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  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図1
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/00 20060101AFI20240322BHJP
   H01G 9/035 20060101ALI20240322BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20240322BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01G9/00 290B
H01G9/035
H01G9/145
H01G9/15
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020120423
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017716
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳場 康弘
(72)【発明者】
【氏名】勝又 悟
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 学
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-002274(JP,A)
【文献】特開2003-017369(JP,A)
【文献】特開2020-072132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/035
H01G 9/145
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部引出電極用のタブ端子を接続した陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回することにより巻回素子を作製し、前記陽極箔の切断された断面および前記タブ端子との取り付け部を化成処理し、導電性高分子層を形成させてコンデンサ素子を作製した後、封口部材を取り付けた当該コンデンサ素子と電解液を有底筒状の金属ケース内に収納し、当該金属ケースの開口部を封止した後、エージング処理を行う電解コンデンサの製造方法において、
前記電解液として、比抵抗が5kΩ・cm以上であり、溶質として、リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸、リシノール酸、クエン酸、イソクエン酸、リン酸、亜リン酸および次亜リン酸からなるグループより選ばれたものと、アミン類を含む電解液を使用すること、および
前記当該金属ケースの開口部を封止した後、エージング処理を行う前に、150~210℃で10~30分間の条件にて熱処理を実施することを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記電解液が、溶媒として、ジオール類およびラクトン類からなるグループより選ばれたものを含み前記溶質の濃度が0.5~15.0重量%であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記電解液の比抵抗が5~100kΩ・cmであることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサの製造方法、特に導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解コンデンサは、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁作用金属からなる、エッチングピットや微細孔を持つ陽極電極の表面上に誘電体となる酸化皮膜層を形成した後、この酸化皮膜層上に電解質層を形成し、電極を引き出して構成される。
このように形成した電解質層が真の陰極であり、電解コンデンサの電気特性に大きな影響を及ぼすことから、従来から種々の方法により電解質層を形成することが提案されている。
【0003】
中でも、固体電解コンデンサは、高周波領域でインピーダンス特性を改善するために、イオン伝導性である液状の電解質に替えて、電子伝導性である固体の電解質を用いるものである。例えば、かかる固体電解質として7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体を用い、このTCNQ錯体を熱溶融して陽極電極に浸漬、塗布し、固体電解質層を形成したものや、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等の導電性高分子を固体電解質として用いたものが公知である。
【0004】
ところで、かかる固体電解コンデンサに関しては、その漏れ電流を低くするために、所定の条件下で、当該電解コンデンサの両電極間に所定の電圧を適切な時間だけ印加することによるエージング処理がなされるのが一般的であり、歩留向上のためのエージング処理を含む様々な固体電解コンデンサの製造方法が検討されている。
例えば、下記の特許文献1には、エージング後の常温放置中に漏れ電流(Leakage Current, LC)が増大する固体電解コンデンサを予め排除するために、エージング工程の後に100~150℃で1~5分放置し、その後に漏れ電流を測定して、その値が規定値以上のものを不良品として排除することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法が開示されている。また、下記の特許文献2には、エージング工程でショートが発生するのを防止するために、化学重合タイプの固体電解コンデンサのエージング前に200℃未満の熱処理を行う製造方法が開示されている。
【0005】
