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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】電極の操作機構
(51)【国際特許分類】
   H01H 3/28 20060101AFI20240322BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20240322BHJP
   H01H 33/38 20060101ALI20240322BHJP
   H01H 33/666 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01H3/28 A
H01F7/16 E
H01F7/16 T
H01H33/38 A
H01H33/666 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020082709
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021177474
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 芳充
(72)【発明者】
【氏名】野田 岳志
(72)【発明者】
【氏名】久保田 信孝
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-289430(JP,A)
【文献】特開2007-073580(JP,A)
【文献】特開2010-135267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 3/28
H01F 7/06 - 7/17
H01H 33/28 - 33/68
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を離接させる電磁的な操作機構であって、
所定の軸芯を取り囲むように連続する筒状のヨークと、
前記ヨークの第1の面と離接可能な第2の面を有し、前記第2の面を前記第1の面と離接可能に所定方向へ進退するアーマチャと、
前記軸芯と同心の環状に構成され、前記第1の面を含む前記ヨークと前記第2の面を含む前記アーマチャとを通り、前記ヨークに対する前記アーマチャの位置を保持する第1の磁束を発生する磁石と、
前記磁石と離間して配置され、前記第1の面を含む前記ヨークと前記第2の面を含む前記アーマチャとを通り、前記磁石を避けて通る第2の磁束を発生するコイルと、
前記軸芯と同心の環状に構成されて前記軸芯に対して前記磁石よりも外側に配置され、前記所定方向に対して前記磁石からずれて配置され、磁気抵抗が前記磁石よりも低く、前記第2の磁束が通る磁気抵抗体と、を備える
操作機構。
【請求項2】
前記コイルは、一対の前記電極を分離させる前記第2の磁束を発生する開路コイルと、一対の前記電極を接触させる前記第2の磁束を発生する閉路コイルとを含んで構成され、前記開路コイルと前記閉路コイルが前記所定方向に並んで配置され、
前記ヨークは、前記第1の面を有する鉄心部を備え、
前記開路コイルと前記閉路コイルとの境界は、前記鉄心部の前記第1の面と前記アーマチャの前記第2の面とが離間した状態において、前記所定方向における前記鉄心部の前記第1の面と前記アーマチャの前記第2の面との間に位置する
請求項1に記載の操作機構。
【請求項3】
前記第1の面と前記第2の面が接触して前記第1の磁束により前記ヨークに対する前記アーマチャの位置が保持された状態で、前記第1の磁束が前記ヨークと前記アーマチャとを通る磁路の磁気抵抗は、前記磁気抵抗体の磁気抵抗よりも低い
請求項1に記載の操作機構。
【請求項4】
前記磁気抵抗体は、非磁性材料で構成されている
請求項1から3のいずれか一項に記載の操作機構。
【請求項5】
前記磁気抵抗体は、空間である
請求項1から3のいずれか一項に記載の操作機構。
【請求項6】
前記磁気抵抗体は、前記ヨークおよび前記アーマチャのいずれよりも透磁率が低い磁性材料で構成されている
請求項1から3のいずれか一項に記載の操作機構。
【請求項7】
前記コイルおよび前記磁気抵抗体は、互いに異なる形状の環状に構成され、同心状に配置されている
請求項1からのいずれか一項に記載の操作機構。
【請求項8】
前記磁気抵抗体の外径寸法は、前記コイルの外径寸法よりも小さい
請求項に記載の操作機構。
【請求項9】
前記磁気抵抗体の内径寸法は、前記コイルの内径寸法よりも大きい
請求項に記載の操作機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電極を開閉するための操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ビル、工場、病院などには、電力の配送電系統における電路の保護、電力の制御、設備の監視などを図るために金属閉鎖形スイッチギヤ(以下、単にスイッチギヤという)が備えられている。スイッチギヤは、金属容器(筐体)によって外部から隔てられた空間に主回路導体、電力ケーブル、接地装置、変流器、真空遮断器などを収容して構成されている。真空遮断器は、電極を導電状態または絶縁状態に適宜切り換えて電流を遮断する真空バルブを有している。
【0003】
