IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧

特許7458257半導体装置、インバータ回路、駆動装置、車両、及び、昇降機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】半導体装置、インバータ回路、駆動装置、車両、及び、昇降機
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240322BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240322BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652H
H01L29/78 652D
H01L29/78 652J
H01L29/78 652F
H01L29/78 658A
H01L29/78 658F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020118754
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015727
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 克久
(72)【発明者】
【氏名】飯島 良介
(72)【発明者】
【氏名】京極 真也
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216224(JP,A)
【文献】特開2018-014455(JP,A)
【文献】特開2018-125331(JP,A)
【文献】特開2011-091086(JP,A)
【文献】特開2017-055005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向及び前記第1の方向に直交する第2の方向に平行な第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有する炭化珪素層であって、
前記第1の面の側に位置し、前記第1の方向に延びる第1のトレンチと、
前記第1の面の側に位置し、前記第1のトレンチに対して前記第2の方向に位置する第2のトレンチと、
前記第1の面の側に位置し、前記第1のトレンチに対して前記第2の方向に位置し、前記第2のトレンチに対して前記第1の方向に位置する第3のトレンチと、
n型の第1の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するp型の第2の炭化珪素領域と、
前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するn型の第3の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第2のトレンチとの間に位置するp型の第4の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第3のトレンチとの間に位置するp型の第5の炭化珪素領域と、
を含む炭化珪素層と、
前記第1のトレンチの中に位置するゲート電極と、
前記ゲート電極と前記炭化珪素層との間に位置するゲート絶縁層と、
前記炭化珪素層の前記第1の面の側に位置し、一部が前記第2のトレンチの中に位置する第1の電極と、
前記炭化珪素層の前記第2の面の側に位置する第2の電極と、
を備え、
前記第1の炭化珪素領域の一部は前記第2のトレンチと前記第3のトレンチとの間に位置し、
前記第1の炭化珪素領域の前記一部は、前記第4の炭化珪素領域と前記第5の炭化珪素領域との間に位置する、半導体装置。
【請求項2】
前記炭化珪素層は、前記第1の炭化珪素領域と前記第1のトレンチとの間に位置するp型の第6の炭化珪素領域を含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2のトレンチの前記第1の方向の長さは、前記第2のトレンチの前記第2の方向の長さよりも長い請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
第1の方向及び前記第1の方向に直交する第2の方向に平行な第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有する炭化珪素層であって、
前記第1の面の側に位置し、前記第1の方向に延びる第1のトレンチと、
前記第1の面の側に位置し、前記第1のトレンチに対して前記第2の方向に位置する第2のトレンチと、
前記第1の面の側に位置し、前記第1のトレンチに対して前記第2の方向に位置し、前記第2のトレンチに対して前記第1の方向に位置する第3のトレンチと、
n型の第1の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するp型の第2の炭化珪素領域と、
前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するn型の第3の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第2のトレンチとの間に位置するp型の第4の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第3のトレンチとの間に位置するp型の第5の炭化珪素領域と、
を含む炭化珪素層と、
前記第1のトレンチの中に位置するゲート電極と、
前記ゲート電極と前記炭化珪素層との間に位置するゲート絶縁層と、
前記炭化珪素層の前記第1の面の側に位置し、一部が前記第2のトレンチの中に位置する第1の電極と、
前記炭化珪素層の前記第2の面の側に位置する第2の電極と、
を備え、
前記第1の炭化珪素領域の一部は前記第2のトレンチと前記第3のトレンチとの間に位置し、
前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間の第1の距離よりも、前記第2のトレンチと前記第3のトレンチの間の第2の距離が大きい、半導体装置。
【請求項5】
前記第2の距離は前記第1の距離の3倍以下である請求項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の炭化珪素領域は、第1の領域と、第2の領域と、第3の領域を含み、
前記第2の領域は前記第1の領域と前記第2の炭化珪素領域との間及び前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間に位置し、
前記第3の領域は前記第1の領域と前記第2の炭化珪素領域との間及び前記第2のトレンチと前記第3のトレンチとの間に位置し、
前記第2の領域のn型不純物濃度は、前記第1の領域のn型不純物濃度よりも高く、
前記第3の領域のn型不純物濃度は、前記第1の領域のn型不純物濃度よりも高い請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項7】
第1の方向及び前記第1の方向に直交する第2の方向に平行な第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有する炭化珪素層であって、
前記第1の面の側に位置し、前記第1の方向に延びる第1のトレンチと、
前記第1の面の側に位置し、前記第1のトレンチに対して前記第2の方向に位置する第2のトレンチと、
前記第1の面の側に位置し、前記第1のトレンチに対して前記第2の方向に位置し、前記第2のトレンチに対して前記第1の方向に位置する第3のトレンチと、
n型の第1の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するp型の第2の炭化珪素領域と、
前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するn型の第3の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第2のトレンチとの間に位置するp型の第4の炭化珪素領域と、
前記第1の炭化珪素領域と前記第3のトレンチとの間に位置するp型の第5の炭化珪素領域と、
を含む炭化珪素層と、
前記第1のトレンチの中に位置するゲート電極と、
前記ゲート電極と前記炭化珪素層との間に位置するゲート絶縁層と、
前記炭化珪素層の前記第1の面の側に位置し、一部が前記第2のトレンチの中に位置する第1の電極と、
前記炭化珪素層の前記第2の面の側に位置する第2の電極と、
を備え、
前記第1の炭化珪素領域の一部は前記第2のトレンチと前記第3のトレンチとの間に位置し、
前記第1の炭化珪素領域は、第1の領域と、第2の領域と、第3の領域を含み、
