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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】複合管
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/11 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
F16L11/11
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020071895
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167657
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間▲崎▼ 卓明
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013498(JP,A)
【文献】特開2017-009072(JP,A)
【文献】特開2018-184978(JP,A)
【文献】特開2014-129838(JP,A)
【文献】特開2007-182051(JP,A)
【文献】特開2005-155777(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213007(WO,A1)
【文献】特開2019-105322(JP,A)
【文献】特開2017-219150(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123886(WO,A1)
【文献】特開2010-048269(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103574187(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体と、
管状とされて前記管体の外周を覆い、径方向外側へ凸となる環状の山部と、径方向外側が凹となる環状の谷部とが、前記管体の軸方向に交互に形成されて蛇腹状とされ、前記管体の外周にガイドされつつ前記軸方向に伸縮可能な、樹脂材料で構成されるコルゲート管と、
前記管体と前記コルゲート管との間に配置され、樹脂繊維で構成される不織布からな中間層と、
を有し、
前記不織布の前記樹脂繊維は、芯体と該芯体を被覆する被覆層からなり、前記芯体の前記被覆層同士が溶融結合されると共に、前記被覆層と前記コルゲート管の前記谷部とが溶融結合され、
前記コルゲート管の前記山部の径方向内側に、径方向内側に凹の山空間が形成され、
前記山空間には、前記中間層の凸部が挿入されている複合管。
【請求項2】
前記コルゲート管と前記被覆層は、熱可塑性樹脂からなり、
前記被覆層の融点が前記芯体の融点より低い請求項に記載の複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合管に関する。
【背景技術】
【0002】
本管部と、コルゲート管と、本管部とコルゲート管との間の緩衝層とを有する複合管において、緩衝層に不織布を用いることが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-9072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした複合管では、管体(本管部)の端部に継手などを接続するときに、コルゲート管をずらして(めくって)管体の端部を露出させることが求められる。また、管体の端部を継手などに接続した後、コルゲート管を元に戻して再び管体を被覆することが求められる。
【0005】
しかし、管体を露出させた後に再びコルゲート管を元に戻すとき、中間層(緩衝層)には、元に戻ろうとして軸方向に移動する外周側のコルゲート管と、内周側の管体とから、それぞれ逆方向の摩擦力が与えられる。そのため、コルゲート管の移動に対し中間層が追従せず、外周側及び内周側からそれぞれ加えられる逆方向の摩擦力によって、中間層に巻き込まれが発生して、一部がダマ状に丸め込まれる現象が生じることがある。この巻き込まれが発生すると、中間層が元の位置まで戻らないことがある。
【0006】
また、ウレタン製の中間層の外側にポリエチレンを用いてコルゲート管を成形する際に、ポリエチレンをウレタンに含浸させ、コルゲート管の内周と中間層の外周とを接着することがある。しかしながら、管体のサイズが20J、25Jといった大口径である場合には、コルゲート管と中間層との接着力よりも、管体の表面積の増加による中間層と管体との間の摩擦力の増加が寄与が大きくなり、1度目のコルゲート管のずらし動作の際に、コルゲート管のみがずれ、中間層が管体上に置き去りになる現象が発生する。中間層が置き去りになると管体の端部が露出しないので、更に中間層をずらす工程が必要となる。
【0007】
これらの対策のため、中間層に難燃グレードのウレタンを用い、該ウレタンの管体側に滑りの良い織布を貼り付けることが考えられるが、難燃グレードのウレタンが高価であることが問題となる。
【0008】
本発明は、コルゲート管と、管体とコルゲート管との間の中間層とを有する複合管において、コストの増加を抑制しつつ、コルゲート管をずらして管体の端部を露出させたりコルゲート管を戻したりする際における中間層の巻き込まれや置き去りを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る複合管は、管体と、管状とされて前記管体の外周を覆い、径方向外側へ凸となる環状の山部と、径方向外側が凹となる環状の谷部とが、前記管体の軸方向に交互に形成されて蛇腹状とされ、前記管体の外周にガイドされつつ前記軸方向に伸縮可能な、樹脂材料で構成されるコルゲート管と、前記管体と前記コルゲート管との間に配置され、樹脂繊維で構成される不織布からなり、前記コルゲート管と少なくとも一部で一体に結合されている中間層と、を有する。