一方、近年では自動車等の分野において、電解質に導電性高分子および電解液を用いたハイブリッド型のコンデンサ(以下「ハイブリッドコンデンサ」という)が使用されている。しかしながら、一般的な電解液(1kΩ・cm未満)を使用したハイブリッドコンデンサの場合、熱処理温度が200℃未満では、コンデンサを基板の電極とはんだ接続するためのフローまたはリフロー工程の熱によりLC変動が起きやすく、LC改善効果が小さく、200℃以上の高温で熱処理するとLC改善効果は大きくなるものの、電解液が導電性高分子と反応し、導電性高分子の脱ドープによる等価直列抵抗(ESR)の増大を引き起こすという問題があり、熱処理温度を高くすることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4720074号公報
【文献】特開2003-017369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術における上記の問題点を解決し、ESRの増大を引き起こすことなく、LCの改善が可能な電解コンデンサの製造方法、特に導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は種々検討を行った結果、電解コンデンサのエージング前に製品を封口した状態で高温無負荷処理を実施することによって、ESRの増大を引き起こさずに、LC変動の少ない電解コンデンサ、特にハイブリッドアルミニウム電解コンデンサが製造できることを見出して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題点を解決可能な本発明の電解コンデンサの製造方法は、外部引出電極用のタブ端子を接続した陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回することにより巻回素子を作製し、前記陽極箔の切断された断面および前記タブ端子との取り付け部を化成処理し、導電性高分子層を形成させてコンデンサ素子を作製した後、封口部材を取り付けた当該コンデンサ素子と電解液を有底筒状の金属ケース内に収納し、当該金属ケースの開口部を封止した後、エージング処理を行う電解コンデンサの製造方法において、
前記電解液として、比抵抗が5kΩ・cm以上の電解液を使用すること、および
前記当該金属ケースの開口部を封止した後、エージング処理を行う前に、150~210℃で10~30分間の条件にて熱処理を実施することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の特徴を有した電解コンデンサの製造方法において、前記電解液が、溶媒として、ジオール類およびラクトン類からなるグループより選ばれたものを含み、かつ、溶質として、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸およびアミン類からなるグループより選ばれたものを含み、当該溶質の濃度が0.5~15.0重量%であることを特徴とするものである。
【0010】
溶媒のジオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオールおよびこれらの誘導体等を使用でき、ラクトン類としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等を使用できる。
【0011】
溶質のジカルボン酸としては、リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸、リシノール酸等を使用でき、ポリカルボン酸としては、クエン酸、イソクエン酸等を使用でき、アミン類としては、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン等を使用できる。
【0012】
また、本発明は、上記の特徴を有した電解コンデンサの製造方法において、前記電解液の比抵抗が5~100kΩ・cmであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ESRの増大を引き起こさずに、LC変動の少ない電解コンデンサ、特にハイブリッドアルミニウム電解コンデンサが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る電解コンデンサの要部切断正面図である。
図2図1に示すコンデンサ素子の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の製造方法により製造される電解コンデンサ(ハイブリッドコンデンサ)の好ましい実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に例示したハイブリッドコンデンサ1は、外装ケース2と、外装ケース2に収容されたコンデンサ素子3と、外装ケース2の開口を封止した封口体4とを備えている。
【0016】
コンデンサ素子3は、図2に示すように、陽極箔(陽極)11と陰極箔(陰極)12とをセパレータ13を介して円筒形に巻回して形成され、外周面に貼り付けられたテープ14により巻止めされている。
【0017】
陽極箔11は、表面に誘導体酸化皮膜が形成されたアルミニウム等の弁作用金属の箔である。誘導体酸化皮膜は、エッチング処理にて表面を粗面化した弁作用金属箔に化成処理を施すことによって形成されている。
【0018】
陰極箔12もアルミニウム等の弁作用金属箔を用いて形成され、エッチング処理により表面が粗面化されたもの(粗面化箔)が使用される。陰極箔12として、他にエッチング処理を施さないプレーン箔も使用でき、また、前記粗面化箔もしくはプレーン箔の表面に、チタンやニッケルやその炭化物、窒化物、炭窒化物またはこれらの混合物からなる金属薄膜や、カーボン薄膜を形成したコーティング箔も使用することができる。
【0019】
陽極箔11および陰極箔12にはそれぞれ図示しないリードタブが接続されている。陽極箔11および陰極箔12は、それぞれリードタブを介して、リード端子21およびリード端子22と接続されている。リード端子21およびリード端子22は、図1に示すように、封口体4に形成された孔31および孔32を通って外部に引き出されている。
図2に示すセパレータ13は、導電性高分子および電解液を保持している。
【0020】
次に、上述の構造を有する電解コンデンサを製造するための本発明の製造方法について説明する。