前記第2の領域は前記第1の領域と前記第2の炭化珪素領域との間及び前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとの間に位置し、
前記第3の領域は前記第1の領域と前記第2の炭化珪素領域との間及び前記第2のトレンチと前記第3のトレンチとの間に位置し、
前記第2の領域のn型不純物濃度は、前記第1の領域のn型不純物濃度よりも高く、
前記第3の領域のn型不純物濃度は、前記第1の領域のn型不純物濃度よりも高く、
前記第3の領域のn型不純物濃度は、前記第2の領域のn型不純物濃度よりも高い、半導体装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体装置を備えるインバータ回路。
【請求項9】
請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体装置を備える駆動装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体装置を備える車両。
【請求項11】
請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体装置を備える昇降機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置、インバータ回路、駆動装置、車両、及び、昇降機に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の半導体デバイス用の材料として炭化珪素(SiC)が期待されている。炭化珪素はシリコンと比較して、バンドギャップが約3倍、破壊電界強度が約10倍、熱伝導率が約3倍と優れた物性を有する。この物性を活用すれば低損失かつ高温動作可能な半導体デバイスを実現することができる。
【0003】
縦型のMetal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET)において、低いオン抵抗を実現するために、トレンチの中にゲート電極を設けるトレンチゲート構造が適用される。トレンチゲート構造を適用することで、単位面積あたりのチャネル面積が増加し、オン抵抗が低減される。
【0004】
MOSFETを用いて駆動される負荷に短絡が生じると、MOSFETに大電流が流れMOSFETが破壊に至る。MOSFETが破壊するまでの時間は短絡耐量と称される。MOSFETの破壊を抑制するためには、短絡耐量を長くすることが望まれる。例えば、MOSFETの飽和電流を低減することで短絡耐量を長くすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-125331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、飽和電流の低減が可能な半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体装置は、第1の方向及び前記第1の方向に直交する第2の方向に平行な第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有する炭化珪素層であって、前記第1の面の側に位置し、前記第1の方向に延びる第1のトレンチと、前記第1の面の側に位置し、前記第1のトレンチに対して前記第2の方向に位置する第2のトレンチと、前記第1の面の側に位置し、前記第1のトレンチに対して前記第2の方向に位置し、前記第2のトレンチに対して前記第1の方向に位置する第3のトレンチと、n型の第1の炭化珪素領域と、前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するp型の第2の炭化珪素領域と、前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置するn型の第3の炭化珪素領域と、前記第1の炭化珪素領域と前記第2のトレンチとの間に位置するp型の第4の炭化珪素領域と、前記第1の炭化珪素領域と前記第3のトレンチとの間に位置するp型の第5の炭化珪素領域と、を含む炭化珪素層と、前記第1のトレンチの中に位置するゲート電極と、前記ゲート電極と前記炭化珪素層との間に位置するゲート絶縁層と、前記炭化珪素層の前記第1の面の側に位置し、一部が前記第2のトレンチの中に位置する第1の電極と、前記炭化珪素層の前記第2の面の側に位置する第2の電極と、を備え、前記第1の炭化珪素領域の一部は前記第2のトレンチと前記第3のトレンチとの間に位置し、前記第1の炭化珪素領域の前記一部は、前記第4の炭化珪素領域と前記第5の炭化珪素領域との間に位置する
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図2】第1の実施形態の半導体装置の模式平面図。
図3】第1の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図4】第1の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図5】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図6】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図7】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図8】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図9】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図10】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図11】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図12】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図13】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図14】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図15】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図16】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図17】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図18】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図19】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図20】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図21】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図22】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図23】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図24】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図25】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図26】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図27】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図28】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図29】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図30】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図31】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図32】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図33】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図。