真空バルブは、離接可能な一対の電極が筒状の真空絶縁容器内に収納されて構成されている。これらの電極は、所定の操作機構によって離接(開閉)操作される。操作機構の一例として、コイルに通電して磁束を発生させ、発生させた磁束により得られる磁力で電極を開閉させる電磁操作機構が挙げられる。電磁操作機構は、ヨークの内部に開路コイル、閉路コイル、永久磁石、アーマチャなどが設けられて構成されている。一対の電極は、永久磁石の磁束により得られる磁力によって接触して閉路状態に維持される。閉路した電極を開路させる場合、開路コイルに通電して永久磁石と逆向きの磁束を発生させ、電極同士を離間させる方向へアーマチャを変位させる。開路した電極を閉路させる場合、閉路コイルに通電して永久磁石と同じ向きの磁束を発生させ、電極同士を接触させる方向へアーマチャを変位させる。いずれの場合も、コイルにより発生させた磁束は永久磁石を通る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-029222号公報
【文献】特開2019-102124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、永久磁石は、透磁率の値が空気に近く、磁気抵抗が大きい。このため、かかる磁気抵抗を考慮し、電極の開閉時には開路コイルや閉路コイルで大きな起磁力を発生させる必要がある。起磁力はコイルの巻き数と通電電流に比例するため、起磁力を大きくする場合、コイル自体や通電用の電源回路などの大型化を招きやすい。特に、閉路コイルは、永久磁石に加えて、ヨークにおいて閉路コイルを支持する部位とアーマチャとの間の空隙(エアギャップ)も通る経路にて、電極の閉路に必要な磁束、つまり永久磁石により生じる磁束を打ち消すような磁束を発生させなければならない。このため、閉路コイルおよびその電源回路はさらに大型化しやすい。
【0006】
そこで、コイルの起磁力の低減を図るとともに、電極をスムーズに開閉させることが可能な電極の操作機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の操作機構は、一対の電極を離接させる電磁的な操作機構であり、ヨークと、アーマチャと、磁石と、コイルと、磁気抵抗体とを備える。前記ヨークは、所定の軸芯を取り囲むように連続する筒状をなす。前記アーマチャは、前記ヨークの第1の面と離接可能な第2の面を有し、前記第2の面を前記第1の面と離接可能に所定方向へ進退する。前記磁石は、前記軸芯と同心の環状に構成され、前記第1の面を含む前記ヨークと前記第2の面を含む前記アーマチャとを通り、前記ヨークに対する前記アーマチャの位置を保持する第1の磁束を発生する。前記コイルは、前記磁石と離間して配置され、前記第1の面を含む前記ヨークと前記第2の面を含む前記アーマチャとを通り、前記磁石を避けて通る第2の磁束を発生する。前記磁気抵抗体は、前記軸芯と同心の環状に構成されて前記軸芯に対して前記磁石よりも外側に配置され、前記所定方向に対して前記磁石からずれて配置され、磁気抵抗が前記磁石よりも低く、前記第2の磁束が通る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の開路状態における操作機構を含む真空遮断器の概略構成を示す模式図。
図2】第1の実施形態の閉路状態における操作機構を含む真空遮断器の概略構成を示す模式図。
図3】第1の実施形態の操作機構における磁気抵抗体の磁気抵抗の規定を説明するための模式図。
図4】第1の実施形態において磁気抵抗体を空間とした場合の操作機構の概略構成を示す模式図。
図5】第1の実施形態の操作機構の閉路動作の開始時の動作態様を模式的に示す図。
図6】第1の実施形態の操作機構の閉路動作中の動作態様を模式的に示す図。
図7】第1の実施形態の操作機構の閉路動作の終了時の動作態様を模式的に示す図。
図8】第1の実施形態の操作機構の開路動作の開始時の動作態様を模式的に示す図。
図9】第1の実施形態の操作機構の開路動作中の動作態様を模式的に示す図。
図10】第1の実施形態の操作機構の開路動作の終了時の動作態様を模式的に示す図。
図11】第2の実施形態の操作機構の概略構成を示す模式図。
図12】第3の実施形態の操作機構の概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る電極の操作機構について、図1から図12を参照して説明する。操作機構は、一対の電極を離接させて、これらの電極を含む回路を閉路および開路させるための電磁的な機構(電極の開閉操作機構)である。本実施形態において、操作機構は、真空バルブとともにスイッチギヤの真空遮断器を構成し、真空バルブの電極を離接(開閉)させる。スイッチギヤの真空遮断器は、電力の配送電系統における電路の保護、電力の制御、設備の監視などを図るために用いられる。このような用途は一例であり、操作機構の用途もこれに限定されない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1および図2には、第1の実施形態に係る操作機構1を含む真空遮断器Xの概略的な構成を示す。図1は、操作機構1が電極22を開路した状態を示す模式図である。図2は、操作機構1が電極22を閉路した状態を示す模式図である。
【0011】
図1および図2に示すように、真空遮断器Xは、操作機構1に加えて、真空バルブ2と連結機構3を含んで構成されている。
真空バルブ2は、絶縁容器21と、絶縁容器21に収容された電極22とを備えている。絶縁容器21は、例えばセラミックなどの絶縁材で筒状に構成され、筒軸方向の両端が封着金具で閉塞されている。
【0012】