【0010】
この複合管では、管体とコルゲート管との間に配置される中間層が、樹脂繊維で構成される不織布からなり、該中間層の少なくとも一部がコルゲート管と一体に結合されている。したがって、コルゲート管をずらして管体の端部を露出させたりコルゲート管を戻したりする際に中間層がコルゲート管に追従する。したがって、中間層の巻き込まれや置き去りが抑制される。また、樹脂繊維で構成される不織布は、難燃グレードのウレタンと比較して安価なため、コストの増加が抑制される。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係る複合管において、前記不織布の前記樹脂繊維が芯体と該芯体を被覆する被覆層からなり、前記芯体の前記被覆層同士が溶融結合されると共に、前記被覆層と前記コルゲート管の前記谷部とが溶融結合されている。
【0012】
この複合管では、芯体の被覆層同士が溶融結合されると共に、被覆層とコルゲート管の谷部とが溶融結合されている。被覆層とコルゲート管の谷部との結合に際し、接着剤等の結合手段を用いる必要がないので、より低コストとなる。
【0013】
第3の態様は、第2の態様に係る複合管において、前記コルゲート管と前記被覆層は、熱可塑性樹脂からなり、前記被覆層の融点が前記芯体の融点より低い。
【0014】
この複合管では、中間層における芯体の被覆層とコルゲート管とが熱可塑性樹脂からなっているので、コルゲート管を成形する際の熱により被覆層とコルゲート管の谷部とが溶融結合される。被覆層の融点は芯体の融点より低いので、芯体の融点より低い温度で被覆層とコルゲート管の谷部とを溶融結合することにより、芯体の溶融を抑制できる。また、中間層は不織布であるので、コルゲート管の成形時の熱が中間層の径方向内側に伝わり難く、管体と、中間層のうち管体に対向する部位の被覆層は溶融しない。したがって、コルゲート管の成形時における中間層と管体との癒着が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コルゲート管と、管体とコルゲート管との間の中間層とを有する複合管において、コストの増加を抑制しつつ、コルゲート管をずらして管体の端部を露出させたりコルゲート管を戻したりする際における中間層の巻き込まれや置き去りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る複合管を示す半断面図である。
図2】本実施形態に係る複合管を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る複合管の一部拡大断面図である。
図4図3のA部を示す拡大断面図である。
図5図3のB部を示す拡大断面図である。
図6】複合管の管体の端部が露出した状態を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。
なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「主成分」とは、特に断りがない限り、混合物中における質量基準の含有量が最も多い成分をいう。
【0018】
<複合管>
図1から図3において、本実施形態に係る複合管10は、管体12と、コルゲート管20と、中間層14とを有している。
【0019】
(管体)
管体12は、管状とされ、樹脂材料で構成される樹脂管である。樹脂材料における樹脂としては、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられ、樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。中でも、ポリブテンが好適に用いられ、ポリブテンを主成分として含むことが好ましく、例えば管体を構成する樹脂材料中において85質量%以上含むことがより好ましい。また、管体を構成する樹脂材料には、他の添加剤を含有してもよい。
【0020】
管体12の径(外径)としては、特に限定されるものではないが、例えば10mm以上100mm以下の範囲とすることができ、12mm以上35mm以下の範囲が好ましい。
【0021】
また、管体12の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば1.0mm以上5.0mm以下が挙げられ、1.5mm以上3.0mm以下が好ましい。
【0022】
大径の管体12とは、例えば呼び20J(内径25mm、外径27mm)や、呼び25J(内径25mm、外径32mm)の管体である。
【0023】
(コルゲート管)
コルゲート管20は、管状とされて管体12の外周を覆い、径方向外側へ凸となる環状の山部22と、径方向外側が凹となる環状の谷部24とが、管体12の軸方向に交互に形成されて蛇腹状とされ、管体12の外周にガイドされつつ軸方向に伸縮可能な被覆管である。コルゲート管20は、管体12の外周に配置された中間層14の外側に成形される。
【0024】
コルゲート管20は、樹脂材料(例えば熱可塑性樹脂)で構成される。コルゲート管20を構成する樹脂材料における樹脂としては、ポリブテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び架橋ポリエチレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられ、樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。中でも、低密度ポリエチレンが好適に用いられ、低密度ポリエチレンを主成分として含むことが好ましく、例えばコルゲート管20を構成する樹脂材料中において80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。なお、コルゲート管20を構成する樹脂材料には、他の添加剤を含有してもよい。
【0025】