図34】比較例の半導体装置の模式断面図。
図35】比較例の半導体装置の模式平面図。
図36】比較例の半導体装置の模式断面図。
図37】第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図。
図38】第2の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図39】第2の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図40】第2の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図41】第3の実施形態の駆動装置の模式図。
図42】第4の実施形態の車両の模式図。
図43】第5の実施形態の車両の模式図。
図44】第6の実施形態の昇降機の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0010】
また、以下の説明において、n、n、n及び、p、p、pの表記を用いる場合、これらの表記は、各導電型における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちnはnよりもn型の不純物濃度が相対的に高く、nはnよりもn型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、pはpよりもp型の不純物濃度が相対的に高く、pはpよりもp型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n型、n型を単にn型、p型、p型を単にp型と記載する場合もある。
【0011】
不純物濃度は、例えば、Secondary Ion Mass Spectrometry(SIMS)により測定することが可能である。また、不純物濃度の相対的な高低は、例えば、Scanning Capacitance Microscopy(SCM)で求められるキャリア濃度の高低から判断することも可能である。また、不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SIMSで求めることが可能である。また。不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SCM像から求めることが可能である。
【0012】
トレンチの深さ、絶縁層の厚さ等は、例えば、Transmission Electron Microscope(TEM)の画像上で計測することが可能である。また、例えば、SIMSのプロファイルから判断することが可能である。
【0013】
なお、本明細書中でp型の炭化珪素領域の「p型不純物濃度」とは、当該領域のp型不純物濃度から当該領域のn型不純物濃度を引いた正味(net)のp型不純物濃度を意味する。また、n型の炭化珪素領域の「n型不純物濃度」とは、当該領域のn型不純物濃度から当該領域のp型不純物濃度を引いた正味(net)のn型不純物濃度を意味する。
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の方向及び第1の方向に直交する第2の方向に平行な第1の面と、第1の面に対向する第2の面と、を有する炭化珪素層であって、第1の面の側に位置し、第1の方向に延びる第1のトレンチと、第1の面の側に位置し、第1のトレンチに対して第2の方向に位置する第2のトレンチと、第1の面の側に位置し、第1のトレンチに対して第2の方向に位置し、第2のトレンチに対して第1の方向に位置する第3のトレンチと、n型の第1の炭化珪素領域と、第1の炭化珪素領域と第1の面との間に位置するp型の第2の炭化珪素領域と、第2の炭化珪素領域と第1の面との間に位置するn型の第3の炭化珪素領域と、第1の炭化珪素領域と第2のトレンチとの間に位置するp型の第4の炭化珪素領域と、第1の炭化珪素領域と第3のトレンチとの間に位置するp型の第5の炭化珪素領域と、を含む炭化珪素層と、第1のトレンチの中に位置するゲート電極と、ゲート電極と炭化珪素層との間に位置するゲート絶縁層と、炭化珪素層の第1の面の側に位置し、一部が第2のトレンチの中に位置する第1の電極と、炭化珪素層の第2の面の側に位置する第2の電極と、を備える。そして、第1の炭化珪素領域の一部は第2のトレンチと第3のトレンチとの間に位置する。
【0015】
第1の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いた縦型MOSFET100である。MOSFET100は、トレンチの中にゲート電極を設けるトレンチゲート構造のMOSFETである。また、MOSFET100は、トレンチの中にソース電極を設ける、いわゆるダブルトレンチ構造のMOSFETである。また、MOSFET100は、電子をキャリアとするnチャネル型のMOSFETである。
【0016】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図2は、第1の実施形態の半導体装置の模式平面図である。図3は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図4は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0017】
図1は、図2のAA’断面図である。図2は、図1の第1の面P1上のパターンを示す。図3は、図2のBB’断面図である。図4は、図2のCC’断面図である。
【0018】
MOSFET100は、炭化珪素層10、ソース電極12(第1の電極)、ドレイン電極14(第2の電極)、ゲート電極16、ゲート絶縁層18、層間絶縁層20を備える。ソース電極12は、コンタクト領域12a(第1の電極の一部)を有する。
【0019】
炭化珪素層10は、ゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、コンタクトトレンチ22a(第2のトレンチ)、コンタクトトレンチ22b(第3のトレンチ)、コンタクトトレンチ22c、コンタクトトレンチ22d、n型のドレイン領域24、n型のドリフト領域26(第1の炭化珪素領域)、p型のボディ領域28(第2の炭化珪素領域)、n型のソース領域30(第3の炭化珪素領域)、p型の電界緩和領域32a(第4の炭化珪素領域)、p型の電界緩和領域32b(第5の炭化珪素領域)、p型の電界緩和領域32c、p++型の高濃度領域34、p型のゲートトレンチ底部領域36(第6の炭化珪素領域)を有する。
【0020】
以下、コンタクトトレンチ22a、コンタクトトレンチ22b、コンタクトトレンチ22c及びコンタクトトレンチ22dを一括して、単に、コンタクトトレンチ22と称する場合がある。また、電界緩和領域32a、電界緩和領域32b及び電界緩和領域32cを一括して、単に、電界緩和領域32と称する場合がある。
【0021】
炭化珪素層10は、ソース電極12とドレイン電極14との間に位置する。炭化珪素層10は、第1の面(図1中“P1”)と第2の面(図1中“P2”)とを備える。以下、第1の面P1を表面、第2の面P2を裏面とも称する。第2の面P2は、第1の面P1に対向する。
【0022】
第1の方向及び第2の方向は第1の面P1に対して平行な方向である。また、第2の方向は第1の方向に直交する方向である。また、第3の方向は第1の面P1に対して垂直な方向である。第3の方向は第1の方向及び第2の方向に対して垂直な方向である。
【0023】
以下、「深さ」とは、第1の面P1を基準とする深さを意味する。
【0024】
炭化珪素層10は、単結晶のSiCである。炭化珪素層10は、例えば、4H-SiCである。炭化珪素層10の厚さは、例えば、5μm以上500μm以下である。
【0025】
第1の面P1は、例えば、(0001)面に対し0度以上8度以下傾斜した面である。すなわち、法線が[0001]方向のc軸に対し0度以上8度以下傾斜した面である。言い換えれば、(0001)面に対するオフ角が0度以上8度以下である。また、第2の面P2は、例えば、(000-1)面に対し0度以上8度以下傾斜した面である。
【0026】
(0001)面はシリコン面と称される。(000-1)面はカーボン面と称される。第1の面P1及び第2の面P2の傾斜方向は、例えば、[11-20]方向である。[11-20]方向は、a軸方向である。図1図2図3図4では、例えば、図中に示す第1の方向又は第2の方向がa軸方向である。
【0027】
ゲートトレンチ21は、炭化珪素層10の中に存在する。ゲートトレンチ21は、炭化珪素層10の第1の面P1の側に位置する。ゲートトレンチ21は、炭化珪素層10に形成された溝である。
【0028】