電極22は、その位置が変動しない(変位しない)固定電極22aと、固定電極22aに対して変位する可動電極22bが一対をなして構成されている。電極22は、導電材、例えば銅、アルミニウム、クロムなどで形成可能であるが、これらに限定されない。可動電極22bは、固定電極22aに対して離接可能に変位(図1および図2では上下動)する。これにより、固定電極22aと可動電極22bとが開路状態と閉路状態に遷移される。開路状態は、固定電極22aと可動電極22bが分離してこれらの間が絶縁された状態である。開路状態には、固定電極22aと可動電極22bが接触して形成される回路の遮断状態や断路状態が含まれる。閉路状態は、電極22a,22bが接触し、これらの電極22a,22bを含む回路が導電した状態である。
【0013】
固定電極22aには第1の通電軸23aが接続され、可動電極22bには第2の通電軸23bが接続されている。第1の通電軸23aおよび第2の通電軸23bは、導電材、例えば銅、アルミニウム、クロムなどで形成可能であるが、これらに限定されない。第1の通電軸23aおよび第2の通電軸23bは、いずれも絶縁容器21の軸芯Cと同軸状に伸びている。第2の通電軸23bには、第2の通電軸23bを軸芯Cの伸長方向(以下、軸芯方向という)へ進退可能に支持するベローズ24が取り付けられている。ベローズ24は、軸芯方向へ伸縮可能な蛇腹状に構成されている。
【0014】
第2の通電軸23bは、絶縁容器21の外部へ突出した部分が連結機構3を介して操作機構1に接続されており、操作機構1によって動作されることで、軸芯方向へ進退(図1および図2では上下動)する。これにより、可動電極22bが固定電極22aに対して離接するように変位し、電極22a,22bが開路状態と閉路状態に遷移する。
【0015】
連結機構3は、第1の弾性体31と、フォルダ32と、第2の弾性体33とを備えている。
【0016】
第1の弾性体(以下、ワイプばねという)31は、例えば圧縮コイルばねなどであり、伸縮(弾性変形)可能にフォルダ32に収容されている。ワイプばね31は、軸芯方向の一端(図1および図2では下端)を後述するフォルダ32の底部32aに接触させ、他端(図1および図2にでは上端)を支持体34と接触させている。支持体34は、第2の通電軸23bと連結された支持軸35を有している。これにより、ワイプばね31は、フォルダ32の底部32aと支持体34との間に挟まれた状態で軸芯方向に伸縮し、支持軸35を介して第2の通電軸23bを軸芯方向へ進退させる。電極22a,22bの閉路状態電極において、ワイプばね31は、後述する操作機構1の操作軸13に押圧方向(図1および図2では下方向)の力をフォルダ32を介して作用させる。
【0017】
フォルダ32は、底部32aと、側壁部32bと、天部32cを備え、軸芯Cと同軸の有底筒状に構成されている。底部32aは、フォルダ32におけるワイプばね31と接触してワイプばね31を支持する部分である。また、底部32aは、後述する操作機構1の操作軸13と連結する部分であり、操作軸13との連結軸36を有している。連結軸36は、開路ばね33が配置される板状の台座部37を有している。側壁部32bは、底部32aの周縁から全周に亘ってもしくは間欠的に軸芯方向に沿って起立している。天部32cは、軸芯Cと同心の開口32dを有しており、開口32dから支持軸35をフォルダ32の外部(図1および図2では上部)へ露出させる。開口32dの周縁部は、ワイプばね31が最も伸長した状態で支持体34と当接する。図1に示すように、ワイプばね31が最も伸長し、天部32c(開口32dの周縁部)が支持体34と当接した状態は、電極22a,22bの開路状態に相当する。これに対し、図2に示すように、ワイプばね31が収縮し、天部32cが支持体34と離間した状態は、電極22a,22bの閉路状態に相当する。
【0018】
第2の弾性体(以下、開路ばねという)33は、例えば圧縮コイルばねなどであり、伸縮(弾性変形)可能に台座部37に取り付けられている。開路ばね33は、軸芯方向に伸縮(弾性変形)し、台座部37を介して連結軸36および底部32aを軸芯方向へ進退させる。図1に示すように、開路ばね33が伸長した状態は、電極22a,22bの開路状態に相当する。これに対し、図2に示すように、開路ばね33が収縮した状態は、電極22a,22bの閉路状態に相当する。閉路状態において、開路ばね33は、後述する操作機構1の操作軸13に押圧方向(図1および図2では下方向)の力を台座部37を介して作用させる。
【0019】
操作機構1は、ヨーク11と、アーマチャ12と、操作軸13と、磁石14と、コイル15と、磁気抵抗体16とを備えている。
【0020】
ヨーク11は、操作機構1の外郭をなす部材であり、空気よりも透磁率の高い磁性材、例えば鉄、電磁鋼板などで構成されている。空気の比透磁率は1、鉄の比透磁率は6000から8000程度である。ただし、ヨーク11の素材はこれらに限定されない。ヨーク11は、天部11aと、側壁部11bと、鉄心部11cを備え、軸芯Cと同軸の有底筒状に構成されている。
【0021】
天部11aは、フォルダ32の底部32aと正対するように位置付けられている。天部11aは、操作軸13を軸芯方向へ進退可能に挿通する貫通孔11dを有している。貫通孔11dの中心軸は、軸芯Cとほぼ一致している。貫通孔11dの差渡し寸法(孔径)は、操作軸13の軸径よりも大きい。
【0022】
側壁部11bは、天部11aの周縁から全周に亘って軸芯方向に沿って垂下している。側壁部11bは、コイル15を支持する支持部11eを有している。本実施形態において、側壁部11bは、二つの支持部111e,112eを有し、これらの支持部111e,112eで軸芯方向に挟み込むようにコイル15を支持している。
【0023】