先ず最初に、所定の幅に切断された陽極箔および陰極箔を準備し、この陽極箔および陰極箔に外部引出電極用のタブ端子を接続し、陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回することにより巻回素子を作製する。
この際に使用される陽極箔は、表面上に誘電体酸化皮膜が形成された弁金属からなり、陽極箔に用いられる弁金属としてはアルミニウムやタンタル等が挙げられる。また、陽極箔の表面上の誘電体酸化皮膜は、弁金属の表面にエッチング処理および化成酸化処理を施すことにより形成される。一方、陰極箔は、表面に炭化物粒子またはチタン粒子が保持されたアルミニウム箔または、箔表面をエッチング処理したアルミニウム箔からなるものが一般的であるが、これに限定されるものではない。また、巻回素子を作製する際に使用されるセパレータは、セルロース繊維を含むものを用いることができ、セパレータ表面上には導電性高分子が付着してもよい。
【0021】
そして、陽極箔の切断された断面およびタブ端子との取り付け部を化成処理する。
このような化成処理を行うことにより、巻回素子における陽極箔の切り口や、外部引き出し電極取り付け部の、誘電体酸化皮膜が欠損した部分が修復される。この化成処理においては、化成液として、カルボン酸基を有する有機酸塩類、リン酸等の無機酸塩類の溶質を有機溶媒または無機溶媒に溶解した化成液が使用され、溶質にアジピン酸アンモニウムを主体とした水溶媒に溶解させ、濃度0.1~2重量%の化成液(例えば、リン酸化成液やホウ酸化成液)を用いることが好ましく、誘電体酸化皮膜の化成電圧値に似した電圧を印加して化成処理を行う。
強靭な誘電体酸化皮膜を形成するには、熱処理と化成処理を数回繰り返すことが好ましく、この際、熱処理は200℃以下の温度範囲で数分~数十分程度行うのが一般的である。
【0022】
次に、上記の化成処理を行った後の巻回素子に導電性高分子層を形成するが、導電性高分子層の形成方法は限定されるものではなく、例えば、導電性高分子を水に分散させた分散体高分子溶液に、化成処理後の巻回素子を浸漬含浸させた後、巻回素子を引き上げ乾燥する方法が挙げられる。
上記の巻回素子を分散体高分子溶液に含浸させる際の浸漬深さは、巻回素子の1/2~2/3とすることが好ましく、浸漬を行った後に減圧含浸を実施することが好ましい。また、この減圧含浸時の減圧度としては90~95kPaの範囲が好ましく、大気開放と減圧を合計3回程度行うことが好ましい。
導電性高分子層を形成する際に使用される導電性高分子としては、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)や、自己ドープ型ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどが挙げられる。
【0023】
そして、導電性高分子層を形成した巻回素子に密閉するための封口部材を取り付ける。この際、封口部材としては、弾性のあるゴム、例えばブチルゴム等からなり、外部引き出し端子が貫通する貫通孔を備えたものを用いる。なお、巻回素子への封口部材の取り付けは、巻回素子に電解液を含浸した後でもよい。
【0024】
本発明では、上記により作製されたコンデンサ素子を有底筒状の金属ケース内に収納した後に、当該金属ケースの容量に応じた量の電解液が注入されるが、この際使用される電解液は5kΩ・cm以上の比抵抗を有するものであり、5~100kΩ・cmの範囲であるものがより好ましく、20~40kΩ・cmの範囲のものが特に好ましい。本発明において電解液の比抵抗が5kΩ・cm以上に限定されるのは、5kΩ・cm未満の場合には、導電性高分子と反応して、導電性高分子の脱ドープによるESR増大を引き起こすからである。電解液の比抵抗の上限値については特に限定されないが、100kΩ・cmを極端に超える場合には、誘電体酸化皮膜の修復性能が低下し漏れ電流が大きくなる傾向があるので好ましくない。なお、本明細書において示されている比抵抗はマルチ水質計(東亜ディーケーケー株式会社製)に従って、30℃±0.5℃の条件にて測定された値である。
【0025】
本発明では、上記の電解液中に含まれる溶媒が、ジオール類およびラクトン類からなるグループより選ばれたものであることが好ましく、溶質としては、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸およびアミン類からなるグループより選ばれたものが好ましい。また、上記電解液中の溶質濃度は0.5~15重量%であることが好ましく、1~13重量%がより好ましい。上記の溶媒および溶質を含む電解液は低蒸散性であるために、電解液の比抵抗を5kΩ・cm以上とすることで、エージング前の熱処理によりリフロー後の漏れ電流の増大を抑制することが可能となる。
本発明においては、上記電解液を注入した後、素子内への電解液浸透性を高めるために、減圧度90~95kPaの減圧環境下で含浸を行うことが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法においては、前記コンデンサ素子と、上記の比抵抗値を有する電解液を、有底筒状の金属ケース内に収容し、当該金属ケースの開口部を封止した後、エージング処理を行う前に、150~210℃で10~30分間の条件にて電圧を印加することなく熱処理を実施し、その後で、カテゴリ上限温度以下の条件にて定格電圧を印加し、エージング処理を行う。本発明では、このような処理を実施することによって、ESRの増大を引き起こすことなく、LCの改善が可能なハイブリッドコンデンサが作製できる。
【0027】
本発明では、エージング処理を行う前に実施する熱処理温度は、150~210℃が好ましく、200~210℃がより好ましい。なお、熱処理温度が210℃を超えるとリード線の表面に形成されためっきが再溶融する問題がある。
【0028】
本明細書中において、電解コンデンサの連続使用が可能な最高周囲温度を、当該電解コンデンサの「カテゴリ上限温度」と規定するものとする。かかる最高周囲温度は、一般的に、製造メーカ等により、実用に供される固体電解コンデンサの品質保証試験の際に、当該最高周囲温度で当該固体電解コンデンサに定格電圧を一定時間印加する等により決定され、例えば、85℃、105℃、125℃、135℃、150℃等の温度が最高周囲温度として保証される。