ゲートトレンチ21は、図2に示すように、第1の方向に延びる。ゲートトレンチ21は、図2に示すようにストライプ形状を有する。
【0029】
ゲートトレンチ21は、図1及び図2に示すように第2の方向に繰り返し配置される。ゲートトレンチ21の第2の方向の長さは、例えば、0.5μm以上1μm以下である。
【0030】
ゲートトレンチ21は、ソース領域30及びボディ領域28を貫通する。ゲートトレンチ21の深さは、例えば、1μm以上2μm以下である。
【0031】
コンタクトトレンチ22は、炭化珪素層10の中に存在する。コンタクトトレンチ22は、炭化珪素層10の第1の面P1の側に位置する。コンタクトトレンチ22は、炭化珪素層10に形成された溝である。
【0032】
コンタクトトレンチ22は、図2に示すように、例えば、第1の方向に延びる。コンタクトトレンチ22は、図2に示すように第1の方向に繰り返し配置される。コンタクトトレンチ22は、第1の方向に分割されたトレンチである。
【0033】
例えば、コンタクトトレンチ22bは、コンタクトトレンチ22aに対して第1の方向に位置する。コンタクトトレンチ22bは、コンタクトトレンチ22aに対して第1の方向に離間して設けられる。
【0034】
コンタクトトレンチ22は、ゲートトレンチ21に対して第2の方向に位置する。例えば、コンタクトトレンチ22aは、ゲートトレンチ21に対して第2の方向に位置する。例えば、コンタクトトレンチ22bは、ゲートトレンチ21に対して第2の方向に位置する。コンタクトトレンチ22は、2つのゲートトレンチ21の間に設けられる。コンタクトトレンチ22は、ゲートトレンチ21を間に挟んで第2の方向に繰り返し配置される。
【0035】
コンタクトトレンチ22の第1の方向の長さは、例えば、コンタクトトレンチ22の第2の方向の長さよりも長い。例えば、コンタクトトレンチ22aの第1の方向の長さ(図2中のL1)は、コンタクトトレンチ22aの第2の方向の長さ(図2中のL2)よりも長い。
【0036】
コンタクトトレンチ22の第1の方向の長さは、例えば、1μm以上5μm以下である。コンタクトトレンチ22の第2の方向の長さは、例えば、0.5μm以上2μm以下である。
【0037】
コンタクトトレンチ22の第2の方向の長さは、例えば、ゲートトレンチ21の第2の方向の長さよりも長い。また、コンタクトトレンチ22の第2の方向の長さは、例えば、ゲートトレンチ21の第2の方向の長さと同一である。
【0038】
例えば、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間の距離よりも、第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間の距離が大きい。例えば、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22aの間の第1の距離(図2中のd1)よりも、コンタクトトレンチ22aとコンタクトトレンチ22bとの間の第2の距離(図2中のd2)が大きい。
【0039】
第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間の距離は、例えば、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間の距離の1.2倍以上3倍以下である。例えば、コンタクトトレンチ22aとコンタクトトレンチ22bとの間の第2の距離(図2中のd2)は、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22aの間の第1の距離(図2中のd1)の1.2倍以上3倍以下である。
【0040】
ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間の距離は、例えば、0.5μm以上1μm以下である。第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間の距離は、例えば、0.6μm以上1.5μm以下である。
【0041】
コンタクトトレンチ22は、ソース領域30及びボディ領域28を貫通する。コンタクトトレンチ22の深さは、例えば、1μm以上2μm以下である。
【0042】
コンタクトトレンチ22の深さと、ゲートトレンチ21の深さは、例えば、同一である。言い換えれば、第2の面P2からゲートトレンチ21までの距離と、第2の面P2からコンタクトトレンチ22までの距離は同一である。コンタクトトレンチ22の深さと、ゲートトレンチ21の深さは、異なっていても構わない。
【0043】
ゲート電極16は、ゲートトレンチ21の中に位置する。ゲート電極16は、ソース電極12とドレイン電極14との間に設けられる。ゲート電極16は、第1の方向に延びる。
【0044】
ゲート電極16は、導電層である。ゲート電極16は、例えば、p型不純物又はn型不純物を含む多結晶質シリコンである。
【0045】
ゲート絶縁層18は、ゲート電極16と炭化珪素層10との間に位置する。ゲート絶縁層18は、ソース領域30、ボディ領域28、ドリフト領域26及びゲートトレンチ底部領域36と、ゲート電極16との間に設けられる。
【0046】
ゲート絶縁層18は、例えば、シリコン酸化膜である。ゲート絶縁層18には、例えば、高誘電率絶縁膜を適用することも可能である。また、ゲート絶縁層18には、例えば、シリコン酸化膜と高誘電率絶縁膜との積層膜を適用することも可能である。
【0047】
層間絶縁層20は、ゲート電極16上に設けられる。層間絶縁層20は、ゲート電極16とソース電極12との間に設けられる。
【0048】
層間絶縁層20の厚さは、例えば、ゲート絶縁層18の厚さよりも厚い。層間絶縁層20は、例えば、シリコン酸化膜である。層間絶縁層20は、ゲート電極16とソース電極12を電気的に分離する。
【0049】
ソース電極12は、炭化珪素層10の第1の面P1側に位置する。ソース電極12は、炭化珪素層10の第1の面P1の上に設けられる。ソース電極12は、ソース領域30、及び、電界緩和領域32に接する。
【0050】
ソース電極12は、炭化珪素層10の第1の面P1で、ソース領域30に接する。
【0051】
ソース電極12の一部であるコンタクト領域12aは、コンタクトトレンチ22の中に位置する。ソース電極12の一部であるコンタクト領域12aは、例えば、コンタクトトレンチ22aの中に位置する。ソース電極12の一部であるコンタクト領域12aは、例えば、コンタクトトレンチ22bの中に位置する。
【0052】
コンタクト領域12aは、コンタクトトレンチ22の側面で、ソース領域30に接する。コンタクト領域12aは、コンタクトトレンチ22の側面で、電界緩和領域32に接する。コンタクト領域12aは、コンタクトトレンチ22の底面で、高濃度領域34に接する。
【0053】
ソース電極12は、金属を含む。ソース電極12を形成する金属は、例えば、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)の積層構造である。ソース電極12は、例えば、炭化珪素層10に接する金属シリサイドや金属カーバイドを含んでも構わない。
【0054】
ドレイン電極14は、炭化珪素層10の第2の面P2側に位置する。ドレイン電極14は、炭化珪素層10の第2の面P2上に設けられる。ドレイン電極14は、ドレイン領域24に接する。
【0055】
ドレイン電極14は、例えば、金属又は金属半導体化合物である。ドレイン電極14は、例えば、ニッケルシリサイド、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)及び金(Au)から成る群から選ばれる少なくとも一つの材料を含む。
【0056】
型のドレイン領域24は、炭化珪素層10の第2の面P2側に設けられる。ドレイン領域24は、例えば、窒素(N)をn型不純物として含む。ドレイン領域24のn型不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下である。
【0057】
型のドリフト領域26は、ドレイン領域24上に設けられる。ドリフト領域26は、ドレイン領域24と第1の面P1との間に位置する。
【0058】
ドリフト領域26の一部は、第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間に位置する。ドリフト領域26の一部は、第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間に挟まれる。ドリフト領域26の一部は、例えば、コンタクトトレンチ22aとコンタクトトレンチ22bとの間に位置する。
【0059】
ドリフト領域26の一部は、第1の方向に隣り合う2つの電界緩和領域32の間に位置する。ドリフト領域26の一部は、例えば、電界緩和領域32aと段階緩和領域32bとの間に位置する。