第1の支持部111eは、軸芯方向において第2の支持部112eよりも天部11a寄りに位置し、側壁部11bの内周の一部を縮径させるように突出している。突出する第1の支持部111eの端面11fは、磁気抵抗体16を支持する支持面とされている。第2の支持部112eは、側壁部11bの内周の一部を第1の支持部111eよりも縮径させるように突出している。第2の支持部112eは、アーマチャ12と当接可能な面(以下、第1の当接面という)11gを有している。図1および図2に示す例では、第1の当接面11gは、軸芯方向とほぼ直交する円環状の平坦面である。ただし、第1の当接面11gの形態はこれに限定されない。突出する第2の支持部112eの端面11hは、アーマチャ12と所定間隔をあけて対向する対向面とされている。
【0024】
鉄心部11cは、軸芯方向に沿って伸長する筒状に構成され、磁石14を介して天部11aに固定されている。鉄心部11cは、磁石14に例えば接着剤によって固定されている。ただし、固定方法はこれに限定されない。鉄心部11cの内周側は、貫通孔11dと連通している。鉄心部11cの内周側の差渡し寸法(筒径)は、貫通孔11dの孔径とほぼ一致している。換言すれば、鉄心部11cは、天部11aの一部として貫通孔11dを構成している。鉄心部11cの外周面11iは、第1の支持部111eおよびコイル15と所定間隔をあけて対向する対向面とされている。鉄心部11cは、アーマチャ12と当接可能な当接面(第1の面。以下、第2の当接面という)11jを有している。第2の当接面11jは、鉄心部11cの軸芯方向の一方、具体的には磁石14との固定側とは反対側の端面である。本実施形態において、第1の当接面11gおよび第2の当接面11jは、いずれもアーマチャ12と離接する面(第1の面)である。
【0025】
アーマチャ12は、ヨーク11に対して軸芯方向へ進退可能な部材であり、空気よりも透磁率の高い磁性材、例えば鉄、電磁鋼板などで構成されている。アーマチャ12の素材は、ヨーク11と同一であってもよいし、異なっていてもよい。アーマチャ12は、軸支部12aとフランジ部12bを備えている。
【0026】
軸支部12aは、軸芯方向に沿って伸長する筒状に構成され、筒内に操作軸13が固着されている。軸支部12aの中心軸は、軸芯Cとほぼ一致している。アーマチャ12は、軸支部12aに固着された操作軸13とともに、ヨーク11に対して軸芯方向へ進退する。軸支部12aは、ヨーク11、具体的には第2の当接面11jと当接可能な面(以下、第3の当接面という)12cを有している。第3の当接面12cは、軸支部12aの軸芯方向の一方、具体的にはフランジ部12bとの連続側とは反対側の端面である。
【0027】
フランジ部12bは、第3の当接面12cとは反対側の端面を拡張するように、軸支部12aの外周の一部を拡径させるように突出している。突出するフランジ部12bの端面12dは、側壁部11bと所定間隔をあけて対向する対向面とされている。フランジ部12bは、ヨーク11、具体的には第1の当接面11gと当接可能な面(以下、第4の当接面という)12eを有している。第4の当接面12eは、フランジ部12bの軸芯方向の一方の端面である。本実施形態において、第3の当接面12cおよび第4の当接面12eは、いずれもヨーク11と離接する面(第2の面)である。
【0028】
図1に示すように電極22a,22bの開路状態において、第3の当接面12cは第2の当接面11jと離間し、第4の当接面12eは第1の当接面11gと離間する。これに対し、図2に示すように、電極22a,22bの閉路状態において、第3の当接面12cは第2の当接面11jと当接し、第4の当接面12eは、第1の当接面11gと当接する。
【0029】
操作軸13は、軸芯Cと同軸状に伸長している。操作軸13は、一部分(以下、固定部という)13aが軸支部12aに固着され、アーマチャ12と一体化されている。これにより、操作軸13は、アーマチャ12とともにヨーク11に対して軸芯方向へ進退可能に構成されている。また、操作軸13は、固定部13a以外の部分(以下、挿通部という)13bがヨーク11(天部11aおよび鉄心部11c)の貫通孔11dに挿通されている。貫通孔11dの差渡し寸法(孔径)は操作軸13(挿通部13b)の軸径よりも大きいため、挿通部13bは、貫通孔11dの中で軸芯方向に進退(図1および図2では上下動)可能となっている。挿通部13bの先端部13cは、連結軸36と連結されている。先端部13cは、挿通部13bが固定部13aと連続する側とは反対側の端部である。これにより、操作軸13は、連結機構3および第2の通電軸23bを介して可動電極22bと連結される。
【0030】
磁石14は、軸芯Cとほぼ同心の円環状に構成され、ヨーク11の天部11aと鉄心部11cとの間に介在している。磁石14は、端面14aが鉄心部11cに、端面14bが天部11aに、例えば接着剤によってそれぞれ固定されている。ただし、固定方法はこれに限定されない。
【0031】
磁石14は、例えばフェライト磁石やネオジム磁石などの永久磁石であり、軸芯方向の両端面14a,14bを通るような磁束を発生する。本実施形態において、磁石14は、端面14aから端面14bへ、つまり鉄心部11c側から天部11a側へ抜ける磁束を生ずる。かかる磁束は、第1の面である第1の当接面11gおよび第2の当接面11jを含むヨーク11と、第2の面である第3の当接面12cおよび第4の当接面12eを含むアーマチャ12とを通る磁束(第1の磁束)を含む。
【0032】
