転速度ωmが収束していないと判定した場合、モータジェネレータ20がハンチングしていると判断する。
【0054】
このような構成であっても、モータジェネレータ20のハンチングを容易に検出することができる。
<第2実施形態>
次に、制御装置50の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態の制御装置50との相違点を中心に説明する。
【0055】
本実施形態の制御装置50は、図2に示されるハンチング検出部526を備えていない点で第1実施形態の制御装置50と異なる。すなわち、制御装置50は、モータジェネレータ20がハンチングしているか否かの検出を行わない。また、本実施形態の制御装置50は、ハンチング抑制部527が第2トルク指令値Tω*に対してフィルタリング処理を常時施すことにより、モータジェネレータ20のハンチングを抑制する。
【0056】
具体的には、図10に示されるように、本実施形態のモータ制御部520は、ハンチング抑制部527と、リセット判定部528とを更に備えている。
リセット判定部528には、駆動輪11,12のスリップ情報が切替判定部524から通知される。リセット判定部528は、切替判定部524からの通知に基づいて、駆動輪11,12がスリップしていない状態から、スリップしている状態に切り替わった際に、リセット信号をハンチング抑制部527に送信する。
【0057】
ハンチング抑制部527には、回転速度フィードバック制御部523により演算される第2トルク指令値Tω*と、リセット判定部528から送信されるリセット信号とが入力されている。ハンチング抑制部527は、第2トルク指令値Tω*に対してバンドストップフィルタに基づくフィルタリング処理を施すことによりフィルタリング処理後の第2トルク指令値Tωf*を演算する。本実施形態では、ハンチング抑制部527がバンドストップフィルタ部に相当する。
【0058】
具体的には、ハンチング抑制部527は、リセット判定部528から送信されるリセット信号を受信すると、フィルタリング処理後の第2トルク指令値Tωf*の値を初期化するとともに、その時点で回転速度フィードバック制御部523により演算された第2トルク指令値Tω*をフィルタリング処理後の第2トルク指令値Tωf*として切替部525に出力する。その後、ハンチング抑制部527は、回転速度フィードバック制御部523により演算される第2トルク指令値Tω*に対してバンドストップフィルタに基づくフィルタリング処理を施すとともに、そのフィルタリング処理後の第2トルク指令値Tωf*を切替部525に出力する。
【0059】
以上説明した本実施形態の制御装置50によれば、上記の(1)に示される作用及び効果に加え、以下の(5)及び(6)に示される作用及び効果を得ることができる。
(5)ハンチング抑制部527は、第2トルク指令値Tω*に対してバンドストップフィルタに基づくフィルタリング処理を施すことにより第2トルク指令値Tω*を減衰させる。この構成によれば、ハンチング抑制部527によるフィルタリング処理は、第2トルク指令値Tω*に含まれる周波数成分のうち、モータジェネレータ20にハンチングを生じさせる共振周波数のみに効果がある。そのため、回転速度フィードバック制御の実行中に第2トルク指令値Tω*に対してフィルタリング処理を常時施す構成であっても、第2トルク指令値Tω*に含まれる他の周波数帯への影響がほとんどない。
【0060】
(6)ハンチング抑制部527は、モータの制御がトルク制御から回転速度フィードバック制御に切り替わった時点では、第2トルク指令値Tω*をフィルタリング処理後の第2トルク指令値Tωf*としてそのまま用いるとともに、その後に第2トルク指令値Tω*に対するフィルタリング処理を有効とする。この構成によれば、モータの制御がトルク制御から回転速度フィードバック制御に切り替わった時点で最終トルク指令値T*を第2トルク指令値Tω*に即座に変化させることができるため、制御の応答性を向上させることができる。
【0061】
<第3実施形態>
次に、制御装置50の第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態の制御装置50との相違点を中心に説明する。