【0060】
ドリフト領域26は、例えば、窒素(N)をn型不純物として含む。ドリフト領域26のn型不純物濃度は、ドレイン領域24のn型不純物濃度よりも低い。ドリフト領域26のn型不純物濃度は、例えば、4×1014cm-3以上1×1018cm-3以下である。
【0061】
p型のボディ領域28は、ドリフト領域26と第1の面P1との間に位置する。ボディ領域28は、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22との間に位置する。
【0062】
ボディ領域28の一部は、第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間に位置する。ボディ領域28の一部は、第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間に挟まれる。ボディ領域28の一部は、例えば、コンタクトトレンチ22aとコンタクトトレンチ22bとの間に位置する。
【0063】
ボディ領域28は、MOSFET100のチャネル形成領域として機能する。例えば、MOSFET100のオン動作時に、ボディ領域28のゲート絶縁層18と接する領域に電子が流れるチャネルが形成される。ボディ領域28のゲート絶縁層18と接する領域が、チャネル形成領域となる。
【0064】
ボディ領域28は、例えば、アルミニウム(Al)をp型不純物として含む。ボディ領域28のp型不純物濃度は、例えば、5×1016cm-3以上5×1017cm-3以下である。
【0065】
ボディ領域28の深さは、ゲートトレンチ21の深さよりも浅い。ボディ領域28の深さは、例えば、0.4μm以上1.0μm以下である。
【0066】
ボディ領域28の深さ方向(第3の方向)の厚さは、例えば、0.1μm以上0.3μm以下である。
【0067】
型のソース領域30は、ボディ領域28と第1の面P1との間に位置する。ソース領域30は、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22との間に位置する。
【0068】
ソース領域30は、ソース電極12に接する。ソース領域30は、ゲート絶縁層18に接する。
【0069】
ソース領域30は、例えば、リン(P)をn型不純物として含む。ソース領域30のn型不純物濃度は、ドリフト領域26のn型不純物濃度よりも高い。ソース領域30のn型不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である。
【0070】
ソース領域30の深さは、ボディ領域28の深さよりも浅い。ソース領域30の深さは、例えば、0.1μm以上0.4μm以下である。
【0071】
型の電界緩和領域32は、ドリフト領域26とコンタクトトレンチ22との間に位置する。電界緩和領域32は、例えば、ドリフト領域26とコンタクトトレンチ22aとの間に位置する。電界緩和領域32は、例えば、ドリフト領域26とコンタクトトレンチ22bとの間に位置する。
【0072】
電界緩和領域32は、コンタクトトレンチ22の側面に接する。電界緩和領域32は、ソース電極12のコンタクト領域12aに接する。
【0073】
電界緩和領域32は、ドリフト領域26とコンタクトトレンチ22の底面との間に設けられる。電界緩和領域32は、コンタクトトレンチ22とボディ領域28との間に位置する。
【0074】
電界緩和領域32の深さは、ゲートトレンチ21の深さよりも深い。
【0075】
電界緩和領域32は、MOSFET100のオフ動作時に、ゲート絶縁層18に印加される電界強度を緩和する機能を有する。電界緩和領域32は、例えば、ソース電極12と同電位に固定される。
【0076】
電界緩和領域32は、例えば、アルミニウム(Al)をp型不純物として含む。電界緩和領域32のp型不純物濃度は、ボディ領域28のp型不純物濃度よりも高い。電界緩和領域32のp型不純物濃度は、例えば、ボディ領域28のp型不純物濃度の10倍以上である。電界緩和領域32のp型不純物濃度は、例えば、5×1017cm-3以上5×1020cm-3以下である。
【0077】
型の高濃度領域34は、電界緩和領域32とコンタクトトレンチ22との間に位置する。高濃度領域34は、コンタクトトレンチ22の底面に接する。高濃度領域34は、ソース電極12のコンタクト領域12aに接する。
【0078】
型の高濃度領域34は、ソース電極12のコンタクト抵抗を低減する機能を有する。高濃度領域34を設けることにより、ソース電極12と電界緩和領域32との間の電気抵抗が低減する。
【0079】
高濃度領域34は、例えば、アルミニウム(Al)をp型不純物として含む。高濃度領域34のp型不純物濃度は、電界緩和領域32のp型不純物濃度よりも高い。高濃度領域34のp型不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下である。
【0080】
型のゲートトレンチ底部領域36は、ドリフト領域26とゲートトレンチ21の底面との間に設けられる。ゲートトレンチ底部領域36は、ゲートトレンチ21の底面に接する。
【0081】
ゲートトレンチ底部領域36は、MOSFET100のオフ動作時に、ゲート絶縁層18に印加される電界強度を緩和する機能を有する。ゲートトレンチ底部領域36は、例えば、ソース電極12と同電位に固定される。
【0082】
ゲートトレンチ底部領域36は、例えば、アルミニウム(Al)をp型不純物として含む。ゲートトレンチ底部領域36のp型不純物濃度は、ボディ領域28のp型不純物濃度よりも高い。ゲートトレンチ底部領域36のp型不純物濃度は、例えば、ボディ領域28のp型不純物濃度の10倍以上である。ゲートトレンチ底部領域36のp型不純物濃度は、例えば、5×1017cm-3以上5×1020cm-3以下である。
【0083】
次に、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例について説明する。
【0084】
図5図6図7図8図9図10図11図12図13図14図15図16図17図18図19図20図21図22図23図24図25図26図27図28図29図30図31図32及び図33は、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例を示す模式断面図である。図5図6図7図8図10図12図14図16図18図20図22図24図26図28図30及び図32は、図1に相当する断面図である。図9図11図13図15図17図19図21図23図25図27図29図31及び図33は、図4に相当する断面図である。
【0085】
最初に、n型のドレイン領域24、及び、ドレイン領域24の上にエピタキシャル成長により形成されたn型のエピタキシャル層11を有する炭化珪素層10を準備する(図5)。エピタキシャル層11の一部は、最終的に、ドリフト領域26となる。
【0086】
炭化珪素層10は、第1の面(図5中“P1”)と第2の面(図5中“P2”)とを備える。以下、第1の面P1を表面、第2の面P2を裏面とも称する。
【0087】
次に、エピタキシャル層11に、イオン注入法により、p型のボディ領域28を形成する(図6)。
【0088】
次に、エピタキシャル層11に、イオン注入法により、n型のソース領域30を形成する(図7)。ソース領域30は、ボディ領域28と第1の面P1との間に形成される。
【0089】
次に、炭化珪素層10の表面に、マスク材50を形成する(図8図9)。マスク材50は、開口部70を有する。マスク材50は、例えば、Chemical Vapoer Deposition法(CVD法)による膜の堆積、リソグラフィ法、及び、反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いた膜のパターニングにより形成される。マスク材50は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0090】
次に、マスク材50をマスクにゲートトレンチ21及びコンタクトトレンチ22を形成する(図10図11)。ゲートトレンチ21及びコンタクトトレンチ22は、RIE法を用いて形成される。ゲートトレンチ21及びコンタクトトレンチ22は、ソース領域30及びボディ領域28を貫通するように形成される。ゲートトレンチ21及びコンタクトトレンチ22は、マスク材50の開口部70の下の炭化珪素層10に形成される。
【0091】
次に、炭化珪素層10の上に、マスク材52を形成する(図12図13)。マスク材52は、マスク材50とゲートトレンチ21を覆う。マスク材52は、コンタクトトレンチ22を覆わない。マスク材52は、例えば、フォトレジストである。
【0092】