【0029】
エージング工程前に熱処理を行う本発明の製造方法を用いることにより、LC(漏れ電流)改善が可能となる。
LC改善効果は、巻回素子の状態で熱処理を行った場合にも出現するが、組立工程での機械的ストレスによりLCが増大するため、組立後~エージング前に熱処理を行うことが最もLC改善効果が大きい。
以下に、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0030】
〔実施例:本発明の製造方法を用いた導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサの製造例〕
陽極箔として、アルミニウム箔をエッチング処理にて粗面化した後、化成処理を施すことにより、誘電体酸化皮膜が形成されたものを準備し、陰極箔としては、表面がエッチング処理にて粗面化されているアルミニウム箔を準備し、セパレータとして、セルロース繊維を主体としたものを準備した。
そして、所定の幅に切断された上記陽極箔および陰極箔に、それぞれ外部引き出し電極用のリードタブ(アルミニウムで形成)を接続し、上記のセパレータを介して巻回することにより巻回素子を作製した。
【0031】
次いで、溶質にアジピン酸アンモニウムを主体とした水溶媒に溶解させ、濃度が2重量%の化成液を調製し、この化成液を用いて上記巻回素子に、誘電体酸化皮膜の化成電圧値に似した電圧を印加し、化成処理を行った。その後、熱処理(200℃、30分)と上記化成処理を数回繰り返すことにより、誘電体酸化皮膜を形成した。
その後、化成処理後の巻回素子を、減圧下で、PEDOT/PSSを含む分散体高分子溶液に、浸漬深さが巻回素子の1/2~2/3までとなるようにして3~5分間浸漬させ、浸漬後に減圧度を90~95kPaとし、大気開放と減圧を合計3回行った。そして、分散体高分子溶液から巻回素子を引き上げて乾燥し導電性高分子層を形成した。
【0032】
その後、所定量の電解液(溶質:リシノール酸、亜リン酸、ジブチルアミン、溶媒:1,5-ペンタンジオール、γ-バレロラクトン、溶質濃度:10.0重量%)を素子に注入した。この電解液の比抵抗は32kΩ・cmであった。
そして、上記の電解液を減圧環境下(90~95kPa)にて巻回素子に含浸させてコンデンサ素子を作製し、このコンデンサ素子に密封するための封口部材(ブチルゴム製)を取り付けて金属ケース内に収納し、金属ケースの開口部をカーリング加工して封止した。続いて、表1の前処理条件にて熱処理を加え、その後、カテゴリ上限温度以下の条件にてコンデンサに定格電圧を印加してエージング処理(125℃、1時間)を施し、導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサを50個作製した。
【0033】
〔比較例:熱処理を行わない場合(比較例1)、熱処理温度が130℃である場合(比較例2)〕
前記実施例におけるコンデンサ素子を金属ケース内に収納し、金属ケースの開口部を封止した後、表1の前処理条件を行う以外は、前記実施例1と同様にして、導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサを50個作製した。
【0034】
〔従来例:電解液の比抵抗が5kΩ・cm未満である場合〕
前記実施例における電解液の代わりに、溶質がアミジン塩で、溶媒がエチレングリコールおよびγ-ブチロラクトンで、溶質濃度が25.0重量%である電解液(比抵抗0.1kΩ・cm)を用いる以外は、前記実施例1と同様にして、導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサを50個作製した。
【0035】
〔リフロー前後の電気特性比較〕
上記実施例、比較例および従来例で作製した電解コンデンサのそれぞれについて、リフロー前後の電気特性、即ち、周波数100kHzにおける等価直列抵抗(ESR)、および定格電圧を1分間印加した後の漏れ電流(LC)を測定し、比較を行った。なお、LC規格は35.28μA以下とした。
その結果を、以下の表1に示す。なお、実施例、比較例および従来例の電解コンデンサはいずれもサイズが直径10mm×長さ10mmで、定格電圧が63V、定格容量が56μFのものであり、N=50の平均値が示されている。
【0036】
【表1】
【0037】
上記表1の結果から、実施例の電解コンデンサと、従来例の電解コンデンサを比較した場合、リフロー前後の両方において、エージング処理前に150~210℃、10~30分間の熱処理を追加することで、ESRを上昇させることなくLCの上昇が抑制でき、リフロー前後のLC変動を安定化できることが確認された。また、熱処理を実施しないまたは熱処理温度が130℃とした場合には、サンプル毎のバラツキが非常に大きくLC規格から外れるサンプルが発生することもわかった。
【0038】
以上、本発明の実施形態について実施例に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0039】
なお、実施例では、PEDOT/PSSを導電性高分子に用いたが、自己ドープ型ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等の他の導電性高分子を用いた場合、これらを組み合わせて多層とした場合でも同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の製造方法によれば、エージング処理を行う前に、製品を封口した状態で熱処理を実施することによってLCを改善することができ、製造時の歩留りを大きく向上させることができ、本製法は、電解コンデンサ、特に導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサの製造において有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 ハイブリッドコンデンサ
2 外装ケース
3 コンデンサ素子
4 封口体
11 陽極箔(陽極)
12 陰極箔(陰極)
13 セパレータ
14 テープ
21,22 リード端子
31,32 孔
図1
図2