本実施形態の制御装置50は、第2実施形態の制御装置50と同様に、ハンチング検出部526を備えていない点で第1実施形態の制御装置50と異なる。また、本実施形態の制御装置50は、モータの制御をトルク制御から回転速度フィードバック制御に切り替える際に、その直前に設定されていた第1トルク指令値Tb*を用いて第2トルク指令値Tω*に対するフィルタリング処理を開始する。
【0062】
具体的には、図11に示されるように、ハンチング抑制部527には、基本トルク指令値演算部521により演算される第1トルク指令値Tb*と、回転速度フィードバック制御部523により演算される第2トルク指令値Tω*と、切替判定部524の通知とが入力されている。
【0063】
切替判定部524は、駆動輪11,12がスリップしていない場合、リセット信号をハンチング抑制部527に送信する。切替判定部524は、駆動輪11,12がスリップしている場合、ハンチング抑制部527にリセット信号を送信しない。
ハンチング抑制部527は、切替判定部524からリセット信号が送信されている場合、すなわち駆動輪11,12がスリップしていない場合、基本トルク指令値演算部521から送信される第1トルク指令値Tb*を最終トルク指令値T*としてそのまま出力する。
【0064】
ハンチング抑制部527は、切替判定部524からリセット信号が送信されている状態から、リセット信号が送信されていない状態に切り替わった場合、すなわち駆動輪11,12がスリップしていない状態からスリップしている状態に切り替わった場合、その時点の第1トルク指令値Tb*を初期値として、第2トルク指令値Tω*に対してバンドストップフィルタに基づくフィルタリング処理を開始する。以降、ハンチング抑制部527は、切替判定部524からリセット信号が送信されていない期間、すなわち駆動輪11,12がスリップしている状態が継続している期間、第2トルク指令値Tω*に対してバンドストップフィルタに基づくフィルタリング処理を施すとともに、そのフィルタリング処理後の第2トルク指令値Tωf*を切替部525に出力する。
【0065】
以上説明した本実施形態の制御装置50によれば、上記の(1)に示される作用及び効果に加え、以下の(7)に示される作用及び効果を得ることができる。
(7)ハンチング抑制部527は、モータジェネレータ20の制御がトルク制御から回転速度フィードバック制御に切り替わった際に、その直前に設定されていた第1トルク指令値Tb*を用いて、第2トルク指令値Tω*に対するバンドストップフィルタに基づくフィルタリング処理を開始する。この構成によれば、駆動輪11,12のスリップが検出された際に、最終トルク指令値T*が第1トルク指令値Tb*からフィルタリング処理後の第2トルク指令値Tωf*に徐々に切り替わるため、最終トルク指令値T*の急変を抑えることができる。結果的に、モータジェネレータ20のハンチングの発生を更に抑制することができる。
【0066】
<第4実施形態>
次に、制御装置50の第4実施形態について説明する。以下、第1実施形態の制御装置50との相違点を中心に説明する。
本実施形態の制御装置50は、モータジェネレータ20のハンチングが検出された際に、回転速度フィードバック制御の第2トルク指令値Tω*のゲインを小さくすることにより、モータジェネレータ20のハンチングを抑制する。
【0067】
具体的には、図12に示されるように、本実施形態のハンチング抑制部527には、第1ゲインGaと、第2ゲインGbと、ハンチング検出部526の検出結果とが入力されている。第2ゲインGbは第1ゲインGaよりも小さい値に設定されている。
ハンチング抑制部527は、ハンチング検出部526の検出結果に基づいてモータジェネレータ20にハンチングが発生していないと判断した場合には、第1ゲインGaを回転速度フィードバック制御部523に入力する。この場合、回転速度フィードバック制御部523は第1ゲインGaを用いて第2トルク指令値Tω*を演算する。
【0068】
ハンチング抑制部527は、ハンチング検出部526の検出結果に基づいてモータジェネレータ20にハンチングが発生していると判断した場合には、第2ゲインGbを回転速度フィードバック制御部523に入力する。この場合、回転速度フィードバック制御部523は第2ゲインGbを用いて第2トルク指令値Tω*を演算する。
【0069】
次に、本実施形態の制御装置50の動作例について説明する。