次に、p型の電界緩和領域32を形成する(図14図15)。電界緩和領域32は、マスク材52及びマスク材50をマスクに、コンタクトトレンチ22に、斜めイオン注入法によりp型不純物を注入して形成する。p型不純物は、例えば、アルミニウムイオンである。電界緩和領域32は、炭化珪素層10のコンタクトトレンチ22の側面及び底面の近傍に形成される。
【0093】
次に、p++型の高濃度領域34を形成する(図16図17)。高濃度領域34は、マスク材52及びマスク材50をマスクに、コンタクトトレンチ22の底部に、イオン注入法によりp型不純物を注入して形成する。p型不純物は、例えば、アルミニウムイオンである。
【0094】
次に、マスク材52及びマスク材50を剥離する。次に、炭化珪素層10の上に、マスク材53を形成する。マスク材53は、マスク材50とコンタクトトレンチ22を覆う。マスク材53は、ゲートトレンチ21を覆わない。マスク材53は、例えば、フォトレジストである。
【0095】
次に、p型のゲートトレンチ底部領域36を形成する(図18図19)。ゲートトレンチ底部領域36は、マスク材53及びマスク材50をマスクに、ゲートトレンチ21の底部に、イオン注入法によりp型不純物を注入して形成する。p型不純物は、例えば、アルミニウムイオンである。
【0096】
次に、マスク材53及びマスク材50を剥離する(図20図21)。次に、n型不純物及びp型不純物の活性化アニールを行う。
【0097】
次に、ゲートトレンチ21及びコンタクトトレンチ22の中に、第1のシリコン酸化膜60、及び、多結晶シリコン膜61を形成する(図22図23)。
【0098】
第1のシリコン酸化膜60、及び、多結晶シリコン膜61は、例えば、CVD法により形成される。第1のシリコン酸化膜60の一部は、ゲート絶縁層18となる。多結晶シリコン膜61の一部はゲート電極16となる。
【0099】
次に、炭化珪素層10の表面の多結晶シリコン膜61を除去する(図24図25)。炭化珪素層10の表面の多結晶シリコン膜61は、例えば、ドライエッチング法により除去される。多結晶シリコン膜61の一部は、ゲートトレンチ21及びコンタクトトレンチ22の中に残る。
【0100】
次に、炭化珪素層10の表面に、マスク材54を形成する。マスク材54は、例えば、フォトレジストである。
【0101】
マスク材54は、ゲートトレンチ21を覆う。マスク材54は、ゲートトレンチ21の中の多結晶シリコン膜61を覆う。
【0102】
次に、マスク材54をマスクにコンタクトトレンチ22の中の多結晶シリコン膜61を除去する(図26図27)。多結晶シリコン膜61は、例えば、ドライエッチング法により除去される。
【0103】
次に、マスク材54を除去する。次に、第1のシリコン酸化膜60、及び、多結晶シリコン膜61の上に第2のシリコン酸化膜62を形成する(図28図29)。第2のシリコン酸化膜62は、例えば、CVD法により形成される。第2のシリコン酸化膜62の一部は、層間絶縁層20となる。
【0104】
次に、第2のシリコン酸化膜62の上に、マスク材56を形成する。マスク材56は、例えば、フォトレジストである。
【0105】
次に、マスク材56をマスクに、コンタクトトレンチ22の中の第1のシリコン酸化膜60、及び、第2のシリコン酸化膜62を、除去する(図30図31)。第1のシリコン酸化膜60、及び、第2のシリコン酸化膜62は、例えば、ウェットエッチング法により除去される。
【0106】
次に、マスク材56を除去する。次に、コンタクトトレンチ22の中、及び、第2のシリコン酸化膜62の上に、ソース電極12を形成する(図32図33)。ソース電極12は、例えば、CVD法により金属膜を堆積することで形成される。
【0107】
その後、公知のプロセス技術を用いて、炭化珪素層10の裏面にドレイン電極14を形成する。
【0108】
以上の製造方法により、図1ないし図4に示すMOSFET100が製造される。
【0109】
次に、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0110】
MOSFET100は、ゲートトレンチ21の中にゲート電極16が設けられたトレンチゲート構造が適用される。トレンチゲート構造を適用することで、単位面積あたりのチャネル面積が増加し、MOSFET100のオン抵抗が低減される。
【0111】
また、MOSFET100は、コンタクトトレンチ22の中にソース電極12の一部であるコンタクト領域12aを設ける。MOSFET100は、いわゆるダブルトレンチ構造のMOSFETである。
【0112】
コンタクトトレンチ22の中にコンタクト領域12aを設けることで、ボディ領域28及びソース領域30への電気的接続をコンタクトトレンチ22の側面で取ることができる。したがって、炭化珪素層10の表面でのソース電極12の接続面積が低減できる。よって、単位面積あたりのチャネル面積が増加し、MOSFET100のオン抵抗が低減される。
【0113】
また、MOSFET100は、コンタクトトレンチ22の底面及び側面の周りに、電界緩和領域32を備える。したがって、MOSFET100のオフ動作時に、ゲート絶縁層18に印加される電界強度が緩和される。よって、ゲート絶縁層18の信頼性が向上する。
【0114】
また、MOSFET100は、ゲートトレンチ21の底面に、ゲートトレンチ底部領域36を備える。したがって、MOSFET100のオフ動作時に、ゲート絶縁層18に印加される電界強度が緩和される。よって、ゲート絶縁層18の信頼性が向上する。
【0115】
図34は、比較例の半導体装置の模式断面図である。図35は、比較例の半導体装置の模式平面図である。図36は、比較例の半導体装置の模式断面図である。
【0116】
図34は、図35のDD’断面図である。図35は、図34の第1の面P1上のパターンを示す。図36は、図35のEE’断面図である。
【0117】
比較例の半導体装置は、トレンチの中にゲート電極を設けるトレンチゲート構造のMOSFET900である。MOSFET900はダブルトレンチ構造である。
【0118】
比較例のMOSFET900は、コンタクトトレンチ22が第1の方向に分割されていない点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。
【0119】
MOSFETを用いて駆動される負荷に短絡が生じると、MOSFETに大電流が流れMOSFETが破壊に至る。MOSFETが破壊するまでの時間は短絡耐量と称される。MOSFETの破壊を抑制するためには、短絡耐量を長くすることが望まれる。例えば、MOSFETの飽和電流を低減することで短絡耐量を長くすることが可能となる。
【0120】
図37は、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。図37は、比較例のMOSFET900と第1の実施形態のMOSFET100のドレイン電流密度のシミュレーション結果である。
【0121】
図37(a)はMOSFETの通常動作時のドレイン電圧とドレイン電流密度の関係を示す。図37(b)はMOSFETの負荷短絡時のドレイン電圧とドレイン電流密度の関係を示す。
【0122】
MOSFETの通常動作時のドレイン電圧は、1.0Vから1.5V程度の低い電圧である。一方、MOSFETの負荷短絡時のドレイン電圧は、例えば、100Vから600Vの高い電圧である。
【0123】
MOSFETの通常動作時は、ドレイン電圧に対してドレイン電流密度は線形に増加する。一方、MOSFETの負荷短絡時は、ドレイン電圧に対してドレイン電流密度は飽和する傾向を示す。以後、MOSFETの負荷短絡時に流れるドレイン電流を飽和電流と称する。
【0124】
シミュレーションを行う際に、比較例のMOSFET900と第1の実施形態のMOSFET100の通常動作時のオン抵抗が同一となるようにMOSFETのパターンを調整している。具体的には、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22との第2の方向の距離、及び、2つのコンタクトトレンチの第1の方向の距離を調整している。
【0125】
比較例のMOSFET900がオン状態の際には、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間のドリフト領域26のみが電流経路となる。一方、第1の実施形態のMOSFET100がオン状態の際には、ドリフト領域26の中に2つの電流経路が存在する。一つは、比較例のMOSFET900と同様、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間のドリフト領域26である。この電流経路を第1の電流経路と称する。もう一つは、第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間のドリフト領域26である。この電流経路を第2の電流経路と称する。