磁石14は、かかる磁束により、ヨーク11に対するアーマチャ12の位置を保持する。本実施形態において、図2に示すような電極22a,22bの閉路状態では、磁石14の磁束により得られる磁力によって、ヨーク11に対するアーマチャ12の位置が保持されている(詳細は後述)。磁石14の磁力、換言すれば磁石14がアーマチャ12の位置を保持する力は、ワイプばね31および開路ばね33が操作機構1の操作軸13を押圧する力よりも大きい。磁石14の磁力がかかる押圧力に抗して作用することで、ヨーク11に対するアーマチャ12の位置が保持される。
【0033】
磁石14は、軸芯Cとほぼ同心の貫通孔14cを有している。貫通孔14cの差渡し寸法(孔径)は、貫通孔11dの差渡し寸法(孔径)とほぼ同一であり、これらの貫通孔14c,11dは互いに連通している。したがって、貫通孔14cには、操作軸13の挿通部13bが軸芯方向に進退可能に挿通される。
【0034】
コイル15は、通電されることで、例えば磁石14によって生ずる磁束を増減させ、電極22a,22bを離接(開閉)させる磁束を発生する。かかる磁束は、第1の面である第1の当接面11gおよび第2の当接面11jを含むヨーク11と、第2の面である第3の当接面12cおよび第4の当接面12eを含むアーマチャ12とを通り、磁石14を避けて通る磁束(第2の磁束)を含む。
【0035】
コイル15は、軸芯Cとほぼ同心の円環状に構成され、開路コイル15aと閉路コイル15bを含んで構成されている。開路コイル15aは、電極22a,22bを開路状態とするための磁束を生ずる。閉路コイル15bは、電極22a,22bを閉路状態とするための磁束を生ずる。開路コイル15aは第1の支持部111eによって支持され、閉路コイル15bは第2の支持部112eによって支持されている。これら支持部111e,112eに支持された状態で、開路コイル15aと閉路コイル15bは、軸芯方向に沿って並んで配置される。
【0036】
磁気抵抗体16は、磁石14よりも磁気抵抗が低い部材である。例えば、磁気抵抗体16は、樹脂、ステンレスなどの非磁性材料で構成されている。磁気抵抗は、素材の透磁率、面積、厚さに依存する。したがって、樹脂やステンレスなどの非磁性材料の他、磁石14と透磁率がほぼ同程度の素材である場合、磁気抵抗体16は、面積(A)に対する厚さ(T)の割合(T/A)が磁石14よりも小さくなるような形態であればよい。図3に示すように、面積(A)は、図3に示す面Sのように、磁束(M)が垂直に貫く面、換言すれば磁束の通過方向が法線方向に沿う面の面積である。厚さ(T)は、図3にDで示す寸法のように、磁束(M)が通過する方向の寸法、換言すれば磁束が通過する面間の距離である。磁石14においても、同様に面積(A)および厚さ(T)が規定される。
【0037】
また、磁気抵抗体16は、磁性材料を混在させた樹脂など、ヨーク11およびアーマチャ12よりも透磁率が低い磁性材料で構成してもよい。この場合、磁気抵抗体16は、透磁率(P)に、面積(A)に対する厚さ(T)の割合を掛けた値(P×T/A)が磁石14よりも小さくなるような形態であればよい。
【0038】
さらに、磁気抵抗体16は、図4に示すような空間(空気)であってもよい。図4に示す例は、図1および図2に示す磁気抵抗体16を省略してその分の空間を生じさせた形態である。空気は、磁石14とほぼ透磁率が同程度(比透磁率が1)であるので、磁気抵抗体16は、面積(A)に対する厚さ(T)の割合(T/A)が磁石14よりも小さくなるような空間であればよい。
【0039】
磁気抵抗体16は、軸芯Cとほぼ同心の円環状に構成されている。本実施形態において、磁気抵抗体16は、コイル15(開路コイル15aおよび閉路コイル15b)と互いに異なる形状の円環状に構成され、ほぼ同心状に配置されている。図1および図2に示すように、磁気抵抗体16は、第1の周面16aが開路コイル15aの第1の周面15cおよび閉路コイル15bの第1の周面15dよりも軸芯C(操作軸13)に対して動径方向(放射方向)へ近づく(軸芯C側へ寄る)ように配置されている。すなわち、第1の周面16aは、第1の周面15cおよび第1の周面15dと面一とはならず、軸芯C寄りにずれて位置付けられている。第1の周面16aは、磁気抵抗体16の周面のうち、軸芯Cからより離れた周面(図1および図2では外周面)である。同様に、第1の周面15c,15dは、開路コイル15aおよび閉路コイル15bの周面のうち、軸芯Cからより離れた周面(図1および図2では外周面)である。したがって、磁気抵抗体16の外径寸法は、開路コイル15aおよび閉路コイル15bの外径寸法よりも小さい。
【0040】
このように構成される磁気抵抗体16は、磁石14とコイル15の間の空間において、軸芯方向に対して磁石14からずれて配置されている。磁石14とコイル15の間の空間は、磁石14とコイル15とを離間させることによって形成されている。換言すれば、磁気抵抗体16は、コイル15(開路コイル15aもしくは閉路コイル15b)によって形成される磁気回路において、磁石14と磁気的に並列となる位置に配置されている。なお、磁気抵抗体16は、開路コイル15a、閉路コイル15b、磁石14を支持し、位置決めするための部材を兼ねていてもよい。
【0041】
本実施形態において、電極22a,22bを開路状態から閉路状態とする際の操作機構1の閉路動作について説明する。図5から図7には、閉路動作時における操作機構1の動作態様をそれぞれ模式的に示す。図5は、閉路動作の開始時の動作態様を模式的に示す図である。図6は、閉路動作中の動作態様を模式的に示す図である。図7は、閉路動作の終了時における操作機構1の動作態様を示す図である。
【0042】