図13(A),(B)に示されるように、例えば時刻t10で車両10の走行路面が凍結路からドライ路に変化した後、時刻t11でモータジェネレータ20のハンチングが検出されたとすると、回転速度フィードバック制御部523により用いられる第2トルク指令値Tω*のゲインが第1ゲインGaから第2ゲインGbに切り替わる。これにより、第2トルク指令値Tω*の値が小さくなるため、図13(A)に実線で示されるように、モータジェネレータ20の出力トルクTmの変動が小さくなる。結果的に、図13(B)に示されるように、モータジェネレータ20の回転速度ωmのハンチングが大きくなる前に収束する。よって、モータジェネレータ20のハンチングが抑制される。
【0070】
以上説明した本実施形態の制御装置50によれば、上記の(1)に示される作用及び効果に加え、以下の(8)に示される作用及び効果を得ることができる。
(8)ハンチング抑制部527は、モータジェネレータ20のハンチングが検出された場合、ハンチングが検出されていない場合よりも第2トルク指令値Tω*のゲインを小さくする。この構成によれば、より的確にモータジェネレータ20のハンチングを抑制することができる。
【0071】
<第5実施形態>
次に、制御装置50の第5実施形態について説明する。以下、第1実施形態の制御装置50との相違点を中心に説明する。
本実施形態の制御装置50は、回転速度フィードバック制御の実行時にモータジェネレータ20のハンチングが検出された際に、最終トルク指令値T*を第2トルク指令値Tω*から第1トルク指令値Tb*に切り替えることによりモータジェネレータ20のハンチングを抑制する。
【0072】
具体的には、本実施形態のモータ制御部520は、図3に示される第1実施形態のモータ制御部520と同様の構成を有している。切替判定部524は、スリップ検出部510の検出結果に基づいて駆動輪11,12がスリップしていると判断した場合、最終トルク指令値T*が第2トルク指令値Tω*に設定されるように切替部525を動作させる。その後、切替判定部524は、駆動輪11,12がスリップしている状態が継続されたまま、ハンチング検出部526によりモータジェネレータ20のハンチングが検出された場合には、最終トルク指令値T*を第2トルク指令値Tω*から第1トルク指令値Tb*に切り替えるように切替部525を動作させる。
【0073】
なお、切替部525は、最終トルク指令値T*を第2トルク指令値Tω*から第1トルク指令値Tb*に切り替える際に、最終トルク指令値T*の急変を抑制するために、予め設定された時間変化量で最終トルク指令値T*を第2トルク指令値Tω*から第1トルク指令値Tb*に向かって徐々に変化させてもよい。
【0074】
次に、本実施形態の制御装置50の動作例について説明する。
図14(A),(B)に示されるように、例えば時刻t10で車両10の走行路面が凍結路からドライ路に変化した後、時刻t11でモータジェネレータ20のハンチングが検出されたとすると、時刻t11以降、最終トルク指令値T*が第2トルク指令値Tω*から第1トルク指令値Tb*に向かって徐々に変化する。そのため、図14(A)に実線で示されるように、モータジェネレータ20の出力トルクTmが、時刻t11以降、運転者の要求に応じたトルクTdに向かって徐々に変化する。結果的に、図14(B)に示されるように、モータジェネレータ20の回転速度ωmのハンチングが大きくなる前に収束する。すなわち、モータジェネレータ20のハンチングが抑制される。
【0075】
以上説明した本実施形態の制御装置50によれば、上記の(1)に示される作用及び効果に加え、以下の(9)に示される作用及び効果を得ることができる。
(9)切替部525は、モータジェネレータ20のハンチングが検出された場合、最終トルク指令値T*を第2トルク指令値Tω*から第1トルク指令値Tb*に切り替える。換言すれば、切替部525は、モータジェネレータ20のハンチングが検出された場合、モータジェネレータ20の制御を回転速度フィードバック制御からトルク制御に切り替える。この構成によれば、より的確にモータジェネレータ20のハンチングを抑制することができる。なお、本実施形態では、切替部525がハンチング抑制部として動作している。
【0076】
<第6実施形態>
次に、制御装置50の第6実施形態について説明する。以下、第1実施形態の制御装置50との相違点を中心に説明する。
本実施形態のハンチング抑制部527は、第2トルク指令値Tω*に対してフィルタリング処理を施す方法に代えて、駆動輪11,12に制動力を付与するという方法を採用することにより、モータジェネレータ20のハンチングを抑制する。