【0126】
シミュレーションを行う際に、第1の実施形態のMOSFET100のゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間の第2の方向の距離を、比較例のMOSFET900のゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の第2の方向の距離よりも小さくすることで、比較例のMOSFET900と第1の実施形態のMOSFET100の通常動作時のオン抵抗が同一となるように調整している。
【0127】
図37(a)に示すように、MOSFETの通常動作時は、比較例のMOSFET900のドレイン電流密度と、第1の実施形態のMOSFET100のドレイン電流密度に差はない。一方、図37(b)に示すように、ドレイン電圧が高いMOSFETの負荷短絡時には、第1の実施形態のMOSFET100のドレイン電流密度が比較例のMOSFET900のドレイン電流密度に比べ低くなる。
【0128】
第1の実施形態のMOSFET100のゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間の第2の方向の距離は、上述のように比較例のMOSFET900のゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の第2の方向の距離よりも小さい。このため、MOSFET100の負荷短絡時にドレイン電圧が上昇し所定のドレイン電圧に達した時に、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間のドリフト領域26が空乏層により閉塞される。ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間のドリフト領域26が空乏層により閉塞されると、第1の電流経路が遮断され、第2の電流経路のみに電流が流れることになる。したがって、MOSFETの負荷短絡時には、第1の実施形態のMOSFET100のドレイン電流密度が、比較例のMOSFET900のドレイン電流密度に比べて低くなる。よって、第1の実施形態のMOSFET100の飽和電流が低減される。
【0129】
飽和電流が低減されることで、MOSFET100の短絡耐量が長くなる。飽和電流が低減されることで、MOSFET100の短絡耐量が向上する。
【0130】
第1の電流経路を遮断し、MOSFET100の飽和電流を低減する観点から、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間の距離よりも、第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間の距離が大きいことが好ましい。すなわち、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22aの間の第1の距離(図2中のd1)よりも、コンタクトトレンチ22aとコンタクトトレンチ22bとの間の第2の距離(図2中のd2)が大きいことが好ましい。
【0131】
第1の電流経路を遮断し、MOSFET100の飽和電流を低減する観点から、第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間の距離は、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間の距離の1.2倍以上であることが好ましい。すなわち、コンタクトトレンチ22aとコンタクトトレンチ22bとの間の第2の距離(図2中のd2)は、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22aの間の第1の距離(図2中のd1)の1.2倍以上であることが好ましい。
【0132】
第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間の距離が離れすぎると、MOSFET100のオフ動作時に、ゲート絶縁層18に印加される電界強度が大きくなり、ゲート絶縁層18の信頼性が低下するおそれがある。ゲート絶縁層18の信頼性の低下を抑制する観点から、2つのコンタクトトレンチ22の間の距離は、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22の間の距離の3倍以下であることが好ましく、2倍以下であることがより好ましい。すなわち、コンタクトトレンチ22aとコンタクトトレンチ22bとの間の第2の距離(図2中のd2)は、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22aの間の第1の距離(図2中のd1)の3倍以下であることが好ましく、2倍以下であることがより好ましい。
【0133】
以上、第1の実施形態によれば、飽和電流の低減が可能なMOSFETが実現できる。
【0134】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、第1の炭化珪素領域が、第1の領域と、第2の領域と、第3の領域を含み、第2の領域は第1の領域と第2の炭化珪素領域との間及び第1のトレンチと第2のトレンチとの間に位置し、第3の領域は第1の領域と第2の炭化珪素領域との間及び第2のトレンチと第3のトレンチとの間に位置し、第2の領域のn型不純物濃度は、第1の領域のn型不純物濃度よりも高く、第3の領域のn型不純物濃度は、第1の領域のn型不純物濃度よりも高い点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0135】
第2の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いた縦型MOSFET200である。MOSFET200は、トレンチの中にゲート電極を設けるトレンチゲート構造のMOSFETである。また、MOSFET200は、トレンチの中にソース電極を設ける、いわゆるダブルトレンチ構造のMOSFETである。また、MOSFET200は、電子をキャリアとするnチャネル型のMOSFETである。
【0136】
図38図39及び図40は、第2の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図38図39及び図40は、それぞれ、第1の実施形態の図1図3及び図4に対応する断面図である。
【0137】
MOSFET200は、炭化珪素層10、ソース電極12(第1の電極)、ドレイン電極14(第2の電極)、ゲート電極16、ゲート絶縁層18、層間絶縁層20を備える。ソース電極12は、コンタクト領域12aを有する。
【0138】
炭化珪素層10は、ゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、コンタクトトレンチ22a(第2のトレンチ)、コンタクトトレンチ22b(第3のトレンチ)、コンタクトトレンチ22c、コンタクトトレンチ22d、n型のドレイン領域24、n型のドリフト領域26(第1の炭化珪素領域)、p型のボディ領域28(第2の炭化珪素領域)、n型のソース領域30(第3の炭化珪素領域)、p型の電界緩和領域32a(第4の炭化珪素領域)、p型の電界緩和領域32b(第5の炭化珪素領域)、p型の電界緩和領域32c、p++型の高濃度領域34、p型のゲートトレンチ底部領域36(第6の炭化珪素領域)を有する。
【0139】
以下、コンタクトトレンチ22a、コンタクトトレンチ22b、コンタクトトレンチ22c及びコンタクトトレンチ22dを一括して、単に、コンタクトトレンチ22と称する場合がある。また、電界緩和領域32a、電界緩和領域32b及び電界緩和領域32cを一括して、単に、電界緩和領域32bと称する場合がある。
【0140】
型のドリフト領域26(第1の炭化珪素領域)は、第1の領域26a、第2の領域26b及び第3の領域26cを有する。
【0141】
第2の領域26bは、第1の領域26aとボディ領域28との間に位置する。第2の領域26bは、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22との間に位置する。例えば、第2の領域26bは、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22aとの間に位置する。例えば、第2の領域26bは、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22bとの間に位置する。例えば、第2の領域26bは、ゲートトレンチ21とコンタクトトレンチ22cとの間に位置する。
【0142】