図5に示す閉路動作の開始時において、電極22a,22bは開路状態となっている。かかる開路状態から閉路コイル15bが通電されて励磁し、矢印M1で示すような磁束(以下、磁束M1という)が発生する。磁束M1の向きは、磁石14が発生させる磁束と同じ向きである。この場合、ヨーク11およびアーマチャ12の間には、第1のエアギャップAG1と第2のエアギャップAG2が生じている。第1のエアギャップAG1は、第1の当接面11gと第4の当接面12eとの間の空間である。第2のエアギャップAG2は、第2の当接面11jと第3の当接面12cとの間の空間である。軸芯方向において、第1のエアギャップAG1の長さと第2のエアギャップAG2の長さは、ほぼ一致している。第1のエアギャップAG1の長さは、第1の当接面11gと第4の当接面12eとの離間距離である。第2のエアギャップAG2の長さは、第2の当接面11jと第3の当接面12cとの間の離間距離である。
【0043】
磁気抵抗は、ヨーク11(R11)およびアーマチャ12(R12)よりも磁気抵抗体16(R16)の方が格段に大きい。また、磁気抵抗は、磁気抵抗体16(R16)よりも磁石14(R14)、第1のエアギャップAG1(RAG1)、および第2のエアギャップAG2(RAG2)の方が大きい。すなわち、磁気抵抗の大小関係は、R11,R12≪R16<R14,RAG1,RAG2となる。したがって、磁束M1は、磁気抵抗の小さいヨーク11、アーマチャ12、および磁気抵抗体16を、第2のエアギャップAG2(換言すれば、第2の当接面11jおよび第3の当接面12c)を経由して通る。一方で、磁束M1は、磁気抵抗の大きい磁石14および第1のエアギャップAG1(換言すれば、第1の当接面11gおよび第4の当接面12e)を通らない。磁束M1は、第1のエアギャップAG1および第2のエアギャップAG2を狭めるような磁力を生じさせる。
【0044】
磁束M1により生ずる磁力によってエアギャップAG1,AG2が狭められ始めると、図6に示す閉路動作中のように、磁石14は、破線の矢印M2で示すような磁束(以下、磁束M2という)を発生させる。磁束M2は、ヨーク11およびアーマチャ12を、第2のエアギャップAG2(換言すれば、第2の当接面11jおよび第3の当接面12c)を経由して通る。一方で、磁束M2は、ヨーク11およびアーマチャ12よりも磁気抵抗の大きい第1のエアギャップAG1(換言すれば、第1の当接面11gおよび第4の当接面12e)を通らない。磁束M2は、第1のエアギャップAG1および第2のエアギャップAG2を狭めるような磁力を生じさせる。磁束M2と磁束M1は同じ向きであり、磁束M2に磁束M1が付加された状態となっている。これにより、磁束M1,M2の双方により生じる磁力が第1のエアギャップAG1および第2のエアギャップAG2を狭める方向に作用する。かかる磁力は、エアギャップAG1,AG2が狭まるほど該エアギャップAG1,AG2の磁気抵抗が低下するため、大きくなる。
【0045】
図7に示す閉路動作の終了時において、第1のエアギャップAG1は、ほぼ完全に狭められ、第1の当接面11gと第4の当接面12eとがほぼ密着した状態となっている。同様に、第2のエアギャップAG2は、ほぼ完全に狭められ、第2の当接面11jと第3の当接面12cとがほぼ密着した状態となっている。このようにエアギャップAG1,AG2が狭められると、アーマチャ12がその分だけヨーク11に対して真空バルブ2に近づく方向へ変位する。これにより、図7に示す例では、操作軸13が押し上げられる。操作軸13が押し上げられることで、連結機構3を介して可動電極22bが固定電極22aに近づくように変位し、これらの電極22a,22bが接触して閉路状態となる。この状態では、閉路コイル15bの通電が停止され磁束M1が消失し、図7に示すように磁石14による磁束M2のみが生じている。磁束M2により生じる磁石14の磁力は、ワイプばね31および開路ばね33が操作機構1の操作軸13を押圧する力よりも大きいため、これに抗して作用する。これにより、閉路状態では、ヨーク11に対するアーマチャ12の位置が磁石14の磁力によって保持される。
【0046】
電極22a,22bの閉路状態においては、第1の当接面11gと第4の当接面12eがほぼ密着するとともに、第2の当接面11jと第3の当接面12cとがほぼ密着した状態となっている。すなわち、第1のエアギャップAG1および第2のエアギャップAG2は、ほぼ完全に狭められて存在しない状態となっている。したがって、磁石14の端面14aから端面14bに至る磁路は、ヨーク11とアーマチャ12で閉ループを形成可能となる。このため、かかる閉ループの磁気抵抗は、ヨーク11とアーマチャ12の磁気抵抗と同等であり、磁気抵抗体16の磁気抵抗よりも低い。換言すれば、かかる閉ループと比較した場合、磁気抵抗体16の磁気抵抗の方が高くなる。
【0047】
したがって、図7に示すように、磁石14の磁束M2は、磁気抵抗体16を通らず、ヨーク11およびアーマチャ12を通る。ヨーク11には、第1の当接面11gおよび第2の当接面11jが含まれる。アーマチャ12には、第3の当接面12cおよび第4の当接面12eが含まれる。このため、磁束M2は、ほぼすべてが第1の当接面11gと第4の当接面12eとの間および第2の当接面11jと第3の当接面12cとの間を通る。
【0048】
ヨーク11に対するアーマチャ12の位置を保持する力である磁石14の磁力は、第1の当接面11gと第4の当接面12eとの間、および第2の当接面11jと第3の当接面12cとの間で発生する。このため、これらの当接面間に磁束M2のほぼすべてを通過可能とすることで、磁束M2によって発生する磁力をアーマチャ12の保持力として有効に活用できる。
【0049】