コルゲート管20の山部22は、谷部24よりも径方向Rの外側に配置されている。山部22は、軸方向Sに延びる外側壁22Aと、外側壁22Aの両端から径方向Rに沿って延びる側壁22Bを有している。外側壁22Aと側壁22Bの間には、外屈曲部22Cが形成されている。谷部24は、軸方向Sに延びる内側壁24Aと、内側壁24Aの両端から径方向Rに延びる側壁24Bを有している。内側壁24Aと側壁24Bの間には、内屈曲部24Cが形成されている。
【0026】
コルゲート管20の山部22の径方向内側には、径方向内側に凹の山空間23が形成されている。なお、山空間23には、後述する中間層14の凸部14Bが挿入されていることが好ましい。
【0027】
また、コルゲート管20の厚さは、コルゲート管20を短縮させるために、最も薄い部分で0.1mm以上、最も厚い部分で0.4mm以下であることが好ましい。図3において、外側壁22Aの厚さH1は、内側壁24Aの厚さH2よりも薄くなっている。厚さH1は、後述する短縮変形時の外側壁22Aの変形しやすさを確保するため、厚さH2の0.9倍以下であることが好ましい。
【0028】
山部22と谷部24の外表面での半径差ΔRは、コルゲート管20の厚さの平均の800%以下であることが好ましい。半径差ΔRが大きければ、山部22の軸方向Sに沿った部分が変形しなくても、短縮のときに谷部24が径方向外側へ膨出したり、隣り合う山部22同士が近づかないで歪んだ変形状態となったりしにくい。半径差ΔRが、コルゲート管20の厚さの平均の800%以下となる場合に、上記の変形状態となることを抑制するために、山部22の軸方向Sの長さを谷部24の軸方向の長さよりも長くすることが、効果的である。なお、600%以下である場合に、より効果的である。
【0029】
コルゲート管20の径(最外部の外径)としては、特に限定されるものではないが、例えば13mm以上130mm以下の範囲とすることができる。
【0030】
(中間層)
中間層14は、管体12とコルゲート管20との間に配置され、樹脂繊維で構成される不織布からなり、コルゲート管20と少なくとも一部で一体に結合されている。具体的には、図4に示されるように、織布の樹脂繊維は、芯体26と該芯体26を被覆する被覆層28からなり、被覆層28の融点が芯体26の融点より低く、芯体26の被覆層28同士が溶融結合されると共に、被覆層28とコルゲート管20の谷部24とが溶融結合されている。被覆層28は、コルゲート管20と同様に熱可塑性樹脂からなっている。一例として、芯体26はポリプロピレン、被覆層28はポリエチレンで構成されている。一般的に、ポリプロピレン樹脂の融点は165℃以上とされ、ポリエチレン樹脂の融点は115℃~135℃とされている。
【0031】
一方、中間層14は不織布であるため、コルゲート管20の成形時の熱は中間層14の径方向内側に伝わり難く、管体12と、中間層14のうち管体12に対向する部位の被覆層28は溶融しない。したがって、図5に示されるように、中間層14における芯体26の被覆層28と管体12とは溶融結合(癒着)していない。これにより、コルゲート管20をずらす際に、中間層14が置きざりにされず、コルゲート管20に追従するようになっている。
【0032】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図3において、本実施形態に係る複合管10では、管体12とコルゲート管20との間に配置される中間層14が、樹脂繊維で構成される不織布からなり、該中間層14の少なくとも一部がコルゲート管20と結合されている。したがって、コルゲート管20をずらして管体12の端部を露出させたりコルゲート管20を戻したりする際に中間層14がコルゲート管20に追従する。したがって、中間層14の巻き込まれや置き去りが抑制される。また、樹脂繊維で構成される不織布は、難燃グレードのウレタンと比較して安価なため、コストの増加が抑制される。
【0033】
また、芯体26の被覆層28同士が溶融結合されると共に、被覆層28とコルゲート管20の谷部24とが溶融結合されている。被覆層28とコルゲート管20の谷部24との結合に際し、接着剤等の結合手段を用いる必要がないので、より低コストとなる。
【0034】
更に、中間層14における芯体26の被覆層28とコルゲート管20とが熱可塑性樹脂からなっているので、コルゲート管20を成形する際の熱により被覆層28とコルゲート管20の谷部24とが溶融結合される。被覆層28の融点は芯体26の融点より低いので、芯体26の融点より低い温度で被覆層28とコルゲート管20の谷部24とを溶融結合することにより、芯体26の溶融を抑制できる。また、中間層14は不織布であるので、コルゲート管20の成形時の熱が中間層14の径方向内側に伝わり難く、管体12と、中間層14のうち管体12に対向する部位の被覆層28は溶融しない。したがって、コルゲート管20の成形時における中間層14と管体12との癒着が抑制される。
【0035】
このように、本実施形態によれば、コルゲート管20と、管体12とコルゲート管20との間の中間層14とを有する複合管10において、コストの増加を抑制しつつ、コルゲート管20をずらして管体12の端部を露出させたりコルゲート管20を戻したりする際における中間層14の巻き込まれや置き去りを抑制することができる。
【0036】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0037】
不織布の樹脂繊維は、芯体26と該芯体26を被覆する被覆層28からなり、芯体26の被覆層28同士が溶融結合されると共に、被覆層28とコルゲート管20の谷部24とが溶融結合されているものとしたが、中間層14における不織布の構造やコルゲート管20と中間層14との結合状態はこれに限られるものではない。また、コルゲート管20と被覆層28が熱可塑性樹脂からなり、被覆層28の融点が芯体26の融点より低いものとしたが、このような構成には限られない。中間層14の少なくとも一部とコルゲート管20とが結合されていればよい。
【符号の説明】
【0038】
10…複合管、12…管体、14…中間層、20…コルゲート管、22…山部、24…谷部、26…芯体、28…被覆層
図1
図2
図3
図4
図5
図6