【0077】
具体的には、本実施形態のハンチング抑制部527は、ハンチング検出部526によりモータジェネレータ20のハンチングが検出された際に、その振動の位相とは逆の位相を有する制動力が駆動輪11,12に付与されるように摩擦ブレーキ装置31,32を制御する。摩擦ブレーキ装置31,32は、駆動輪11,12に制動力を付与することにより駆動軸24に間接的にトルクを付与する。これにより、駆動軸24の共振周波数をずらすことができるため、モータジェネレータ20のハンチングが抑制される。本実施形態では、摩擦ブレーキ装置31,32が制動部に相当する。
【0078】
あるいは、ハンチング抑制部527は、モータジェネレータ20とは別に、駆動軸24にトルクを付与することができる別のモータが車両10に搭載されている場合には、ハンチング抑制部527は、この別のモータを摩擦ブレーキ装置31,32に代えて用いてもよい。具体的には、ハンチング抑制部527は、ハンチング検出部526によりモータジェネレータ20のハンチングが検出された際に、駆動軸24にトルクが付与されるように別のモータを制御してもよい。この構成であっても、駆動軸24の共振周波数をずらすことができるため、モータジェネレータ20のハンチングを抑制することができる。この場合、別のモータが駆動部に相当する。
【0079】
以上説明した本実施形態の制御装置50によれば、上記の(1)に示される作用及び効果に加え、以下の(10)に示される作用及び効果を得ることができる。
(10)ハンチング抑制部527は、駆動軸24に摩擦ブレーキ装置31,32又は別のモータからトルクを付与することにより、モータジェネレータ20のハンチングを抑制する。この構成によれば、より的確にモータジェネレータ20のハンチングを抑制することができる。
【0080】
<他の実施形態>
なお、各実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・第1実施形態のハンチング検出部526は、モータジェネレータ20の回転速度ωmに代えて、モータジェネレータ20の出力トルクTmを用いることにより、モータジェネレータ20のハンチングの抑制が必要であるか否かを判断するものであってもよい。この場合、バンドパスフィルタ部526aは、モータジェネレータ20の出力トルクTmに対してバンドパスフィルタに基づくフィルタリング処理を施すものとなる。
【0081】
・第1実施形態のハンチング変数演算部526cは、微分演算処理部526bにより演算される微分値の絶対値|dωmf/dt|の区間積分値に代えて、微分値の絶対値|dωmf/dt|の移動平均値をハンチング変数Xhとして演算するものであってもよい。
・本開示に記載の各ECU51~53及びその制御方法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載のECU51~53及びその制御方法は、1つ又は複数の専用ハードウェア論理回路を含むプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載のECU51~53及びその制御方法は、1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ又は複数のハードウェア論理回路を含むプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。専用ハードウェア論理回路及びハードウェア論理回路は、複数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路により実現されてもよい。
【0082】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0083】
10:車両
11:右前輪(駆動輪)
12:左前輪(駆動輪)
20:モータジェネレータ(電動モータ)
31,32:摩擦ブレーキ装置(制動部)
50:制御装置
200:回転センサ(回転速度検出部)
510:スリップ検出部
520:モータ制御部
525:切替部(ハンチング抑制部)
526:ハンチング検出部
526a:バンドパスフィルタ部
526b:微分演算処理部
526c:ハンチング変数演算部
527;ハンチング抑制部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図14