次に、電極22a,22bを閉路状態から開路状態とする際の操作機構1の開路動作について説明する。図8から図10には、開路動作時における操作機構1の動作態様をそれぞれ模式的に示す。図8は、開路動作の開始時の動作態様を模式的に示す図である。図9は、開路動作中の動作態様を模式的に示す図である。図10は、開路動作の終了時における操作機構1の動作態様を示す図である。
【0050】
図8に示す開路動作の開始時において、電極22a,22bは閉路状態となっている。かかる閉路状態から開路コイル15aが通電されて励磁し、矢印M3で示すような磁束(以下、磁束M3という)が発生する。磁束M3の向きは、磁石14が発生させる磁束M2と逆向きである。すなわち、開路コイル15aは、磁石14の磁束M2を打ち消す磁束M3を発生させる。磁束M3は、磁気抵抗の大きい磁石14を通らず、磁気抵抗の小さいヨーク11、アーマチャ12、および磁気抵抗体16を通る。ヨーク11には、第1の当接面11gおよび第2の当接面11jが含まれる。アーマチャ12には、第3の当接面12cおよび第4の当接面12eが含まれる。磁束M3は、第1のエアギャップAG1および第2のエアギャップAG2を広げるような磁力を生じさせる。換言すれば、磁束M3により生ずる磁力は、磁石14の磁力を打ち消すように作用する。
【0051】
このように磁石14の磁束M2を打ち消す磁束M3が発生すると、磁石14の磁力が磁束M3により生ずる磁力によって打ち消され、小さくなる。そして、ワイプばね31および開路ばね33が操作機構1の操作軸13を押圧する力よりも磁石14の磁力が小さくなると、図9に示すように、第1のエアギャップAG1が徐々に広げられ、第1の当接面11gと第4の当接面12eとが離間し始める。同様に、第2のエアギャップAG2が徐々に広げられ、第2の当接面11jと第3の当接面12cとが離間し始める。
【0052】
図10に示す開路動作の終了時において、第1のエアギャップAG1は、さらに広げられ、第1の当接面11gと第4の当接面12eとが最大限まで離間した状態となっている。同様に、第2のエアギャップAG2は、さらに広げられ、第2の当接面11jと第3の当接面12cとが最大限まで離間した状態となっている。このような状態では、磁束M3によって磁束M2がほぼ打ち消され、磁石14の磁力は磁束M3により生ずる磁力とほぼ相殺される。このようにエアギャップAG1,AG2が広げられると、アーマチャ12がその分だけヨーク11に対して真空バルブ2から遠ざかる方向へ変位する。これにより、図10に示す例では、操作軸13が押し下げられる。操作軸13が押し下げられることで、連結機構3を介して可動電極22bが固定電極22aから遠ざかるように変位し、これらの電極22a,22bが離間して開路状態となる。この状態では、開路コイル15aの通電が停止され磁束M3が消失し、ワイプばね31および開路ばね33が操作機構1の操作軸13を押圧する力が作用する。これにより、開路状態では、かかる押圧力によってヨーク11に対するアーマチャ12の位置が保持される。なお、アーマチャ12の位置は、ストッパ(図示省略)によってそれ以上の変位が制限されている。
【0053】
このように本実施形態によれば、磁石14よりも磁気抵抗が低い磁気抵抗体16を備えることで、コイル15(開路コイル15aおよび閉路コイル15b)により生じる磁束M1,M3が磁石14を通らず、磁気抵抗体16を通る磁路にできる。このため、従来のようにコイルにより生じる磁束が磁石14を通る場合と比べて、コイル15に生じさせる起磁力を抑えることができる。すなわち、より小さな起磁力で、電極22a,22bを閉路状態および開路状態とするために必要な磁束M1,M3を生じさせることができる。したがって、例えばコイル15の巻き数の減少、コイル15の通電電流の低下などを図ることが可能となる。
【0054】
また、磁気抵抗体16は、コイル15(開路コイル15aおよび閉路コイル15b)と互いに異なる形状の円環状に構成され、軸芯Cとほぼ同心状に配置されている。このように配置された磁気抵抗体16の外径寸法は、開路コイル15aおよび閉路コイル15bの外径寸法よりも小さい。磁気抵抗体16をこのような形態とすることで、ヨーク11の側壁部11bの内周の一部を縮径させ、第1の支持部111eを側壁部11bの内周に対して突出させることができる。このため、磁気抵抗体16を設けた場合であっても、ヨーク11の外形寸法を拡大せずに側壁部11bの肉厚を確保でき、操作機構1の機械的な強度を向上できる。
【0055】
上述した本実施形態に係る磁気抵抗体16の形態および配置は一例に過ぎず、これに限定されない。以下、磁気抵抗体の形態および配置を異ならせた実施形態について説明する。なお、これらの実施形態において、真空遮断器における操作機構以外の真空バルブおよび連結機構の構成は、第1の実施形態(図1および図2)と同等である。また、以下では、磁気抵抗体16の形態および配置の相違点について説明し、第1の実施形態に係る操作機構1と同等の構成要素については、図面上で同一符号を付して説明を省略化する。
【0056】
(第2の実施形態)
図11には、第2の実施形態の操作機構10の概略構成を模式的に示す。第2の実施形態において、磁気抵抗体161は、第2の周面16bが開路コイル15aの第2の周面15eおよび閉路コイル15bの第2の周面15fよりも軸芯C(操作軸13)に対して動径方向(放射方向)へ遠ざかるように配置されている。すなわち、第2の周面16bは、第2の周面15eおよび第2の周面15fと面一とはならず、これらよりも軸芯Cから離れて位置付けられている。第2の周面16bは、磁気抵抗体161の周面のうち、軸芯C寄りの周面(図11では内周面)である。同様に、第2の周面15e,15fは、開路コイル15aおよび閉路コイル15bの周面のうち、軸芯C寄りの周面(図11では内周面)である。したがって、磁気抵抗体161の内径寸法は、開路コイル15aおよび閉路コイル15bの内径寸法よりも大きい。このように、磁気抵抗体161は、コイル15(開路コイル15aおよび閉路コイル15b)と互いに異なる形状の円環状に構成され、軸芯Cとほぼ同心状に配置されている。