第2の領域26bは、例えば、窒素(N)をn型不純物として含む。第2の領域26bのn型不純物濃度は、第1の領域26aのn型不純物濃度よりも高い。
【0143】
第2の領域26bのn型不純物濃度は、例えば、第1の領域26aのn型不純物濃度の1.2倍以上5倍以下である。第2の領域26bのn型不純物濃度は、例えば、1×1015cm-3以上1×1018cm-3以下である。
【0144】
第2の領域26bの深さは、例えば、ゲートトレンチ21の深さよりも深い。第2の領域26bの深さは、例えば、ゲートトレンチ底部領域36の深さよりも深い。また、第2の領域26bの深さは、例えば、電界緩和領域32の深さよりも浅い。
【0145】
第3の領域26cは、第1の領域26aとボディ領域28との間に位置する。第3の領域26cは、第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間に位置する。例えば、第3の領域26cは、コンタクトトレンチ22aとコンタクトトレンチ22bとの間に位置する。
【0146】
第3の領域26cは、第1の方向に対向する2つの電界緩和領域32の間に位置する。第3の領域26cは、例えば、電界緩和領域32aと電界緩和領域32bとの間に位置する。
【0147】
第3の領域26cは、例えば、窒素(N)をn型不純物として含む。第3の領域26cのn型不純物濃度は、第1の領域26aのn型不純物濃度よりも高い。第3の領域26cのn型不純物濃度は、例えば、第2の領域26bのn型不純物濃度よりも高い。
【0148】
第3の領域26cのn型不純物濃度は、例えば、第1の領域26aのn型不純物濃度の1.2倍以上5倍以下である。また、第3の領域26cのn型不純物濃度は、例えば、第2の領域26bのn型不純物濃度の1.1倍以上3倍以下である。
【0149】
第3の領域26cのn型不純物濃度は、例えば、1×1015cm-3以上1×1018cm-3以下である。
【0150】
第2の実施形態のMOSFET200は、n型不純物濃度の高い第2の領域26b及び第3の領域26cを有することにより、MOSFET200のオン抵抗を低減することが可能となる。
【0151】
第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間の距離を小さくし、MOSFET100のオフ動作時に、ゲート絶縁層18に印加される電界強度を低減する観点から、第3の領域26cのn型不純物濃度は、第2の領域26bのn型不純物濃度よりも高いことが好ましい。第2の領域26bのn型不純物濃度を高くすることで、第1の方向に隣り合う2つのコンタクトトレンチ22の間の距離を小さくしても、低いオン抵抗を維持することが可能となる。
【0152】
以上、第2の実施形態によれば、飽和電流の低減が可能なMOSFETが実現できる。また、オン抵抗の低減が可能なMOSFETが実現できる。
【0153】
(第3の実施形態)
第3の実施形態のインバータ回路及び駆動装置は、第1の実施形態の半導体装置を備える駆動装置である。
【0154】
図41は、第3の実施形態の駆動装置の模式図である。駆動装置1000は、モーター140と、インバータ回路150を備える。
【0155】
インバータ回路150は、第1の実施形態のMOSFET100をスイッチング素子とする3個の半導体モジュール150a、150b、150cで構成される。3個の半導体モジュール150a、150b、150cを並列に接続することで、3個の交流電圧の出力端子U、V、Wを備える三相のインバータ回路150が実現される。インバータ回路150から出力される交流電圧により、モーター140が駆動する。
【0156】
第3の実施形態によれば、特性の向上したMOSFET100を備えることで、インバータ回路150及び駆動装置1000の特性が向上する。
【0157】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の車両は、第1の実施形態の半導体装置を備える車両である。
【0158】
図42は、第4の実施形態の車両の模式図である。第4の実施形態の車両1100は、鉄道車両である。車両1100は、モーター140と、インバータ回路150を備える。
【0159】
インバータ回路150は、第1の実施形態のMOSFET100をスイッチング素子とする3個の半導体モジュールで構成される。3個の半導体モジュールを並列に接続することで、3個の交流電圧の出力端子U、V、Wを備える三相のインバータ回路150が実現される。インバータ回路150から出力される交流電圧により、モーター140が駆動する。モーター140により車両1100の車輪90が回転する。
【0160】
第4の実施形態によれば、特性の向上したMOSFET100を備えることで、車両1100の特性が向上する。
【0161】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の車両は、第1の実施形態の半導体装置を備える車両である。
【0162】
図43は、第5の実施形態の車両の模式図である。第5の実施形態の車両1200は、自動車である。車両1200は、モーター140と、インバータ回路150を備える。
【0163】
インバータ回路150は、第1の実施形態のMOSFET100をスイッチング素子とする3個の半導体モジュールで構成される。3個の半導体モジュールを並列に接続することで、3個の交流電圧の出力端子U、V、Wを備える三相のインバータ回路150が実現される。
【0164】
インバータ回路150から出力される交流電圧により、モーター140が駆動する。モーター140により車両1200の車輪90が回転する。
【0165】
第5の実施形態によれば、特性の向上したMOSFET100を備えることで、車両1200の特性が向上する。
【0166】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の昇降機は、第1の実施形態の半導体装置を備える昇降機である。
【0167】
図44は、第6の実施形態の昇降機(エレベータ)の模式図である。第6の実施形態の昇降機1300は、かご610、カウンターウエイト612、ワイヤロープ614、巻上機616、モーター140と、インバータ回路150を備える。
【0168】
インバータ回路150は、第1の実施形態のMOSFET100をスイッチング素子とする3個の半導体モジュールで構成される。3個の半導体モジュールを並列に接続することで、3個の交流電圧の出力端子U、V、Wを備える三相のインバータ回路150が実現される。
【0169】
インバータ回路150から出力される交流電圧により、モーター140が駆動する。モーター140により巻上機616が回転し、かご610が昇降する。
【0170】
第6の実施形態によれば、特性の向上したMOSFET100を備えることで、昇降機1300の特性が向上する。
【0171】
以上、第1及び第2の実施形態では、炭化珪素の結晶構造として4H-SiCの場合を例に説明したが、本発明は6H-SiC、3C-SiC等、その他の結晶構造の炭化珪素に適用することも可能である。
【0172】
また、第3ないし第6の実施形態においては、第1の実施形態の半導体装置を備える場合を例に説明したが、第2の実施形態の半導体装置を適用することも可能である。
【0173】
また、第3ないし第6の実施形態において、本発明の半導体装置を車両やエレベータに適用する場合を例に説明したが、本発明の半導体装置を例えば、太陽光発電システムのパワーコンディショナー等に適用することも可能である。
【0174】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0175】
10 炭化珪素層
12 ソース電極(第1の電極)
12a コンタクト領域(一部)
14 ドレイン電極(第2の電極)
16 ゲート電極
18 ゲート絶縁層
21 ゲートトレンチ(第1のトレンチ)
22 コンタクトトレンチ
22a コンタクトトレンチ(第2のトレンチ)
22b コンタクトトレンチ(第3のトレンチ)
26 ドリフト領域(第1の炭化珪素領域)
26a 第1の領域
26b 第2の領域
26c 第3の領域
28 ボディ領域(第2の炭化珪素領域)
30 ソース領域(第3の炭化珪素領域)
32 電界緩和領域
32a 電界緩和領域(第4の炭化珪素領域)
32b 電界緩和領域(第5の炭化珪素領域)
36 ゲートトレンチ底部領域(第6の炭化珪素領域)
100 MOSFET(半導体装置)
150 インバータ回路
200 MOSFET(半導体装置)
1000 駆動装置
1100 車両
1200 車両
1300 昇降機
P1 第1の面
P2 第2の面
d1 第1の距離
d2 第2の距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44