【0057】
本実施形態において、側壁部11bは、第1の支持部111eに相当する支持部11eを有していない。これに代えて、鉄心部11cがコイル15を支持する支持部11kを有している。支持部11kは、鉄心部11cの外周の一部を拡径させるように突出している。突出する支持部11kの端面11lは、磁気抵抗体161を支持する支持面とされている。これにより、コイル15(開路コイル15aおよび閉路コイル15b)は、支持部11k,112eで軸芯方向に挟み込むように支持される。磁気抵抗体161は、側壁部11bと支持部11kで軸芯方向と直交する方向(径方向)に挟み込むように支持される。
【0058】
磁石141は、天部11aと支持部11kとの間に介在している。磁石141は、端面14dが支持部11kに、端面14eが天部11aに、例えば接着剤によってそれぞれ固定されている。ただし、固定方法はこれに限定されない。
【0059】
本実施形態によれば、磁気抵抗体161を端面11lで支持するべく支持部11kが鉄心部11cの外周から突出する分だけ、支持部11kにおける磁石141の支持部位(支持面)、換言すれば、鉄心部11cの端面11mを拡大できる。端面11mは、軸芯方向における第2の当接面11jとは反対側の端面である。したがって、端面11mの拡大に応じて、磁石141を径方向に拡大させることが可能となる。例えば、第1の実施形態に係る磁石14よりも磁石141のサイズを大型化しやすくなり、体積当たりに発生する磁束が少ない永久磁石を適用可能となる。
【0060】
(第3の実施形態)
図12には、第3の実施形態の操作機構100の概略構成を模式的に示す。第3の実施形態において、磁気抵抗体162は、天部11aと鉄心部11cとの間に介在し、軸芯方向と直交する方向(径方向)に磁石142と並んで配置されている。磁気抵抗体162は、端面16cが鉄心部11cに、端面16dが天部11aに、例えば接着剤によってそれぞれ固定されている。ただし、固定方法はこれに限定されない。図12に示す例では、磁気抵抗体162は、第2の周面16bを磁石142の第1の周面14fと接触させている。第1の周面14fは、磁石142の周面のうち、軸芯Cからより離れた周面(図12では外周面)である。これにより、磁気抵抗体162と磁石142は、相互に支持することで位置決めされている。
【0061】
本実施形態において、側壁部11bは、第1の支持部111eに相当する支持部11eを有していない。また、鉄心部11cは、支持部11kに相当する部分を有していない。このように、第1の支持部111eに相当する支持部11eが省略された分だけ、側壁部11bと鉄心部11cとの間の空間を拡大させることができる。したがって、空間が拡大された分だけ、第1の実施形態や第2の実施形態よりも開路コイル15aや閉路コイル15bを適切なサイズまで拡大させやすくなる。すなわち、コイル15のサイズの自由度を高められる。図12に示す例では、閉路コイル15bが拡大され、天部11aと第2の支持部112eで軸芯方向に開路コイル15aとともに挟み込まれて支持されている。
【0062】
本実施形態によれば、コイル15のサイズの自由度が高められるので、より小さな起磁力で、電極22a,22bを閉路状態および開路状態とするために必要な磁束M1,M3を生じさせやすくなる。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態(変形例を含む)を説明したが、上述した各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1,10,100…操作機構、2…真空バルブ、3…連結機構、11…ヨーク、11a…天部、11b…側壁部、11c…鉄心部、11d…貫通孔、11e…支持部、11f…端面、11g…第1の当接面、11h…端面、11i…外周面、11j…第2の当接面、11k…支持部、11l…端面、11m…端面、12…アーマチャ、12a…軸支部、12b…フランジ部、12c…第3の当接面、12d…端面、12d…第4の当接面、13…操作軸、13a…固定部、13b…挿通部、13c…先端部、14,141,142…磁石、14a…端面、14b…端面、14c…貫通孔、14d…端面、14e…端面、15…コイル、15a…開路コイル、15b…閉路コイル、15c…第1の周面(外周面)、15d…第1の周面(外周面)、15e…第2の周面(内周面)、15f…第2の周面(内周面)、16,161,162…磁気抵抗体、16a…第1の周面(外周面)、16b…第2の周面(内周面)、16c…端面、16d…端面、21…絶縁容器、22…電極、22a…固定電極、22b…可動電極、23a…第1の通電軸、23b…第2の通電軸、24…ベローズ、31…第1の弾性体(ワイプばね)、32…フォルダ、32a…底部、32b…側壁部、32c…天部、33…第2の弾性体(開路ばね)、34…支持体、35…支持軸、36…連結軸、37…台座部、111e…第1の支持部、112e…第2の支持部、C…軸芯、X…真空遮断器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12